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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1325351
審判番号 不服2016-6493  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-02 
確定日 2017-03-10 
事件の表示 特願2012-154154「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月30日出願公開、特開2014- 16502、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成24年7月9日の出願であって、平成27年11月19日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月25日付けで意見書及び手続補正書が提出され、同年2月4日付けで拒絶の査定(謄本送達日同年同月9日)がなされたものである。これに対して、同年5月2日付けで審判請求書が提出され、それと同時に手続補正書が提出され、同年10月20日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月20日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願請求項1ないし6に係る発明(以下それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成28年12月20日付け手続補正書の特許請求の範囲に記載された請求項1ないし6に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりのものである。

【請求項1】
第1の軸線について回転するように構成される感光ドラムであって、ドラム軸とドラム本体とを有する感光ドラムと、
前記感光ドラムと向かい合うスコロトロン型帯電器と、
前記感光ドラムに接触し、第2の軸線について回転することで前記感光ドラムに現像剤を供給して前記感光ドラムの周面に可視像を形成するように構成される現像ローラと、
第4の軸線について回転可能であり、前記現像ローラと接触し前記現像ローラに現像剤を供給する供給ローラであって、供給ローラ軸を有する供給ローラと、
現像剤を内部に収容し、前記現像ローラが設けられる現像フレームと、
前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに前記第1の軸線と重なるように、前記ドラム本体の鉛直方向下側に配置されるロアフィルムであって、前記第1の軸線が延びる方向に沿って延びるロアフィルムであって、前記現像ローラの周面に接触する一端と、前記現像フレームに固定され、前記一端とは反対の他端であって、前記一端よりも鉛直方向上側に配置される他端と、を有するロアフィルムと、を備え、
前記スコロトロン型帯電器によって帯電された転写残トナーは、前記スコロトロン型帯電器に印加される電圧よりも低い電圧が印加された前記現像ローラとの電位差により前記現像ローラのみによって回収され、
前記第2の軸線は、前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置されており、
前記第1の軸線と、前記第2の軸線と、前記第4の軸線とは、前記第1の軸線と直交する仮想線上に配置され、
前記現像フレームは、前記現像ローラと前記供給ローラとが収容される現像室と、水平方向において前記現像室と並んで形成されるトナー収容室と、を有し、
前記現像室の下壁は、
前記ロアフィルムが固定されるロアフィルム貼着面であって、前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに前記第1の軸線と重なるように前記ドラム本体の下側に配置されるロアフィルム貼着面であって、前記ロアフィルムの前記一端に向かうにつれて鉛直方向下側に傾斜するように延びるロアフィルム貼着面と、
前記ロアフィルム貼着面と連続し、前記供給ローラに向かうにつれて鉛直方向下方に傾斜するように延びる現像ローラ対向面であって、鉛直方向において前記ロアフィルムの前記一端の下方に間隔を空けて配置される現像ローラ対向面と、
前記現像ローラ対向面の前記ロアフィルム貼着面とは反対側の端部から鉛直方向下方に向かって窪むように形成され、前記供給ローラの周面に沿って延びる円弧形状の供給ローラ溝と、を有し、
前記ロアフィルム貼着面は、前記供給ローラ軸よりも鉛直方向上側に配置されていることを特徴とする、画像形成装置。
【請求項2】
前記感光ドラムに接触し、第3の軸線について回転するように構成される転写ローラであって、前記可視像を前記感光ドラムの周面から記録媒体に転写するように構成される転写ローラを、さらに備え、
前記転写ローラの前記第3の軸線は、前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置され、
前記感光ドラムには、前記現像ローラおよび前記転写ローラのみが接触されていることを特徴とする、請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記感光ドラムは、前記記録媒体を前記転写ローラとの接触部分を通過させるように、回転可能に構成され、
前記転写ローラは、前記感光ドラムとの接触部分における前記感光ドラムの回転方向上流側端部が前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写ローラは、前記接触部分のすべてが前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置されていることを特徴とする、請求項3に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記スコロトロン型帯電器は、
前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向上側において、前記感光ドラムに対して間隔を隔てて対向配置されていることを特徴とする、請求項2?4のいずれか一項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光ドラムの周面に静電潜像が形成されるように、前記感光ドラムに向けてレーザ光を出射可能に構成される露光装置を、さらに備え、
前記感光ドラムの周方向における前記スコロトロン型帯電器と前記転写ローラとの間には、前記感光ドラムと前記転写ローラとの接触部分を通過した前記記録媒体が排紙される排紙開口部が区画され、
前記感光ドラムの周方向における前記スコロトロン型帯電器と前記現像ローラとの間には、前記レーザ光が通過される露光開口部が区画されていることを特徴とする、請求項5に記載の画像形成装置。

