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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F21V
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  F21V
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  F21V
管理番号 1324829
異議申立番号 異議2015-700022  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-09-18 
確定日 2016-12-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5716973号発明「照明器具」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5716973号の明細書及び特許請求の範囲を平成28年9月16日付け訂正請求書に添付された訂正明細書及び特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1について訂正することを認める。 特許第5716973号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5716973号の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年7月29日(優先権主張 平成23年1月11日)に出願した特願2011-167142号の一部を平成25年4月18日に新たな特許出願としたものであって、平成27年3月27日に特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人海老原健雄(以下「異議申立人1」という。)、特許異議申立人佐藤英晃(以下「異議申立人2」という。)及び特許異議申立人武田英莉(以下「異議申立人3」という。)より特許異議の申立てがなされ、平成28年1月13日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年3月18日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年4月15日付けで訂正拒絶理由が通知され、同年5月20日に意見書及び手続補正書の提出がなされ、同年7月19日付けで取消理由(決定の予告)が通知され、その指定期間内である同年9月16日に意見書の提出及び訂正請求がなされ、同年10月21日付けで異議申立人1及び異議申立人2から、また、同年10月24日付けで異議申立人3から特許法第120条の5第5項に基づく通知書に対する意見書の提出があったものである。

第2 訂正の適否について
1 訂正の内容
平成28年9月16日になされた訂正請求による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、次のとおりである(なお、平成28年3月18日になされた訂正請求は、特許法第120条の5第7項の規定により取り下げられたものとみなす。また、下線部は訂正箇所を示すものである。)。

(1)訂正事項1
本件特許の特許請求の範囲の請求項1に記載された
「器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;
配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する器具本体に設けられた点灯装置と;
側壁を有し、点灯装置を覆うように器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記点灯装置カバー側壁よりも外側の前記器具本体に配設された複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
複数の基板のうち特定の基板の前面側に設けられるとともに、少なくともこの基板上において最も外周側に設けられた発光素子よりも器具本体の内側領域に設けられた、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して発光素子に供給する電源供給接続部と;
特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板前面側であるとともに、少なくとも基板上において最も外周側に設けられた発光素子よりも器具本体の内側領域に設けられ、この基板間を電気的に接続する配線接続部と;
光源部及び点灯装置カバーを含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に設けられたカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」を、
「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;
前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置と;
側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;
前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と;
前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」に訂正する。

(2)訂正事項2
本件特許の願書に添付した明細書(以下「本件明細書」という。また、本件明細書とともに図面を併せて「本件明細書等」という。)の段落【0006】に記載された
「しかしながら、上記のように複数の発光素子の点灯を深調光することによって、常夜灯の機能を持たせる場合、従来の点状の光源とは異なり、その発光部は面状となるため、常夜灯としての点灯状態において発光部が面状に光り違和感を生じることとなる。」を、
「ここで、上記のように複数の発光素子を点灯させる照明器具においては、配線接続関係が複雑化する可能性がある。」に訂正する。

(3)訂正事項3
本件明細書の段落【0007】に記載された
「本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、補助光源としての発光素子を設け、この発光素子を主光源としての複数の発光素子が実装された基板と同一の基板に実装することにより、違和感を生じることなく、また、配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供することを目的とする。」を、
「本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供することを目的とする。」に訂正する。

(4)訂正事項4
本件明細書の段落【0008】に記載された
「本発明の実施形態による照明器具は器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する器具本体に設けられた点灯装置と;側壁を有し、点灯装置を覆うように器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記点灯装置カバー側壁よりも外側の前記器具本体に配設された複数の基板と;前記基板上に実装された複数の発光素子と;複数の基板のうち特定の基板の前面側に設けられるとともに、少なくともこの基板上において最も外周側に設けられた発光素子よりも器具本体の内側領域に設けられた、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して発光素子に供給する電源供給接続部と;特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板前面側であるとともに、少なくとも基板上において最も外周側に設けられた発光素子よりも器具本体の内側領域に設けられ、この基板間を電気的に接続する配線接続部と;光源部及び点灯装置カバーを含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に設けられたカバー部材と;を備えている。」を、
「本発明の実施形態による照明器具は中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置と;側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;前記基板上に実装された複数の発光素子と;前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と;前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;を備えている。」に訂正する。

2 訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
(1-1)訂正事項1の内容
訂正事項1は、次のア?キの訂正事項に区分できるので、そのように区分して以下検討する。
ア 訂正前の「器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;」を「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;」に訂正する(以下「訂正事項ア」という。)。
イ 訂正前の「配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する器具本体に設けられた点灯装置と;」を「前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置と;」に訂正する(以下「訂正事項イ」という。)。
ウ 訂正前の「側壁を有し、点灯装置を覆うように器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;」を「側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;」に訂正する(以下「訂正事項ウ」という。)。
エ 訂正前の「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記点灯装置カバー側壁よりも外側の前記器具本体に配設された複数の基板と;」を「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;」に訂正する(以下「訂正事項エ」という。)。
オ 訂正前の「複数の基板のうち特定の基板の前面側に設けられるとともに、少なくともこの基板上において最も外周側に設けられた発光素子よりも器具本体の内側領域に設けられた、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して発光素子に供給する電源供給接続部と;」を「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;」に訂正する(以下「訂正事項オ」という。)。
カ 訂正前の「特定の基板から隣接する他の基板に直流出力が供給されるように互いに隣接する基板前面側であるとともに、少なくとも基板上において最も外周側に設けられた発光素子よりも器具本体の内側領域に設けられ、この基板間を電気的に接続する配線接続部と;」を「前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と;」に訂正する(以下「訂正事項カ」という。)。
キ 訂正前の「光源部及び点灯装置カバーを含めた器具本体の前面側を覆うように器具本体に設けられたカバー部材と;」を「前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;」に訂正する(以下「訂正事項キ」という。)。

(1-2)訂正事項ア?キについて
ア 訂正事項アについて
訂正事項アによる訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「器具本体」について、本件明細書の段落【0014】等の記載を根拠に、それが「中央部に開口を有」する構成であることを限定するものである。
したがって、訂正事項アによる訂正は、本件明細書に記載された事項の範囲内において、「器具本体」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

イ 訂正事項イについて
訂正事項イによる訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「点灯装置」について、本件明細書の段落【0041】等の記載を根拠に、それが「前記開口の外側に設けられ」る構成であることを限定するものである。
さらに、訂正事項イによる訂正は、訂正前の「配線器具」及び「器具本体」との記載を、「前記配線器具」及び「前記器具本体」とそれぞれ訂正するものであり、「配線器具」及び「器具本体」の記載を明確にするものである。
したがって、訂正事項イによる訂正は、本件明細書に記載された事項の範囲内において、「点灯装置」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、さらに明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

ウ 訂正事項ウについて
訂正事項ウによる訂正は、訂正前の「点灯装置」及び「器具本体」との記載を、「前記点灯装置」及び「前記器具本体」とそれぞれ訂正するものであり、「点灯装置」及び「器具本体」の記載を明確にするものである。
したがって、訂正事項ウによる訂正は、明瞭でない記載の釈明を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

エ 訂正事項エについて
訂正事項エによる訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「複数の基板」について、本件明細書の段落【0015】?段落【0016】、段落【0038】及び図3、4等の記載を根拠に、それらが「前記開口を囲むように」構成されていること、「サークル状に」配設されていること、及び「1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている」ことを限定するものである。
さらに、訂正事項エによる訂正は、訂正前の「前記点灯装置カバー側壁よりも外側」との記載を、「前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側」と訂正するものであり、訂正前の「点灯装置カバー側壁」との記載を明確にするものである。
したがって、訂正事項エによる訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「複数の基板」を限定し、さらに訂正前の「点灯装置カバー側壁」との記載を明確にするものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、さらに明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

オ 訂正事項オについて
訂正事項オによる訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「電源供給接続部」について、本件明細書の段落【0024】?段落【0025】及び図3、4、8等の記載を根拠に、それが「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ」る構成であることを限定するものである。
したがって、訂正事項オによる訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「電源供給接続部」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

カ 訂正事項カについて
訂正事項カによる訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「配線接続部」について、本件明細書の段落【0015】及び図3等の記載を根拠に、それが「前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ」るものであって、「前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に」電気的に接続する構成であることを限定するものである。
したがって、訂正事項カによる訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「配線接続部」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

キ 訂正事項キについて
訂正事項キによる訂正は、訂正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「カバー部材」について、本件明細書の段落【0015】、段落【0046】及び図4等の記載を根拠に、それが「前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側」を覆うように構成されていることを限定するものである。
したがって、訂正事項キによる訂正は、本件明細書等に記載された事項の範囲内において、「カバー部材」を限定したものといえるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(1-3)訂正事項1のまとめ
以上のとおりであるから、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、さらに明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。

(2)訂正事項2及び3について
本件明細書の段落【0009】には、発明の効果について、「本発明の実施形態によれば、配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供することができる。」と記載されているところ、かかる効果は、少なくとも、「器具本体」に対する「点灯装置」及び「複数の基板」の配設構造、さらには「電源供給接続部」及び「配線接続部」設置態様に依拠することが技術的に明らかである。
したがって、訂正事項2及び3は、訂正前の発明が解決しようとする課題を上記発明の効果に整合するように訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、また、本件明細書に記載した範囲内でなされたもので、新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲を実質上拡張・変更するものでもない。

(3)訂正事項4について
訂正事項4は、上記訂正事項1に係る特許請求の範囲の訂正に合わせて、明細書の記載を整合させるものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえる。
そして、上記(1)で述べたとおり、訂正事項1による訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、さらに明瞭でない記載の釈明を目的とするものといえ、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもないから、訂正事項4も、本件明細書に記載した範囲内でなされたもので、新規事項の追加に該当せず、特許請求の範囲を実質上拡張・変更するものでもない。

3 小活
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号及び第3号に掲げる事項を目的とするものであり、さらに、同条第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項1について訂正することを認める。

第3 本件発明
本件訂正により訂正された請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;
前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置と;
側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;
前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と;
前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。」

第4 取消理由の概要
訂正前の請求項1に係る特許に対して平成28年7月19日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の要旨は、次のとおりである。
1 取消理由1
1-1 取消理由1-1
請求項1に係る発明は、異議申立人1が提出した甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。
1-2 取消理由1-2
請求項1に係る発明は、異議申立人2が提出した甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。
1-3 取消理由1-3
請求項1に係る発明は、異議申立人3が提出した甲第1号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項1に係る特許は取り消されるべきものである。

2 取消理由2
請求項1に係る特許は、その特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項1号及び特許法第36条第6項第2号に適合するものではなく、特許法第36条第6項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

3 取消理由3について
請求項1に係る特許は、その発明の詳細な説明の記載が不備のため、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである。

