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審決分類 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C08J
審判 全部申し立て 2項進歩性  C08J
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C08J
管理番号 1324879
異議申立番号 異議2016-700443  
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-17 
確定日 2017-02-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第5818821号発明「吸水性ポリマー粒子の製造法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5818821号の請求項1ないし9に係る特許を維持する。 
理由 第1 主な手続の経緯
特許第5818821号の請求項1ないし9に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年2月16日に特許出願され、平成27年10月9日に設定登録され、平成28年5月17日に特許異議申立人株式会社日本触媒により特許異議の申立てがされ、同年8月29日付けで請求項1ないし9に係る特許について取消理由が通知され、その指定期間内である同年11月29日付けで意見書の提出がされたものである。

第2 本件特許発明
本件特許の請求項1ないし9に係る発明(以下、「本件特許発明1」ないし「本件特許発明9」という。総称して「本件特許発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「【請求項1】
以下:
a)少なくとも部分的に中和されていてよい、少なくとも1の、エチレン系不飽和の、酸基を含有するモノマー、
b)少なくとも1の架橋剤、
c)少なくとも1の開始剤、
d)場合により、a)で挙げられたモノマーと共重合可能な1以上のエチレン系不飽和モノマー、及び
e)場合により、1以上の水溶性ポリマー
を含有するモノマー水溶液又はモノマー水性懸濁液を重合させ、得られた水性ポリマーゲルを強制通風型ベルト式乾燥機内で連続コンベヤベルトを用いて乾燥させ、粉砕し、分級し、かつ場合により熱的に表面後架橋させることを含む、吸水性ポリマー粒子の製造法において、該連続コンベヤベルトの表面が少なくとも2μmの粗さRzを有しており、かつ該連続コンベヤベルトがオーステナイト鋼からなっていることを特徴とする方法。
【請求項2】
連続コンベヤベルトが多数の開口部を有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
連続コンベヤベルトが、輸送方向に対して横向きに、ずれた列内に配置された、長さ5?50mm、幅0.5?5mm及び幅に対する長さの比2?20を有する多数のスリットを有している、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
連続コンベヤベルトが少なくとも1mの幅を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
コンベヤベルト速度が0.005?0.05m/sである、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
強制通風型ベルト式乾燥機内での乾燥前のポリマーゲルの水含有量が30?70質量%である、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
強制通風型ベルト式乾燥機内での乾燥後のポリマーゲルの水含有量が0.5?15質量%である、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
連続コンベヤベルト上のポリマーゲル充填層の高さが2?20cmである、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
吸水性ポリマー粒子が少なくとも15g/gの遠心分離保持力を有している、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。」

第3 取消理由の概要
本件特許は、特許請求の範囲の記載が以下の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである。
すなわち、本件特許発明は、「強制通風型ベルト式乾燥機のコンベヤベルト上でのポリマーゲルの収縮」との課題(段落【0004】)を解決するため、「連続コンベヤベルトの表面が少なくとも2μmの粗さRzを有して」(段落【請求項1】)いることを発明特定事項として含むものである。すなわち、粗さRzの範囲として下限は2μmとされているが上限は定められていない。
しかるところ、発明の詳細な説明には、上記「少なくとも2μmの粗さRz」として、「7.32μm」(段落【0095】)及び「18.4μm」(段落【0098】)の2点のみが記載されるに止まり、粗さRzが「7.32μm」から「18.4μm」の範囲以外の場合、上記課題が解決されているのか否か不明である。
また、「粗さRz」が「0.32μm」の場合のポリマーゲルの収縮は「95%」(段落【0090】)、「0.87μm」の場合のポリマーゲルの収縮は「152%」(段落【0093】)及び「1.03μm」の場合のポリマーゲルの収縮は「100%」(段落【0089】)との記載に照らせば、わずか0.71μmの範囲でさえ、収縮が大きく上下することが看てとれるから、「2μm」以上の全範囲において、収縮が果たして所望の範囲にあるといえるのか不明である。
さらに、「2μm」以上の全範囲において、上記課題が解決されると当業者が理解できる記載もないし、上記課題が解決されるとの出願時の技術常識があるともいえない。
そうすると、本件特許発明は、発明の詳細な説明において上記課題が解決されることを当業者が理解できるように記載された範囲を超えているものである。
よって、本件特許発明は、発明の詳細な説明に記載されているとはいえない。

