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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60W |
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管理番号 | 1324757 |
審判番号 | 不服2016-930 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-01-20 |
確定日 | 2017-02-09 |
事件の表示 | 特願2013-551132「車両の運転支援装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 7月 4日国際公開、WO2013/098996〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、2011年12月28日を国際出願日とする出願であって、平成26年6月13日に特許法第184条の5第1項に規定する国内書面が提出され、平成26年7月1日に上申書及び手続補正書が提出され、平成27年7月10日付けで拒絶理由が通知されたのに対し、平成27年9月14日に意見書が提出されたが、平成27年10月6日付けで拒絶査定がされ、平成28年1月20日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に特許請求の範囲を補正する手続補正書が提出され、その後、当審において平成28年8月19日付けで拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、平成28年10月24日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。 第2 本願発明 本願の特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、平成28年10月24日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲及び願書に最初に添付された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項により特定される下記の【請求項1】及び【請求項2】のとおりのものであると認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、下記の【請求項1】のとおりである。 「 【請求項1】 自車両がこれから通ると予測される経路である進路上に立体物が存在する場合に、自車両の進路を変更させる車両の運転支援装置において、 車線の境界を示す道路上の区画線を検出する検出手段と、 自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように自車両の進路を変更させることを許容し、自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出されない場合は、自車両の後方及び側方を走行する車両の有無を判定せずに、自車両の進路を変更させることを禁止する禁止手段と、 を備える車両の運転支援装置。 【請求項2】 請求項1において、前記禁止手段により自車両の進路を変更させることが禁止された場合に、自車両を減速させる減速手段を更に備える車両の運転支援装置。」 第3 引用文献 第3-1 引用文献1 1 引用文献1の記載 当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開2008-238968号公報(以下、「引用文献1」という。)には、「衝突回避装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付した。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】 障害物を検出する障害物検出手段と、 検出した前記障害物と自車両との相対関係により、前記自車両と前記障害物との衝突可能性を判定する衝突判定手段と、 前記衝突判定手段によって判定される衝突可能性が高い場合に、前記自車両と前記障害物との衝突回避制御を行う衝突回避手段と、 前記自車両の周囲における前記自車両の走行路を示す白線を検出する白線検出手段と、 前記自車両が前記走行路を走行するように運転者を補佐する運転補佐手段と、 前記運転補佐手段による運転者の補佐が実行されている場合には、前記運転補佐手段による運転者の補佐が実行されていない場合に対して、前記衝突判定手段における前記衝突可能性の判定方法を変更する判定方法変更手段と、 を備えることを特徴とする衝突回避装置。 【請求項2】 前記運転補佐手段は、前記自車両が前記走行路を走行するように前記自車両の操舵制御を行う自動操舵手段である請求項1に記載の衝突回避装置。 【請求項3】 前記運転補佐手段は、前記自車両が前記走行路を逸脱する可能性が所定のしきい値を超えたときに警報を発する警報制御手段である請求項1に記載の衝突回避装置。 【請求項4】 前記自車両の走行路を示す白線に基づいて、前記自車両の走行軌跡を推定する走行軌跡推定手段をさらに備え、 前記衝突判定手段は、前記障害物と前記自車両の走行軌跡との乖離の度合いに基づいて、衝突可能性を判定する請求項1?請求項3のうちのいずれか1項に記載の衝突回避装置。 【請求項5】 前記衝突判定手段は、前記自車両の走行路を示す白線に囲まれた領域から外れた領域に位置する障害物と前記自車両との衝突可能性を否定する請求項1?請求項3のうちのいずれか1項に記載の衝突回避装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項5】) イ 「【0001】 本発明は、自車両における他車両などの障害物との衝突を回避する衝突回避装置に関するものである。 【背景技術】 【0002】 従来の車両においては、自車両が周囲の障害物に衝突する可能性がある場合に、衝突を回避するために、走行制御を行ったりドライバに警報を発したりする衝突回避装置が設けられている。このような衝突回避装置として、特開2001-114081号公報に開示された操縦安定性制御装置がある。この操縦安定性制御装置は、車両の周囲の障害物を検出して障害物と衝突するか否かを判定する衝突判定装置と、車線を検出することにより、現在走行している車線を逸脱するか否かを判定して車線逸脱判定装置を備えている。この操縦安定性制御装置は、操縦安定性制御中であっても、衝突判定装置によって障害物と衝突し、または車線を逸脱することが推定されれば、操縦安定性制御を停止して障害物との衝突や車線の逸脱を回避する自動制御を行うというものである。 