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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F |
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管理番号 | 1324763 |
審判番号 | 不服2016-2927 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-02-26 |
確定日 | 2017-02-09 |
事件の表示 | 特願2012- 72418「電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月 7日出願公開、特開2013-205986〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成24年3月27日の出願であって、平成27年5月28日付けで拒絶理由が通知され、同年8月3日付けで手続補正がなされ、これに対し、同年8月25日付けで最後の拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで手続補正がなされたものの、同年11月18日付けで同年11月2日付けの手続補正は補正却下され、同日付で拒絶査定がなされた。 これに対し、平成28年2月26日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、当審において、平成28年9月5日付けで最後の拒絶理由を通知し、同年11月7日付けで意見書が提出されたものである。 2.本願発明 本願の請求項1,2に係る発明は、平成27年8月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1,2に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は以下のとおりである。 「接触を検出する接触検出部と、 前記接触検出部に対する多段階の押圧を検出する押圧検出部と、 前記押圧検出部が検出する多段階の押圧に応じて、アプリケーションのロックを解除する制御部と、を備える ことを特徴とする電子機器。」 3.引用文献及び引用発明 (1)当審が平成28年9月5日付けで通知した拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)において、引用した「Protector: 重要なアプリをパスワードで保護。ロック内容も細かく指定!Androidアプリ901、[Oonline],2010年8月30日,[2015年11月18日検索],インターネット, ア.「Protector:重要なアプリをパスワードで保護。ロック内容も細かく指定!Androidアプリ901 ・・・(中略)・・・ 本日紹介する「Protector」は、指定したアプリをパスワードでロックすることが出来ます。 SMSやブラウザの履歴を覗かれたくない人に嬉しいアプリです! 無料バージョンではロックできるアプリに10個の制限がありますが、有料のプラグインを購入すれば制限はなくなります。 また、常駐タイプのアプリですがインストールすることで本体の動作が重くなるような事はないということです。 アプリの特徴 ・指定したアプリをロック ・他のアプリをインストール、アンインストールできるアプリはデフォルトでロック ・アプリの持つ特定機能のみのロックも可能 ・プラグイン購入でロックできるアプリ数の制限が解除 「Protector」をインストールすると、SMS・ブラウザ・マーケット等のアプリの起動にパスワードが必要になります。 他のアプリをインストール・アンインストールする事のできるアプリは自動的にロックされます。 ”アプリをロックしていたけど、「Protector」を他のアプリからアンインストールされてしまった。”という事態を避けることが出来ます。 ・・・(中略)・・・ 細かく設定が可能で、ロックすべきアプリを最初からロックしてくれている使い勝手の良いアプリだと思います。 起動する度のパスワードの入力は面倒かもしれませんが、端末を貸す時や落としてしまった時などに安心ですね。」 a. 上記の引用文献1の下線部の記載によれば、引用文献1には、 「指定したアプリをパスワードでロックし、 アプリを起動しようとすると、パスワード入力画面が表示される、 Android端末。」が記載されている。 b. 引用文献1の「アプリの起動にパスワードが必要になります。」との記載から、上記a.において、「パスワード入力画面にパスワードを入力すると、アプリのロックが解除され、アプリが起動する」ことは明らかである。 c. 引用文献1の「アプリ起動画面」、「パスワード入力画面」の図面を見ると、画面に対して指等での接触入力が必要であることは明らかであるから、上記a.のAndroid端末は、「画面に対して接触入力を行うタッチセンサ」を有することは明らかである。 