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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 A63F
管理番号 1324722
審判番号 不服2016-607  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-14 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2015- 50060「ゲームプログラム、コンピュータの制御方法、およびコンピュータ」拒絶査定不服審判事件〔平成28年 3月 3日出願公開、特開2016- 28672、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成26年7月23日に出願された特願2014-149760号の一部を、平成27年3月12日に特許法第44条第1項の規定による新たな特許出願としたもので、原審において平成27年6月2日付けで1回目の拒絶理由が通知され、同年同月30日付けで手続補正がされ、更に同年8月14日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年9月28日付けで手続補正がされ、同年10月14日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。原査定の謄本の送達(発送)日 同年同月20日。)がされ、これに対して、平成28年1月14日に拒絶査定に対する審判請求がなされると同時に手続補正書が提出されて特許請求の範囲を補正する手続補正がなされ、その後、当審において同年10月20日付けで拒絶理由が通知され、指定期間内の同年11月21日付けで手続補正がされたものである。

第2 本件出願の発明
本件出願の請求項1ないし9に係る発明は、平成28年11月21日付けの手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下「本願発明1」という。同様に本願の請求項2?9に係る発明をそれぞれ「本願発明2」?「本願発明9」という。)。
「【請求項1】
コンピュータに、
プレイヤから与えられる移動指示にしたがってゲームのフィールド内を移動可能なオブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示出力機能と、
前記オブジェクトが移動した軌跡を表示させる軌跡表示情報を出力する軌跡表示出力機能と、
前記プレイヤとは異なる他のプレイヤから与えられる他の移動指示にしたがって他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のプレイヤに設定された状態情報および/または前記他のオブジェクトの移動に所定の影響を与える影響付与機能とを実現させ、
前記軌跡表示出力機能は、前記他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のオブジェクトの移動速度、および/または、前記他のオブジェクトに設定された属性と前記軌跡に設定された属性との組み合わせに応じて、前記軌跡の少なくとも一部の態様を変化させることを特徴とするゲームプログラム。
【請求項2】
前記軌跡表示出力機能は、前記オブジェクトに設定された所定の情報に応じて、前記軌跡の長さおよび/または前記軌跡の表示時間を異ならせるように該軌跡を表示させるための軌跡表示情報を出力することを特徴とする請求項1に記載のゲームプログラム。
【請求項3】
前記所定の情報が、前記プレイヤに設定されたパラメータ、前記オブジェクトに設定された属性、前記オブジェクトに設定されたパラメータ、の少なくともいずれか1つであることを特徴とする請求項2に記載のゲームプログラム。
【請求項4】
前記軌跡表示出力機能は、前記軌跡を表示してから経過した時間および/または前記オブジェクトと前記軌跡との距離に応じて、前記軌跡を前記フィールドから消去することを特徴とする請求項1?3のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項5】
前記軌跡表示出力機能は、前記他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のオブジェクトから離れる方向に前記軌跡の形状を変化させることを特徴とする請求項1?4のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項6】
前記コンピュータは、更に、
前記オブジェクトの属性および/または前記オブジェクトが有するパラメータに応じて、前記オブジェクトへ与えられる前記移動指示の回数に制限を設定する制限機能を実現させることを特徴とする請求項1?5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項7】
前記影響付与機能は、前記オブジェクトに設定された属性と、前記フィールド内の所定の領域に設定された属性との組み合わせに応じて、前記オブジェクトに影響を与えることを特徴とする請求項1?6のいずれか一項に記載のゲームプログラム。
【請求項8】
プレイヤから与えられる移動指示にしたがってゲームのフィールド内を移動可能なオブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示出力ステップと、
前記オブジェクトが移動した軌跡を表示させる軌跡表示情報を出力する軌跡表示出力ステップと、
前記プレイヤとは異なる他のプレイヤから与えられる他の移動指示にしたがって他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のプレイヤに設定された状態情報および/または前記他のオブジェクトの移動に所定の影響を与える影響付与ステップとを含み、
前記軌跡表示出力ステップは、前記他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のオブジェクトの移動速度、および/または、前記他のオブジェクトに設定された属性と、前記軌跡に設定された属性との組み合わせに応じて、前記軌跡の少なくとも一部の態様を変化させることを特徴とするコンピュータの制御方法。
【請求項9】
プレイヤから与えられる移動指示にしたがってゲームのフィールド内を移動可能なオブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示出力部と、
前記オブジェクトが移動した軌跡を表示させる軌跡表示情報を出力する軌跡表示出力部と、
前記プレイヤとは異なる他のプレイヤから与えられる他の移動指示にしたがって他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のプレイヤに設定された状態情報および/または前記他のオブジェクトの移動に所定の影響を与える影響付与部とを備え、
前記軌跡表示出力部は、前記他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のオブジェクトの移動速度、および/または、前記他のオブジェクトに設定された属性と、前記軌跡に設定された属性との組み合わせに応じて、前記軌跡の少なくとも一部の態様を変化させることを特徴とするコンピュータ。」

