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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60N 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60N |
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管理番号 | 1324618 |
審判番号 | 不服2015-19374 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-10-28 |
確定日 | 2017-02-06 |
事件の表示 | 特願2014- 88966「コンパクトな座席装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 7月24日出願公開、特開2014-133562〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本件出願は、2008年3月14日(パリ条約による優先権主張、2007年3月15日、英国)に国際出願した特願2009-553211号の一部を、平成26年4月23日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願(分割出願)としたもので、平成27年6月17日付けで手続補正書が提出され、同年7月9日付けで拒絶の査定がなされ(同査定の謄本の送達(発送)日 同月13日)、これに対し、同年10月28日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされたものである。 第2.平成27年10月28日付け手続補正書による補正(以下「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 本件補正を却下する。 [理由] 1.本件補正後の本願の発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 自動車用のコンパクトな座席装置であって、 前記座席装置は、横方向に整列された2つの後方乗客用シートと、中央にかつ前記後方乗客用シートの前方に配置された運転手用シートと、を具備してなる少なくとも3つのシートを有しており、 前記運転手用シートは、前記後方乗客用シートのそれぞれの一部に対して前方側に位置しているとともに、後方乗客が前記後方乗客用シートに着席した際に後方乗客の脚の前端を超えて後方に位置しており、 前記シートのそれぞれが、アップライトポジションで乗員を座らせるよう構成されており、前記シートのそれぞれのシートバックは、30°以下の角度で垂直方向に対して傾斜しており、前記シートのそれぞれのシートベースの上面は、乗員を支持するためのものであって、後部乗客の着座高さ(D3)が、前記シートに隣接して設けられた水平なフロアスペースの上方において400mm?500mmという距離とされ、 乗員の足は、前記後方乗客用シートの前方側においては前記運転手用シートの両サイドにおいて前記フロアスペース上に配置され、 乗員の足が前記フロアスペース上に配置されたときには、乗員の下肢が、鉛直方向に対して30°以下の角度を形成することができることを特徴とする座席装置。」と補正された。(下線は審決で付した。以下の下線も同様である。) 上記の補正は、請求項1に係る発明を特定するために必要な事項である座席装置を設ける対象に関して、「車両」とされていたものを「自動車」に限定するとともに、水平なフロアスペースからの「400mm?500mm」の位置を、「後部乗客の着座高さ(D3)」であると限定したものであって、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定される「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。 そこで、前記に記載された事項により特定される、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2.引用例 (1)原査定に係る拒絶理由で引用された、本件出願の優先日前の平成10年1月13日に頒布された刊行物である特開平10-7018号公報(以下「引用例1」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、車両のシート構成、キャビン構体、及び車両に関するものである。」 イ.「【0004】本発明の目的は、ドライバーのために良好なエルゴノミクスを与える車両のシート構成又は車両構体を得るにある。 【0005】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するため、本発明は、横方向にほぼ整列して互いに離れる2個の後部パッセンジャーシート及びほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置したドライバーズシートとよりなり、前記前方のドライバーズシートを各後部パッセンジャーシートの一部にオーバーラップするよう横方向に突出させた少なくとも3個のシートを有する車両のシート構成にすることを特徴とする。」 ウ.「【0007】いずれの場合でも、2個の後部パッセンジャーシートは、パッセンジャー(乗員)の胴体又は人体が脚よりも大きい幅を有する、特に、脚幅よりも肩幅のほうが広いという事実を利用できるように離す。このことにより、パッセンジャーは、フロントのドライバーズシートがオーバーラップするそれぞれの後部シートで快適に着席できる。このオーバーラップする構成により、車両のキャビンを比較的狭くすることができ、しかもドライバー及び少なくとも2名のパッセンジャーを側方に並ばせて収容することができる。