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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H02J
管理番号 1325305
審判番号 不服2014-8581  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-05-08 
確定日 2017-02-14 
事件の表示 特願2011-507938「電力系統を管理する方法、および電力系統」拒絶査定不服審判事件〔平成21年11月12日国際公開、WO2009/135940、平成23年 9月22日国内公表、特表2011-525787〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009年5月8日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2008年5月9日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年1月22日付けで拒絶の査定がされたところ、平成26年5月8日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされ、これに対し当審において平成27年2月19日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年4月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年5月26日付けで拒絶理由通知がなされ、平成27年9月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成27年11月9日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年3月1日付けで意見書及び手続補正書が提出され、平成28年3月24日付けで拒絶理由通知がなされ、平成28年7月6日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.特許請求の範囲
平成27年7月6日付け手続補正で、特許請求の範囲は以下のように補正された。
「【請求項1】
電力系統を管理する方法であって、
引込線に設けられた複数のインテリジェント電気利用メータが前記電力系統上の1組のセンサを形成するように、前記複数のインテリジェント電気利用メータを前記インテリジェント電気利用メータそれぞれの設置位置に従ってグループ化することであって、前記1組のセンサにおける各インテリジェント電気利用メータは遠隔で監視されることができ、各インテリジェント電気利用メータは当該インテリジェント電気利用メータの設置位置における電力を測定するメータである、前記グループ化することと、
前記1組のセンサのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかを判定することと、
前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること、
を含む、前記方法。
【請求項2】
前記1組のセンサでの電力の前記異常が停電であり、当該停電が、前記1組のセンサでのカスタマ設備において用いられる第1の時刻の合計電力及び当該第1の時刻と異なる第2の時刻の合計電力を読み取り、前記第1の時刻の合計電力と前記第2の合計電力との差を判定し、同一であることによって検出される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記1組のセンサでの電力の異常として停電を検出したときに、当該停電が、前記1組のセンサでの複数のカスタマ設備が共有するローカルな降圧変圧器に問題が存在することを示す、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
回路遮断器の作動を遠隔で検出すること
を更に含み、
前記1組のセンサでの電力の前記異常が停電であり、当該停電が、前記1組のセンサでのカスタマ設備中に備えられている回路遮断器の作動によるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記分析サーバが、前記インテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力から電圧プロファイルを生成すること
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記1組のセンサに属する複数のカスタマ設備の間の引込線上の電圧降下であり、前記方法が、
前記電圧降下が所定の許容可能レベルを超えたか否かを判定することと、
前記電圧降下が前記所定の許容可能レベルを超えたと判定されたことに応答して、前記電圧降下を修正することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記1組のセンサでの電力の前記異常が、所定の時間期間の間に所定の発生回数を超えて発生したことを判定することと、
前記1組のセンサでの電力の前記異常が前記所定の時間期間の間に前記所定の発生回数を超えて発生したと判定されたことに応答して、同様の異常について他の組のインテリジェント電気利用メータを監視することと、
を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記1組のセンサでの前記異常が、カスタマ設備において受信される電力の欠如であり、前記方法が、
分析サーバがローカルな降圧変圧器から前記カスタマ設備におけるインテリジェント電気利用メータにおける質問センサに存在確認の信号である質問信号を送信することと、
前記インテリジェント電気利用メータにおいて前記質問信号が検出されるかどうかを検出することと、
前記電力の欠如および前記カスタマ設備における前記インテリジェント電気利用メータにおける前記質問信号が検出されないことの双方を検出したことに応答して、前記ローカルな降圧変圧器から前記カスタマ設備までの下り線が切断していると結論付けることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電力系統であって、引込線に設けられた複数のインテリジェント電気利用メータが前記電力系統上の一組のセンサを形成するように、前記複数のインテリジェント電気利用メータが前記インテリジェント電気利用メータそれぞれの設置位置に従ってグループ化されており、
前記電力系統が、
前記電力系統上のセンサ・ウェブを生成するための分析サーバであって、前記センサ・ウェブにおける各インテリジェント電気利用メータは遠隔で監視されることができ、各インテリジェント電気利用メータは当該インテリジェント電気利用メータの設置位置における電力を測定するメータである、前記分析サーバと、
前記センサ・ウェブのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常を遠隔で検出する、データ収集エンジン・サーバと
を備えており、
前記分析サーバは、
前記異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかをスーパーバイザによって判定することを可能にするグラフィカル・ユーザ・インタフェースと、
前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節するための電力系統調節装置と
を含む、前記電力系統。」

3.発明の詳細な説明及び特許請求の範囲の記載(特許法第36条第4項及び第6項)について
(ア)拒絶の理由
平成28年3月24日付けで当審より通知した拒絶の理由の概要は以下のとおりである。

「この出願は、明細書、特許請求の範囲及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項に規定する要件を満たしていない。


(1)請求項1には、「前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること、を含む」との記載があるが、
「分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること」により、「前記1組のセンサでの電力の異常」とされるすべての異常を「正常に修正する」ことができるかは否か不明であり、請求項1に係る発明は明確でなく、また、発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

すなわち、平成28年3月1日付けの意見書において請求人は「1組のセンサでの電力の異常があることは、1組のセンサ単位毎に、それに含まれるインテリジェント電気利用メータの異常があるということを意味し、1組のセンサに含まれるインテリジェント電気利用メータの全てにおいて異常である(当審注:「異常が出ある」は誤記)ことを必ずしも意味するものでなく、1組のセンサに含まれるインテリジェント電気利用メータの個別の異常が同時に発生したとしても、1組のセンサでの電力の異常があることになります。よって、1組のセンサに含まれる少なくとも1つのインテリジェント電気利用メータにおいて異常が見つかれば、それは、当該少なくとも1つのインテリジェント電気利用メータを含む1組のセンサにおいて異常があると言えます。個々のインテリジェント電気利用メータに異常があるかどうかを判定するよりも、グループ化単位(すなわち、1組のセンサ)で複数のインテリジェント電気利用メータを管理する方が、個々のインテリジェント電気利用メータを1単位として管理するよりも管理する数が少なくなることからその技術的意味はあります。」と述べ、「個別の異常」も「1組のセンサでの電力の異常」であると主張している。
しかし、一組のセンサに配電される電力を調整しても、個別の異常を正常に修正するものとはいえないし、発生し得るすべての異常を修正することが可能ともいえないから、請求項1、10に係る発明は明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項1、10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでもない。

(2)請求項2には、「停電が、前記1組のセンサでのカスタマ設備において用いられる第1の時刻の合計電力及び第2の時刻の合計電力を読み取り、前記第1の時刻の合計電力と前記第2の合計電力との差を判定することによって検出され」とあるが、この記載は、「第1の時刻の合計電力と前記第2の合計電力との差」そのものが停電であることを示すように記載されており明確でない。
なお、発明の詳細な説明の段落【0050】を参照しても、第1の時刻の合計電力と第2の時刻の合計電力との差からどのように停電を判定するものであるか不明である。さらに、「第1の時刻」、「第2の時刻」とは何を示す時刻か不明である。
また、請求項2に係る発明が検出するものは、カスタマ設備1つの停電(個別の停電)も含むといえるが、一組のセンサに配電される電力を調整することで、1つの停電(個別の停電)を正常に修正することができるのかは不明であるし、停電が1組のセンサに共通に生じているとしても、「分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節する」ことでどのように停電を正常に修正することができるのかも明確でない。

