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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A23L
管理番号 1324632
審判番号 不服2014-10298  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-06-03 
確定日 2017-02-08 
事件の表示 特願2010-545272「特注飲料製品の作製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成21年 8月13日国際公開、WO2009/100123、平成23年 4月21日国内公表、特表2011-512126〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2009年2月4日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年2月4日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする出願であって、平成26年2月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月3日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成28年1月6日付けで拒絶理由が通知され、同年6月15日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成28年6月15日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし12に記載された事項により特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりのものである。
「特注飲料製品を作製する方法であって、
飲料製品の生産に適した充填システムを設ける工程であって、前記充填システムが、複数の容器を移動させる連続したコンベヤと、前記複数の容器が複数のノズルの近傍を通過する際に複数の微量投入成分を前記容器へ分注する固定された複数のノズルと、を含む、工程と、
前記複数の容器が前記コンベヤを下って移動する際に読み取り器によって前記複数の容器から情報を読み取る工程であって、前記複数の容器は各々、前記複数の容器の各々内に分注する対象について決定するために前記読み取り器によって読み取り可能な固有の識別子を含む、工程と、
特注飲料製品に関する注文を受ける工程であって、前記注文が前記特注飲料製品の少なくとも飲料調合を指示しており、前記飲料調合が前記固有の識別子に関連付けられる、特注飲料製品に関する注文を受ける工程と、
前記読み取り器からの情報に基づいて前記充填システムに指示して前記特注飲料製品を生産する工程であって、前記充填システムは、前記複数の容器が前記複数のノズルの近傍を通過する際に前記複数の微量投入成分を前記複数のノズルを介して前記容器内に別々に投与して前記容器の中で前記微量投入成分を混合することによって、先に生産した飲料製品からの成分による前記特注飲料製品の汚染を減らす処理を行うことなく特注飲料製品を生産する、工程と、を含む、方法。」

第3 引用文献
1.当審の拒絶の理由に引用された特開2005-350096号公報(以下「引用文献1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(「・・・」は記載の省略を意味し、下線は当審による。以下同様。)。

「【0001】
この発明は、例えばシャンプー、トリートメント、リンス、洗浄剤、化粧水、香水等の溶液をオーダーメイドで製造する方法及び装置に関し、さらに詳しくは、アレルギー(アトピーを含む)等の個人の体質に適合又は要望、好みに応じた個別化溶液を個別に製造することができる個別化溶液の製造方法及びその製造システムに関する。」

「【0007】
この発明は、異なる成分を有する複数の溶液を各溶液貯蔵部に個別に貯蔵しておき、上記複数の溶液の中から選択した個人に適合する成分の溶液の識別情報及び充填量情報と、該溶液を充填する充填容器の識別情報とを情報入力手段で個人別に入力し、該各情報を関連付けて情報記憶手段に記憶すると共に、上記溶液が充填される充填容器を、上記各溶液貯蔵部に貯蔵された溶液を充填する充填位置に容器供給手段で供給し、上記充填位置に供給される充填容器の識別情報を情報読取り手段で読取り、その読取った充填容器の識別情報に基づいて、上記情報記憶手段に記憶された指定の溶液を充填する充填容器であるか否かを充填制御手段で判定し、上記指定の溶液を充填する充填容器であると判定されたとき、該指定の溶液を充填する充填位置の上記充填手段の駆動を上記充填制御手段で制御して、予め指定した複数の溶液を所定量だけ充填容器に充填して個別化溶液を製造する個別化溶液の製造方法であることを特徴とする。」

「【0023】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
【0024】
図面は、個人に適合した成分の個別化溶液を個別に製造する製造方法及びその製造システムを示し、図1に於いて、この個別化溶液を製造する製造システム1は、異なる成分を有する複数の溶液Aa?Afを貯蔵する溶液貯蔵部2a?2fと、その溶液Aa?Afを充填する溶液別の各充填位置に充填容器Bを供給する供給コンベア3と、各充填位置に供給される充填容器Bに溶液Aa?Afを充填する充填装置4…と、充填容器Bの識別情報と、個人の体質に適合又は要望、好みに応じた成分の溶液Aa?Afの識別情報と、その溶液Aa?Afの充填量情報とを任意に入力する情報入力装置5と、情報入力装置5で入力される各情報を関連付けて記憶する情報記憶装置6と、各充填位置に供給される充填容器Bの識別情報を読取る情報読取り装置7と、情報読取り装置7で読取った充填容器Bの識別情報に基づいて、情報記憶装置6に記憶された溶液Aa?Afを充填する充填装置4…の駆動を制御する充填制御装置8と、溶液Aa?Afの充填に関連する情報を表示する表示装置9と、記録媒体Cに記録された溶液Aa?Afの充填に関連する情報を読取る情報読取り装置10とで構成される。」

