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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 B32B |
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管理番号 | 1324871 |
異議申立番号 | 異議2016-700805 |
総通号数 | 207 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 2017-03-31 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-01 |
確定日 | 2017-02-02 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第5874556号発明「導電性積層体、気泡または亀裂発生低減シート、および気泡または亀裂発生低減方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第5874556号の請求項1?11に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1 手続の経緯 特許第5874556号の請求項1?11に係る特許についての出願は、平成24年7月13日に特許出願され、平成28年1月29日にその特許権の設定登録がされ、その後、請求項1?11に係る特許について、特許異議申立人森嶋孝明(以下、「申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、当審において平成28年10月14日付けで取消理由を通知し、その指定期間内である平成28年12月16日に意見書の提出がされたものである。 第2 本件発明 本件特許の請求項1?11に係る発明(以下「本件発明1」?「本件発明11」という。)は、それぞれ、その本件特許の特許請求の範囲の請求項1?11に記載された事項により特定される以下のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 無機酸化物透明導電層、透明フィルム状基材、紫外線吸収剤と粘着剤を含有する機能層を順に積層した構造を有し、 前記透明フィルム状基材が複数の層の積層体であり、前記透明フィルム状基材の機能層側表面が架橋重合体を含む層であることを特徴とする導電性積層体。 【請求項2】 前記架橋重合体を含む層がアクリル系樹脂を含む層であって、厚みが0.5?20μmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性積層体。 【請求項3】 前記透明フィルム状基材の機能層側表面が多官能アクリレートの架橋重合体を含む層であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性積層体。 【請求項4】 前記無機酸化物透明導電層がITO層またはIGZO層であることを特徴とする請求項1?3のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項5】 前記粘着剤が溶液重合型の粘着剤であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項6】 前記粘着剤が活性エネルギー線硬化型の粘着剤であることを特徴とする請求項1?4のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項7】 前記機能層の波長380nmの紫外線透過率が5%未満であることを特徴とする請求項1?6のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項8】 前記紫外線吸収剤が23℃で油状または液状である化合物を少なくとも1種含有し、かつ前記機能層の固形分100質量部に対して0.5?8質量部で含まれていることを特徴とする請求項1?7のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項9】 前記機能層上にさらに剥離層を有することを特徴とする請求項1?8のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項10】 前記機能層上にさらに部材を有することを特徴とする請求項1?8のいずれか1項に記載の導電性積層体。 【請求項11】 前記部材がガラスであることを特徴とする請求項10に記載の導電性積層体。」 第3 取消理由の概要 当審において、本件発明1?11に係る特許に対して、通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。 なお、当該取消理由の通知により、本件特許異議申立ての全ての理由が通知された。 (以下、甲第○号証を、単に「甲○」という。) 