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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1325268
審判番号 不服2015-21945  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-10 
確定日 2017-02-15 
事件の表示 特願2014-513583「分解能トレードオフおよび最適化を実装するビデオ圧縮」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月 6日国際公開,WO2012/166512,平成26年 9月 4日国内公表,特表2014-522600〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本願は,2012年(平成24年)5月24日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2011年5月31日 米国)を国際出願日とする出願であって,その手続の経緯は,以下のとおりである。

平成26年12月26日付け:拒絶理由通知
平成27年 4月 2日 :手続補正
平成27年 8月12日付け:拒絶査定
平成27年 8月18日 :拒絶査定の謄本の送達
平成27年12月10日 :拒絶査定不服審判の請求
平成27年12月10日 :手続補正

2 本願発明
ア 拒絶査定不服審判の請求と同時になされた平成27年12月10日付けの手続補正は,明細書の段落【0147】における「ビットレート」との記載を,「ビット・レート」に正すものである。当該補正は,明細書中の記載についての,単なる誤記の訂正であり,特許法第17条の2第3項の規定に適合する,適法な手続補正である。

イ 特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は,平成27年12月10日付け手続補正後の明細書,特許請求の範囲及び図面の記載からみて,その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認める。
なお,下記のとおり,説明のために(A)から(E)までの記号を当審において付与した。以下,構成要件A,構成要件Bなどと称することとする。

「【請求項1】
(A)入力ビデオの圧縮された表現を生成するビデオ圧縮方法であって:
(B)(a)入力ビデオを時間的にパルスに分割する段階であって,各パルスは入力ビデオの少なくとも二つのフレームを含む,段階と,
(C)各パルスのあるフレームのある空間的なパーティションの各領域について,少なくとも二つの異なる候補ブレンド・ピクセル・セットを生成する段階であって,該候補ブレンド・ピクセル・セットの少なくとも一つは入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的にブレンドされたピクセルおよび入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的および空間的にブレンドされたピクセルのうち少なくとも一つを含む,段階と;
(D)(b)各パルスについての空間的なパーティションの前記各領域について,前記候補ブレンド・ピクセル・セットの一つを,圧縮された表現に含めるために選択する段階とを含む,
(E)方法。」

3 引用発明
(1)引用例1の記載及び引用発明
(1-1)引用例1の記載
原審の平成26年12月26日付けの拒絶理由に引用された,特開2005-198268号公報(以下「引用例1」という。)には,「動画像変換装置および方法,並びに動画像データフォーマット」(発明の名称)として,図面とともに以下の事項が記載されている。

ア 「【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,動画像変換装置および方法,並びに動画像データフォーマットに関し,特に,動画のデータ量を適切に削減することができるようにした動画像変換装置および方法,並びに動画像データフォーマットに関するものである。」

イ 「【0047】
本発明の動画像変換方法は,領域毎の移動速度に基づきフレームレートと,空間解像度を決定する決定ステップ(例えば,図36のステップS3,S5)と,フレームレートと空間解像度にしたがって画像データを変換する変換ステップ(例えば,図36のステップS4,S6,S7)とを有することを特徴とする。
【0048】
フレームレートは,移動速度に基づき少なくとも2段階に設定され(例えば,入力時のフレームレートと,その1/4のフレームレート),移動速度が速い領域では高フレームレートに,移動速度が遅い領域では低フレームレートに設定されるようにすることができる。
【0049】
空間解像度は,移動速度に基づき少なくとも2段階に設定され(例えば,入力時の空間解像度と,その1/4の解像度),移動速度が速い領域では低空間解像度に設定され,移動速度が遅い領域では高空間解像度に設定されるようにすることができる。
【0050】
変換ステップは,移動速度が速い領域では空間方向の圧縮処理(例えば,図36のステップS4の処理)を,移動速度が遅い領域では時間方向の圧縮処理(例えば,図36のステップS6の処理)を行うことができる。
【0051】
変換ステップは,移動速度に応じて空間方向の圧縮処理と時間方向の圧縮処理を同時に行うことができる(例えば,図36のステップS7の処理)。
【0052】
空間方向の圧縮処理は,画素数の間引き処理とすることができる(例えば,図36のステップS4の処理)。
【0053】
時間方向の圧縮処理は,フレームの間引き処理とすることができる(例えば,図36のステップS6の処理)。」

