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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1325294
審判番号 不服2016-3432  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-04 
確定日 2017-02-16 
事件の表示 特願2013-197399「電子機器、電子機器の制御方法、および電子機器の制御プログラム」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 9日出願公開、特開2015- 64680〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明

本願は、平成25年9月24日の出願であって、平成27年5月29日付けで拒絶理由が通知され、同年8月3日付けで意見書が提出されると共に手続補正がなされ、同年8月27日付けで拒絶理由が通知され、同年11月2日付けで意見書が提出されたが、同年11月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年3月4日に拒絶査定不服の審判が請求され、同年9月26日付けで当審において、拒絶理由(以下、「当審の拒絶理由」という。)が通知され、同年11月25日付けで意見書が提出されたものである。
そして、本願の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年8月3日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。

「【請求項1】
接触を検出する接触検出部と、
加速度を検出する加速度検出部と、
画像を表示する表示部と、
前記加速度検出部が第1のタップに起因する所定の加速度を検出してから所定の時間内に、前記接触検出部が第2のタッチによる接触を検出したら、当該検出された接触に基づく処理を行うように制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記所定の加速度を検出した後に、前記接触検出部による接触の検出を開始させる電子機器。」

2.引用例等

当審の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された、特開2013-44778号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

a)「【0006】
ところで、スマートフォンと呼ばれる多機能型携帯電話をはじめ多くの携帯端末では、操作入力デバイスにタッチパネルが搭載され、物理的に操作するボタンとしては電源をオンオフする電源ボタンのみとなっており、こうした携帯端末において省電力状態になるとタッチパネル機能が無効となる為にタッチ検出することが出来なくなる。そこで、通常の動作状態に復帰させるには、電源ボタンを押下する必要があるが、電源ボタンは誤操作防止の観点から操作し難い位置に配設されることが多く、このため省電力状態からの復帰操作が行い難いという弊害がある。
【0007】
また、図6に図示したように、メール着信が有ると、LCD画面表示(バックライト点灯)し、タッチパネル機能を有効にしてから通常の動作状態に遷移する為、例えば携帯端末がユーザのポケットやバッグの中にある場合にはユーザが見ていないにもかかわらずLCD画面表示(バックライト点灯)され、これにより無駄な電力を消費してしまうという弊害も生じる。つまり、以上の内容を言い換えると、無駄な電力を消費することなく極めて簡単な操作で省電力状態から通常の動作状態に復帰させることが出来ない、という問題がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、無駄な電力を消費することなく極めて簡単な操作で省電力状態から通常の動作状態に復帰させることができる状態制御装置、状態制御方法およびプログラムを提供することを目的としている。」(【0006】?【0008】の記載。)(下線は、当審で特に注目した箇所に付与した。以下、同様。)