第5 当審の判断
1 取消理由1について
(1)取消理由1-1について
ア 異議申立人1が提出した甲第1号証(登録実用新案第3154761号公報、以下「1-甲1」という。)に記載された事項
なお、下線は当審で付与した。以下同様。
(1a)「【0001】
本考案は、LED灯具に関するものであり、さらに詳しくは、修理可能な環境保全多機能モジュール式LED灯具に関するものである。」
(1b)「【0016】
図1乃至図3を参照しながら、本考案に係るLED灯具について詳細に説明する。
本考案に係るLED灯具は、灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されたものである。
【0017】
灯座10は、放熱し易いアルミニウム金属材質からなり、ほぼディスク状で、底板11と底板11の周縁から上へ伸びる周壁12があり、また、底板11の中心に、固定枠13が設けられ、上記固定枠13の上方に、リング状シート131が設置され、リング状シート131の中心に、バイアホール132が形成され、また、固定枠13のリング状シート131の両側から、それぞれ、下へスタンド133が設けられて、固定枠13が、そのスタンド133により、底板11に固定され、また、底板11において、周縁に沿って、一体的にプレスされて、中央が上へ突出するリング状突縁111が形成され、上記底板11にも、複数の、下へ突出し、一体的にプレスされるリブ112が形成されてある。
【0018】
灯笠20は、透過材質からなり、上記灯座10に対応して、ほぼ円弧面のディスク状であり、上記灯座10に設置され、また、中心に、開口21が形成されて、ロック蓋22があり、上記ロック蓋22が、灯笠20の開口21に通せる約筒状で、ロック蓋22の上段の外周に、突縁221が設けられ、灯笠20に対して位置付けでき、また、上記ロック蓋22の内壁に螺条222が形成されてある。
【0019】
LED発光モジュール30は、複数設けられてあり、灯座10の底板11のリング状突縁111に設置され、それぞれに、基板31と外蓋32及び放熱弾性ゴム33が備えられる。上記基板31が、上記底板11のリング状突縁111に対応して、扇形になり、基板31が、リング状突縁111の上に設置され、他のLED発光モジュール30と、リング状に囲み、また、それぞれの基板31に、複数のLED311が配列され、基板31の一側に、ともに、差込口金312が設けられてある。
・・・
【0022】
電源制御回路板40は、灯座10の底板11の中心に固定されてあり、上記LED発光モジュール30に対応して、LED発光モジュール30にある差込口金312が差し込まれる複数の差込ソケット41が設置され、また、一側に、更に、充電式電池42が設置されてある。
【0023】
検出センサ50は、筒体であり、その上段が、上記固定枠13のバイアホール132を通してリング状シート131に固定され、その上段の外周に、螺条51が設けられ、灯笠20の開口21を通してロック蓋22と螺着され、その上端が、灯笠20から露出でき、外部の環境を検出できる。また、電源制御回路板40と、電気的に接続され、また、非常照明や人体或いは各種類の災害の検出及び警報ができる多機能を有する。例えば、人体検出センサや音響制御検出センサ、火災検出センサ、地震検出センサ、停電検出センサ、一酸化炭素検出センサ等である。本実施例において、上記検出センサ50が停電検出センサであり、その上端に、光源52が設置され、上記検出センサで停電を検出できる。また、停電の場合、充電式電池42から電源を供給し、非常照明を実現できるようにしてある。
・・・
【0025】
図2で示すように、本考案のより良い実施例であるLED灯具は、天井式の円盤灯であり、上記灯座10の底板11を、一般の部屋の天井に組立てた場合、上記灯座10が、底板11のリブ112により、天井との間に、隙間が形成されて、放熱の効果が得られる。」
(1c)1-甲1には、以下の図が示されている。



イ 1-甲1に記載された発明
(ア)1-甲1には、LED灯具に関する技術について開示されているところ(摘示(1a))、その具体的な構成について、摘示(1b)によれば、
・LED灯具は、灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されること(段落【0016】)、
・灯座10の底板11は天井に設置可能であること(段落【0025】)、
・電源制御回路板40は灯座10の底板11の中心に固定され、電源制御回路板40には複数の差込ソケット41が設けられていること(段落【0022】)
・灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられること、及び、固定枠13は、その上方にリング状シート131が設置され、リング状シート131の中心にバイアホール132が形成され、リング状シート131の両側からスタンド133が設けられて構成されていること(段落【0017】)
・検出センサ50は、その上段が固定枠13のバイアホール132を通してリング状シート131に固定されること(段落【0023】)、
・LED発光モジュール30は灯座10の底板11に複数設置され、各LED発光モジュール30はそれぞれ扇形の基板31を有すること、各基板31には複数のLED311が配列されるとともに、各基板31の一側に差込口金312が設けられていること、及び各基板31の差込口金312は電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれること(段落【0019】及び段落【0022】)、
・灯笠20は、灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、灯座10に設置されること(段落【0018】)、が明らかである。

してみると、1-甲1には、次の発明(以下「1-甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
「灯座10と、灯笠20と、LED発光モジュール30と、電源制御回路板40と、検出センサ50と、飾りリング60とから構成されるLED灯具において、
前記灯座10の底板11は天井に設置可能であり、
前記電源制御回路板40は前記灯座10の底板11の中心に固定され、前記電源制御回路板40には複数の差込ソケット41が設けられ、
前記灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられ、前記固定枠13は、その上方にリング状シート131が設置され、前記リング状シート131の中心にバイアホール132が形成され、前記リング状シート131の両側からスタンド133が設けられて構成され、
前記検出センサ50は、その上段が前記固定枠13のバイアホール132を通して前記リング状シート131に固定され、
前記LED発光モジュール30は灯座10の底板11に複数設置され、各LED発光モジュール30はそれぞれ扇形の基板31を有し、各基板31には複数のLED311が配列されるとともに、各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ、
前記灯笠20は、前記灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置される、
LED灯具。」

ウ 対比
本件発明と1-甲1発明とを対比する。
(ア)1-甲1発明の「灯座10」は、本件発明の「器具本体」に相当する。
(イ)1-甲1発明の「電源制御回路板40」は、「前記灯座10の底板11の中心に固定され」るものであり、「LED311」を点灯させるための点灯装置として機能することは技術的に明らかであるから、本件発明の「前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置」とは、「前記器具本体に設けられた点灯装置」の限度で共通するものといえる。
(ウ)1-甲1発明の「各基板31」は本件発明の「複数の基板」に相当する。
また、1-甲1発明の「各基板31」には「複数のLED311が配列され」、基板31を有する「LED発光モジュール30」は「灯座10の底板11に複数設置され」るものであるから、各基板31は、その前面側がLED311の実装面をなし、その裏面側が灯座10に配設されることも明らかである。
さらに、1-甲1発明の「各基板31」は、「扇形」をなし、「各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ」て構成されるものであるから、各基板31の灯座10への設置により、それらがサークル状に配設され、各基板31が電気的に接続されることも明らかである。
したがって、1-甲1発明の「各基板31」と本件発明の「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板」とは、「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、各基板が電気的に接続されている複数の基板」の限度で共通するものといえる。
(エ)1-甲1発明の「複数のLED311」は、「基板31」に「配列される」ものであるから、本件発明の「前記基板上に実装された複数の発光素子」に相当する。
(オ)1-甲1発明の「灯笠20」は、「前記灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置される」ものであり、図1及び図3(摘示c)にも示されているように、灯座10の前面側を覆うように設けられていることが明らかであるから、本件発明の「前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材」とは、「器具本体の前面側を覆うように器具本体に設けられたカバー部材」の限度で共通するものといえる。
(カ)1-甲1発明の「LED灯具」は、本件発明の「照明器具」に相当する。

以上によれば、本件発明と1-甲1発明とは、
「器具本体と;
前記器具本体に設けられた点灯装置と;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;
を具備する照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
「器具本体」について、本件発明は、「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる」ものであるのに対し、1-甲1発明は、「灯座10の底板11は天井に設置可能」である点。

<相違点2>
「点灯装置」について、本件発明は、「前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する」ものであるのに対し、1-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点3>
本件発明は、「側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバー」を具備するものであるのに対し、1-甲1発明は、そのような点灯装置カバーを具備するものではなく、「前記灯座10の底板11の中心に固定枠13が設けられ」ている点。

<相違点4>
「複数の基板」について、本件発明は、裏面側が「前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側」の前記器具本体に配設され、「1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有」するものであるのに対し、1-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点5>
本件発明は、「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と」を具備して構成されているのに対し、1-甲1発明は、「前記電源制御回路板40には複数の差込ソケット41が設けられ」、「各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ」て構成されている点。

<相違点6>
「カバー部材」の設置態様について、本件発明は、「前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた」器具本体の前面側を覆うように設けられているのに対し、1-甲1発明は、「前記灯座10に対応してほぼ円弧面のディスク状であり、前記灯座10に設置される」点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点5について検討する。
(ア)本件発明は、「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」を具備するものであって、「特定の基板」の実装面のうち、発光素子よりも開口側に「電源供給接続部」を設けるとともに、「特定の基板」と「複数枚の他の基板」との実装面のうち、特定の基板の両端と他の基板とが隣接する分割部と、複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに「配線接続部」を設けるものである。

(イ)他方、1-甲1発明は、「各基板31の一側に差込口金312が設けられ、前記各基板31の差込口金312は前記電源制御回路板40の差込ソケット41に差し込まれ」るものであるから、「各基板31」においては、特定の基板及び複数枚の他の基板という区別はなく、一様に「差込ソケット41」を具備して構成されたものといえる。

(ウ)そこで、1-甲1発明において、「各基板31」を、上記(ア)で述べた「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成することが当業者にとって容易であるか否かについて以下検討する。
異議申立人1が提出した甲第8号証(特開2001-338505号公報:以下「1-甲8」という。)には、照明装置における給電構造として、配線基板11及び枠体13の側壁側の一部に、凸型のコネクタDを挿入するための、バスタブ状の凹状部13c(図3、4)あるいは下方側に切り欠けを有する構造の凹状部13e(図5)のコネクタを設けること(段落【0030】?段落【0032】)、さらに、そのような凹状部からなる凹型のコネクタに加えて突出部13fからなる凸型のコネクタを設けることで、複数の照明装置を連結し、一つの電源装置から電力を供給可能に構成すること(段落【0033】?段落【0034】、図7、8)、が記載されている。
しかし、かかる技術は、複数の基板のそれぞれに、凹型及び凸型からなる複数のコネクタを設けるというもので、各基板は同様に構成されるものであるから、各基板は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
また、異議申立人1が提出した甲第9号証(特開2007-305742号公報:以下「1-甲9」という。)には、LED光源装置31における給電構造として、配線基板LEDユニット32の端部に、制御回路33と接続されるコネクタを設けるとともに、互いに隣接する配線基板LEDユニット32間には、これら配線基板LEDユニット32間を電気的に接続する、コネクタ及びFFC3を設けることが記載されている(段落【0043】?段落【0045】、図6)。
しかし、制御回路33と接続される配線基板LEDユニット32には、その片側にのみ配線基板LEDユニット32が隣接され、その両側に配線基板LEDユニット32が隣接されるものではないから、各配線基板LEDユニット32は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
したがって、1-甲1発明に1-甲8あるいは1-甲9に記載された技術事項を適用しても、上記相違点5に係る本件発明の構成には至らない。

(エ)ところで、異議申立人1は、平成28年10月21日付けの意見書(16頁12?27行)で、甲第5号証(特開2008-124008号公報:以下「1-甲5」という。)には、基板において、接続器41(電源供給接続部)を通して、直列に接続されたLEDチップ21に直流出力を供給し、再び上記接続部41に直流出力が戻るような電気的な接続を行う点が記載されているから、1-甲8及び1-甲9に記載された技術事項と併せ考慮すれば、各基板をサークル状に配設した際に、特定の基板から複数の他の基板を介して特定の基板へと直流出力が戻るような電気的な接続を行うことは単なる設計事項にすぎない旨、及び、単なる設計事項でないとしても、例えば、参考資料1(特開2009-231525号公報)及び参考資料2(特開2009-272263号公報)に記載される技術常識を考慮すると容易になし得る旨、主張する。
しかし、1-甲5に記載されたLEDユニット4は、金属板22とLEDチップ21からなるLEDエレメント23を金属線で電気的に接続して構成されるものであり、そもそも上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」を用いて構成されるものではない。
してみると、1-甲5に記載された技術事項とともに、1-甲8及び1-甲9に記載された技術事項を併せ考慮しても、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」が想定され得るものではない。
また、上記参考資料1及び参考資料2にも、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」は記載されていない。
したがって、異議申立人1の上記主張は採用できない。

(オ)以上のとおりであるから、1-甲1発明に1-甲8あるいは1-甲9に記載された技術事項を適用したとしても、さらには1-甲5び参考資料1、2に記載された技術事項を併せ考慮しても、上記相違点5に係る本件発明の構成に至るものではなく、当業者が容易になし得たものとはいえない。

