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審決分類 審判 査定不服 特17 条の2 、4 項補正目的 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1325288
審判番号 不服2015-20256  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-11 
確定日 2017-02-16 
事件の表示 特願2012-523949「前立腺癌の処置」拒絶査定不服審判事件〔平成23年 2月10日国際公開、WO2011/017534、平成25年 1月17日国内公表、特表2013-501722〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成22年8月5日(パリ条約による優先権主張 2009年8月7日 (US)アメリカ合衆国 2009年11月13日 (US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特許出願であって、平成25年7月16日付けで手続補正がなされ、平成26年7月24日付け拒絶理由通知に応答して平成27年1月4日付けで手続補正がなされ、意見書が提出されたが、同年7月7日付けで拒絶査定がなされた。
これに対し、平成27年11月11日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判請求と同時に平成27年11月11日付けで手続補正がなされ、同年12月17日付けで審判請求書の手続補正書(方式)が提出されたものである。

2.平成27年11月11日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成27年11月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)補正の概略
本件補正により、特許請求の範囲は、
本件補正前(平成27年1月4日付け手続補正書参照)の
「【請求項1】
化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩を650乃至3500mg含む医薬組成物であって、
化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩は結晶の形態であることを特徴とする医薬組成物。
【化1】


【請求項2】
医薬組成物は、被験体に、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、経口的に、口腔に、舌下に、粘膜に、直腸に、経皮的に、皮膚に、眼に、又は吸入によって投与するために調剤されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、クリーム、ローション剤、油剤、軟膏、ゲル、ペースト、粉末、懸濁液、エマルション、又は溶液として被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物は、カプセル剤または錠剤として被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物は、化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩の25mg/kg乃至50mg/kgの投与量で被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物は、900mg乃至1950mgの化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物は、1日当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回、被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物は、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、佐藤、スターチ、ニスまたは、ワックスなどのうち1以上のその薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物は、ヒトの被験体に投与される際、500ng/mL以上のCmaxを与えることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬組成物は、微粉化結晶粉末である化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項11】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置する際に使用するための、請求項1乃至10のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項12】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌、良性前立腺肥大症、多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、または、男性の性腺機能亢進症であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。
【請求項14】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、去勢抵抗性前立腺癌であることを特徴とする請求項11に記載の医薬組成物。」
から、
本件補正後の
「【請求項1】
化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩の25mg/kg乃至50mg/kgの投与量を含む医薬組成物であって、
化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩は約13.0°、14.6°、16.3°、17.6°、及び19.0±0.2°、及び随意に約11.8°、20.2°、22.9°、及び25.4±0.2°の角度2シータにおいて表される、特性ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられた結晶の形態であることを特徴とする医薬組成物。
【化1】


【請求項2】
医薬組成物は、被験体に、非経口的に、静脈内に、筋肉内に、皮内に、皮下に、腹腔内に、経口的に、口腔に、舌下に、粘膜に、直腸に、経皮的に、皮膚に、眼に、又は吸入によって投与するために調剤されることを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
医薬組成物は、錠剤、カプセル剤、クリーム、ローション剤、油剤、軟膏、ゲル、ペースト、粉末、懸濁液、エマルション、又は溶液として被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項1または2のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項4】
医薬組成物は、カプセル剤または錠剤として被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
医薬組成物は、900mg乃至1950mgの化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩を含むことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項6】
医薬組成物は、1日当たり、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10回、被験体に投与するために調剤されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項7】
医薬組成物は、充填剤、崩壊剤、潤滑剤、界面活性剤、流動促進剤、結合剤、佐藤、スターチ、ニスまたは、ワックスなどのうち1以上のその薬学的に許容可能な賦形剤をさらに含むことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項8】
医薬組成物は、ヒトの被験体に投与される際、500ng/mL以上のCmaxを与えることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項9】
医薬組成物は、微粉化結晶形態である化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩を含むことを特徴とする請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項10】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病を処置する際に使用するための、請求項1乃至9のいずれかに記載の医薬組成物。
【請求項11】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌、良性前立腺肥大症、多毛症、脱毛症、神経性食欲不振、乳癌、または、男性の性腺機能亢進症であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項12】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、前立腺癌であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。
【請求項13】
アンドロゲン受容体媒介性の疾患又は疾病は、去勢抵抗性前立腺癌であることを特徴とする請求項10に記載の医薬組成物。」(下線は、原文に記載されているとおり)
と補正された。