ウ 「【0115】
(略)動画像の領域が高速で移動し,かつ動画像が高フレームレートであったときには,その領域の空間解像度を削減しても,超解像度効果により,観測者にその画質劣化を知覚させないようにすることができる。
【0116】
なおこのように表示画像フレームレートを高くすることは超解像度効果を得るのに有利となるが,表示画像フレームレートを高くすれば,その他,動きぼけやジャーキネス等の画質劣化を改善することにも有利となる。
【0117】
次に,本発明を適用した動画像変換装置1の構成例を,図18を参照して説明する。この動画像変換装置1は,上述した超解像度効果を利用した動画像変換処理を行うことにより,データ量の削減による画質劣化を観測者が知覚しないようにデータ量を削減することができる。
【0118】
ブロック分割部11は,入力された動画像の各フレームをブロックに分割し,移動量検出部12に供給する。
【0119】
移動量検出部12は,ブロック分割部11から供給された各ブロックについての移動量を検出し,ブロックとその移動量を,ブロック処理部13に送信する。
【0120】
ブロック処理部13は,移動量検出部12から供給されたブロックに対して,その移動量に応じた動画像変換処理を施し,データ量を削減する。ブロック処理部13は,その処理の結果得られた,データ量が削減されたブロックについてのデータを,出力部14に供給する。
【0121】
出力部14は,ブロック処理部13から供給された,データ量が削減されたブロックについてのデータを,ストリームデータとしてまとめて出力する。
【0122】
次に,図19を参照して,各部の詳細を説明する。
【0123】
はじめにブロック分割部11について説明する。
【0124】
ブロック分割部11の画像蓄積部21には,動画像変換装置1に供給された動画像のフレームが入力される。画像蓄積部21は,入力されたフレームを蓄積する。画像蓄積部21は,蓄積したフレームの数がN枚(Nは正の整数)になる度に,そのN枚のフレームを,ブロック分割部22に供給するとともに,N枚のフレームの中のM番目に記憶したフレーム(以下,M番目のフレームと称する)を,移動量検出部12(移動量検出部31)に供給する。なおこの例の場合N=4とする。
【0125】
ブロック分割部22は,画像蓄積部21から供給されたN枚のフレーム(連続するN枚のフレーム)のそれぞれを,ある大きさ(例えば8×8,16×16)のブロックに分割し,移動量検出部12(ブロック分配部32)に出力する。ブロック分割部22はまた,N枚のフレームの中の,画像蓄積部21でP番目に記憶されたフレーム(以下,P番目のフレームと称する)の各ブロックを移動量検出部12(移動量検出部31)に供給する。P番目のフレームは,M番目のフレームと異なるフレームである。(略)
【0143】
すなわちブロック分配部32は,移動量検出部21から供給された移動量に基づき,最適なフレームレートおよび空間解像度を決定し,そのフレームレートおよび空間解像度にしたがって画像データを変換する処理を行うブロック処理部51に,ブロック画像を分配する。
【0144】
なお,分配先決定のためのこの条件はあくまでも一例であり,他の条件で分配先を決定してもよい。
【0145】
次にブロック処理部13について説明する。ブロック処理部13は,この例の場合,3個のブロック処理部51-1乃至51-3で構成されている。
【0146】
ブロック処理部51-1は,移動量検出部12のブロック分配部32から供給された,連続するN枚のフレームのそれぞれの同一位置にある合計N個のブロック(水平方向または垂直方向の移動量が2ピクセル以上である場合のN個のブロック)に対して,画素数を,同様にブロック分配部32から供給された移動量に応じて間引く処理(空間方向間引き処理)を行う。
【0147】
具体的には,1フレーム間の水平方向の移動量が2ピクセル以上である場合,ブロック処理部51-1は,ブロックが8×8ピクセルで構成されているとき,図22に示すように,ブロック内の画素を,1×4ピクセル単位の集合に分割する。
【0148】
そしてブロック処理部51-1は,図23に示すように,1×4ピクセルの各集合の画素値p1乃至p4を,その中の1つの画素値(この例の場合,p1)にする画素数の間引き(4画素間の画素数の間引き)(間引き量4の間引き)を行う。(略)
【0154】
また,各集合の画素値を,図23の例では,1×4ピクセルの中の左端の画素値p1,図25の例では,4×1ピクセルの中の上端の画素値p1,図27の例では,2×2ピクセルの中の左上隅の画素値p1にしたが,p1乃至p4のいずれの画素値にしてもよい。またp1乃至p4を用いた計算によって新たに得られる画素値にすることもできる。
【0155】
さらに,この例では,画素数の間引きによって空間方向の圧縮を行ったが,フィルタリングによる空間方向の帯域制限を行っても構わない。
【0156】
図19に戻りブロック処理部51-2は,移動量検出部12のブロック分配部32から供給された,連続するN枚のフレームのそれぞれの同一位置ある合計Nブロック(水平方向と垂直方向の移動量がともに1ピクセル未満である場合のN個のブロック)に対して,フレーム数を間引く処理(時間方向間引き処理)を行う。
【0157】
具体的にはブロック処理部51-2は,図28に示すように,連続する4枚のフレームF1乃至F4のそれぞれの同一位置ある4個のブロックBiを,その中の1つのブロック(この例の場合,フレームF1のブロックBi)にするフレーム数の間引き(4フレーム間のフレーム数の間引き)を行う。
【0158】
ブロック処理部51-2は,このような時間方向間引き処理により,データ量が1/4に削減された4個のブロックについてのデータ(1個のブロック)を,出力部14に供給する。なお,ここでは,N=4の場合を例として説明したが,Nが他の値であっても同様な処理が行われる。
【0159】
この例の場合,図28に示すように,4個のフレームF1乃至F4のそれぞれのブロックBiのうち,フレームF1のブロックBiが出力されたが,他のフレームのブロックが出力されるようにしてもよい。またフレームF1乃至F4を用いた演算によって新たに得られたブロックが出力されるようにしてもよい。さらに,この例では,フレーム数の間引きによって時間方向の圧縮を行ったが,フィルタリングによる時間方向の帯域制限を行っても構わない。
【0160】
ブロック処理部51-3は,移動量検出部12のブロック分配部32から供給された,連続するN枚のフレームのそれぞれの同一位置ある合計N個のブロック(水平方向と垂直方向の移動量が1ピクセル以上で,2ピクセル未満である場合のN個のブロック)に対して,画素数の間引き処理(空間方向間引き処理)とフレーム数の間引き処理(時間方向間引き処理)をそれぞれ行う。
【0161】
ブロック処理部51-3の動作を,具体的に説明する。
【0162】
この場合ブロック処理部51-3に供給されるブロックの移動速度は,間引き量=4における超解像度効果を得るための条件を満たさない。したがって画素数の間引き処理(水平方向および垂直方向の間引き処理)において,ブロック処理部51-3は,ブロック処理部51-1における間引き処理とは異なり,図29および図30に示すように,各集合の画素値p1乃至p4を,その中のいずれか2個の画素値(この例の場合,p1,p3)にする画素数の間引き(2画素間の画素数の間引き)(間引き量2の間引き)を行う。
【0163】
すなわちブロック処理部51-1では,1×4,4×1,または2×2の3通りの画素数の間引きが行われるが,ブロック処理部51-3では,1×2または2×1の2通りの画素数の間引きが行われる。
【0164】
フレーム数の間引き処理においては,ブロック処理部51-3は,ブロック処理部51-2における間引き処理と異なり,図31に示すように,連続する4枚のフレームF1乃至F4のぞれぞれの同一位置にある合計4個のブロックBiを,その中のいずれか2つ(いまの場合,フレームF1,F3の2個のブロック)にするフレーム数の間引きを行う(2フレーム間のフレーム数の間引き)を行う。
【0165】
ブロック処理部51-3は,このような空間方向間引き処理と時間方向間引き処理を,供給された4個のブロックに対して施すので,4個のブロックのデータ量が1/4に削減される。ブロック処理部51-3は,データ量が1/4に削減された4個のブロックについてのデータを,出力部14に供給する。
【0166】
なお空間方向間引きと時間方向間引きの順序は,いずれが先に行われても同一の結果が得られるので,どちらを先に行ってもよい。」