【特許文献1】特開2001-114081号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 ところで、この種の衝突回避装置では、衝突回避のための自動制御を極力早く行うことが望まれるため、自車両から障害物が遠く離れている場合に、正確な障害物との衝突可能性を判定することが望まれる。ところが、上記特許文献1に開示された操縦安定性制御装置では、自車両と障害物との離間距離が長い場合には、衝突可能性の判定精度が高くないため、衝突物と衝突する前の早い段階で衝突回避制御を行うと、不要な衝突回避制御が増えてしまい、走行安定性を害するという問題があった。 【0004】 また、衝突を回避するためにドライバに警報を発する場合でも、衝突可能性の判定精度が高くないと、不要な警報を多大に発生させてしまうという問題があった。 【0005】 そこで、本発明の課題は、自車両から離れた障害物に対して、精度よく衝突可能性を判定することにより、無駄な衝突回避制御や警報の発生を防止しながら、早期に衝突回避制御を行わせ、また警報を発生させることができる衝突回避装置を提供することにある。」(段落【0001】ないし【0005】) ウ 「【0006】 上記課題を解決した本発明に係る衝突回避装置は、障害物を検出する障害物検出手段と、検出した障害物と自車両との相対関係により、自車両と障害物との衝突可能性を判定する衝突判定手段と、衝突判定手段によって判定される衝突可能性が高い場合に、自車両と障害物との衝突回避制御を行う衝突回避手段と、自車両の周囲における自車両の走行路を示す白線を検出する白線検出手段と、自車両が走行路を走行するように運転者を補佐する運転補佐手段と、運転補佐手段による運転者の補佐が実行されている場合には、運転補佐手段による運転者の補佐が実行されていない場合に対して、衝突判定手段における衝突可能性の判定方法を変更する判定方法変更手段と、を備えるものである。 【0007】 運転補佐手段による運転補佐が実行されている際には、運転補佐が実行されていない場合と比較して、自車両から遠い位置にある障害物に対しても、その衝突可能性を精度よく判定することができる。ここで、本発明に係る衝突回避装置では、運転補佐手段による運転補佐が実行されている場合には、運転補佐が実行されていない場合に対して、衝突判定手段における衝突可能性の判定方法を変更する。そのため、自車両から離れた障害物に対して、精度よく衝突可能性を判定することにより、無駄な衝突回避制御や警報の発生を防止しながら、早期に衝突回避制御を行わせ、また警報を発生させることができる。 【0008】 ここで、運転補佐手段は、自車両が走行路を走行するように自車両の操舵制御を行う自動操舵手段である態様とすることができる。運転補佐手段が自動操舵制御である場合に、無駄な衝突回避制御を防止しながら、早期に衝突回避制御を行わせることができる。 【0009】 また、運転補佐手段は、自車両が走行路を逸脱する可能性が所定のしきい値を超えたときに警報を発する警報制御手段である態様とすることができる。運転補佐手段が警報制御手段であることにより、無駄な警報の発生を防止しながら、早期に警報を発生させることができる。 【0010】 また、自車両の走行路を示す白線に基づいて、自車両の走行軌跡を推定する走行軌跡推定手段をさらに備え、衝突判定手段は、障害物と自車両の走行軌跡との乖離の度合いに基づいて、衝突可能性を判定する態様とすることができる。 【0011】 このように、障害物と自車両の走行軌跡との乖離の度合いに基づいて衝突可能性を判定することにより、精度よく衝突判定を行うことができる。 【0012】 さらに、衝突判定手段は、自車両の走行路を示す白線に囲まれた領域から外れた領域に位置する障害物と自車両との衝突可能性を否定する態様とすることもできる。 【0013】 このように、自車両の走行路を示す白線に囲まれた領域から外れた領域に位置する障害物と自車両との衝突可能性を否定することにより、衝突判定を行う際の計算負荷を軽減することができる。」(段落【0006】ないし【0013】) エ 「【0014】 本発明に係る衝突回避装置によれば、自車両から離れた障害物に対して、精度よく衝突可能性を判定することにより、無駄な衝突回避制御や警報の発生を防止しながら、早期に衝突回避制御を行わせ、また警報を発生させることができる。」(段落【0014】) オ 「【0016】 まず、第1の実施形態について説明する。図1は、本実施形態に係る衝突回避装置の構成を示すブロック構成図である。図1に示すように、本実施形態に係る衝突回避装置は、衝突回避ECU1を備えている。衝突回避ECU1には、ミリ波レーダ2がレーダECU3を介して接続されている、さらに、衝突回避ECU1には、車輪速センサ4、操舵角センサ5、およびヨーレートセンサ6が接続されている。また、衝突回避ECU1には、CCDカメラ7および制御開始スイッチ8が接続されるとともに、ブレーキECU9および操舵ECU10が接続されている。また、衝突回避ECU1は、スピーカSに接続されている。 【0017】 衝突回避ECU1、レーダECU3、ブレーキECU9、および操舵ECU10は、いずれも電子制御する自動車デバイスのコンピュータであり、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、および入出力インターフェイスなどを備えて構成されている。 【0018】 衝突回避ECU1は、障害物判定部11、基本走行軌跡推定部12、白線検出部13、自動操舵制御部14、および変更走行軌跡推定部15を備えている。また、衝突回避ECU1は、判定方法変更部16、衝突判定部17、走行制御部18、および警報制御部19を備えている。 【0019】 ミリ波レーダ2は、ミリ波を利用して物体を検出するためのレーダである。ミリ波レーダ2は、車両の前方に設けられ、ミリ波を水平面内でスキャンしながら送信し、反射してきたミリ波を受信する。ミリ波レーダ2は、受信したミリ波の送受信データをレーダ信号としてレーダECU3に送信する。 【0020】 レーダECU3は、ミリ波レーダ2から送信されたレーダ信号に基づいて、自車両の周囲における障害物を検出する。レーダECU3は、自車両の周囲に障害物が検出された場合に、障害物信号を衝突回避ECU1における障害物判定部11に送信する。 【0021】 車輪速センサ4は、車輪毎に設けられ、各車輪の車輪パルスを検出するセンサである。各車輪速センサ4では、車輪パルスを検出し、検出した車輪パルスを車輪パルス信号として衝突回避ECU1における衝突判定部17に送信する。 【0022】 操舵角センサ5は、ステアリングホイールから入力された操舵角を検出するセンサである。操舵角センサ5では、操舵角を検出し、検出した操舵角を操舵角信号として衝突回避ECU1における基本走行軌跡推定部12および判定方法変更部16に送信する。 【0023】 ヨーレートセンサ6は、自車両に作用するヨーレートを検出するセンサである。