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審決分類 |
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H04J 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 H04J |
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管理番号 | 1325266 |
審判番号 | 不服2015-20445 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-11-16 |
確定日 | 2017-02-15 |
事件の表示 | 特願2013-188589「無線スイッチングを実行する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 2月13日出願公開,特開2014- 30225〕について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は,平成25年9月11日の出願であって,平成26年12月5日付けで最後の拒絶理由が通知され,平成27年3月9日付けで手続補正がされたが,同年7月8日付けで当該手続補正について補正の却下の決定がされるとともに拒絶査定がされ,これに対し,同年11月16日に拒絶査定不服審判が請求がされるとともに同日付けで手続補正がされたものである。 なお,上記平成26年12月5日付けの最後の拒絶理由にて,本願は原出願に対して分割要件を満たしていないから出願日の遡及は認められないと通知され,上記平成27年7月8日付の拒絶査定では,本願の出願日は平成25年9月11日とされている。 第2 補正の却下の決定 [結論] 平成27年11月16日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 平成27年11月16日付けの手続補正の概要 平成27年11月16日付けの手続補正(以下,「本件補正1」という。)は,平成26年11月5日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された無線ユーザ端末に係る発明について 「 【請求項1】 無線ユーザ端末であって, ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器であって,前記第1のOFDM信号は,アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送波周波数割当情報と,第1の空間パターンを示す第1の空間パターン情報とを含むことと, 前記第1の搬送波周波数割当情報に応答して,前記第1の空間パターン情報により示されたとしてアンテナアレイを介した前記第1の空間パターンと,前記第2の搬送波周波数とで第2のOFDM信号を送信するように構成された送信器及び前記制御器と を備えたことを特徴とする無線ユーザ端末。 【請求項2】 前記受信器及び前記制御器は,前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を受信するようにさらに構成され,前記第3のOFDM信号は,アップリンクデータを送信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送波周波数割当情報と,第2の空間パターンを示す第2の空間パターン情報とを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。 【請求項3】 前記送信器及び前記制御器は,前記第2の搬送波周波数割当情報に応答して,前記第2の空間パターン情報により示されたとして前記アンテナアレイを介した前記第2の空間パターンと,前記第3の搬送波周波数とで第4のOFDM信号を送信するようにさらに構成されたことを特徴とする請求項2に記載の無線ユーザ端末。 【請求項4】 前記受信器及び前記制御器は,前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第5のOFDM信号を受信するようにさらに構成され,前記第5のOFDM信号は,ダウンリンクデータを受信するための第4の搬送波周波数を示す第3の搬送波周波数割当情報と,第3の空間パターンを示す第3の空間パターン情報とを含むことを特徴とする請求項3に記載の無線ユーザ端末。 【請求項5】 前記受信器及び前記制御器は,前記第3の搬送波周波数割当情報と前記第3の空間パターン情報とに応答して,前記第4の搬送波周波数と前記第3の空間パターンで第6のOFDM信号を受信するようにさらに構成され,前記第1の搬送波周波数,前記第2の搬送波周波数,前記第3の搬送波周波数および前記第4の搬送波周波数は,互いに異なることを特徴とする請求項4に記載の無線ユーザ端末。 【請求項6】 前記送信器及び前記制御器は,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信するようにさらに構成され,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの前記指示に応答して,前記第1の搬送波周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。」 