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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03F
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03F
管理番号 1324565
審判番号 不服2015-8532  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-05-07 
確定日 2017-02-27 
事件の表示 特願2011-552896「ステレオリソグラフィ装置用の照射システム」拒絶査定不服審判事件〔平成22年 9月10日国際公開、WO2010/101465、平成24年 8月30日国内公表、特表2012-519874、請求項の数(19)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年(平成22年)3月8日(パリ条約による優先権主張 2009年3月6日、欧州特許庁)の出願であって、平成25年12月9日付け(発送 同年同月11日)で拒絶理由が通知され、平成26年6月11日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出されたが、同年12月26日付け(送達 平成27年1月6日)で拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対し、平成27年5月7日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、これと同日に手続補正がなされた後、当審において、平成28年6月14日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由1」という。)が通知され、同年9月13日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年10月6日付け(発送 同年同月11日)で拒絶理由(以下、「当審拒絶理由2」という。)が通知され、平成29年1月11日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年1月17日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由3」という。)が通知され、平成29年1月24日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし19に係る発明は、平成29年1月24日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし19に記載された事項により特定されるもの(以下、それぞれを「本願発明1」ないし「本願発明19」という。)と認められるところ、本願発明1及び本願発明12は以下のとおりである(下線は、請求人が付与したとおり、補正箇所を示すものである。)。
「【請求項1】
ステレオリソグラフィ装置(1)用照射システム(30)であって、
個別に制御可能な発光ダイオード(LED)(34)の二次元アレイ(32)を支持する平坦な支持手段と、
前記アレイ(32)に関連して配置され、前記LEDの焦点像を造形領域(16)に投影するようになされたマルチレンズプロジェクタアレイ(40)と、
を備え、
前記マルチレンズプロジェクタアレイは当該マルチレンズプロジェクタアレイが中央領域の焦点誤差より小さい縁辺領域の焦点誤差を有するような光学面を有し、
前記マルチレンズプロジェクタアレイ(40)は、光学的要素のレンズの積層体を備え、前記積層体は、レンズのレンズ凸面において前記積層体の中の他のレンズのレンズ凸面と直接接触する複数のレンズを含み、
前記直接接触する複数のレンズの前記レンズ凸面は、直接接触する前記他のレンズの前記レンズ凸面との接触領域上に形成された平坦化部分を備え、該平坦化部分がプロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる、照射システム。」
「【請求項12】
ステレオリソグラフィ装置(1)用照射システム(30)であって、
個別に制御可能な発光ダイオード(LED)(34)の二次元アレイ(32)を支持する平坦な支持手段と、
前記アレイに関連して配置され、前記LEDを造形領域(16)に投影するようになされたマルチレンズプロジェクタアレイ(40)と、
を備え、
前記マルチレンズプロジェクタアレイ(40)は、光学的要素のレンズの積層体を備え、前記積層体は、レンズのレンズ凸面において前記積層体の中の他のレンズのレンズ凸面と直接接触する複数のレンズ(44)を備え、
前記直接接触する複数のレンズの前記レンズ凸面は、直接接触する前記他のレンズの前記レンズ凸面との接触領域上に形成された平坦化部分を備え、該平坦化部分がプロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる、照射システム。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
本願発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物1.特開2007-190811号公報(以下、「引用文献1」という。)
刊行物2.特開平3-107102号公報(以下、「引用文献2」という。)
刊行物3.特開2000-66008号公報(以下、「引用文献3」という。)

引用文献1には、3次元造形物造形用の光源として、マイクロレンズを各画素に備えた2次元LEDアレイ13(照射システムに相当。)が開示されている。レンズの技術分野において、軸上収差と軸外収差とのバランスを取るため、軸上収差を過剰補正することで軸上での焦点にボケを生じさせて拡大し、軸外の焦点径を小さくすることは、当業者にとって周知の技術的事項である。
引用文献2は、軸上(すなわち中央領域)における球面収差を過剰補正することで、軸外(すなわち縁辺領域)において発生していた像面湾曲収差を低減させ、全体の解像度を向上させる光学系の設計思想を開示している。
また、上記拒絶理由通知書で引用文献3も同様の光学系の設計思想を開示するものである。
したがって、中央領域における収差すなわち焦点誤差を故意に劣化させて、周辺領域における収差すなわち焦点誤差を補正し、全体として解像度を向上させるという光学系の設計思想は、本願出願時において当業者にとって周知の技術的事項である。
当該周知の光学系の設計思想を、ステレオリソグラフィにも適用することに、格別の技術的困難性および阻害要因は認められない。
そして、ステレオリソグラフィに当該光学系の設計思想を適用した際に、中央領域における収差をどの程度劣化させればよいかを実験又はシミュレーションにより決定することは、当業者が適宜選択しうる設計事項にすぎない。

