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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C10M
管理番号 1324732
審判番号 不服2015-10639  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-06-04 
確定日 2017-02-09 
事件の表示 特願2010-248964「潤滑剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月31日出願公開、特開2012-102157〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成22年11月5日の出願であって、出願後の手続の経緯は、概略、以下のとおりである。
平成26年 9年 5日付 拒絶理由通知
同年10月27日 意見書・手続補正書提出
平成27年 4月 9日付 拒絶査定
同年 6月 4日 審判請求書・手続補正書提出
同年 7月 9日付 前置報告
同年 8月 7日 上申書提出
平成28年 9年 2日付 当審による拒絶理由通知
同年10月21日 意見書・手続補正書提出

第2 平成28年9月2日付けの当審拒絶理由(進歩性)の内容

標記拒絶理由は、要するに、本願の請求項1?6に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物(引用文献)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
<引用文献一覧>
3.特開2009-13350号公報
4.特開2006-232921号公報
6.特開2008-37892号公報

第3 当審の判断

上記の当審拒絶理由に対して、審判請求人は、平成28年10月21日に意見書及び手続補正書を提出したが、その内容を加味しても、本願は当該当審拒絶理由によって拒絶されるべきものであると判断する。
その理由は以下のとおりである。

1 本願発明

本願の請求項1?6に係る発明は、平成28年10月21日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、単に「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
パーフルオロポリエーテル油を含む基油と、固体潤滑剤とを含有する樹脂-樹脂又は樹脂-金属摺動用潤滑剤組成物であって、
前記パーフルオロポリエーテル油が、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなり、
前記固体潤滑剤が、前記基油への増ちょう作用を有するメラミンシアヌレートのみからなり、
前記メラミンシアヌレートの含有量が、前記基油及びメラミンシアヌレートの合計量に対して、1?20質量%の範囲内であることを特徴とする潤滑剤組成物。」