第3 引用文献、引用発明等
1 引用文献1
原査定の拒絶の理由で引用された特開2000-315014号公報(以下「引用文献1」という。)には、以下の記載がある。

(1) 「【0129】〈実施例2〉(図7?図9)
本実施例は請求項9?22に記載した、クリーナーレスプロセスの画像形成装置、及びプロセスカートリッジについてのものである。」

(2) 「【0132】感光ドラム1は矢印の反時計方向にプロセススピード(周速度)94.2mm/secで回転駆動される。
【0133】この感光ドラム1は帯電ローラ2により所定の極性・電位に帯電される。本例では帯電バイアス印加電源S1から帯電ローラ2との間のニップ部(帯電部)aに放電開始電圧以上の直流電圧を印加する。具体的には帯電バイアスとして-1300Vの直流電圧を印加して、感光ドラム1面を帯電電位(暗部電位)-800Vに一様に接触帯電させている。」

(3) 「【0140】(2)現像装置4
4aは現像ローラ容器部であり、現像剤担持体としての現像ローラ4b、現像ローラに対するトナー供給ローラ(弾性ローラ)4c、トナー層厚規制ブレード4d、現像剤帯電手段としてのトナー帯電ローラ4e等を配設してある。4gは現像ローラ容器部4aに連設したトナーホッパー部、4fはこのトナーホッパー部内に配設したトナー攪拌部材、tはトナーホッパー部4g内に収容した現像剤としてのネガトナーである。
【0141】トナーホッパー部4g内のネガトナーtはトナー攪拌部材4fの回転動作で攪拌されて、トナーの一部が連通部4hから現像ローラ容器部4a内に補給される。
【0142】現像剤担持体としての現像ローラ4bは、NBRの基層とエーテルウレタンの表層で構成され、表面粗さRzで5?10μm、抵抗は104 ?106 Ωである。この現像ローラ4bは感光ドラム1に接触させてあり、感光ドラム1のプロセススピード94.2mm/secよりも速い170mm/secの周速度で感光ドラム1の回転に順方向に回転駆動される。この現像ローラ4bと感光ドラム1との対向接触部が現像部bである。
【0143】S2は現像ローラ4bに現像バイアスを印加する現像電源である。本例ではこの現像電源S2から現像ローラ4bに-300Vの現像バイアスを印加する。
【0144】トナー供給ローラ4cはウレタン発泡体ローラであり、現像ローラ4bの現像部b側とは略反対側において現像ローラ4bに接触させて配設してある。このトナー供給ローラ4cは現像ローラ4bとはカウンター方向に80mm/secで回転駆動される。そしてこのトナー供給ローラ4cにより現像ローラ4bの面に現像ローラ容器部4a内のトナーtが供給塗布される。」

(4) 「【0153】そして、その充分にマイナス帯電した現像ローラ上の担持トナーが引き続く現像ローラ4bの回転により現像部bに持ち運ばれて回転感光ドラム1上の静電潜像の画像部である露光明部に現像ローラ4b上のマイナス帯電トナーが移行付着して静電潜像が反転現像される。」

(5) 「【0157】すなわち、転写後の感光ドラム1面は転写残トナー等の付着物が存在しているまま引き続く感光ドラム1の回転で帯電部aを通ることで帯電ローラ2によって再帯電される。」

(6) 「【0160】次いで、現像部bにおいて、感光ドラム1面の静電潜像の非画像部に存在する転写残トナー等の付着物は現像ローラ4bに印加した現像バイアスと感光ドラム1面の静電潜像の非画像部の電位である暗部電位との電位差により感光ドラム1面側から現像装置4に回収され、静電潜像の画像部(露光部)は現像装置の現像ローラ4bでネガトナーにより反転現像される(現像同時クリーニング)。」

(7) 【図7】より、現像ローラの回転軸の軸線は、感光ドラムの回転軸の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置されていることが見て取れる。また、トナーホッパー部は、水平方向において現像ローラ容器部と並んで形成されていることが見て取れる。

上記(1)ないし(7)を総合すると、引用文献1には以下の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されている。