オ 小活
以上のとおり、本件発明は1-甲1発明と相違点1?6において相違するものであるところ、少なくとも相違点5に係る本件発明の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(2)取消理由1-2について
ア 異議申立人2が提出した甲第1号証(台湾実用新案公告第394418号公報、以下「2-甲1」という。)に記載された事項
なお、異議申立人2が提出した甲第1号証の2(以下「翻訳」という。)を参考にした訳文で示す。
(2a)「本創作は、LED灯具に関するものであり、特に、一種のLED照明灯の灯ホルダ・・・に関するものである。」(2-甲1の3頁3?4行、翻訳の3頁6?7行)
(2b)「【実施態様】
先ず、図1を参照する。図1は、本創作のLED照明灯の分解図である。 灯ホルダ10は、・・・底板11を有する。」(2-甲1の4頁18?22行、翻訳の5頁下から3行及び6頁1?2行)
(2c)「灯のかさ20は、透光材質からなり、前記灯ホルダ10の形状に応じて略弧面の円盤形状に形成されて、灯ホルダ10上に設置可能である。また、前記灯のかさ20の中心部には、穿孔21が設けられている。」(2-甲1の5頁5?7行、翻訳の6頁12?14行)
(2d)「複数のLED発光モジュール30は、灯ホルダ10の環状溝111に応じてそれぞれ湾曲した弧状に形成され、且つハム(ham)に近似する形状に形成されている。該LED発光モジュール30は、基板31・・・を含む。基板31上には、複数のLED311が配置されている。・・・基板31の片側には、挿入口312が配置されている。・・・」(2-甲1の5頁8?13行、翻訳の6頁15行?7頁2行)
(2e)「電源制御回路基板40は、灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、LED発光モジュール30の挿入口312を接続することができるように、LED発光モジュール30に応じて複数の挿入プラグ41が設けられている。」(2-甲1の5頁21?23行、翻訳の7頁12?15行)
(2f)「光反射カバー50は、灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、上から下にかけて徐々に広がる略錐形状に形成されて、電源制御回路基板40を該光反射カバー50の中に位置させる。また、該光反射カバー50の外壁表面は、光反射材51、例えば、光反射紙によって覆われて、光反射機能を有する。」(2-甲1の5頁24行?6頁1行、翻訳の7頁16行?8頁1行)
(2g)「本創作の構造特徴、使用の技術手段及び期待可能な効果をさらに理解するために、本創作の組み立て方法を下記のように詳細に説明し、本創作に対してさらに深く且つ具体的に理解することができるだろう。・・・組み立てる際に、まず、底板11の環状溝111の中に複数のLED発光モジュール30を順序に入れてから、底板11の嵌合部材113をLED発光モジュール30の嵌合部材331に当接させて嵌合させる。」(2-甲1の6頁6?12行、翻訳の8頁6?13行)
(2h)2-甲1の第1図には、以下の図が示されている。


(2i)2-甲1の第2図には、以下の図が示されている。


(2j)2-甲1の第4図には、以下の図が示されている。


イ 2-甲1に記載された発明
(ア)2-甲1には、LED照明灯に関する技術について開示されているところ(摘示(2a))、その具体的な構成について、
・電源制御回路基板40は灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、電源制御回路基板40には複数の挿入プラグ41が設けられていること(摘示(2e))
・光反射カバー50は、灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、略錐形状に形成されて、電源制御回路基板40を該光反射カバー50の中に位置させること、及び光反射カバー50の外壁表面は光反射材51によって覆われること(摘示(2f))
・複数のLED発光モジュール30は灯ホルダ10の底板11に設置され(摘示(2g))、各LED発光モジュール30はそれぞれ基板31を有すること(摘示(2d))、各基板31には複数のLED311が配置されるとともに、各基板31の片側に挿入口312が設けられていること(摘示(2d))、及び各基板31の挿入口312は電源制御回路基板40の挿入プラグ41に接続されること(摘示(2e))、
・灯のかさ20は、灯ホルダ10の形状に応じて略弧面の円盤形状に形成されて、灯ホルダ10上に設置されること(摘示(2c))、が明らかである。
(イ)上記(ア)及び第1図(摘示(2h))によれば、LED照明灯は、灯ホルダ10と、灯のかさ20と、複数のLED発光モジュール30と、電源制御回路基板40と、光反射カバー50を含み構成されることが明らかである。
(ウ)また、複数のLED発光モジュール30は、それぞれ湾曲した弧状に形成されるものであるところ(摘示(2d))、第1図(摘示(2h))より、各LED発光モジュール30を構成する各基板31もそれぞれ湾曲した弧状に形成されていることが看取できる。
(エ)さらに、第2図(摘示(2i))及び第4図(摘示(2j))より、複数のLED発光モジュール30は、光反射カバー50の外壁表面よりも半径方向外側に位置することが看取できる。

してみると、2-甲1には、次の発明(以下「2-甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
「灯ホルダ10と、灯のかさ20と、複数のLED発光モジュール30と、電源制御回路基板40と、光反射カバー50を含み構成されるLED照明灯において、
前記電源制御回路基板40は前記灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、前記電源制御回路基板40には複数の挿入プラグ41が設けられ、
前記光反射カバー50は、前記灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、略錐形状に形成されて、前記電源制御回路基板40を該光反射カバー50の中に位置させるものであり、前記光反射カバー50の外壁表面は光反射材51によって覆われ、
前記複数のLED発光モジュール30は灯ホルダ10の底板11に設置され、前記各LED発光モジュール30はそれぞれ基板31を有し、前記各基板31は、それぞれ湾曲した弧状に形成され、各基板31には前記複数のLED311が配置されるとともに、前記各基板31の片側に挿入口312が設けられ、前記各基板31の挿入口312は前記電源制御回路基板40の挿入プラグ41に接続され、
前記灯のかさ20は、灯ホルダ10の形状に応じて略弧面の円盤形状に形成されて、前記灯ホルダ10上に設置され、
前記複数のLED発光モジュール30は、前記光反射カバー50の外壁表面よりも半径方向外側に位置する、
LED照明灯。」

ウ 対比
本件発明と2-甲1発明とを対比する。
(ア)2-甲1発明の「灯ホルダ10」は本件発明の「器具本体」に相当する。
(イ)2-甲1発明の「電源制御回路基板40」は、「前記灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ」るものであり、「LED311」を点灯させるための点灯装置として機能することは技術的に明らかであるから、本件発明の「前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置」とは、「器具本体に設けられた点灯装置」の限度で共通するものといえる。
(ウ)2-甲1発明の「光反射カバー50」は、「前記灯ホルダ10の底板11の中心部に締め付けされ、略錐形状に形成されて、前記電源制御回路基板40を該光反射カバー50の中に位置させるものであり、前記光反射カバー50の外壁表面は光反射材51によって覆われ」ており、その配設態様に照らして、光反射カバー50の外壁表面が側壁をなし、また、電源制御回路基板40を覆うように設けられたものといえるから、本件発明の「側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバー」に相当するものといえる。
(エ)2-甲1発明の「各基板31」は本件発明の「複数の基板」に相当する。
ここで、2-甲1発明の「各基板31」には「複数のLED311が配置され」、基板31を有する「LED発光モジュール30」は「灯ホルダ10の底板11に設置され」るものであるから、各基板31は、その前面側がLED311の実装面をなし、その裏面側が灯ホルダ10に配設されることが明らかである。
また、2-甲1発明の「各基板31」は、「湾曲した弧状」をなし、「前記各基板31の片側に挿入口312が設けられ、前記各基板31の挿入口312は前記電源制御回路基板40の挿入プラグ41に接続され」て構成されるものであるから、各基板31の灯ホルダ10への設置により、それらがサークル状に配設され、各基板31が電気的に接続されることも明らかである。
さらに、2-甲1発明は、基板31を有するLED発光モジュール30が、「前記光反射カバー50の外壁表面よりも半径方向外側に位置する」ものである。
してみると、2-甲1発明における「各基板31」の配設構造と、本件発明における「複数の基板」の「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている」との配設構造とは、「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、各基板が電気的に接続されている」という配設構造の限度で共通するものといえる。
(オ)2-甲1発明の「複数のLED311」は、「基板31」に「配置される」ものであるから、本件発明の「前記基板上に実装された複数の発光素子」に相当する。
(カ)2-甲1発明の「灯のかさ20」は、「灯ホルダ10の形状に応じて略弧面の円盤形状に形成されて、前記灯ホルダ10上に設置され」るものであり、図2(摘示(2i))にも示されているように、LED発光モジュール30と、光反射カバー50を含めた灯ホルダ10の前面側を覆うように設けられていることが明らかであるから、本件発明の「前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材」に相当するものといえる。
(キ)2-甲1発明の「LED照明灯」は本件発明の「照明器具」に相当する。

以上によれば、本件発明と2-甲1発明とは、
「器具本体と;
前記器具本体に設けられた点灯装置と;
側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;
を具備する照明器具。」の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点I>
「器具本体」について、本件発明は、「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる」ものであるのに対し、2-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点II>
「点灯装置」について、本件発明は、「前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する」ものであるのに対し、2-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点III>
「複数の基板」について、本件発明は、裏面側が「前記開口を囲むように」前記器具本体に配設され、「1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有」するものであるのに対し、2-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点IV>
本件発明は、「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と」を具備して構成されているのに対し、2-甲1発明は、「前記電源制御回路基板40には複数の挿入プラグ41が設けられ」、「前記各基板31の片側に挿入口312が設けられ、前記各基板31の挿入口312は前記電源制御回路基板40の挿入プラグ41に接続され」て構成されている点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点IVについて検討する。
(ア)本件発明は、「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」を具備するものであって、「特定の基板」の実装面のうち、発光素子よりも開口側に「電源供給接続部」を設けるとともに、「特定の基板」と「複数枚の他の基板」との実装面のうち、特定の基板の両端と他の基板とが隣接する分割部と、複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに「配線接続部」を設けるものである。

(イ)他方、2-甲1発明は、「前記各基板31の片側に挿入口312が設けられ、前記各基板31の挿入口312は前記電源制御回路基板40の挿入プラグ41に接続され」るものであるから、「各基板31」においては、特定の基板及び複数枚の他の基板という区別はなく、一様に「挿入口312」を具備して構成されたものといえる。

(ウ)そこで、2-甲1発明において、「各基板31」を、上記(ア)で述べた「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成することが当業者にとって容易であるか否かについて以下検討する。
異議申立人2が提出した甲第6号証(特表2009-516357号公報:以下「2-甲6」という。)には、固体照明における給電構造として、固体照明タイル10の端部に端部コネクタ100を接続するための陽極パッド22及び陰極パッド28を設けるとともに、互いに隣接する固体照明タイル10、10’、10’’間には、これら固体照明タイル10、10’、10’’間を電気的に接続する、陽極パッド22、26及び陰極パッド24、28を設けることが記載されている(段落【0021】、段落【0050】?段落【0051】、図1、16)。
しかし、かかる技術は、複数の固体照明タイル10、10’、10’’のそれぞれに、陽極パッド22、26及び陰極パッド24、28を設けるというもので、各固体照明タイル10、10’、10’’は同様に構成されるものであるから、各固体照明タイル10、10’、10’’は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
また、異議申立人2が提出した甲第7号証(特開2006-331801号公報:以下「2-甲7」という。)には、LEDパッケージ10を備える電子部品用ソケット1の給電構造として、ベース部2の端部に電源装置等のコネクタ部20と接続されるコネクタ部4を設けるとともに、互いに隣接する電子部品用ソケット1、1間には、これら電子部品用ソケット1、1間を電気的に接続する、コネクタ部4及びコネクタ部5を設けることが記載されている(段落【0026】、段落【0034】、図1、5)。
しかし、かかる技術は、複数の電子部品用ソケット1、1のそれぞれに、コネクタ部4及びコネクタ部5を設けるというもので、各電子部品用ソケット1、1は同様に構成されるものであるから、各電子部品用ソケット1、1は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
したがって、2-甲1発明に2-甲6あるいは2-甲7に記載された技術事項を適用しても、上記相違点IVに係る本件発明の構成には至らない。

