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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G21F
管理番号 1324776
審判番号 不服2016-5649  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-15 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 特願2011-207180「強塩基性陰イオン交換樹脂、並びにそれを用いた脱塩方法及び脱塩装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月18日出願公開、特開2013- 68512、請求項の数(5)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の概要
本願は、平成23年9月22日の出願であって、平成27年7月17日付けで拒絶理由が通知され、同年9月25日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成28年1月13日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされた。
本件は、これに対して、平成28年4月15日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。


第2 本願発明
本願の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ、「本願発明1」?「本願発明5」といい、「本願発明1」?「本願発明5」をまとめて「本願発明」という。)は、平成27年9月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願発明1?5は、次のとおりのものである。

「 【請求項1】
加圧水型原子力発電所において、ほう素濃度が2500ppm以上の一次冷却水系の脱塩装置で使用されるゲル型の強塩基性陰イオン交換樹脂であり、
水分率がOH形において60%以下であり、
かつ均一係数が1.15以下である、強塩基性陰イオン交換樹脂。
【請求項2】
平均粒径が400?700μmである、請求項1に記載の強塩基性陰イオン交換樹脂。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の強塩基性陰イオン交換樹脂と、H形、^(7)Li形又は^(6)Li形のゲル型の強酸性陽イオン交換樹脂との混合イオン交換樹脂。
【請求項4】
加圧水型原子力発電所の一次冷却水系の脱塩方法であって、該一次冷却水系がほう素濃度2500ppm以上であり、かつ該一次冷却水系の脱塩装置に、請求項1若しくは2に記載の強塩基性陰イオン交換樹脂、又は請求項3に記載の混合イオン交換樹脂を用いることを特徴とする、脱塩方法。
【請求項5】
加圧水型原子力発電所の一次冷却水系に用いる脱塩装置であって、該一次冷却水系がほう素濃度2500ppm以上であり、かつ該一次冷却水系の脱塩装置に、請求項1若しくは2に記載の強塩基性陰イオン交換樹脂、又は請求項3に記載の混合イオン交換樹脂を用いることを特徴とする、脱塩装置。」


第3 原査定の理由の概要

本願発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2009-300163号公報
引用文献2:特開2007-237057号公報
引用文献3:特開平2-131190号公報
引用文献4:特開2011-58832号公報
引用文献5:特開2009-282875号公報

引用文献1には、加圧水型原子力発電所において、ほう素濃度が所定値の一次冷却水系の脱塩装置で使用されるゲル型の強塩基性陰イオン交換樹脂の発明が記載されている。
イオン交換樹脂が所定の均一係数を有することは周知である。(引用文献2)
原子力発電所の冷却水系の脱塩方法において、イオン交換樹脂が所定の水分率を有することは周知である。(引用文献3)
原子力発電プラントの復水脱塩装置において、所定の粒子径分布を有するイオン交換樹脂に、耐酸化性を有する高架橋度ゲル型カチオン樹脂を用いることは周知である。(引用文献4)
イオン交換樹脂に物理的強度と耐酸化性をもたらすため、適度の架橋度(水分率)をもたらすことは周知である。(引用文献5)

してみると、引用文献1記載の発明及び各周知技術は、水溶液の脱塩にイオン交換樹脂を利用するという課題の一致性から、引用文献1?5の記載に基づいて本願請求項1?5に係る発明とすることは当業者にとって容易である。その際、水分率、均一係数とほう素濃度の具体的な値は、当業者が所望な装置性能を考慮して適宜決定し得ることである。