第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
本願の請求項1?4、及び6?10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用例
[刊行物]
引用例1:特開2003-123089号公報
引用例2:特開2000-298733号公報
引用例3:松浦 健一郎/司ゆき,シューティングゲーム アルゴリズム マニアックス 新装版,ソフトバンク クリエイティブ株式会社,2010年4月25日,初版,第46-51ページ,ISBN978-4-7973-5997-8
引用例4:松浦 健一郎/司ゆき,弾幕 最強のシューティングゲームを作る!,ソフトバンク クリエイティブ株式会社,2009年3月30日,初版,第354-359ページ,ISBN978-4-7973-5229-0
引用例5:特開2008-99755号公報
引用例6:特開2002-140723号公報

原査定には、請求項1、9、10に関する「備考」として、次のように記載されている。(なお、上記の「請求項1、9、10」は、平成28年11月21日付けの手続補正に係る「請求項1、8、9」に対応しており、また、下記記載中の「引用文献1、3」は「引用例1、3」を指している。)
「引用文献1には、プレイヤから与えられるコントローラの操作にしたがって移動可能なストーンを表示するとともに、痕跡情報に基づいてリンクにおけるストーンが移動した軌跡を表示するカーリングを題材としたゲームに関する発明(特に段落[0084]-[0094]、[図2]-[図6]参照)が記載されている。
また、引用文献1の段落[0129]には、ストーンが通過した痕跡部分は、リンクの氷が溶けることを表現して透明度が変更される旨記載されており、他のストーン(オブジェクト)が当該痕跡部分に接触した場合、当該痕跡部分は、他のストーンによって透明度が変更される(軌跡の少なくとも一部の態様を変化させる)ことは明らかである。
また、引用文献3には、「誘導レーザーの尾は先端部分が通った軌跡です」(第46頁参照)、「レーザーは普通の弾とは違って、尾にも当たり判定があります」(第50頁参照)等と記載され、請求項1に係る発明における「影響付与機能」に相当するものが記載されている。
そして、引用文献1に記載された発明において、引用文献3に記載された上記の技術事項を採用するとともに、ストーンの速度に応じて透明度を変更させるようにし、請求項1、9-10に係る発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。」