(3)請求項3には、「前記1組のセンサでの電力の前記異常が停電であり、当該停電が、前記1組のセンサでの複数のカスタマ設備が共有するローカルな降圧変圧器に問題が存在することを示す」とあるが、日本語として意味が不明である(「電力の異常として停電を検出したときに、当該停電が、・・・・であることを示す」のような意味なのか不明。)。
また、「ローカルな降圧変圧器に問題が存在する」ことをどのように導き出しているのか不明である。

(4)請求項4には、「回路遮断器の作動を遠隔で検出することと、前記1組のセンサでの電力の前記異常が停電であり、当該停電が、前記1組のセンサでのカスタマ設備中に備えられている回路遮断器の作動によるものであることを判定することと、を更に含む」と記載されているが、回路遮断器の作動は遠隔で検出されているのであり、「回路遮断器の作動によるものであることを判定する」とはいかなることか不明である(停電を検出しているのか否かも不明。)。
また、回路遮断器の復帰が、「分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節する」ことによって可能となるものとはいえず明確でない。

(5)請求項5の記載に関し、発明の詳細な説明の記載を参照しても「電力ノイズ」とはどのようなものであるのか、また、測定された電力値からどのようにして、「電力ノイズ」を求めるのか等不明であり、請求項5の記載は依然として明確でない。さらに、「分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節する」ことで「電力ノイズ」を正常に修正するとは、どのようなことなのか全く不明である。
請求人は、平成28年3月1日付けの意見書において「「補正後の請求項5は、前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記電力系統上の電磁干渉によって生じる電力ノイズである」という構成を有します。補正後の請求項5の上記構成は、電力の異常そのものが電力ノイズであることを特定しているのであって、インテリジェント電気利用メータが電力ノイズを測定するとはいっていません。電力ノイズは、分析サーバが1組のセンサに含まれる複数のインテリジェント電気利用メータ(1組のセンサを形成するインテリジェント電気利用メータの全てでなくともよい)により測定された電力値から求めることが可能です。」と述べているが、センサがノイズを測定検出しているわけではなく、電力の異常の原因としてノイズが考えられるだけであるから上記主張は採用できない。

(6)請求項7には、「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、複数のカスタマ設備の間の電力線上の電圧降下であり」とあるが、当該記載の「複数のカスタマ設備」が「前記1組のセンサ」に属する設備のみか、「他の組のセンサ」にまで及ぶのか明確でなく、電力線とは、どのような線か(引込線のみか、それ以外の線を含むのか)不明であり、また、電力線上の電圧降下がどのように判定されるのか不明である。
さらに、「前記電圧降下が前記所定の許容可能レベルを超えたと判定されたことに応答して、前記電圧降下を修正することと、を更に含む」とあるが、「前記電圧降下」の「所定の許容可能レベル」が、カスタマ設備の間の電圧値(相対電圧値)なのか、カスタマ設備の電圧値(受電される電圧値)なのか不明であり、電圧降下を修正することがどのように行われるのか、複数のカスタマ設備の電圧値がすべて正常に修正されるのか等、不明である。
たとえば、許容レベル以下で動作して、電圧降下を修正する(電圧降下が一切ない状態とする)のであるから、電圧降下の発生していないカスタマ設備の電圧は、許容上限レベルを超えるのではないのか。

(7)請求項9には、「前記ローカルな降圧変圧器から前記カスタマ設備までの下り線が切断していると結論付けることと、を更に含む」とあるが、「下り線が切断している」と、「配電される電力」を受けることはできず、配電される電力を調整しても異常を正常に修正することは不可能となるから、請求項9に係る発明は明確でない。

(8)請求項10には、「前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節するための電力系統調節論理とを含む、前記電力系統。」とあるが、「電力系統調節論理」とは、何によって電力を調整するのか不明であり、「電力系統」の構成として明確でない。」

(イ)当審の判断
(1)請求項1には「前記1組のセンサのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかを判定することと、
前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること、」と記載されている。
これに対し、発明の詳細な説明には、次のような記載がある。
「【0049】
ここで図5を参照すると、カスタマの電気利用メータを利用して送電線網を監視し制御するために行われるステップの高レベルのフローチャートが示されている。開始ブロック402の後、1組のカスタマ電気利用メータは、単一のフィーダを形成する1組のグループ化電気利用メータに地理的にグループ化される(電力線に沿った細かいセンサ・ウェブを生成する)(ブロック404)。次いで、この1組のグループ化された電気利用メータを監視する(ブロック406)。次いで、電気利用メータのいずれかが異常を報告しているか否かについて判定を行う(クエリ・ブロック408)。この判定は、DCEサーバ208、分析サーバ204、または上述した図4において記載した信号プロセッサ308あるいはそれら全てにおいて見出されるもの等の論理を用いて行われる。更に、かかる先進型の分析は、リアルタイムの波形ストリーミングおよび表示を達成することができる。例えば、図6に示すように、分析サーバ204(図3に示した)に表示されたグラフィカル・ユーザ・インタフェース(GUI)502が、多数のインテリジェントな電気利用メータ504a?504n(上述した電気利用メータ216a?216n等のRTU)から電圧を受信していると想定する。これらの電圧プロファイルは、フィーダおよびメータの位置に沿った選択されたサブセットのメータからの電圧読み取り値によって発生することができ、次いでパケット化される。次いで、これらのデジタル・パケットはリアルタイムでGUI502に流され、この結果、対応するリアルタイムのグラフ506a?560nが得られる。分析サーバ204におけるGUI502を注視しているスーパーバイザは、このため、特定の線上の電力が正常であるか否か(例えば送電網に沿った突然の高電圧または低電圧がないこと)を判定することができる。あるいは、デジタル・パケットは、以下で図9において示すもっと簡単な電圧プロファイルとして、リアルタイムでGUI802に流すことができる。
【0050】
続けて図5のクエリ・ブロック408を参照すると、第1および第2のカスタマ位置における電圧試験によって、停電が発生したと結論付けるための充分な情報を提供することができる(例えば、双方のカスタマ位置におけるゼロ電圧は、双方の位置が故障した同一の降圧変圧器からの同一のフィーダ線上にあるという結論を合理的に導くことができる)。あるいは、どのくらいの合計電力を第1の時刻(T1)において用いたかを読み取り、どのくらいの合計電力を第2の時刻(T2)において用いたかを読み取り、次いで時刻T1およびT2における合計電力の差を判定することによって、停電の検出を行うことができる。そのカスタマ設備において用いられる合計電力量が時刻T1およびT2において同一である場合には、そのカスタマ設備において電力は用いられていない、または受信されていない、あるいはその両方であるという結論が得られる。別の実施形態においては、インテリジェント・メータの1つからの電圧読み取り値自体が、それが停電であるか否かを示すことができる。いずれの場合にせよ、この設備および同一の上流点にリンクされた他のメータにおいて電圧がゼロである場合、これは、下り線の上流、不良の変圧器等で停電が起こっていることを示す。第1および第2のカスタマ設備が双方とも電力を受信していない、または用いていない、あるいはその両方である場合、それらが共有するローカル降圧変圧器に問題が存在するという結論が得られる。
【0051】
クエリ・ブロック408に示したアクティビティの別の実施形態においては、第1の設備が電力を受信/使用しているが、第2の設備はそうでないと想定する。2つの設備は同一のローカルな降圧変圧器に結合されているので、このローカル降圧変圧器は適正に機能しているが、第1の設備のどこかに問題が存在するという結論が当然得られる。第1の設備に対する引き込み線に損傷がない場合(図4に示した質問センサ316の使用に関する上述の考察を参照)は、第1の設備が単に電力センサの前(供給側)に位置する回路遮断器を操作したという結論に当然達する。一実施形態において、この回路遮断器の作動は、図4に示したインテリジェント電気利用メータ302における信号プロセッサによって確認することができる。
【0052】
どんな異常にせよ、電気利用メータの1つまたは1群においてあまりにも何回も発生する場合には、繰り返す異常の「全体像」の原因を判定するために、追加の電気利用メータを監視する必要があるという判定が行われる場合がある。
【0053】
いったん異常または複数の異常あるいはその両方の原因が求められると、電力線の再ルーティング、メータの置換、変圧器の置換、変圧器または電力線あるいはその両方の更新等、適切な補正ステップが行われる(ブロック410)。プロセスは、終了ブロック412において終了する。」