2 原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア 原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献1には、以下の記載がある(下線は当審にて付した。以下同じ。)。
(ア)「【技術分野】
【0001】
本発明は、光造形法用樹脂組成物を用いて三次元造形物を造形する方法に関するものである。」

(イ)「【0027】
図2は、本発明の第2の実施の形態である三次元造形物造形方法を示す図である。密閉容器11の中に、支持台12が上下方向に移動可能に設けられている。この支持台12は、ピストンを兼ねており、上昇するとき、液体を吸入口14から密閉容器11の中に吸入するようになっている。密閉容器11の底面は紫外線を通す材料で構成されており、密閉容器11の底面には、紫外線2次元発光ダイオードアレイ13が配置されている(a)。
【0028】
この状態で支持台12を上昇させ、吸入口14から、光硬化性物質より比重が大きく、紫外線を透過させ、光硬化物質と混じり合わず、かつ、光源からの光によって硬化しない緩衝物質15を密閉容器11内に吸入する(b)。続いて、支持台12を上昇させ吸入口14から、光硬化性物質16を厚さが所定厚さとなるように密閉容器11内に吸入する(c)。この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ13を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる。すると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質16が硬化し、成形物17が形成される(d)。
【0029】
次に、支持台12をさらに上昇させ、吸入口14から、光硬化性物質16を厚さが所定厚さとなるように密閉容器11内に吸入する(e)。この状態で、紫外線2次元発光ダイオードアレイ13を、所定の2次元パターンが形成されるように発光させる。すると、紫外線が照射された部分の光硬化性物質16が硬化し、成形物17がさらに形成される(f)。この操作を繰り返して、第1の実施の形態と同じように、目標パターンの3次元形状を有する成形物17が形成される。形成が終了したところで、密閉容器11の底面を開放し、支持台12を下げて、成形物17を密閉容器11の外に出し、支持台12から剥離する。」

(ウ)「【0034】
以上の例においては、紫外線2次元発光ダイオードアレイからの光で直接光硬化性物質を照射していたが、紫外線2次元発光ダイオードアレイを光硬化性物質から離れた位置におき、レンズ型等により、紫外線2次元発光ダイオードアレイの実像を、光硬化性物質の表面に結像させるようにしてもよい。このようにすると、紫外線2次元発光ダイオードアレイの表面が汚れる可能性が低くなり、場合によっては緩衝物質を使用する必要がなくなる。
【0035】
図4は、紫外線2次元発光ダイオードアレイの1ピクセル分を表す図である。21が1ピクセル分の領域を示し、この領域は、発光ダイオード22より大きくなっている。通常は、発光ダイオード22の表面にマイクロレンズを配置し、紫外線2次元発光ダイオードアレイから放出される光の開口角を決めている。図4において、領域23が、光硬化性物質が露光される領域を示す。図に示すように、この領域23は、紫外線2次元発光ダイオードアレイの1ピクセル分の領域より大きくなっている。よって、必ず、光硬化性物質の表面の全領域を発光ダイオードからの光で照射可能である。従って、光硬化物質が照射されないで、硬化されるべき部分が未硬化で残ることが無くなる。」

(エ)図2及び4は次のものである。
【図2】


(オ)引用発明
上記(ウ)において、「発光ダイオードの表面にマイクロレンズを配置し」て「照射可能」とする手段は、照射システムといえるから、上記(ア)ないし(エ)によれば、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「密閉容器の中に、支持台が上下方向に移動可能に設けられ、
前記密閉容器の底面には、紫外線2次元発光ダイオードアレイが配置され、
前記紫外線2次元発光ダイオードアレイを、所定の2次元パターンが形成されるように発光させ、紫外線が照射された部分の光硬化性物質が硬化し、成形物が形成される光造形法用樹脂組成物を用いて三次元造形物を造形する方法において、
前記紫外線2次元発光ダイオードアレイを光硬化性物質から離れた位置におき、レンズ型等により、紫外線2次元発光ダイオードアレイの実像を、光硬化性物質の表面に結像させるものであって、
前記発光ダイオードの表面にマイクロレンズを配置し、紫外線2次元発光ダイオードアレイから放出される光の開口角を決め、光硬化性物質の表面の全領域を発光ダイオードからの光で照射可能である照射システム。」

