• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1324752
審判番号 不服2015-22417  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-21 
確定日 2017-02-09 
事件の表示 特願2011-186058「情報処理装置,スケジューリング方法およびプログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 7日出願公開,特開2013- 47892〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年8月29日(以下「出願日」という)の出願であって,平成27年2月13日付けで審査官より拒絶理由が通知され,これに対して平成27年4月13日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされたが,平成27年10月5日付けで審査官により拒絶査定がなされ,これに対して平成27年12月21日付けで審判請求がなされると共に手続補正がなされ,平成28年3月29日付けで審査官により拒絶理由(以下「前置拒絶理由」という)が通知され,平成28年8月1日付けで審査官により特許法164条第3項の規定に基づく報告がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1乃至7に係る発明は,平成27年12月21日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至請求項7に記載された事項により特定されると認められるところ,本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という)は次のとおりものであると認められる。

「 複数のコア部を有するプロセッサと,
コア部へのプロセススケジューリングを行うスケジューラと,
を備え,
前記スケジューラは,
実行可能な複数のプロセスを,アシストプロセステーブルに記載された処理を実行する第1のプロセスと,通常プロセステーブルに記載された処理を実行する第2のプロセスとに分けて取得し,前記第2のプロセスが,前記複数のコア部のうちの一部のコア部で実行されている期間に,未使用のコア部に前記第1のプロセスを実行させるように,前記第1のプロセスの実行タイミングを調整する,
ことを特徴とする情報処理装置。」

第3 引用文献
1 引用文献1
本願出願日前に頒布され,前置拒絶理由で引用された文献である特表2009-541851号公報(以下「引用文献1」という)には,関連する図面と共に,以下の技術的事項が記載されている。(下線は参考のため当審で付与したものである)

A 「【0017】
リソースに基づいたスケジューラ
図1Aは,この発明の実施例に従った,リソースに基づいたスケジューリングワークリスト120を有するリソースに基づいたスケジューラ(RBS)100の図である。RBS100は,異なるコンピュータリソースの利用可能容量に基づいて,コンピュータジョブを事前対応的にスケジュールする。例として,異なるリソースは,CPU,ディスクI/O,ネットワークI/O,ビデオ,メモリ,キーボード,ネットワークリソースなどを含み得るが,これらに限定されない。「コンピュータジョブ」または「ジョブ」という用語は,本明細書中で用いられるとき,コンピュータプロセス,スレッド,(本明細書中で後述する)マイクロジョブ,または実行可能なコンピュータコードの任意の部分を含むが,これらに限定されない。RBS100は,いずれかの他のジョブのリソース要件と衝突することなく各コンピュータジョブがリソースの要件を受取ることができるようにしてもよい。1つの実施例では,RBS100は,既にリソースを利用している他のジョブのうちのいずれかの侵害が最小限の状態で,いつ特定のリソースが一部分だけ利用されるかを判断でき,未利用の部分を選択されたジョブに割当てることができる。」