以上、a.?c.によれば、 引用文献1には、 「画面に対して接触入力を行うタッチセンサを備え、 指定したアプリをパスワードでロックし、 アプリを起動しようとすると、パスワード入力画面が表示され、 パスワード入力画面にタッチセンサからパスワードを入力すると、アプリのロックが解除され、アプリが起動する、 Android端末。」の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されている。 (2)当審拒絶理由において、引用した特開2011-70463号公報(以下、「引用文献2」という。)には、次のア.?オ.のとおりの記載がある。下線は、注目箇所に当審が付した。 ア. 「【0008】 しかしながら、利用者が、暗証番号(認証コード)を直接入力する入力装置においては、押圧されたキーに対応する入力コードがそのまま受け付けられてしまう。つまり、押圧されたキーと入力装置が受け付ける入力コードとが対応しているため、押圧されているキーを覗き見や盗撮することにより、認証コードが漏えいするという問題がある。」 イ. 「【0011】 本発明の目的は、認証コードを入力する操作が他人に見られていた場合でも、認証コードの漏えいを防止できる入力装置を提供することである。 【0012】 上記目的を達成する請求項1に係る発明は、 認証コードを入力する入力装置であって、 前記認証コードを入力するための入力コードを表示する表示部と、 前記表示部に表示される入力コードに対する入力を検出するタッチセンサと、 前記タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部と、 前記タッチセンサにより入力コードに対して入力が検出された際に、該入力コードと、前記荷重検出部により検出される押圧荷重と、に基づく認証コードを受け付けるように制御する制御部と、 を備えることを特徴とするものである。」 ウ. 「【0017】 以下、本発明の各実施の形態について、図面を参照して説明する。以下の各実施の形態においては、本発明の入力装置の一例として、銀行のATM、CAT(Credit Authorization Terminal)やCCT(Credit Center Terminal)などのクレジットカード端末のような認証コードを入力する入力装置であって、タッチパネルを備えているものを想定して説明する。しかしながら、本発明の入力装置は、これら上述した装置に限定されるものではなく、例えば、駅の乗車券販売機、デスクトップ型PCなどの、入力装置を備える種々の装置や、携帯電話やPDA(Personal Digital Assistant)、ノート型PC、ミニノート型PCなど、入力装置を備える携帯端末とすることもできる。」 エ. 「【0020】 本実施の形態では、タッチパネル20は、タッチセンサ11と、表示部14とを備えている。このタッチパネル20は、利用者の入力を受け付けるタッチセンサ11を、表示部14の前面に重畳させて配設することにより構成する。 タッチパネル20のタッチセンサ11は、通常は表示部14の前面に配置して、表示部14に表示される入力コードに対する利用者の指やスタイラスペンなどの押圧物による押圧入力(タッチ入力)を、対応するタッチセンサ11のタッチ面により受け付ける。このタッチセンサ11は、例えば抵抗膜方式、静電容量方式、光学式等の公知の方式のもので構成する。 【0021】 荷重検出部12は、タッチセンサ11のタッチ面に対する押圧荷重を検出するもので、例えば、歪みゲージセンサや圧電素子等の荷重に対して反応する素子を用いて構成する。利用者は認証コードを入力する際に、タッチセンサ11のタッチ面を押圧して入力を行う。荷重検出部12は、この押圧入力の際にタッチ面にかかる押圧荷重を検出する。 【0022】 このように、本願では、利用者が押圧入力をする際に使用する指やスタイラスペンなどの押圧する対象と、タッチパネル20(タッチセンサ11)と、が接触した際の荷重を「押圧荷重」と称する。また、ここでいう認証コードとは、例えば暗証番号など、利用者本人しか知りえないコードであり、一般的には本人確認のために用いられるものである。認証コードは1つ又は複数の入力コードにより構成され、一般的には、一桁又は複数桁の文字又は数字などからなるものである。 【0023】 なお、本願は1つの入力コードが押圧荷重に応じて複数の認証コードを有している。例えば、押圧荷重が、軽いものと重いものの2つに分けられていて入力された入力コードが「2」である場合、検出される押圧荷重が軽い時は入力コード「2」の第1段階の入力として認証コード「2」を受け付けて、押圧荷重が重い時は入力コード「2」の第2段階の入力として認証コード「2´」を受け付ける。なお、「´」は第1段階と第2段階の入力が異なるものであることを示すものであり、本願では第2段階の入力に付けるものとする。」 オ. 「【0068】 例えば、本実施の形態では、入力装置1が押圧荷重に応じて2段階の入力を受け付ける入力装置であるとして説明したが、この形態に限定されるものではなく、複数段階の入力を受け付ける装置としても適応可能である。