この記載には、請求項1の「1組のセンサ」は、段落【0049】に、「1組のカスタマ電気利用メータは、単一のフィーダを形成する1組のグループ化電気利用メータに地理的にグループ化される(電力線に沿った細かいセンサ・ウェブを生成する)(ブロック404)。次いで、この1組のグループ化された電気利用メータを監視する(ブロック406)。」とあるように、例えば、「電力線に沿った細かいセンサ」のような構成であること、また、請求項1で「判定」される「前記1組のセンサでの電力の異常」としては、「送電網に沿った突然の高電圧または低電圧」、「停電の検出」、「下り線の上流、不良の変圧器等で停電が起こっている」、「ローカル降圧変圧器に問題が存在する」、「第1の設備が単に電力センサの前(供給側)に位置する回路遮断器を操作した」、「回路遮断器の作動」等が例示されている。
そして、請求項1の「前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること」に関する実施例としては、「いったん異常または複数の異常あるいはその両方の原因が求められると、電力線の再ルーティング、メータの置換、変圧器の置換、変圧器または電力線あるいはその両方の更新等、適切な補正ステップが行われる」ことが示されている。
しかし、これらの発明の詳細な説明の記載を参照したとしても、「分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること」により、「前記1組のセンサでの電力の異常」とされるすべての異常を「正常に修正する」ことができるか否かは不明である。
例えば、段落【0053】に記載される「電力線の再ルーティング、メータの置換、変圧器の置換、変圧器または電力線あるいはその両方の更新等」のステップは、明らかに人為的な作業が主要な要素となるステップであり、分析サーバの電力調整ついて特定されても、「電力線の再ルーティング、メータの置換、変圧器の置換、変圧器または電力線あるいはその両方の更新等」が行われることにはならないから、請求項1の記載事項である「分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること」で実施可能なものということはできない。
そうすると、請求項1に係る発明は「分析サーバ」がどのように「前記1組のセンサでの電力の異常」とされるすべての異常を「正常に修正する」のか明確でなく、また、発明の詳細な説明の記載は、請求項1に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
また、請求項1を引用する請求項2?9についても同様である。

(2)請求項2には、「前記1組のセンサでの電力の前記異常が停電であり、当該停電が、前記1組のセンサでのカスタマ設備において用いられる第1の時刻の合計電力及び当該第1の時刻と異なる第2の時刻の合計電力を読み取り、前記第1の時刻の合計電力と前記第2の合計電力との差を判定し、同一であることによって検出される」とある。
この記載は、「前記第1の時刻の合計電力と前記第2の合計電力との差を判定し、同一であること」そのものが停電であることを示しているが、一般に「停電」とは、電力の供給が遮断されたことを意味し、「停電」であることを検出するとは、電力が供給されない状態(消費電力や電圧がゼロであること)の検出を行うことが一般的であり、「停電」であることを検出する際に時間的な変化を求める必要は生じないが、第1の時刻の合計電力と第2の時刻の合計電力との差が何故「停電」となるのか不明である。
これに関し、発明の詳細な説明の段落【0050】の「どのくらいの合計電力を第1の時刻(T1)において用いたかを読み取り、どのくらいの合計電力を第2の時刻(T2)において用いたかを読み取り、次いで時刻T1およびT2における合計電力の差を判定することによって、停電の検出を行うことができる。そのカスタマ設備において用いられる合計電力量が時刻T1およびT2において同一である場合には、そのカスタマ設備において用いられる合計電力量において電力は用いられていない、または受信されていない、あるいはその両方であるという結論が得られる。」と記載されているが不明である、例えば、カスタマ設備にカスタマが不在である時や、就寝中である時等、殆どの機器が長時間にわたり一定の待機電力のみ消費したり、ほぼ一定の消費電力で動作を行う等、第1の時刻の電力供給が正常になされて合計電力が求められ、第2の時刻の合計電力が第1の時刻の合計電力と等しい場合も当然に予想されるにもかかわらず、なぜ停電であると判定するのか不明である。
また、1組のセンサに属する1つのカスタマ設備が停電であるときに検出を行うのか否かも不明である。
さらに、一般には、第1の時刻が正常でも、第2の時刻が停電であれば停電と判断できるのであり、どれくらいの間隔で検出するのかも記載されていないので、合計電力の差の管理が必要な停電検出がいかなるものか不明である。
したがって、請求項2に係る発明は明確でなく、発明の詳細な説明の記載は、請求項2に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。
また、請求項2を引用する請求項3についても同様である。