「クリーナーレスプロセスの画像形成装置であって、
感光ドラムは回転駆動され、
感光ドラムは帯電ローラにより所定の極性・電位に帯電され
現像ローラ容器部には、現像剤担持体としての現像ローラ、現像ローラに対するトナー供給ローラ(弾性ローラ)を配設してあり、
トナーホッパー部は、現像剤を収容し、
現像ローラは感光ドラムに接触させてあり、回転駆動され、
トナー供給ローラにより現像ローラの面に現像ローラ容器部内のトナーが供給塗布され、
現像ローラの回転により感光ドラム上の静電潜像の画像部である露光明部に現像ローラ上のマイナス帯電トナーが移行付着して静電潜像が反転現像され、
転写残トナー等の付着物は、帯電ローラによって再帯電され、
感光ドラム面の静電潜像の非画像部に存在する転写残トナー等の付着物は現像ローラに印加した現像バイアスと感光ドラム面の静電潜像の非画像部の電位である暗部電位との電位差により感光ドラム面側から現像装置に回収され、
現像ローラの回転軸の軸線は、感光ドラムの回転軸の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置され、
トナーホッパー部は、水平方向において現像ローラ容器部と並んで形成されている、
画像形成装置。」

2 引用文献2
原査定の拒絶の理由で引用された特開2008-170936号公報(以下「引用文献2」という。)には、以下の記載がある。

(1) 「【0003】
プロセスカートリッジは、筐体と、この筐体内に収容される現像剤と、現像剤を担持する現像ローラと、この現像ローラに担持される現像剤の層厚を規制するためのブレード組立体を備えている。ブレード組立体は、用紙の幅方向に延びたヘラ状のブレードを有し、このブレードが現像ローラに押し当てられることで現像剤の層厚が規制されている。」

(2) 「【0024】
スコロトロン型帯電器33は、感光ドラム32の上方に、感光ドラム32に接触しないように、所定間隔を隔てて対向して配置されている。このスコロトロン型帯電器33は、タングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型の帯電器であり、感光ドラム32の表面を一様に正極性に帯電させるように構成されている。」


(3) 「【0057】
現像ローラ36は、図4に示すように筐体35に回転可能に支持されており、その下部にはロアフィルム76が摺接して現像ローラ36の下方からのトナー漏れを防止している。ロアフィルム76は、プラスチック製のフィルムからなり、筐体35の開口部75の下側の縁に沿って貼付され、現像ローラ36の表面に弾性的に当接している。」

(4) ロアフィルム76は、感光ドラムの軸線が延びる方向に沿って延びるものであることは自明である。

(5) 【図1】及び【図4】から、以下の点が見て取れる。
ア ロアフィルムは、感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに感光ドラムの軸線と重なるようにドラム本体の鉛直方向下側に配置されていないこと。
イ ロアフィルムは、筐体に固定され、現像ローラの周面に接触する一端と、筐体に固定され、前記一端とは反対の他端を備え、前記一端よりも鉛直方向下側に配置される他端を有すること。
ウ 筐体の下壁は、前記ロアフィルムが固定されるロアフィルム貼着面を備え、ロアフィルム貼着面は、前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに感光体ドラムの軸線と重ならず、前記ドラム本体の下側に配置されるものではなく、前記ロアフィルムの前記一端に向かうにつれて鉛直方向下側に傾斜するように延びるものでもないこと。
エ 筐体の前記ロアフィルム貼着面と連続して、鉛直方向において前記ロアフィルムの前記一端の下方に間隔を空けて配置される現像ローラ対向面は、供給ローラに向かうにつれて鉛直方向下方に傾斜するように延びるものではないこと。
オ 筐体は、現像ローラ対向面のロアフィルム貼着面とは反対側の端部から鉛直方向下方に向かって窪むように形成され、前記供給ローラの周面に沿って延びる円弧形状の供給ローラ溝を有していること。
カ ロアフィルム貼着面は、前記供給ローラ軸よりも鉛直方向下側に配置されていること。