ヨーレートセンサ6では、ヨーレートを検出し、検出したヨーレートをヨーレート信号として衝突回避ECU1における基本走行軌跡推定部12に送信する。 【0024】 CCDカメラ7は、車両の前方位置に設けられており、車両の進行方向の画像を撮像している。CCDカメラ7は、撮像した画像を衝突回避ECU1における白線検出部13に送信する。 【0025】 制御開始スイッチ8は、自動操舵および逸脱警報制御を行うか否かを切り替えるスイッチであり、制御開始スイッチ8がONとなることにより、衝突回避ECU1における自動操舵制御部14および警報制御部19に制御開始信号を送信する。 【0026】 衝突回避ECU1における障害物判定部11は、レーダECU3から送信される障害物信号に基づいて、自車両の周囲に障害物があるか否かを判定する。障害物判定部11は、障害物の判定結果を衝突判定部17に出力する。 【0027】 基本走行軌跡推定部12は、操舵角センサ5から送信された操舵角信号およびヨーレートセンサ6から送信されたヨーレート信号に基づいて、自車両の推定カーブ半径を演算する。また、基本走行軌跡推定部12は、演算によって求めた推定カーブ半径に基づいて、自車両の走行軌跡の基本となる基本走行軌跡を推定する。基本走行軌跡推定部12は、推定した自車両の基本走行軌跡を衝突判定部17に出力する。 【0028】 白線検出部13は、CCDカメラ7から送信された画像に画像処理を施すことにより、画像内における白線を検出する。白線検出部13は、検出した白線に基づく白線情報を自動操舵制御部14、変更走行軌跡推定部15、判定方法変更部16、および警報制御部19に出力する。 【0029】 自動操舵制御部14は、制御開始スイッチ8からON信号が送信された場合に、自動操舵制御を行う。自動操舵制御部14は、自車両の走行路を示す白線に囲まれた領域である自車線内から自車両が逸脱しないように自動操舵装置を操舵制御し、ドライバのステアリング操作をアシストするステアリング操舵トルクをアシストするレーンキープアシストを行っている。この自動操舵制御部14は、白線検出部13から出力された白線情報に基づいて、白線の内側に規定される自車両の自車線を判定し、自車線内を走行するための自車両の操舵角を決定する。自動操舵制御部14は、決定した操舵角に基づく操舵角信号を操舵ECU10に送信する。また、自動操舵制御部14は、自動操舵制御を行っている際には、自動操舵制御実行情報を判定方法変更部16に出力する。 【0030】 変更走行軌跡推定部15は、白線検出部13から出力された白線情報に基づいて、自車両の変更走行軌跡を推定する。変更走行軌跡推定部15は、白線情報に基づいて、白線を検出するとともに、自車両と白線との相対的な位置関係を検出する。この自車両と白線との相対的な位置関係に基づいて、自車両と白線との離間距離を求め、この離間距離を維持した状態で白線に沿った経路を変更走行軌跡として推定する。変更走行軌跡推定部15は、推定した自車両の変更走行軌跡と白線情報を衝突判定部17に出力する。 【0031】 判定方法変更部16は、自動操舵制御部14から自動操舵制御実行情報が出力されているか否かを判断する。また、操舵角センサ5から送信される操舵角信号に基づいて、ドライバがステアリングを操作しているか否かを判定する。さらに、判定方法変更部16は、白線検出部13から出力される白線情報に基づいて、自車両が白線の内側にいるか否かを判断する。判定方法変更部16は、これらの情報や判断結果に基づいて、判定方法を変更するか否かを判断し、判定方法を変更すると判断した場合に変更信号を衝突判定部17に出力する。 【0032】 衝突判定部17は、障害物判定部11から出力された障害物の判定結果および基本走行軌跡推定部12から出力された自車両の基本走行軌跡、または障害物判定部11から出力された障害物の判定結果および変更走行軌跡推定部15から送信された変更走行軌跡に基づいて自車両と障害物とが衝突するか否かの衝突判定を行う。障害物の判定結果および自車両の推定走行軌跡、または障害物の判定結果および変更走行軌跡のいずれによって衝突判定を行うかは、判定方法変更部16から変更信号が送信されているか否かに基づいて判断する。衝突判定部17は、衝突判定の結果を走行制御部18および警報制御部19に出力する。 【0033】 走行制御部18は、衝突判定部17から出力された衝突判定の結果、衝突可能性が高いと判定した場合に、衝突回避制御を行う。衝突回避制御を行う際には、ブレーキECU9および操舵ECU10に対して、衝突回避制御情報を送信する。 【0034】 警報制御部19は警報制御手段を構成し、逸脱警報制御および衝突警報制御を行っている。警報制御部19は、制御開始スイッチ8からON信号が送信された場合に逸脱警報制御を行う。警報制御部19は、白線検出部13から出力された白線情報に基づいて、白線の内側に規定される自車両の自車線を判定するとともに、自車両と白線との距離関係を算出する。また、自車両と白線との距離関係、車輪速センサ4から送信される車輪速信号、操舵角センサから送信される操舵角信号、およびヨーレートセンサ6から送信されるヨーレート信号等に基づいて自車両が走行車線を逸脱する可能性を判断している。この判断では、自車両が走行車線を逸脱する可能性が所定のしきい値を超えるか否かを判断しており、自車両が走行車線を逸脱する可能性が所定のしきい値以下であり、逸脱する可能性が低い場合には逸脱信号を出力しない。また自車両が走行車線を逸脱する可能性が所定のしきい値を超え、逸脱する可能性が高いと判断された場合に、スピーカSに逸脱信号を出力する。また、衝突判定部17から出力された衝突判定の結果、衝突可能性が高いと判定した場合、スピーカSに衝突信号を出力する。 【0035】 ブレーキECU9は、自車両における図示しないブレーキユニットを制御するECUであり、衝突回避ECU1における衝突回避制御信号を受信した際に、障害物との衝突を回避するためにブレーキユニットを制御する。 【0036】 操舵ECU10は、自車両における図示しない自動操舵装置を制御するECUであり、自動操舵制御部14から送信された操舵角信号を受信した場合には、受信した操舵角信号に基づいて、自車両の自動操舵を行う。また、走行制御部18から送信された衝突回避制御信号を受信した場合には、受信した衝突回避制御信号に基づいて自車両の自動操舵を行う。自動操舵制御部14からの操舵角信号および走行制御部18からの衝突回避制御信号の両方を受信した場合には、走行制御部18からの衝突回避制御信号に基づいて自車両の自動操舵を行う。 【0037】 スピーカSは、たとえば車室内に設けられており、警報制御部19から逸脱信号や衝突信号が出力された場合に、逸脱警報や衝突警報を出力する。」(段落【0016】ないし【0037】) カ 「【0039】 本実施形態に係る衝突回避装置では、まず、レーダECU3を介したミリ波レーダ2、車輪速センサ4、操舵角センサ5、ヨーレートセンサ6、CCDカメラ7、制御開始スイッチ8といった各センサ等からの信号を受信して取得する(S1)。