2 刊行物の記載事項

(1) 引用文献3の記載事項
引用文献3には、次の記載がある。
・「【請求項1】
基油、増稠剤及び固体潤滑剤からなり、ゴム部材同士またはゴム部材と樹脂部材の摺動箇所における下記測定方法による動摩擦係数が、0.01?0.20であることを特徴とするグリース組成物。
(動摩擦係数の測定方法)
往復動試験機を用い、NBRシート(下部試験片)上にグリース組成物を塗布量0.05gとなるように塗布し、上から樹脂製ボール(上部試験片、直径10mm)を試験荷重0.5kgfで押しつけ、摺動速度4mm/secで往復動させる(摺動距離10mm、試験温度:70℃)。往復摺動させた時の上部試験片と下部試験片の間に発生する摩擦力から摩擦係数を測定した。
・・・
【請求項3】
固体潤滑剤として、メラミンシアヌレート(MCA)をグリース全量に対して0.1?20wt%配合することを特徴とする請求項1又は2記載のグリース組成物。」
・「【0018】
本発明に用いられる基油としては、合成炭化水素油、エステル系合成油、エーテル系合成油、グリコール系合成油、フッ素油から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の合成油を用いることが好ましい。
・・・
【0023】
フッ素油としては、下記一般式(1)、(2)、(3)で表されるパーフルオロポリエーテル油から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0024】
RfO[CF(CF_(3))CF_(2)O]_(a)(CF_(2)O)_(b)Rf ・・・(1)
【0025】
式(1)中、Rfはパーフルオロ低級アルキル基であり、aおよびbは自然数であり、a+b=3?200で、bは0でもよい。a:b=100:0?50:50であり、CF(CF_(3))CF_(2)O基およびCF_(2)O基は主鎖中にランダムに結合されている。
【0026】
RfO(CF_(2)CF_(2)O)_(m)(CF_(2)O)_(n)Rf ・・・(2)
【0027】
式(2)中、Rfはパーフルオロ低級アルキル基であり、mおよびnは自然数であり、m+n=3?200、m:n=10?90:90?10であり、CF_(2)CF_(2)O基およびCF_(2)O基は主鎖中にランダムに結合されている。
【0028】
F(CF_(2)CF_(2)Cf_(2)O)_(m)CF_(2)CF_(3) ・・・(3)
【0029】
式(3)中、mは2?100の整数である。
【0030】
一般式(1)、(2)、(3)において、パーフルオロ低級アルキル基は、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基等の炭素数1?5、好ましくは1?3のパーフルオロ低級アルキル基である。」
・「【0031】
本発明に用いられる基油としては、樹脂、ゴムに対する影響(樹脂、ゴムが劣化しない)を考慮し、合成炭化水素油、フッ素油がより好ましく、樹脂、ゴムに対する影響(樹脂、ゴムが劣化しない)に加え、低コスト化も考慮すると、合成炭化水素油が更に好ましい。特に好ましくは、ポリ-α-オレフィン(PAO)である。」
・「【0034】
本発明のグリース組成物は、固体潤滑剤としてメラミンシアヌレート(MCA)を用いると、ゴム部材と樹脂部材との摺動において、低摩擦係数を有する潤滑グリース組成物を作成する上で好ましい。
【0035】
メラミンシアヌレート(MCA)は、0.1?20wt%の範囲で配合され、好ましくは、1?5wt%の範囲で配合され、さらに好ましくは2?5wt%の範囲で配合される。
【0036】
上記範囲で配合することでゴム部材同士またはゴム部材と樹脂部材の摺動箇所の摩擦係数を低減することができる。摩擦係数の低減は、MCAがゴム部材に吸着することにより行なわれる。
【0037】
配合量が0.1wt%未満では、ゴム部材に対するMCAの吸着が少ないため、摩擦係数を低減することができず、MCAの配合量が20wt%以上ではグリース組成物そのものが硬くなってしまうので、摩擦係数が上昇してしまうという問題がある。
【0038】
固体潤滑剤はMCA単独でもよいが、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、二硫化モリブデン、有機モリブデン、グラファイト、窒化ホウ素、窒化シラン等他の固体潤滑剤と併用してもよく、本発明においては、PTFEと併用されることが好ましい。」
・「【実施例】
【0051】
以下、本発明を実施例に基づき説明するが、本発明はかかる実施例によって限定されない。
【0052】
実施例1
<配合成分とその配合量>
(1)基油
ポリ-α-オレフィン
(イオネスオリゴマーズ社製「DURASYN 166」) 90重量%(2)増稠剤
Li石けん(勝田化工社製「Li-OHST」) 8重量%(3)固体潤滑剤
MCA(日産化学工業社製「MC-6000」) 1重量%(4)酸化防止剤
フェニルナフチルアミン(チバ・スペシャリティー・ケミカルズ社製 「イルガノックス L06」) 1重量%
【0053】
<グリースの調製>
上記基油及び増稠剤を混合撹拌釜に配合し、加熱攪拌した。溶融温度まで加熱攪拌した後、冷却を行った。生成したゲル状物質に各種添加剤を加え、攪拌した後、ロールミルに通し、グリース組成物を調製した。
【0054】
得られたグリース組成物について、混和稠度、動摩擦係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0055】
<測定方法>
(稠度)
試験温度:25℃
試験方法:JIS K2220に準拠し、稠度測定を行った。
【0056】
(動摩擦係数)
潤滑グリース組成物の潤滑性は往復動試験機で評価した。ゴムシート上にグリースを塗布し、上から樹脂製のボールを押しつけ往復動させる。往復摺動させた時の樹脂製ボールとゴムシートの間に発生する摩擦カから摩擦係数を測定した。
【0057】
往復動試験機
上部試験片 :POMボール(直径10mm)(樹脂製ボール)
下部試験片 :NBRシート(ゴムシート)
試験荷重 :0.5kgf
グリース塗布量:0.05g
摺動速度 :4mm/sec
試験温度 :70℃
摺動距離 :10mm
【0058】
実施例2-実施例3
実施例1において、基油の配合量と、増稠剤の配合量と、固体潤滑剤であるMCAの配合量を表1のように代えた以外は同様にして評価した結果を表1に示す。
【0059】
実施例4
実施例1において、基油の配合量と、固体潤滑剤であるMCAおよびPTFEの配合量を表1のように代えた以外は同様にして評価した結果を表1に示す。
【0060】
実施例5
実施例1において、基油の配合量と、増稠剤の配合量と、固体潤滑剤であるMCAおよびPTFEの配合量を表1のように代えた以外は同様にして評価した結果を表1に示す。
【0061】
比較例1、比較例4
実施例1において、基油の配合量と、固体潤滑剤であるMCAの配合量を表1のように代えた以外は同様にして評価した結果を表1に示す。
【0062】
比較例2、比較例3
実施例1において、基油の配合量と、固体潤滑剤であるMCAおよびPTFEの配合量を表1のように代えた以外は同様にして評価した結果を表1に示す。
【0063】
【表1】