2.原査定の理由の判断
(1)引用例の記載事項
ア.引用例1
引用例1には、図面と共に次の事項が記載されている。
「【0002】
【従来の技術】近年、キャラクタ等のオブジェクトをモニタ画面内に作成される仮想空間において表示するようにした種々のビデオゲームが普及している。かかるビデオゲームとして、スキー、サーフィン、アイススケート、スノーボード、カーリング等の各種スポーツを題材としたものが知られている。このようなスポーツを題材にしたビデオゲームにおいては、各スポーツ特有の状況を可能な限り再現することが求められ、ユーザの欲求を満足させる必要がある。例えば、スキー及びスノーボードを題材としたビデオゲームにおいては雪の状態の変化が再現されるべきであり、アイススケート及びカーリングを題材としたビデオゲームにおいては氷の状態の変化が再現されるべきである。特にカーリングのように氷の状態変化がスポーツの勝敗に大きな影響を及ぼす場合には、カーリングを題材にしたビデオゲームにおいても氷の状態変化が可能な限り再現されなければユーザに満足感を与えることはできない。」
「【0006】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の本発明は、ビデオゲーム空間内に仮想的に設けられた競技領域上を移動するオブジェクトを表示するための画像表示プログラムであって、前記オブジェクトの痕跡を表示するために用いられる痕跡情報を記憶する痕跡情報記憶手段と、前記痕跡情報に基づいて前記競技領域における前記オブジェクトの痕跡を表示する痕跡表示手段としてビデオゲーム装置を機能させることを特徴とする画像表示プログラムである。」
「【0011】請求項2に記載の本発明に従えば、痕跡表示手段は、競技領域の略全体を表示する第1の画像上にオブジェクトの痕跡を表示する第2の画像を重ね合わせて競技領域画像として表示し、第2の画像は、第2の画像を通して第1の画像が視認可能な透明度を有し、オブジェクトの痕跡に対応する第2の画像上の痕跡部分が有する透明度を変更する透明度変更手段としてビデオゲーム装置をさらに機能させる。」
「【0014】請求項3に記載の本発明に従えば、透明度変更手段は第2の画像上の痕跡部分に対するオブジェクトの影響に基づいて透明度を変更させる。
【0015】すなわち、透明度変更手段によって第2の画像上の痕跡部分に対するオブジェクトの影響に基づいて透明度が変更されるため、例えばカーリングを題材にしたビデオゲーム等においてオブジェクトが痕跡部分を通過する回数に応じて段階的に変化する競技領域の状態を視認可能となり、プレイヤの操作を支援することができる。」
「【0018】すなわち、オブジェクトと競技領域との摩擦係数を表す摩擦パラメータを設け、オブジェクトの痕跡を第2の画像上に表示する際に痕跡部分の摩擦パラメータを変更させてオブジェクトの移動が表示されるため、オブジェクトが通過する毎に変更する痕跡部分の摩擦パラメータに応じてオブジェクトの移動する速度を変化させることが可能となり、例えばオブジェクトが通過する回数に応じて競技領域の状態が変化してオブジェクトの移動する速度が変更するビデオゲーム等においてリアル感のある興趣に富むゲームとなる。」
「【0044】図1に示すビデオゲーム装置は家庭用ゲーム機100及び家庭用テレビジョン200を備える。家庭用ゲーム機100には、ビデオゲームプログラム及びゲームデータが記録されたコンピュータ読み出し可能な記録媒体300が装填され、ビデオゲームプログラム及びゲームデータが適宜読み出されてゲームが実行される。
【0045】家庭用ゲーム機100は、CPU(Central Processing Unit)1、バスライン2、グラフィックスデータ生成プロセッサ3、インターフェース回路(I/F)4、メインメモリ5、ROM(Read Only Memory)6、伸張回路7、パラレルポート8、シリアルポート9、描画プロセッサ10、音声プロセッサ11、デコーダ12、インターフェース回路13、バッファ14?16、記録媒体ドライブ17、メモリ18及びコントローラ19を含む。家庭用テレビジョン200はテレビジョンモニタ21、増幅回路22及びスピーカ23を含む。」
「【0084】次に、本発明に係る画像表示プログラムを用いたビデオゲームの一例について説明する。このビデオゲームは例えばカーリングを題材としたものであり、プレイヤによって操作されるキャラクタである自己キャラクタで構成される自己チームと対戦相手となるビデオゲーム装置のCPU1によって動作が制御される相手キャラクタ、または他のプレイヤによって操作される相手キャラクタで構成される相手チームとの間で行う対戦型ビデオゲームである。」
「【0090】ゲーム進行処理部311は、プレイヤによるコントローラ19の操作を受け付けて通常のカーリングゲームの進行処理を行う。つまり、プレイヤはコントローラ19を操作することによってストーンを投げる。
【0091】移動処理部312は、ビデオゲーム空間内に設定された例えば幅4.75m×長さ44.5mの競技領域に相当するリンクを一辺が0.3mの矩形を基本要素とする格子状に分割し、各格子毎にオブジェクトであるストーンとリンクとの摩擦係数を表す摩擦パラメータを設け、ストーンが当該格子を通過する毎に摩擦パラメータを減少させることによってストーンの移動する速度を変化させる。ストーンが通過することによって摩擦パラメータが減少した格子をストーンが移動する際にストーンとリンクとの摩擦による減速度が低下する。」
「【0129】図9はストーンの痕跡が表示された競技領域画像の一例を示す図である。競技領域画像404の拡大部分に示すストーンの痕跡部分801は段階的に透明度が向上して表示され、本実施の形態では3段階に透明度が向上して表示される。つまり、ストーンが通過した痕跡部分801と別のストーンが通過した痕跡部分802とが重なった領域803はさらに透明度が向上されて表示されるため、領域803は痕跡部分801,802より濃い青色で表示される。また、ストーンが通過した痕跡部分801,802は摩擦パラメータの値φが減少されるため、ストーンの速度が上がる。プレイヤは競技領域画像404に表示されるストーンの痕跡を確認することでリンク401のどの場所が滑りやすいかを確認することができる。・・・」