更に、このシート構成によりパッセンジャーシートに対するアクセスを比較的容易にすることができるようになる。」 エ.「【0009】好適な実施例においては、この中央に位置決めしたドライバーズシートは各後部パッセンジャーシートの前部よりも後方に突出させる。 【0010】ドライバーズシートのパッセンジャーシートに対するオーバーラップ構成により、コンパクトでありながら、快適であり、かつアクセス性のよいパッセンジャーキャビンを得ることができる。 【0011】更に、本発明は、横方向にほぼ整列して互いに離れる2個の後部パッセンジャーシート及びほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置したドライバーズシートとよりなり、前記前方のドライバーズシートを各後部パッセンジャーシートの前部よりも後方に突出させた少なくとも3個のシートを有する車両のシート構成を特徴とする。」 オ.「【0029】 【発明の実施の形態】以下に添付図面につき、本発明の好適な実施例を説明する。 【0030】図1には、車両例えばスポーツカーのキャビン2のシート構成を上方から見た線図的平面図を示す。図面から明らかなように、中央に配置した一個のドライバーズシート4と、互いに離れてほぼ横方向に整列する2個の後部パッセンジャーシート6を設ける。ドライバーズシート4は2個の後部パッセンジャーシート6のほぼ前方に配置するが、このドライバーズシート4は各後部パッセンジャーシート6の前部よりも後方に突出する。更に、ドライバーズシート4は横方向にも突出し、各後部パッセンジャーシート6の一部とオーバーラップする。 【0031】図1に示す3個のシート構成快適であり、着席者の全員はシート4、6に容易にアクセスすることができる。また、このシート構成によれば、シートが占める全体幅及び全体長さを、できるだけ小さく抑えることができること明らかである。」 上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 「横方向にほぼ整列して互いに離れる2個の後部パッセンジャーシート及びキャビン2のほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置したドライバーズシートとよりなり、前記前方のドライバーズシートを各後部パッセンジャーシートの前部よりも後方に突出させて一部にオーバーラップする、少なくとも3個のシートを有するスポーツカーなどの車両のシート構成であって、 このオーバーラップする構成により、車両のキャビンを比較的狭くすることができ、コンパクトでありながら、快適であり、かつアクセス性のよいパッセンジャーキャビンを得ることができ、また、このシート構成によれば、シートが占める全体幅及び全体長さを、できるだけ小さく抑えることができる車両のシート構成。」 (2)同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本件出願の優先日前の平成17年4月21日に頒布された刊行物である特開2005-104262号公報(以下「引用例2」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「【0004】 本発明は、前後にシートを備えた車両において、後部シートに複数の後部乗員が座ることができるようにするとともに、後部乗員の居住性を確保することができ、しかも、車両の小型化を図ることができる技術を提供することを課題とする。 【課題を解決するための手段】 【0005】 請求項1に係る発明は、運転者が座る前部シートの後方に、後部乗員が座る左右の着座部を有した幅広の後部シートを設け、この後部シートが、左右の着座部に対応するバックレストを備え、このバックレストが、車両の進行方向に対し車幅方向外側の斜め前方へ向けて傾斜していることを特徴とする車両のシート構造である。」 イ.「【0039】 以上の説明から明らかな如く、図8に示すように、車両10は、前部シート30に運転者M1が座り、後部シート40に左右の後部乗員M2,M2が座って、走行することができる。各後部乗員M2,M2は、体を少し斜め前方へ傾けて後部シート40に座り、両足を前部シート30の側方へ伸して、フロア64に置くようにすればよい。」 上記の記載事項を総合すると、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「運転者が座る前部シートの後方に、後部乗員が座る左右の着座部を有した幅広の後部シートを設け、 前部シート30に運転者M1が座り、後部シート40に左右の後部乗員M2,M2が体を少し斜め前方へ傾けて座り、両足を前部シート30の側方へ伸して、フロア64に置くように座る、車両のシート構造。」 (3)同じく原査定に係る拒絶理由で引用された、本件出願の優先日前の平成11年2月16日に頒布された刊行物である特開平11-42140号公報(以下「引用例3」という。)には、図面と共に次の事項が記載されている。 ア.「【0019】 【発明の実施の形態】以下、図面に基づき本発明を代表する実施の形態を説明する。図1?図13は本発明の一の実施の形態を示している。図13に示すように、腰掛け10は、例えば、鉄道車両に装備される三人掛け座席装置6を構成するものであり、床面Fに据え付けられる台座7上に方向転換可能に支持される。 【0020】腰掛け10は、座ブトン20とその後端より立ち上がる背ズリ30とを備える。背ズリ30は、座ブトン20の後端に図示省略したリクライニング機構を介して、何段階かまたは無段階に角度調整可能に支持されている。後述するが本発明では、背ズリ30が座ブトン20に対して110度の角度で支持されることを特に意図している。」 イ.「【0022】また、座ブトン20は、着座者の座骨結節点Pから大腿に沿う接線Aが水平となす角度を10度に設定してある。ここで10度という数値は、座ブトン20を支持角度、座ブトン20の着座面の傾斜等を考慮して設定される。