を 「 【請求項1】 無線ユーザ端末であって, ダウンリンクの第1の搬送波周波数で複数の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器であって,前記複数のOFDM信号の各々は,アップリンクデータを送信するための搬送波周波数を示す搬送波周波数割当情報と,空間パターンを示す空間パターン情報とを含み,前記搬送波周波数割当情報と前記空間パターン情報とは永続的でないことと, 前記複数のOFDM信号の各々の前記搬送波周波数割当情報に応答して,複数のアップリンク信号を送信するように構成された送信器及び前記制御器であって,前記複数のアップリンク信号の各々は,前記示された搬送波周波数で,前記示された空間パターンを用いて送信されることと を備えたことを特徴とする無線ユーザ端末。 【請求項2】 前記複数のOFDM信号の各々について前記搬送波周波数割当情報に示された前記搬送波周波数は,異なることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。 【請求項3】 前記送信器及び前記制御器は,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信するようにさらに構成され,前記受信器及び前記制御器は,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの前記指示に応答して,前記複数のOFDM信号の第1の信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。」(下線部は補正箇所を示すために請求人が付したものを援用している。) とすることを含むものである。 なお,本件補正1は,平成27年7月8日付けで補正の却下の決定がされた平成27年3月9日付けの手続補正と全く同じ内容である。 2 補正の適否 (1)新規事項の有無について ア 本件補正1後の請求項1の「ダウンリンクの第1の搬送波周波数で複数の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器」(下線部は補正箇所を示す。以下,「補正事項1a」という。)の記載によれば,複数のOFDM信号をどのように受信するかは何ら特定されておらず,「ダウンリンクの第1の搬送波周波数で複数回直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信する」ともされていないから,例えば無線ユーザ端末がダウンリンクの第1の搬送波周波数で複数のOFDM信号を同時に受信することも包含するものである。 しかしながら,出願当初の明細書には,SAPについては【0017】に「SAP206は,同じ時刻に1以上のビームを受信することができる。」との記載があるものの,無線ユーザ端末がダウンリンクの第1の搬送波周波数で複数のOFDM信号を同時に受信することは記載も示唆されておらず,自明でもない。したがって,補正事項1aは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 請求人は,審判請求書にて,「請求項1の第2段落の「複数の直交周波数分割多重(OFDM)信号」は,補正前の請求項2-4を請求項1に組み込んだための補正であり,補正前の「第1」,「第2」等で区別されていたものをまとめたものであり,請求項の組み合わせによる限定的減縮に伴って表現を変えただけで,上記の補正と同様に意味内容は同じです。」と述べているが,上述のとおり,本件補正1後の記載は異なる意味内容を含むものとなっている。 イ 本件補正1後の請求項1の「前記複数のOFDM信号の各々は,アップリンクデータを送信するための搬送波周波数を示す搬送波周波数割当情報と,空間パターンを示す空間パターン情報とを含み,前記搬送波周波数割当情報と前記空間パターン情報とは永続的でない」(下線部は補正箇所を示す。以下,「補正事項1b」という。)の記載によれば,(i) 無線ユーザ端末が受信する複数のOFDM信号の各々は,搬送波周波数割当情報のほかに空間パターン情報を含み,かつ,(ii)当該空間パターン情報は永続的でないことになる。 しかし,出願当初の明細書には「空間パターン情報」なるものは記載されていない。そして,【0018】には「制御器220は,ビーム形成送信器216およびビーム形成受信器218にビーム情報を提供し,適切な空間的ポートを所与の端末に使用する。」との記載があり,SAP内では制御器220がSAP内のビーム形成送信器216及びビーム形成受信器218にビーム情報を提供することは記載されているものの,当該ビーム情報を無線ユーザ端末に提供することは記載されていない。そして,無線ユーザ端末に関しては,【0019】に「端末201?205に,アンテナアレイ212を使用して送信されたデータを受信するビーム形成受信器210を有する。ビーム形成送信器208を使用して,アレイ212を用いてSAP206にデータを送信する。」と記載されるのみであり,無線ユーザ端末がビーム情報(空間パターン情報)を受信したり,使用することは記載されていない。