(2)対比、判断
本件補正前後の発明特定事項を対比すると、本件補正は、次の補正事項を含むものと認められる。
(a)請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩」について、本件補正前の「650乃至3500mg含む」との限定を、削除すること
(b)請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩」について、本件補正後に「25mg/kg乃至50mg/kgの投与量を含む」と限定すること
(c)請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「結晶」について、本件補正後に、「約13.0°、14.6°、16.3°、17.6°、及び19.0±0.2°、及び随意に約11.8°、20.2°、22.9°、及び25.4±0.2°の角度2シータにおいて表される、特性ピークを有する粉末X線回折パターンによって特徴付けられる」と限定すること
(d)本件補正前の請求項5を削除し、それに伴い、本件補正前の請求項6?14を本件補正後の請求項5?13と補正するとともに引用する請求項の項番を修正すること
(e)本件補正前の請求項10の「微粉化結晶粉末」を、本件補正後の請求項9の「微粉化結晶形態」と補正すること

本件補正は、特許法第121条第1項の[拒絶査定不服審判]を請求する場合において、その審判の請求と同時にされたものであって、同法第17条の2第1項第4号の補正に該当する。
そして、そのような補正は、特許法第17条の2第5項各号に規定する事項を目的にするものに限られているので、その目的に合致するか検討する。

(a)及び(b)の補正事項を検討する。
(a)の補正事項の「650乃至3500mg含む」との限定を削除することにより、「化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩」の量は、「650乃至3500mg」から、任意の量を取りうるようにその範囲が拡張されることになる。
また、(a)の補正事項の「650乃至3500mg含む」は、(b)の補正事項の「25mg/kg乃至50mg/kgの投与量を含む」とは異なるパラメータによる規定であるから、(b)の補正事項の「25mg/kg乃至50mg/kgの投与量を含む」が(a)の補正事項の「650乃至3500mg含む」をさらに限定したものには該当しないし、例えば500mg(体重20kgの場合。=20kg×25mg/kg)や、4000mg(体重80kgの場合。=80kg×50mg/kg)は、(b)の補正事項の「25mg/kg乃至50mg/kgの投与量を含む」を満足するが、(a)の補正事項の「650乃至3500mg含む」を満足しない。
結局、(b)の補正事項を勘案しても、(a)の補正事項は、特許請求の範囲の限縮を目的とするものであるとはいえず、また、請求項の削除、不明瞭な記載の釈明、誤記の訂正のいずれを目的とするものにも該当しない。
そうすると、本件補正は、(b)?(e)の補正事項について検討するまでもなく、特許法第17条の2第5項各号に掲げる特許請求の範囲の限縮(2号)に該当せず、請求項の削除(1号)、誤記の訂正(3号)、明瞭でない記載の釈明(4号)のいずれを目的とするものにも該当しない。

(3)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明
平成27年11月11日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?14に係る発明は、平成27年1月4日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?14に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうち請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】
化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩を650乃至3500mg含む医薬組成物であって、
化合物(1)もしくはその薬学的に許容可能なそれらの塩は結晶の形態であることを特徴とする医薬組成物。
【化1】



4.原査定の拒絶の理由の概要
原査定の理由とされた、平成23年10月25日付け拒絶理由通知書に記載された拒絶の理由の概要は、この出願の下記の請求項に係る発明は、その優先日前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて当業者が容易に発明をすることができた発明であるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものであり、刊行物として以下の引用文献1乃至7を引用するものである。

引用例1 特表2008-536807号公報
引用例2 Mol Cancer Ther. 2008 Aug;7(8):2348-57

5.当審の判断
(1)引用文献の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願優先権主張日前に頒布された刊行物である特表2008-536807号公報(2008年9月11日公表、以下、「引用例1」という。)、及び、Mol Cancer Ther. 2008 Aug;7(8):2348-57(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。なお、下線、及び、翻訳は、当審による。