第4 当審の判断
1 引用文献の記載事項
(1)引用文献1
引用文献1には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は加圧水型原子力発電所の一次冷却系の脱塩装置、および、ホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法、ならびに、一次冷却水の浄化方法に関する。
【背景技術】
・・中略・・
このような一次冷却水の浄化を目的とし、CVCS系統、BRS系統、SFPCS系統には、混床式の脱塩装置が設置されている。従来、前記混床式の脱塩装置の運用に関する発明がなされ、例えば、特許文献1では、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂との混合比率についての発明が報告されている。なお、一次冷却系の脱塩装置には、陰イオン交換樹脂として、OH形のゲル形陰イオン交換樹脂が使用されることが一般的である。
【0003】
一次冷却水には、原子炉燃料の臨界状態の制御を目的としてホウ酸が添加されている。特に、定期点検や燃料の交換の際には、一次冷却水のホウ素濃度を上げ、燃料を未臨界状態に保っている。そして、PWR型発電所の運転再開にあたっては、一次冷却系の脱塩装置に、通常運転時よりも高いホウ素濃度の一次冷却水が通水され、ホウ酸置換が行われる。近年では、発電効率、稼働率の向上を図るため、高燃焼度燃料の使用が検討されている。かかる高燃焼度燃料を使用する場合には、PWR型発電所運転時および停止時における一次冷却水のホウ素濃度をさらに高くする必要がある。
【特許文献1】特開2005-3598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、PWR型発電所の一次冷却系の脱塩装置に、例えば、ホウ素濃度として3000ppmを超えるようなホウ酸溶液を通液すると、充填された陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が生じると言う問題があった。陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が生じると、微細化された樹脂が脱塩装置から流出し、該脱塩装置よりも後段に配置されたフィルタ差圧が上昇し、フィルタ交換頻度が増加することで、交換作業に伴う作業員の労力の増大、フィルタ廃棄に伴う放射性廃棄物量の増加という問題があった。
そこで、本発明は、ホウ酸を含む一次冷却水を接触させても、陰イオン交換樹脂に割れや亀裂が発生しない脱塩装置を目的とする。
【課題を解決するための手段】
・・中略・・
【0006】
本発明の加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法は、OH形陰イオン交換樹脂を浄化手段に充填する充填工程と、前記浄化手段にホウ酸溶液を通液してホウ酸置換を行うホウ酸置換工程とを有し、前記ホウ酸置換工程は、前記ホウ酸溶液の通液量に従って、ホウ素濃度を高めてホウ酸溶液を通液することを特徴とする。前記ホウ酸置換工程は、前記浄化手段に、最初に接触させるホウ酸溶液のホウ素濃度が、3000ppm以下であることが好ましい。
【0007】
本発明の加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形陰イオン交換樹脂の調製方法は、OH形陰イオン交換樹脂を浄化手段に充填する充填工程と、前記浄化手段にホウ酸溶液を通液してホウ酸置換を行うホウ酸置換工程とを有し、前記ホウ酸置換工程は、空間速度SVを15L/L-R・h^(-1)以下で、ホウ酸溶液を前記浄化手段に通液することを特徴とする。
【0008】
本発明の一次冷却水の浄化方法は、予めホウ酸形に調整した陰イオン交換樹脂に、加圧水型原子力発電所の一次冷却水を接触させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の脱塩装置によれば、ホウ酸を含む一次冷却水を接触させても、充填された陰イオン交換樹脂の割れや亀裂を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、ホウ酸形陰イオン交換樹脂に、一次冷却水を接触させて浄化する一次冷却系の脱塩装置である。本発明の実施形態の一例について、図1を用いて説明する。図1は、PWR型発電所の一次冷却系8を示す模式図である。図1に示すとおり、一次冷却系8は、一次冷却水循環ライン10と、CVCS系統30と、BRS系統60と、SFPCS系統100とを有する。
「一次冷却系の脱塩装置」は、本実施形態におけるCVCS系統30の混床式脱塩塔33、BRS系統60の混床式脱塩塔62、SFPCS系統100の混床式脱塩塔110である。また、「浄化手段」とは、一次冷却系の脱塩装置における、ホウ酸形陰イオン交換樹脂の充填層を意味する。」

