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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 F16D |
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管理番号 | 1324684 |
審判番号 | 不服2016-8694 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-06-10 |
確定日 | 2017-02-28 |
事件の表示 | 特願2011-266611「分割型ゴム継手」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月17日出願公開、特開2013-119866、請求項の数(2)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1.手続の経緯 本願は、平成23年12月6日の出願であって、平成27年8月6日付けで拒絶理由が通知され、同年10月9日に意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年3月10日付け(発送日:同年3月15日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年6月10日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。 第2.本願発明 本願の請求項1及び2に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」及び「本願発明2」という。)は、それぞれ平成27年10月9日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】 複数の分割体を周方向に配列してなり、各分割体が、原動軸及び従動軸うちの一方に設けられたリング状の外側取付部材と、原動軸及び従動軸のうちの他方に設けられて前記外側取付部材の径方向内側に位置する内側取付部材と、の間に介装される分割型ゴム継手であって、 前記分割体は、外側取付部材に取り付けられる外周側金具と、内側取付部材に取り付けられる内周側金具との間にゴム体を設けてなり、 前記ゴム体は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定され、継手中心軸と直交する横断面における周方向で両端縁のうち、径方向で中央部に、周方向で内向きに凸の大R部が形成されると共に、径方向で両端部に、周方向で外向きに凸の小R部が形成されたことを特徴とする分割型ゴム継手。 【請求項2】 前記ゴム体は、前記縦断面における継手中心軸方向で両端縁が内向きに凸の曲線状に設定されたことを特徴とする請求項1に記載の分割型ゴム継手。」 第3.原査定の理由の概要 本願発明1及び2は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:実願昭51-57201号(実開昭52-26041号)のマイクロフィルム 刊行物2:特開昭62-274117号公報 刊行物3:特表平10-502157号公報 刊行物4:特開2000-161427号公報 1.本願発明1について:刊行物1,2,4 刊行物1又は2には、複数の分割体を周方向に配列してなり、各分割体が、原動軸及び従動軸のうちの一方に設けられたリング状の外側取付部材と、原動軸及び従動軸のうちの他方に設けられて外側取付部材の径方向内側に位置する内側取付部材と、の間に介装される分割型ゴム継手であって、分割体は、外側取付部材に取り付けられる外周側金具と、内側取付部材に取り付けられる内周側金具との間にゴム体を設けてなり、該ゴム体は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定された分割型ゴム継手が記載され、また、ゴム体は、継手中心軸と直交する横断面における周方向で両端縁が内向きに凸の曲線状に設定されたことが記載されている。 刊行物4には、ゴム体において、応力集中を緩和するために、内向きに凸のR部に連続して、端部に、外向きに凸のR部が形成されたことが記載されている。 