「【0026】
前記各溶液貯蔵部2a?2fは、供給コンベア3上に設定した溶液別の各充填位置上部(又は側部や下部)に独立して設けられ、異なる成分を有する複数の溶液Aa?Afを溶液別に独立して所定量貯蔵している。・・・つまり、異なる成分の溶液Aa?Afを溶液別に独立して各溶液貯蔵部2a?2fに貯蔵しておくので、個人用のシャンプーを小ロット単位で製造する場合、溶液貯蔵部2a?2fに貯蔵された溶液Aa?Afを入れ替えるか、溶液貯蔵部2a?2f及びノズル4a、ポンプ4b、バルブ4c、供給路4dに残留する溶液Aa?Afを洗浄除去するような手間及び作業が省け、個人の体質に不適合な成分の溶液Aa?Afが混入する心配がなく、それが原因でアレルギー症状(アトピーを含む)を起こすのを防止することができる。」

「【0030】
上記供給コンベア3は、後述する充填装置4の充填動作と略同期又は略連動して、1つ又は複数の充填容器Bを搬送路上に設定した溶液別の各充填位置に間欠的又は連続的に搬送する。
【0031】
且つ、充填装置4は、予め指定した溶液Aa?Afを充填する充填位置に充填容器Bが搬送又は停止されたとき、充填制御装置8に記憶された溶液Aa?Afの充填情報に基づいて、指定の溶液Aa?Afが充填された溶液貯蔵部2a?2fのポンプ4b及びバルブ4cを駆動し、その溶液貯蔵部2a?2fに貯蔵された指定の溶液Aa?Afをノズル4aから吐出して、個人別の充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填する。一方、指定から外した1つ又は複数の溶液Aa?Afを充填しない場合、その溶液Aa?Afと対応する充填位置の充填装置4を駆動せず、停止又は待機させる。」

「【0036】
且つ、情報読取り装置7は、供給コンベア3上に設定した溶液別の各充填位置に搬送される充填容器Bに付設した識別情報又は充填容器Bと対応して移動する識別情報を読取り可能な箇所に設けられ、各充填位置に搬送される充填容器Bの識別情報を個々に読取り、その識別情報を充填制御装置8に出力する。」