b)「【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
(1)外観
図1は、第1実施形態による状態制御装置を備えた携帯端末100の外観を示す外観図である。この図に示す携帯端末100は、略長方形の板状を為した筐体構造を有し、その上端には電源をオンオフする電源ボタン部11が配設される。操作し難い筐体上端に電源ボタン部11を設けることによりユーザの誤操作を防止する。携帯端末100の筐体主面30には、画面表示するLCD部12と、当該LCD部12上で為されるタッチ操作を検出するタッチパネル部13とが設けられる。携帯端末100の筐体下部には、筐体の揺れ(動き)を検出する加速度センサ部14が内蔵される。
【0015】
(2)構成
図2は、第1実施形態による状態制御装置の構成を示すブロック図である。携帯端末100に搭載される状態制御装置は、上述した電源ボタン部11、LCD部12、タッチパネル部13、加速度センサ部14および制御部21から構成される。制御部21は、後述する状態制御処理のプログラムを記憶するメモリ23と、このメモリ23に記憶される状態制御処理のプログラムを実行するCPU22とを備える。制御部21が実行する状態制御処理の動作については追って述べる。
【0016】
(3)動作
次に、図3を参照して上記構成による状態制御装置の制御部21が実行する状態制御処理の動作を説明する。無操作状態が一定時間経過して、LCD部12(バックライトを含む)をオフすると共に、タッチパネル部13の機能を無効にする省電力状態(ステップSA1)になると、ステップSA2に進み、加速度センサ部14の機能を有効にする。続いて、ステップSA3では、機能が有効となった加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出する。例えばユーザがバッグの中から携帯端末100を取り出し、その際に生じる揺れ(動き)を検出したとする。そうすると、上記ステップSA3の判断結果が「YES」になり、ステップSA4に進み、タッチパネル部13の機能を有効にする。
【0017】
そして、タッチパネル部13の機能を有効にすると、ステップSA5に進み、タッチパネル部13がタッチ操作を検出したか否かを判断する。タッチ操作を検出した場合には、判断結果が「YES」になり、ステップSA6に進み、LCD部12(バックライトを含む)をオン設定して画面表示する通常の動作状態へ遷移させる。
【0018】
一方、タッチ操作を検出しない場合には、上記ステップSA5の判断結果が「NO」になり、ステップSA7に進む。ステップSA7では、上記ステップSA5のタッチ不検出から5秒経過したか否かを判断する。5秒経過していなければ、判断結果は「NO」になり、上記ステップSA5に処理を戻す。すなわち、本実施形態では、タッチパネル部13の機能を有効にした時点から「5秒間」だけタッチ検出を行う。なお、このタッチ検出期間は、「5秒間」に限定されず、ユーザが任意に秒数設定したり、予め設定される複数の期間の何れかをユーザが選択したりする態様としても構わない。
【0019】
そして、タッチ検出期間中にタッチ操作が検出されなければ、上記ステップSA7の判断結果は「YES」になり、ステップSA8に進み、タッチパネル部13の機能を無効にした後、上述のステップSA3に処理を戻して携帯端末100の揺れ(動き)を検出する動作に移行する。
【0020】
このように、第1実施形態では、省電力状態で機能が有効化された加速度センサ部14が、携帯端末100の揺れ(動き)を検出すると、タッチパネル部13の機能を有効にし、有効化されたタッチパネル部13がタッチ操作を検出すると、LCD部12(バックライトを含む)をオン設定して画面表示する通常の動作状態へ遷移させるので、従来のように、誤操作防止の観点から操作し難い位置に配設される電源ボタンを押下する必要がなくなり、極めて簡単な操作で省電力状態から通常の動作状態に復帰させることが可能になる。」(【0014】?【0020】の記載。)

c)「【0029】
また、上述した実施形態では、省電力状態で加速度センサ部14により携帯端末100の筐体の揺れ(動き)が検出された場合やメール着信した場合に、LCD部12のバックライトを点灯させず、タッチパネル部13の機能だけを有効にするが、これに限らず、例えばLCD部12の下側にタッチキーやタッチセンサを有する電子機器、具体的にはタッチパネルが画面の表示領域を超えて敷設され、それによりタッチキーやタッチセンサが構成される電子機器では、タッチキーやタッチセンサにアサインされた機能(例えば音楽再生の停止、再生、早送り、巻き戻し)が機能するようにしてもよい為、当該タッチキーやタッチセンサのバックライトを所定時間点灯させたり点滅動作させる態様としても構わない。なお、この場合、LCD部12のバックライトについては必ずしも点灯させる必要は無い。」(【0029】の記載。)