イ 「【0038】
一次冷却系8の脱塩装置の、ホウ酸形陰イオン交換樹脂に接触させる一次冷却水のホウ素濃度は特に限定されず、例えば、ホウ素濃度として500?10000ppmの範囲で運用される。本発明は3000ppm以上のホウ素濃度で運用される場合がより有効であり、3500ppm以上のホウ素濃度で運用される場合が特に有効である。
【0039】
一次冷却系8の脱塩装置の充填層に、OH形陰イオン交換樹脂を充填した場合には、以下の方法によりホウ酸置換を行うことで、OH形陰イオン交換樹脂を一次冷却水の浄化に用いるホウ素形陰イオン交換樹脂とすることができる。
【0040】
一次冷却系8の脱塩装置の充填層における、OH形陰イオン交換樹脂のホウ酸置換の第1の方法は、OH形陰イオン交換樹脂を充填層に充填し(充填工程)、該充填層にホウ酸溶液を通液してホウ酸置換を行い(ホウ酸置換工程)、前記ホウ酸置換工程は、ホウ酸溶液の通液量に従って、ホウ素濃度を高めるものである。
【0041】
第1の方法のホウ酸置換は、例えば、次のように行うことができる。
まず、最初に、OH形陰イオン交換樹脂を充填層に充填する。次いで、最終的に通液する一次冷却水よりも、ホウ素濃度の低いホウ酸溶液を前記樹脂層に通液し、OH形陰イオン交換樹脂のOH基をホウ酸イオンで置換する。そして、一次冷却水と同じホウ素濃度のホウ酸溶液、または、一次冷却水そのものを樹脂層に通液することにより、ホウ酸置換工程を行うことができる。例えば、最終的に通液する一次冷却水のホウ素濃度が5000ppmである場合、ホウ酸置換工程では、ホウ素濃度2500ppmのホウ酸溶液を充填層に通液した後、ホウ素濃度5000ppmの一次冷却水を通液する方法を挙げることができる。
【0042】
ホウ酸置換工程で、最初に、充填層に接触させるホウ酸溶液のホウ素濃度、即ち、ホウ酸溶液の通液開始時のホウ素濃度は、樹脂の重合度や強度等を勘案して決定することができる。例えば、3000ppm以下であることが好ましく、2500ppm以下であることがより好ましい。最初に通液するホウ素濃度が高すぎると、OH形陰イオン交換樹脂に急激な収縮が起き、収縮時に割れや亀裂が生じるおそれがあるためである。特にゲル形陰イオン交換樹脂において、この現象は顕著である。
【0043】
第1の方法のホウ酸置換における、ホウ酸溶液の通液速度は特に限定されないが、空間速度(SV)を20L/L-R・h^(-1)以下とすることが好ましく、SVを15L/L-R・h^(-1)以下とすることがより好ましい。SVが20L/L-R・h^(-1)を超えると、OH形のゲル形陰イオン交換樹脂の割れや亀裂の発生が多くなるためである。
なお、SVは、イオン交換樹脂の単位体積(L-R)に対して1時間に流通させる流量(L)であるL/L-R・h^(-1)で表される(以降において同じ)。
・・中略・・
【0049】
本発明によれば、一次冷却系8の脱塩装置に、ホウ酸形陰イオン交換樹脂を用いることで、高い濃度のホウ酸溶液を接触させても、該陰イオン交換樹脂に割れや亀裂等の破損が生じない。このため、脱塩装置から該陰イオン交換樹脂由来の粒子の漏洩を極めて少なくすることができ、各脱塩装置の後段に設置したフィルタ等を早期に閉塞させるようなことを防止することができる。従来使用されているOH形のゲル形陰イオン交換樹脂では、高い濃度のホウ酸溶液を接触させると、イオン形の変化、および、浸透圧差により樹脂が急激に収縮するために、体積変化に樹脂が耐えられず、割れや亀裂が生じると考えられる。一方、ホウ酸形の陰イオン交換樹脂は、イオン交換基におけるOH-とホウ酸イオンとの置換が飽和しているため、高濃度のホウ酸溶液と接触してもイオン交換されず、樹脂の収縮も生じない。この結果、ホウ酸形の陰イオン交換樹脂は、ホウ酸溶液との接触による割れや亀裂の発生を防止することができる。
【0050】
本発明によれば、OH系陰イオン交換樹脂を充填した充填層に、ホウ酸溶液の通液量に従って、ホウ素濃度を高めて通液してホウ酸形陰イオン交換樹脂とすることで、陰イオン交換樹脂の破損を抑制しつつ、ホウ酸形にすることができる。また、OH系陰イオン交換樹脂を充填した充填層に、ホウ酸溶液をSV15L/L-R・h^(-1)以下で通液してホウ酸形陰イオン交換樹脂とすることで、陰イオン交換樹脂の破損を抑制しつつ、ホウ酸形にすることができる。
・・中略・・
【0054】
(製造例1)ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aの製造
OH形ゲル形陰イオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名)PCA1(ローム・アンド・ハース社製)15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、ホウ素濃度3000ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L-R・h^(-1)で1時間通液して、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを製造した。
【0055】
(製造例2)ホウ酸形陰イオン交換樹脂Bの製造
OH形多孔形陰イオン交換樹脂であるアンバージェット(商品名)9090(ローム・アンド・ハース社製)15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、ホウ素濃度3000ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L-R・h^(-1)で1時間通液して、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Bを製造した。
【0056】
(実施例1)
製造例1で得られたホウ酸形陰イオン交換樹脂Aについて、樹脂の破損率を求めた(通液前の破損率)。次いで、ホウ酸形陰イオン交換樹脂A15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、陰イオン交換塔Aを作製した。得られた陰イオン交換塔Aに、ホウ素濃度4700ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L-R・h^(-1)で1時間通液した。通液後、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを取り出し、樹脂の破損率を求めた(通液後の破損率)。得られた結果を表1に示す。
(実施例2)
ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを製造例2で得られたホウ酸形陰イオン交換樹脂Bとした以外は、実施例1と同様にして、通液前の破損率と通液後の破損率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0057】
(比較例1)
ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aをホウ酸置換しないアンバーライト(商品名)PCA1とした以外は実施例1と同様にして、通液前の破損率と通液後の破損率を求めた。得られた結果を表1に示す。
【0058】
【表1】