[引用例1]
(1-i)「【0002】
本発明の化合物は、ヒトCYP17酵素の強力な阻害剤であり、また野生タイプおよび変異株アンドロゲンレセプタ-(AR)の強力な拮抗剤である。最も強力なCYP17阻害剤は、3β-ヒドロキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(5、コード名VN/124-1)、3β-ヒドロキシ-17-(51-ピリミジン)アンドロスタ-5,16-ジエン(15)、および17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-6,16-ジエン-3-オン(6)であり、それらのIC_(50)値はそれぞれ300,500および915nMである。化合物5,6,14および15は、変異株およびLNCaPARおよび野生タイプARへの^(3)H-R1881(メチルトリエノロン、安定な合成アンドロゲン)の結合防止に有効であったが、しかし後者へは2.2ないし5倍高い結合効率を有している。化合物5および6は,強力な純粋AR拮抗剤であることを示した。細胞成育研究は、化合物5および6は低いマイクロモル範囲(すなわち<10μM)のIC_(50)値でDHT-刺激LNCaPおよびLAPC_(4)前立腺癌細胞の成育を阻止する。それらの阻止強度はカソデックスに匹敵するが、しかしフルタミドより著しくすぐれている。マウスにおける化合物5および6の薬物動態が検討された。5および6の50mg/kgの腹腔内投与後、30ないし60分後それぞれ16.82および5.15ng/mlのピーク血漿レベルが出現し、両方の化合物は血漿から速やかに排出され(それぞれ終末半減期44.17および39.93分)、そして8時間目にどちらも検出されなかった。注目すべきことに、化合物5は一時的に17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-3-オンと同定された代謝物へ急速に変換された。インビボでテストする時、5はアンドロゲン依存性LAPC_(4)ヒト前立腺癌キセノグラフトの成育の阻害に非常に有効であることが証明されたが、6は無効であった。化合物5(50mg/kg 1日2回)は、対照と比較して平均最終腫瘍体積の93.8%減少(P=0.00065)をもたらし、そして去勢よりも有意に効果的であった。我々の知る限り、これはアンドロゲン依存性前立腺腫瘍成育の抑制において去勢より有意にもっと効果的な抗ホルモン剤(アンドロゲン合成の阻害剤(CYP17阻害剤)/抗アンドロゲン)の最初の例である。これらの印象的抗癌性に鑑み、化合物5その他はヒト前立腺癌の処置に使用することができる。」(段落【0002】)
(1-ii)「【0024】
特に好ましい化合物は以下の構造M5,M6,M9およびM10の化合物である。
【0025】
【化6】