これら引用例1の記載及び関連する図面から、引用例1には第1実施形態による状態制御装置を備えた携帯端末について、以下の発明(以下、「引用例1記載の発明」という。)が記載されている。
「上端には電源をオンオフする電源ボタン部11が配設され、筐体主面30には、画面表示するLCD部12と、当該LCD部12上で為されるタッチ操作を検出するタッチパネル部13とが設けられ、筐体下部には、筐体の揺れ(動き)を検出する加速度センサ部14が内蔵される携帯端末100において、
携帯端末100に搭載される状態制御装置は、前記電源ボタン部11、LCD部12、タッチパネル部13、加速度センサ部14および制御部21から構成され、
状態制御装置の制御部21が実行する状態制御処理の動作は、
無操作状態が一定時間経過して、LCD部12(バックライトを含む)をオフすると共に、タッチパネル部13の機能を無効にする省電力状態になると、加速度センサ部14の機能を有効にし、
続いて、加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出し、
揺れ(動き)を検出したとすると、タッチパネル部13の機能を有効にし、
タッチパネル部13の機能を有効にした時点からタッチ検出期間だけタッチ検出を行い、タッチパネル部13がタッチ操作を検出したか否かを判断し、
タッチ操作を検出した場合には、LCD部12(バックライトを含む)をオン設定して画面表示する通常の動作状態へ遷移させ、
一方、前記タッチ検出期間中にタッチ操作が検出されなければ、タッチパネル部13の機能を無効にした後、携帯端末100の揺れ(動き)を検出する動作に移行するものである
携帯端末100。」

当審の拒絶理由に引用された、本願の出願日前に頒布された、特開2011-233142号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。

d)「【請求項1】
タッチスクリーンパネルを持つ装置であって、
動きまたは振動を感知するタッチイベント検出部と、
前記タッチイベント検出部からの入力に少なくとも部分的に基づいて、前記タッチスクリーンパネルのタッチ感知機能をアクティブ化または非アクティブ化する処理回路と
を備え、
前記処理回路は、前記タッチイベント検出部からの前記入力に基づき、前記タッチスクリーンパネルとユーザとの間にやり取りがあるか否かを判断する装置。
【請求項2】
前記処理回路はさらに、前記タッチイベント検出部からの前記入力を処理して、1以上のユーザのタップと他の振動および動きとを区別することによって、前記タッチスクリーンパネルとユーザとの間にやり取りがあるか否かを判断する請求項1に記載の装置。」(【請求項1】?【請求項2】の記載。)

e)「【0006】
図1は、一部の実施形態に係るタッチスクリーンパネル102を備える装置100を示す図である。タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能は、タッチスクリーンパネル102とユーザとのやり取りが検出されると、アクティブ化されるとしてよい。タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能は、ユーザとのやり取りが検出されない場合には、非アクティブ化されるとしてよい。一部の実施形態によると、装置100は、動きまたは振動を感知するタッチイベント検出部112と、タッチイベント検出部112からの入力113に少なくとも部分的に基づいてタッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化または非アクティブ化する処理回路124とを備える。タッチイベント検出部112からの入力113は、ユーザとタッチスクリーンパネル102との間にやり取りがあるか否かを判断するべく処理回路124によって参照される。ユーザとのやり取りは、タッチイベントと呼ぶ。
【0007】
上記の実施形態によると、処理回路124は、例えば、所定時間にわたってユーザとのやり取りが検出されない場合、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能を非アクティブ化するとしてよい。処理回路124は、タッチイベント検出部112からの入力113がユーザとタッチスクリーンパネル102との間にやり取りがある旨を示すと、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化または再アクティブ化するとしてよい。
【0008】
タッチスクリーンパネル102は、コンテンツおよびその他の情報を表示する表示部101を有するとしてよい。タッチスクリーンパネル102の表示部101は、能動型の表示部で、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能がアクティブであるか否かに関わらず、コンテンツおよびその他の情報を表示可能であるとしてよい。一部の実施形態によると、表示部101が非アクティブである場合(つまり、省電力モードまたはスリープモードである場合)、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能は非アクティブであるとしてよい。表示部101は、画像、アイコン、文字等を表示する高精細ディスプレイまたはグラフィカルディスプレイであってよい。
【0009】
実施形態によると、ユーザがタッチスクリーンパネル102にタッチしていないか、または、タッチスクリーンパネル102とやり取りしていない場合、振動または動きは検出されず、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能は非アクティブ化されるとしてよい。ユーザがタッチスクリーンパネル102にタッチしているか、または、タッチスクリーンパネル102とやり取りしている場合、振動および/または動きが検出され、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能がアクティブ化されるとしてよい。ユーザとのやり取りが無いと判断されるとタッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能は非アクティブになるので、装置100の消費電力が大幅に削減され得る。以下でより詳細に説明するが、処理回路124は、入力113を処理して1以上のアルゴリズムを実行し、ユーザとのやり取りがあるか否かを判断するとしてよい。」(【0006】?【0009】の記載。)