エ 「【0181】
次に,動画像変換装置1の移動量検出部12およびブロック処理部13の動作を,図36のフローチャートを参照して説明する。
【0182】
ステップS1において,移動量検出部12の移動量検出部31は,ブロック分割部11のブロック分割部22から,動画像変換装置1に連続して入力された4枚のフレームの中のP番目のフレームの各ブロック(検索対象ブロック)の供給と,画像蓄積部21から,M番目のフレーム(参照フレーム)の供給を受け,それを入力する。
【0183】
次に,ステップS2において,移動量検出部31は,P番目のフレームのブロックの中の1つを検索対象ブロックとするとともに,その検索対象ブロックの動きベクトルを,参照フレームを参照して検出する。移動量検出部31は,検出した動きベクトルをブロック分配部32に供給する。
【0184】
ステップS3において,ブロック分配部32は,移動量検出部31から供給された動きベクトルの水平方向(X軸方向)または垂直方向(Y軸方向)の大きさ(1フレーム間のX軸方向またはY軸方向の移動量)が,2ピクセル以上であるか否かを判定し,少なくとも一方の移動量が2ピクセル以上であると判定した場合,ステップS4に進む。
【0185】
ステップS4において,ブロック分配部32は,移動量検出部31からの移動量と,それに対応してブロック分割部22から供給された,連続する4枚のフレームのそれぞれの同一位置にあるN個のブロックとを,ブロック処理部13のブロック処理部51-1に供給する。これによりブロック処理部51-1は,ブロック分配部32から供給された4個のブロックに対して,図22乃至図27に示したような,画素数を1/4にする間引き処理(4画素間の画素数の間引き処理)を施し,その結果得られた,データ量が1/4に削減された4個のブロックについてのデータを,出力部14に供給する。
【0186】
ステップS3で,いずれの移動量も2ピクセル以上ではないと判定された場合,ステップS5に進み,ブロック分配部32は,X軸方向とY軸方向の移動量がともに1ピクセル未満であるか否かを判定し,ともに1ピクセル未満であると判定した場合,ステップS6に進む。
【0187】
ステップS6において,ブロック分配部32は,ブロック分割部22からのN個のブロックと移動量検出部31からの移動量を,ブロック処理部51-2に供給する。ブロック処理部51-2は,ブロック分配部32から供給されたN個のブロックに対して,図28に示したような,フレーム数を1/4にする間引き処理(4フレーム間のフレーム数の間引き処理)を施し,その結果得られた,データ量が1/4に削減された4個のブロックについてのデータ(1個のブロック)を,出力部14に供給する。
【0188】
ステップS5で,X軸方向およびY軸方向の移動量がともに1ピクセル未満ではないと判定された場合(移動量が1ピクセル以上で,2ピクセル未満の場合),ステップS7に進み,ブロック分配部32は,ブロック分割部22からの4個のブロックと移動量検出部31からの移動量を,ブロック処理部51-3に供給する。これによりブロック処理部51-3は,ブロック分配部32から供給された4個のブロックに対し,図29乃至図31に示したような,画素数を1/2にする間引き処理(2画素間の画素数の間引き処理)と,フレーム数を1/2にする間引き処理(2フレーム間のフレーム数の間引き処理)を施し,その結果得られた,データ量が1/4に削減された4個のブロックについてのデータを,出力部14に供給する。
【0189】
以上の処理が,ブロック分割部11から4枚のフレームの各ブロックが供給される毎に行われる。」