(2) 引用文献4の記載事項
引用文献4には、次の記載がある。
・「【請求項1】
基油としてパーフルオロポリエーテル油を含有し、増ちょう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも10質量%のメラミンシアヌレートを含有するグリース組成物。
・・・
【請求項3】
メラミンシアヌレートの含有量が、グリース組成物の全質量に対して10?30重量%である請求項1または2記載のグリース組成物。」
・「【0008】
本発明に使用される基油は、パーフルオロポリエーテル油を必須成分として含有する。本発明に使用されるパーフルオロポリエーテル油の具体例としては、下記の式で表されるものが挙げられる。
(CF_(2)CF_(2)CF_(2)O)n (1)
平均分子量:1900?8400
(CF_(2)CF_(2)O)m(CF_(2)O)n (2)
平均分子量:4000?13000
(CF(CF_(3))CF_(2)O)m(CF_(2)O)n (3)
平均分子量:1500?7250
(CF(CF_(3))CF_(2)O)n (4)
平均分子量:1850?8250
基油中のパーフルオロポリエーテル油の含有量は、好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上、最も好ましくは100質量%である。基油中のパーフルオロポリエーテル油の含有量が80質量%未満では、基油の耐熱性が劣り、早期に軸受の焼付きを起こし、満足する性能が得られない傾向がある。」
・「【0009】
本発明に使用されるメラミンシアヌレートは、メラミンとイソシアヌル酸のほぼ1:1の有機付加体で、外観は白色の粉末であり、通常は1次粒子径0.5?5μmの結晶性の高い物質として市販されている。メラミンシアヌレートは、耐熱性が高く、300℃でも長期間安定である。メラミンシアヌレートは、金属材料の滑り部において、耐荷重性が優れ、摩耗防止効果があり、また、同様に樹脂などの軟らかい材料に対しても摩擦や摩耗を促進することなく、優れた潤滑効果を示す。
従来、鉄鋼、造船、セメント等の重厚長大産業において使用される潤滑剤において、高温、低速、高荷重という要求を満たすために、二硫化モリブデンやグラファイトが主として使用されていた。しかし、作業環境汚染や製品汚染を防止するという観点から、白色製品の要求が強くなり、メラミンシアヌレートは、二硫化モリブデンやグラファイトに代替し得る固体潤滑剤として広く使用されている。メラミンシアヌレートの固体潤滑剤としての使用形態としては、グリース、ペースト、ドライフィルム等が多い。
このように、メラミンシアヌレートは、グリースにおいて、金属材料等の滑り部の耐荷重性向上を目的に、添加剤として使用されてきたため、そのグリース中の含有量は通常1?3質量%程度であり、多くとも5質量%以下であった。
また、これまでに、メラミンシアヌレートをグリースの増ちょう剤として用いることについては全く知られておらず、従って、メラミンシアヌレートを増ちょう剤として用いたグリースが、高温で使用される転がり軸受の寿命を大幅に延長するということを示唆する報告や開示は皆無である。
【0010】
本発明はメラミンシアヌレートを増ちょう剤として使用することを特徴とするものであり、本発明のグリース組成物中のメラミンシアヌレートの含有量は、少なくとも10質量%であり、好ましくは10?30質量%、さらに好ましくは15?30質量%、最も好ましくは、15?25質量%である。
10質量%未満では、増ちょう能力が無く、グリースが軸受から漏洩し、軸受が短寿命となり、また30質量%を超えると、グリースによる攪拌抵抗が大となり、発熱により寿命低下を自ら導いてしまう傾向がある。」
・「【0013】
実施例及び比較例
以下の表1及び2に示す増ちょう剤、基油、添加剤を、表1及び2に示す割合(質量部)でよく混ぜ、3本ロールミルで混練し、グリース組成物を調製した。得られたグリース組成物を以下の試験方法により評価した。結果を表1及び2に示す。
軸受潤滑寿命試験(ASTM D 3336mod.)
軸受6204に試験グリースを3.6g充填して、両側に鋼板のシールド板をかしめ、その軸受の外輪温度を200℃に保ち、荷重Fa=Fr=67Nの条件下、10000rpmで内輪を連続運転させる。軸受の回転トルクが過大になり、過電流(4アンペア超)を生じるまで、または軸受温度が15℃以上上昇するまでの時間のいずれか短い方を軸受潤滑寿命時間(単位:時間)とした。
混和ちょう度:JIS K2220 7.
錆止め性:Emcor防錆試験(IP220)
【0014】
【表1】

【0015】
【表2】

(*1):式(3)で表される平均分子量4100のもの
(*2):式(2)で表される平均分子量8000のもの
(*3):三菱化学株式会社製MCA
(*4):ダイキン工業株式会社製ルブロンL-5F
(*5):豊国製油株式会社製
(*6):三菱化学株式会社製
【0016】
メラミンシアヌレートを増ちょう剤とし、基油にパーフルオロポリエーテル油を用いた実施例1および2のグリース組成物は、ポリテトラフルオロエチレンを増ちょう剤とし、メラミンシアヌレートを含まない比較例1のグリース組成物と比べ高温下の軸受潤滑寿命が、はるかに長いことがわかる。また、メラミンシアヌレートの含有量が5質量%の比較例2の組成物は混和ちょう度が高くグリースとして使用できなかった。」