【0026】
CYP17およびステロイド5α-レダクターゼと比較したこれら化合物の阻害活性、アンドロゲン受容体への結合およびトランス活性化、および二つのヒト前立腺癌細胞株LNCaPおよびLAPC-4に対する抗増殖効果が研究された。化合物5および6の薬物動態がマウスで評価され、そしてヒトLAPC-4前立腺癌に対するインビボ抗腫瘍活性もマウスで評価された。我々の知る限り、化合物15を除いてここに記載したすべての化合物は新規化合物を代表する(・・・略・・・)。」(段落【0024】?【0026】)
(1-iii)「【0033】
投与の特定の投与量および頻度は、特定の活性化合物の活性度、その代謝安定性および作用の長さ、排泄速度、投与モードおよび時間、対象の年令、体重、健康状態、性別、食事等、および前立腺癌または肥大の重篤度を含む種々のファクターに依存して変動し得る。」(段落【0033】)
(1-iv)「【実施例】
【0037】
生物学的研究
CYP17阻害研究:CYP17阻害アッセイは我々の以前報告した操作に従って実施される。そこでは酵素源としてインタクトなチトクロームP450c17-発現E.coliが使用される(・・・略・・・)。化合物のIC50値は投与量応答曲線から決定され、そして表1にリストされている。ケトコナゾール、アビラテロン(臨床試験中のCYP17阻害剤(前出O’Donnell)チャート1)、および3β-ヒドロキシ-17-(1H-イミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(VN/85-1,化合物16,チャート1,最も強力なCYP17阻害剤だと信じられている(Njar et al,Current Pharm.Design,1999,5,163-180))のIC_(50)値も比較のため同じアッセイシステムにおいて決定される。新しい17-複素環化合物のいくつかはIC_(50)値300-915nMでCYP17の強力な阻害を示す。ベンゾイミダゾール5および6は、ベンゾトリアゾール9および10よりも4ないし6倍強力である。この結果は17-複素環の電子的性格が阻害活性に影響することを示唆する。さらに△^(5)-3β-オール官能を有する化合物5および9は、△^(4)-3-オン官能を有する対応する類縁体6および10よりもそれぞれ少なくとも3倍強力である。これらの結果は簡単な17-アゾールCYP17阻害剤についての我々の以前の結果と対照的である。それらの阻害剤シリーズにおいては、△^(5)-3β-オールアゾールと対応する△^(4)-3-オンアゾールの間には阻害強度に目立った差はない(・・・略・・・)。可能性ある説明は、よりバルキーなベンゾアゾールは酵素の活性部位に異なって結合し、3位における部分の相互作用が結合に対して重要になって来ることである。一部のP450チトクロームのヘム成分に対する基質または阻害リガンドの結合はUV-vis差分光分析(・・・略・・・)を用いて検討される。このアプローチは我々が以前発表した標準的操作に従って拡張される(・・・略・・・)。化合物5および9は各自タイプII差スペクトルを誘発し、低スピン鉄の生成を伴なってステロイドの窒素(ベンゾイミダゾールまたはベンゾトリアゾールのN-3)のCYP17のヘムへの配置を指示する。5および9(426nM)との酵素コンプレックスのソーレー最大のためのピーク位置はCYPシステムに対する窒素リガンドの結合についての利用できるデータと一致し、そして我々の他の17-アゾリルCYP17阻害剤でのデータとも一致する(・・・略・・・)。ベンゾアゾール窒素とCYP17のヘム鉄との相互作用は、5および9の結合親和力が17-イミダゾール基を有するより小さい立体を要求する16と同じであるため17位におけるバルクトラランスを示唆する。」(段落【0037】)
(1-iv)「【0048】
SCIDマウスに生育させたLAPC4キセノグラフトに対する5および6の効果:印象的な多数のインビトロ生物学活性、すなわちCYP17の強力な阻害、強い抗増殖前立腺癌細胞活性および抗アンドロゲン活性を基にして、5および6がアンドロゲン依存性LAPC4ヒト前立腺癌キセノグラフトモデルにおいてインビボ抗腫瘍有効性研究のために選択される。
【0049】
第1の実験において、SCIDマウスのよく確立されたLAPC4前立腺癌腫瘍の生育に対する化合物5および6の効果が決定され、そして参照処置として去勢が使用された。腫瘍保有マウスは5または6の2通りの投与(0.15mmol/kg 1日1回または0.15mmol/kg 1日2回)を受けるように割当てられた(n=5/グループ)。腫瘍体積が毎週測定され、そしてビヒクルを受けているか去勢マウスの対照と比較される。
【0050】
去勢は対照と比較して最終腫瘍体積の55%減少へ導く(図6)。5の0.15mmol/kg 1日1回および0.15mmol/kg 1日2回は、ビヒクル処理対照動物の腫瘍に比較してそれぞれ平均最終腫瘍体積の41%および86.5%減少をもたらした(図6)。5で処理したマウスのすぐれた腫瘍発育阻害とは対照的に、化合物6で処理したマウスは低投与量において効果がないか、または対照と比較して腫瘍発育の刺激を示す(図6)。この化合物はインビボにおいてPCA細胞生育の阻害において非常に有効であり、そして高度に抗アンドロゲン性であったから(図1を見よ)、化合物6がインビボにおいてLAPCA腫瘍細胞の発育を阻害することができないことは特に失望的である。5および6のインビボ抗腫瘍有効性の高度に有意な不均衡な二つの化合物の薬物動態学的性質の差に安易に帰せしめることはできない。これら二つの密接に関連した化合物のインビボ抗腫瘍有効性の劇的な差に含まれる理由は現時点では未知である。しかしながら、6が動物においてアンドロゲン受容体の強力なアゴニストであり得る代謝産物へ変換され、そのため腫瘍生育刺激を生ぜしめることへ帰せしめることができる。この研究の間、すべてのマウスは週1回体重測定した。すべての処理グループの体重は僅かに増加し、そして対照グループで観察されたのと類似であった。すべての動物は健康に見え、そして有害効果は観察されず、化合物は有意な毒性を持たないことを示唆する。
【0051】