(1-2)引用発明
上記(1-1)の摘記事項アからエまでの記載及び関連する図面並びにこの分野の技術常識を考慮して引用例1の記載を検討する。

(ア) 上記アには,引用例1に記載された発明が,動画のデータ量を適切に削減することができる動画像変換方法及び動画像変換装置に関するものであることについて記載されている。
上記イには,前記動画像変換方法の変換ステップにおいて,移動速度が速い領域では空間方向の圧縮処理を行い,移動速度が遅い領域では時間方向の圧縮処理を行うことについて記載されている。
上記ウには,動画像変換装置において,入力された動画像に対し,動画像変換処理がなされた後,データ量が削減されたデータが,ストリームデータとして出力部14から出力されることについて記載されている。

以上の記載を踏まえれば,引用例1には,『動画像変換装置に入力された動画像に,圧縮処理をしたデータを,ストリームデータとして出力する動画像変換方法』が記載されているといえる。

(イ) 上記ウには,前記動画像変換方法を行う動画像変換装置1において,動画像のフレームが画像蓄積部21に蓄積されること,及び当該画像蓄積部21が,蓄積したフレームの数が4枚になるたびに,各フレームをある大きさ(例えば8×8,16×16)のブロックに分割するブロック分割部22に,この4枚のフレームを供給することについて記載されている。

以上の記載を踏まえれば,引用例1には,『前記入力された動画像を,前記動画像変換装置の画像蓄積部に蓄積し,蓄積したフレームが4枚になるたびに,この4枚のフレームを前記動画像変換装置のブロック分割部に供給』することが記載されているといえる。

(ウ) 上記ウには,動画像変換装置1において,ブロック分割部22が,分割したブロックを,ブロック分配部32に出力し,ブロック分配部32が,ブロック処理部13にブロック画像を分配することについて記載されている。
上記ウ及びエには,ブロック処理部13が,3個のブロック処理部51-1ないし51-3で構成され,連続する4枚のフレームのそれぞれの同一位置にある4個のブロックに対し,ブロック処理部51-1は,画素数を間引く空間方向の処理を行い,ブロック51-2は,フレーム数を間引く時間方向の処理を行い,ブロック51-3は,前記空間方向の処理と前記時間方向の処理をそれぞれ行うことについて記載されている。ここで,上記ウの摘記中,段落【0154】には,前記空間方向の処理について,画素数を間引く処理ではなく,複数の画素の画素値について,当該複数の画素の画素値を用いた計算によって新たに得られる画素値とする処理でもよいことが記載されている。また,上記ウの摘記中,段落【0159】には,前記時間方向の処理について,フレーム数を間引く処理ではなく,複数のフレームを用いた演算によって新たに得られたブロックが出力される処理でもよいことが記載されている。

以上の記載を踏まえれば,引用例1には,『前記ブロック分割部で分割された各ブロックについて,(i)ブロックを構成する複数のピクセルの画素値を用いた計算により新たな画素値を得る,ブロック処理部51-1での空間方向の処理,(ii)複数のフレームを用いた演算により新たにブロックを得る,ブロック処理部51-2での時間方向の処理,及び(iii)前記空間方向の処理と前記時間方向の処理をそれぞれ行うブロック処理部51-3での処理,のいずれかを行』うことが記載されているといえる。

(エ) 上記ウ及びエには,上記(ウ)で示した処理を行う,ブロック51-1ないし51-3のいずれかに,ブロック画像を分配するブロック分配部32が,1フレーム間の移動量に基づき,分配先を決定することについて記載されている。
上記エには,ブロック51-1ないし51-3で処理されたデータが出力部14に供給されること,及びブロック分割部11から4枚のフレームの各ブロックが供給されるごとに,前記処理が行われることについて記載されている。

以上の記載を踏まえれば,引用例1には,『前記各ブロックについて,前記(i)ないし(iii)のいずれの処理をして出力するかを,移動量に基づき決定する』ことが記載されているといえる。

(オ) まとめ
以上によれば,引用例1には,次の発明(以下「引用発明」という。)が開示されている。以下,引用発明の各構成要件を,付与した符号を用い,構成要件1a,構成要件1bなどと称することとする。