f)「【0011】
図1に示すように、装置100は、タッチサブシステム104と、格納サブシステム106と、演算サブシステム108とを備えるとしてよい。無線方式の実施形態の場合、装置100は、無線通信装置であって、無線ネットワーク内で通信する、または、その他の無線装置と通信する無線送受信器110を備えるとしてよい。演算サブシステム108は、装置100の動作を制御し、処理回路124およびメモリ126等を有するとしてよい。タッチサブシステム104は、タッチスクリーンパネル102の動作を制御し、タッチスクリーンパネル102から受け取ったユーザ入力を演算サブシステム108に供給するとしてよい。格納サブシステム106は、装置100の内部に情報を格納するべく設けられているとしてよい。これらのサブシステムの動作および構成要素を、以下でより詳細に説明する。
【0012】
一部の実施形態によると、処理回路124は、タッチイベント検出部112からの入力113を処理して、一連のユーザタップを含むユーザタップと、タッチイベント検出部112が感知するほかの振動および動きとを区別することによって、ユーザとタッチスクリーンパネル102とのやり取りがあるか否かを判断するとしてよい。このような実施形態によると、タッチイベント検出部112からの入力113が変動がほとんどない一定の信号または略一定の信号である場合、処理回路124は、装置100が静止しているか、または、使用されていない旨を入力113が示すものと判断するとしてよい。このため、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化する必要はない。タッチイベント検出部112からの入力113は、長時間にわたって比較的大きな変化が見られる場合、装置が持ち運ばれているのでタッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化する必要はない旨を示すとしてよい。
【0013】
一部の実施形態によると、処理回路124は、タッチイベント検出部112から受信する入力113が比較的短時間の間に単一指向ベクトルで比較的小さく変化するか否かを判断することによって、ユーザタップとその他の振動および動きとを区別するとしてよい。このような実施形態によると、ユーザタップまたは一連のユーザタップが検出されると、タッチスクリーンパネル102とユーザとの間にやり取りがあるので、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化する旨を示すとしてよい。
【0014】
タッチサブシステム104を備える実施形態では、処理回路124は、タッチイベント検出部112からの入力113に少なくとも部分的に基づいて、タッチサブシステム104をアクティブ化または非アクティブ化することによって、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化または非アクティブ化するとしてよい。タッチサブシステム104は、非アクティブ化されている場合、スリープモードにあるか眠っていると考えられるとしてよい。タッチサブシステム104が非アクティブ化されている場合、処理回路124は、タッチイベント検出部112から受信する入力113を処理して、タッチスクリーンパネル102とユーザとの間にやり取りがあるか否かを判断して、入力の処理の結果、タッチスクリーンパネル102とユーザとの間にやり取りがあると判断するとタッチサブシステム104をアクティブ化するとしてよい。」(【0011】?【0014】の記載。)

g)「【0019】
一部の実施形態によると、タッチイベント検出部112は、1以上の加速度計を有するとしてよい。一部の実施形態によると、タッチイベント検出部112では2軸形式または3軸形式の加速度計を用いるとしてよい。一部の実施形態によると、1以上の加速度計を装置100に設けて、1以上の他の目的に利用するとしてよい。一部の実施形態によると、タッチイベント検出部112は、動きまたは振動を感知するべく、タッチスクリーンパネル102に直接結合されているとしてよい。一部の実施形態によると、タッチスクリーンパネル102に直接結合されているタッチイベント検出部は、加速度計134と共に、動きまたは振動を感知するべく利用されるとしてよい。」(【0019】の記載。)