B 「【0027】
スケジューリング判断の延期
1つの実施例では,コンピュータジョブが特定のリソースを利用することを許可されるべきであるかどうかについての判断は延期されてもよい。たとえば,特定のコンピュータジョブは,リソースに基づいたスケジューラが特定のコンピュータジョブをスケジュールすべきであるかどうかを考慮しさえする前に,他のコンピュータジョブからの指定されたある数の要求を処理することができるようにする利用基準を有していてもよい。1つの実施例では,リソースの利用が閾値を上回ると,RBSは特定のコンピュータジョブの実行を延期する。特定のコンピュータジョブは,特定のコンピュータジョブをスケジュールする前に,処理され得る他のコンピュータジョブからの要求の数を指定する。1つの実施例では,その数の要求が処理された後,次に特定のコンピュータジョブがスケジュールされる。別の実施例では,要求が処理された後,RBSは特定のコンピュータジョブがリソースを有することができるようにするかどうかを判断する。
【0028】
1つの実施例では,リソースに基づいたスケジューラは,遅延なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリストと,延期され得るリソース要求のための延期ワークリストとを有する。延期リストにおける各項目は,要求が延期リストにのると現在の要求番号を刻印されてもよい。これらの延期された要求は,どの延期された要求が最初に処理されるべきであるかに基づいて順序付けられてもよい。1つの実施例では,複数の延期ワークリストが存在する。RBSが新しい要求を開始することを決定すると,RBSはまず,通常のリストに対して,いずれの要求も期限切れであるかどうかを確認するために延期リストを見て,次いでそれらを次に取得し得る。
【0029】
リソースに基づいたスケジューリングワークリスト
1つの実施例では,RBS100は,コンピュータジョブが使用するようにスケジュールされ得るリソースに基づいたスケジューリングワークリスト120をリソースごとに有する。たとえば,RBS100は,CPUリソースワークリスト120(1),ディスクI/Oワークリスト120(2),ネットワークI/Oワークリスト120(3),および他のリソースワークリスト120(n)を有する。他のリソースワークリストの例は,ネットワークリソースワークリスト,ビデオリソースワークリスト,キーボードリソースワークリストを含むが,これらに限定されない。各ワークリスト120は,そのリソースに対応するリソースを利用することを待っているジョブを備える。図を不明瞭にしないために,すべての可能なリソースに基づいたスケジューリングワークリストが図1Aに示されているわけではない。1つの実施例では,特定のワークリストは,リソースの組合せを利用するコンピュータジョブのためのものである。1つの実施例では,特定のリソースのためのワークリストが2つ以上あり,各ワークリストは異なる優先順位に対応する。たとえば,優先順位が高いコンピュータジョブがあるワークリストに入り,優先順位が中程度であるコンピュータジョブが別のワークリストに入る,などである。ワークリストは順序付けられる場合もあれば,順序付けられない場合もある。
【0030】
1つの実施例では,RBS100は,実行可能なコード108の分析に基づいて,どのワークリストにコンピュータジョブを載せるかを判断する。たとえば,1つの実施例では
,RBS100は,コンピュータジョブの実行可能なコード108における命令を調べて,コンピュータジョブがどのリソースを必要としているかを判断する。
【0031】
1つの実施例では,十分な量のコンピュータリソースが利用可能である場合,RBS100は,リソースに対応するワークリストにおけるコンピュータジョブのうちの1つにリソースを与える。たとえば,スケジューリング論理112は,リソースの利用可能容量およびコンピュータジョブの利用基準に基づいて,ワークリスト上のコンピュータジョブのうちの1つを選択する。他の選択基準を用いることができる。選択基準は,ジョブをワークリストに加えた順序,コンピュータジョブの優先順位(たとえばプロセスの優先順位,スレッドの優先順位),ならびにリソースの利用可能容量とジョブのリソース必要性とのマッチングを含むが,これらに限定されない。選択は,これらの基準のいずれかの組合せおよび具体的に記載されていない他の基準に基づいていてもよい。

C 「【0035】
アプリケーションに基づいた例
以下は,アプリケーションにおけるリソースに基づいたスケジューリングの一例である。例として,アプリケーションはデフラグ用プログラムまたはウイルススキャナであってもよい。この例では,コンピュータジョブAは,ディスクI/Oスケジューリングワークリスト120(2)の上部にあり,60%のディスクI/O利用可能容量の利用基準を有し,ディスクI/Oスケジューリングワークリスト120(2)上で次であるコンピュータジョブBは,20%のディスクI/O利用可能容量の利用基準を有する。ディスクI/
Oが30%の利用可能容量を有する場合,RBS100はコンピュータジョブAをスケジュールすることはないであろう。なぜなら,ディスクI/Oは十分な利用可能容量を持たないためである。しかし,コンピュータジョブBはスケジュールされ得るであろう。RBS100は,この場合,ディスクI/Oを無駄にする代わりに利用するように適切なコンピュータジョブ(コンピュータジョブB)をスケジュールすることによって30%のディスクI/O利用可能容量を使用する。RBS100が60%のディスクI/Oを必要とするコンピュータジョブAにディスクI/Oリソースを与えた場合,これはコンピュータジョブの衝突を引起していたかもしれない。なぜなら,200%以上のディスクI/Oリソースが割当てられていたであろうという理由のためである。」