以上のような座ブトン20は、具体的には図2に示す寸法に形成される。図2中の座標における原点Oは、座ブトン20の上部最前端Nを通る鉛直線が床面Fに交叉する点である。なお、座標の単位はmmとする。」 ウ.「【0039】なお、本発明に係る腰掛けは、図示した実施の形態に限定されるものではなく、例えば、自動車用のシートや休息用の椅子等にも適用してもよい。」 エ.図2には、床面Fから座ブトン20の上部最前端Nまでの距離が430mmであることが示されている。 オ.図1から、腰掛け10に座った着座者の足は床面Fに置かれ、着座者の下肢は、床面Fに対して、ほぼ鉛直に近い状態であることが看取できる。 上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。 「座ブトン20とその後端より立ち上がる背ズリ30とを備え、前記座ブトン(20)は、着座者の座骨結節点(P)から大腿に沿う接線(A)が水平となす角度を10度に設定し、背ズリ30が座ブトン20に対して110度の角度で支持されると共に、床面Fから座ブトン20の上部最前端Nまでの距離が430mmであり、着座者の下肢は、床面Fに対して、ほぼ鉛直に近い状態となる、自動車用のシート。」 3.対比 本願補正発明と引用発明1とを対比する。 後者の「ドライバーズシート」は、その構造及び機能等からみて、前者の「運転手用シート」に相当し、以下同様に、「後部パッセンジャーシート」は「後方乗客用シート」に、それぞれ相当する。 また、後者の「シート構成」は、運転手用シート及び後部パッセンジャーシートの配置や構造を特定しており、この点において前者の「座席装置」と変わるものではないから、前者の「座席装置」に相当する。 また、後者において、「横方向にほぼ整列して」としているのは「横方向に整列された」ことを意味しており、「ほぼ中央かつ前記2個の後部パッセンジャーシートの前方に配置した」としているのは「中央にかつ後方乗客用シートの前方に配置された」ことを意味しているといえる。 また、後者で「前方のドライバーズシートを各後部パッセンジャーシートの前部よりも後方に突出させて一部にオーバーラップする」としているのは、前者の「運転手用シートは、後方乗客用シートのそれぞれの一部に対して前方側に位置しているとともに、後方乗客が前記後方乗客用シートに着席した際に後方乗客の脚の前端を超えて後方に位置して」いることと、「乗員の足は、後方乗客用シートの前方側においては運転手用シートの両サイド」に配置されることを意味しているといえる。 また、後者のシートも「シート」(座席)である以上は、前者と同様に、「シートベースの上面は、乗員を支持するためのもの」であることは明らかであり、後者において、「スポーツカーなどの車両のシート構成」に関し、「このオーバーラップする構成により、車両のキャビンを比較的狭くすることができ、コンパクトでありながら、快適であり、かつアクセス性のよいパッセンジャーキャビンを得ることができ、また、このシート構成によれば、シートが占める全体幅及び全体長さを、できるだけ小さく抑えることができる」としているところから、後者も前者と同様に、「自動車用のコンパクトな」座席装置であるものといえる。 したがって、両者は、 「自動車用のコンパクトな座席装置であって、 前記座席装置は、横方向に整列された2つの後方乗客用シートと、中央にかつ前記後方乗客用シートの前方に配置された運転手用シートと、を具備してなる少なくとも3つのシートを有しており、 前記運転手用シートは、前記後方乗客用シートのそれぞれの一部に対して前方側に位置しているとともに、後方乗客が前記後方乗客用シートに着席した際に後方乗客の脚の前端を超えて後方に位置しており、 前記シートのそれぞれが、乗員を座らせるように構成されており、前記シートのそれぞれのシートベースの上面は、乗員を支持するためのものであって 乗員の足は、前記後方乗客用シートの前方側においては前記運転手用シートの両サイドにおいて配置される、座席装置。」 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] 本願補正発明では、乗員の足は、後方乗客用シートの前方側においては運転手用シートの両サイドにおいて「フロアスペース上に」配置されるのに対し、引用発明1は、その点につき、明らかでない点。 [相違点2] 本願補正発明では、シートのそれぞれが、「アップライトポジションで」乗員を座らせるよう構成されており、「前記シートのそれぞれのシートバックは、30°以下の角度で垂直方向に対して傾斜しており、」「後部乗客の着座高さ(D3)が、前記シートに隣接して設けられた水平なフロアスペースの上方において400mm?500mmという距離とされ、」「乗員の足が前記フロアスペース上に配置されたときには、乗員の下肢が、鉛直方向に対して30°以下の角度を形成することができる」のに対し、引用発明1では、シートのそれぞれが、乗員を座らせるように構成されてはいるが、シートの態様及びシートに座る乗員の姿勢と、後部乗客の着座高さについての詳細な言及がない点。 4.判断 上記の相違点について検討する。 (1)相違点1について 引用発明2の「(後部乗員Mの)両足」は、その構造及び機能等からみて、本願補正発明の「乗員の足」に相当し、以下同様に、「後部シート40」は「後方乗客用シート」に、「前部シート30」は「運転手用シート」に、「フロア64」は「フロアスペース」に、「シート構造」は「座席装置」に、それぞれ相当する。 してみれば、引用発明2には、上記相違点1に係る本願補正発明の発明特定事項が開示されている。 そして、後方乗員の足をフロア上に配置することは、通常の態様であるから、引用発明1に引用発明2を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって,引用発明1に引用発明2を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項といえる。 (2)相違点2について 引用発明3の「座ブトン20」は、その構造及び機能等からみて、本願補正発明の「シートベース」に相当し、以下同様に、「背ズリ30」は「シートバック」に、「床面F」は「フロアスペース」に、「着座者」は「乗員」に、それぞれ相当する。 また、引用発明3で、「座ブトン(20)は、着座者の座骨結節点(P)から大腿に沿う接線(A)が水平となす角度を10度に設定し、背ズリ30が座ブトン20に対して110度の角度で支持される」としていることは、背ズリ30(シートバック)が約30°の角度で垂直方向に対して傾斜していることを意味している。 また、引用発明3は、上記背ズリ30(シートバック)の角度と共に、着座高さが、床面F(シートに隣接して設けられた水平なフロアスペース)の上方において430mmの距離とされ、着座者(乗員)の足が前記床面F(フロアスペース)上に配置されたときには、着座者の下肢が鉛直方向に近い、つまり、鉛直方向に対して30°以下の角度を形成することができるものである。 以上を踏まえれば、引用発明3のシートは、「アップライトポジションで」着座者(乗員)を座らせるよう構成されているといえる。 してみれば、引用発明3には、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項が開示されている。 そして、引用発明3のようなアップライト型の座席は、乗員が立ち気味にまっすぐな姿勢(アップライト)で座るために、一人あたりの占有面積が小さくて済むと共に、前後シートの間隔を短くしても足もとスペースに無理が生じにくいとされているものであり、引用発明1は、「シートが占める全体幅及び全体長さを、できるだけ小さく抑え」るものであるから、引用発明1に引用発明3を適用することは、当業者が容易に想到し得るものである。 したがって,引用発明1に引用発明3を適用して、上記相違点2に係る本願補正発明の発明特定事項とすることは、当業者が容易に想到し得る程度の事項といえる。 (3)本願補正発明の発明特定事項の全体によって奏される効果も、引用発明1?3から当業者が予測し得る範囲内のものといえる。 (4)小括 よって、本願補正発明は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 5.むすび 以上のとおりであって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3.本願の発明について 1.本願の発明 本件補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成27年6月17日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 車両用のコンパクトな座席装置であって、 前記座席装置は、横方向に整列された2つの後方乗客用シートと、中央にかつ前記後方乗客用シートの前方に配置された運転手用シートと、を具備してなる少なくとも3つのシートを有しており、 前記運転手用シートは、前記後方乗客用シートのそれぞれの一部に対して前方側に位置しているとともに、後方乗客が前記後方乗客用シートに着席した際に後方乗客の脚の前端を超えて後方に位置しており、 前記シートのそれぞれが、アップライトポジションで乗員を座らせるよう構成されており、前記シートのそれぞれのシートバックは、30°以下の角度で垂直方向に対して傾斜しており、前記シートのそれぞれのシートベースの上面は、乗員を支持するためのものであって、前記シートに隣接して設けられた水平なフロアスペースの上方において400mm?500mmだけ離間されており、 乗員の足は、前記後方乗客用シートの前方側においては前記運転手用シートの両サイドにおいて前記フロアスペース上に配置され、 乗員の足が前記フロアスペース上に配置されたときには、乗員の下肢が、鉛直方向に対して30°以下の角度を形成することができることを特徴とする座席装置。」 2.引用例 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物及びその記載内容、並びに引用発明は、上記「第2.2.引用例」に記載したとおりである。 3.対比・判断 本願発明は、上記「第2.1.本件補正後の本願の発明」で検討した、本願補正発明に対して、座席装置を設ける対象に関し、「自動車」との限定を省いて「車両」とし、水平なフロアスペースからの「400mm?500mm」という距離が、「後部乗客の着座高さ(D3)」に係るものであるという限定を省いたものに相当する。 そうすると、本願発明を特定する事項の全てを含み、さらに限定したものである本願補正発明が、上記の「第2.3.対比」及び「第2.4.判断」に記載したとおり、引用発明1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明1ないし3に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 4.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1ないし3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-06 |
結審通知日 | 2016-09-12 |
審決日 | 2016-09-26 |
出願番号 | 特願2014-88966(P2014-88966) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B60N)
P 1 8・ 121- Z (B60N) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 永安 真 |
特許庁審判長 |
吉村 尚 |
特許庁審判官 |
畑井 順一 黒瀬 雅一 |
発明の名称 | コンパクトな座席装置 |
代理人 | 実広 信哉 |
代理人 | 村山 靖彦 |