(3)請求項4には、「回路遮断器の作動を遠隔で検出することを更に含み、前記1組のセンサでの電力の前記異常が停電であり、当該停電が、前記1組のセンサでのカスタマ設備中に備えられている回路遮断器の作動によるものである、請求項1に記載の方法。」とあるが、引用する請求項1は、「前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること、を含む」と特定されている。
一般に、回路遮断器の作動による停電を正常に修正するためには、回路遮断器自体に復帰動作を指令する必要があるが、分析サーバが電力系統を介して1組のセンサに配電される電力を調節することで当該異常を修正することは通常できないから、どの様にして正常に修正するのか不明である。
したがって、請求項4に係る発明は明確でなく、また、発明の詳細な説明の記載は、請求項4に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(4)請求項5には、「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズである」と記載されているが、「電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズ」とは、どのようなものか定義が不明である。
発明の詳細な説明の段落【0011】を参照しても、「好ましくは、本発明が提供する方法において、異常は、送電線網上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズである。」と記載されるのみであり、「電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズ」がどの様なものか明確になるものではない。
また、引用する請求項1は、「前記1組のセンサにおける各インテリジェント電気利用メータは遠隔で監視されることができ、各インテリジェント電気利用メータは当該インテリジェント電気利用メータの設置位置における電力を測定するメータである」と特定されるものであり、電力の測定からどのようにすれば、電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズを求めることができるのか明らかでない。
さらに、引用する請求項1は、「前記1組のセンサのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかを判定することと、前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節する」と特定されるものであるが、配電される電力をどの様に調節すれば「電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズ」を正常に修正することができるのかも不明である。

なお、請求人は、平成28年7月6日付け意見書において、次のように主張している。
「請求項5において、補正前の「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記電力系統上の電磁干渉によって生じる電力ノイズである」を「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記電力系統上の電磁干渉によって生じる電磁ノイズである」に補正しました。電磁干渉によって生じるノイズは電磁ノイズであって、電力ノイズでないことは明白です。当該補正は、誤記の訂正乃至は明瞭でない記載の釈明を目的とするものです。従って、当該補正は新規事項の追加でないから適法であると考えます。段落0011においても、上記と同じ補正をしました。
電磁ノイズ(電磁波ノイズ、不要電波ともいう)は、さまざまな機器や装置から出る電磁波の雑音であり、当業者に自明の用語です。
電磁ノイズを正常に修正するということは、電磁ノイズを抑制や遮蔽することによって行うことが可能です。従って、電磁ノイズをどのようにして正常に修正するかは当業者に明白であると考えます。電磁ノイズは、磁界センサで測定することが可能であり、従ってインテリジェント電気利用メータが磁界センサを備えていることにより、電磁ノイズを測定することが可能です。」

しかし、請求人も「さまざまな機器や装置から出る電磁波の雑音」である「電磁ノイズ」の検出には、磁界センサ等、電力を測定する手段とは別の検出手段が必要と主張しているように、引用する請求項1の記載のごとく、インテリジェント電気利用メータが電力を測定するメータと特定されるのみでは電磁ノイズを検出することはできない。
また、「電磁ノイズ」を正常に修正することが、電磁ノイズの抑制や遮蔽により行われるのであれば、引用する請求項1の記載のごとく、電力を調節することで正常に修正することが可能なものでもない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(5)請求項7には、「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記1組のセンサに属する複数のカスタマ設備の間の引込線上の電圧降下であり、前記方法が、前記電圧降下が所定の許容可能レベルを超えたか否かを判定することと、前記電圧降下が前記所定の許容可能レベルを超えたと判定されたことに応答して、前記電圧降下を修正する」とある。
しかし、複数のカスタマ設備の間の引込線上の電圧降下には、変圧器からの引込線の長さがカスタマ設備毎に異なることに起因する相対的な電圧降下や、引込線それぞれの電圧降下が異なる等、電圧降下の原因は様々なものが考えられるにもかかわらず、複数のカスタマ設備の電圧値をすべて正常に修正することをどの様に行うのか、依然として不明なままである。
特に、カスタマ設備ごとに降下している電圧値が異なるから、電圧を一様に上昇させても全て正常に修正することはできず、どのような修正を行うのか不明である。
したがって、請求項7に係る発明は明確でなく、また、発明の詳細な説明の記載は、請求項7に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

なお、請求人は、平成28年7月6日付け意見書において、次のように主張している。
「請求項7において、補正前の「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、複数のカスタマ設備の間の電力線上の電圧降下であり」を「前記1組のセンサでの電力の前記異常が、前記1組のセンサに属する複数のカスタマ設備の間の引込線上の電圧降下であり」に補正しました。すなわち、複数のカスタマ設備が1組のセンサに属する設備のみであることを特定し、且つ、電力線が引込線であることを特定しました。当該補正は、明瞭でない記載の釈明乃至は誤記の訂正を目的とするものです。従って、当該補正は新規事項の追加でないから適法であると考えます。
段落0013及び段落0022においても上記と同じ補正をしました。
電圧降下はカスタマ設備の間の引込線上の電圧降下であり、当該電圧降下を起こした引込線において電圧降下を修正すればよいことから、ご指摘のような電圧降下の発生していないカスタマ設備の電圧が許容上限レベルを超えることはありません。」

しかし、複数のカスタマ設備の間で電圧降下が生じているのであるから、電圧降下の値は各々異なるものであり、カスタマ設備の電圧それぞれが、電圧降下を修正することによりどのような影響を受けるのか、特に、電圧降下の発生していないカスタマ設備の電圧が許容上限レベルを超えることはないのか等、明確になるものではない。
したがって、請求人の上記主張は採用できない。

(6)請求項9には、「前記ローカルな降圧変圧器から前記カスタマ設備までの下り線が切断していると結論付けることと、を更に含む」とあるが、「下り線が切断している」と、「配電される電力」を受けることはできず、配電される電力をどのように調整しても異常を正常に修正することは不可能となるから、引用する請求項1の、配電される電力の調整により異常を正常に修正するという発明特定事項と矛盾することになり、請求項9に係る発明は明確でない。
なお、下り線が切断している異常を正常に修正することの例としては、発明の詳細な説明の段落【0050】に「電力線の更新」とあるが、配電される電力の調整により異常を正常に修正するものではなく、請求項9に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

なお、請求人は、平成28年7月6日付け意見書において、次のように主張している。
「請求項9について、上記通知書の記欄において、「「下り線が切断している」と、「配電される電力」を受けることはできず、配電される電力を調整しても異常を正常に修正することは不可能となるから、請求項9に係る発明は明確でない。」とのご指摘がされています。しかしながら、下り線が切断している場合において、当該下り線を交換する為に、配電される電力を調整(すなわち、電力をゼロにする)ことが必要です。従って、配電される電力を調整することによって、下り線が切断しているという異常を正常に修正することが可能になります。従って、請求項9に係る発明は明確であると考えます。」

しかし、請求項9で引用する請求項1の「配電される電力を調節すること」は、「分析サーバ」が行うものであるのに対し、下り線を交換する為に配電される電力を調整(すなわち、電力をゼロにする)ことは、人が交換作業を行う時に付随する調整にすぎず、電力をゼロにしたとしても、異常を正常に修正するものではないから、請求人の上記主張を採用することはできない。

(7)請求項10には、「前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節するための電力系統調節装置」との記載があり、請求項1の記載と同様、配電される電力の調節で、1組のセンサでの電力の異常とされる、すべての異常を正常に修正することができるのか明確でなく、請求項10に係る発明は明確でない。
また、発明の詳細な説明の記載も、請求項10に係る発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。