第2のインビボ実験は、SCIDマウスに生育しているLAPC4前立腺癌細胞の成育を阻害する5および以前強力なCYP17阻害剤/抗アンドロゲンと同定された16(・・・略・・・)の能力をテストし、そして去勢が参照処置として使用される。この実験において処理はマウスがホルモン依存性LAPC4細胞を皮下接種され、そして去勢されるかまたは5または16を1日2回皮下注射された日から始まる。図7は治療21週間の間の腫瘍の出現およびサイズに対する種々の処置の効果を示す。
【0052】
すべての他のグループは、触知可能なそして測定可能な腫瘍へ11週に発達した16で処置したグループ(0.5mmol/kg 1日2回)を除いて、治療の10週において触知可能で測定可能な腫瘍へ発展する。対照マウス中の総腫瘍体積は、大きい腫瘍のため、マウスが犠牲にされる時処置の14週に亘って8倍増加する。このように他のグループの腫瘍体積は処置の14週において対照グループに匹敵する。去勢したマウスの腫瘍体積はたった4.1倍(対照に比較して約50%減少)増加し、16で処置したマウスで観察された3.7倍増加(対照に比較して53.8%減少)に似ている。5で処置したマウスにおいては(0.15mmol/kg 1日2回)、腫瘍体積はたった0.5倍だけ増加し、これは対照マウスに対して93.8%減少を表す(P=0.00065)。16週において、化合物5で処置した動物の平均腫瘍体積は、測定し得る腫瘍が出現する時の10週におけるそれらの平均腫瘍体積よりも低い(殆ど無視し得るかまたは静止している)ことが見られる。さらに、5は、それぞれP=0.005および0.05において16または去勢に比較して腫瘍に対して有意な阻害効果を生ぜしめる。一般に、対照、去勢および化合物16処置マウスの腫瘍は急速に成長するが、他方5処置マウスの腫瘍は非常に遅く、そして二段階で成長する(図7)。化合物5は最も効果的な剤であり、そして腫瘍成長の阻害において去勢よりも有意にもっと効果的である。16はCYP17阻害において5より6倍強力であるが、5はすぐれたインビボ抗腫瘍活性を発揮することは興味深い。この現象に責任ある理由は現時点では未知であるが、しかし一部は5のより良い薬物動態学性質であろう。
【0053】
体眠している化合物5処理前立腺癌細胞(図7,16週を見よ)が5のもっと低い投与量で生育できるかどうかを決定するため、その投与量を16?19週から0.15mmol/kg 週3回(投与量の78.6%低減)へ減らした。化合物の減らした投与量でのこの処置の期間、腫瘍は発育を回復した(図7)。この3週間の間の後、通常の投与量での薬物処置へ復帰し、そして腫瘍発育は遅くなり、プラトーへ達する。これらのデータはこの処理の細胞静止的性格を示唆し、そして抗腫瘍効果を達成するために連続的投与の必要性を推論させる。
【0054】
実験の終りにおいて、腫瘍および5-処置マウス中の5のレベルが決定される。最終投与1時間後の腫瘍、睾丸、および肝臓内のHPLCによる5のレベル(図7中の挿入部分)が決定される。興味あることに、代謝産物の少量(5に対して約15%)が肝臓組織内にのみ検出される。この代謝産物は血漿中に観察された代謝産物(前を見よ)と同じ保留時間を持つ。5の39.0±8.4μg/mg組織の最高濃度が皮下腫瘍において計測される。肝臓および睾丸中の濃度はより低いがしかし検出可能である。腫瘍中の5のレベルは血漿中で測定されたレベルよりも有意に高い。これは実験期間を通して化合物の蓄積の結果であり得る。このように5による腫瘍成長の阻害は一部は腫瘍キセノグラフト中のより高い濃度が前立腺癌細胞に細胞毒性/細胞静止効果を発揮するものと説明することができる。前立腺癌細胞のケトコナゾール(適度なCYP17阻害剤)の可能な直接の細胞毒効果を示唆する証拠があることを言及しなければならない。加えて、睾丸中の5の蓄積は動物内のテストステロン合成の阻害を可能となし得る。」(段落【0048】?【0054】)
(1-v)「【0062】
3β-アセトキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(4):
乾燥ベンゾニトリル(10ml)中の3β-アセトキシ-17-(1H-イミダゾール-1-イル)-16-ホルミルアンドロスタ-5,16-ジエン(3,2.04g,4.45mmol)の溶液を活性炭上の10%パラジウム(1.02g,3の50重量%)の存在下5時間還流した。室温へ冷却後、触媒をセライトパッドで濾過して除いた。濾液を蒸発し、残渣をFCC(石油エーテル/EtOA/Et_(3)N=7.5:3:0.5)によって精製した。純粋な化合物4を1.41g(73.8%)を与えた。
・・・略・・・
【0064】
3β-ヒドロキシ-17-(1H-イミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,6-ジエン(5):アセテート4(1.3g,3.02mmol)を不活性Ar雰囲気下メタノール(20ml)に溶かし、生成した溶液を10%メタノール性KOH(8ml)で処理した。混合物を室温で1.5時間かきまぜ,減圧下約40℃で10ml体積へ濃縮した。この溶液へ氷水(300ml)を注ぎ、生成する白色沈澱を濾過し、水洗し、乾燥した。EtOAc/MeOHからの結晶化は5(1.10g,94%)を与えた。」(段落【0062】?【0064】)
(1-vi)「【0098】
腫瘍、肝臓および睾丸中の5(VN/124-1)レベルの測定:VN/124-1処置グループ中の動物を最後のVN/124-1投与1時間後に犠牲にし、そして腫瘍、肝臓および睾丸を収穫し、液体窒素中にスナップ凍結する。組織サンプルはリン酸バッファー(pH=7.4,0.5ml/mg組織)中にホモジナイズする。ホモジテイズした組織(200μl)を内部標準VN/85-1(100μg/mlストック溶液から10μl)でスパイクし、次にボルテックスミキサーに3分間かけることによりEt_(2)O(2×2ml)で抽出し、次いで3000gで5分間遠心する。Et_(2)O抽出液をゆるやかな空気流の下で蒸発乾固する。残渣をHPLC移動相100μl中に再構成し、0.2μmテフロンフィルターで濾過し、次に上に記載したようにHPLCにより分析される。
・・・略・・・
【0101】
表1:新規17-ヘテロアリール化合物のCYP17および5α-レダクターゼ活性およびアンドロゲン受容体結合
【0102】
【表1】