【請求項1】の「タッチイベント検出部からの入力に・・・部分的に基づいて、前記タッチスクリーンパネルのタッチ感知機能をアクティブ化または非アクティブ化する処理回路」、【請求項2】の「前記処理回路はさらに、・・・1以上のユーザのタップと他の振動および動きとを区別することによって、前記タッチスクリーンパネルとユーザとの間にやり取りがあるか否かを判断する」の記載、【0013】の「処理回路124は、・・・比較的短時間の間に単一指向ベクトルで比較的小さく変化するか・・・ユーザタップとその他の振動および動きとを区別するとしてよい・・・ユーザタップまたは一連のユーザタップが検出されると、タッチスクリーンパネル102とユーザとの間にやり取りがあるので、タッチスクリーンパネル102のタッチ感知機能をアクティブ化する」の記載によれば、ユーザのタップが検出されるとタッチスクリーンパネルのタッチ感知機能をアクティブ化することが示されており、【0019】の「タッチイベント検出部は、加速度計134と共に、動きまたは振動を感知するべく利用されるとしてよい」の記載によれば、加速度計を用いてユーザのタップを検出していることは、明らかである。
そうすると、引用例2には、以下の技術(以下、「引用例2記載の技術」という。)が記載されている。
「加速度計の出力を処理することによりユーザの操作であるユーザタップを検出し、ユーザタップが検出されるとタッチスクリーンパネルを有効とする技術。」

3.対比

本願発明と引用例1記載の発明とを対比する。

あ)引用例1記載の発明の「LCD部12上で為されるタッチ操作を検出するタッチパネル部13」は、本願発明の「接触を検出する接触検出部」に相当し、引用例1記載の発明の「筐体の揺れ(動き)を検出する加速度センサ部14」は、本願発明の「加速度を検出する加速度検出部」に相当し、引用例1記載の発明の「画面表示するLCD部12」は、本願発明の「画像を表示する表示部」に相当する。

い)引用例1記載の発明の「状態制御装置の制御部21」は、「加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出し、」「揺れ(動き)を検出したとすると、タッチパネル部13の機能を有効にし、」「タッチパネル部13の機能を有効にした時点からタッチ検出期間だけタッチ検出を行」うものであるから、引用例1記載の発明の「制御装置21」は、本願発明の「前記加速度検出部が第1のタップに起因する所定の加速度を検出してから所定の時間内に、前記接触検出部が第2のタッチによる接触を検出」する「制御部」と、「前記加速度検出部が加速度を検出してから所定の時間内に、前記接触検出部が第2のタッチによる接触を検出」する「制御部」である点で共通するといえる。

う)引用例1記載の発明の「状態制御装置の制御部21」は、「タッチ操作を検出した場合には、LCD部12(バックライトを含む)をオン設定して画面表示する通常の動作状態へ遷移させ」るものであるから、引用例1記載の発明の「制御部21」は、本願発明の「第2のタッチによる接触を検出したら、当該検出された接触に基づく処理を行うように制御する制御部」に相当する。

え)引用例1記載の発明の「状態制御装置の制御部21」は、「加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出し、」「揺れ(動き)を検出したとすると、タッチパネル部13の機能を有効に」することは、本願発明の「前記制御部は、前記所定の加速度を検出した後に、前記接触検出部による接触の検出を開始させる」ことと、「前記制御部は、前記加速度を検出した後に、前記接触検出部による接触の検出を開始させる」点で共通するといえる。