(ウ)まとめ
請求項1?10の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。

4.進歩性(特許法第29条第2項)について
(ア)拒絶の理由
平成27年2月19日付で当審より通知した拒絶の理由の理由Aの概要は以下のとおりである。
「理由A.この出願の請求項1ないし11に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用文献1:特開2005-185028号公報
引用文献2:特開平7-334275号公報
引用文献3:特開平11-89093号公報
以下省略」

(イ)本願発明
本件の特許請求の範囲の請求項1に係る発明は、上記「2.特許請求の範囲」の請求項1に記載されたものであって、以下、この請求項1に係る発明を、「本願発明」という。

(ウ)引用発明
当審の平成27年2月19日付の拒絶理由に引用された特開2005-185028号公報(以下、「引用例」という。)には、「低圧配電系統監視システム」として、図面とともに、以下の事項が記載されている(下線は当審において付与した。)。
ア.「【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係わる低圧配電系統監視システムは、低圧配電系統に接続された各々の低圧需要家の宅内に配置された電気量測定装置で当該宅内の電圧を測定し、各々の低圧需要家を識別するための低圧需要家識別番号を予め記憶したホームサーバから、電気量測定装置で測定された電圧値や電流値に低圧需要家識別番号を付与して公衆通信回線を介して低圧系統監視装置に送信する。低圧系統監視装置は各々の低圧需要家のホームサーバから公衆通信回線に送信された低圧需要家識別番号及び電圧値を受信し、その受信した低圧需要家識別番号及び電圧値を用いて低圧配電系統の監視を行う。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低圧配電系統に接続された1つ又は複数の低圧需要家の宅内に電気量測定装置及びホームサーバを設置し、電気量測定装置で測定した各々の低圧需要家の電圧値を低圧系統監視装置に送出し、低圧系統監視装置では低圧需要家の電圧値を基に低圧需要家が接続される低圧配電系統の状態を監視するので、各々の需要家の停電情報が容易に把握できる。また、複数の低圧需要家の情報を基に、例えば、ある低圧需要家で発生した停電が当該低圧需要家の所属する低圧配電系統で発生したものか、当該低圧需要家の宅内で発生したものかの判定もすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は、本発明の実施の形態に係わる低圧配電系統監視システムの構成図である。高圧配電線6は変電所からの電力を開閉器7及び変圧器5を介して低圧配電線4に供給している。低圧配電線4は高圧配電線6から開閉器7及び変圧器5を通して接続され、変圧器5により規定の供給電圧へ変換して複数の低圧需要家2へ電力を供給する。低圧需要家2では低圧配電線4を引き込み分電盤8を介して宅内へ電力を受電している。分電盤8には電流制限器(リミッター)が内蔵されている。
【0011】
低圧需要家2の宅内には、宅内に供給される電力の電圧や電流等の電気量を測定するための電気量測定装置21と、電気量測定装置21で測定された電気量を処理しインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信するためのホームサーバ22と、ホームサーバ22で処理した内容を必要に応じて表示出力する宅内表示端末23とが設置されている。これらの各装置は、各装置間でデータの送受信ができる送受信装置を備えている。この送受信装置は、有線または無線による接続のどちらであってもかまわないが、図1では設置工事や端末の移動の利便さから、家庭内で相互通信ができる程度の無線通信を使った一例を示している。
【0012】
電気量測定装置21は宅内の分電盤8に接続され電圧値や電流値を測定し、ホームサーバ22へ無線通信で送信する。ホームサーバ22の電気量受信部24では、電気量測定装置21からの計測値を受信し状態判定部25で状態判定の処理が行われる。例えば、需要家の停電の判定、高圧配電線の停電の判定、需要家の電圧の適格性の判定等を行う。また、低圧需要家識別番号記憶部26に記憶された低圧需要家識別番号を取り出し、電気量測定装置で測定された低圧需要家の電圧値や電流値を宅内状態送信部27により、公衆通信回線であるインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信する。

イ.「【0015】
図2は、本発明の実施の形態に係わる低圧配電系統監視システムにおける低圧系統監視装置の構成図である。複数の低圧需要家2に設置されたホームサーバ22からインターネット網3を介して送信されたデータは、低圧系統監視装置1の応答受信部10で受信され、受信したデータは低圧需要家情報照合部11へ入力される。低圧需要家情報照合部11は、受信した電気量の計測値を低圧需要家識別番号と共に計測値データベース16に保存する。
【0016】
低圧需要家データベース14には、低圧需要家識別番号、低圧需要家の氏名、住所、供給変圧器識別番号、供給変圧器から当該需要家までの距離が記憶されている。また、変圧器データベース15には低圧需要家に接続されている供給変圧器の設置されている住所が記憶されている。さらに、地図データベース17には当該需要家や供給変電所近傍を含めた低圧配電系統の地図データが記憶されている。
【0017】
低圧需要家情報照合部11は、複数の低圧需要家2のホームサーバ22から受信した低圧需要家識別番号に基づき、その低圧需要家識別番号に属する供給変圧器識別番号、低圧需要家の氏名、住所、供給変圧器からの距離などの必要なデータを低圧需要家データベース14から取り出し、供給変圧器の住所を変圧器データベース15から取り出す。
【0018】
そして、低圧系統状態判定部12は低圧需要家情報照合部11で取り出した各データから停電している低圧需要家を全てリストアップし、停電需要家データ出力部13にて、当該停電需要家の住所を中心とした地図データや供給変圧器の住所を中心とした地理データを地図データベース17から取り出して、停電需要家一覧、当該停電需要家の住所を中心とした地図、さらには供給変圧器の設置場所を中心とした地図の表示を表示部18に行う。なお、表示部18は、上記表示項目を表示できる表示装置であればよく、例えばCRT等の専用端末やパソコンからのブラウザWebアクセスやPDA等の携帯端末を使用することができ、表示部18の種類は限定されるものではない。」

ウ.「【実施例1】
【0022】
図6は本発明の実施例1におけるホームサーバ22の処理内容を示すフローチャート、図7は本発明の実施例1における低圧系統監視装置1の処理内容を示すフローチャートである。この実施例1は、各々の低圧需要家2に設けられたホームサーバ22から低圧需要家の電圧値を送信し、低圧系統監視装置1において低圧需要家の電圧値に基づいて低圧配電系統の状態を監視するようにしたものである。
【0023】
ホームサーバ22では、図6に示すように、まず、状態判定部25は電気量測定装置21から電圧値を受信すると(S11)、低圧需要家識別番号記憶部26に記憶された低圧需要家識別番号を取り出し、受信した電圧値に低圧需要家識別番号を付加して宅内状態送信部27によりインターネット網3を介して低圧系統監視装置1へ送信する(S12)。
【0024】
低圧系統監視装置1では、図7に示すように、ホームサーバ22から電圧値及び低圧需要家識別番号を受信し(S21)、低圧需要家識別番号を低圧需要家データベース14から検索してその低圧需要家識別番号の低圧需要家を特定し、計測値データベース16に電圧値を保存し(S22)、低圧系統状態判定部12により受信した電圧値から低圧配電系統の系統状態を判定する(S23)。
【0025】
実施例1によれば、低圧需要家2の宅内で計測した電圧をホームサーバ22からインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信するので、低圧系統監視装置1で個々の低圧需要家2の給電状態を把握することができ、さらに低圧配電系統の系統状態を監視することができる。」