イ 同じく、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献2には、以下の記載がある。
(ア)「第2図の横収差図に示すごとく(1)式で表される分布形状では、軸上で球面収差が補正不足となり、軸外では像面湾曲のため小さなスポットに絞ることが出来ずに高い解像力が得られない」(第2頁左上欄1ないし4行目)

(イ)「本発明では、h_(4)>0.5として球面収差を過剰補正にした。ただし、h_(4)<1.0としておかないと、像面全面にわたって解像度が低下する」(第2頁右上欄13ないし16行目)

(ウ)「軸上では球面収差が過剰補正なため、若干スポット径は増加し解像度は球面収差補正ジより低下するが、像面湾曲を補うため軸外での収差が減少し解像度の増加を図ることができる」(第2頁右上欄16行ないし左下欄1行)

ウ 同じく、本願の優先日前に頒布された刊行物である引用文献3には、以下の記載がある。
「【0016】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明にかかる結像素子アレイの実施の形態について説明する。本発明は、前述の通り、固体走査書込方式のデジタル書込光学系に用いられる結像素子アレイに関するものである。固体走査書込方式の光学系は、複数の発光素子が主走査方向にアレイ状に配列された光源部としての発光素子アレイと、この発光素子アレイの各発光素子に対応するように複数の結像素子が主走査方向にアレイ状に配列された結像素子アレイとから主に構成されている。この結像素子アレイは、上記発光素子アレイからの光束を感光体上に光スポットとして集光するためのものである。本発明は、この結像素子アレイの各結像素子の球面収差を補正過剰にして意図的に発生させることにより、安定した光スポットを得ることを特徴としている。
【0017】上記球面収差とは、周知の通り、光軸上の1点から出る光線が光学系に入射したとき、入射点の光軸からの距離によって光線が光軸と交わる位置が異なる収差をいい、レンズの焦点距離が半径方向に不均一なために起こる収差のことである。図3は、本発明の実施例の球面収差とその光線図を示していて、図1、図2および図4は、本発明と比較するための例であり、それぞれ球面収差とその光線図を示している。
【0018】図1には、比較例として球面単レンズの一例を示している。図1(b)に示すように、この場合の球面収差は、光軸上の光線から周辺の光線まで常にマイナス側にあるため、光線の集光点、すなわち光スポットが最小になる点は、図1(a)に示すように近軸像面に対しマイナス側に生じてしまう。従って、この場合は球面収差の補正が不足していることになる。
【0019】図2には、比較例として物体高さを配列ピッチと等しくしたときの光線の球面収差がゼロとなるように完全補正された非球面単レンズの一例を示している。図2(b)に示すように、この場合の球面収差は、図1に示す例と同様に、光軸上の光線から周辺の光線まで常にマイナス側にあるため、光線の集光点は、図2(a)に示すように近軸像面に対しマイナス側に生じてしまう。
【0020】図4には、比較例として、どの光線高さにおいても球面収差がゼロとなる非球面単レンズの一例を示している。図4(b)に示すように、この場合の球面収差は、光軸上の光線から周辺の光線まで常にゼロであるため、光線の集光点は、図4(a)に示すように近軸像面上に一致する。しかし、この場合は、光スポットが近軸像面上で絞られすぎているため、光スポットの小径化を図ることはできても、光スポット径が小さくなる分、近軸像面近傍におけるデフォーカスに対する光スポットのばらつきが大きくなってしまいがちである。
【0021】図3には、本発明の実施例を示しており、球面収差を意図的に補正過剰に発生させた非球面単レンズの一例を示している。図3(b)に示すように、光軸上およびその近傍の光線の球面収差はマイナス側にあり、一方、周辺の光線の球面収差はプラス側にある。従って、光線の集光点は、球面収差がマイナス側にある光線と、球面収差がプラス側にある光線のバランスによって決定され、図4(a)に示すように近軸像面上における光スポットの径が近軸像面上に一致しているものに比べて、数μm?10μm程度に若干大きくなっている。
【0022】このように、球面収差を意図的に補正過剰に発生させて、近軸像面上における光スポットに若干の広がりを持たせることにより、光スポットの径が小さいことにより生じる、近軸像面近傍におけるデフォーカスに対する光スポットのばらつきを抑えることができ、光スポットの安定化の向上を図ることができる。特に、物体高さを配列ピッチと等しくしたときの光線の高さをhとしたとき、
0.75h<h’<h
となる高さh’において、球面収差がゼロとなるようにすれば、より光スポットの安定化の向上を図ることができる。図3(b)に示すように、この実施例では、上記範囲h’内で球面収差がゼロとなるようになっている。なお、上述では、0.75h<h’<hとなる高さh’において球面収差がゼロとなるようにしているが、好ましくは、0.75h<h’<0.95hとなる高さh’において球面収差がゼロとなるようにしたほうがよい。
【0023】また、球面収差がマイナス側にある光線と、球面収差がプラス側にある光線のバランスを調整することにより、軸像面上における光スポットに若干の広がりを持たせると共に、少なくともアレイ配列方向の、デフォーカスに対する光スポット径の最小値である集光点の位置を近軸像面上に一致させることができる。
【0024】また、環境変化を考慮して球面収差のバランスを調整しておけば、光線の集光点の位置を調整することができる。例えば、樹脂で成形された結像素子アレイを用いる場合、装置を設置した室内の温度が上昇すると、結像素子アレイのレンズは膨張し、その結果、焦点距離が伸びて結像位置がずれてしまう場合があるが、このような場合は、温度の上昇変化をあらかじめ考慮して球面収差を調整し、少なくともアレイ配列方向の、デフォーカスに対する光スポット径の最小値である集光点の位置を近軸像面位置よりもマイナス側に持ってくるように補正過剰にしておけば、装置を設置した室内の温度が上昇しても、結像位置ずれなどを防止することができる。
【0025】また、球面収差を補正過剰に発生させる際に、アレイ配列方向と、アレイ配列方向に対して直交する方向との光スポット径の偏差を20%以下とすることにより、より良好な画像を得ることができる。すなわち、像面位置でのアレイ配列方向の光スポット径をBm、アレイ配列方向に対して直交する方向の光スポット径をBsとしたとき、B=max(Bm、Bs)として、
|(Bm-Bs)/B|≦0.2 ・・・(1)
を満足するように、球面収差を補正過剰に発生させることにより、より良好な画像を得ることができる。」