上記の記載事項を総合すると、引用例1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「CPU1、バスライン2、グラフィックスデータ生成プロセッサ3、インターフェース回路(I/F)4、メインメモリ5、ROM6を含むビデオゲーム装置を用いて、ビデオゲーム空間内に仮想的に設けられた競技領域上を移動するオブジェクトを表示するための画像表示プログラムであって、
ビデオゲームはプレイヤによって操作されるキャラクタである自己キャラクタで構成される自己チームと対戦相手となるビデオゲーム装置のCPU1によって動作が制御される相手キャラクタ、または他のプレイヤによって操作される相手キャラクタで構成される相手チームとの間で行うカーリングを題材とした対戦型ビデオゲームであり、
前記オブジェクトの痕跡を表示するために用いられる痕跡情報を記憶する痕跡情報記憶手段と、前記痕跡情報に基づいて前記競技領域における前記オブジェクトの痕跡を表示する痕跡表示手段としてビデオゲーム装置を機能させ、
痕跡表示手段は、オブジェクトの痕跡部分が有する透明度を変更する透明度変更手段としてビデオゲーム装置をさらに機能させ、透明度変更手段は痕跡部分に対するオブジェクトの影響に基づいて透明度を変更させ、具体的には、オブジェクトが痕跡部分を通過する回数に応じて段階的に変化し、ストーン(オブジェクト)が通過した痕跡部分801と別のストーン(オブジェクト)が通過した痕跡部分802とが重なった領域803はさらに透明度が向上されて表示され、
オブジェクトと競技領域との摩擦係数を表す摩擦パラメータを設け、オブジェクトの痕跡部分の摩擦パラメータを変更させてオブジェクトが通過する毎に変更する痕跡部分の摩擦パラメータに応じてオブジェクトの移動する速度を変化させる、
画像表示プログラム。」

イ.引用例3
引用例3には、次の事項が記載されている。
「誘導レーザー
自機を追尾するレーザーです(Fig. 2-45)。現実世界で「誘導レーザー」や「ホーミングレーザー」が物理的に実現可能かどうかはともかくとして、シューティングゲームのなかでは、こういった「曲がるレーザー」が広く使われています。見た目が派手で美しい弾です。
誘導レーザーは誘導弾(→P. 39)の応用で作ることができます。実は、誘導レーザーの先端部分の動きは誘導弾の動きと同じです(Fig. 2-46)。つまり、先端部分に関しては誘導弾と同じアルゴリズムを適用できます。誘導弾と違うのは、誘導レーザーには尾があることです。
誘導レーザーの尾は先端部分が通った軌跡です。そこで、先端部分にもっとも近い尾の部分(尾1とします)は先端部分を追い、次に先端部分に近い尾の部分(尾2)は尾1を追い、さらに尾3は尾2を、尾4は尾3を……というように各部分が1つ前の部分を追いかけるようにすれば、尾を移動させることができます(Fig. 2-47)。」(第46頁第1?11行)
「誘導レーザーの当たり判定
レーザーは普通の弾とは違って、尾にも当たり判定があります。そのため、レーザーの当たり判定処理を行うには、先端だけでなく尾と自機との間でも判定をしなければなりません(Fig. 2-51)。」(第50頁第14?17行)
また、List2-18、及びList2-19から、「誘導レーザーに移動や誘導レーザーの発射のプログラム」が看取できる。
また、上記の開示事項を踏まえれば、「プログラムによって当たり判定がなされていること」は明らかである。