【0059】
表1に示すとおり、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Aを用いた実施例1では、ホウ素濃度4700ppmのホウ酸水溶液の通液前の樹脂の破損率が1%未満であり、通液後の樹脂の破損率が5%であった。また、ホウ酸形陰イオン交換樹脂Bを用いた実施例2では、ホウ素濃度4700ppmのホウ酸水溶液の通液前および通液後の樹脂の破損率が1%未満であった。これに対し、OH形ゲル形陰イオン交換樹脂を用いた比較例1では、ホウ素濃度4700ppmのホウ酸水溶液の通液前の破損率が1%未満であったのに対し、通液後の樹脂の破損率が20%となっていた。このことから、予めホウ酸形とした陰イオン交換樹脂は、ホウ酸の接触による破損が発生しにくいことが判った。」

すると、上記引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。

「3000ppm以上のホウ素濃度で運用される加圧水型原子力発電所の一次冷却水の浄化に用いるホウ酸形ゲル形陰イオン交換樹脂であって、
OH形ゲル形陰イオン交換樹脂であるアンバーライト(商品名)PCA1(ローム・アンド・ハース社製)15mLを内径21mmのガラス製カラムに充填し、ホウ素濃度3000ppmのホウ酸水溶液をSV=20L/L-R・h^(-1)で1時間通液して製造した、ホウ酸形ゲル形陰イオン交換樹脂。」

(2)引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は水溶液の精製方法に関する。詳しくは、水溶液に含まれる塩類をクロマトグラフィーにより効果的に脱塩精製しうる水溶液の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
糖類等の水溶液を精製する場合、該水溶液に含まれる塩類を、カチオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーにより脱塩精製することは広く知られている(特許文献1等)。
クロマトグラフィーによる脱塩精製は、用いるイオン交換樹脂を再生する必要がないため、塩酸やNaOH等の薬剤が不要であり、薬剤廃液の排出がないことから、経済面、及び環境汚染防止の面から有効な手法である。
・・中略・・
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、脱塩精製の前に、上記軟化処理を行う場合は、弱酸性カチオン交換樹脂の使用が、薬剤処理を行う場合は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウム等の薬剤の使用が必要となるため、経済面、及び環境汚染防止の面からこれら前処理の省略が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は上記課題を解決するため鋭意検討した結果、従来のカチオン交換樹脂を用いたクロマトグラフィーによる精製方法の脱塩精製能力が著しく低下する原因に着目し、本発明に至った。即ち、カチオン交換樹脂の脱塩精製能力が著しく低下するのは、原料となる水溶液に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオン等の2価以上のカチオンによって該カチオン交換樹脂が2価以上のイオン形となることが原因である。そこで、本発明者等は、カルシウムイオンやマグネシウムイオン等の2価以上のカチオンを吸着しないアニオン交換樹脂を用いることを見出し、さらに、クロマトグラフィーによる脱塩精製能力に優れたアニオン交換樹脂を見出すことにより、従来のカチオン交換樹脂と同様の脱塩精製能力を有しながら、脱塩精製能力の低下がない水溶液の精製方法を発明するに至った。」

イ 「【0009】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、これらは本発明の実施態様の一例であり、本発明はこれらの内容に限定されるものではない。
[1]アニオン交換樹脂
・・中略・・
[1-2]粒度分布
本発明に用いられるアニオン交換樹脂は、粒度分布がシャープであることが好ましく、下記算出法により示される均一係数が通常1.6以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下である。
・・中略・・
[1-3]その他物性
その他、本発明に用いられるアニオン交換樹脂は、水分含有率が、通常40重量%以上、好ましくは45重量%以上であり、通常60重量%以下、好ましくは55重量%以下である。水分含有率が少なすぎると、クロマト分離性が不十分であり、水分含有率が多すぎると樹脂の強度が低くなるため、寿命が短くなる。
[1-4]アニオン交換樹脂
本発明に用いられるアニオン交換樹脂は、通常アンモニウム基を交換基とする樹脂であり、強塩基性アニオン交換樹脂、及び弱塩基性アニオン交換樹脂のいずれのアニオン交換樹脂も使用できる。また、その交換基の種類としては、トリメチルアンモニウム基等を交換基に有するI型、及びジメチルエタノールアンモニウム基交換基を有するII型のいずれのアニオン交換樹脂も使用できる。」