D 「【0066】
ハードウェア概要
図3は,本発明の実施例が実現され得るコンピュータシステム300を図示するブロック図である。プロセス200のステップは,システム300の1つ以上のコンピュータ読取可能媒体の命令として記憶され,コンピュータシステム300のプロセッサ上で実行される。コンピュータシステム300は,情報を通信するためのバス302または他の通信メカニズムと,バス302に結合される,情報を処理するためのプロセッサ304とを含む。コンピュータシステム300はまた,バス302に結合される,プロセッサ304によって実行されるべき情報および命令を記憶するための,ランダムアクセスメモリ(RAM)または他の動的記憶装置などのメインメモリ306も含む。メインメモリ306はまた,プロセッサ304によって実行されるべき命令の実行中に,一時変数または他の中間情報を記憶するために用いられ得る。コンピュータシステム300はさらに,バス302に結合される,プロセッサ304のための静的情報および命令を記憶するための読出専用メモリ(ROM)308または他の静的記憶装置を含む。情報および命令を記憶するための,磁気ディスクまたは光学ディスクなどの記憶装置310が設けられ,バス302に結合される。コンピュータシステム300は,プロセッサ304をいくつでも有してよい。たとえば,1つの実施例では,コンピュータシステム300はマルチプロセッサシステムである。プロセッサ304は,コアをいくつでも有してよい。1つの実施例では,プロセッサ304はマルチコアプロセッサ304である。コンピュータシステム300は,ハイパースレッドマシン内で用いられ得る。」

2 引用文献2
本願出願前に頒布され,前置拒絶理由にて引用された文献である特開2010-244316号公報(以下「引用文献2」という)には,図面とともに次の事項が記載されている。

E「【0165】
このように,制御部101は,入力レートや出力レート等に基づいて,画像符号化処理に割り当てるハードウェア資源の量をより適切な状態に保つことができる。画像符号化処理に割り当てられないコアは,例えば他の処理に割り当てることができるので,以上のような制御により,サブCPUコア442がより有効に活用されるようになる。つまり,符号化装置100は,符号化処理においてハードウェア資源をより有効に活用することができる。」

3 引用発明の認定
引用文献1に記載された事項を検討する。
ア 上記Dに「コンピュータシステム300はマルチプロセッサシステムである。プロセッサ304は,コアをいくつでも有してよい。1つの実施例では,プロセッサ304はマルチコアプロセッサ304である」と記載されていることから,引用文献1には「複数のコアを有するマルチコアプロセッサ」を有する「コンピュータシステム」が記載されていると認められる。

イ 上記Aに「リソースに基づいたスケジューリングワークリスト120を有するリソースに基づいたスケジューラ(RBS)100の図である。RBS100は,異なるコンピュータリソースの利用可能容量に基づいて,コンピュータジョブを事前対応的にスケジュールする」と記載されていることから,「コンピュータジョブのスケジューリングを行うリソースに基づいたスケジューラ」が記載されているといえる。また,上記Aに「「コンピュータジョブ」または「ジョブ」という用語は,本明細書中で用いられるとき,コンピュータプロセス,スレッド,(本明細書中で後述する)マイクロジョブ,または実行可能なコンピュータコードの任意の部分を含むが,これらに限定されない。」と記載されていることから,引用文献1の「コンピュータジョブ」には「コンピュータプロセスを含む」といえる。そうすると,引用文献1には,「コンピュータジョブ(コンピュータプロセスを含む)のスケジューリングを行うリソースに基づいたスケジューラ(RBS)」が記載されていると認められる。

ウ 上記Bに「リソースに基づいたスケジューラは,遅延なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリストと,延期され得るリソース要求のための延期ワークリストとを有する」と記載されていることから,引用文献1には「リソースに基づいたスケジューラは,遅延なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリストと,延期され得るリソース要求のための延期ワークリストとを有」することが記載されていると認められる。

エ 上記Bに「リソースに基づいたスケジューリングワークリスト(中略)各ワークリストは異なる優先順位に対応する。たとえば,優先順位が高いコンピュータジョブがあるワークリストに入り,優先順位が中程度であるコンピュータジョブが別のワークリストに入る,などである」と記載されていることから,引用文献1の「リソースに基づいたスケジューラ」には「優先順位の高いコンピュータジョブが入ったワークリスト」と「優先順位が中程度であるコンピュータジョブが入る別のワークリスト」を有するといえ,「優先順位が中程度であるコンピュータジョブ」は「優先順位の高いコンピュータジョブ」に対して「優先順位が高くないコンピュータジョブ」と言い換えることができるので,引用文献1の「リソースに基づいたスケジューラ(RBS)」には「優先順位の高いコンピュータジョブが入ったワークリストと,優先順位が高くないコンピュータジョブが入ったワークリスト等を有」していることが記載されているといえる。