刊行物1又は2に記載された分割型ゴム継手においても、応力集中が生じ得ることは、当業者が容易に予測し得ることであるから、刊行物1又は2に記載された分割型ゴム継手に対し、応力集中を緩和するために、刊行物4に記載された事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。 そして、その際に、各R部の大小関係をどのように設定するかは、当業者が適宜決定することに過ぎない。 2.本願発明2について:刊行物1ないし4 刊行物2には、ゴム体は、縦断面における継手中心軸方向で端縁が内向きに凸の曲線状に設定されたことが記載されている。 刊行物3には、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定されたゴム体を有するゴム継手において、ゴム体は、縦断面における継手中心軸方向で両端縁が内向きに凸の曲線状に設定されたことが記載されている。 刊行物1又は2と刊行物3とは、ともに、ゴム継手に関するものであるから、刊行物1又は2に記載された分割型ゴム継手に対し、縦断面における継手中心軸方向での両端縁の形状として、刊行物3に記載された事項を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。 第4.刊行物の記載について 1.刊行物1(実願昭51-57201号(実開昭52-26041号)のマイクロフィルム) 原査定において引用された刊行物1には、「防振装置」に関し、次の事項が図面(特に第1図ないし第3図)と共に記載されている。 (1)「この考案は一般的に言って防振軸継手の改良に関し、さらに詳言すれば、デイーゼル機関のように捩り振動を伴なう駆動軸系に於て、振動的角変位を抑制して被動軸系に回転動力を伝達させるものであって、バネ定数が低く、高トルクを伝達でき、かつ分解組立が簡単で軸方向のスペースもとらないコンパクトな防振装置を提供しようとするものである。」(1頁18行?2頁5行) (2)「この考案は、上記従来の欠点に鑑み、これを改良除去したもので、即ち、同芯的に配置された2つの伝動要素を半径方向の環状間隙部で弾性体により連結するに当り、この弾性体をテーパーを利用して半径方向に予圧縮させて介在させ得る簡単な構成を提供しようとするものである。」(4頁19行?5頁4行) (3)「第1図において、(1)は駆動軸、(2)はその軸端に同心状に固着した大径のフランジ形の伝動要素であって、この周縁部の突き合せ面に環状鍔部(2a)を軸方向に突設形成する。(3)は小径の継手フランジ形の伝動要素であって、これは駆動軸(1)と同心状に所定間隔で突き合せた被動軸(4)の軸端に固着し、この周縁部(3a)を環状鍔部(2a)内に同心状に嵌め合せ、その間に環状間隙(L)を構成する。」(5頁20行?6頁8行) (4)「防振ゴム(20)はゴム体(5)と取付具(6)(7)より形成されている。ゴム体(5)は横断面台形又は矩形に形成するのが好ましいが、この考察の意図する所を脱しない限り他の形状のものでもよい。第2図に示す様に通常扇形に形成し、環状間隔(L)内に数個環状に連続的に装填しうる分割形状にするのが望ましいが、これに限定されるものではない。各ゴム体(5)の外周面と内周面とに内径面(2b)と外径面(3b)の彎曲形状及び周方向幅と略合致する各取付具(6)(7)をそれぞれ接着する。」(6頁15行?7頁5行) (5)刊行物1の第1図及び第2図の記載からみて、伝動要素(2)は、リング状であることが看取できる。 (6)刊行物1の第1図及び第3図の記載からみて、ゴム体(5)は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状であることが看取できる。 (7)上記(4)の「ゴム体(5)は横断面台形又は矩形に形成するのが好ましいが、この考察の意図する所を脱しない限り他の形状のものでもよい。第2図に示す様に通常扇形に形成し、」との記載、及び刊行物1の第2図の記載からみて、ゴム体(5)は、継手中心軸と直交する横断面において、扇形であり、該扇形の径方向の両側縁は周方向内向きに凹状であることが看取できる。 上記記載事項及び認定事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 「複数の防振ゴム(20)を周方向に配列してなり、各防振ゴム(20)が、駆動軸(1)に設けられたリング状の伝動要素(2)と、被動軸(4)に設けられて前記伝動要素(2)の径方向内側に位置する伝動要素(3)と、の間に介装される防振装置であって、 前記防振ゴム(20)は、伝動要素(2)に取り付けられる取付具(6)と、伝動要素(3)に取り付けられる取付具(7)との間にゴム体(5)を設けてなり、 前記ゴム体(5)は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定され、継手中心軸と直交する横断面が扇形であり、該扇形の径方向の両側縁は周方向内向きに凹状である防振装置。」 