エ.「【実施例7】
【0046】
図13は本発明の実施例7におけるホームサーバ22の処理内容を示すフローチャート、図14は本発明の実施例7における低圧系統監視装置1の処理内容を示すフローチャートである。この実施例7は実施例1に加え、ホームサーバ22は電気量測定装置1で測定された電圧値が規定電圧を満たしているか否かを判定し規定電圧を逸脱しているときはその旨を公衆通信回線に送信し、低圧系統監視装置1は低圧需要家識別番号及び電圧値に加えて低圧需要家の規定電圧逸脱情報も受信し規定電圧逸脱に対する処理を行えるようにしたものである。
【0047】
ホームサーバ22では、図13に示すように、電気量測定装置21から電圧値を受信し(S81)、受信した電圧値が規定値を逸脱しているか又は規定値逸脱から復帰したかの判断を行い(S82)、規定値逸脱の発生又は規定値逸脱から復帰した場合は、規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を低圧系統監視装置1へ送信する(S83)。
【0048】
低圧系統監視装置1では、図14に示すように、ホームサーバ22から規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を受信し(S91)、低圧需要家識別番号を低圧需要家データベース14から検索し低圧需要家を特定し(S92)、供給電圧逸脱に対する処理を行う(S93)。この供給電圧逸脱に対する処理は、低圧配電系統内では解決することはできないので、高圧配電系統を監視するシステムへ通知し、供給電圧を調整するなどの方法で対応を行うことになる。
【0049】
実施例7によれば、ホームサーバ22より規定電圧を逸脱した低圧需要家識別番号が送信されてくるので、規定された供給電圧値を下回ったことを即時に検出することができる。このため、規定された供給電圧値を逸脱した低圧需要家の供給元となる高圧配電系統で、即座に電圧調整を行うことが可能となる。従って、安定した電力の供給をリアルタイムに行うことができるようになる。」

したがって、上記引用例には以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「低圧配電線4を引き込み分電盤8を介して宅内へ電力を受電している低圧需要家2の宅内には、宅内に供給される電力の電圧や電流等の電気量を測定するための電気量測定装置21と、電気量測定装置21で測定された電気量を処理し低圧需要家識別番号を付与してインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信するためのホームサーバ22とが設置され、各々の低圧需要家のホームサーバ22から送信された低圧需要家識別番号及び電圧値を受信し、その受信した低圧需要家識別番号及び電圧値を用いて低圧配電系統の監視を行う低圧系統監視装置1において、低圧需要家識別番号及び電圧値に加えて低圧需要家の規定電圧逸脱情報も受信し規定電圧逸脱に対する処理を行う方法であって、
ホームサーバ22は電気量測定装置21から電圧値を受信し(S81)、受信した電圧値が規定値を逸脱しているか又は規定値逸脱から復帰したかの判断を行い(S82)、規定値逸脱の発生又は規定値逸脱から復帰した場合は、規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を低圧系統監視装置1へ送信し(S83)、
低圧系統監視装置1では、ホームサーバ22から規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を受信し(S91)、低圧需要家識別番号を低圧需要家データベース14から検索して低圧需要家を特定し(S92)、高圧配電系統を監視するシステムへ通知し(S93)、規定された供給電圧値を逸脱した低圧需要家の供給元となる高圧配電系統で電圧調整を行うことで、規定電圧逸脱に対する処理を行う方法。」

(エ)対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する

・引用発明の、「低圧配電線4」は、分電盤8を介して宅内へ引き込みを行う配電線であるから、本願発明の「引込線」に相当する。

・引用発明の「低圧系統監視装置1」は、電圧値を用いて低圧配電系統の監視を行うとともに、低圧需要家の規定電圧逸脱が検出されることに応答して、規定電圧逸脱の発生している需要家を特定し、正常に修正するために高圧配電系統を監視するシステムへ通知を行う装置であり、情報処理を行う装置(サーバ)でもあるので、本願発明の「分析サーバ」に相当する。

・引用発明の、「電気量測定装置21」と「ホームサーバ22」とからなる構成は、低圧需要家2の宅内に設置され、宅内に供給される電力の電圧や電流等の電気量を測定し、測定された電気量を処理してインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信するための情報処理(インテリジェントな処理)を行う装置であるから、本願発明の、遠隔で監視され、電力を測定するものである「インテリジェント電気利用メータ」と比較すると、「インテリジェントメータ」である点において一致する。
また、引用発明の「低圧配電線4を引き込み分電盤8を介して宅内へ電力を受電している低圧需要家2の宅内には、宅内に供給される電力の電圧や電流等の電気量を測定するための電気量測定装置21と、電気量測定装置21で測定された電気量を処理し低圧需要家識別番号を付与してインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信するためのホームサーバ22とが設置され、各々の低圧需要家のホームサーバ22から送信された低圧需要家識別番号及び電圧値を受信し、その受信した低圧需要家識別番号及び電圧値を用いて低圧配電系統の監視を行う低圧系統監視装置1において、低圧需要家識別番号及び電圧値に加えて低圧需要家の規定電圧逸脱情報も受信」する構成と、本願発明の「引込線に設けられた複数のインテリジェント電気利用メータが前記電力系統上の1組のセンサを形成するように、前記複数のインテリジェント電気利用メータを前記インテリジェント電気利用メータそれぞれの設置位置に従ってグループ化することであって、前記1組のセンサにおける各インテリジェント電気利用メータは遠隔で監視されることができ、各インテリジェント電気利用メータは当該インテリジェント電気利用メータの設置位置における電力を測定するメータである、前記グループ化する」構成とは、「引込線に設けられた複数のインテリジェントメータは、遠隔で監視されることができ」る点において一致する。

・引用発明の「低圧需要家識別番号及び電圧値に加えて低圧需要家の規定電圧逸脱情報も受信し規定電圧逸脱に対する処理を行」う構成と、本願発明の「インテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出される」構成とは、「インテリジェントメータによって読み取られる電気量に対する異常が検出される」点において一致する。