また、基本走行軌跡推定部12では、操舵角センサから送信される操舵角信号およびヨーレートセンサ6から送信されるヨーレート信号等に基づいて自車両の基本走行軌跡を演算により推定し、推定結果を衝突判定部17に出力する。また、白線検出部13では、CCDカメラ7から送信された画像に画像処理を施して白線を検出し、検出した白線に基づく白線情報を自動操舵制御部14、変更走行軌跡推定部15、および判定方法変更部16に出力する。さらに、変更走行軌跡推定部15では、出力された白線情報に基づいて変更走行軌跡を演算によって推定し、推定した自車両の変更走行軌跡を衝突判定部17に出力する。また、自動操舵制御部14では、制御開始スイッチ8からON信号が送信された場合に、自動操舵制御実行情報を判定方法変更部16に出力するとともに、白線検出部13から出力された白線情報に基づいて、白線内を走行するための自車両の操舵角を決定し、操舵ECU10に操舵信号を送信する。 【0040】 続いて、判定方法変更部16において、判定方法変更判断を行う(S2)。判定方法変更判断は、図3に示すフローチャートの手順によって行われ、この判定方法変更判断によって衝突判定に採用する走行軌跡を決定する。衝突判定に採用する走行軌跡は、原則として基本走行軌跡推定部12から出力された基本走行軌跡を用いるが、判定方法変更部16から変更信号が出力された場合には、基本走行軌跡に代えて変更走行軌跡を用いる。」(段落【0039】及び【0040】) キ 「【0042】 図3に示すように、判定方法変更判断では、まず、自動操舵制御中または逸脱警報制御中であるか否かを判断する(S11)。自動操舵制御中または逸脱警報制御中であるか否かの判断は、制御開始スイッチ8がONとなっているか否かによって行われる。その結果、制御開始スイッチ8がONとなっており、自動操舵制御中または逸脱警報制御中であると判断した場合には、ドライバが進路変更操作を行っているか否かを判断する(S12)。ドライバが進路変更操作を行っているか否かの判断は、ウィンカーが操作されているか否かによって行われ、ウィンカーが操作されていれば、進路変更操作が行われていると判断する。 【0043】 その結果、ウィンカーが操作されておらず、ドライバによる進路変更操作が行われていないと判断した場合には、自車両が自車線を逸脱しているか否かを判断する(S13)。自車両が自車線を逸脱しているか否かの判断は、白線検出部13から出力される白線情報に基づいて、自車両と白線との相対的な位置関係を比較することによって行われる。その結果、自車線を逸脱していないと判断した場合には、判定方法変更部16から変更信号を衝突判定部17に出力する。衝突判定部17では、変更信号が出力されることにより、衝突判定に用いる走行軌跡を基本走行軌跡から変更走行軌跡に変更し、変更走行軌跡を採用して(S14)衝突判定を行う。 【0044】 また、ステップS11において自動操舵制御中または逸脱警報出力中ではないと判断した場合、ステップS12において進路変更操作が行われていると判断した場合、およびステップS13において自車線を逸脱していると判断した場合には、走行軌跡を変更することなく、そのまま基本走行軌跡を採用して(S15)衝突判定を行う。 【0045】 こうして衝突判定に採用する走行軌跡を決定したら、図2に示すフローに戻り、レーダECU3から送信される障害物信号に基づいて、障害物判定部11において、自車両の周囲における障害物の有無を検出する(S3)。その結果、障害物がないと判断した場合には、そのまま衝突回避装置による制御を終了する。 【0046】 一方、障害物があると判断した場合には、衝突判定部17において、衝突判定が行われる。衝突判定では、決定された走行軌跡と障害物との位置を比較して、衝突可能性が高いか否かを判断する(S4)。ここで、衝突判定は、検出された障害物と自車両との相対関係に基づいて行われる。衝突判定に用いられる具体的な衝突可能性は、自車両の走行軌跡と障害物との乖離の度合いとなる最短距離を求め、この最短距離が短いほど(乖離の度合いが小さいほど)衝突可能性が高いと判断する。たとえば、図4に示すように、自車両Mの変更走行軌跡Rが白線Wに沿って求められた場合、変更走行軌跡Rを中心として、自車両Mの車幅内にある領域X1を衝突可能性大の領域、白線に囲まれる領域衝突可能性中の領域X2、白線の外側を衝突可能性が極めて低い領域X3とすることができる。 【0047】 また、自車両の走行軌跡と障害物との最短距離が所定のしきい値より小さい場合に、衝突可能性があると判定することもできる。このとき、自車両の速度に応じて所定のしきい値を調整する、具体的に自車両の速度が速い場合には、最短距離の所定のしきい値を小さくすることができる。 【0048】 その結果、衝突可能性が高いと判断された場合には、走行制御部18において、衝突回避制御を行い(S5)、ブレーキECU9および操舵ECU10に対して、衝突回避制御情報を送信する。また、衝突可能性が高くはないと判断された場合には、衝突回避制御を行うことなく、制御を終了する。こうして、衝突回避装置による制御を終了する。 【0049】 このように、本実施形態に係る衝突回避装置においては、障害物と自車両との相対関係に基づいて判定衝突を行う。このとき、自車両が自動操舵制御を行っている場合には、衝突判定における衝突可能性の判定方法を変更する。具体的には、衝突判定に用いる走行軌跡を基本走行軌跡から変更走行軌跡に変更する。変更走行軌跡は、白線内における自車線内を自車両が走行する際の走行軌跡とされているので、自車両の走行軌跡を早い段階で精度よく設定することができる。 【0050】 図4に示すように、たとえば車両がカーブを有する自車線を走行するにあたり、自動操舵制御が行われていれば、自車両Mは変更走行軌跡Rに沿って走行する可能性が高くなり、この変更走行軌跡Rから外れる位置にある障害物Hとの衝突可能性は低いものとなる。ところが、基本走行軌跡推定部12において推定された基本走行軌跡は、推定カーブ半径に基づいて求められていることから、基本走行軌跡に基づいて衝突判定を行うと、自車両Mと障害物Hとの衝突可能性が高いと判定されてしまう。 【0051】 たとえば、基本走行軌跡Raは、推定カーブ半径に基づいて推定され、カーブ進入直線で自車両Mが直進している場合には直線状となり、障害物Hに対する衝突可能性が高いと判定される。 【0052】 この点、衝突判定部17では、判定方法変更部16から出力される変更信号に基づいて、障害物の判定結果および変更走行軌跡のいずれによって衝突判定を行うかを決定し、判定方法変更部16から変更信号が出力されている場合には白線Wに沿って推定される変更走行軌跡Rに基づいて衝突判定が行われる。この変更走行軌跡Rを用いることにより、白線の外側に位置する障害物Hへの衝突可能性は低いと判定することができる。