すると、上記引用文献2には、
「アニオン交換樹脂は、粒度分布がシャープであることが好ましく、均一係数が通常1.6以下、好ましくは1.3以下、更に好ましくは1.1以下であること、また、水分含有率が、通常40重量%以上、好ましくは45重量%以上であり、通常60重量%以下、好ましくは55重量%以下である。水分含有率が少なすぎると、クロマト分離性が不十分であり、水分含有率が多すぎると樹脂の強度が低くなるため、寿命が短くなること」
が記載されている。
なお、原査定の理由における「イオン交換樹脂が所定の均一係数を有することは周知である。」について、イオン交換樹脂が所定の均一係数を有することは、引用文献2を挙げるまでもなく、当業者には周知である。

(3)引用文献3
引用文献3には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

ア 「〔発明が解決しようとする課題〕
最近、混床式ろ過脱塩技術において復水からイオン成分及びクラツドの分離効果のうち、クラツドの分離効果を強化することにより、復水からSGへ持ち込まれるクラッドを低減しSGの健全性を維持する傾向があり、前述の粒状イオン交換樹脂を用いる方法では、クランドの捕捉能力がイオン交換樹脂とクラツドとの親和力の大きさに支配されることから、現状の含水率の低いイオン交換樹脂では比較的親水性のものを主とする現状のクラツドの分離効果は小さく、装置の高度化要求に十分な対応ができない。
そこで、本発明は復水の処理操作において、クラツドの分離能力の大きい混床式ろ過脱塩方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明者らは、鋭意研究の結果、使用するイオン交換樹脂の含水率を従来品のものより増加させたものを用いることによって、本発明の目的を達成しうることを見い出し、本発明を完成したものである。
すなわち、本発明は、PWR型原子力発電プラントの二次系統水の処理の際に、粒状又は粉末状陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換榴脂からなる混床によってろ過脱塩する方法において、陽イオン交換樹脂及び/又は陰イオン交換樹脂の含水率を従来品のゲル型樹脂の標準値(45?55%)よりも増加させた範囲(55?75%)の樹脂により混床を形成し、PWR型原子力発電プラントの二次系統水処理時の懸濁性不純物の除去能力を強化させたことを特徴とする混床式ろ過脱塩方法にある。」

イ 「以上より、イオン交換樹脂の含水率を増加させることにより、破砕強度、総交換容量等の性質が劣化する傾向にあり、実運用の際の含水率は、クラツド分離効果とろ過脱塩操作時に必要なその他の諸性質の限界値を伴せて決める必要があり、本発明においては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の含水率を55?75%望ましくは60?70%の範囲にすることが適当と考えられる。」

すると、上記引用文献3には、
「イオン交換樹脂の含水率を従来品のゲル型樹脂の標準値(45?55%)よりも増加させた範囲(55?75%)の樹脂により混床を形成し、PWR型原子力発電プラントの二次系統水処理時の懸濁性不純物の除去能力を強化させられるが、イオン交換樹脂の含水率を増加させることにより、破砕強度、総交換容量等の性質が劣化する傾向にあり、実運用の際の含水率は、クラツド分離効果とろ過脱塩操作時に必要なその他の諸性質の限界値を伴せて決める必要があり、本発明においては、陽イオン交換樹脂及び陰イオン交換樹脂の含水率を55?75%望ましくは60?70%の範囲にすることが適当であること」
が記載されている。
なお、原査定の理由における「原子力発電所の冷却水系の脱塩方法において、イオン交換樹脂が所定の水分率を有することは周知である。」について、イオン交換樹脂が所定の水分率を有することは、引用文献3を挙げるまでもなく、当業者には周知である。