(エ)ところで、異議申立人2は、平成28年10月21日付けの意見書(22頁1?12行)で、各基板をサークル状に配設した際に、特定の基板から複数の他の基板を介して特定の基板へと直流出力が戻るような電気的な接続を行うことは、当業者が必要に応じて適宜なし得る程度の設計事項にすぎない旨、及び、仮に、設計事項でないとしても、例えば、参考資料1(特開2010-3683号公報)、参考資料2(特開2010-15798号公報)、参考資料3(登録実用新案第3160808号公報)及び参考資料4(特開2009-272189号公報)に記載されたとおり、当該技術分野においては常套手段に過ぎない旨、主張する。
しかし、上記(ウ)で述べたとおり、2-甲1発明に2-甲6あるいは2-甲7に記載された技術事項を適用しても、上記相違点IVに係る本件発明の構成に至るものではなく、また、かかる構成を設計的事項にすぎないと解すべき合理性もない。
また、上記参考資料1?4にも、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」は記載されていない。
したがって、異議申立人2の上記主張は採用できない。

(オ)以上のとおりであるから、2-甲1発明に2-甲6あるいは2-甲7に記載された技術事項を適用したとしても、さらには参考資料1?4に記載された技術事項を併せ考慮しても、上記相違点IVに係る本件発明の構成に至るものではなく、当業者が容易になし得たものとはいえない。

オ 小活
以上のとおり、本件発明は2-甲1発明と相違点I?IVにおいて相違するものであるところ、少なくとも相違点IVに係る本件発明の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)取消理由1-3について
ア 異議申立人3が提出した甲第1号証(特開2002-270026号公報、以下「3-甲1」という。)に記載された事項
(3a)「【0006】図示の実施形態は、天井1に対して固定され外周に係止部2が形成された引掛ローゼット3と、中央に前記引掛ローゼット3を通す孔4が設けられるとともに、前記孔4内に弾性付勢されて突出され前記係止部2に係止される被係止部5が設けられ、さらにこの被係止部5の外側位置には光源部6が設けられ、前記引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7(及びコード7a)を介して受電される本体8と、前記プラグ7の下面及び前記被係止部5を外向きに変位させるために前記本体8の下面に露出された係止解除操作部9の下面を着脱可能に覆うカバー10とを備えた照明器具である。また、光源部6には多数の白色の発光ダイオード11…を備えている。なお、引掛ローゼット3としては近年普及し始めた係止部2付きの厚型のものを図示したが、その代わりに天井1にあらかじめ固定された旧来の薄型引掛ローゼットに係止部付きの中間アダプターを接続したものでもよく、この場合も当然本発明に含まれる。」
(3b)「【0007】さらに詳述すれば、被係止部5はばね12で孔4に向けて弾性付勢されている。カバー10は可撓性樹脂で成形されると好ましく不透明でも半透明でもよいが、光源部6の下面を覆うことはないように配備されて、下面照度の向上に寄与している。カバー10はその上端の爪13が本体8の下面の図示されない係止孔に挿入されて係止される例を示しているが、他の取付構造でももちろんよい。発光ダイオード11…を搭載した基板14には整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品も搭載してもよいが、そのような点灯回路部品はプラグ7内に設けてもよい。また、光源部6の下面には適切な配光をもたらすための透光レンズ15が設けられている。」
(3c)3-甲1には、以下の図が示されている。


イ 3-甲1に記載された発明
3-甲1には、摘示(3a)のとおり、
天井1に対して固定され外周に係止部2が形成された引掛ローゼット3と、中央に前記引掛ローゼット3を通す孔4が設けられるとともに、前記孔4内に弾性付勢されて突出され前記係止部2に係止される被係止部5が設けられ、さらにこの被係止部5の外側位置には光源部6が設けられ、前記引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7(及びコード7a)を介して受電される本体8と、前記プラグ7の下面及び前記被係止部5を外向きに変位させるために前記本体8の下面に露出された係止解除操作部9の下面を着脱可能に覆うカバー10とを備えた照明器具が記載されている。
また、摘示(3b)によれば、光源部6は、複数の発光ダイオード11を搭載した基板14を備えること、及びプラグ7内に整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品が設けられること、が明らかである。
さらに、図1及び図3(摘示(3c))より、基板14は、本体8にサークル状に配設されていることが看取できる。

以上によれば、3-甲1には、次の発明(以下「3-甲1発明」という。)が記載されているものといえる。
「天井1に対して固定され外周に係止部2が形成された引掛ローゼット3と、
中央に前記引掛ローゼット3を通す孔4が設けられるとともに、前記孔4内に弾性付勢されて突出され前記係止部2に係止される被係止部5が設けられ、さらにこの被係止部5の外側位置には光源部6が設けられ、前記引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7を介して受電される本体8と、
前記プラグ7の下面及び前記被係止部5を外向きに変位させるために前記本体8の下面に露出された係止解除操作部9の下面を着脱可能に覆うカバー10とを備えた照明器具であって、
前記光源部6は、複数の発光ダイオード11を搭載した基板14を備え、
前記プラグ7内に整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品が設けられ、
前記基板14は、前記本体8にサークル状に配設されている、
照明器具。」

ウ 対比
本件発明と3-甲1発明とを対比する。
(ア)3-甲1発明の「天井1」、「引掛ローゼット3」、「本体8」及び「孔4」は、本件発明の「器具取付面」、「配線器具」、「器具本体」及び「開口」にそれぞれ相当する。
また、3-甲1発明の「本体8」は、「中央に前記引掛ローゼット3を通す孔4が設けられるとともに、前記孔4内に弾性付勢されて突出され前記係止部2に係止される被係止部5が設けられ」、被係止部5が「天井1に対して固定され外周に係止部2が形成された引掛ローゼット3」に取付けられることが明らかであるから、本件発明の「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体」に相当するものといえる。
(イ)3-甲1発明は、「光源部6は、複数の発光ダイオード11を搭載した基板14を備え」、「プラグ7内に整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品が設けられ」、「前記引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7を介して受電される」ものであるところ、引掛ローゼットを介して交流電源を受けることはかかる技術分野の技術常識であるから、上記「点灯回路部品」は、引掛ローゼット3を介して交流電源を受けて直流出力を生成するものと理解することができる。
したがって、3-甲1発明の「点灯回路部品」と本件発明の「前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置」とは、「前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する点灯装置」の限度で共通するものといえる。
(ウ)3-甲1発明の「カバー10」は、「前記プラグ7の下面及び前記被係止部5を外向きに変位させるために前記本体8の下面に露出された係止解除操作部9の下面を着脱可能に覆う」ものであり、それが側壁を有することは図1及び図2(摘示(3c))に照らして明らかである。
したがって、3-甲1発明の「カバー10」は、上記(イ)をも踏まえると、本件発明の「側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバー」に相当するものといえる。
(エ)3-甲1発明の「基板14」は本件発明の「基板」に相当する。
また、3-甲1発明は、「カバー10」が「前記プラグ7の下面及び前記被係止部5を外向きに変位させるために前記本体8の下面に露出された係止解除操作部9の下面を着脱可能に覆う」ものであり、さらに、「被係止部5の外側位置には光源部6が設けられ」、「光源部6は、発光ダイオード11を搭載した基板14を備え」るものであるから、カバー10の側壁よりも外側に基板14が配設されることも明らかである。
さらに、3-甲1発明の「基板14」は、「前記本体8にサークル状に配設され」るものであり、本体8の孔4を囲むように配設されていることも明らかである。
したがって、3-甲1発明の「基板14」と本件発明の「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板」とは、「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されている基板」の限度で共通するものといえる。
(オ)3-甲1発明の「複数の発光ダイオード11」は、「基板14」に「搭載」されるものであるから、本件発明の「前記基板上に実装された複数の発光素子」に相当するものといえる。
(カ)3-甲1発明の「照明器具」は本件発明の「照明器具」に相当する。
以上によれば、本件発明と3-甲1発明とは、
「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;
前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する点灯装置と;
側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されている基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
を具備する照明器具。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点A>
「点灯装置」の設置態様について、本件発明は、「前記開口の外側に設けられ」るものであって、「前記器具本体に設けられた」ものであるのに対し、3-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点B>
「基板」について、本件発明は、「1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の」ものであるのに対し、3-甲1発明は、そのように特定されていない点。

<相違点C>
本件発明は、「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と」を具備して構成されているのに対し、3-甲1発明は、「プラグ7内に整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品が設けられ」、「引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7を介して受電される」ように構成されている点。

<相違点D>
本件発明は、「前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材」を有するのに対し、3-甲1発明は、そのようなカバー部材を備えていない点。

エ 判断
事案に鑑み、相違点Cについて検討する。
(ア)本件発明は、「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」を具備するものであって、「特定の基板」の実装面のうち、発光素子よりも開口側に「電源供給接続部」を設けるとともに、「特定の基板」と「複数枚の他の基板」との実装面のうち、特定の基板の両端と他の基板とが隣接する分割部と、複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに「配線接続部」を設けるものである。

(イ)他方、3-甲1発明は、「基板14」と関連した電気的な接続構造について、「プラグ7内に整流器や電流制限抵抗などの点灯回路部品が設けられ」、「引掛ローゼット3の下面に接続されるプラグ7を介して受電される」ように構成されている。

(ウ)そこで、3-甲1発明において、「基板14」を、上記(ア)で述べた「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成することが当業者にとって容易であるか否かについて以下検討する。
異議申立人3が提出した甲第3号証(特表2009-516357号公報:以下「3-甲3」という。)は、異議申立人2が提出した2-甲6と同じ刊行物であり、上記「(2)エ(ウ)」で述べたとおり、固体照明における給電構造として、固体照明タイル10の端部に端部コネクタ100を接続するための陽極パッド22及び陰極パッド28を設けるとともに、互いに隣接する固体照明タイル10、10’、10’’間には、これら固体照明タイル10、10’、10’’間を電気的に接続する、陽極パッド22、26及び陰極パッド24、28を設けることが記載されている(段落【0021】、段落【0050】?段落【0051】、図1、16)。
しかし、かかる技術は、複数の固体照明タイル10、10’、10’’のそれぞれに、陽極パッド22、26及び陰極パッド24、28を設けるというもので、各固体照明タイル10、10’、10’’は同様に構成されるものであるから、各固体照明タイル10、10’、10’’は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
また、異議申立人3が提出した甲第4号証(特開2001-338505号公報:以下「3-甲4」という。)は、異議申立人1が提出した1-甲8と同じ刊行物であり、上記「(1)エ(ウ)」で述べたとおり、照明装置における給電構造として、配線基板11及び枠体13の側壁側の一部に、凸型のコネクタDを挿入するための、バスタブ状の凹状部13c(図3、4)あるいは下方側に切り欠けを有する構造の凹状部13e(図5)のコネクタを設けること(段落【0030】?段落【0032】)、さらに、そのような凹型のコネクタに加えて突出部13fからなる凸型のコネクタを設けることで、複数の照明装置を連結し、一つの電源装置から電力を供給可能に構成すること(段落【0033】?段落【0034】、図7、8)、が記載されている。
しかし、かかる技術は、複数の基板のそれぞれに、凹型及び凸型からなる複数のコネクタを設けるというもので、各基板は同様に構成されるものであるから、各基板は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
さらに、異議申立人3が提出した甲第5号証(特開2010-3683号公報:以下「3-甲5」という。)には、照明灯における給電構造として、光源ユニット13の回路基板11は、1枚の回路基板によって平面視リング状に形成してもよいが、リングを分割した円弧状の回路基板を複数連結することによって平面視リング状にしてもよいこと、後者の場合、接続部22によって基板同士を物理的に連結するとともに電気的にも接続すること、また、連結された光源ユニット13はカバー部材10の円周上の1箇所に設けられた接続部6に電気的に接続され、この接続部6に電源コネクタ7が差し込まれることでLED12に給電されることが記載されている(段落【0071】、図5)。
しかし、かかる技術は、接続部6に電源コネクタ7が差し込まれるものであり、分割した円弧状の回路基板に電源コネクタ7が差し込まれるものではないから、各回路基板は、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」として構成されたものとはいえない。
したがって、3-甲1発明に、3-甲3、3-甲4、あるいは3-甲5に記載された技術事項を適用しても、上記相違点Cに係る本件発明の構成には至らない。