第4 取消理由(特許法第36条第6項第1号)についての判断
確かに、特許明細書の発明の詳細な説明には、連続コンベヤベルトの表面に関し、「少なくとも2μmの粗さRz」の実施例として、「7.32μm」(段落【0095】)及び「18.4μm」(段落【0098】)の2点のみが記載されるに止まる。また、段落【0084】ないし【0093】の記載は、連続コンベヤベルトの表面の「粗さRz」が0.32?1.03μmの範囲において、ポリマーゲルの収縮率が大きく変動することを示している。
しかし、本件特許発明は、連続コンベヤベルトの表面の「粗さRz」が「少なくとも2μm」であるから、0.32?1.03μmの範囲での「粗さRz」とポリマーゲルの収縮率の関係は、本件特許発明のサポート要件の充足性の結果を左右するものではない。むしろ、特許明細書の段落【0004】、段落【0094】ないし【0099】の記載に照らせば、連続コンベヤベルトの表面の「粗さRz」が本件特許発明の範囲であれば、ポリマーゲルの収縮を抑制する効果があると見て取ることができる。また、連続コンベヤベルトの表面の粗さRzが3μmの場合の試験結果(平成28年11月29日付けの意見書参照)を見ても上記評価を肯定しこそすれ、否定するものではない。
したがって、本件特許発明が、特許明細書の発明の詳細な説明において上記課題が解決されることを当業者が理解できるように記載されているといえる。
よって、本件特許は、特許請求の範囲の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

第5 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由についての判断
1 特許法第36条第4項第1号について
特許異議申立人は、本件特許発明6及び7につき、ポリマーゲルの水含有量の測定方法が定義されていないから、実施不可能である旨主張する。
しかし、特許明細書の段落【0050】、段落【0084】ないし【0099】の記載に照らせば、本件特許発明がどのようにして実施されるか当業者が理解できる。
したがって、発明の詳細な説明は、本件特許発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されている。
よって、本件特許は、発明の詳細な説明の記載が、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

2 特許法第36条第6項第2号について
特許異議申立人、請求項に記載された「場合により」及び「多数」との記載が不明確である旨主張する。
しかし、特許請求の範囲に記載された「場合により」は、任意の発明特定事項であることを意味し、また、「多数」との記載も、特許明細書の段落【0004】、段落【0094】ないし【0099】の記載に照らせば、ポリマーゲルの収縮が抑制される程度の数であると理解できる。
したがって、特許請求の範囲の記載は明確である。
よって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものではない。

3 特許法第29条第2項について
特許異議申立人、甲第1ないし3号証に記載された発明のいずれかを引用発明として当業者が容易に発明をすることができた旨主張する。
しかし、本件特許発明は、「連続コンベヤベルトの表面が少なくとも2μmの粗さRzを有して」いることを発明特定事項として含むものであるが、特許異議申立人が提示した異議申立書の証拠方法である甲第1ないし10号証のいずれにも、上記発明特定事項の記載ないし示唆はない。
したがって、本件特許発明は、甲第1ないし3号証に記載された発明及び甲各号証の記載に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
よって、本件特許発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないとはいえない。

第6 むすび
以上のとおりであるから、取消理由及び特許異議申立の理由によっては、本件特許を取り消すことができない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-01-24 
出願番号 特願2012-554291(P2012-554291)
審決分類 P 1 651・ 537- Y (C08J)
P 1 651・ 121- Y (C08J)
P 1 651・ 536- Y (C08J)
最終処分 維持  
前審関与審査官 深谷 陽子  
特許庁審判長 加藤 友也
特許庁審判官 小柳 健悟
守安 智
登録日 2015-10-09 
登録番号 特許第5818821号(P5818821)
権利者 ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
発明の名称 吸水性ポリマー粒子の製造法  
代理人 バーナード 正子  
代理人 久野 琢也  
代理人 八田国際特許業務法人  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
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