このように、自動操舵制御が行われているか否かによって衝突判定を行う際の走行軌跡を変更することにより、自車両から離れた障害物に対して、精度よく衝突可能性を判定することができ、その結果、無駄な衝突回避制御を防止しながら、早期に衝突回避制御を行わせることができる。 【0053】 また、ステップS5における衝突回避制御と同時に、または衝突回避制御に代えて、警報制御部19において、衝突警報を出力する態様とすることもできる。衝突判定部17に おける判定結果に基づいて衝突警報の出力を行うことにより、自車両から離れた障害物に対して、精度よく衝突可能性を判定することができ、その結果、無駄な衝突警報の発生を防止しながら、早期に衝突警報を発生させることができる。」(段落【0042】ないし【0053】) 2 引用文献1の記載から分かること 上記1及び図面の記載から、引用文献1には、次の事項が記載されていることが分かる。 サ 上記1 アないしキ及び図面の記載から、引用文献1には、自車両と障害物との衝突を回避する衝突回避装置が記載されていることが分かる。 シ 上記1 アないしキ及び図面の記載から、引用文献1に記載された衝突回避装置は、障害物を検出する障害物検出手段と、検出した障害物と自車両との相対関係により、自車両と障害物との衝突可能性を判定する衝突判定手段と、衝突判定手段によって判定される衝突可能性が高い場合に、自車両と障害物との衝突回避制御を行う衝突回避手段と、自車両の周囲における自車両の走行路を示す白線を検出する白線検出手段と、自車両が走行路を走行するように運転者を補佐する運転補佐手段と、運転補佐手段による運転者の補佐が実行されている場合には、運転補佐手段による運転者の補佐が実行されていない場合に対して、衝突判定手段における衝突可能性の判定方法を変更する判定方法変更手段と、を備えるものであることが分かる。 ス 上記1 オ(特に、段落【0029】)及び図面の記載から、引用文献1に記載された衝突回避装置において、自動操舵制御部14は、自車両の走行路を示す白線に囲まれた領域である自車線内から自車両が逸脱しないように自動操舵装置を操舵制御し、ドライバのステアリング操作をアシストするステアリング操舵トルクをアシストするレーンキープアシストを行っており、この自動操舵制御部14は、白線検出部13から出力された白線情報に基づいて、白線の内側に規定される自車両の自車線を判定し、自車線内を走行するための自車両の操舵角を決定することが分かる。 セ 上記1 キ及び図面の記載から、図4の場合には、引用文献1に記載された衝突回避装置において、カーブ進入直線で自車両Mが直進している場合には基本走行軌跡Raは直線状となり、障害物Hに対する衝突可能性が高いと判定されるところ、衝突判定部17では、判定方法変更部16から出力される変更信号に基づいて、障害物の判定結果および変更走行軌跡のいずれによって衝突判定を行うかを決定し、判定方法変更部16から変更信号が出力されている場合には白線Wに沿って推定される変更走行軌跡Rに基づいて衝突判定が行われ、変更走行軌跡Rを用いることにより、白線の外側に位置する障害物Hへの衝突可能性は低いと判定することができることが分かる。 ソ 上記1 オ及びキ並びに図面の記載から、引用文献1に記載された衝突回避装置は、図4の、白線の外側に障害物Hが位置する場合には、自車両の走行路を示す白線に囲まれた領域である自車線内から自車両が逸脱しないように操舵制御することにより、衝突を回避することが分かる。 3 引用発明 上記1及び2から、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認める。 「基本走行軌跡上に障害物が存在する場合に、操舵制御する車両の衝突回避装置において、 自車両の走行路を示す白線を検出する検出手段と、 自車両と障害物との間の道路上に自車両の走行路を示す白線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように操舵制御することを許容する、衝突回避制御手段 を備える車両の衝突回避装置。」 第3-2 引用文献2 1 引用文献2の記載 当審拒絶理由で引用され、本願の出願前に国内において頒布された刊行物である特開2000-159077号公報(以下、「引用文献2」という。)には、「車両の制御装置」に関して、図面とともに概ね次の記載がある。なお、下線は、理解の一助のため当審で付した。 ア 「【特許請求の範囲】 【請求項1】前方障害物を検出する前方障害物検出手段と、 運転者のハンドル操作に優先して自動操舵を行うための自動操舵手段と、 運転者のブレーキ操作に優先して自動制動を行うための自動制動手段と、 前記障害物検出手段により前方障害物が検出されたとき、該前方障害物への接触を回避するように前記自動操作手段と自動制動手段とを制御する制御手段と、を備え、前記制御手段が、あらかじめ定められた条件に基づいて前記自動操舵手段と自動制動手段との一方の手段を選択して接触回避の制御を実行しつつ、該一方の手段による接触回避の制御の実行中は他方の手段による接触回避の制御を禁止する、ことを特徴とする車両の制御装置。 【請求項2】請求項1において、 前記制御手段が、車速が所定値よりも大きいときは前記自動制動手段を選択して接触回避の制御を実行し、車速が該所定値よりも小さいときは前記自動操舵手段を選択して接触回避の制御を実行する、ことを特徴とする車両の制御装置。 【請求項3】請求項1において、 前記制御手段が、側方障害物が存在しないときは前記自動操舵手段を選択して接触回避の制御を実行し、側方障害物が存在するときは前記自動制動手段を選択して接触回避の制御を実行する、ことを特徴とする車両の制御装置。 【請求項4】請求項1において、 前記制御手段が、前方障害物までの距離が大きいときは前記自動制動手段を選択して接触回避の制御を実行し、前方障害物までの距離が小さいときは前記自動操舵手段を選択して接触回避の制御を実行する、ことを特徴とする車両の制御装置。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】ないし【請求項4】) イ 「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は前方障害物との接触回避を行うようにした車両の制御装置に関するものである。 【0002】 【従来の技術】前方障害物、例えば前方車両との接触を回避するため、運転者のハンドル操作に優先して自動操舵を行なったり、運転者のブレーキ操作に優先して自動ブレーキつまり自動制動を行うことが提案されている。特開平5-50934号公報には、接触回避のための自動操舵を行うに際して、自車両の左右つまり側方の障害物の有無を検出して、側方障害物が存在しない側へ自動操舵することが開示されている。また、特開平7-21500号公報には、前方障害物へ所定以上接近したときに自動制動を行うものが開示されている。」