(エ)ところで、異議申立人3は、平成28年10月24日付けの意見書(20頁下から3行?21頁下から3行)で、複数の基板をサークル状に配設した際に、特定の基板から複数の他の基板を介して特定の基板へと直流出力が戻るような電気的な接続を行うことは、3-甲5、甲第9号証(特開2004-335426号公報:以下「3-甲9」という。)及び甲第10号証(特開2009-272189号公報:以下「3-甲10」という。)に記載されたとおり、技術常識にすぎないものであり、上記技術常識を考慮すると、当業者が容易に発明をなし得た程度にすぎない旨、主張する。
しかし、上記(ウ)で述べたとおり、3-甲1発明に3-甲5に記載された技術事項を適用しても、上記相違点Cに係る本件発明の構成に至るものではない。
また、3-甲9及び3-甲10にも、上記(ア)で述べた所定構造の「特定の基板」及び「複数枚の他の基板」は記載されていない。
したがって、異議申立人3の上記主張は採用できない。

(オ)以上のとおりであるから、3-甲1発明に、3-甲3、3-甲4、あるいは3-甲5に記載された技術事項を適用しても、さらには3-甲9及び3-甲10に記載された技術事項を併せ考慮しても、上記相違点Cに係る本件発明の構成に至るものではなく、当業者が容易になし得たものとはいえない。

オ 小活
以上のとおり、本件発明は3-甲1発明と相違点A?Dにおいて相違するものであるところ、少なくとも相違点Cに係る本件発明の構成は容易想到とはいえないものであるから、その余の相違点を検討するまでもなく、本件発明は当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2 取消理由2について
(1)取消理由2-1(特許法第36条第6項第1号)について
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるものであり、本件明細書の段落【0006】及び段落【0007】の記載は、訂正事項2及び訂正事項3のとおり訂正されている。
そうすると、本件発明は、従来技術が有する「複数の発光素子を点灯させる照明器具においては、配線接続関係が複雑化する可能性がある。」(段落【0006】)という問題に鑑みて、「配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供する」(段落【0007】)という課題を解決するために、少なくとも、
(i)「前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板」を備えるものであって、
(ii)「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と」を備えることを発明特定事項として特定したものと理解することができる。
そして、上記(i)で特定する「1枚の特定の基板および複数枚の他の基板」及び上記(ii)で特定する「電源供給接続部」と「配線接続部」とを用いた配線接続構造は、本件明細書に「基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。・・・そして、これら基板21相互は、分割部DにおいてコネクタCnによって電気的に接続されている(図3参照)。」(段落【0015】)として、また、「さらに、図3及び図8を併せて参照して示すように、特定の基板21aの内周側には、電源供給接続部23が設けられている。この電源供給接続部23は、具体的には、コネクタであり、後述する点灯装置4から導出される出力線Wが、拡散部材3に半径方向に向かって形成された出力線通過開口23aを介して半径方向に延出して電源供給接続部23に接続され、基板21の配線パターンを介して主光源としての各発光素子22や補助光源としての発光素子22aに電力が供給されるようになっている。」(段落【0024】)として、明確に記載されている。
したがって、本件発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるといえるから、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たすものである。

(2)取消理由2-2(特許法第36条第6項第2号)
上記「第2」で述べたとおり、本件訂正は認められるものであり、請求項1の記載は、訂正事項1のとおり訂正されている。
そして、本件発明は、「中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体」を前提として、「点灯装置カバー」の配設構造として「側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた」ことを、また「電源供給接続部」の配設構造として「前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する」ことを特定するものであり、上記「点灯装置カバー」及び「電源供給接続部」の配設構造は、明確に特定されている。
したがって、本件特許の請求項1の記載は、特許を受けようとする発明が明確であるといえるから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たすものである。