(引用発明)
「(1a)動画像変換装置に入力された動画像に,圧縮処理をしたデータを,ストリームデータとして出力する動画像変換方法であって,
(1b)前記入力された動画像を,前記動画像変換装置の画像蓄積部に蓄積し,蓄積したフレームが4枚になるたびに,この4枚のフレームを前記動画像変換装置のブロック分割部に供給し,
(1c)前記ブロック分割部で分割された各ブロックについて,(i)ブロックを構成する複数のピクセルの画素値を用いた計算により新たな画素値を得る,ブロック処理部51-1での空間方向の処理,(ii)複数のフレームを用いた演算により新たにブロックを得る,ブロック処理部51-2での時間方向の処理,及び(iii)前記空間方向の処理と前記時間方向の処理をそれぞれ行うブロック処理部51-3での処理,のいずれかを行い,
(1d)前記各ブロックについて,前記(i)ないし(iii)のいずれの処理をして出力するかを,移動量に基づき決定する,
(1e)方法。」

(2)引用例2及び3の記載及び周知技術
(2-1)引用例2の記載
特開平1-236877号公報(以下「引用例2」という。)には,「ビデオ信号処理方法および装置」(発明の名称)として,図面とともに以下の事項が記載されている。

「本発明はビデオ信号を有するテレビジョン信号を,伝送チャネルまたは記録チャネルによって伝送または記録する方法であって,ビデオ信号に加えることのできる複数の処理行程の中より1つの処理工程を選択して,これを加えてビデオ信号が空間的あるいは時間的に互いに異なる解像度を生ずる如くして伝送チャネルに供給しうるテレビジョン信号を形成する工程を含んでなる高精細度(高品位)テレビジョン信号の伝送または記録方法に関するものである。」(第3ページ左上欄第3?12行)

「以下の説明においては各画像はそれぞれが一定数の画素幅をもっていて所定数のライン高さをもつブロックに分割したものと考え,この場合,これらの数はそれぞれ対応するものでなく,またディジタル情報は各ブロックにおいてその中に含まれている動きまたはその速度の特性に関するものである。
信号が1250ライン,25MHz高解像度テレビジョン カメラより導出されたものであり,伝送チャネルが625ライン,6MHz帯域幅である場合の伝送系においては全体の圧縮比が4:1であることが要求される。高解像度信号をサンプルしてこれを伝送させるシステムは次の例に示す如く時間的および空間的解像度のディスカードするものの値において互いに妥協する点を見出さなければならない。
システム周期 時間的圧縮 空間的圧縮
80ms 4:1 1:1
40ms 2:1 2:1
20ms 1:1 4:1
すなわち,それぞれ異なる速度範囲に対しいくつかの異なるフィールド速度を用い,これは次の如くである。
i 静止モード(速度範囲,例えば:0-0.5画素/40ms)フィールド速度12.5Hz,基本間隔80ms。
ii 極く遅く動くモード(速度範囲:例えば0.5-2画素/40ms)フィールド速度25Hz,基本間隔40ms。
iii 移動モード(速度範囲:例えば2.0画素/40ms)フィールド速度50Hz,基本間隔20ms。
第20図はこのような方式に使用する送信部の他の実施例をブロック図であり,参照番号1は入力端子でこれは高解像度テレビジョン カメラより少なくとも輝度情報を受信する。これらの輝度情報を3つの並列回路辺2,3および4に供給し,これらはそれぞれ20ms,40msおよび30msの回路辺であり,これらの中で信号は以下述べる如くして処理される。これらの3つの回路辺よりの出力はブランチ スイッチ5に供給され,その出力は1つの回路辺よりのものであってこれをナイキスト フィルタ6を通じて出力端子7に供給し,これを伝送チャネルまたは記録媒体に供給する前にMAC信号の他の成分で増倍してこれを行い,なおその他の必要な処理はこれを図示を省略してある。第20図はサンプリングの性質,移動の方向等の情報を示す伝送信号情報内に含まれるDATV用のディジタル信号の発生については図示していない。
入力端子1における輝度情報を第1および第2トランジェント アダプティブ モーション ディテクタ8および9にも供給し,このディテクタの第1のもの(8)は検出されたモーションが0.5画素/50ms以下の場合に出力を生じ,また第2のディテクタ(9)は検出されたモーションが2画素/40ms以上の場合に出力を生ずる。モーション ディテクタ8および9の出力をそれぞれ対応の第1および第2空間一致回路10および11に供給し,これらのこれらによって隣接および周囲ブロック間の一致を決定し,これらの出力を3レベル決定回路12に供給して上述の3つの条件(i)?(iii)の1つに対応する出力を生ずる。この出力を第1時間的一致回路13に供給し,この回路は移動の程度に応じて決定回路12よりの信号レベルに変化が起きるべき時間を制御し,さらに当該ブロックと周囲ブロック間の一致を決定する空間一致回路14を通じて第2時間一致回路15に供給する。この回路はスイッチングのアーチフェクトを防止するため比較的長い周期(240ms)に亘る時間的一致を確保し,最後にブランチ スイッチ後の制御入力に供給し,上述の基準に基づいてプロセスした信号の選択の制御を行う。」(第25ページ左下欄第9行?第26ページ右上欄第19行)

(2-2)引用例3の記載
特表昭64-500236号公報(以下「引用例3」という。)には,「帯域巾圧縮のためのビデオ信号処理装置」(発明の名称)として,図面とともに以下の事項が記載されている。