1)本件特許の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 甲1:特開平8-329767号公報 甲2:特開2011-253676号公報 甲3:特開2012-111939号公報 甲4:特開2000-149664号公報 甲5:特開2004-26929号公報 ・本件発明1について 本件発明1は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明2?4について 本件発明2?4は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明5、6について 本件発明5、6は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明7について 本件発明7は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明8について 本件発明8は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明9、10について 本件発明9、10は、甲1に記載された発明及び甲2に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 ・本件発明11について 本件発明11は、甲1に記載された発明、甲2に記載された事項及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第4 甲各号証の記載 1.甲1 甲1の、段落【0007】?【0009】、【0012】、【0016】?【0019】の記載及び図1から、甲1には、以下の甲1発明が記載されている。 「ITO等の透明な可動電極、透明プラスチックフィルムが用いられる可動電極支持フィルム、紫外線吸収剤が配合可能な粘着剤を順に積層した構造を有し、 可動電極支持フィルムは複数の層の積層体として形成され、可動電極支持フィルムの粘着剤側表面がアクリル等の樹脂のハードコート層を含む層である導電性積層体。」 2.甲2 甲2の、段落【0011】、【0014】?【0015】、【0022】、【0027】、【0029】、【0032】、【0041】、【0043】の記載及び図2から、甲2には、以下の甲2記載事項が記載されている。 「金属酸化物からなる透明導電膜、基材、他の助剤が添加可能な粘着剤層を順に積層した構造を有し、 基材は、その両面にハードコート層が形成された複数の層の積層体として形成され、基材の粘着剤層側表面が、架橋剤を含有可能なアクリル系重合体を主成分として含む層(第2ハードコート層)である、導電性積層体。」 第5 判断 1.本件発明1について 本件発明1と甲1発明を対比すると、甲1発明の「ITO等の透明な可動電極」は、本件発明1の「無機酸化物透明導電層」に相当する。 甲1発明の「透明プラスチックフィルムが用いられる可動電極支持フィルム」は、本件発明1の「透明フィルム状基材」に相当する。 甲1発明の「紫外線吸収剤が配合可能な粘着剤」は、本件発明1の「紫外線吸収剤と粘着剤を含有する機能層」に相当する。 甲1発明の「可動電極支持フィルムは複数の層の積層体として形成され」は、本件発明1の「透明フィルム状基材が複数の層の積層体であり」に相当する。 そうすると、本件発明1と甲1発明とは、「無機酸化物透明導電層、透明フィルム状基材、紫外線吸収剤と粘着剤を含有する機能層を順に積層した構造を有し、 前記透明フィルム状基材が複数の層の積層体である、導電性積層体。」で一致し、次の点で相違する。 <相違点>本件発明1では、透明フィルム状基材の機能層側表面が架橋重合体を含む層であるのに対し、甲1発明では、可動電極支持フィルム(透明フィルム状基材)の粘着剤(機能層)側表面がアクリル等の樹脂のハードコート層を含む層であるが、アクリル等のハードコート層を含む層が「架橋重合体を含む層」であるか不明である点。 相違点について検討する。 甲1には、以下の記載がある。 「【0004】 【発明が解決しようとする課題】上記従来のタッチパネルにあっては、タッチパネル表面のハードコート層を手指やペン先などで繰り返し何回も触圧するので、長期の使用でハードコート層が損傷したり劣化し、さらに可動電極支持フィルムも損傷したり劣化し、最終的には可動電極が破壊されるという問題がある。 【0005】この発明は、上記の問題を解決するもので、その目的とするとろは、タッチパネル表面の損傷や劣化及び可動電極の破壊を防止し、使用耐久性に優れたタッチパネルを提供することにある。」 「【0007】以下、図面を参照しながら、この発明を詳細に説明する。図1は、この発明のタッチパネルの構造の一例を示す一部切欠縦断面図である。図1において、10は従来のタッチパネルの一例を示し、20はこのタッチパネル10の表面に、剥離可能に貼着されている表面保護用片面粘着フィルムである。 【0008】上記従来のタッチパネル10は、一方の面に透明な可動電極13が形成され他方の面にハードコート層11が形成された可動電極支持フィルム12と、透明な固定電極15が形成された固定電極支持板16とが、スペーサー14によってわずかな間隙で隔てられ、両電極13、15が対向するように重ね合わされてなる。 【0009】ここで、上記可動電極支持フィルム12としては、透明ポリエステルフィルム等の透明プラスチックフィルムが用いられ、その一方の面にITO等の透明な可動電極13が蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等により種々のパターンに形成され、他方の面にシロキサン、アクリル、エポキシ等の樹脂のハードコート層11が形成される。なお、上記ハードコート層11は必ずしも必要としない。」 「【0012】この発明においては、上記のような従来のタッチパネル10の表面に、表面保護用片面粘着フィルム20が剥離可能に貼着されている。