・引用発明の「ホームサーバ22は電気量測定装置21から電圧値を受信し(S81)、受信した電圧値が規定値を逸脱しているか又は規定値逸脱から復帰したかの判断を行い(S82)、規定値逸脱の発生又は規定値逸脱から復帰した場合は、規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を低圧系統監視装置1へ送信し(S83)、低圧系統監視装置1では、ホームサーバ22から規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を受信し(S91)、低圧需要家識別番号を低圧需要家データベース14から検索して低圧需要家を特定し(S92)、高圧配電系統を監視するシステムへ通知し(S93)、規定された供給電圧値を逸脱した低圧需要家の供給元となる高圧配電系統で電圧調整を行う」ことは、低圧系統で発生した異常を修正するために、低圧系統と高圧系統を含む電力系統を介して配電される電力を調節するものといえ、本願発明の、「前記1組のセンサのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかを判定することと、前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節すること」と比較すると、「インテリジェントメータによって読み取られる電気量に対する異常が検出されることに応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが電力系統を介して配電される電気量を調節する」点において一致する。

・引用発明の「規定電圧逸脱に対する処理を行う方法」は、低圧系統と高圧系統からなる電力系統において規定電圧逸脱に対する処理を行う方法であり、電力系統での処理は管理ともいえるので、本願発明の「電力系統を管理する方法」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明は、以下の点で一致し、また、相違していると認められる。

<一致点>
「電力系統を管理する方法であって、
引込線に設けられた複数のインテリジェントメータは、遠隔で監視されることができ、各インテリジェントメータは設置位置における電気量を測定するメータである、
インテリジェントメータによって読み取られる電気量に対する異常が検出されることに応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して配電される電気量を調節する方法。」

<相違点>
<相違点1>
遠隔で監視され、電気量を測定するものである「インテリジェントメータ」に関し、本願発明は、「インテリジェント電気利用メータ」であるのに対し、引用発明は「電気量測定装置21」と「ホームサーバ22」とからなり、宅内に供給される電力の電圧や電流等の電気量を測定し、測定された電気量を処理してインターネット網3を介して低圧系統監視装置1に送信するものであり、低圧系統監視装置は送信された電圧値に基づき低圧配電系統の監視を行う点。

<相違点2>
本願発明は、「インテリジェント電気利用メータが前記電力系統上の1組のセンサを形成するように、前記複数のインテリジェント電気利用メータを前記インテリジェント電気利用メータそれぞれの設置位置に従ってグループ化する」ものであるのに対し、引用発明には、「電気量測定装置21」及び「ホームサーバ22」が、1組のセンサを形成するように、設置位置に従ってグループ化を行うことは明示されていない点。

<相違点3>
本願発明は、「1組のセンサにおける各インテリジェント電気利用メータは遠隔で監視されることができ、各インテリジェント電気利用メータは当該インテリジェント電気利用メータの設置位置における電力を測定するメータである」のに対し、引用発明の「電気量測定装置21」と「ホームサーバ22」は、「電圧値に加えて低圧需要家の規定電圧逸脱情報」を送信するものであり「電力を測定」することは明示されていない点。

<相違点4>
本願発明は、「前記1組のセンサのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかを判定する」ものであるのに対し、引用発明は、低圧系統監視装置1が、低圧需要家の規定電圧逸脱情報を受信し規定電圧逸脱に対する処理を行うものである点。

<相違点5>
本願発明は、「前記1組のセンサでの電力の異常があることの判定に応答して、当該異常を正常に修正する為に、分析サーバが前記電力系統を介して前記1組のセンサに配電される電力を調節する」ものであるのに対し、引用発明は、低圧系統監視装置1が、高圧配電系統を監視するシステムへ通知することで、規定された供給電圧値を逸脱した低圧需要家の供給元となる高圧配電系統で電圧調整を行うものである点。

上記相違点について検討する。
相違点1について検討する。
電気量の測定手段、処理手段、送信手段等の構成を一つの装置として構成し、遠隔から読み取り可能なメータとすることは慣用の技術である。
引用発明の電気量測定装置21は、低圧系統監視装置1が低圧配電系統の監視に用いる電圧値の他にも、低圧需要家の宅内に供給される電力の電流等の電気量を測定するものであり、ホームサーバ22が測定された電気量を処理して低圧系統監視装置1に送信するものであるから、電圧値と電流値との積として求められる電力のような「電気利用量」を測定するメータとして機能させることも適宜なし得るものであり、また、遠隔から読み取り可能な周知のメータのごとく、引用発明の電気量測定装置21とホームサーバ22とを一つの装置として構成することで、本願発明の「インテリジェント電気利用メータ」のごとく構成することは当業者が適宜なし得ることである。

相違点2について検討する。
本願発明における、「グループ化」や「1組のセンサ」は、本願の明細書に、
「【0084】
本明細書において記載したように、本発明の一実施形態は、フィーダ回路に沿った位置に従ってメータをグループ化する。どのようにメータを分布させるかについての情報は、ユーティリティ地理情報システム、またはメータ・データ管理システムから取得して、メータ識別コードを実際の地理空間位置および送電網接続性と結び付けることができる。変電所からのメータ電気距離は、メータが接続された配電変圧器のものと同一に取得される。
【0085】
いったんメータの表が構築されると、分析サーバのタスクはメータ・サブセットの規則的なスキャンを計画し、データ要求を生成し、それらをメータ・データ収集エンジン(DCE)に渡す。分析サーバは、メータと直接に通信しないことが好ましく、インタラクティブなメータ読み取り要求をDCEに渡す。データがDCEから戻されると、分析サーバはそのデータをデータベース表に配置する。この表は、メータ識別コード、データ・タイム・スタンプ、メータ距離、およびパラメータ値の記録を可能とする。この表における値が、パラメータ・プロファイルを構成する。一例として、フィーダの長さに沿って得られる電圧値の表が挙げられ、これは各検知点までの電気的距離によって作表されている。多くの異なるパラメータについて、この同じ方法でプロファイルを構築することができる。パラメータは、電圧、電流、実電力または無効電力、力率、全高調波ひずみ等とすれば良い。次いで、表は、送電網ボルト/VAR制御、電力品質査定、停電情報収集等の様々な用途によってアクセスすることができる。コンデンサ等のデバイスの動作を、例えばコンデンサ切り替えコマンドの前および後の電圧プロファイルの形状の変化によって判定することができる。この表は、分析サーバによって定期的に新しいデータでリフレッシュすることができる。
【0086】
また、停電情報収集等のリアルタイム分析をサポートするために、特定の1度に1つずつのメータのパラメータ読み取り値が必要であるという場合があり得る。この場合、分析サーバは、メータ分布情報を含むメータ表またはフィーダ表現を用いて、どのメータまたは複数のメータを読み取るかを決定することができる。次いで、分析サーバは、インタラクティブな読み取り要求をDCEに送信し、それに応答して適切な値(複数の値)を取得することができる。読み取るメータ数に基づいた読み取り待ち時間、応答のばらつき、様々な性能等のDCE特性を最良に利用するために、分析サーバは、様々な戦略を用いて、いずれかの所与の時点の読み取り値をいくつのメータに、かつどのメータに要求するかを決定することができる。」
と記載され、「グループ化」の例として「フィーダ回路に沿った位置に従ってメータをグループ化」すること、また、「一組のセンサ」で測定される値の例として「フィーダの長さに沿って得られる電圧値の表」が例示されている。