また,周波数割当に関しては,【0016】に「ユーザ端末101?105は,周波数割当を受信し,端末に割り当てられた周波数で送信されたデータを復元する多周波受信器114を有する。」との記載があるが,空間的ビームに関しては,【0017】?【0019】,図2A,Bをみても,周波数割当における周波数割当を受信する多周波受信器114に相当する,空間パターン情報を受信する受信機の存在は見出せない。したがって,上記(i) の事項は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 また,出願当初の明細書には,「永続的」に関しては,【0008】に「複数のポートをSAPで利用することができ,ユーザ間の通信を分離して衝突を防止するために,永続的ではない周波数の割当能力で,および動的または疑似ランダム搬送波割当能力で,複数のポートが,単一の搬送周波数に各々割り当てられる。」,【0012】に「各ユーザ端末101?105に搬送波f1?f5を永続的に割り当てることを避けるために,2つの方法を用いる。好適な実施形態では,ユーザ端末101?105に搬送波f1?f5を永続的に割り当てないことが,本質的ではないが,望まれる。永続的ではない割当は,データを送信していない端末に周波数を割り当てることを避ける。使用できる周波数よりも多くの端末がある場合に,永続的に周波数を割り当てられた端末が,その周波数を使わなければ,送信するデータを有する端末が,送信するのを妨げる。」(下線部は該当箇所を示す。)との記載があるのみであり,1つの端末に対する搬送波周波数割当が永続的ではないことは示されているものの,空間パターン情報が永続的でないことについては記載も示唆もされていない。 そして,ビーム形成はSAPと無線ユーザ端末との位置関係に依存することは技術常識であるところ,SAPと無線ユーザ端末との位置関係が不変であればビーム形成をことさら変える必要性も見当たらないから,空間パターン情報が永続的でないことは自明でもない。 してみると,上記(ii) の事項も,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 したがって,補正事項1bは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 (2)シフト補正の有無,補正の目的要件について 上記(1)のとおり,補正事項1a,1bは特許法第17条の2第3項の規定に違反しているが,更に進めて,シフト補正の有無,補正の目的要件についても検討する。 上記(1)のとおり,補正事項1a,1bは,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものであるから,本件補正1後の請求項1に係る発明は,本件補正1前に受けた拒絶理由通知において特許をすることができないものか否かについての判断が示された発明と,特許法第37条の発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当するものではない。したがって,本件補正1は,特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。 同様の理由で,補正事項1a,1bの目的は,特許法第17条の2第5項に規定されるいずれの事項にも該当しない。また,本件補正1により,本件補正1前の請求項1の「アンテナアレイを介した前記第1の空間パターン」及び本件補正1前の請求項3の「前記アンテナアレイを介した前記第2の空間パターン」の「アンテナアレイを介した」との発明特定事項が削除され,本件補正1後の請求項1では「前記示された空間パターン」とされた(以下,「補正事項1c」という。)。したがって,補正事項1cは発明特定事項の一部を削除するものであるから,補正事項1cの目的は,特許法第17条の2第5項に規定されるいずれの事項にも該当しない。 3 結語 以上のとおり,本件補正1は,特許法第17条の2第3項,同第4項及び同第5項の規定に違反するので,同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成27年11月16日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので,本願の請求項1?18に係る発明(以下,「本願発明」という。)は,平成26年11月5日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?18に記載されたものである。 そして,平成26年11月5日付け手続補正(以下,「本件補正2」という。)は,無線ユーザ端末に係る発明について,出願当初の特許請求の範囲の 「【請求項1】 無線ユーザ端末であって, 第1の搬送波周波数及び割り当てられた空間ビームで第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器であって,前記第1のOFDM信号は,アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を含む割当情報を含むことと, 前記割当情報に応答して,前記割り当てられた空間ビームを使用して,前記第2の搬送波周波数で第2のOFDM信号を送信するように構成された送信器及び前記制御器と を備えたことを特徴とする無線ユーザ端末。 