(3) 引用文献6の記載事項
引用文献6には、次の記載がある。
・「【請求項1】
増ちょう剤と基油を含むグリース組成物において、増ちょう剤として、1次粒径が0.1μm以下のポリテトラフルオロエチレンと1次粒径が0.1μm超0.5μm以下のポリテトラフルオロエチレンを含有することを特徴とするグリース組成物。
・・・
【請求項3】
基油がパーフルオロアルキルポリエーテルである請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
パーフルオロアルキルポリエーテルの分子構造が、枝分かれを持たない直鎖構造であり、かつ-OCF_(2)-ユニット(アセタール結合)を持たないことを特徴とする請求項3記載のグリース組成物。」
・「【0010】
本発明のグリース組成物の増ちょう剤としては、上記特定粒径のPTFEの他に、基油に分散し、これを半固体にできる粉体材料や、固体潤滑剤は全て増ちょう剤として使用できる。」
・「【0011】
本発明のグリース組成物に使用する基油としては、PFPE、鉱油、エステル系合成油、合成炭化水素油、ポリグリコール系合成油、フェニルエーテル系合成油、シリコーン系合成油等が挙げられる。蒸気圧が低く、真空で使用できる点でPFPEやシクロペンタン油が好ましい。真空下での長寿命を実現するためには、PFPEの中でも、下記の分子構造のものがさらに好ましい。
(1)枝分かれを持たない直鎖状の分子構造
(2)分子中に-CF_(2)O-ユニット(アセタール結合)を持たないもの
(1)の直鎖状のPFPEは、その立体障害が少ない構造から、流動性に優れる。すなわち、低温でも流動性を失わないことから、低温性に優れる(文献1:月間トライボロジー2,(1988)15)。
(2)の-CF_(2)O-ユニットを持たないものは、-CF_(2)O-ユニットを持つものはフッ素の持つ電子吸引効果が不充分なため、他のPFPEより耐熱性や耐薬品性がやや弱く(文献1)、EHL条件下で分解し易く、粘度低下し易いためである(文献2:日本トライボロジー学会トライボロジー会議予稿集(鳥取2004-11)377)。
【0012】
分子構造が枝分かれを持たない直鎖構造で、かつ-CF_(2)O-ユニットを持たないPFPEの市販品の例としては、ダイキン社製デムナムシリーズが挙げられる。デムナムシリーズのうち、好ましいものは、蒸気圧が低い高粘度タイプのデムナムS-100,S-200であり、特に好ましいものは、デムナムS-200である。
真空下の使用でなければ、基油は特に制限されない。
しかし、本発明のグリース組成物に使用する基油は、PFPEを、好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上含むものが望ましく、100質量%のものが最も好ましい。」

3 引用文献3、4に記載された発明(引用発明3、4)

(1) 引用発明3
引用文献3の【請求項1】及び【請求項3】(請求項1を引用する請求項3)には、次の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「基油、増稠剤及び固体潤滑剤からなり、ゴム部材同士またはゴム部材と樹脂部材の摺動箇所における下記測定方法による動摩擦係数が、0.01?0.20であるグリース組成物であって、固体潤滑剤として、メラミンシアヌレート(MCA)をグリース全量に対して0.1?20wt%配合したもの。
(動摩擦係数の測定方法)
往復動試験機を用い、NBRシート(下部試験片)上にグリース組成物を塗布量0.05gとなるように塗布し、上から樹脂製ボール(上部試験片、直径10mm)を試験荷重0.5kgfで押しつけ、摺動速度4mm/secで往復動させる(摺動距離10mm、試験温度:70℃)。往復摺動させた時の上部試験片と下部試験片の間に発生する摩擦力から摩擦係数を測定した。」

(2) 引用発明4
引用文献4の【請求項1】には、次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されていると認められる。
「基油としてパーフルオロポリエーテル油を含有し、増ちょう剤としてグリース組成物の全質量に対して少なくとも10質量%のメラミンシアヌレートを含有するグリース組成物。」

4 引用発明3を主引用発明とする場合の進歩性の判断

(1) 本願発明と引用発明3との対比
本願発明と引用発明3とを対比すると、引用発明3の「グリース組成物」は、本願発明の「潤滑剤組成物」に相当し、また、引用発明3の「ゴム部材」は、本願明細書の【0036】の定義からすると、本願発明でいう「樹脂」に該当するものであるから、両者は、「基油と、固体潤滑剤としてのメラミンシアヌレートとを含有する樹脂-樹脂摺動用潤滑剤組成物」である点で一致し、次の点で相違するといえる。
・相違点1:本願発明の基油は、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル 油のみからなるパーフルオロポリエーテル油を含むもので あるのに対して、引用発明3はこの点の明示がない点
・相違点2:本願発明のメラミンシアヌレートの含有量は、基油及びメ ラミンシアヌレートの合計量に対して、1?20質量%の 範囲内であるのに対して、引用発明3における当該含有量 は、グリース全量に対して0.1?20wt%である点
・相違点3:本願発明は、固体潤滑剤が基油への増ちょう作用を有する メラミンシアヌレートのみからなるのに対して、引用発明 3はこの点の明示がない点