【0103】
a 我々は以前VN/81-1の合成を報告した(Njar et al,前出)。アビラテロンはPotterら(・・・略・・・)によって記載されたように合成した。
b IC_(50)は酵素活性を50%阻害するのに要する阻害剤の濃度,CYP17については各自2系列、5α-レダクターゼおよびAR結合については3系列。
c IC_(50)はアンドロゲン受容体から〔^(3)H〕R1881を50%移動させるのに要する化合物の濃度。
d タイプ1酵素を発現する前立腺腫瘍細胞株(DV-145);基質:(5nM〔1β^(3)H〕アンドロステンジオン。
e BPH組織からの酵素(タイプ2酵素),タンパク125μg,基質:20nM〔1β,2β-^(3)H〕テストステロン。
f ni=10μMまで阻害なし、-=測定せず
【0104】
表2:5(50および100mg/kg)および6(50mg/kg)の皮下投与後の薬物動態
【0105】
【表2】


【0106】
a 値は平均±S.E.で表現される。n=5」(段落【0098】?【0106】)

[引用例2]
(2-i)「要約
我々は以前、当社の新規化合物の3β-ヒドロキシ-17-(1H-ベンゾイミダゾール-1-イル)アンドロスタ5,16ジエン(VN/124-1)は、強力なαヒドロキシラーゼ/ 17,20 - リアーゼ(CYP17)阻害剤/抗アンドロゲンであること、そして、重症複合免疫不全マウスにおけるヒト前立腺癌LAPC4腫瘍異種移植片の形成及び増殖を強力に阻害することを報告した。また、本研究では、VN/124-1及びその他の新規なCYP17阻害剤は、インビトロおよびインビボでアンドロゲン受容体(AR)タンパク質の発現のダウンレギュレーションを引き起こすことを報告している。この作用機序は、その抗腫瘍効果に寄与していると考えられる。我々は、VN/124-1のin vivo抗腫瘍効果を、去勢や、臨床的に使用されている抗アンドロゲンであるカソデックスのものと比較し、VN/124-1は、LAPC4異種移植モデルにおける去勢よりも強力であることを示している。また、VN/124-1(0.13mmol/kg,一日二回)での処置は、LAPC4腫瘍の形成を防止するのに非常に有効(対照群の2410.28mmに対し6.94mm)でした。 そして、VN/124-1(0.13mmol/kg,一日二回)およびVN/124-1(0.13mmol/kg,一日二回)+去勢は、それぞれ26.55%と60.67%で、LAPC4腫瘍異種移植片の退縮を誘導した。カソデックス(0.13mmol/kg,一日二回)の処置または去勢による処置は、対照と比較して有意な腫瘍抑制を引き起こした。さらに、VN/124-1での処置は、ARタンパク質発現の有意なアップレギュレーションを引き起こし、カソデックスまたは去勢による処理とは対照的に、ARタンパク質発現のダウンレギュレーションをもたらした。その結果は、VN/124-1の作用は、いくつかのメカニズムによる作用(CYP17阻害、競合阻害、および、ARのダウンレギュレーション)であることを示している。これらの作用は、LAPC4腫瘍の形成の抑制に寄与し、確立された腫瘍の成長の退行を引き起こす。 VN/124-1は、LAPC4異種移植片モデルにおける去勢よりも有効であり、前立腺癌の治療の可能性を有していることを示唆している。」(2348頁左欄のAbstract)
(2-ii)「