(2)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、
「ステレオリソグラフィ装置(1)用照射システム(30)であって、
個別に制御可能な発光ダイオード(LED)(34)の二次元アレイ(32)を支持する平坦な支持手段と、
前記アレイ(32)に関連して配置され、前記LEDの焦点像を造形領域(16)に投影するようになされたマルチレンズプロジェクタアレイ(40)と、
を備える、照射システム。」
の点で一致している。
他方、本願発明1の「マルチレンズプロジェクタアレイ」は、
ア 「当該マルチレンズプロジェクタアレイが中央領域の焦点誤差より小さい縁辺領域の焦点誤差を有するような光学面を有」するのに対して、引用発明の「マイクロレンズ」は、このように特定されるものではない点(以下、「相違点1」という。)、及び、
イ 「光学的要素のレンズの積層体を備え、前記積層体は、レンズのレンズ凸面において前記積層体の中の他のレンズのレンズ凸面と直接接触する複数のレンズを含み、前記直接接触する複数のレンズの前記レンズ凸面は、直接接触する前記他のレンズの前記レンズ凸面との接触領域上に形成された平坦化部分を備え、該平坦化部分がプロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる」するのに対して、引用発明の「マイクロレンズ」は、このように特定されるものではない点(以下、「相違点2」という。)、
で相違する。