「【0044】
図示実施例は上記の如く構成するものにして、以下、個人に適合した成分の個別化溶液Aを製造システム1で個別に適量製造する方法を説明する。
【0045】
先ず、個人の体質に適合又は要望、好みに応じた成分の個別化溶液Aを製造するのに必要な複数の溶液Aa?Afを溶液貯蔵部2a?2fに予め貯蔵しておき、個別化溶液Aを製造開始するまえに、個人の体質に適合又は要望、好みに応じた成分の溶液Aa?Afを予め選択又は指定して、個人別の充填容器Bの識別情報と、予め選択又は指定した溶液Aa?Afの識別情報と、その選択又は指定した溶液Aa?Afの充填量情報とを情報入力装置5で個人別に入力すると共に、その各情報を関連付けて充填制御装置8の情報記憶装置6に記憶しておく。
・・・
【0049】
次に、図1に示すように、個人別に使用される充填容器Bを供給コンベア3上に載置すると共に、その充填容器Bを開口部が上向きとなる姿勢に起立したまま1列に整列して溶液別の各充填位置に順番に間欠搬送又は連続搬送する。
【0050】
次に、各充填位置に搬送される充填容器Bの識別情報を情報読取り装置7で読取り、その読取った充填容器Bの識別情報と、情報記憶装置6に記憶された充填容器Bの識別情報とを充填制御装置8で比較照合して、各充填位置の溶液貯蔵部2a?2fに貯蔵された溶液Aa?Afと、識別情報と対応する指定の溶液Aa?Afとが同一であるか否かを充填制御装置8で判定する。
【0051】
予め指定した溶液Aaと同一であると判定された場合、溶液Aaを充填する充填位置に充填容器Bが搬送又は停止されたとき、その溶液Aaを充填する充填位置の充填装置4を独立して駆動させ、溶液貯蔵部2aに貯蔵された溶液Aaをノズル4aから吐出して、個人別の充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填する。このとき、溶液Aaの種類及び充填量が図2の表示装置9に表示され、溶液Aaの充填状況を目視確認することができる。
【0052】
続いて、溶液Ab?Afを充填する各充填位置に充填容器Bが搬送又は停止されたとき、上述と同様に、情報読取り装置7で読取った充填容器Bの識別情報に基づいて、各充填位置の溶液貯蔵部2b?2fに貯蔵された溶液Ab?Afと、識別情報と対応する指定の溶液Ab?Afとが同一であるか否かを判定する。
【0053】
予め指定した溶液Ab?Afと同一であると判定された場合、上記と同様にして、溶液Ab?Afを充填する充填位置の充填装置4…を独立して駆動させ、図6、図7にも示すように、個人別の充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填する。このとき、溶液Ab?Afの種類及び充填量が図2の表示装置9に表示され、溶液Aa?Afの充填状況を目視確認することができる。
【0054】
一方、個人の体質に適合又は要望、好みに応じた成分の溶液Aa,Ac,Ad,Afを充填し、それ以外の溶液Ab,Aeを充填しない場合、上記と同様にして、溶液Aa,Ac,Ad,Afの識別情報及び充填量情報を情報入力装置5で入力し、その各情報を関連付けて充填制御装置8の情報記憶装置6に個人別に記憶しておく。
【0055】
次に、図8に示すように、溶液Aa?Afを充填する各充填位置に充填容器Bが搬送又は停止されたとき、情報読取り装置7で読取った充填容器Bの識別情報に基づいて、各充填位置の溶液貯蔵部2a,2c,2d,2fに貯蔵された溶液Aa,Ac,Ad,Afと、識別情報と対応する指定の溶液Aa,Ac,Ad,Afとが同一であるか否かを充填制御装置8で判定する。
【0056】
予め指定した溶液Aa,Ac,Ad,Afと同一であると判定された場合、溶液Aa,Ac,Ad,Afを充填する各充填位置の充填装置4…を独立して駆動させ、溶液貯蔵部2a,2c,2d,2fに貯蔵された溶液Aa,Ac,Ad,Afを個人別の充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填する。
【0057】
一方、指定の溶液Aa,Ac,Ad,Afと異なる種類であると判定された場合、指定から外された溶液Ab,Aeを充填する充填位置に充填容器Bが搬送又は停止されても、その溶液Ab,Aeを充填する充填位置の充填装置4を駆動せず、停止又は待機させ、溶液貯蔵部2b,2eに貯蔵された指定外の溶液Ab,Aeを充填容器Bに充填することなく、図9、図10に示すように、予め指定した溶液Aa,Ac,Ad,Afを予め設定した充填量だけ充填容器Bに充填したまま閉塞工程(図示省略)に搬送し、その充填済みの充填容器Bの開口部を蓋部材(図示省略)で閉塞するので、個人の体質に適合又は要望、好みに応じた成分又は特性の個別化溶液Aを小ロット単位で個別に適量製造することができる。
【0058】
また、充填後又は使用時において、充填済みの充填容器を回転又は振動、振る等して、複数の溶液Ab?Afを略均一に混合して使用する。且つ、複数の溶液Ab?Afを混合するためには未充填空間が残るような状態に充填する。なお、溶液Ab,Aeの減量分は、溶液Aa,Ac,Ad,Afの充填量を増量するか、上記以外の溶液を補充する等して、充填容器Bが満了状態となるように充填する。」

【図1】


個別化溶液を製造する製造システム1が複数のノズル4aを含むことは図1の記載からも明らかであり、また、ノズル4aは、可動とする旨の記載がないことから、固定されたものと認められる。
そうすると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