Figure1. Chemical Structure of VN/124-1」(2350頁右下のFigure1)
(2-iii)「


Figure4. オスのSCIDマウスにおけるLAPC4ヒト前立腺異種移植片の予防および成長についてのVN/124-1、カソデックス、及び去勢の効果。 LAPC4ヒト前立腺腫瘍を有するマウスはグループ化され、治療は、「予防」グループ以外の細胞接種後63日目に開始しました。このグループにおいて、治療は、細胞接種の日にVN-124-1で始まりました。カソデックスおよびVN/124-1の両方での治療は、一日二回0.13 mmol/kgの用量で投与しました。対照マウス(媒体で処置したマウス)は、巨大な腫瘍のために86日後に屠殺し、カソデックスで処理したマウスは、十分な投薬後に屠殺した。全ての処理群の腫瘍は、対照と有意に異なっていた。なぜなら、予防グループは全ての処置とは有意に異なっていた。 * VN124-1単独/およびVN/124-1+去勢は、多変数分析を行うと、去勢やカソデックスとは有意に異なっていた。」(2354頁上のFigure4)
(2-iv)「インビボでの抗腫瘍研究(LAPC4前立腺癌異種移植片)
・・・略・・・。・・購入した4-6週齢のオスの重症複合免疫不全(SCID)マウスは、光や湿度の制御された条件下での病原体のない環境で飼育し、食物と水を自由にさせました。腫瘍は、前述したように、各マウスに皮下(皮下)を接種したLAPC4細胞から開発されました。LAPC4細胞は、・・・略・・・増殖させた。・・・略・・・細胞を遠心分離により回収し、・・・・。腫瘍体積は、以下の式によって算出した:・・・略・・・。治療の開始時にグループの中の腫瘍体積の統計学的に有意な差はなく、マウスを治療するための5つのグループ(グループ当たり5匹のマウス)に割り当てた。 5つのグループは以下の通りであった:対照、去勢、カソデックス(0.13mmol/kg/,一日二回)、VN/124-1(0.13mmol/kg,一日二回)、およびVN/124-1(0.13mmol/kg,一日二回)+去勢。化合物(0.3%ヒドロキシプロピルセルロース懸濁液)を午前9時と午後5時 の一日二回皮下投与した。マウスはメトキシフル麻酔下で去勢された。対照マウスと去勢マウスは、媒体(ヒドロキシプロピルセルロース)のみで処理した。治療期間の終わりに、・・麻酔下で屠殺し、腫瘍を切除し、秤量し、-80℃で保存し。肝臓と腎臓も回収し、任意の異常について検討した。動物はまた、一般的な健康状態と治療のために可能な毒性の徴候をモニターした。」(2350頁右欄16行?2351頁左欄16行)


(2)引用例に記載された発明
引用例1には、3β-ヒドロキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(5、コード名VN/124-1)が前立腺癌瘍の減少などに有効であること、即ち、医薬(医薬組成物)として有効であることが示されている(摘示(1-i),(1-ii)、(1-iv),(1-vi)参照)から、次の発明(以下、「引用例1発明」とも言う。)が開示されていると言える。

<引用例1発明>
「3β-ヒドロキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(5、コード名VN/124-1)を含む医薬組成物。」

(3)対比、判断
本願発明と引用例1発明を対比する。

引用例1発明の「3β-ヒドロキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(5、コード名VN/124-1)」は、M5で示される化学構造(摘示(1-ii)参照)も勘案すると、本願発明の「化合物(1)」そのものであるから、両発明は、
「化合物(1)を含む医薬組成物」で一致し、
次の相違点A,Bで、一応相違する。
<相違点>
A.本願発明では、化合物(1)を「650乃至3500mg含む」と特定されているのに対し、引用例1発明では、そのような特定を有していない点
B.本願発明では、化合物(1)は「結晶の形態」であると特定されているのに対し、引用例1発明では、そのような特定を有していない点

そこで、これらの相違点について検討する。
(A)相違点Aについて
引用例2には、3β-hydroxy-17-(1H-benzimidazole-1-yl)androsta-5,16-diene (VN/124-1)、即ち、化合物(1)について「0.13mmol/kg」(摘示(2-i)?(2-iv)参照)用いることが記載されているところ、化合物(1)の分子量が388.54であって、0.13mmolが50.3mgに相当するので、「50.3mg/kg」で投与することが記載されているといえる。
また、引用例1にも、化合物(1)の用量について「50mg/kg 1日2回」(摘示(1-i)参照)や「0.15mmol/kg 1日2回」(摘示(1-iv)参照)との記載もある。後者については、前述同様の換算をすると、58.3mg/kg 1日2回で投与することが記載されているといえる。
そうすると、化合物(1)の用量として、50mg/kg 1日2回程度の量を用いることは行われており、また、引用例1には、「投与の特定の投与量および頻度は、特定の活性化合物の活性度、その代謝安定性および作用の長さ、排泄速度、投与モードおよび時間、対象の年令、体重、健康状態、性別、食事等、および前立腺癌または肥大の重篤度を含む種々のファクターに依存して変動し得る。」(摘示(1-iii)参照)とされていることにも鑑みれば、相違点Aに係る発明特定事項「650乃至3500mg含む」は、適宜採用し得る範囲を包含するものと言え、少なくとも当業者であれば容易に想到し得たものと認められる。