2.刊行物2(特開昭62-274117号公報) 原査定において引用された刊行物2には、「高弾性的な軸継ぎ手」に関し、次の事項が図面(特に第1ないし3、5図)と共に記載されている。 (1)「2 【特許請求の範囲】 1.高弾性的な軸継ぎ手であつて、その両継ぎ手半部が、軸方向に互いに前後して配置された少なくとも2つのリング装置を介して互いに結合されており、両リング装置がゴム弾性的な材料から成る継ぎ手体から成り、継ぎ手体がほぼV字形の横断面を有しており、その斜めの端面側に、少なくとも一方の継ぎ手半部への固定のための円錐形の側リングが加硫固定されている形式のものにおいて、V字形横断面を有する継ぎ手体(5)から成る1つのリング装置(3)に、継ぎ手体(6)の相隣るリング装置(4)が配設されており、後者のリング装置(4)がゴム弾性的な部材(9)から成り、この部材がそれぞれその内周面(9a)及び外周面(9b)で円筒形のリング(10、11)に加硫固定されており、このリングの回転軸線が継ぎ手の回転軸線に合致していることを特徴とする高弾性的な軸継ぎ手。 2.一方の継ぎ手半部(1)を有する一方の円筒形のリング(10)、他方の継ぎ手半部を有する一方の円錐形の側リング(8)及び相隣る継ぎ手体に面したリング装置(11若しくは7)が金属製の環状の中間リング(13)を介して互いに結合されている特許請求の範囲第1項記載の軸継ぎ手。 3.円筒形のリング(10)が一方の継ぎ手半部(1)に結合されており、V字形の継ぎ手体(5)に自由端で加硫固定された円錐形の側リング(8)が半径方向外側の領域で他方の継ぎ手半部(2)に結合されている特許請求の範囲第2項記載の軸継ぎ手。 4.中間リング(13)に結合された円錐形の側リング(7)がその外縁で中間リング(13)に固定されており、かつその内縁(7a)で、一方の継ぎ手半部を形成する継ぎ手ハブ(1)に回転可能に支持されている特許請求の範囲第1項から第3項までのいずれか1項記載の軸継ぎ手。 5.他方の継ぎ手半部が、円錐形の側リング(8)の外縁に結合されたフランジ(2)によつて形成されている特許請求の範囲第4項記載の軸継ぎ手。 ・・・(中略)・・・ 10.継ぎ手体(5、6)の両方のリング装置(3、4)がそれぞれセグメントから構成されており、このセグメントが継ぎ手半部(1、2)若しくは環状の中間リング(13)にねじ固定されている特許請求の範囲第1項から第9項までのいずれか1項記載の軸継ぎ手。」(1頁左下欄4行-2頁右上欄12行) (2)「本発明は高弾性的な軸継ぎ手であって、その両継ぎ手半部が、軸方向に互いに前後して配置された少なくとも2つのリング装置を介して互いに結合されており、両リング装置がゴム弾性的な材料から成る継ぎ手体から成り、継ぎ手体がほぼV字形の横断面を有しており、その斜めの端面側に、少なくとも一方の継ぎ手半部への固定のための円錐形の側リングが加硫固定されている形式のものに関する。」(3頁右上欄10-18行) (3)「本発明の課題は、半径方向の回動性およびねじり弾性強さを有すると共に軸方向のずれの不利な現象を回避することのできる軸継ぎ手を提供することにある。」(3頁右下欄2-5行) (4)「実施例 第1図及び第2図には高弾性的な軸継ぎ手が示されており、その一方の継ぎ手半部はハブ1から成り、このハブ1は公知形式どおり例えば駆動される軸に回転不能に取り付けられる。ハブ1はこの目的のために、パスキーの挿入のための構20を備えている。 ハブ1はそのほぼ中央に外向きのフランジ21を備えており、このフランジ21は円筒形の内側のリング10の内向きのフランジ22に固定的にねじ結合されており、このリングにはゴム弾性的な部材9の内周面9aが加硫によって固定されており、この部材9は縦断面でみて半径方向外向きに細くなっており、かつその外周面9bで、同様に円筒形の外側のリング11に加硫によって固定されており、この外側のリング11はそのフランジ23で中間リング13にねじ固定されており、中間リング13の半径方向の幅はフランジ23の幅にほぼ同じである。 