「個人の要望、好みに応じた個別化溶液を個別に製造する個別化溶液の製造方法であって、
個別化溶液を製造する製造システム1は、溶液Aa?Afを充填する溶液別の各充填位置に充填容器Bを供給する供給コンベア3と、固定された複数のノズル4aを含み、
供給コンベア3は、複数の充填容器Bを搬送路上に設定した溶液別の各充填位置に連続的に搬送するものであり、
個人の要望、好みに応じた成分の溶液Aa?Afを予め選択又は指定して、個人別の充填容器Bの識別情報と、予め選択又は指定した溶液Aa?Afの識別情報と、その選択又は指定した溶液Aa?Afの充填量情報とを情報入力装置5で個人別に入力すると共に、その各情報を関連付けて充填制御装置8の情報記憶装置6に記憶しておく工程と、
個人別に使用される充填容器Bを供給コンベア3上に載置すると共に、その充填容器Bを開口部が上向きとなる姿勢に起立したまま1列に整列して溶液別の各充填位置に順番に連続搬送する工程と、
各充填位置に搬送される充填容器Bに付設した識別情報を情報読取り装置7で読取り、その読取った充填容器Bの識別情報と、情報記憶装置6に記憶された充填容器Bの識別情報とを充填制御装置8で比較照合して、各充填位置の溶液貯蔵部2a?2fに貯蔵された溶液Aa?Afと、識別情報と対応する指定の溶液Aa?Afとが同一であるか否かを充填制御装置8で判定する工程と、
予め指定した溶液Aa?Afと同一であると判定された場合、溶液Aa?Afを充填する充填位置に充填容器Bが搬送されたとき、その溶液Aa?Afを充填する充填位置の充填装置4を独立して駆動させ、溶液貯蔵部2aに貯蔵された溶液Aa?Afをノズル4aから吐出して、個人別の充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填する工程と、
を含む方法。」

2.当審の拒絶の理由に引用された米国特許公開第2002/0004749号明細書(以下「引用文献2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(当審による参考訳を付した。以下同様。)。

「[0006] The present invention relates to systems and methods of ordering and distributing food, and in particular to a customized food selection, ordering and distribution system and method.」(本発明は、食品の注文及び供給のためのシステム及び方法に関し、特に、カスタマイズされた食品の選択、注文及び供給のためのシステム及び方法に関する。)

「[0068] ・・・ In addition to cereals and snacks, examples of customized food products include any type of cereal-based or non-cereal based hot or cold beverages, including but not limited to energy beverages, nutraceutical beverages, teas or tea beverages (e.g., chai), blended beverages (e.g., coffee drinks, alcoholic drinks, etc.), juices and juice blends (i.e., juice/dairy, juice/soda, chilled fruit smoothies), grain-based beverages (i.e., soy milks, oat milks, nut milks, e.g., almond milk, etc.), further including grain/dairy, grain/juice, grain/dairy juice blends), dairy based (i.e., yogurt beverages, flavored milks, etc.), fermented beverages (i.e., dairy based, grain-based, e.g., beer, etc., with or without various pre- and pro-biotic components), ・・・ and so forth. 」(シリアルやスナックに加えて、カスタマイズされた食品の例として、あらゆるタイプのシリアルベース又は非シリアルベースの熱い又は冷たい飲物を含む。エネルギー飲料、栄養補助飲料、茶又は茶飲料(例えばチャイ)、ブレンド飲料(例えば、コーヒー飲料、アルコール飲料等)、ジュース及びジュースブレンド(すなわち、ジュース/乳、ジュース/ソーダ、冷えたフルーツスムージー)、穀物ベースの飲料(すなわち、豆乳、オートミルク、ナッツミルク、例えばアーモンドミルク等)、さらに、穀物/乳、穀物/ジュース、穀物/乳 ジュースブレンドを含む)、乳ベース(すなわち、ヨーグルト飲料、フレーバードミルク等)、発酵飲料(すなわち、乳ベース、穀物ベース、例えばビール等、種々のプレ又はプロバイオティクスコンポーネントを含むか含まないもの)、・・・ 等を含むが、これらに限定されない。)

3.当審の拒絶の理由に引用された米国特許第6607013号明細書(以下「引用文献3」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

「The present invention refers to a device for automatic preparation of mixed and non-mixed beverages, such as alcoholic-and non-alcoholic cocktails. 」(1欄5?7行)(本発明はアルコール入り及びノンアルコールのカクテルのような、混合及び非混合飲料を自動で調合するための装置に関する。)

「The device moreover makes it possible for the customer to be served a cocktail of his own choice, possibly according to a recipe entered by the customer himself, and for the customer to garnish the cocktail as he wishes.」(4欄56?59行)(更に、この装置は、おそらくは顧客自身が入力したレシピに従って、顧客に自分で選んだカクテルを提供すること、そして、顧客が望むようにカクテルを飾ることを可能とする。)