(4)引用文献4
引用文献4には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

ア 「【0002】
原子力発電プラントであるBWRプラントでは、原子炉内の核分裂により発生した熱により冷却水を加熱し、発生させた蒸気により直接、発電用タービンを駆動させ発電を行う。タービンを駆動させた蒸気は、主復水器において海水により冷却され復水に戻される。
復水は主復水器直下のホットウエルに集められ、低圧復水ポンプにより復水浄化設備を構成する復水ろ過器や復水脱塩装置に通水され、水中のイオン性不純物及び懸濁性不純物等が除去され、高純度純水となる。復水浄化設備により処理された復水は、高圧復水ポンプ、給水加熱器、原子炉給水ポンプなどを経由し、再度、原子炉に供給される。この循環サイクルよって、1次冷却水は高純度に維持され、復水は繰り返し使用されている。
【0003】
この復水脱塩装置は、1次冷却水を全量処理することにより、原子炉の水環境に大きな影響を及ぼす水中の塩素、硫酸、ナトリウムなどのイオン性不純物、並びにプラント構成材料に起因する金属酸化物(クラッド)を同時に吸着除去し、原子炉水水質の高純度維持を図るものであり、復水入口母管より分岐された各枝管より流入する復水をH型カチオン交換樹脂とOH型アニオン交換樹脂が混合状態で充填された複数の復水脱塩塔を備えて構成されている。
なお、PWRプラントでは、復水脱塩装置が処理する復水が2次冷却水であるという違いがあるものの、復水脱塩装置自体の基本構成は前述のものと共通する。」

イ 「【0020】
本発明の復水脱塩装置において、前記カチオン交換樹脂の粒径分布は、平均粒径が450?550μmであり、平均粒径値から±100μmの範囲に90%以上の粒径が存在し均一係数が1.2以下であり、前記アニオン交換樹脂の粒径分布は355?1180μmの粒度範囲のガウス分布であり、且つ、前記カチオン交換樹脂と前記アニオン交換樹脂の混合比が混床全域に渡って設計基準値±10%以内となる混床状態を形成することが好ましい。」

ウ 「【0048】
原子力発電プラントの復水脱塩の用途に限らず、一般に市販・使用されているアニオン交換樹脂の種類としては、構造的にはゲル型樹脂とポーラス型樹脂、架橋度としては1?8%程度、表面積は0.01?100m^(2)/gの範囲ものがあるが、後述する実施例により優れた性能が確認されたアニオン交換樹脂としては、1?6%の低架橋度アニオン交換樹脂、ポーラス型アニオン交換樹脂、或は、物性上の特徴として、BET法による比表面積測定の結果が0.1?10m^(2)/gの比表面積を有するアニオン交換樹脂が挙げられる。なお、ここでいうポーラス型又はポーラス構造とは、一般にポーラス構造、ハイポーラス構造、MR(マクロレティキュラー)構造などと呼ばれる構造を含む。
【0049】
一般に、イオン交換樹脂のイオン捕捉能力は、その樹脂の表面積が大きいほど大きくなる。そして、架橋度が高くなるほどに樹脂の表面積は小さくなる傾向にあり、また、ポーラス型樹脂はゲル型樹脂よりも表面積が大きい。ただし、架橋度が低くなると樹脂が物理的に弱くなり、物理的強度が劣る傾向があり、またポーラス型樹脂はゲル型樹脂に較べ脆く、耐磨耗性に劣る。つまり、架橋度のより低いポーラス型樹脂ほど表面積がより大きく、イオン捕捉能力が高い傾向にあるが、原子力発電プラントの復水脱塩に用いられるイオン交換樹脂は、再生塔との間の移送もあり、物理的耐久性や磨耗に対する対策を施さなくてはならない。また、表面積が増えるということは、樹脂内部の構造が緻密になることを意味しており、特に分子量の大きなポリスチレンスルホン酸等に対しては樹脂内部の吸蔵能力が劣ってしまう。
【0050】
前述のような本発明に適用可能なアニオン交換樹脂は、平均分画分子量4000以下のポリスチレンスルホン酸含有水溶液を用い、通水線流速=120m/hで層高10cmのアニオン交換樹脂層に通水した時のポリスチレンスルホン酸の除去率が50%以上、望ましくは70%以上あることにより、脱塩装置からのポリスチレンスルホン酸の溶出を防止し、硫酸イオン濃度の低い高純度な処理水質を長期にわたって得ることを可能とする。更に、このようなアニオン交換樹脂と組み合わせるカチオン交換樹脂としては、耐酸化性に優れ、経年使用により溶出する平均分画分子量が4000を越えることがない高架橋度のゲル型カチオン交換樹脂であることが望ましい。」