オ 上記Bに「RBS100は,リソースに対応するワークリストにおけるコンピュータジョブのうちの1つにリソースを与える。たとえば,スケジューリング論理112は,リソースの利用可能容量およびコンピュータジョブの利用基準に基づいて,ワークリスト上のコンピュータジョブのうちの1つを選択する。他の選択基準を用いることができる。選択基準は,ジョブをワークリストに加えた順序,コンピュータジョブの優先順位(たとえばプロセスの優先順位,スレッドの優先順位),ならびにリソースの利用可能容量とジョブのリソース必要性とのマッチングを含むが,これらに限定されない。」と記載されていることから,引用文献1の「リソースに基づいたスケジューラ(RBS)」は「コンピュータジョブの優先順位,リソースの利用可能容量とリソース必要性とのマッチングを含む基準を用いて,コンピュータリソースが利用可能である場合,ワークリストのコンピュータジョブの一つを選択」することが記載されているといえる。

カ 上記Aに「RBS100は,既にリソースを利用している他のジョブのうちのいずれかの侵害が最小限の状態で,いつ特定のリソースが一部分だけ利用されるかを判断でき,未利用の部分を選択されたジョブに割当てることができる」と記載されていることから,引用文献1の「リソースに基づいたスケジューラ(RBS)」は「既にリソースを利用しているコンピュータジョブのうち,いつ特定のリソースが一部分だけを利用されるかを判断でき,未使用部分を選択されたジョブに割り当てる」ことが記載されているといえる。

キ 上記ア乃至カに示した事項により,引用文献1には,次の発明(以下「引用発明」という)が記載されているものと認められる。

「複数のコアを有するマルチコアプロセッサと,
コンピュータジョブ(コンピュータプロセスを含む)のスケジューリングを行うリソースに基づいたスケジューラ(RBS)と,
前記リソースに基づいたスケジューラ(RBS)は,遅滞なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリストと,延期され得るリソース要求のための延期ワークリストと,優先順位の高いコンピュータジョブが入ったワークリストと,優先順位が高くないコンピュータジョブが入ったワークリスト等を有し,
コンピュータジョブの優先順位,リソースの利用可能容量とリソース必要性とのマッチングを含む基準を用いて,コンピュータリソースが利用可能である場合,ワークリストのコンピュータジョブの一つを選択し,
既にリソースを利用しているコンピュータジョブのうち,いつ特定のリソースが一部分だけを利用されるかを判断でき,未使用部分を選択されたジョブに割り当てる,
ことを特徴とするコンピュータシステム」

第4 対比
(ア)引用発明の「複数のコアを有するマルチコアプロセッサ」は,本願発明の「複数のコア部を有するプロセッサ」に相当する。

(イ)引用発明の「コンピュータジョブ(コンピュータプロセスを含む)のスケジューリングを行うリソースに基づいたスケジューラ(RBS)」と,本願発明の「コア部へのプロセススケジューリングを行うスケジューラ」とを対比すると,本願発明の「コア部」は上位概念で「リソース」といえるので,両者は後記する点で相違するものの,
“リソースのプロセススケジューリングを行うスケジューラ”という点で共通する。