【請求項2】 前記受信器及び制御器は,第3の搬送波周波数及び前記割り当てられた空間ビームで第3のOFDM信号を受信するように構成され,前記第3のOFDM信号は,ダウンリンクデータを受信するための第4の搬送波周波数を含む第2の割当情報を含み, 前記受信器及び制御器は,前記第2の割当情報に応答して,前記割り当てられた空間ビームを使用して,前記第4の搬送波周波数で第4のOFDM信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。 【請求項3】 前記送信器及び前記制御器は,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信し,前記受信器及び制御器は,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示に応答して,前記無線ユーザ端末へ送信された前記割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。」 を 「 【請求項1】 無線ユーザ端末であって, ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信するように構成された受信器及び制御器であって,前記第1のOFDM信号は,アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数を示す第1の搬送波周波数割当情報と,第1の空間パターンを示す第1の空間パターン情報とを含むことと, 前記第1の搬送波周波数割当情報に応答して,前記第1の空間パターン情報により示されたとしてアンテナアレイを介した前記第1の空間パターンと,前記第2の搬送波周波数とで第2のOFDM信号を送信するように構成された送信器及び前記制御器と を備えたことを特徴とする無線ユーザ端末。 【請求項2】 前記受信器及び前記制御器は,前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第3のOFDM信号を受信するようにさらに構成され,前記第3のOFDM信号は,アップリンクデータを送信するための第3の搬送波周波数を示す第2の搬送波周波数割当情報と,第2の空間パターンを示す第2の空間パターン情報とを含むことを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。 【請求項3】 前記送信器及び前記制御器は,前記第2の搬送波周波数割当情報に応答して,前記第2の空間パターン情報により示されたとして前記アンテナアレイを介した前記第2の空間パターンと,前記第3の搬送波周波数とで第4のOFDM信号を送信するようにさらに構成されたことを特徴とする請求項2に記載の無線ユーザ端末。 【請求項4】 前記受信器及び前記制御器は,前記ダウンリンクの前記第1の搬送波周波数で第5のOFDM信号を受信するようにさらに構成され,前記第5のOFDM信号は,ダウンリンクデータを受信するための第4の搬送波周波数を示す第3の搬送波周波数割当情報と,第3の空間パターンを示す第3の空間パターン情報とを含むことを特徴とする請求項3に記載の無線ユーザ端末。 【請求項5】 前記受信器及び前記制御器は,前記第3の搬送波周波数割当情報と前記第3の空間パターン情報とに応答して,前記第4の搬送波周波数と前記第3の空間パターンで第6のOFDM信号を受信するようにさらに構成され,前記第1の搬送波周波数,前記第2の搬送波周波数,前記第3の搬送波周波数および前記第4の搬送波周波数は,互いに異なることを特徴とする請求項4に記載の無線ユーザ端末。 【請求項6】 前記送信器及び前記制御器は,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの指示を送信するようにさらに構成され,前記無線ユーザ端末が送信すべきデータを有することの前記指示に応答して,前記第1の搬送波周波数割当情報を含む前記第1のOFDM信号を受信することを特徴とする請求項1に記載の無線ユーザ端末。」(下線部は補正箇所を示すために請求人が付したものを援用している。請求項4?6は,補正により増加したものである。) とすることを含むものである。 2 平成26年12月5日付けの拒絶理由の概要 本願は,例えば,請求項5には「前記第1の搬送波周波数,前記第2の搬送波周波数,前記第3の搬送波周波数および前記第4の搬送波周波数は,互いに異なる」旨記載されている。 一方,本願の原出願である特願2012-004933号の出願当初の明細書,特許請求の範囲,図面には,そのような構成は記載されておらず,また自明であるとも認められない。 したがって,本願は原出願に対して分割要件を満たすものではないため,出願日の遡及は認められない。 【理由1】 平成26年11月 5日付けでした手続補正は,下記の点で願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから,特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。 