この表面保護用片面粘着フィルム20は、各種の透明乃至半透明のプラスチックフィルムからなる基材21の片面に粘着剤22が塗設されてなる。」 「【0035】 【発明の効果】上述の通り、この発明のタッチパネルの構造は、ディスプレイ上に配置され入力装置として用いられるタッチパネルの表面に、表面保護用片面粘着フィルムが剥離可能に貼着されていることを特徴とするもので、この表面保護用片面粘着フィルムが手指やペン先などの触圧により損傷し劣化したらこれを剥離除去し、別の新しい表面保護用片面粘着フィルムを貼り替えることが可能となり、それによりタッチパネル表面の損傷や劣化及び可動電極の破壊を防止し、使用耐久性に優れたタッチパネルを得ることができる。 【0036】特に、タッチパネルの表面に対する表面保護用片面粘着フィルムの粘着力が30?200g/25mm幅であるものは、適度の接着性と再剥離性とを有し、手指やペン先などで繰り返して触圧した際に、表面保護用片面粘着フィルムに浮きや剥離が生じることがなく、しかも表面保護用片面粘着フィルムを剥離した際に、タッチパネル表面に糊残りの生じることがないという利点がある。」 甲1発明の「(可動電極支持フィルムの粘着剤側表面の)アクリル等のハードコート層を含む層」は、従来のタッチパネルのハードコート層と同じ(段落【0007】?【0009】)であるから、「長期の使用でハードコート層が損傷したり劣化」する(段落【0004】)との従来のタッチパネルのハードコート層の問題点を有するものである。その問題点への対処として、甲1発明は、「粘着剤」を含む表面保護用片面粘着フィルムをタッチパネル表面に剥離可能に貼着したものである。一方、甲1には、本件発明1が解決しようとした気泡や亀裂の発生について記載はない。そうすると、甲1発明の「(可動電極支持フィルムの粘着剤側表面の)アクリル等のハードコート層を含む層」に対して架橋重合体を含むようにすることの動機付けがない。 また、甲2記載事項に関して、「白化やカールの問題が生じにくい導電性シート、この導電性シートを用いたタッチパネル用導電性積層体及びタッチパネルを提供すること」(甲2の段落【0006】)を課題とするもので、甲1発明の「タッチパネル表面の損傷や劣化及び可動電極の破壊を防止し、使用耐久性に優れたタッチパネルを提供すること」(甲1の段落【0005】)との課題と異なるので、甲2記載事項を甲1発明に適用することの動機付けがない。 一方、本件発明1は、「透明フィルム状基材の機能層側表面が架橋重合体を含む層である」ようにしたから、「本発明の導電性積層体は、長時間過酷な条件に置いた場合であっても、気泡や亀裂の発生を低減することができる」(本件特許明細書の段落【0010】、【0022】)との格別な効果を奏するものである。 以上のとおりであるから、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない 2.本件発明2?11について 本件発明2?11は、本件発明1の特定事項の全てを含み、さらに限定したものである。 また、甲3?甲5には、上記1.の相違点について、記載されていない。 上記1.に示したように、本件発明1は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではないから、本件発明1をさらに限定した発明である、本件発明2?4も、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明5、6は、甲1発明、甲2記載事項及び甲3に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明7は、甲1発明、甲2記載事項及び甲4に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明8は、甲1発明、甲2記載事項及び甲5に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明9、10は、甲1発明及び甲2記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 同様に、本件発明11は、甲1発明、甲2記載事項及び周知慣用技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本件特許異議申立ての全ての理由を含む、上記取消理由によっては、本件発明1?11に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件発明1?11に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-01-23 |
出願番号 | 特願2012-157662(P2012-157662) |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(B32B)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 加賀 直人 |
特許庁審判長 |
久保 克彦 |
特許庁審判官 |
山田 由希子 蓮井 雅之 |
登録日 | 2016-01-29 |
登録番号 | 特許第5874556号(P5874556) |
権利者 | 王子ホールディングス株式会社 |
発明の名称 | 導電性積層体、気泡または亀裂発生低減シート、および気泡または亀裂発生低減方法 |
代理人 | 特許業務法人特許事務所サイクス |
代理人 | 永田 元昭 |
代理人 | 大田 英司 |