「(発明の名称)
帯域巾圧縮のためのビデオ信号処理装置
本発明は,伝送(あるいは記録)される信号の帯域中巾の圧縮(減少)を可能にする方法に関する。」(第3ページ左上欄第2?5行)

「運動適応帯域中圧縮方式を研究するために,あるハードウェアが最近構築された(文献1参照),この装置は,入力するモノクロームの625ラインのテレビジョン信号を2つの異なる方法でフィルタする2つのディジタル・フィルタを含み,1つは画像の運動領域に最適であり(空間フィルタ),また1つは静止画像領域に最適な(時間的フィルタ)ものである。両方のタイプのフィルタが帯域中を因数4で圧縮し,従ってフィルタされた信号が4つのフィールドの反復シーケンスを有する比較的粗いサンプリング格子においてサンプルし直すことを可能にする。」(第3ページ右下欄第21行?第4ページ左上欄第6行)

「運動領域においては,この手法は使用できず(サンプルがある期間にわたり累積することを許容することが運動する対象物のぶれを生じるため),その結果低空間デテール・フィルタからの出力は画像の比較的良好な表示を生じる。」(第4ページ左下欄第22行?同ページ右上欄第1行)

「ハードウェアは,2つの送信方法のどれがブロック方式において最も適するかを選択するが,1つのブロックは6つのビクセルに跨がる1つのダイヤモンドの形状をなす。どの送信モードが各ブロックに対し選択されたかの情報はディジタル信号として受信機に対して送出されるため,受信機は再生を行なう方法を知る。」(第4ページ右上欄第7?13行)

「どの伝送モードが各ブロックに対して最も適当なものであるかを選定するためこの検討において用いられる方法は,前に述べたハードウェアにおいて用いられる方法と同じものである(文献3参照)。完全を期すため,この方法についてここで簡単に述べる。
各伝送ブロック毎に,元の信号と「低」と「高」の空間精細モードの双方を通った後の信号との間の差の絶対値が計算される。ブロック領域に跨がる誤差の和は,加重因数で乗じた後比較され,最も小さな誤差を生じる方法を用いてブロックを伝送する。これらの検討のため用いた加重因数は,低績細モードにおける誤差に対しては0.55,高精細モードにおける誤差に対しては0.45であった。これは,最良の本来的な結果を与えることが判ったため,高精細モードに照してモード選定を僅かにバイアスされる。」(第8ページ右上欄第20行?同ページ左下欄第9行)

(2-3)引用例2,3記載の技術事項及び周知技術
上記(2-1)及び(2-2)の摘記事項及び関連する図面並びにこの分野の技術常識を考慮すると,引用例2,3には,それぞれ,以下の技術事項が記載されているといえる。

(引用例2記載の技術事項)
「伝送するビデオ信号について,空間的あるいは時間的に互いに異なる解像度を生じる3つの回路に供給し,モーション ディテクタの検出結果に基づいて,前記3つの回路の出力のいずれかの出力を選択する制御を行うこと。」

(引用例3記載の技術事項)
「ビデオ信号を,画像の運動領域に最適な低空間精細モードと,静止画像領域に最適な高空間精細モードの双方に通し,通す前と後の差の絶対値を計算して最も小さな誤差を生じる方を用いて伝送すること。」

ここで,引用例2における,「ビデオ信号について,空間的あるいは時間的に互いに異なる解像度を生じる3つの回路に供給」すること,及び引用例3における,「ビデオ信号を,画像の運動領域に最適な低空間精細モードと,静止画像領域に最適な高空間精細モードの双方を通」すことは,ともに,「ビデオ信号に対し,互いに異なる解像度の複数の処理を行ってお」くことといえる。
また,引用例2における「モーション ディテクタの検出結果に基づいて,前記3つの回路の出力のいずれかの出力を選択する制御を行う」こと,及び引用例3における,二つのモードを「通す前と後の差の絶対値を計算して最も小さな誤差を生じる方を用い」ることは,ともに,行った複数の処理に対し,移動量との関係で「適切な方の処理を選択」することといえる。

そうすると,引用例2,3には,以下の周知技術が開示されているといえる。

(周知技術)
「ビデオ信号に対し,互いに異なる解像度の複数の処理を行っておき,適切な方の処理を選択して伝送すること。」

4 対比
本願発明と引用発明とを対比する。

(1)本願発明の構成要件Aと引用発明の構成要件1aとの対比
引用発明の「動画像変換装置に入力された動画像」は,本願発明の「入力ビデオ」に相当する。
引用発明における,入力された動画像に「圧縮処理をしたデータを,ストリームデータとして出力する」ということは,当該出力に当たり,入力された動画像の「圧縮された表現を生成」しているといえる。
また,引用発明の「動画像変換方法」は,そのような圧縮の処理を行うのであるから,「ビデオ圧縮方法」ということができる。

よって,引用発明の構成要件1a「動画像変換装置に入力された動画像に圧縮処理をしたデータをストリームデータとして出力する動画像変換方法であって,」は,本願発明の構成要件A「入力ビデオの圧縮された表現を生成するビデオ圧縮方法であって:」に相当するといえる。