第4 対比
引用発明の「個別化溶液」は、個人の要望、好みに応じて製造されるものであるから、特注製品といえるので、引用発明の「個別化溶液の製造方法」と、本願発明の「特注飲料製品を作製する方法」は、「特注製品を作製する方法」の限りで一致する。
引用発明の「個別化溶液を製造する製造システム1」は、本願発明の「製品の生産に適した充填システム」に相当する。
引用発明の「充填容器B」は複数あるから、本願発明の「複数の容器」に相当し、引用発明の「供給コンベア3」は、複数の充填容器Bを連続的に搬送するものであるから、本願発明の「複数の容器を移動させる連続したコンベヤ」に相当する。
引用発明の「溶液Aa?Af」は、充填容器Bに充填される成分であるから、本願発明の「投入成分」に相当し、引用発明の「ノズル4a」は、溶液Aa?Afを充填する充填位置に充填容器Bが搬送されたとき、溶液Aa?Afをノズル4aから吐出して、充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填するものであるから、本願発明の「複数の容器が複数のノズルの近傍を通過する際に複数の」「投入成分を前記容器へ分注する固定された複数のノズル」に相当する。
引用発明の「各充填位置に搬送される充填容器Bに付設した識別情報を情報読取り装置7で読取」る工程は、本願発明の「前記複数の容器が前記コンベヤを下って移動する際に読み取り器によって前記複数の容器から情報を読み取る工程」に相当する。
引用発明の「充填容器Bに付設した識別情報」は、情報読取り装置7で読取ることのできる情報であって、溶液Aa?Afの充填容器Bへの充填を制御するために用いられるから、本願発明の「前記複数の容器の各々内に分注する対象について決定するために前記読み取り器によって読み取り可能な固有の識別子」に相当し、引用発明の「充填容器B」に「識別情報」が付設されていることは、本願発明の「前記複数の容器は各々・・・固有の識別子を含む」に相当する。
引用発明の「個人の要望、好みに応じた成分の溶液Aa?Afを予め選択又は指定して、個人別の充填容器Bの識別情報と、予め選択又は指定した溶液Aa?Afの識別情報と、その選択又は指定した溶液Aa?Afの充填量情報とを情報入力装置5で個人別に入力すると共に、その各情報を関連付けて充填制御装置8の情報記憶装置6に記憶しておく工程」と、本願発明の「特注飲料製品に関する注文を受ける工程であって、前記注文が前記特注飲料製品の少なくとも飲料調合を指示しており、前記飲料調合が前記固有の識別子に関連付けられる、特注飲料製品に関する注文を受ける工程」は、「特注製品に関する注文を受ける工程であって、前記注文が前記特注製品の少なくとも調合を指示しており、前記調合が前記固有の識別子に関連付けられる、特注製品に関する注文を受ける工程」の限りで一致する。
引用発明の「各充填位置の溶液貯蔵部2a?2fに貯蔵された溶液Aa?Afと、識別情報と対応する指定の溶液Aa?Afとが同一であるか否かを充填制御装置8で判定」し、「同一であると判定された場合、溶液Aa?Afを充填する充填位置に充填容器Bが搬送されたとき、その溶液Aa?Afを充填する充填位置の充填装置4を独立して駆動させ、溶液貯蔵部2aに貯蔵された溶液Aa?Afをノズル4aから吐出して、個人別の充填容器Bに予め設定した充填量だけ充填する工程」は、情報読取り装置7で読取った識別情報に基づいて特注製品を生産する工程といえ、充填された溶液Aa?Afが充填容器Bの中で混合することは明らかであり、残留溶液による汚染を減らすための洗浄等の処理も不要である(【0026】)ことを踏まえると、本願発明の「前記読み取り器からの情報に基づいて前記充填システムに指示して前記特注飲料製品を生産する工程であって、前記充填システムは、前記複数の容器が前記複数のノズルの近傍を通過する際に前記複数の微量投入成分を前記複数のノズルを介して前記容器内に別々に投与して前記容器の中で前記微量投入成分を混合することによって、先に生産した飲料製品からの成分による前記特注飲料製品の汚染を減らす処理を行うことなく特注飲料製品を生産する、工程」とは、「前記読み取り器からの情報に基づいて前記充填システムに指示して前記特注製品を生産する工程であって、前記充填システムは、前記複数の容器が前記複数のノズルの近傍を通過する際に前記複数の投入成分を前記複数のノズルを介して前記容器内に別々に投与して前記容器の中で前記投入成分を混合することによって、先に生産した製品からの成分による前記特注製品の汚染を減らす処理を行うことなく特注製品を生産する、工程」の限りで一致する。
よって、本願発明と引用発明との一致点、相違点は以下のとおりである。