(2) 相違点の検討
ア 相違点1について
(ア) 引用発明3に用いられる基油として、引用文献3の【0018】には、合成炭化水素油、エステル系合成油、エーテル系合成油、グリコール系合成油、フッ素油から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の合成油を用いることが好ましいことが記載されている。そして、そのうちのフッ素油については、【0023】?【0030】に詳述され、具体的には、「フッ素油としては、一般式(1)、(2)、(3)で表されるパーフルオロポリエーテル油から選ばれる少なくとも1種又は2種以上の混合物を用いることができる」ことが記載されるとともに(【0023】)、当該一般式(2)、(3)で表されるパーフルオロポリエーテル油として、以下の示す「直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油」が挙げられている(【0026】?【0029】)。
・一般式(2)の「直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油」
RfO(CF_(2)CF_(2)O)_(m)(CF_(2)O)_(n)Rf
ここで、Rfはパーフルオロ低級アルキル基であり、mおよびnは自然数であり、m+n=3?200、m:n=10?90:90?10であり、CF_(2)CF_(2)O基およびCF_(2)O基は主鎖中にランダムに結合されている。
・一般式(3)の「直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油」
F(CF_(2)CF_(2)CF_(2)O)_(m)CF_(2)CF_(3)
ここで、mは2?100の整数である。
そうすると、引用文献3には、引用発明3における基油としてフッ素油を用いること、そして、当該フッ素油として、上記一般式(2)、(3)で表される「直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油」を少なくとも1種、すなわち単独で用いることまでが既に教示されているといえ、このような教示に接した当業者であれば、引用発明3は、基油として上記一般式(2)、(3)で表される「直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油」を単独で用いることをも予定したものであると解するのが合理的である。
したがって、当該引用文献3の教示に従って、引用発明3における基油として、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなるパーフルオロポリエーテル油を含むものを採用することは、当業者が容易に想到し得る事項であると認められる。
(イ) 加えて、パーフルオロポリエーテル油(PFPE)に対する当業者の一般的な知見について整理してみると、引用文献6の【0011】、【0012】の記載から、次の知見を認めることができる。
・枝分かれを持たない直鎖状の分子構造のPFPEは、その立体障害が少ない構造から、流動性に優れる、すなわち、低温でも流動性を失わないことから、低温性に優れること。
・分子中に-CF_(2)O-ユニット(アセタール結合)を持つPFPEは、フッ素の持つ電子吸引効果が不充分なため、他のPFPEより耐熱性や耐薬品性がやや弱く、EHL条件下で分解し易く、粘度低下し易いこと。
・分子構造が枝分かれを持たない直鎖構造で、かつ-CF_(2)O-ユニットを持たないPFPEの市販品の例としては、蒸気圧が低い高粘度タイプのデムナムS-200などが挙げられること。
そして、上記の知見に照らすと、パーフルオロポリエーテル油のなかでも、例えば、本願発明の実施例(【0040】)においても使用されている、蒸気圧が低い高粘度タイプのデムナムS-200のような、分子構造が枝分かれを持たない直鎖構造で、かつ-CF_(2)O-ユニットを持たないものは、流動性や耐熱性に優れており、真空下などの苛酷な条件下であっても優位に使用することができることが分かる。
そうすると、引用発明3における基油として、引用文献3の【0023】?【0030】に詳述されているフッ素油の中から、特に、流動性や耐熱性などの特性において優位に使用できることが既に当業者間で認知されている、一般式(3)のもの、すなわち、分子構造が枝分かれを持たない直鎖構造で、さらには-CF_(2)O-ユニットを持たないパーフルオロポリエーテル油を選択することは、上記の知見を有する当業者にとって、さほど困難なこととは認められない。
したがって、この点からみても、相違点1に係る本願発明の技術的事項は容易想到の事項といわざるを得ない。
イ 相違点2について
引用文献3の【0035】?【0037】には、メラミンシアヌレート(MCA)の配合割合について、メラミンシアヌレート(MCA)は、0.1?20wt%の範囲で配合され、好ましくは、1?5wt%の範囲で配合され、さらに好ましくは2?5wt%の範囲で配合され(【0035】)、上記範囲で配合することでゴム部材同士またはゴム部材と樹脂部材の摺動箇所の摩擦係数を低減することができ(【0036】)、配合量が0.1wt%未満では、ゴム部材に対するMCAの吸着が少ないため、摩擦係数を低減することができず、MCAの配合量が20wt%以上ではグリース組成物そのものが硬くなってしまうので、摩擦係数が上昇してしまうという問題がある(【0037】)旨説明されている。
そうすると、引用発明3におけるメラミンシアヌレートの配合割合は、所望する摩擦係数やグリース組成物の硬さ(ちょう度)に応じて決定されており、本願発明においてメラミンシアヌレートの含有量を特定している理由(本願明細書の【0028】)と軌を一にするものであることが分かるから、当該配合割合を最適化し、本願発明が規定する程度の数値とすることは、単なる設計的事項の範疇のことというべきであり、この点に格別の創意は認められない。
ウ 相違点3について
引用文献3の【0038】に「固体潤滑剤はMCA単独でもよい」と記載されるとおり、引用発明3は、固体潤滑剤としてメラミンシアヌレートのみを用いることを予定していることは明らかである。
また、本願発明は、当該メラミンシアヌレートについて「基油への増ちょう作用を有する」という作用を明示するものであるが、引用発明3も同じく、固体潤滑剤としてメラミンシアヌレートを使用している以上、当該メラミンシアヌレートは本願発明と同様の作用を奏するものと解するのが合理的である。加えて、引用文献4の【0009】には、メラミンシアヌレートを増ちょう剤として用いることが記載され、引用文献6の【0010】には、固体潤滑剤は全て増ちょう剤として使用できる旨記載されていることから、メラミンシアヌレート自体に増ちょう作用があることは、既に当業者がよく知るところというべきである。