なお、審判請求人は、本願発明について平成27年1月4日提出の意見書において「しかし、本願発明は明細書段落[0219]乃至[0222]及び図8に記載されています様に、化合物(1)(化合物5と記載されている。)はアンドロゲン受容体の変異型(PC3?AR)と野生型(LNCaP)に効果的に結合しております。
また化合物(1)は効果的に結合しCYP17活性及び5α?レダクターゼを阻害しております。
これら化合物(1)によるアンドロゲン誘発タンパク質の阻害は抗アンドロゲンと癌治療に有効です。しかも、投与量を650乃至3500mgとされることにより表13に示されるごとく高PSA反応を有し効果を有することが分かります。
これらのことから、本願補正後請求項1に記載された発明は、引用文献1乃至2に記載された発明より有利な効果を有しており進歩性があると思料致します。」と主張している。
しかしながら、化合物(1)がアンドロゲン受容体の変異型(PC3?AR)と野生型(LNCaP)に効果的に結合することや、CYP17活性及び5α?レダクターゼを阻害することは、引用例1にも記載されている(特に、摘示(1-vi)の【表1】を参照。化合物(1)である「Compound5」の「CYP17 IC_(50)」、「5α-reductase」の「IC_(50)」等が記載されている。なお、「LNCaPPC3-AR」という記載には、該記載に対応する細胞等が存在しないことなども勘案すると、「LNCaP」と「PC3-AR」の間のスペースが抜けている誤記があると認められる。)ので、本願発明が引用例1発明と比べて当業者に予測できない格別顕著な効果を奏しているとはいえないから、主張は、認められない。

(B)相違点Bについて
引用例1には、アセテート4、即ち3β-アセトキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(4)を10%メタノール性KOHで処理して白色沈殿を得て、「EtOAc/MeOHからの結晶化は5(1.10g,94%)を与えた」と記載されている(摘示(1-v)参照)。
ここで、5(即ち化合物5)は、摘示(1-i)の「3β-ヒドロキシ-17-(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(5、コード名VN/124-1)」、即ち本願発明で用いる化合物(1)である。
なお、引用例1の段落【0064】(摘示(1-v))のタイトルは、「3β-ヒドロキシ-17-(1H-イミダゾール-1-イル)アンドロスタ-5,16-ジエン(5)」とされているが、10%メタノール性KOHでの処理はアセトキシ基のヒドロキシ基への加水分解処理であることは技術常識により明らかであることをも勘案すると、そのタイトルの「(1H-イミダゾール-1-イル)」が「(1H-ベンズイミダゾール-1-イル)」の誤記であることは明らかであると言えるし、念のため引用例1の原文である国際公開2006-093993号の対応箇所(第27頁下から5行目)を検討すると、「(1H-benzimidazol-1-yl)」と記載されていることからも、誤記であることが裏付けられる。
そうすると、化合物(1)は結晶の形態を採り得るのであるから、医薬組成物として用いる際に結晶の形態で用いることは、適宜乃至容易になし得たことと言う他無い。

そして、相違点A,Bに係る発明特定事項を併せ採用することに格別の創意工夫が必要であったとは認められず、また、併せ採用したことにより格別に予想外の作用効果を奏していることは、本願明細書に何ら記載されていない。そもそも、本願明細書において、作成された医薬組成物や、医薬組成物を用いた実施例を検討しても、単に、化合物(1)の使用が記載されているに止まり、結晶の形態であるのか、非晶質の形態であるのかすら不明である。また、本願明細書の図8は、引用例1の表1(摘示(1-vi)参照)と同じデータである。

よって、本願発明は、引用例1,2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである。

6.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
それ故、他の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-23 
結審通知日 2016-09-26 
審決日 2016-10-07 
出願番号 特願2012-523949(P2012-523949)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
P 1 8・ 57- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安藤 公祐  
特許庁審判長 蔵野 雅昭
特許庁審判官 穴吹 智子
横山 敏志
発明の名称 前立腺癌の処置  
代理人 清原 義博  
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