第2図から判るように、円筒形のリング10,11及びゴム弾性的な部材9は一体のリングとして形成されておらず、複数のセグメント9′,11′,10′から構成されており、これらセグメントは中間リング13及びハブ1のフランジ21との固定的な結合によって1つのリングを形成している。本実施例ではセグメント9′及びこれに所属するリングセグメント11′,10′のためにそれぞれ角90度にわたって延びる4つのセグメントが設けられている。 中間リング13の他方の側には、継ぎ手体5のV字形横断面を有するゴム弾性的な材料から成るリング装置3の円錐形の側リング7が結合されている。ゴム弾性的な継ぎ手体5の他方の端面側は円錐形の側リング8によって制限されており、側リング7,8とのゴム弾性的な材料の密な結合は、側リング7,8に切欠15を設け、この切欠を加硫による結合時にゴム弾性的な材料によって充填すれば一層良好となる。」(5頁左下欄10行?6頁左上欄7行) (5)「側リング8はその外周部で、第2の継ぎ手半部を形成するフランジ2にねじ固定されており、第2の継ぎ手半部はハブ1に対して図示しない形式でセンタリングされている。」(6頁右上欄2-5行) (6)「第5図に示す実施例では、ハブ1のフランジ21に円筒形のリング10の内向きのフランジ22がねじ固定されており、このリング10にゴム弾性的な部材が加硫固定されている。このゴム弾性的な部材の外側は別の円筒形のリング11に加硫固定されており、このリング11は中間リングに固定的に結合されるか、又はすでに述べたように、V字形の弾性的な継ぎ手体5が1側で加硫固定されている円錐形の側リング7の円錐形のセグメントの1つに直に固定されている。」(6頁右下欄12行-7頁左上欄2行) (7)上記(4)及び(5)から、軸継ぎ手の一方の継ぎ手半部となるハブ1が、駆動される軸に取り付けられ、継ぎ手体6、中間リング13、継ぎ手体5,及びフランジ2を経由して駆動力が伝達されるものと解されるので、第2の継ぎ手半部となるフランジ2は従動軸に取り付けられていると認められる。 (8)上記(4)の「この部材9は縦断面でみて半径方向外向きに細くなっており、」との記載、及び刊行物2の第1図の記載からみて、継ぎ手体6のゴム弾性的な部材9は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状であることが看取できる。 (9)刊行物2の第2図の記載からみて、継ぎ手体6のセグメント9’の継手中心軸と直交する横断面が扇形であり、該扇形の径方向の両側縁は周方向内側に凹状であることが看取できる。 上記記載事項及び認定事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物2には、次の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されている。 「複数の継ぎ手体6を周方向に配列してなり、各継ぎ手体6が、従動軸に取り付けられるフランジ2、継ぎ手体5、及び中間リング13と、駆動される軸に取り付けられるハブ1と、の間に介装される高弾性的な軸継ぎ手であって、 前記継ぎ手体6は、フランジ2、継ぎ手体5、及び中間リング13を介して取り付けられるリング11と、ハブ1に取り付けられるリング10との間にゴム弾性的な部材9を設けてなり、 前記ゴム弾性的な部材9は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定され、継手中心軸と直交する横断面が扇形であって、扇形の径方向の両側縁が周方向内側に凹状に形成される、高弾性的な軸継ぎ手。」 3.刊行物4(特開2000-161427号公報) 原査定において引用された刊行物4には、「フランジ一体型免震装置」に関し、図面(特に図1ないし3)と共に以下の記載がある。 (1)「【0001】 【発明の属する技術分野】この発明は、例えば、建物と基礎との間に装着される免震材や、橋桁と橋脚の間に装着される支承材等として使用される免震装置に関する。」 (2)「【0003】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記のような形状ではフランジ鋼板3に接着されるゴム層1’の外周部5は、フランジ鋼板3に近づくに従って肉厚が薄くなるため、いわゆるバリ(加硫時に金型の隙間に流入して硬化した不要なゴム部)が発生しやすく、しかも、ゴム層1’とその外周に生じるバリとの境界が見分けにくく、バリ取り作業が難しい。 