(段落【0001】及び【0002】) ウ 「【0011】 【発明の効果】請求項1によれば、自動操舵による接触回避の制御と自動制動による接触回避の制御とのいずれか一方が行われているときは、他方の制御が行われることが禁止されるので、タイやのグリップ力を常に有効に生かして、接触回避の制御が良好に行われることになる。また、自動操舵による接触回避の制御と自動制動による接触回避の制御との選択条件の設定により、好ましい態様で接触回避を行うことも可能になる。 【0012】請求項2によれば、車速が大きいときは自動制動による接触回避の制御を行って、車両が著しく不安定になったりすることや運転者に極めて大きな心理的負担を与えることが防止される。また、車速が小さいときは、自動操舵による接触回避の制御を行って、すみやかに接触回避を行う上で好ましいものとなる。請求項3によれば、原則として自動操舵によるすみやかな接触回避を行いつつ、自動操舵を行ったのでは側方障害物に接触する可能性があるときは、自動操舵に代えて自動制動による接触回避の制御を実行させて、前方障害物への接触防止を確実に行うことができる。請求項4によれば、前方障害物までの距離が大きいときつまり接触回避に余裕があるときは、自動制動による接触回避の制御を行なって、車両の方向変換というような車両の大きな挙動変化を伴わず、かつ運転者への心理的負担が小さいものとすることができる。また、前方障害物までの距離が小さくてすみやかに接触回避が要求されるときは、自動操舵による接触回避の制御を行って素早く接触回避を行うことができる。」(段落【0011】及び【0012】) エ 「【0015】 【発明の実施の形態】図1において、片道2車線とされた走行路が示され、1は走行車線、2は追い越し車線であり、両車線を区分する区分線(白線)が符号3で示される。4は走行車線1の左方にある路肩、5は追い越し車線2の右方にある中央分離帯である。この図1において、自車両が符号11で示され、自車両11は走行車線1を走行中で、その前方障害物としての前方車両が符号12で示され、また側方障害物としての側方車両が符号13で示される。 【0016】自車両11は、前方車両12との接触回避のために、図2に示すような制御系を有する。この図2において、Uはマイクロコンピュ-タを利用して構成された制御手段としてのコントロ-ラであり、このコントロ-ラUによって、自動操舵手段としてのステアリングアクチュエ-タ21と、自動制動手段としてのブレーキアクチュエ-タ22とが制御される。コントロ-ラUには、少なくとも、前方車両12までの距離Lと、側方車両13までの距離BLとが入力される(図1をも参照)と共に、自車両11の車速も入力される。なお、上記距離L(BL)は、レーダあるいはカメラ等を利用して検出することができる。」(段落【0015】及び【0016】) オ 「【0017】コントロ-ラUによる前方車両12に対する接触回避の第1の制御例が、図3のフロ-チャ-トに示される。以下この図3のフロ-チャ-トについて説明するが、以下の説明でQはステップを示す。なお、図3の制御例は、自動操舵による前方車両12との接触回避の制御を原則としつつ、自動操舵による接触回避が不可能なときに自動制動による接触回避の制御を行うようになっている。 【0018】まず、Q1において前方車両12に対する実際の前方距離Lが読み込まれた後、Q2において、実際の前方距離Lが第1所定距離(しきい値)L1よりも小さいか否かが判別される。このQ2の判別でYESのときは、Q3において、側方車両13に対する実際の側方距離BLが読み込まれる。この後、Q4において、実際の側方距離BLが、第3所定距離(しきい値)よりも小さいか否かが判別される。Q4の判別でNOのときは、現在自車両11が走行している走行車線1から追い越し車線12へ向けて操舵しても側方車両に接触しないときであり、このときはQ5において、自動操舵されて追い越し車線2前記へ方向変更されて、前方車両12との接触が回避される(なお、図1左方側への操舵は、路肩4が存在していることが検出されていて、自動操舵を行う対象方向から除外されている)。 【0019】Q4の判別でYESのときは、Q6において、前方車両12との接触回避のために必要な第2所定距離L2(L2<L1)が決定される。この第2所定距離L2は、例えば現在の車速、前方車両12との相対速度を勘案して、ブレーキつまり自動制動を行なったときに前方車両12との接触が回避可能な距離として決定される。Q6の後、Q7において、実際の前方距離Lが第2所距離L2よりも小さいか否かが判別される。このQ7の判別でYESのときは、Q8において、自動制動が行われて、前方車両12との接触が回避される。前記Q2の判別でNOのとき、あるいはQ7の判別でNOのときは、それぞれQ1へ戻る。 【0020】ここで、Q5での自動操舵の実行のときは自動制動は行われないものであり(自動制動の禁止)、Q8での自動制動の実行のときは自動操舵は行われないものである(自動操舵の禁止)。また、Q6を経由して、Q7からQ1へ戻る系路を経ているときは、自動操舵による接触回避の制御が一時的に待機された状態であり、このとき、ブレーキを作動させないで、エンジンブレーキによる減速を行うようにすることができ、エンジンブレーキによる減速は、Q5あるいはQ8でも合わせて行うことが可能である。なお、エンジンブレーキを得るには、コントロ-ラUによる制御によって、例えばスロットル弁を自動的に全閉にしたり(オットー式エンジンの場合で、スロットルアクチュエ-タを制御)、あるいは燃料噴射量をカットすればよい(ディ-ゼルエンジンの場合で、例えば燃料カット弁を制御)。 【0021】Q5での自動操舵の場合、ステアリングアクチュエ-タ21に対する制御目標値を例えば操舵トルクとして設定することができる。より具体的には、前方車両12を避けるに必要な(最小の)横移動量に応じて操舵トルクを設定することができ、この横移動量が大きいほど大きな操舵トルクが設定される(上限値規制有り)。必要な横移動量は、自車両11の幅方向中心線が、走行車線1中での現在位置から、追い越し車線2の幅方向中心位置へと移動するのに必要な大きさである。なお、操舵トルクに代えて操舵量を設定することもできる。 【0022】Q8での自動制動の制御目標値は、例えば制動トルクとすることができ、この場合、制動トルクの最大値を常に制御目標値とすることもできるが、接触回避の制御に余裕をもたせるため、あるいは急激な制動回避のために、第2所定距離L2をある程度余裕を持った値に設定して、最大トルクよりも小さい制動トルクを制御目標値に設定するのが好ましい。すなわち、最大トルクで接触回避に必要な最小距離に対して、この最小距離よりも第2所定距離L2が大きい分(割合)だけ、制御目標値としての制動トルクを最大トルクよりも小さく設定することができる。また、制動トルクを、徐々に増大させるような設定とすることもできる。 