(2)本願発明の構成要件Bと引用発明の構成要件1bとの対比
引用発明の「前記入力された動画像」は,上記(1)の検討により,「入力ビデオ」といえる。
引用発明において,前記入力された動画像を,「前記動画像変換装置の画像蓄積部に蓄積し,蓄積したフレームが4枚になるたびに,この4枚のフレームを前記動画像変換装置のブロック分割部に供給」するということは,画像蓄積部がブロック分割部に画像のデータを供給する際に,時間的に連続する4枚のフレームを一つの単位にするとするということであるから,前記入力された動画像の,時間的に連続する多数のフレームを,「時間的に」4枚のフレームという単位で「分割する」ことといえる。そして,この4枚のフレームという単位は,連続する多数のフレームからすると,「パルス」と称することができ,各パルスは,4枚のフレームで構成されるのであるから,「各パルス」は,前記入力された動画像の「少なくとも二つのフレームを含む」といえる。

よって,引用発明の構成要件1b「前記入力された動画像を,前記動画像変換装置の画像蓄積部に蓄積し,蓄積したフレームが4枚になるたびに,この4枚のフレームを前記動画像変換装置のブロック分割部に供給し,」は,本願発明の構成要件B「(a)入力ビデオを時間的にパルスに分割する段階であって,各パルスは入力ビデオの少なくとも二つのフレームを含む,段階と,」に相当するといえる。

(3)本願発明の構成要件Cと引用発明の構成要件1cとの対比
引用発明の「前記ブロック分割部で分割された各ブロック」は,フレームを空間的にある大きさ(例えば8×8,16×16)で分割したときの各領域であるから,本願発明の「各パルスのあるフレームのある空間的なパーティションの各領域」に相当する。
次に,引用発明における,「(i)ブロックを構成する複数のピクセルの画素値を用いた計算により新たな画素値を得る,ブロック処理部51-1での空間方向の処理,(ii)複数のフレームを用いた演算により新たにブロックを得る,ブロック処理部51-2での時間方向の処理,及び(iii)前記空間方向の処理と前記時間方向の処理をそれぞれ行うブロック処理部51-3での処理,のいずれかを行」うことについてみると,まず,これらの(i)ないし(iii)の処理単位であるブロックは,複数のピクセルから構成されているといえる。また,(i)の処理は,ブロックを構成する複数の画素値を用いた計算により新たな画素値を得るのであるから,当該処理は,当該ブロックにおける複数の画素値について,空間的にブレンドするものといえ,(ii)の処理は,複数のフレームを用いた演算により,連続する複数のフレームのそれぞれの同一位置にある複数のブロックから,新たなブロックを得るのであるから,当該処理は,当該複数のブロックの複数の画素値について,時間的にブレンドするものといえる。したがって,引用発明において,前記(i)ないし(iii)のいずれかの処理を行うということは,「ブレンド・ピクセル・セットを生成する」ことといえる。
ここで,上記(ii)の処理は,本願発明の「入力ビデオ」に相当する「前記入力された動画像」の4つのフレームを用いて時間的にブレンドする処理であるから,「入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的にブレンドされたピクセル」を含むようにする処理といえる。また,上記(iii)の処理は,「前記入力された動画像」の4つのフレームを用いて時間的かつ空間的にブレンドする処理であるから,「入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的および空間的にブレンドされたピクセル」を含むようにする処理といえる。
そうすると,引用発明において,前記(i)ないし(iii)のいずれかの処理を行うということは,「ブレンド・ピクセル・セットの少なくとも一つ」が,前記「時間的にブレンドされたピクセル」並びに前記「時間的および空間的にブレンドされたピクセル」の「うち少なくとも一つを含」むということができる。

よって,引用発明の構成要件1cと,本願発明の構成要件Cとは,「各パルスのあるフレームのある空間的なパーティションの各領域について,ブレンド・ピクセル・セットを生成する段階であって,該ブレンド・ピクセル・セットの少なくとも一つは入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的にブレンドされたピクセルおよび入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的および空間的にブレンドされたピクセルのうち少なくとも一つを含む,段階」を備える点で共通する。
しかしながら,引用発明の構成要件1cと,本願発明の構成要件Cとは,ブレンド・ピクセル・セットの生成について,本願発明では,各領域に対し,「少なくとも二つの異なる候補」ブレンド・ピクセル・セットを生成するのに対し,引用発明では,異なるブレンド・ピクセル・セットを生成する処理のいずれを行うかを,事前に選択しているために,各ブロックに対し,一つのブレンド・ピクセル・セットが生成され,また,それゆえ,このブレンド・ピクセル・セットを「候補」ブレンド・ピクセル・セットということもできない点で相違する。

(4)本願発明の構成要件Dと引用発明の構成要件1dとの対比
引用発明の「前記各ブロック」は,上記(3)の検討を踏まえると,本願発明の「各パルスについての空間的なパーティションの前記各領域」に相当するといえる。
引用発明における,「前記(i)ないし(iii)のいずれの処理をして出力するかを,移動量に基づき決定する,」ことについてみると,前記(i)ないし(iii)のいずれかの処理がなされたブロックは,上記(3)の検討を踏まえると,「ブレンド・ピクセル・セット」といえ,これを出力するということは,上記(1)の検討を踏まえると,「圧縮された表現に含め」ることとといえる。