上記の記載事項を総合すると、引用例3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「誘導レーザーの尾は先端部分が通った軌跡であって、誘導レーザーは普通の弾とは違って、尾にも当たり判定があり、当り判定処理を行うには、先端だけでなく尾と自機との間でも判定を行うプログラム。」

2.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。
後者において、「CPU1、バスライン2、グラフィックスデータ生成プロセッサ3、インターフェース回路(I/F)4、メインメモリ5、ROM6を含むビデオゲーム装置を用いて」としているところから、後者も前者と同様に、「コンピュータ」を用いることが明らかである。
また、後者の「画像表示プログラム」は、前者の「ゲームプログラム」に相当し、以下同様に、「プレイヤによって操作される」は「プレイヤから与えられる移動指示にしたがって」に、「ビデオゲーム空間」は「ゲームのフィールド」に、「オブジェクト」は「オブジェクト」に、それぞれ相当する。
また、後者は、「ビデオゲーム空間内に仮想的に設けられた競技領域上を移動するオブジェクトを表示する」から、前者の「ゲームのフィールド内を移動可能なオブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示出力機能」に相当するものを備えていることは明らかである。
また、後者は、「オブジェクトの痕跡を表示するために用いられる痕跡情報を記憶する痕跡情報記憶手段と、前記痕跡情報に基づいて前記競技領域における前記オブジェクトの痕跡を表示する痕跡表示手段としてビデオゲーム装置を機能させ」ているから、前者の「オブジェクトが移動した軌跡を表示させる軌跡表示情報を出力する軌跡表示出力機能」に相当するものを備えていることは明らかである。
また、後者は、「痕跡表示手段は、オブジェクトの痕跡部分が有する透明度を変更する透明度変更手段としてビデオゲーム装置をさらに機能させ、透明度変更手段は痕跡部分に対するオブジェクトの影響に基づいて透明度を変更させる、具体的には、オブジェクトが痕跡部分を通過する回数に応じて段階的に変化し、ストーン(オブジェクト)が通過した痕跡部分801と別のストーン(オブジェクト)が通過した痕跡部分802とが重なった領域803はさらに透明度が向上されて表示され」ており、上記の「別のストーン(オブジェクト)」には、他のプレイヤが操作するストーン(オブジェクト)も含まれると解されるから、後者も前者と同様に、「軌跡表示出力機能は、他のオブジェクトが軌跡に接触した場合、」「前記軌跡の少なくとも一部の態様を変化させる」ものといえる。
更に、後者は、「オブジェクトと競技領域との摩擦係数を表す摩擦パラメータを設け、オブジェクトの痕跡部分の摩擦パラメータを変更させてオブジェクトが通過する毎に変更する痕跡部分の摩擦パラメータに応じてオブジェクトの移動する速度を変化させる」から、後者も前者と同様に、「プレイヤとは異なる他のプレイヤから与えられる他の移動指示にしたがって他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、」「前記他のオブジェクトの移動に所定の影響を与える影響付与機能」に相当するものを備えていることは明らかである。