すると、上記引用文献4には、
「BWRプラントの1次冷却水、PWRプラントの2次冷却水の復水脱塩装置に用いる
イオン交換樹脂であって、
粒径分布はガウス分布であり、1?6%の低架橋度アニオン交換樹脂、ポーラス型アニオン交換樹脂等のアニオン交換樹脂と組み合わせるカチオン交換樹脂としては、均一係数は1.2以下であり、耐酸化性に優れ、高架橋度のゲル型カチオン交換樹脂であることが望ましいこと(原査定の理由における「所定の粒子径分布を有するイオン交換樹脂に、耐酸化性を有する高架橋度ゲル型カチオン樹脂を用いること」を含む)、
イオン交換樹脂のイオン捕捉能力は、その樹脂の表面積が大きいほど大きくなり、架橋度が高くなるほどに樹脂の表面積は小さくなる傾向にあり、また、架橋度が低くなると樹脂が物理的に弱くなり、物理的強度が劣る傾向があること」
が記載されている。

(5)引用文献5
引用文献5には、以下の事項が記載されている。(下線は、当審が付した。)

ア 「【0001】
本発明は、原子力発電プラントの復水脱塩装置による復水処理に関し、カチオン交換樹脂から溶出する有機性不純物由来の硫酸イオン濃度の低い、高純度な処理水質を長期間に渡り安定的に得ることを目的とする復水脱塩方法及び装置に関する。」

イ 「【0025】
図3(A)?(D)は、本発明の復水脱塩装置におけるイオン交換樹脂床11の構造を例示する概略構成図である。
図3(A)に示す第1の例では、強酸性ゲル型カチオン交換樹脂と、架橋度が1%?4%の範囲の強塩基性1型ポーラス型アニオン交換樹脂とが均一に混合された混床14によってイオン交換樹脂床11が形成されている。
【0026】
図3(B)に示す第2の例では、
(a)強酸性ゲル型カチオン交換樹脂と、架橋度が1%?4%の範囲の強塩基性1型ポーラス型アニオン交換樹脂とが均一に混合された混床からなる上層部15aと、
(b)アニオン交換樹脂からなる下層部15bとからイオン交換樹脂床11が形成されている。
【0027】
図3(C)に示す第3の例では、
(a)カチオン交換樹脂からなる上層部16aと、
(b)強酸性ゲル型カチオン交換樹脂と、架橋度が1%?4%の範囲の強塩基性1型ポーラス型アニオン交換樹脂とが均一に混合された混床からなる下層部16bととからイオン交換樹脂床11が形成されている。
【0028】
図3(D)に示す第4の例では、
(a)カチオン交換樹脂からなる上層部17aと、
(b)強酸性ゲル型カチオン交換樹脂と、架橋度が1%?4%の範囲の強塩基性1型ポーラス型アニオン交換樹脂とが均一に混合された混床からなる中層部17bと、
(c)アニオン交換樹脂からなる下層部17cとを順に配置して3層構造のイオン交換樹脂床11を形成している。
【0029】
なお、本発明において「架橋度」とは、スチレンと架橋剤であるジビニルベンゼン(DVB)とを原料として樹脂コポリマーを製造する際、架橋剤であるDVBが全原料中に占める質量比率のことを指す。
イオン交換樹脂の特性のほとんどはジビニルベンゼンの添加比率である架橋度により決定される。特に、水分含有率やイオン交換容量は架橋度と明確な相関がある。架橋度と諸特性の関係は、一般に次の関係がある。低架橋度の樹脂は高架橋度の樹脂に比べ、湿潤状態での単位体積当たりの交換容量が小さく、水分含有率が高い。ミクロポア径が大きく反応速度に優れ再生特性に優れる。一方、物理的強度が低く、耐酸化性に劣る。これらの特性を把握した上で、要求される性能に応じて最適な架橋度を有するイオン交換樹脂を選択し、種々の水処理設備に供している。」

すると、上記引用文献5には、
「原子力発電プラントの復水脱塩装置に用いるイオン交換樹脂床として、強酸性ゲル型カチオン交換樹脂と、架橋度が1%?4%の範囲の強塩基性1型ポーラス型アニオン交換樹脂とが均一に混合された混床を用いること、
水分含有率やイオン交換容量は架橋度と明確な相関があり、低架橋度の樹脂は高架橋度の樹脂に比べ、水分含有率が高いが、物理的強度が低く、耐酸化性に劣るところ、これらの特性を把握した上で、要求される性能に応じて最適な架橋度を有するイオン交換樹脂を選択すること(原査定の理由における「イオン交換樹脂に物理的強度と耐酸化性をもたらすため、適度の架橋度(水分率)をもたらすこと」を含む)」
が記載されている。