【0023】側方車両13に対する接触可能性をより的確に判断するため、自動操舵したときの自車両11の移動軌跡を計算(シュミレーション)して、この移動軌跡の周囲(前後および左右)に障害物が存在しない場合に、自動操舵を許容するようにすることもできる。なお、上述した図3の制御は、特許請求の範囲における独立請求項である請求項1、請求項5、請求項11、請求項12に対応したものとなっている(自動操舵と自動制動との一方の制御実行中は他方の制御実行を禁止、自動操舵を行う条件設定と自動制動を行う条件設定、自動操舵優先、自動操舵の待機)。」(段落【0017】ないし【0023】) カ 「【0024】図4は、コントロ-ラUによる第2の制御例を示すものであり、自動制動を優先した制御となっている。まず、Q11において、前方車両12との実際の前方距離Lが読み込まれた後、Q12において、実際の前方距離Lが、第1所定距離(しきい値)L11よりも小さいか否かが判別される。このQ12の判別でYESのときは、Q13において、自動制動が実行される(自動操舵は禁止)。Q13の後、Q14において、自動制動が終了されたか否か、つまり自動制動によって前方車両12との接触が回避されたか否かが判別される。このQ14の判別でYESのときは、今回の接触回避の制御は終了される。Q14の判別でNOのときは、Q15において、実際の前方距離Lが、第2所定距離L12(しきい値で、L12<L11)よりも小さいか否かが判別される。このQ15の判別でYESのときは、自動制動では接触回避が不可能なときであるとして、Q16において、自動操舵が行われる(自動制動は禁止つまり中止)。Q12の判別でNOのとき、あるいはQ15の判別でNOのときは、それぞれQ11へ戻る。 【0025】図5は、コントロ-ラUによる第3の制御例を示すものであり、車速に応じて、自動操舵と自動制動との優先順位を変更するようにしてある。まず、Q21において、前方車両12に対する実際の前方距離Lが読み込まれた後、Q22において、現在の車速が所定車速よりも大きいか否かが判別される。このQ22の判別でYESのとき、つまり車速が大きいときは、Q23において、第1所定距離L11が、第2所定距離L22よりも大きい値として設定される。また、Q22の判別でNOのときは、Q23での設定とは逆に、第1所定距離L11が、第2所定距離L22よりも小さい値として設定される。 【0026】Q23あるいはQ24の後、Q25において、実際の前方距離Lが、第1所定距離L21よりも小さいか否かが判別される。このQ25の判別でYESのときは、Q26において、自動制動による接触回避の制御が実行される(自動操舵は禁止)。Q26の後、あるいはQ25の判別でNOのときは、それぞれQ27において、実際の前方距離Lが第2所定距離L22よりも小さいか否かが判別される。このQ27の判別でNOのときは、Q21へ戻るが、Q27の判別でYESのときは、Q28において、自動操舵による接触回避の制御が実行される(自動制動は禁止)。 【0027】上述の説明からすでに明らかであるが、車速が大きいときは、まず自動制動による接触回避の制御が実行され、自動制動が行われているときに実際の前方距離Lが極めて小さくなったときに(Q27の判別でYESのとき)、自動操舵による接触回避が実行されることになる。逆に、車速が小さいときは、自動操舵による接触回避の制御が実行されることになるが(Q25の判別でNOとなって、Q27の判別でYESとなる)、自動操舵が実行されたときは自動制動が実行されないことになる。 【0028】以上実施形態について説明したが、本発明はこれに限らず、例えば次のような場合をも含むものである。図5の場合とは異なり、車速が大きいときは自動制動のみを実行し(Q27、Q28を経る自動操舵はなし)、車速が小さいときは自動操舵のみを実行するようにしてもよい。また、車速をパラメ-タとする代わりに、運転者によるマニュアル選択によって、自動制動のみによる接触回避の制御を行うか、あるいは自動操舵のみによる接触回避の制御を行うかを決定するようにすることもできる(ただし、自動制動をマニュアル選択したときでも、Q27、Q28の制御のように、前方車両12との実際の前前方距離Lが極めて小さくなったときは、自動操舵による接触回避の制御を行うように設定することもできる)。なお、運転者によるマニュアル選択の選択モ-ドの1つとして、自動操舵、自動制動による接触回避の制御を一切行わない禁止モ-ドを含めることができる。」(段落【0024】ないし【0028】) 2 引用文献2の記載から分かること 上記1及び図面の記載から、引用文献2には、次の事項が記載されていることが分かる。 サ 上記1 アないしカ及び図面の記載から、引用文献2には、前方障害物への接触回避を、自動操舵と自動制動とを適切に利用して行う、車両の制御装置が記載されていることが分かる。 シ 上記1 ア(特に、請求項2)及びウないしカ並びに図面の記載から、引用文献2に記載された車両の制御装置において、車速が所定値よりも大きいときは自動制動手段を選択して接触回避の制御を実行し、車速が該所定値よりも小さいときは自動操舵手段を選択して接触回避の制御を実行する技術が記載されていることが分かる。 ス 上記1 ア(特に、請求項3)及びウないしカ並びに図面の記載から、引用文献2に記載された車両の制御装置において、側方障害物が存在しないときは自動操舵手段を選択して接触回避の制御を実行し、側方障害物が存在するときは自動制動手段を選択して接触回避の制御を実行する技術が記載されていることが分かる。 セ 上記1 ア(特に、請求項4)及びウないしカ並びに図面の記載から、引用文献2に記載された車両の制御装置において、前方障害物までの距離が大きいときは自動制動手段を選択して接触回避の制御を実行し、前方障害物までの距離が小さいときは自動操舵手段を選択して接触回避の制御を実行する技術が記載されていることが分かる。 ソ 上記1 カ及び図面(特に、図4)の記載から、引用文献2に記載された車両の制御装置において、前方障害物までの距離が第1所定距離L11よりも小さいときに、側方障害物距離を測定することなく、自動制動を実行し、自動操舵を禁止する技術が記載されていることが分かる。 3 引用文献2記載の技術 上記1及び2から、引用文献2には、次の技術(以下、「引用文献2記載の技術」という。)が記載されていると認める。 「前方障害物への接触回避を行う、車両の制御装置において、 前方障害物までの距離が第1所定距離L11よりも小さいときに、側方障害物距離を測定することなく、自動制動を実行し、自動操舵を禁止する技術。」 第4 対比 本願発明と引用発明を対比する。 引用発明における「基本走行軌跡」は、その機能、構成又は技術的意義からみて、本願発明における「自車両がこれから通ると予測される経路である進路」に相当し、以下、同様に、「障害物」は「立体物」に、「操舵制御する」は「自車両の進路を変更させる」に、「自車両の走行路を示す白線」は「車線の境界を示す道路上の区画線」に、「衝突回避装置」は「運転支援装置」に、それぞれ、相当する。 