してみると、相違点3に係る本願発明の技術的事項は、既に引用発明3が具備するものと解され、当該相違点3は実質的な相違点とはいえない。
エ 審判請求人の主張について
ここで、審判請求人の主張について触れておく。
(ア) 審判請求人が上記当審拒絶理由通知に対して平成28年10月21日に提出した意見書での主な主張は次のとおりである。
(i) 引用文献3には、基油として数多くの化合物が例示されており、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油は基油の一例にすぎず、実施例にポリ-α-オレフィンしか開示されていないため、当業者が直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油に着目する動機付けがない。
また、引用文献3には、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油と分岐構造のパーフルオロポリエーテル油とが並列的に記載されているため、当業者がフッ素油に着目したとしても、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油にのみ着目する動機付けはない。
さらに、引用発明3は、増ちょう剤と固体潤滑剤の両方を含有することを特徴とし、固体潤滑剤としてメラミンシアヌレートを用いているのに対して、本願発明では、固体潤滑剤であるメラミンシアヌレートが基油への増ちょう作用を有するため、増ちょう剤を含有しなくても優れた潤滑性能を発揮する点で、引用発明3と異なる。
(ii) 引用文献6に係るグリース組成物は、金属部材同士の摺動において使用されるものであり、引用文献3に係るグリース組成物とは、適用される製品が異なり、技術分野の関連性が低いものであるため、当業者が引用発明3と引用文献6記載の技術的事項とを組み合わせる動機付けはない。
また、引用文献6には、「真空下での使用でなければ、基油は特に制限されない」(【0012】)と記載されているところ、本願発明に係る潤滑剤組成物は、真空下での使用を想定したものではないため、引用文献6の当該記載より、当業者が直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油に着目する動機付けはない。
さらに、引用文献6には、グリース組成物の増ちょう剤としては、特定粒径のPTFEの他に、MCAなどの固体潤滑剤も使用可能であると記載されているものの、引用文献6の実施例には、増ちょう剤としてPTFEのみを使用した例しかないのに対して、本願発明に係る潤滑剤組成物は、メラミンシアヌレート以外の他の増ちょう剤を含有しなくても優れた潤滑性能を発揮する点で、引用文献6に記載されたものと異なる。
(iii) 本願明細書の表2?5に示す、本願発明の効果は、引用発明3等から予測できない。
(イ) 審判請求人の主張についての検討
上記の主張について順に検討する。
(i)について
審判請求人が指摘するとおり、確かに、引用文献3において実際に実施例として使用されている基油は、ポリ-α-オレフィン(PAO)のみであって、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなるパーフルオロポリエーテル油を使用した具体例は見当たらない。
しかしながら、引用文献3の【0031】には、「本発明に用いられる基油としては、樹脂、ゴムに対する影響(樹脂、ゴムが劣化しない)を考慮し、合成炭化水素油、フッ素油がより好ましく、樹脂、ゴムに対する影響(樹脂、ゴムが劣化しない)に加え、低コスト化も考慮すると、合成炭化水素油が更に好ましい。特に好ましくは、ポリ-α-オレフィン(PAO)である。」と記載されていることから、引用文献3の実施例においてポリ-α-オレフィンを基油として用いているのは、単に低コスト化を重視した結果と解すべきである。そして、もとより、引用発明3を実施例に限定して解釈する理由もない。
そうすると、引用発明3において、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油(フッ素油)は、基油としてふさわしくないものとして位置づけられているわけではなく、むしろ、樹脂、ゴムを劣化しない好適なものと認識されていたと考えるのが合理的であるから、引用文献3の実施例においてポリ-α-オレフィンのみが基油として用いられている事実によって、上記の容易想到性の判断が左右されるわけではない。
また、「相違点1について」の項で述べたとおり、引用文献3には、引用発明3の基油として、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油を単独で用いることが教示されていることに加え、引用文献6に記載のとおり、当業者は、当該直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油の優位な特性に関する知見を有しているのであるから、引用発明3の基油として直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなるパーフルオロポリエーテル油に着目する動機は十分に存すると解すべきである。
さらに、メラミンシアヌレート自身が有する増ちょう作用については「相違点3について」の項にて述べたとおりであるとともに、本願発明は、さらに増ちょう剤を配合する態様を排除しているわけではないから、当該増ちょう剤の有無は容易想到性の判断に影響するものではない。
したがって、上記審判請求人の主張(i)を採用することはできない。
(ii)について
審判請求人は引用文献6の記載事項の技術分野等について縷々主張するが、引用文献6に記載されたパーフルオロポリエーテル油についての知見は、当該パーフルオロポリエーテル油自体の特性に関するものであって、特に、引用文献6に係るグリース組成物が金属摺動用のものであるか否かといった諸条件に影響を受けるような類いのものではないと解されるから、当該知見を引用発明3において考慮することに何ら問題はない。
したがって、上記審判請求人の主張(ii)は当を得たものとはいえず、採用することはできない。
(iii)について
上記「相違点1について」の項で述べた、引用文献6記載の知見を有する当業者は、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油を採用することにより、側鎖構造のものを用いた場合よりも流動性などの諸特性が向上し、もって潤滑性能が改善されることを期待するのであるから、本願発明の作用効果(【0045】、【0046】、【表2】?【表5】などの記載された優れた潤滑性能)については、引用発明3における基油の選択により、当業者が予測し得る範疇のことと解するのが相当である。
したがって、上記審判請求人の主張(iii)を採用することはできない。