[一致点]
「特注製品を作製する方法であって、
製品の生産に適した充填システムを設ける工程であって、前記充填システムが、複数の容器を移動させる連続したコンベヤと、前記複数の容器が複数のノズルの近傍を通過する際に複数の投入成分を前記容器へ分注する固定された複数のノズルと、を含む、工程と、
前記複数の容器が前記コンベヤを下って移動する際に読み取り器によって前記複数の容器から情報を読み取る工程であって、前記複数の容器は各々、前記複数の容器の各々内に分注する対象について決定するために前記読み取り器によって読み取り可能な固有の識別子を含む、工程と、
特注製品に関する注文を受ける工程であって、前記注文が前記特注製品の少なくとも調合を指示しており、前記調合が前記固有の識別子に関連付けられる、特注製品に関する注文を受ける工程と、
前記読み取り器からの情報に基づいて前記充填システムに指示して前記特注製品を生産する工程であって、前記充填システムは、前記複数の容器が前記複数のノズルの近傍を通過する際に前記複数の投入成分を前記複数のノズルを介して前記容器内に別々に投与して前記容器の中で前記投入成分を混合することによって、先に生産した製品からの成分による前記特注製品の汚染を減らす処理を行うことなく特注製品を生産する、工程と、を含む、方法。」

[相違点]
本願発明は、作製するのが「特注飲料製品」であって、投入成分が「微量投入成分」であるのに対し、引用発明は、作製するのが「個別化溶液」であって、投入成分が「微量」とは特定されていない点。

第5 判断
上記引用文献2、3の記載事項に加え、国際公開第2007/136904号(特表2009-528960号公報参照)には、「The beverage dispenser preferably can give the consumer multiple beverage options such that the consumer has the ability to customize his or her beverage as desired.」(2頁6?8行)(飲料ディスペンサは、消費者が好みに応じて飲料をカスタマイズできるように、消費者に複数の飲料オプションを提供できることが好ましい。)と記載されており、これらによれば、飲料製品の分野において、個人の好みに応じた製品を提供することは、周知の課題であったといえる。
また、上記国際公開第2007/136904号に、「The micro-ingredients may have a reconstitution ratio ranging from about ten to one (10:1), twenty to one (20:1), thirty to one (30:1), or higher. ・・・ Examples of micro-ingredients include natural and artificial flavors; flavor additives; natural and artificial colors; artificial sweeteners (high potency or otherwise); ・・・」(4頁20?25行)(微量成分は、約10:1、20:1、30:1又はそれ以上の範囲の再構成比を有することができる。・・・微量成分の例としては、天然及び人工フレーバー、フレーバー添加物、天然及び人工着色料、人工甘味料(高甘味度など)、・・・を含む。)と記載されているように、飲料製品に各種フレーバーや着色料等の添加物を微量成分として添加することは周知技術であった。
そして、引用文献1には、個別化溶液について、「例えばシャンプー、トリートメント、リンス、洗浄剤、化粧水、香水等の溶液」(【0001】)と記載され、飲料製品については記載されていないものの、飲料製品も「溶液」の範疇のものであり、飲料製品の製造方法として、引用発明のようにコンベアで容器を搬送しつつ充填する方法は周知であることから、上記のとおり、個人の好みに応じた飲料製品を提供することが周知の課題であったことを踏まえると、引用発明の「個別化溶液」を個人の好みに応じた飲料製品、すなわち、「特注飲料製品」とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。また、それに伴って、投入成分を「微量」投入成分とすることは、上記のとおり、飲料に微量成分を添加することが周知であったことから、普通に想定される設計事項である。
よって、上記相違点に係る本願発明の構成は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に想到し得たものである。
そして、本願発明が、引用発明及び周知技術から予測できない格別顕著な効果を奏するものとは認められない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-14 
結審通知日 2016-09-15 
審決日 2016-09-28 
出願番号 特願2010-545272(P2010-545272)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A23L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北村 弘樹小石 真弓佐久 敬  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 紀本 孝
佐々木 正章
発明の名称 特注飲料製品の作製方法  
代理人 稲葉 良幸  
代理人 大貫 敏史  

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