最後の段階の入力以外は上述した第1段階の入力を受け付ける処理を繰り返すことにより実施することができる。最後の段階の入力は上述した第2段階の入力の処理により実施することが可能である。この押圧荷重に応じて受け付ける段階を複数もうけることにより、利用者が何段階目の入力を行ったのか、他人が判断するのはさらに困難となり、秘匿性が高まる。」 以上、上記の引用文献2の下線部の記載によれば、引用文献2には、 「タッチセンサを備える携帯端末において、認証コードを入力する操作が他人に見られていた場合でも、認証コードの漏えいを防止するために、タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を検出する荷重検出部を備え、タッチセンサによる数字の入力コードとともに、タッチセンサのタッチ面に対する押圧荷重を荷重検出部により2段階で検出し、タッチセンサによる数字の入力コードと、そのときの2段階の押圧荷重と、に基づく認証コードを受け付ける入力装置。」の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されており、引用発明2の「2段階」は、本願発明の「多段階」に含まれるものであることは明らかである。 4.対比 本願発明と引用発明1とを対比する。 引用発明1の「パスワードを入力する」ための「画面に対して接触入力を行う」「タッチセンサ」は、本願発明の「接触を検出する接触検出部」に相当する。 引用発明1の「指定したアプリをパスワードでロックし、」「パスワード入力画面にタッチセンサからパスワードを入力すると、ロックが解除され、アプリが起動する」ことと、本願発明の「押圧検出部が検出する多段階の押圧に応じて、アプリケーションのロックを解除する」こととは、いずれも、「入力に応じて、アプリケーションのロックを解除する」点で共通し、引用発明も、「制御部」といえる構成を有することは明らかであるから、引用発明1と本願発明とは、「入力に応じて、アプリケーションのロックを解除する制御部」を有する点で共通する。 また、引用発明1の「Android端末」は「電子機器」に含まれるものである。 したがって、本願発明と引用発明1とは、次の一致点、相違点を有する。 [一致点] 「接触を検出する接触検出部と、 入力に応じて、アプリケーションのロックを解除する制御部と、を備える 電子機器。」 [相違点1] 本願発明では、「接触部に対する多段階の押圧を検出する押圧検出部」を有するのに対し、引用発明1では、押圧検出部を有さず、押圧を検出していない点。 [相違点2] アプリケーションのロックを解除するための入力が、本願発明では、「押圧検出部が検出する多段階の押圧」であるのに対し、引用発明1では、タッチセンサへのパスワードの入力である点。 5.判断 上記[相違点1][相違点2]について検討する。 パスワードの入力に関して、パスワードを複雑化してセキュリティを高めたり、他者から覗き見されてもパスワードが漏えいしないような対策を講じることは、周知の課題であるから、引用発明1のアプリケーションのロック解除の入力においても、ロック解除のためのパスワードを複雑化してセキュリティを高めたり、ロック解除のパスワードを入力する際に他者から覗き見されてもパスワードが漏えいしないような対策を講じることは、当然、考え得ることである。 したがって、上記の周知の課題を解決するために、タッチセンサを備える携帯端末における認証コードを入力する操作が他人に見られていた場合でも、認証コードの漏えいを防止するための引用発明2を引用発明1のAndroid端末のアプリケーションのロックを解除するためのパスワードの入力に採用して、接触検出部に対する2段階(多段階)の押圧を検出する押圧検出部を設け、パスワードを押圧検出部が検出する2段階(多段階)の押圧に応じたものとし、上記相違点1,2に係る構成を得ることは当業者が容易に想到し得た事項である。 また、本願発明の構成によってもたらされる効果は、引用発明1及び引用発明2から当業者が予測し得る範囲を超えるものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 6.むすび 以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用発明2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-11-30 |
結審通知日 | 2016-12-06 |
審決日 | 2016-12-19 |
出願番号 | 特願2012-72418(P2012-72418) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 萩島 豪 |
特許庁審判長 |
和田 志郎 |
特許庁審判官 |
高瀬 勤 山田 正文 |
発明の名称 | 電子機器 |
代理人 | 大倉 昭人 |
代理人 | 杉村 憲司 |
代理人 | 太田 昌宏 |