2 対比
本願発明1と引用発明を対比すると、両者は、
「加圧水型原子力発電所において、ほう素濃度が2500ppm以上の一次冷却水系の脱塩装置で使用されるゲル型陰イオン交換樹脂。」
で一致し、次の点で相違する。

(相違点)
本願発明1は、「水分率がOH形において60%以下であり、かつ均一係数が1.15以下である、強塩基性陰イオン交換樹脂」であるのに対して、引用発明は、「ホウ酸形ゲル形陰イオン交換樹脂」であって、その水分率、均一係数が不明である点。

3 判断
(1)相違点について
引用発明の「ホウ酸形ゲル形陰イオン交換樹脂」は、「従来使用されているOH形のゲル形陰イオン交換樹脂では、高い濃度のホウ酸溶液を接触させると、イオン形の変化、および、浸透圧差により樹脂が急激に収縮するために、体積変化に樹脂が耐えられず、割れや亀裂が生じる」(引用文献1段落【0049】)ので、「最終的に通液する一次冷却水よりも、ホウ素濃度の低いホウ酸溶液を前記樹脂層に通液し、OH形陰イオン交換樹脂のOH基をホウ酸イオンで置換する」(同段落【0041】)ことにより、「ホウ酸形陰イオン交換樹脂とすることで、陰イオン交換樹脂の破損を抑制しつつ、ホウ酸形にするホウ酸形の陰イオン交換樹脂として」(同段落【0050】)、「イオン交換基におけるOH^(-)とホウ酸イオンとの置換が飽和しているため、高濃度のホウ酸溶液と接触してもイオン交換されず、樹脂の収縮も生じない。この結果、ホウ酸形の陰イオン交換樹脂は、ホウ酸溶液との接触による割れや亀裂の発生を防止することができる」(同段落【0049】)ものである。
すなわち、引用発明は、OH形陰イオン交換樹脂をホウ酸形陰イオン交換樹脂とすることにより、OH形陰イオン交換樹脂は、「高い濃度のホウ酸溶液を接触させると、イオン形の変化、および、浸透圧差により樹脂が急激に収縮するために、体積変化に樹脂が耐えられず、割れや亀裂が生じる」という課題を解決しているものであるから、OH形陰イオン交換樹脂のままで、該課題を解決しようとする動機付けはない。

また、引用文献2?5に記載された事項からも明らかなように、イオン交換樹脂において、水分率が大きい(架橋度が小さい)と物理的強度が低くなる、逆に言えば、水分率が小さい(架橋度が大きい)と物理的強度が高くなることは当業者には周知である。
しかし、OH形陰イオン交換樹脂として、物理的強度が高くなる、水分率の小さいOH形陰イオン交換樹脂を使用すれば、「高い濃度のホウ酸溶液を接触させると、イオン形の変化、および、浸透圧差により樹脂が急激に収縮するために、体積変化に樹脂が耐えられず、割れや亀裂が生じる」という課題が解決できるという技術思想が公知ではない以上、水分率が小さいと物理的強度が高くなることが当業者には周知であるとしても、引用発明の「ホウ酸形ゲル形陰イオン交換樹脂」に換えて、水分率の小さいOH形ゲル形陰イオン交換樹脂を使用することが、当業者が容易に想到し得ることであるということはできない。
さらに、水分率や均一係数は適宜決定し得るものであるということもできないことは明らかである。

よって、本願発明1は、引用発明、引用文献2?5に記載された各周知技術に基づいて、当業者が容易に想到し得るものであるとはいえない。

(2)効果について
本願発明1は、相違点に係る発明特定事項により、明細書記載の効果を奏する。

4 結論
したがって、本願発明1は、当業者が引用発明、引用文献2?5に記載された各周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。
また、本願発明2?5は、本願発明をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明、引用文献2?5に記載された各周知技術に基づいて容易に発明をすることができたものであるということはできない。


第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-13 
出願番号 特願2011-207180(P2011-207180)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G21F)
最終処分 成立  
前審関与審査官 林 靖  
特許庁審判長 小松 徹三
特許庁審判官 松川 直樹
伊藤 昌哉
発明の名称 強塩基性陰イオン交換樹脂、並びにそれを用いた脱塩方法及び脱塩装置  

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