記 請求項5に記載の「前記第1の搬送波周波数,前記第2の搬送波周波数,前記第3の搬送波周波数および前記第4の搬送波周波数は,互いに異なる」との発明特定事項を追加することは,願書に最初に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という)に記載した事項の範囲内においてしたものでない。 請求項11,17についても同様である。 【理由2】 この出願は,特許請求の範囲の記載が下記の点で,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 ・請求項2-4,8-10,14-16 ・請求項に記載された次の用語は,発明の詳細な説明中のどの記載に対応するものか不明である。 「第3のOFDM信号」,「第3の搬送波周波数を示す第2の搬送波周波数割当情報」,「第2の空間パターンを示す第2の空間パターン情報」,「第4のOFDM信号」,「第5のOFDM信号」,「第4の搬送波周波数を示す第3の搬送波周波数割当情報」,「第3の空間パターンを示す第3の空間パターン情報」 3 当審の判断 (1)理由1について 第1の搬送波周波数,第2の搬送波周波数,第3の搬送波周波数及び第4の搬送波周波数について検討する。 請求項5が引用する請求項1,2,4には,それぞれ「ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第1の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信する」,「前記ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第3の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信する」,「前記ダウンリンクの第1の搬送波周波数で第5の直交周波数分割多重(OFDM)信号を受信する」,とあるから,ダウンリンクで通信される第1,3,5のOFDM信号は「第1の搬送波周波数」を用いることが明らかである。 また,同請求項1には,それぞれ「アップリンクデータを送信するための第2の搬送波周波数」及び「前記第2の搬送波周波数とで第2のOFDM信号を送信する」,同請求項2には「アップリンクデータを送信するための第3の搬送波周波数」とあり,請求項5が引用する請求項3には,「前記送信器及び前記制御器は,・・・第3の搬送波周波数とで第4のOFDM信号を送信する」とあるから,アップリンクで通信される第2のOFDM信号は「第2の搬送波周波数」を用い,アップリンクで通信される第4のOFDM信号は「第3の搬送波周波数」を用いることが明らかである。 また,同請求項4には,「ダウンリンクデータを受信するための第4の搬送波周波数」とあり,請求項5には「前記第4の搬送波周波数・・・で第6のOFDM信号を受信する」とあるから,ダウンリンクで通信される第6のOFDM信号は「第4の搬送波周波数」を用いることが明らかである。 ここで,請求項5に係る発明は,「前記第1の搬送波周波数,前記第2の搬送波周波数,前記第3の搬送波周波数および前記第4の搬送波周波数は,互いに異なる」ものであるから,ダウンリンクで通信される第1,3,5のOFDM信号で使用される第1の搬送波周波数と,アップリンクで通信される第2のOFDM信号で使用される第2の搬送波周波数又はアップリンクで通信される第4のOFDM信号で使用される第3の搬送波周波数とは異なる搬送波周波数であり,また,アップリンクで通信される第2のOFDM信号で使用される第2の搬送波周波数又はアップリンクで通信される第4のOFDM信号で使用される第3の搬送波周波数と,ダウンリンクで通信される第6のOFDM信号で使用される第4の搬送波周波数とは異なる搬送波周波数である。これは,ある一つのユーザ端末内で,ダウンリンクとアップリンクで使用する搬送波周波数が異なるというものである。 しかしながら,本願明細書には,異なるユーザ端末間では,それぞれ異なる搬送波周波数を用いることは,記載されているものの,一つの無線ユーザ端末内で,ダウンリンクとアップリンクで使用する搬送波周波数を異ならせることは記載されていないし,自明でもない。 したがって,本件補正2は,当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において,新たな技術的事項を導入するものである。 (2)理由2について 発明の詳細な説明には,「各ユーザ端末101?105に搬送波f1?f5を永続的に割り当てることを避けるために,2つの方法を用いる。」(【0012】)と記載され,動的搬送波割当(DCA)方式(【0013】)と,周波数ホッピング方式(【0014】)とが挙げられている。 このうち,動的搬送波割当(DCA)方式は,【0012】に,ユーザ端末が送信要求(RTS)を送信すると,SAPが送信に用いることができる搬送波を示す送信許可(CTS)を応答することが記載されるのみであって,発明の詳細な説明には,一つの無線ユーザ端末が異なる搬送周波数を示す第1,2,3の搬送波割当情報を受信することは記載されていない。そして,SAPは送信要求(RTS)を受信した時点で使用可能な搬送波を送信許可(CTS)にて示すのであるから,前回割り当てられた搬送波周波数が今回も使用可能であれば,同じ搬送波周波数が割り当てられ得ることは明らかである。 