(3) 小括
以上のとおり、上記相違点1?3に係る本願発明の技術的事項は、当業者が容易に想到し得た事項にすぎず、これらの技術的事項により得られる作用効果も当業者の予測の範疇のものであるから、本願発明は、引用発明3、あるいは、引用発明3並びに引用文献4及び6記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 引用発明4を主引用発明とする場合の進歩性の判断

(1) 本願発明と引用発明4との対比
本願発明と引用発明4とを対比すると、引用発明4の「グリース組成物」は、本願発明の「潤滑剤組成物」に相当するものであるから、両者は「パーフルオロポリエーテル油を含む基油と、メラミンシアヌレートとを含有する潤滑剤組成物」である点で一致し、次の点で相違するといえる。
・相違点4:本願発明の潤滑剤組成物は、「樹脂-樹脂又は樹脂-金属 摺動用」であるのに対して、引用発明4はこの点の明示が ない点
・相違点5:本願発明の基油は、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル 油のみからなるパーフルオロポリエーテル油を含むもので あるのに対して、引用発明4はこの点の明示がない点
・相違点6:本願発明のメラミンシアヌレートの含有量は、基油及びメ ラミンシアヌレートの合計量に対して、1?20質量%の 範囲内であるのに対して、引用発明4における当該含有量 は、グリース組成物の全質量に対して少なくとも10質量 %である点
・相違点7:本願発明は、メラミンシアヌレートを固体潤滑剤として含 有し、さらに、当該固体潤滑剤が基油への増ちょう作用を 有するメラミンシアヌレートのみからなるのに対して、引 用発明4はこの点の明示がない点