また、引用発明における「自車両と障害物との間の道路上に自車両の走行路を示す白線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように操舵制御することを許容する、衝突回避制御手段」は、「自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように自車両の進路を変更させることを許容する禁止手段」という限りにおいて、本願発明における「自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように自車両の進路を変更させることを許容し、自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出されない場合は、自車両の後方及び側方を走行する車両の有無を判定せずに、自車両の進路を変更させることを禁止する禁止手段」に相当する、 したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致する。 「自車両がこれから通ると予測される経路である進路上に立体物が存在する場合に、自車両の進路を変更させる車両の運転支援装置において、 車線の境界を示す道路上の区画線を検出する検出手段と、 自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように自車両の進路を変更させることを許容する禁止手段と、 を備える車両の運転支援装置。」 そして、以下の点で相違する。 <相違点> ・「自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように自車両の進路を変更させることを許容する禁止手段」に関して、本願発明においては、「自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように自車両の進路を変更させることを許容し、自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出されない場合は、自車両の後方及び側方を走行する車両の有無を判定せずに、自車両の進路を変更させることを禁止する禁止手段」を備えるのに対し、引用発明においては、「自車両と障害物との間の道路上に自車両の走行路を示す白線が検出された場合は、自車両の走行車線から逸脱しないように操舵制御することを許容する、衝突回避制御手段」を備えるものの、「自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出されない場合は、自車両の後方及び側方を走行する車両の有無を判定せずに、自車両の進路を変更させることを禁止する」かどうか明らかでない点(以下、「相違点」という。)。 第5 相違点に対する判断 相違点について、以下に検討する。 (1)本願発明の技術的意義について 本願発明は、「自車両の進路上に存在する立体物と自車両の接触を回避するために、自車両の進路を変更させる運転支援装置において、自車両の後側方に存在する後続車両を検出する装置に依存することなく、自車両の進路変更によって自車両が後続車両の進路上に進入する事態を回避することができる技術の提供」(段落【0006】)を目的とし、本願発明の発明特定事項を備えることにより、「本発明によれば、自車両の進路上に存在する立体物と自車両の接触を回避するために、自車両の進路を変更させる運転支援装置において、自車両の後側方に存在する後続車両を検出する装置に依存することなく、自車両の進路変更によって自車両が後続車両の進路上に進入する事態を回避することができる。」(段落【0017】)という作用効果を奏するものである。 (2)引用文献2記載の技術について 引用文献2においては、「自動操舵を行ったのでは側方障害物に接触する可能性があるときは、自動操舵に代えて自動制動による接触回避の制御を実行させて、前方障害物への接触防止を確実に行うことができる。」(段落【0012】)と記載されているように、自動操舵を行ったのでは側方障害物に接触する可能性があるという、本願発明と同様の課題を認識しており、「自動操舵に代えて自動制動による接触回避の制御を実行させて、前方障害物への接触防止を確実に行うことができる。」(段落【0012】)という課題解決手段も記載されている。 また、引用文献2には、上記のように、 「前方障害物への接触回避を行う、車両の制御装置において、 前方障害物までの距離が第1所定距離L11よりも小さいときに、側方障害物距離を測定することなく、自動制動を実行し、自動操舵を禁止する技術。」(「引用文献2記載の技術」)が記載されている。 ここで、引用文献2記載の技術において、自車両と前方障害物との間には、車線を区分する区分線(白線)(本願発明における「車線の境界を示す区画線」に相当)が存在せず、該区分線が検出されないことは明らかであるから、引用文献2記載の技術は、本願発明における、 「自車両と立体物との間の道路上に車線の境界を示す区画線が検出されない場合は、自車両の後方及び側方を走行する車両の有無を判定せずに、自車両の進路を変更させることを禁止する禁止手段」 に包含されるものである。 そして、引用発明と引用文献2記載の技術は、ともに、車両の運転支援装置の技術分野において、前方障害物への接触回避を行うという課題を解決するためのものである。 してみれば、引用発明において、引用文献2記載の技術を適用することにより、相違点に係る本願発明の発明特定事項を得ることは、当業者が容易に想到できたことである。 そして、本願発明を全体としてみても、本願発明が、引用発明及び引用文献2記載の技術からみて、格別顕著な効果を奏するともいえない。 第6 むすび 上記第5のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-12-12 |
結審通知日 | 2016-12-13 |
審決日 | 2016-12-27 |
出願番号 | 特願2013-551132(P2013-551132) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(B60W)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 山村 秀政 |
特許庁審判長 |
伊藤 元人 |
特許庁審判官 |
金澤 俊郎 槙原 進 |
発明の名称 | 車両の運転支援装置 |
代理人 | 関根 武彦 |
代理人 | 宮下 文徳 |
代理人 | 世良 和信 |
代理人 | 平川 明 |
代理人 | 今堀 克彦 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 小久保 篤史 |