3 取消理由3について
上記「2(1)」で述べたとおり、本件発明の解決すべき課題は、「配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供する」というものであるところ(段落【0007】)、かかる課題を解決するための構成(実施の態様)として、本件明細書には「基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。・・・そして、これら基板21相互は、分割部DにおいてコネクタCnによって電気的に接続されている(図3参照)。」(段落【0015】)こと、及び「さらに、図3及び図8を併せて参照して示すように、特定の基板21aの内周側には、電源供給接続部23が設けられている。この電源供給接続部23は、具体的には、コネクタであり、後述する点灯装置4から導出される出力線Wが、拡散部材3に半径方向に向かって形成された出力線通過開口23aを介して半径方向に延出して電源供給接続部23に接続され、基板21の配線パターンを介して主光源としての各発光素子22や補助光源としての発光素子22aに電力が供給されるようになっている。」(段落【0024】)ことが明確に記載されている。
したがって、本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件発明の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものといえるから、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たすものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由1?3によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
照明器具
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、光源としてLED等の発光素子を用いた照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一般住宅用の照明器具においては、主光源に環状の蛍光ランプを用い、常夜灯として主光源とは別に、常夜灯に適する光出力の比較的小さな小形の電球が用いられている。
【0003】
一方、近時、LED等の発光素子の高出力化、高効率化及び普及化に伴い、光源として複数の発光素子を用いて長寿命化が期待できる照明器具が開発されている。光源として発光素子を用いる場合、その点灯が放電現象によるものではないため深調光による点灯が容易に実現できる。
【0004】
そのため、光源として発光素子を用いる照明器具においては、常夜灯用の別の光源を設けることなく、発光素子の点灯を深調光することによって光出力を小さくし、常夜灯の機能を持たせることが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-142137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、上記のように複数の発光素子を点灯させる照明器具においては、配線接続関係が複雑化する可能性がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態による照明器具は中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置と;側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;前記基板上に実装された複数の発光素子と;前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と;前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;を備えている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、配線接続関係を簡素化できる照明器具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る照明器具を示す斜視図である。
【図2】同照明器具を示す分解斜視図である。
【図3】同照明器具においてカバー部材及び点灯装置カバーを取外して下方から見て示す概略の平面図である。
【図4】同照明器具を示す断面図である。
【図5】図4中、A部を示す拡大図である。
【図6】同照明器具における基板を示す平面図である。
【図7】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態で一部拡大して示す断面図である。
【図8】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態で補助光源としての発光素子の部分を拡大して示す断面図である。
【図9】本発明の第2の実施形態に係る照明器具において、特定の基板を示す平面図である。
【図10】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態を示す断面図である。
【図11】本発明の第3の実施形態に係る照明器具において、特定の基板を示す平面図である。
【図12】同照明器具における光源部と拡散部材とを組み合わせた状態を示す断面図である。
【図13】本発明の第4の実施形態に係る照明器具を示す斜視図である。
【図14】同照明器具を示す前面側の分解斜視図である。
【図15】同照明器具を示す背面側の分解斜視図である。
【図16】同照明器具において、カバー部材及び光源部カバーを取外して示す平面図である。
【図17】同照明器具を示す背面側の斜視図である。
【図18】同照明器具を天井面に取付けた状態を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の第1の実施形態について図1乃至図8を参照して説明する。各図においてリード線等による配線接続関係は省略して示している場合がある。なお、同一部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0012】
本実施形態の照明器具は、器具取付面に設置された配線器具としての引掛けシーリングボディに取付けられて使用される一般住宅用のものであり、基板に実装された複数の発光素子を有する光源部から放射される光によって室内の照明を行うものである。
【0013】
図1乃至図4において、照明器具は、本体1と、光源部2と、拡散部材3と、点灯装置4と、点灯装置カバー5と、取付部6と、カバー部材7とを備えている。また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタAを備えている。このような照明器具は、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。
【0014】
図2乃至図5に示すように、本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり、略中央部に、後述する取付部6を配設するための円形状の開口11が形成されている。また、光源部2が取付けられる内面側の平坦部12の外周側には、背面側へ向かう段差部13が形成されて樋状の凹部14が形成されている。さらに、本体1の背面側には、弾性部材15が設けられている。
【0015】
光源部2は、図6の参照を加えて説明するように、基板21と、この基板21に実装された主光源としての複数の発光素子22とを備えている(図2においては発光素子22の図示を省略している)。基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。つまり、全体として略サークル状に形成された基板21は、4枚の分割された基板21から構成されている。そして、これら基板21相互は、分割部DにおいてコネクタCnによって電気的に接続されている(図3参照)。
【0016】
このように分割された基板21を用いることにより、基板21の分割部Dで熱的収縮を吸収して基板21の変形を抑制することができる。なお、複数に分割された基板21を用いることが好ましいが、略サークル状に一体的に形成された一枚の基板を用いるようにしてもよい。
【0017】
基板21は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂(FR-4)の平板からなり、表面側には銅箔によって配線パターンが形成されている。また、配線パターンの上、つまり、基板21の表面には反射層として作用する白色のレジスト層が施されている。なお、基板21の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れたベース板の一面に絶縁層が積層された金属製のベース基板を適用できる。
【0018】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、つまり、取付部6を中心とする略円周上に複数列、本実施形態では、内周側及び外周側の2列に亘って実装されている。また、LEDパケージには、発光色が昼白色Nのものと電球色Lのものとが用いられており、これらが交互に並べられていて、各列の隣接する発光素子22は略等間隔を空けて配設されている。この昼白色Nと電球色LのLEDパッケージに流れる電流等を調整することにより調色が可能となっている。
【0019】
さらに、図6に示すように、円周方向に隣接する発光素子22間の離間距離L1は、半径方向に隣接する発光素子22間の離間距離L2より短くなるように配置されている。つまり、L1<L2の関係となっている。
【0020】
なお、特定の基板21a(図3中、右側、図6中、右上側)には、補助光源として常夜灯用の発光素子22aが主光源である発光素子22と同一基板に実装されている。この発光素子22aは、主光源である発光素子22の内周側及び外周側の列間に配置されており、サークル状に実装された主光源における電球色Lのものと同じ仕様のLEDパッケージが用いられている。これにより部材の共通化が図られていて、実装工数の効率化が可能となる。
【0021】
さらに、常夜灯用の発光素子22aと主光源の発光素子22とは、その配置の向きが約90度異なっている。つまり、常夜灯用の発光素子22aは、その長方形状をなす外形にける長辺が周方向に向くように配置されている。これにより複数の主光源の発光素子22との配置のバランスがとられている。
【0022】
また、この常夜灯用の発光素子22aは、主光源である発光素子22とは別に独立して調光可能となっている。したがって、使用者が所望の明るさに調整して常夜灯として点灯させることができる。
【0023】
仮に、常夜灯用の発光素子22aを主光源としての発光素子22が実装された基板21とは別の基板に実装する場合には、リード線等によって配線接続関係を構成する必要があり、構成が複雑化する可能性がある。本実施形態においては、主光源である発光素子22と常夜灯用の発光素子22aとを同一基板に実装するようにしたので、リード線等を省略又はその配線長を短くすることが可能で、配線接続関係を簡素化できる。
【0024】
さらに、図3に示すように、特定の基板21aの内周側には、電源供給接続部23が設けられている。この電源供給接続部23は、具体的には、コネクタであり、後述する点灯装置4から導出される出力線Wが接続され、基板21の配線パターンを介して主光源としての各発光素子22や補助光源としての発光素子22aに電力が供給されるようになっている。
【0025】
この電源供給接続部23と常夜灯用の発光素子22aとは、分割された基板21のうち、1枚の特定の基板21aに設けられている。しかも、この電源供給接続部23と常夜灯用の発光素子22aとは、離間距離が長くならないように配置されている。つまり、常夜灯用の発光素子22aは、電源供給接続部23から取付部6を中心とする略半径方向に配置されている。したがって、電源供給接続部23と常夜灯用の発光素子22aとは、半径方向の同一直線上に配置されるようになり、相互の離間距離が短くなるようになっている。
【0026】
このため、電源供給接続部23から常夜灯用の発光素子22aまでの配線接続関係、具体的には、配線パターンのレイアウトを簡素化できる効果を奏することが可能となる。
【0027】
なお、発光素子22は、必ずしも複数列に実装する必要はない。例えば、周方向に沿って1列に実装するようにしてもよい。所望する出力に応じて発光素子22の列数や個数を適宜設定することができる。
【0028】
LEDパッケージは、概略的にはセラミックスや合成樹脂で形成されたキャビティに配設されたLEDチップと、このLEDチップを封止するエポキシ系樹脂やシリコーン樹脂等のモールド用の透光性樹脂とから構成されている。LEDチップは、青色光を発光する青色のLEDチップである。透光性樹脂には、昼白色や電球色の光を出射できるようにするために蛍光体が混入されている。
【0029】
なお、LEDは、LEDチップを直接基板21に実装するようにしてもよく、また、砲弾型のLEDを実装するようにしてもよく、実装方式や形式は、格別限定されるものではない。
【0030】
拡散部材3は、レンズ部材であり、図7及び図8の参照を加えて説明するように、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり、前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて、発光素子22を含めて基板21の全面を覆うように配設されている。
【0031】
また、レンズ部材は、図5及び図7に代表して示すように、略サークル状の内周側部分と外周側部分とに発光素子22に対向して円周方向に2条の山形であって、断面形状が一定の突条部31が連続して形成されている。この突条部31の内側には、U字状の溝32が円周方向に沿って連続して形成されている。したがって、U字状の溝32は、複数の発光素子22と対向して配置されるようになっており、複数の発光素子22は、U字状の溝32内に収められて覆われている状態となっている。
さらに、これら突条部31からは幅方向に延出する平坦部33が形成されており、これにより基板21の全面が覆われるようになっている。
【0032】
このように構成されたレンズ部材によれば、図5に示すように複数の発光素子22から出射された光は、突条部31によって、主として円周上の内周方向及び外周方向に拡散されて放射される。すなわち、発光素子22から出射された光は、発光素子22が配置されたところのサークル状の中心を原点とする半径方向へ主として拡散して放射されるようになる。
【0033】
したがって、レンズ部材によって複数の発光素子22から出射される光による照射光の均斉度を向上することが可能となる。さらに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することができる。この場合、拡散による配光角度を120度?160度程度に設定するのが望ましい。
【0034】
さらに、レンズ部材は、発光素子22から出射される光を主として半径方向へ拡散するが、円周方向に隣接する発光素子22間の離間距離L1は、半径方向に隣接する発光素子22間の離間距離L2より短くなるように配置されているので、発光面の輝度の均一化を図ることができる。
また、拡散部材3には、平坦部33が形成されて基板21の全面を覆うようになっているので、充電部が拡散部材3によって覆われ保護される。
【0035】
図8に代表して示すように、電源供給接続部23及び常夜灯用の発光素子22aが配設される部位に対応する拡散部材3の部分は、これらを覆うように略平坦状に形成されている。この場合、常夜灯用の発光素子22aは、2条の突条部31間に、突状部31から所定寸法離間して配置されている。したがって、発光素子22aから出射される光が突状部31が障害物となって遮光されてしまうのを抑制することができる。また、常夜灯用の発光素子22aに対応して突状部31は配置されていないので、発光素子22aは、比較的指向性を有する点光源として機能するようになる。
【0036】
なお、拡散部材3は、略サークル状に一体的に形成されていなくてもよい。例えば、分割された基板21に対応して、これらの基板21ごとに分割して形成するようにしてもよい。この場合には、一つの基板21に実装された複数の発光素子22ごとに連続して拡散部材3によって覆われるようになる。
【0037】
さらに、レンズ部材の突状部31の断面形状は、種々の形状を採用することができる。例えば、非対称の形状として、内周側に向かう光の拡散効果と外周側に向かう光の拡散効果とを異なるようにすることができる。この場合、内周側に向かう光の拡散効果を外周側に向かう光の拡散効果より大きなものとして内周側を明るくすることが可能となる。また、発光素子22から出射される光を全反射させる面を形成し、拡散を効果的に行うようにしてもよい。さらにまた、凹状面を形成して拡散効果を実現するようにしてもよい。
加えて、拡散部材3は、レンズ部材に限らず、拡散シート等を適用するようにしてもよい。
【0038】
上記のように構成された光源部2は、図4及び図5に代表して示すように、基板21が取付部6の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。また、基板21の裏面側が本体1の内面側の平坦部12に密着するように面接触して取付けられている。具体的には、基板21の前面側から拡散部材3が重ね合わされ、この拡散部材3を例えば、ねじS等の固定手段によって本体1に取付けることにより、基板21は、本体1と拡散部材3との間に挟み込まれて押圧固定されるようになっている。つまり、1本のねじSによって基板21と拡散部材3とが共締めされている。
【0039】
したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。なお、基板21と本体1との面接触は、基板21の全面が本体1に接触する場合に限らない。部分的な面接触であってもよい。