(2) 相違点の検討
ア 相違点4について
引用文献4の【0009】には、「メラミンシアヌレートは、金属材料の滑り部において、耐荷重性が優れ、摩耗防止効果があり、また、同様に樹脂などの軟らかい材料に対しても摩擦や摩耗を促進することなく、優れた潤滑効果を示す。」と記載されていることから、引用発明4のグリース組成物を、「樹脂-樹脂又は樹脂-金属摺動用」として用いることは当業者にとって容易なことである。
イ 相違点5について
引用文献4の【0008】には、式(1)、(2)として、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油が記載されており、また、引用文献4には、当該【0008】に列挙されたものを混合物として使用しなければならない旨の記載はなく、当該式(1)あるいは式(2)記載のものを単独で用いることを許容するものであると解するのが相当である。
そして、当業者は、パーフルオロポリエーテル油について、上記引用文献6記載の知見を有しているのであるから、上記相違点1の検討と同様、相違点5に係る本願発明の技術的事項についても当業者が容易に想到し得る事項というべきである。
ウ 相違点6について
引用文献4の【請求項3】、【0010】によれば、引用発明4は、メラミンシアヌレートの含有量として10?30質量%とすることを好適な範囲として想定しており、その理由は増ちょう能力を加味したものであることが理解できるから、上記相違点2と同様の理由により、当該相違点5に係る本願発明の技術的事項についても容易想到の事項といえる。
エ 相違点7について
引用発明4は、引用文献4の【0014】【表1】の実施例1などからも明らかなとおり、基油とメラミンシアヌレートのみからなるグリース組成物(潤滑油組成物)の態様を含むものである。
そして、引用発明4は、メラミンシアヌレートを増ちょう剤として用いているものの、本願発明と引用発明4は、ともにメラミンシアヌレートを使用しており、成分上の違いはないのであるから、当該メラミンシアヌレートを本願発明のように固体潤滑剤と捉えるか否かは、単なる呼称上の問題というべきである。
してみると、上記相違点3と同様、相違点7に係る本願発明の技術的事項は、既に引用発明4が具備するものと解され、当該相違点7は実質的な相違点とはいえない。
オ 審判請求人の主張について
(ア) 平成28年10月21日提出の意見書における審判請求人の主な主張は、次のとおりである。
(iv) 引用文献4には、パーフルオロポリエーテル油の具体例として、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油と分岐構造のパーフルオロポリエーテル油の両方が記載され、引用文献4の実施例には、基油が分岐構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなる例と、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油と分岐構造のパーフルオロポリエーテル油の混合油である例しか開示されておらず、引用文献4には、パーフルオロポリエーテル油が直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなることが好ましいとする記載はないため、当業者が直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油に着目する動機付けはない。
(v) 引用文献4の【0009】に記載された「メラミンシアヌレートは、金属材料の滑り部において、耐荷重性が優れ、摩耗防止効果があり、また、同様に樹脂などの軟らかい材料に対しても摩擦や摩耗を促進することなく、優れた潤滑効果を示す。」は、メラミンシアヌレートの作用効果を示したものであって、グリース組成物の作用効果を示したものではない。仮に、グリース組成物の作用効果を示したものであると解釈した場合には、引用文献4に係るグリース組成物は、主に金属-金属摺動に使用されるものであり、樹脂-樹脂摺動にも適用可能であると解され、金属-金属摺動においては潤滑性能が発揮されない本願発明に係る潤滑剤組成物とは異なる。
(vi) 本願発明は、引用発明4などから予測できない効果を奏する。
(イ) 上記主張についての検討
上記の主張について順に検討する。
(iv)について
「相違点5について」の項にて検討したとおり、引用文献4の【0008】には、基油として使用し得るものとして、直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油が教示されているのであるから、当該教示は、引用発明4の基油として直鎖構造のパーフルオロポリエーテル油のみからなるパーフルオロポリエーテル油を選択することの、十分な動機付けとなるものである。
そして、引用文献6に記載された知見をも併せ考慮すると、上記動機付けの存在を否定する理由は見当たらないから、上記審判請求人の主張(iv)を採用することはできない。
(v)について
引用文献4の【0009】の記載は、メラミンシアヌレートに関するものであるが、その作用効果は、引用発明4に係るグリース組成物全体が奏する効果に波及するのであるから、「樹脂などの軟らかい材料」に対する有利な効果を当該グリース組成物全体が奏するものと捉えることに何ら問題はない。また、このグリース組成物が、主に金属-金属摺動に使用されるものであり、樹脂-樹脂摺動にも適用可能であって、金属-金属摺動においては潤滑性能が発揮されない本願発明に係る潤滑剤組成物とは異なるとの主張についても、当該主張は、引用発明4が樹脂-樹脂摺動に適用できるものであることを自認するものであるから、当を得たものとはいえず、当該主張(v)を採用することはできない。
(vi)について
上記主張(iii)と同様の理由により、当該主張(vi)も採用することはできない。

(3) 小括
以上のとおり、上記相違点4?7に係る本願発明の技術的事項は、当業者が容易に想到し得た事項にすぎず、これらの技術的事項により得られる作用効果も当業者の予測の範疇のものであるから、本願発明は、引用発明4、あるいは、引用発明4及び引用文献6記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4 むすび

以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願のその他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-05 
結審通知日 2016-12-12 
審決日 2016-12-27 
出願番号 特願2010-248964(P2010-248964)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (C10M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 増永 淳司  
特許庁審判長 豊永 茂弘
特許庁審判官 冨士 良宏
日比野 隆治
発明の名称 潤滑剤組成物  
代理人 来間 清志  
代理人 上島 類  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 二宮 浩康  
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