(3)判断
上記相違点2について検討する。
中央領域における収差すなわち焦点誤差を故意に劣化させて、周辺領域における収差すなわち焦点誤差を補正し、全体として解像度を向上させるという光学系の設計思想が、本願優先日当時において当業者にとって周知の技術的事項であったとしても、引用発明の「マイクロレンズ」のレンズ面を「光学的要素のレンズの積層体を備え、前記積層体は、レンズのレンズ凸面において前記積層体の中の他のレンズのレンズ凸面と直接接触する複数のレンズを含み、前記直接接触する複数のレンズの前記レンズ凸面は、直接接触する前記他のレンズの前記レンズ凸面との接触領域上に形成された平坦化部分を備え、該平坦化部分がプロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる」構成(相違点2)となすことが容易に想到し得たことであるとする証拠はないから、引用発明において上記相違点2の構成となすことが容易に想到し得たことであるとすることはできない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る構成を備えることで、「特に有利なのは、光学マスクを、イメージングシステムの一部であるマルチレンズアレイの受光面、特に平坦面に取り付けることである。光学マスクは、たとえば、フィルムまたはコーティングの形態であってもよい。平坦面のために、光学マスクを取り付けやすく、マルチレンズアレイに取り付けることによって、照射システムの組立中に、マルチレンズアレイに関して別の光学マスクを整合させる必要がなくなる。」(本願明細書 段落【0018】)との顕著な効果を奏するものである
したがって、相違点1を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明12も、本願発明1と同様に、引用発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。

(4)小括
したがって、本願発明1及び12は、当業者が引用発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願発明2ないし11、及び、本願発明15ないし19は、本願発明1をさらに限定したものであり、本願発明13及び14は、本願発明12をさらに限定したものであるので、同様に、当業者が引用発明及び周知の技術事項に基づいて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由1の概要
本願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



(1)本願請求項1に係る発明は、「平坦化部分」に係り、「前記マルチレンズプロジェクタアレイ(40)は光学的要素の積層体を備え、前記積層体は、レンズ凸面において前記積層体の中の他の光学的要素と直接接触する複数のレンズを含み、
前記直接接触するレンズが、プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる平坦化部分を含んでなる」ことを発明特定事項とする。
上記発明特定事項では、「直接接触するレンズ」が含む、「プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる平坦化部分」の場所は特定されていない。
請求項12も同様である。

(2)及び(3)ここで、本願の発明の詳細な説明・・・では、「直接接触するレンズ」が含む、「プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる平坦化部分」の場所は、「対向する凸面」であると理解される。
そして、本願の発明の詳細な説明全体をみても、「対向する凸面」以外の場所にある、「平坦化部分」が、「プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる」との記載はみあたらない。

(4)したがって、「直接接触するレンズ」が含む、「プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる平坦化部分」の場所を特定しない上記(1)の発明特定事項を含む本願請求項1は、「対向する凸面」以外の場所にある、「平坦化部分」までもが、「プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる」構成を含むから、当該発明特定事項を含む本願請求項1は、特許を受けようとする発明が発明の詳細な説明に記載したものであるとは認められない。
請求項12も同様である。

2 当審拒絶理由2の概要
(1)本件の特許請求の範囲の請求項1における、「直接接触するレンズが、プロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる、その対向する凸面にある平坦化部分を含んでなる」との発明特定事項について
「その対向する凸面」との記載では、何と何が「対向」しているのか不明確な記載であるため、請求項1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)同様の記載のある請求項12も、同じく不明確な記載であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

3 当審拒絶理由3の概要
(1)本件の特許請求の範囲の請求項1における、「前記マルチレンズプロジェクタアレイ(40)は光学的要素の積層体を備え、前記積層体は、レンズ凸面において前記積層体の中の他の光学的要素と直接接触する複数のレンズを含み、前記直接接触する複数のレンズは、レンズと該レンズに対向する他のレンズの凸面が接触領域上で直接接触するように形成された平坦化部分を備え、該平坦化部分がプロジェクタ本体の幾何学的安定性を増大させる、」との発明特定事項について
上記請求項1の記載では、「光学的要素」と「レンズ」の関係が不明であり、また、「レンズ」、「レンズ凸面」、「他のレンズ」及び「凸面」との用語が用いられていて、用語が不統一で不明確である。
したがって、何と何がどこで「直接接触」し、かつ、どこに「平坦化部分」を備えるのか明確ではないため、請求項1は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(2)同様の記載のある請求項12も、同じく不明確な記載であるため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。

4 当審拒絶理由の判断
平成29年1月24日付け手続補正書によって、本願の請求項1及び12は、それぞれ上記「第2」のとおり補正された。このことにより、請求項1及び12に係る発明は明確となった。
よって、上記「1」、「2」及び「3」の当審拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-14 
出願番号 特願2011-552896(P2011-552896)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03F)
P 1 8・ 121- WY (G03F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松岡 智也  
特許庁審判長 森 竜介
特許庁審判官 伊藤 昌哉
松川 直樹
発明の名称 ステレオリソグラフィ装置用の照射システム  
代理人 須藤 政彦  
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