【0004】そこで、この発明は上記の剪断変形時に積層体の上下両端のゴム層の外周部でフランジとの接着部への応力集中を緩和し、かつ、加硫成形後のバリが取りやすい形状を有するフランジ一体型免震装置を提供することを目的とする。」 (3)「【0014】図1に示すように、積層体の上下両端のゴム層1’の外周部5は、ゴム鋼板積層体17(図5)の外周面20より延出してその断面がフランジ鋼板3の外周方向(矢印xの方向)に至るに従って、上下方向(軸方向)の肉厚が漸次薄くなるように傾斜部4に成形されている。この傾斜部4は通常、図1のように凹状の円弧に成形され、この形状により外周部5に集中的に作用する剪断応力を免震装置の装置全体に分散して、この外周部5への応力集中は緩和される。また、傾斜部4に屈曲して連なりフランジ面16に連接される段差(部)21を形成することにより、加硫成型時に金型の隙間にゴムが流れ出してバリの生成を抑制し、またバリが生じても簡単に見分けられ、バリを容易に取り除くことができる。」 (4)「【0016】)さらに、他の実施形態は、図3に示すように、ゴム鋼板積層体からの延出部5の断面形状がフランジ鋼板3の外周方向(矢印xの方向)に至るに従って軸方向の肉厚が薄くなるところの凹状円弧18と、この凹状円弧18が水平となる位置に連なる外側に凸状の円弧を形成してフランジの接着面16に対して垂直をなしている。凹状円弧をなす傾斜部4に凸状円弧をなす段差部19を連なって設けているので、鋭角的な屈曲点がなくなり、免震装置に剪断応力を作用させたときに、よりなだらかに応力集中が緩和分散されとともに、バリの発生が防止され、またバリの取り除きが容易となる。」 第5.当審の判断 1.本願発明1について (1)刊行物1(引用発明1)を主引用例とする場合 ア.対比 本願発明1と引用発明1とを対比する。 (ア)引用発明1の「防振ゴム(20)」は、その機能・構造からみて、本願発明1の「分割体」に相当し、同様に、「駆動軸(1)」は「原動軸」に、「被動軸(4)」は「従動軸」に、「伝動要素(2)」は「外側取付部材」に、「伝動要素(3)」は「内側取付部材」に、「取付具(6)」は「外周側金具」に、「取付具(7)」は「内周側金具」に、それぞれ相当する。 (イ)引用発明1の「防振装置」は、デイーゼル機関のような駆動軸系に用いられる防振軸継手であり、また、防振ゴム(20)が分割されて構成されている(第4.1.(1)、刊行物1の第2図)から、「分割型ゴム継手」と言い換えることができる。 以上の点からみて、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点1及び相違点1を有すると認められる。 [一致点1] 「複数の分割体を周方向に配列してなり、各分割体が、原動軸及び従動軸のうちの一方に設けられたリング状の外側取付部材と、原動軸及び従動軸のうちの他方に設けられて前記外側取付部材の径方向内側に位置する内側取付部材と、の間に介装される分割型ゴム継手であって、 前記分割体は、外側取付部材に取り付けられる外周側金具と、内側取付部材に取り付けられる内周側金具との間にゴム体を設けてなり、 前記ゴム体は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定された分割型ゴム継手。」 [相違点1] ゴム体について、本願発明1では、「継手中心軸と直交する横断面における周方向で両端縁のうち、径方向で中央部に、周方向で内向きに凸の大R部が形成されると共に、径方向で両端部に、周方向で外向きに凸の小R部が形成された」ものであるのに対して、引用発明1では、継手中心軸と直交する横断面が扇形であり、該扇形の径方向の両側縁は周方向内向きに凹状である点。 イ.判断 相違点1に係る本願発明1の構成に関して、本願明細書には、「この構成によれば、外向きに凸の小R部と内向きに凸の大R部とを組み合わせるので、止着部の近傍に小R部を形成しつつ、ゴム体の横断面の両端縁を全体として内向きに凸の緩やかな曲線状に設定することができ、分割型ゴム継手の強度を低下させることなく、応力集中を効果的に緩和することができる。つまり、ゴム体の横断面の両端縁は、継手周方向の力によって生じる応力が大きくなる部位であり、止着部の近傍の応力集中も特に顕著になりやすいため、その止着部の近傍に、専用の小R部を設けるのが好ましい。ただ、内向きに凸の大R部を形成した上で、その両端に、内向きに凸の小R部を滑らかに連続させるには、ゴム体のうちの径方向で中央部を継手周方向に狭くする必要があり、分割型ゴム継手の強度を低下させるおそれがある。