したがって、両者は、
「コンピュータに、
プレイヤから与えられる移動指示にしたがってゲームのフィールド内を移動可能なオブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力するオブジェクト表示出力機能と、
前記オブジェクトが移動した軌跡を表示させる軌跡表示情報を出力する軌跡表示出力機能と、
前記プレイヤとは異なる他のプレイヤから与えられる他の移動指示にしたがって他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記他のプレイヤに設定された状態情報および/または前記他のオブジェクトの移動に所定の影響を与える影響付与機能とを実現させ、
前記軌跡表示出力機能は、前記他のオブジェクトが前記軌跡に接触した場合、前記軌跡の少なくとも一部の態様を変化させるゲームプログラム。」
の点で一致し、以下の点で相違している。
[相違点]
他のオブジェクトが軌跡に接触した場合に、軌跡の態様を変化させる軌跡表示出力機能に関して、本願発明では「他のオブジェクトの移動速度、および/または、前記他のオブジェクトに設定された属性と軌跡に設定された属性との組み合わせに応じて」変化させるのに対し、引用発明1ではオブジェクトの移動速度や、オブジェクトと軌跡に設定された属性に言及していない点。

(2)判断
上記の相違点について検討する。
引用発明3における「自機」は、本願発明における「オブジェクト」に相当し、引用発明3は、誘導レーザーの軌跡にも当たり判定があり、当り判定処理を行うには、先端だけでなく尾と自機との間でも判定を行う、つまり他のオブジェクトが軌跡に接触した場合に、軌跡がオブジェクトに対して影響を与えるようにすることは示されているが、上記相違点に係る本願発明の発明特定事項を具備していない。
また、上記相違点に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
したがって、本願発明1は、引用発明1、または及び引用発明1、3に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

3.本願発明2ないし4、及び6ないし9について
本願発明2ないし4、6、及び7は、本願発明1をさらに限定したものであるし、また「コンピュータの制御方法」、「コンピュータ」として特定された本願発明8、9は、実質的に、本願発明1と同様の発明特定事項を備えるものであるので、本願発明2ないし4、及び6ないし9も、同様に、引用発明1、及び引用例2、4?6に記載された発明、または及び引用発明1、3、及び引用例2、4?6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第4 当審で指摘した拒絶理由について
1.当審で指摘した拒絶理由の概要は、以下のとおりである。
本件出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で不備のため、特許法第36条第6項第1号及び同第2号に規定する要件を満たしていない。

特許請求の範囲の請求項6の記載は、次のとおりである。
「【請求項6】
前記オブジェクト表示出力機能は、前記オブジェクト、前記他のオブジェクト及び前記オブジェクトとは異なる態様の移動した軌跡を表示する目標オブジェクトを表示させるオブジェクト表示情報を出力し、
前記軌跡表示出力機能は、前記オブジェクトの移動した軌跡に前記他のオブジェクトが接触した場合、前記他のオブジェクトの移動に影響を及ぼすことによって前記目標オブジェクトの移動を促すことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のゲームプログラム。」

上記の「前記オブジェクトとは異なる態様の移動した軌跡を表示する目標オブジェクト」という記載と、「前記他のオブジェクトの移動に影響を及ぼすことによって前記目標オブジェクトの移動を促す」という記載の意味が不明であり、この点において、請求項6の記載は明確ではない。
また、平成27年3月12日付けで提出された上申書によれば、「請求項6:本請求項は、原出願の分割直前の図5及び明細書の段落[0074]、[0075]等に記載された事項に基づく発明を新たに記載したものです。」とされている。
しかし、上記の図5や各段落には、「目標オブジェクト」や「目標オブジェクトの移動を促す」ことに相当あるいは対応する記載があるとは認められず、上記請求項6に記載されたところと、図面及び発明の詳細な説明との対応関係は全く不明であり、この点において、請求項6及びこれを引用する請求項7、8に記載されている発明は、発明の詳細な説明に記載されている発明とはいえない。

2.当審で指摘した拒絶理由についての判断
平成28年11月21日付け手続補正書によって、補正前の請求項6を削除する補正がされた。
これにより、当審で指摘した拒絶理由は解消した。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-13 
出願番号 特願2015-50060(P2015-50060)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (A63F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 松下 公一中村 和正柴田 和雄  
特許庁審判長 吉村 尚
特許庁審判官 黒瀬 雅一
植田 高盛
発明の名称 ゲームプログラム、コンピュータの制御方法、およびコンピュータ  
代理人 白坂 一  
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