お)引用例1記載の発明は「携帯端末100」は、「電子機器」ともいい得るものである。

よって、両者は以下の一致点と相違点とを有する。

〈一致点〉
「接触を検出する接触検出部と、
加速度を検出する加速度検出部と、
画像を表示する表示部と、
前記加速度検出部が加速度を検出してから所定の時間内に、前記接触検出部が第2のタッチによる接触を検出したら、当該検出された接触に基づく処理を行うように制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記加速度を検出した後に、前記接触検出部による接触の検出を開始させる電子機器。」である点。

〈相違点〉
接触検出部による接触の検出を開始させる契機となる、加速度検出部により検出される加速度が、本願発明は、「第1のタップに起因する所定の加速度」であるのに対して、引用例1記載の発明は、そのような特定はされていない点。

4.判断

〈相違点〉について検討する。
以下の事情を勘案すると、引用例1記載の発明において、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することは、当業者が容易に推考し得たことというべきである。
(ア)上記摘記事項a)に記載されるように、引用例1記載の発明は、「極めて簡単な操作で省電力状態から通常の動作状態に復帰させること」を目的とし、「加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出し、揺れ(動き)を検出したとすると、タッチパネル部13の機能を有効」とするものである。
そして、引用例1記載の発明において、「加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出し、」「タッチパネル部13の機能を有効」とするにあたり、引用例2記載の発明で採用されているような、加速度計の出力を処理することによりユーザの操作であるユーザタップを検出し、ユーザタップが検出されるとタッチスクリーンパネルを有効とする技術が有用かつ採用可能であることは、当業者には明らかである。また、引用例1記載の発明においてそのような技術を採用することを妨げる事情はない。
(イ)以上のことは、引用例1記載の発明において、「加速度センサ部14」の出力に基づきユーザタップを検出し、ユーザタップが検出されると「タッチパネル部13」の機能を有効とし、上記相違点に係る本願発明の構成を採用することが、当業者にとって容易であったことを意味している。

なお、上記(ア)に関連して、審判請求人は、平成28年11月25日付け意見書において、「しかしながら、ユーザタップ又は一連のユーザのタップとほかの振動および動きとを区別する引用例2の技術があったとしても、引用例1は、ユーザがバッグの中から携帯端末100を取り出した際にのみLCD画面表示又は音楽再生などを行うように制御して誤動作を排除しているものであって、ユーザタップまで適用すると、バッグの中での誤動作になるため、採用を妨げる事情はあります。」と主張している。
しかしながら、引用例1には、「ステップSA3では、機能が有効となった加速度センサ部14の出力に基づき携帯端末100の筐体の揺れ(動き)の有無を検出する。例えばユーザがバッグの中から携帯端末100を取り出し、その際に生じる揺れ(動き)を検出したとする。そうすると、上記ステップSA3の判断結果が「YES」になり、ステップSA4に進み、タッチパネル部13の機能を有効にする。」(【0016】の記載。)と記載されているのみであり、引用例1は、「ユーザがバッグの中から携帯端末100を取り出した際にのみLCD画面表示又は音楽再生などを行うように制御して誤動作を排除」することを目的としたものとは認められない。
そして、上述したように、引用例1記載の発明は、「極めて簡単な操作で省電力状態から通常の動作状態に復帰させること」を目的とするものであり、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用しても、当該目的を達成することは可能であるから、審判請求人の主張する、適用を妨げる事情は認められない。

そして、本願発明1が奏する作用、効果についてみても、引用例1記載の発明に上記引用例2に記載された技術を適用したものから当業者が予想できる程度のものである。

5.むすび

以上のとおり、本願発明1は、引用例1記載の発明、引用例2に記載された技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、本願は、その他の請求項について検討するまでもなく、拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-14 
結審通知日 2016-12-20 
審決日 2017-01-05 
出願番号 特願2013-197399(P2013-197399)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中野 裕二岩崎 志保  
特許庁審判長 和田 志郎
特許庁審判官 千葉 輝久
山田 正文
発明の名称 電子機器、電子機器の制御方法、および電子機器の制御プログラム  
代理人 杉村 憲司  
代理人 大倉 昭人  
代理人 太田 昌宏  

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