一方、引用発明の、供給電圧値を逸脱した低圧需要家の供給元となる高圧配電系統に通知を行うことは、「電気量測定装置21」によって検出された電圧値が既定値を逸脱していることを判定した「ホームサーバ22」からの通知に基づき、「低圧系統監視装置1」が、規定された供給電圧値を逸脱した低圧需要家がどの配電系統(「供給変圧器」毎の系統)単位に属するかを特定して高圧配電系統に通知するものであり、引用発明においても、電圧調整を行う単位、つまり、同一の供給変圧器に接続されるという「設置位置の単位」で、「電気量測定装置21」及び「ホームサーバ22」を、データベースに基づき、実質的に「グループ」化した管理を行いつつ、どの「グループ」での異常が生じているかを判定して、規定された供給電圧値を逸脱した低圧需要家が属する「グループ」の供給元となる高圧配電系統に通知を行うことから、引用発明も実質的に低圧需要家をグループ化しているものといえる。
また、引用発明の電気量測定装置21及びホームサーバ22は、「低圧需要家識別番号及び電圧値に加えて低圧需要家の規定電圧逸脱情報」を、低圧配電系統の監視のために低圧系統監視装置1に送信するものであるから、電力系統における「電圧」及び「低圧需要家の規定電圧逸脱」に関するセンサを形成している。
そして、規定電圧逸脱が生じた低圧需要家識別番号を低圧需要家データベース14から検索して低圧需要家を特定することは、電圧調整のために低圧需要家の供給元を特定することであるから、供給元ごとに低圧需要家を実質的にグループ化するものであり、このことは、供給元が同一のグループにおける「低圧需要家の規定電圧逸脱」に関する「一組のセンサ」が実質的に形成されるものといえる。
したがって、引用発明の、「ホームサーバ22は、電気量測定装置21から電圧値を受信し(S81)、受信した電圧値が規定値を逸脱しているか又は規定値逸脱から復帰したかの判断を行い(S82)、規定値逸脱の発生又は規定値逸脱から復帰した場合は、規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を低圧系統監視装置1へ送信し(S83)、 低圧系統監視装置1では、ホームサーバ22から規定値逸脱の発生又は復帰を表すフラグ及び低圧需要家識別番号を受信し(S91)、低圧需要家識別番号を低圧需要家データベース14から検索して低圧需要家を特定し(S92)、高圧配電系統を監視するシステムへ通知し(S93)」は、実質的に、供給元に関する低圧需要家のグループ化が行われ、供給元が同一の低圧配電系統に規定電圧逸脱に関する「一組のセンサ」が形成されることになるから、本願発明の、「インテリジェント電気利用メータが前記電力系統上の1組のセンサを形成するように、前記複数のインテリジェント電気利用メータを前記インテリジェント電気利用メータそれぞれの設置位置に従ってグループ化すること」に相当する技術が用いられているものといえ、実質的な差異は生じない。

相違点3について検討する。
引用発明の低圧系統監視装置1は、受信した電圧値を用いて低圧配電系統の監視を行うものであるが、引用例には、「【0056】図17は本発明の実施例10におけるホームサーバ22の処理内容を示すフローチャート、図18は本発明の実施例10における低圧系統監視装置1の処理内容を示すフローチャートである。この実施例10は実施例1に加え、電気量測定装置21は当該宅内の電流を測定し、ホームサーバ22は電気量測定装置21で測定された電流値に低圧需要家識別番号を付与して低圧系統監視装置1に送信し、低圧系統監視装置1は、低圧需要家識別番号に対応して予め当該低圧需要家へ電力を供給している変圧器を判別し、同じ変圧器に接続された各々の低圧需要家の電流値を基に当該変圧器の負荷を計算して当該変圧器の利用率を算出するようにしたものである。」とあるように、受信した電流値を用いて低圧配電系統の監視を行うことも記載されているように、低圧系統監視装置1が監視するパラメータとして電流値に関係する値を用いることも格別のことではない。
そして、上記相違点1でも検討したように、引用発明の電気量測定装置21及びホームサーバ22を電圧値と電流値との積として求められる電力を測定するメータとして機能させることも適宜なし得るものであるといえ、引用発明の低圧系統監視装置1が、測定された電圧と電流との積として求めることが可能な電力の値に基づき、遠隔で監視を行うものとして、本願発明の「1組のセンサにおける各インテリジェント電気利用メータは遠隔で監視されることができ、各インテリジェント電気利用メータは当該インテリジェント電気利用メータの設置位置における電力を測定するメータである」のごとく構成することは、当業者が適宜なし得たことである。

相違点4、5について検討する。
引用発明は、低圧系統監視装置1が低圧需要家の規定電圧逸脱情報を受信した場合に規定電圧逸脱に対する処理を行うものであるが、低圧系統監視装置1は、低圧需要家から送信された電圧値に基づき低圧配電系統の監視を行うものでもあるから、受信された電圧値に基づく異常を検出するものでもあるといえ、上記相違点3で検討したように、電力の値を送るものとした場合に、異常検出を電力の値に基づいて行うものとすることは適宜なし得ることである。
したがって、本願発明の「1組のセンサのうちのインテリジェント電気利用メータによって読み取られる電力に対する異常が遠隔で検出されることに応答して、前記1組のセンサでの電力の異常があるかを判定する」ごとく構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。
また、判定された異常が低圧系統監視装置1によって回復の処理が可能であるならば、低圧系統監視装置1が異常回復のための処理を行うことも適宜なし得ることである。
そして、引用発明のごとく、低圧系統監視装置1が高圧配電系統を監視するシステムへ通知を行うことにより、間接的に配電される電力の電圧調整を行うことは、低圧系統監視装置1の判断に基づき、配電される電力の電圧調整を行うものであり、また、引用発明の低圧系統監視装置1は、インターネットを介して接続されるものであるから、任意の場所に設けることが可能といえ、引用発明の低圧系統監視装置1を電力系統の電圧を調整する機能を有するシステムに一体的に設けることで、本願発明のごとく、「電力系統を介して1組のセンサに配電される電力を調節する」機能を有する「分析サーバ」のごとく構成することは、当業者が適宜なし得る設計的な事項である。

5.結語
以上のとおり、本願の特許請求の範囲、請求項1?10の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、また、発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない。
そして、本願発明は引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
したがって、本願を拒絶すべきであるとした原査定は維持されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-16 
結審通知日 2016-09-21 
審決日 2016-10-04 
出願番号 特願2011-507938(P2011-507938)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H02J)
P 1 8・ 537- WZ (H02J)
P 1 8・ 536- WZ (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 坂東 博司  
特許庁審判長 堀川 一郎
特許庁審判官 矢島 伸一
藤井 昇
発明の名称 電力系統を管理する方法、および電力系統  
代理人 上野 剛史  
復代理人 村上 博司  
代理人 太佐 種一  
復代理人 松井 光夫  

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