【0040】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に密着するように面接触しているので、基板21の実装面側から熱が拡散部材3に伝わり、拡散部材3を経由して放熱することが可能となる。つまり、基板21の前面側からも放熱できるようになっている。
【0041】
点灯装置4は、図2乃至図4に示すように、回路基板41と、この回路基板41に実装された制御用IC、トランス、コンデンサ等の回路部品42とを備えている。回路基板41は、取付部6の周囲を囲むように略円弧状に形成されていて、アダプタA側が電気的に接続されて、アダプタAを介して商用交流電源に接続されている。したがって、点灯装置4は、この交流電源を受けて直流出力を生成し、出力線Wから電源供給接続部23を経てその直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。
このような点灯装置4は、取付部6と光源部2、すなわち、基板21との間に配設されている。
【0042】
点灯装置カバー5は、図2及び図4に示すように、冷間圧延鋼板等の金属材料によって略短円筒状に形成され、点灯装置4を覆うように本体1に取付けられている。側壁51は、背面側に向かって拡開するように傾斜状をなしており、前面壁52には、取付部6と対応するように開口部53が形成されている。したがって、発光素子22から出射される一部の光は、側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。また、この開口部53に周縁には背面側へ凹となる円弧状のガイド凹部54が形成されている。
【0043】
取付部6は、略円筒状に形成されたアダプタガイドであり、このアダプタガイドの中央部には、アダプタAが挿通し、係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイドは、本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。アダプタガイドの外周部には、この外周部から突出するように基台が形成されていて、この基台には赤外線リモコン信号受信部や照度センサ等の電気的補助部品62が配設されている。
【0044】
なお、取付部6は、必ずしもアダプタガイド等と指称される部材である必要はない。例えば、本体1等に形成される開口であってもよく、要は、配線器具としての引掛けシーリングボディCbに対向し、アダプタAが係合される部材や部分を意味している。
【0045】
カバー部材7は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており、中央部には不透光性の円形状の化粧カバー71が取付けられている。また、この化粧カバー71には、前記電気的補助部品62と対向するように略三角形状の透光性を有する受光窓72が形成されている。さらに、カバー部材7の内面側の中央寄りには、内面方向に突出する突出ピン73が形成されている。
【0046】
そして、カバー部材7は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。具体的には、カバー部材7を回動することによって、カバー部材7に設けられた図示しないカバー取付金具を本体1の外周縁部の凹部14に配設されたカバー受金具75に係合することにより取付けられる。
【0047】
このようにカバー部材7が本体1に取付けられた状態においては、主として図4に示すように、カバー部材7の内面側は、点灯装置カバー5の前面壁52に面接触するようになる。したがって、点灯装置4等から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱を促進することが可能となる。
【0048】
また、拡散部材3とカバー部材7との間の距離は、20?60mm、好ましくは30?50mmに設定されている。これにより、照射光の均斉度が良好となり、基板21の実装面側から拡散部材3に伝導された熱がカバー部材7を経由して効果的に放熱されるようになる。
【0049】
ここで、カバー部材7は、回動させて本体1に取付けられるが、受光窓72の位置を電気的補助部品62と対向するように位置合わせをする必要がある。このため、本実施形態においては、詳細な説明は省略するが、カバー部材7側に形成された突出ピン73と点灯装置カバー5に形成されたガイド凹部54とによって位置規制手段が構成されている。この位置規制手段によって受光窓72が電気的補助部品62と対向して位置されるようになり、例えば、赤外線リモコン信号受信部が赤外線リモコン送信器からの制御信号を受信できるようになる。
【0050】
アダプタAは、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに、上面側に設けられた引掛刃によって電気的かつ機械的に接続されるもので略円筒状をなし、周壁の両側には一対の係止部A1が、内蔵されたスプリングによって常時外周側へ突出するように設けられている。この係止部A1は下面側に設けられたレバーを操作することにより没入するようになっている。また、このアダプタAからは、前記点灯装置4へ接続する電源コードが導出されていて、点灯装置4とコネクタを介して接続されるようになっている(図3参照)。
【0051】
次に、照明器具の天井面Cへの取付状態について図4を参照して説明する。まず、予め天井面Cに設置されている引掛けシーリングボディCbにアダプタAが電気的かつ機械的に接続されている。この状態から取付部6としてのアダプタガイドの係合口61をアダプタAに合わせながら、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口61に確実に係合するまで器具本体を下方から手で押し上げて取付け操作を行う。そして、カバー部材7を本体1に取付ける。この取付完了状態が図4に示す状態であり、このとき、弾性部材15が天井面Cと本体1の背面側との間に密着状態で介在され、照明器具は、天井面Cに固定状態となる。
【0052】
また、照明器具を取外す場合には、カバー部材7を取外し、アダプタAに設けられているレバーを操作してアダプタAの係止部A1の係合を解くことにより取外すことができる。
【0053】
照明器具の天井面Cへの取付状態において、点灯装置4に電力が供給されると、基板21を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から出射された光は、複数の発光素子22を連続して覆う拡散部材3によって半径方向へ拡散されるとともに、前面側へ放射される。前面側へ放射された光は、カバー部材7を透過して外方へ照射される。したがって、照射光の均斉度の向上を図ることができるとともに、各発光素子22の輝度による粒々感を抑制することが可能となる。
また、半径方向の内周側へ向かう一部の光は、点灯装置カバー5における傾斜状の側壁51によって前面側に反射され有効に利用されるようになる。
さらに、常夜灯用の発光素子22aの点灯時には、発光素子22aから出射される光が突状部31に遮光されてしまうのを抑制することができる。
【0054】
一方、発光素子22から発生する熱は、基板21の裏面側が本体1に面接触しているため、本体1に効果的に伝導され、広い面積で放熱されるようになる。また、基板21の外周側近傍には、基板21の外周に沿って段差部13が形成されているため、この段差部13によって放熱面積を増大させることができ、本体1外周部での放熱効果を高めることが可能となる。加えて、この段差部13は、本体1の補強効果を奏することができるものとなっている。
【0055】
また、点灯装置4は、取付部6と基板21との間に配設されているため、点灯装置4は、基板21から熱的影響を受けるのを軽減される。これは、基板21の熱は、本体1の外周方向に向かって伝導し、放熱される傾向にあることに起因するものである。
【0056】
さらに、カバー部材7は、点灯装置カバー5に面接触するようになっているので、点灯装置4から発生する熱を点灯装置カバー5へ伝導し、さらにカバー部材7へ伝導させて放熱をさせることができる。
【0057】
加えて、拡散部材3における平坦部33は、基板21の実装面側に面接触しているので、基板21の実装面側から拡散部材3を経由して前面側からも放熱することが可能となる。また、この場合、拡散部材3は、基板21の全面を覆うようになっているので充電部が保護されるようになる。
【0058】
以上のように本実施形態によれば、主光源である発光素子22と常夜灯用の発光素子22aとを同一基板に実装するようにしたので、リード線等を省略又はその配線長を短くすることが可能で、配線接続関係を簡素化できる。しかも、電源供給接続部23と常夜灯用の発光素子22aとの相互の離間距離が短くなっているので、一層配線接続関係の簡素化が可能となる照明器具を提供することができる。
【0059】
次に、本発明の第2の実施形態について図9及び図10を参照して説明する。図9は、特定の基板21aを示しており、図10は、特定の基板21aに拡散部材3が配設された状態における断面を示している。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0060】
本実施形態においては、図9に示すように、補助光源としての常夜灯用の発光素子22aを主光源である発光素子22の内周側の列の内側に実装するようにしたものである。このような構成においては、図10に示すように、夜灯用の発光素子22aは、拡散部材3の突状部31から所定寸法離間して配置されるようになる。
したがって、第1の実施形態と同様に、発光素子22aから出射される光が突状部31が障害物となって遮光されてしまうのを抑制することができる。
【0061】
次に、本発明の第3の実施形態について図11及び図12を参照して説明する。図11は、特定の基板21aを示しており、図12は、特定の基板21aに拡散部材3が配設された状態における断面を示している。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複した説明は省略する。
【0062】
本実施形態においては、図11に示すように、補助光源としての常夜灯用の発光素子22aを主光源である発光素子22の外周側の列の外側に実装するようにしたものである。このような構成においても、図12に示すように、夜灯用の発光素子22aは、拡散部材3の突状部31から所定寸法離間して配置されるようになる。
したがって、第1の実施形態と同様に、発光素子22aから出射される光が突状部31が障害物となって遮光されてしまうのを抑制することができる。
【0063】
次に、本発明の第4の実施形態について図13乃至図18を参照して説明する。なお、本実施形態においては、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し、簡略化して説明する場合がある。
【0064】
本実施形態の照明器具は、第1の実施形態と同様に、器具取付面に設置された配線器具としての引掛けシーリングボディに取付けられて使用される一般住宅用のものであり、基板に実装された複数の発光素子を有する光源部から放射される光によって室内の照明を行うものである。
【0065】
照明器具は、器具本体1と、光源部2と、光源部カバー3と、点灯装置4と、点灯装置カバー5と、センター部材Cmと、取付部としてのアダプタガイド6と、カバー部材7とを備えている。さらに、照明器具は、光センサ8と、間接光光源部9とを備えている。
【0066】
また、器具取付面としての天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに電気的かつ機械的に接続されるアダプタA(図18参照)と、赤外線リモコン送信器Rcとを備えていて、丸形の円形状の外観に形成され、前面側を光の照射面とし、背面側を天井面Cへの取付面としている。
【0067】
図14乃至図18に示すように、本体1は、冷間圧延鋼板等の金属材料の平板から円形状に形成されたシャーシであり、略中央部に、後述するアダプタガイド6が配置される円形状の開口11が形成されている。この開口11は、円形状の一部が外方に突出してアダプタガイド6の外形と略等しい形状に形成されている。
【0068】
開口11の外周側には、四角形状で角部がR形状をなし、背面側へ突出した突出部12が形成されている。また、この突出部12の外周側には、前面側へ突出した円形環状の突出部13が形成されている。さらに、この突出部13の外周側には、突出部13と半径方向に連続するように背面側に突出、換言すれば、前面側に凹部を形成する円形環状の突出部14が形成されている。
【0069】
突出部14によって形成される凹部には、カバー部材7が着脱可能に取付けられるカバー部材受金具75が配置されている。これら突出部12、13、14は、主としてシャーシに取付けられる部材の取付部として機能し、また、シャーシの強度を補強する機能や放熱面積を増加する機能を有している。
【0070】
光源部2は、図14、図16及び図18に示すように、基板21と、この基板21に実装された複数の発光素子22とを備えている。基板21は、所定の幅寸法を有した円弧状の4枚の基板21が繋ぎ合わされるように配設されて全体として略サークル状に形成されている。つまり、全体として略サークル状に形成された基板21は、4枚の分割された基板21から構成されている。
【0071】
このように分割された基板21を用いることにより、基板21の分割部で熱的収縮を吸収して基板21の変形を抑制することができる。なお、複数に分割された基板21を用いることが好ましいが、略サークル状に一体的に形成された一枚の基板を用いるようにしてもよい。
【0072】
基板21は、絶縁材であるガラスエポキシ樹脂(FR-4)の平板からなり、表面側には銅箔によって配線パターンが形成されている。発光素子22は、この配線パターンに電気的に接続されるようになっている。また、配線パターンの上、つまり、基板21の表面には反射層として作用する白色のレジスト層が施されている。
【0073】
なお、基板21の材料は、絶縁材とする場合には、セラミックス材料又は合成樹脂材料を適用できる。さらに、金属製とする場合は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れたベース板の一面に絶縁層が積層された金属製のベース基板を適用できる。
【0074】
発光素子22は、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。このLEDパッケージが複数個サークル状の基板21の周方向に沿って、複数列、本実施形態では、半径の異なる略同心円の周上に3列に亘って実装されている。つまり、内周側の列、外周側の列及び、これら内周側の列と外周側の列との中間の列に亘って実装されている。
【0075】
LEDパッケージは、概略的にはセラミックスや合成樹脂で形成されたキャビティに配設されたLEDチップと、このLEDチップを封止するエポキシ系樹脂やシリコーン樹脂等のモールド用の透光性樹脂とから構成されている。
【0076】
内周側の列及び外周側の列に実装されているLEDパッケージには、発光色が昼白色(N)のものと電球色(L)のものとが用いられており、これらが円周上に略等間隔を空けて交互に並べられて配設されている。LEDチップは、青色光を発光するLEDチップである。透光性樹脂には、蛍光体が混入されており、昼白色(N)、電球色(L)の白色系の光を出射できるようにするために、主として青色の光とは補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体が使用されている。
【0077】
中間の列に実装されているLEDパッケージには、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に発光するものが用いられている。したがって、LEDチップは、それぞれ赤色、緑色、青色の光に発光するLEDチップであり、これらLEDチップがモールド用の透光性樹脂によって封止されている。
【0078】
これら赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に発光するLEDパッケージは、円周上に順次、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と連続的に略等間隔を空けて配置されている。
【0079】
なお、LEDパッケージにおける赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の配列は、特定されず順不同でよく、例えば、緑色(G)、赤色(R)、青色(B)の順に配列してもよい。また、隣接するLEDパッケージは、異なる発光色のものを配置するのが好ましいが、格別限定されるものではない。一例としては、赤色(R)、赤色(R)、緑色(G)、緑色(G)、青色(B)、青色(B)のように同色を2個ずつ連続的に配置することも可能である。
【0080】
このように半径の異なる略同心円の周上に列をなして昼白色(N)、電球色(L)に発光する複数の発光素子22が配設され、前記円と略中心を同じくする円の周上であって、前記昼白色(N)、電球色(L)に発光する発光素子22の列間に列をなして赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に発光する複数の発光素子22が配設されている。
【0081】
したがって、発光色の異なる複数の発光素子22、すなわち、昼白色(N)、電球色(L)赤色(R)、緑色(G)、青色(B)に発光する発光素子22が配設されているので、これらが混光されることにより表現可能な光色の範囲が広く、発光素子22の出力を調整することにより光色を適宜調色することが可能となる。
【0082】