よって,引用発明の構成要件1dと,本願発明の構成要件Dとは,「(b)各パルスについての空間的なパーティションの前記各領域について,前記ブレンド・ピクセル・セットを,圧縮された表現に含める段階とを含む」点で共通する。
しかしながら,引用発明の構成要件1dと,本願発明の構成要件Dとは,ブレンド・ピクセル・セットを圧縮された表現に含めるに当たり,本願発明では,生成された複数の「候補」ブレンド・ピクセル・セット「の一つ」を「選択する」のに対し,引用発明では,異なるブレンド・ピクセル・セットを生成する処理のいずれを行うかを,事前に選択しているために,各ブロックに対し,生成された複数のブレンド・ピクセル・セットの中から一つを選択するということがなく,生成するブレンド・ピクセル・セットを「候補」ブレンド・ピクセル・セットということもできない点で相違する。

(5)本願発明の構成要件Eと引用発明の構成要件1eとの対比
上記(1)の検討を踏まえると,引用発明の「方法」は,上記(3),(4)において示した相違を除き,本願発明の「方法」に相当するものといえる。

(6)まとめ
上記(1)から(5)までに示した対比結果に基づき,本願発明と引用発明との間の一致点と相違点をまとめると,以下のとおりである。

(一致点)
「入力ビデオの圧縮された表現を生成するビデオ圧縮方法であって:
(a)入力ビデオを時間的にパルスに分割する段階であって,各パルスは入力ビデオの少なくとも二つのフレームを含む,段階と,各パルスのあるフレームのある空間的なパーティションの各領域について,ブレンド・ピクセル・セットを生成する段階であって,該ブレンド・ピクセル・セットの少なくとも一つは入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的にブレンドされたピクセルおよび入力ビデオの少なくとも二つのフレームから決定された時間的および空間的にブレンドされたピクセルのうち少なくとも一つを含む,段階と;
(b)各パルスについての空間的なパーティションの前記各領域について,前記ブレンド・ピクセル・セットを,圧縮された表現に含める段階とを含む,
方法。」

(相違点)
ブレンド・ピクセル・セットを生成し,圧縮された表現に含めるに当たり,本願発明では,各領域に対し,「少なくとも二つの異なる候補」ブレンド・ピクセル・セットを生成してから,生成された複数の「候補」ブレンド・ピクセル・セット「の一つ」を「選択する」のに対し,引用発明では,異なるブレンド・ピクセル・セットを生成する処理のいずれを行うかを,事前に選択しているために,各ブロックに対し,一つのブレンド・ピクセル・セットが生成され,生成された複数のブレンド・ピクセル・セットの一つを選択するということがなく,また,それゆえ,このブレンド・ピクセル・セットを「候補」ブレンド・ピクセル・セットということもできない点

5 当審の判断
(1)引用発明は,異なるブレンド・ピクセル・セットを生成する複数の処理のうちいずれを行うかを,事前に選択しているために,各ブロックに対し,一つのブレンド・ピクセル・セットが生成される。それゆえ,引用発明は,本願発明のように,複数のブレンド・ピクセル・セットの候補を生成してから,事後に選択するというものではない。

しかしながら,複数の処理候補が想定できる場合に,事前にどの処理が適切かを選択してから,当該適切な処理を行わせるのか,それとも,複数の処理を行っておき,事後に適切な処理がなされたものを選択するのかは,どのような回路構成で具体化するか等の観点から,当業者が適宜選択し得た設計的事項にすぎない。
さらに,上記3(2-3)で示したように,ビデオ信号に対し,互いに異なる解像度の複数の処理を行っておき,適切な方の処理を選択して伝送することは,本願出願前における周知技術であったのであるから,事後に適切な処理であったものを選択することに困難性があったということも,技術的な阻害要因があるということもできない。
そうすると,引用発明における,事前にどの処理が適切かを選択してから,当該適切な処理を行わせる構成に代え,複数の処理を行っておき,事後に適切な処理がなされたものを選択する構成を採用することは,当業者が容易に想到し得たことである。
そして,そのような構成を採用することにより,各領域に対し,「少なくとも二つの異なる候補」ブレンド・ピクセル・セットを生成してから,生成された複数の「候補」ブレンド・ピクセル・セット「の一つ」を「選択する」という,上記(相違点)に係る構成に到達することになるから,本願発明は,引用発明を基に当業者が容易になし得たものといえる。

(2)また,本願発明の作用,効果も,引用発明から当業者が予測できる範囲のものである。

(3)したがって,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって,その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,本願は拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-15 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-03 
出願番号 特願2014-513583(P2014-513583)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 大五郎  
特許庁審判長 藤井 浩
特許庁審判官 清水 正一
戸次 一夫
発明の名称 分解能トレードオフおよび最適化を実装するビデオ圧縮  
代理人 伊東 忠彦  
代理人 大貫 進介  
代理人 伊東 忠重  

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