他方,周波数ホッピング方式は,ユーザ端末とSAPとにより予め知られた搬送波を変更する疑似ランダム手順を用いて搬送波周波数をホッピングするものである。そして,周波数ホッピング方式では,無線ユーザ端末がダウンリンクで搬送波周波数割当情報を受信することは記載されておらず,搬送波を変更する疑似ランダム手順はユーザ端末とSAPとに予め知られているのであるから,搬送波周波数割当情報を受信する必要性も見出せない。 すなわち,動的搬送波割当(DCA)方式では,無線ユーザ端末はSAPから搬送波周波数割当情報を受信するものの,当該情報は送信に用いることができる搬送波を示すものであって,必ずしも示された搬送波周波数が異なるものではない。また,周波数ホッピング方式では,搬送波周波数はホッピングするものの,無線ユーザ端末がダウンリンクで搬送波周波数割当情報を受信するものではない。 してみると,本願発明は,ダウンリンクの第1の搬送波周波数で受信する第1,3,5の直交周波数分割多重(OFDM)信号は,それぞれ異なる搬送波周波数を示す第1,2,3の搬送波割当情報を含むものであるから,動的搬送波割当(DCA)方式とも,周波数ホッピング方式ともいえない。 また,【0012】には「永続的ではない割当は,データを送信していない端末に周波数を割り当てることを避ける。使用できる周波数よりも多くの端末がある場合に,永続的に周波数を割り当てられた端末が,その周波数を使わなければ,送信するデータを有する端末が,送信するのを妨げる。」と記載されている。これを,無線ユーザ端末が搬送波周波数割当情報を受信する点で本願発明と共通する動的搬送波割当(DCA)方式に当てはめてみると,送信要求(RTS)を送信したユーザ端末のみが,送信に用いることができる搬送波を示す送信許可(CTS)を受信するのであり,また,WLANシステムが前提とするCSMAにおいては,ある端末の送信が途絶えて所定時間が経過すると他の端末がRTSを送出可能であることは技術常識である。そうすると,送信が途絶えた端末に対する搬送波の割当はもはや有効ではないから,動的搬送波割当(DCA)によれば,ことさら搬送波周波数を変えなくとも,「データを送信していない端末に周波数を割り当てること」を避けることができることは明らかである。 したがって,ダウンリンクの第1の搬送波周波数で受信する第1,3,5の直交周波数分割多重(OFDM)信号が,それぞれ異なる搬送波周波数を示す第1,2,3の搬送波割当情報を含むことは,【0012】の記載に照らしても必然性がないから,自明でもない。 また,上記「第2 補正の却下の決定」の項の「2 補正の適否」の「(1)新規事項の有無について」の項で述べたように,発明の詳細な説明には,無線ユーザ端末が,「第2の空間パターンを示す第2の空間パターン情報」,「第3の空間パターンを示す第3の空間パターン情報」なる異なる内容の空間パターン情報を受信することは,記載も示唆もされておらず,また,SAPと無線ユーザ端末との位置関係が不変であればビーム形成をことさら変える必要性も見当たらないから,当該事項は自明でもない。 以上のとおり,「第3のOFDM信号」,「第3の搬送波周波数を示す第2の搬送波周波数割当情報」,「第2の空間パターンを示す第2の空間パターン情報」,「第4のOFDM信号」,「第5のOFDM信号」,「第4の搬送波周波数を示す第3の搬送波周波数割当情報」,「第3の空間パターンを示す第3の空間パターン情報」なるものは,発明の詳細な説明には記載されておらず,これらの記載から導出される,ダウンリンクの第1の搬送波周波数で受信する第1,3,5の直交周波数分割多重(OFDM)信号が,それぞれ異なる搬送波周波数を示す第1,2,3の搬送波割当情報を含むことや,無線ユーザ端末が「第2の空間パターンを示す第2の空間パターン情報」,「第3の空間パターンを示す第3の空間パターン情報」なる異なる内容の空間パターン情報を受信することは,発明の詳細な説明に記載も示唆もされておらず,自明でもない。 したがって,請求項2-4,8-10,14-16に係る発明は,発明の詳細な説明に記載されたものではない。 4 むすび 以上のとおり,平成26年11月5日付けの手続補正は,特許法第17条の2第3項の規定に違反し,また,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないから,本件出願は特許を受けることができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-12 |
結審通知日 | 2016-09-13 |
審決日 | 2016-10-03 |
出願番号 | 特願2013-188589(P2013-188589) |
審決分類 |
P
1
8・
55-
Z
(H04J)
P 1 8・ 561- Z (H04J) P 1 8・ 57- Z (H04J) P 1 8・ 537- Z (H04J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 長谷川 篤男、大野 友輝、菊地 陽一 |
特許庁審判長 |
大塚 良平 |
特許庁審判官 |
菅原 道晴 中野 浩昌 |
発明の名称 | 無線スイッチングを実行する方法 |
代理人 | 特許業務法人 谷・阿部特許事務所 |