これに対して、小R部を外向きに凸に設定して、内向きに凸の大R部の両端に滑らかに連続させることにより、ゴム体の中央部を継手周方向に狭くしすぎることなく、止着部の近傍に小R部を形成して、応力集中を効果的に緩和することができる。」(段落【0018】ないし【0020】)との作用効果が記載されている。 すなわち、本願発明1は、「複数の分割体を周方向に配列してなり、各分割体が、原動軸及び従動軸うちの一方に設けられたリング状の外側取付部材と、原動軸及び従動軸のうちの他方に設けられて前記外側取付部材の径方向内側に位置する内側取付部材と、の間に介装される分割型ゴム継手」を前提として、相違点1に係る本願発明1の構成により、分割型ゴム継手の強度を低下させることなく応力集中を効果的に緩和したものであると認められる。 一方、刊行物1の記載(第4.1.(1)及び(2))によれば、引用発明1は、防振軸継手の改良に関し、デイーゼル機関のように捩り振動を伴なう駆動軸系に於て、振動的角変位を抑制して被動軸系に回転動力を伝達させるものであって、バネ定数が低く、高トルクを伝達でき、かつ分解組立が簡単で軸方向のスペースもとらないコンパクトな防振装置を前提にするものであって、同芯的に配置された2つの伝動要素を半径方向の環状間隙部で弾性体により連結するに当り、この弾性体をテーパーを利用して半径方向に与圧縮させて介在させ得る構成としたものであると認められる。 また、刊行物4に記載された事項は、第4.3.(1)ないし(4)によれば、あくまで建物と基礎との間に装着される免震材や、橋桁と橋脚の間に装着される支承材等として使用される免震装置を前提とした「フランジ一体型免震装置」であり、その課題も、要すれば、当該免震装置におけるゴム層を、フランジとの接触部において垂直にすることによりバリの発生を抑制するものであると認められる。 よって、引用発明1は、本願発明1とは属する技術分野を同じくするものの、刊行物4に記載された事項とは、振動を抑える装置としてその前提となる構成及び課題が異なり、引用発明1に刊行物4に記載された事項を適用する動機付けがあるとは認められない。 また、刊行物4の図3に記載される実施形態においては、鋭角的な屈曲部をなくすために、凹状円弧18の傾斜部4に凸状円弧をなす段差部19を連なって形成しているところ、凹状円弧18と凸状円弧19との大きさに関し、特段の記載はないので、仮に引用発明1に刊行物4に記載された事項を適用したとしても、相違点1に係る本願発明1に係る構成に到達するとは認められない。 また、原査定で引用された刊行物3(特表平10-502157号公報)にも、相違点1に係る本願発明1に係る構成は記載されていない。 以上のとおりであるから、本願発明1は、引用発明1及び刊行物4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 (2)刊行物2(引用発明2)を主引用例とする場合 ア.対比 (ア)引用発明2の「継ぎ手体6」は、その機能・構造からみて、本願発明1の「分割体」に相当し、同様に、「駆動される軸」は「原動軸」に、「ハブ1」は「内側取付部材」に、「リング10」は「内周側金具」に、「リング11」は「外周側金具」に、「ゴム弾性的な部材9」は「ゴム体」に、それぞれ相当する。 (イ)フランジ2は、従動軸に取り付けられ、ハブ1からの駆動力が継ぎ手体6、中間リング13、継ぎ手体5,及びフランジ2を経由して伝達されるので、「フランジ2、継ぎ手体5、及び中間リング13」は、原動軸及び従動軸うちの一方に設けられた部材である限りにおいて、本願発明1の「原動軸及び従動軸うちの一方に設けられたリング状の外側取付部材」と共通する。 (ウ)引用発明2の「高弾性的な軸継ぎ手」は、継ぎ手体6が複数あり、分割型であるから、「分割型ゴム継手」と言い換えることができる。 以上の点からみて、本願発明1と引用発明2とは、以下の一致点2及び相違点2-1ないし2-3を有すると認められる。 [一致点2] 「複数の分割体を周方向に配列してなり、各分割体が、原動軸及び従動軸うちの一方に設けられた部材と、原動軸及び従動軸のうちの他方に設けられた内側取付部材と、の間に介装される分割型ゴム継手であって、 前記分割体は、原動軸及び従動軸うちの一方に設けられた部材に取り付けられる外周側金具と、内側取付部材に取り付けられる内周側金具との間にゴム体を設けてなり、 前記ゴム体は、外周側よりも内周側で継手中心軸方向の幅が大きくされ、継手中心軸を含む平面で切断した縦断面が略台形状に設定された分割型ゴム継手。」 [相違点2-1] 本願発明1では、「各分割体が、原動軸及び従動軸うちの一方に設けられたリング状の外側取付部材と、原動軸及び従動軸のうちの他方に設けられて前記外側取付部材の径方向内側に位置する内側取付部材と、の間に介装される」のに対して、引用発明2では、各継ぎ手体6が、従動軸に取り付けられるフランジ2、継ぎ手体5、及び中間リング13と、駆動される軸に取り付けられるハブ1と、の間に介装される点。 [相違点2-2] 本願発明1では、外周側金具が外側取付部材に取り付けられるのに対して、引用発明2では、リング11が、フランジ2、継ぎ手体5、及び中間リング13を介して取り付けられる点。 [相違点2-3] 本願発明1では、「継手中心軸と直交する横断面における周方向で両端縁のうち、径方向で中央部に、周方向で内向きに凸の大R部が形成されると共に、径方向で両端部に、周方向で外向きに凸の小R部が形成された」ものであるのに対して、引用発明2では、継手中心軸と直交する横断面が扇形であり、該扇形の径方向の両側縁は周方向内向きに凹状である点。 イ.判断 相違点2-3は、実質的に相違点1と同じである。 また、刊行物2の記載(第4.2.(2)及び(3))によれば、引用発明2は、高弾性的な軸継ぎ手であって、その両継ぎ手半部が、軸方向に互いに前後して配置された少なくとも2つのリング装置を介して互いに結合されており、両リング装置がゴム弾性的な材料から成る継ぎ手体から成り、継ぎ手体がほぼV字形の横断面を有しており、その斜めの端面側に、少なくとも一方の継ぎ手半部への固定のための円錐形の側リングが加硫固定されている形式のものを前提として、その課題は、半径方向の回動性およびねじり弾性強さを有すると共に軸方向のずれの不利な現象を回避することであると認められる。 したがって、引用発明2は、本願発明1とは属する技術分野を同じくするものの、刊行物4に記載された事項とは、振動を抑える装置としてその前提となる構成及び課題が異なり、引用発明2に刊行物4に記載された事項を適用する動機付けがあるとは認められない。 また、前記第5.1.(1)イ.に示した理由と同じ理由により、仮に引用発明2に刊行物4に記載された事項を適用したとしても、相違点2-3に係る本願発明1に係る構成に到達するとは認められない。 また、原査定で引用された刊行物3(特表平10-502157号公報)にも、相違点2-3に係る本願発明1に係る構成は記載されていない。 以上のとおりであるから、相違点2-1及び相違点2-2について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明2及び刊行物4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 2.本願発明2について 本願発明1を引用する本願発明2は、本願発明1をさらに限定したものである。1.(1)イ.及び1.(2)イ.のとおり、本願発明1は、引用発明1または引用発明2及び刊行物4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえないから、本願発明2は、引用発明1または引用発明2及び刊行物4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6.むすび 以上のとおり、本願発明1及び2は、刊行物1ないし4に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 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審決日 | 2017-02-13 |
出願番号 | 特願2011-266611(P2011-266611) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(F16D)
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最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 中村 大輔 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
阿部 利英 内田 博之 |
発明の名称 | 分割型ゴム継手 |
代理人 | 小羽根 孝康 |
代理人 | 稗苗 秀三 |
代理人 | 大島 泰甫 |
代理人 | 藤原 清隆 |