(ウ)引用発明の「前記リソースに基づいたスケジューラ(RBS)は,遅滞なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリストと,延期され得るリソース要求のための延期ワークリストと,優先順位の高いコンピュータジョブが入るワークリストと,優先順位が高くないコンピュータジョブが入るワークリスト等を有し,コンピュータジョブの優先順位,リソースの利用可能容量とリソース必要性とのマッチングを含む基準を用いて,コンピュータリソースが利用可能である場合,ワークリストのコンピュータジョブの一つを選択し,既にリソースを利用しているコンピュータジョブのうち,いつ特定のリソースが一部分だけを利用されるかを判断でき,未使用部分を選択されたジョブに割り当てる」と,本願発明の「前記スケジューラは,実行可能な複数のプロセスを,アシストプロセステーブルに記載された処理を実行する第1のプロセスと,通常プロセステーブルに記載された処理を実行する第2のプロセスとに分けて取得し,前記第2のプロセスが,前記複数のコア部のうちの一部のコア部で実行されている期間に,未使用のコア部に前記第1のプロセスを実行させるように,前記第1のプロセスの実行タイミングを調整する」とを対比すると,
引用発明の「遅滞なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリスト」又は「優先順位の高いコンピュータジョブが入るワークリスト」は,本願発明の「通常プロセステーブル」に相当し,引用発明の「延期され得るリソース要求のための延期ワークリスト」又は「優先順位の高くないコンピュータジョブが入るワークリスト」は,本願発明の「アシストプロセステーブル」に相当し,引用発明の「優先順位が高くないコンピュータジョブ」及び「優先順位の高いコンピュータジョブ」は,引用発明のコンピュータジョブにはコンピュータプロセスが含まれることから,本願発明の「第1のプロセス」及び「第2のプロセス」にそれぞれ相当し,引用発明の「ワークリストのコンピュータジョブの一つを選択」することは,ワークリストからコンピュータジョブを選択することは,各ワークリスト毎に分けてコンピュータジョブを選択(取得)しているといえるので,本願発明の「分けて取得」することに相当する。
引用発明の「既にリソースを利用しているコンピュータジョブ」には,「遅滞なく満たされるべきであるリソース要求のための通常のワークリスト」に入るような「優先順位の高いコンピュータジョブ」が含まれていることは明らかであり,引用発明の「リソース」と本願発明の「コア部」は上位概念として「リソース」といえるので,本願発明の「第2プロセスが前記複数のコア部(リソース)のうちの一部のコア部(リソース)で実行されている期間」に対応し,引用発明の「いつ特定のリソースが一部分だけを利用されるかを判断でき,未使用部分を選択されたジョブに割り当てる」ことは,「延期され得るリソース要求のための延期ワークリスト」に入るような「優先順位の高くないジョブ」が含まれるといえるので,本願発明の「未使用のコア部(リソース)に前記第1プロセスを実行させるように,実行第1プロセスの実行タイミングと調整する」ことに対応する。そうすると,後記する点で相違するものの,
“前記スケジューラは,実行可能な複数のプロセスを,アシストプロセステーブルに記載された処理を実行する第1のプロセスと,通常プロセステーブルに記載された処理を実行する第2のプロセスとに分けて取得し,プロセスが,複数のリソースのうちの一部のリソースで実行されている期間に,未使用のリソースにプロセスを実行させるように,プロセスの実行タイミングを調整する”という点で共通する。

(エ)引用発明の「コンピュータシステム」は本願発明の「情報処理装置」に相当する。

(オ)上記(ア)乃至(エ)
<一致点>
複数のコア部を有するプロセッサと,
リソースへのプロセススケジューリングを行うスケジューラと,
を備え,
前記スケジューラは,
実行可能な複数のプロセスを,アシストプロセステーブルに記載された処理を実行する第1のプロセスと,通常プロセステーブルに記載された処理を実行する第2のプロセスとに分けて取得し,プロセスが,複数のリソースのうちの一部のリソースで実行されている期間に,未使用のリソースにプロセスを実行させるように,プロセスの実行タイミングを調整する,
ことを特徴とする情報処理装置。

<相違点>
「リソース」の割り当てに関し,本願発明では,「コア部」への割り当てを行い,「第2プロセスが,複数のコア部のうちの一部のコア部で実行されている期間に,未使用のコア部に第1プロセスを実行させるように,第1プロセスの実行タイミングを調整」しているのに対して,引用発明では「リソース」の一つとしてCPUを含み「マルチコアプロセッサ」を用いて、リソースに基づいたスケジューリングを行っているものの,「リソース」の割り当てとして「コア部」を特定していない点。


第5 当審の判断
相違点について検討する。
引用文献2(上記E参照)には「制御部101は,入力レートや出力レート等に基づいて,画像符号化処理に割り当てるハードウェア資源の量をより適切な状態に保つことができる。画像符号化処理に割り当てられないコアは,例えば他の処理に割り当てることができるので,以上のような制御により,サブCPUコア442がより有効に活用されるようになる」と記載されているように,リソース(ハードウエア資源)の割り当てとして,複数のCPUコアのうち,割り当てられないCPUコアには他の処理を割り当て,リソースを有効活用させることは周知慣用技術に過ぎず,引用発明のリソースの割り当てとして,「CPUコア」の割り当てを行うことは当業者が適宜なし得ることであり,優先順位の高い第2プロセス(通常プロセス)からコアの割り当てを行い,優先順位の低い第1プロセスを未使用のリソース(CPUコア)に割り当てることに格別の困難性が認められない。
よって,相違点は格別なものではない。

第6 むすび
したがって,本願発明は,本願の特許出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-11-15 
結審通知日 2016-11-22 
審決日 2016-12-15 
出願番号 特願2011-186058(P2011-186058)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 幸雄  
特許庁審判長 石井 茂和
特許庁審判官 須田 勝巳
高木 進
発明の名称 情報処理装置、スケジューリング方法およびプログラム  
代理人 服部 毅巖  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