なお、主として図16に示すように、特定の基板21a(図16中、右上側)には、補助光源として常夜灯用の発光素子22aが主光源である発光素子22と同一基板に実装されている。この発光素子22aは、主光源である発光素子22の内周側に配置されており、サークル状に実装された主光源における電球色Lのものと同じ仕様のLEDパッケージが用いられている。
【0083】
さらに、特定の基板21aには、赤外線リモコン信号受光素子25及びチャンネル設定スイッチ26が実装されている。赤外線リモコン信号受光素子25は、赤外線受光素子であり、光電変換素子であるフォトダイオード等から構成されており、リモコン送信器Rcから送信される赤外線制御信号を受信して発光素子22の発光状態を制御するように動作する。
【0084】
チャンネル設定スイッチ26は、リモコン送信器Rcから送信される信号が送信可能な範囲内に複数の照明器具が設置されている場合に、照明器具を識別可能に赤外線リモコン信号受光素子25のチャンネルを切換えるチャンネル設定スイッチである。したがって、このスイッチ26の設定とリモコン送信器Rcに設けられているチャンネル設定スイッチとの設定が一致している場合にのみ、リモコン送信器Rcの操作により特定の照明器具を制御でき、複数の照明器具が同時に操作されることが防止される。
【0085】
このように主光源である発光素子22が実装された基板21と同一基板に、補助光源としての発光素子22a及び赤外線リモコン信号受光素子25、さらには、チャンネル設定スイッチ26を実装するようにしたので、リード線等を省略又はその配線長を短くすることが可能で、配線接続関係を簡素化できる。
【0086】
仮に、常夜灯用の発光素子22aや赤外線リモコン信号受光素子25を主光源としての発光素子22が実装された基板21とは別の基板に実装する場合には、リード線等によって配線接続関係を構成する必要があり、構成が複雑化する可能性がある。
【0087】
また、これら補助光源としての発光素子22a、赤外線リモコン信号受光素子25及びチャンネル設定スイッチ26は、主光源である発光素子22の内周側に配置されているので、外周側に配置される場合に比し、実装領域をコンパクトに形成することができる。
【0088】
ところで、主光源である発光素子22が実装された基板21と同一基板には、後述する光センサ8は実装されていない。光センサ8は、別の基板に実装されて構成されている。その理由は、光センサ8は、周囲の明るさを検知して発光素子22の発光状態を自動的に制御する機能を有しているが、この機能を備えている照明器具と、この機能を備えていない照明器具との2つのタイプの照明器具の提供を実現しやすくするためである。
つまり、発光状態を自動的に制御する機能を備えていない照明器具を展開する場合には、光センサ8を容易に省略して実現することが可能となる。
【0089】
また、常夜灯用の発光素子22aは、主光源である発光素子22とは別に独立して調光可能となっている。したがって、使用者が所望の明るさに調整して常夜灯として点灯させることができる。
【0090】
なお、LEDは、LEDチップを直接基板21に実装するようにしてもよく、また、砲弾型のLEDを実装するようにしてもよく、実装方式や形式は、格別限定されるものではない。
【0091】
このように構成された光源部2は、図18に代表して示すように、基板21が本体1の開口11の周囲に位置して、発光素子22の実装面が前面側、すなわち、下方の照射方向に向けられて配設されている。また、基板21の裏面側が本体1の内面側に密着するように例えば、ねじ等の固定手段によって取付けられている。したがって、基板21は、本体1と熱的に結合され、基板21からの熱が裏面側から本体1に伝導され放熱されるようになっている。
【0092】
図14及び図18に示すように、光源部2の前面側には、光源部カバー3が配設されている。光源部カバー3は、例えば、ポリカーボネートやアクリル樹脂等の絶縁性を有する透明合成樹脂からなり、前記発光素子22の配置に沿って略サークル状に一体的に形成されていて、発光素子22を含めて基板21の全面を覆うように配設されている。
【0093】
したがって、発光素子22から出射される光は、光源部カバー3を透過するようになる。また、基板21の全面を覆うようになっているので、充電部が光源部カバー3によって覆われ絶縁性が確保される。
【0094】
点灯装置4は、図15及び図18に代表して示すように、回路基板41と、この回路基板41に実装された制御用IC、トランス、コンデンサ等の回路部品42とを備えている。回路基板41は、中央部の周囲を囲むように板状に形成されていて、その表面側に回路部品42が実装されている。
【0095】
回路基板42には、アダプタA側が電気的に接続されて、アダプタAを介して商用交流電源に接続される。したがって、点灯装置4は、この交流電源を受けて直流出力を生成し、リード線を介してその直流出力を発光素子22に供給し、発光素子22を点灯制御するようになっている。
【0096】
このような点灯装置4は、点灯装置カバー5に取付けられ覆われて、本体1の背面側に配置されるようになる。この場合、回路基板41は、回路部品42が前面側(図示上、下方側)に向けられて取付けられる。
【0097】
点灯装置カバー5は、冷間圧延鋼板等の金属材料によって略四角形の短筒状に形成され、側壁5aは、前面側に向かって拡開するように傾斜状をなしており、背面壁5bの中央部には、開口5cが形成されている。
この点灯装置カバー5は、図15、図17及び図18に示すように、前面側のフランジがシャーシの突出部12に載置され、ねじ止めされて取付けられる。
【0098】
センター部材Cmは、図14、図16、図18に示すように、PBT樹脂等の合成樹脂材料で作られ、略短円筒状に形成されており、中央部に引掛けシーリングボディCbに対向する開口Cm1を有している。また、開口Cm1の周囲には、環状の空間部Cm2が形成されていて、この空間部Cm2には、光センサ8が配設されるようになっている。
さらに、センター部材Cmの前面壁には、光センサ8の受光部と対向する受光窓Cm3が形成されている。
【0099】
このように構成されたセンター部材Cmは、主として図18に示すように、背面側のフランジが光源部カバー3を介してシャーシにねじ止めされて取付けられている。なお、センター部材Cmは、シャーシに直接的又は間接的に取付けることができ、その具体的な取付構成が限定されるものではない。
【0100】
アダプタガイド6は、アダプタAが挿通し係合する部材である。アダプタガイド6は、図15及び図18に示すように、略円筒状に形成され、中央部には、アダプタAが挿通し、係合する係合口61が設けられている。このアダプタガイド6は、本体1の中央部に形成された開口11に対応して配設されている。
【0101】
カバー部材7は、アクリル樹脂等の透光性を有し、乳白色を呈する拡散性を備えた材料から略円形状に形成されており、中央部には円形状の開口7aが形成されている。また、カバー部材7の外周部には、カバー部材化粧枠7bが取付けられていて、このカバー部材化粧枠7bは、アクリル樹脂等からなる透明材料から形成されている。
【0102】
そして、カバー部材7は、光源部2を含めた本体1の前面側を覆うように本体1の外周縁部に着脱可能に取付けられるようになっている。具体的には、カバー部材7を回動することによって、カバー部材7に設けられたカバー部材取付金具74を、本体1の突出部14によって形成された凹部に設けられたカバー部材受金具75に係合することにより取付けられる。
【0103】
また、カバー部材7を取外す場合には、カバー部材7を取付時とは反対方向に回動して、カバー部材取付金具74とカバー部材受金具75との係合を解くことにより、取外すことができる。
【0104】
化粧カバー71は、図14及び図18に示すように、透明のアクリル樹脂等の材料から円形状に形成されている。この化粧カバー71は、カバー部材7の開口7aに対応し、センター部材Cmの前面壁に取付けられて、センター部材Cmの開口Cm1を覆って閉塞するように配設される。
【0105】
光センサ8は、図18に示すように、照度センサであり、フォトダイオード等のセンサ素子からなっていて、周囲の明るさを検知して検出信号を出力するように動作する。これにより、周囲が明るい場合には、光源部2、すなわち、発光素子22を調光(減光)して点灯するように制御する。
【0106】
光センサ8は、基板81に実装され、その受光部が受光窓Cm3に対向するようにセンター部材Cmの空間部Cm2内に配設され取付けられている。より詳しくは、基板81がセンター部材Cmのボスにねじ止めされ、光センサ8が案内筒に収容され、その受光部が受光窓Cm3に対向するように配設される。
【0107】
間接光光源部9は、本体1の背面側に設けられていて、主として天井面を明るく照らす機能を有している。図15、図17及び図18に示すように、間接光光源部9は、基板91と、この基板91に実装された複数の発光素子92とを備えている。
【0108】
この発光素子92が実装された基板91が前記点灯装置カバー5の側壁5aにおける4箇所に取付けられている。また、これら基板91は、箱状の透光性のカバー93に覆われるようになっている。
【0109】
発光素子92は、前記光源部2と同様に、LEDであり、表面実装型のLEDパッケージである。そして、発光素子92は、点灯装置4に接続されて点灯制御されるようになっている。
【0110】
さらに、点灯装置カバー5の背面側には、間接光光源部9の取付位置に対応して、その近傍に照明器具取付用ばね部材10が取付けられている。ばね部材10は、ステンレス鋼等の金属製からなり、横長の長方形状の板ばねを折曲して形成されている。ばね部材10は、中央部に固定部10aを有していて、この固定部10aから斜め上方(背面側)に向かって延出部10bが形成されて、その先端側には、四角形状をなした当接部10cが形成されている。
なお、当接部10cには、スポンジやシリコーンゴム等の滑り止め部を接着等によって設けるようにしてもよい。
【0111】
アダプタAは、図18に示すように、天井面Cに設置された引掛けシーリングボディCbに、上面側に設けられた引掛刃によって電気的かつ機械的に接続されるもので略円筒状をなし、周壁の両側には一対の係止部A1が、内蔵されたスプリングによって常時外周側へ突出するように設けられている。この係止部A1は下面側に設けられたレバーを操作することにより没入するようになっている。また、このアダプタAからは、前記点灯装置4へ接続する電源コードが導出されていて、点灯装置4とコネクタを介して接続されるようになっている。
【0112】
赤外線リモコン送信器Rcは、例えば、周波数38kHzのパルス状の特定のコード化された赤外線リモコン制御信号を送信するもので、例えば、全光点灯ボタン、調光点灯ボタン、常夜灯ボタンや消灯ボタン等が設けられている。このリモコン送信器Rcを赤外線リモコン信号受光素子25に向けて操作することによって光源部2における発光素子22の発光状態、つまり、全光点灯、調光点灯、消灯等の制御を行うことができる。
【0113】
次に、照明器具の天井面Cへの取付状態について図18を参照して説明する。まず、予め天井面Cに設置されている引掛けシーリングボディCbにアダプタAを電気的かつ機械的に接続する。照明器具の化粧カバー71を取外した状態において、アダプタガイドの係合口61をアダプタAに合わせながら、アダプタAの係止部A1がアダプタガイドの係合口61に確実に係合するまで器具本体1を照明器具取付用ばね部材10の弾性力に抗して下方から手で押し上げて取付け操作を行う。
次いで、化粧カバー71を取付け、引掛けシーリングボディCbに対向するセンター部材Cmの中央部の開口Cm1を覆って閉塞する。
【0114】
この状態においては、照明器具取付用ばね部材10が弾性変形して、当接部10cが天井面Cに弾性的に当接している。したがって、照明器具本体1は、ばね部材10のばね作用によって天井面Cに確実に固定状態となる。
【0115】
また、照明器具を取外す場合には、化粧カバー71を取外し、センター部材Cmの開口Cm1を通じてアダプタAに設けられているレバーを操作してアダプタAの係止部A1の係合を解くことにより取外すことができる。
【0116】
照明器具の天井面Cへの取付状態において、点灯装置4に電力が供給されると、光源部2における基板21を介して発光素子22に通電され、各発光素子22が点灯する。発光素子22から前面側へ出射された光は、光源部カバー3を透過し、カバー部材7によって拡散され透過して外方へ照射される。したがって、所定の配光範囲で下方が照明されるようになる。
【0117】
また、これと同時に、間接光光源部9に通電されると、各発光素子92が点灯し、発光素子92から斜め上方に出射された光は、透光性のカバー93を透過し、主として天井面に照射される。したがって、天井面が明るくなり、明るさ感を向上させることができる。
さらに、これら光源部2及び間接光光源部9は、周囲の明るさを検知して検出信号を出力する光センサ8によって、その点灯状態が制御される。
加えて、補助光源である発光素子22aを点灯させることにより、常夜灯として用いることができる。
【0118】
一方、発光素子22から発生する熱は、基板21の裏面側が本体1と熱的に結合しているため、本体1に効果的に伝導され、広い面積で放熱されるようになる。また、本体1には、突出部12、13、14が形成されているため、放熱面積を増大させることができ、一層放熱効果を高めることが可能となる。さらに、本体1の突出部12には、点灯装置カバー5が載置され取付けられているので、本体1から点灯装置カバー5に熱が伝導され放熱が促進される。
【0119】
以上のように本実施形態によれば、主光源である発光素子22が実装された基板21と同一基板に、補助光源としての発光素子22a及び赤外線リモコン信号受光素子25を実装するようにしたので、リード線等を省略又はその配線長を短くすることが可能で、配線接続関係を簡素化できる。
さらに、同一基板にチャンネル設定スイッチ26を実装するようにしたので、配線接続関係を簡素化できる効果を一層高めることができる。
加えて、光センサ8は、別の基板81に実装するようにしたので、複数のタイプの照明器具の提供が実現しやすくなる効果を奏することが可能となる。
【0120】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。また、上記実施形態は、一例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。例えば、例えば、発光素子は、LEDや有機EL等の固体発光素子が適用でき、この場合、発光素子の個数は特段限定されるものではない。
【符号の説明】
【0121】
1・・・本体、2・・・光源部、3・・・拡散部材(レンズ部材)、光源部カバー、4・・・点灯装置、5・・・点灯装置カバー、6・・・取付部(アダプタガイド)、7・・・カバー部材、8・・・・・・光センサ、9・・・間接光光源部、10・・・照明器具取付用ばね部材、21・・・基板、21a・・・特定の基板、22・・・主光源としての発光素子(LED)、22a・・・補助光源としての発光素子(LED)、23・・・電源供給接続部(コネクタ)、25・・・赤外線リモコン信号受光素子、26・・・チャンネル設定スイッチ、31・・・突条部、33・・・平坦部、A・・・アダプタ、C・・・器具取付面(天井面)、Cb・・・配線器具(引掛けシーリングボディ)、Cm・・・センター部材、Rc・・・赤外線リモコン送信器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央部に開口を有し、器具取付面に配設された配線器具に取付けられる器具本体と;
前記開口の外側に設けられ、前記配線器具を介して交流電源を受けて直流出力を生成する前記器具本体に設けられた点灯装置と;
側壁を有し、前記点灯装置を覆うように前記器具本体の中央側に設けられた点灯装置カバーと;
前面側に実装面が設けられ、裏面側が前記開口を囲むように前記点灯装置カバーの前記側壁よりも外側の前記器具本体にサークル状に配設されているとともに、1枚の特定の基板および複数枚の他の基板を有し、各基板が電気的に接続されている複数の基板と;
前記基板上に実装された複数の発光素子と;
前記複数の基板のうち前記特定の基板の実装面のうち、前記発光素子よりも前記開口側に設けられ、前記点灯装置から供給される直流出力を出力線を介して前記発光素子に供給する電源供給接続部と;
前記特定の基板と前記複数枚の他の基板との実装面のうち、最も外側に設けられた発光素子よりも前記開口側であって、前記特定の基板の両端と前記他の基板とが隣接する分割部と、前記複数枚の他の基板同士が隣接する全ての分割部とに設けられ、前記特定の基板から前記複数枚の他の基板に直流出力が供給されるように、前記特定の基板と前記複数枚の他の基板とを相互に電気的に接続する配線接続部と;
前記複数の発光素子及び前記点灯装置カバーを含めた前記器具本体の前面側を覆うように前記器具本体に設けられたカバー部材と;
を具備することを特徴とする照明器具。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2016-12-14 
出願番号 特願2013-87081(P2013-87081)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (F21V)
P 1 651・ 536- YAA (F21V)
P 1 651・ 121- YAA (F21V)
最終処分 維持  
前審関与審査官 ▲桑▼原 恭雄  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
平田 信勝
登録日 2015-03-27 
登録番号 特許第5716973号(P5716973)
権利者 東芝ライテック株式会社
発明の名称 照明器具  
代理人 熊谷 昌俊  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  
代理人 熊谷 昌俊  

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