上記(1)ないし(5)を総合すると、引用文献2には以下の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「筐体と、この筐体内に収容される現像剤と、現像剤を担持する現像ローラと、を備え、
スコロトロン型帯電器は、感光ドラムの上方に、感光ドラムに接触しないように、所定間隔を隔てて対向して配置され、このスコロトロン型帯電器は、タングステンなどの帯電用ワイヤからコロナ放電を発生させる正帯電用のスコロトロン型の帯電器であり、感光ドラムの表面を一様に正極性に帯電させるように構成され、
現像ローラは、その下部にはロアフィルムが摺接して現像ローラの下方からのトナー漏れを防止し、ロアフィルムは、筐体に貼付され、
ロアフィルムは、感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに感光ドラムの軸線と重なるようにドラム本体の鉛直方向下側に配置されておらず、
ロアフィルムは、筐体に固定され、現像ローラの周面に接触する一端と、現像フレームに固定され、前記一端とは反対の他端であって、前記一端よりも鉛直方向下側に配置される他端と、を有し、
筐体の下壁は、前記ロアフィルムが固定されるロアフィルム貼着面を備え、ロアフィルム貼着面は、前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに感光体ドラムの軸線と重ならず、前記ドラム本体の下側に配置されるものではなく、前記ロアフィルムの前記一端に向かうにつれて鉛直方向下側に傾斜するように延びるものでなく、
筐体の前記ロアフィルム貼着面と連続して、鉛直方向において前記ロアフィルムの前記一端の下方に間隔を空けて配置される現像ローラ対向面は、供給ローラに向かうにつれて鉛直方向下方に傾斜するように延びるものではなく、
筐体は、現像ローラ対向面のロアフィルム貼着面とは反対側の端部から鉛直方向下方に向かって窪むように形成され、前記供給ローラの周面に沿って延びる円弧形状の供給ローラ溝を有しており、
ロアフィルム貼着面は、前記供給ローラ軸よりも鉛直方向下側に配置されている、現像装置。」

3 引用文献3
原査定の拒絶の理由で引用された特開2010-91981号公報(以下「引用文献3」という。)には、以下の記載がある。

(1) 「【0050】
すなわち、現像ローラ3と供給ローラ5との軸間は一定距離を保っている。感光体ドラム1の長手方向に直角の断面において、感光体ドラム1の回転中心と現像ローラ3の回転中心を結ぶ直線をP1、現像ローラの回転中心と供給ローラ5の回転中心を結ぶ直線をP2とする。この直線P1と直線P2のなす角を変更可能とする角度変更機構40が設けられている。この角度変更機構40によって、直線P1と直線P2のなす角を変更することにより、現像ローラ3、供給ローラ5、及び像担持体間、すなわち感光体ドラム1間の相互の加圧力を制御可能としている。」

(2) 「【0068】
感光体ドラム1、現像ローラ3及び供給ローラ5の回転中心が一直線上に並んだ時(θ=0度)、当接圧は最も高く、θが大きくなるに連れて小さくなる。」

(3) 「【0069】
本実施例は、現像装置Dの使用期間における後半で発生しやすい濃度低下や、画像不良等の問題に対応して改善をするものである。前記濃度低下は、現像装置の使用が進むことで現像装置中の現像剤tがストレスを受け、電荷付与能力が低下することを原因として発生しやすい。そのため、熱による現像剤の表面劣化や、湿度による低抵抗化の傾向が顕著になりやすい高温高湿度環境下などでは、特に大きな問題になりやすい。」

(4) 「【0071】
しかしながら、前記説明のように、剥がれにくい現像剤が発生すると、リセットが十分に行われず、供給ローラ5との当接部を通過した後も、現像ローラ3表面には、先の現像残の影響が残った現像剤のコート層が形成される。このため、この現像残の像が、再び、画像上に現れる、所謂ゴースト画像が発生しやすくなるという問題があった。
【0072】
これらの問題に対して、本実施例においては、現像装置の使用期間における後半で、現像ローラ3と供給ローラ5との加圧力を上げることで、現像剤の供給力を高め、画像濃度の低下を抑えることを可能にしている。また、同様に、加圧力を上げることで、現像剤の剥ぎ取り能力を高め、ゴースト画像の発生を抑えることを可能にしている。」

上記(1)ないし(4)を総合すると、引用文献3には次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「現像ローラと供給ローラとの軸間は一定距離を保っており、感光体ドラムの長手方向に直角の断面において、感光体ドラムの回転中心と現像ローラの回転中心を結ぶ直線をP1、現像ローラの回転中心と供給ローラの回転中心を結ぶ直線をP2とし、この直線P1と直線P2のなす角を変更可能とする角度変更機構が設けられ、この角度変更機構によって、直線P1と直線P2のなす角を変更することにより、現像ローラ、供給ローラ、及び像担持体間、すなわち感光体ドラム間の相互の加圧力を制御可能とし、
感光体ドラム、現像ローラ及び供給ローラの回転中心が一直線上に並んだ時(θ=0度)、当接圧は最も高く、θが大きくなるに連れて小さくなり、
現像装置の使用が進むことで現像装置中の現像剤がストレスを受け、電荷付与能力が低下する問題、及び剥がれにくい現像剤が発生すると、ゴースト画像が発生しやすくなるという問題に対して、
現像装置の使用期間における後半で、現像ローラと供給ローラとの加圧力を上げることで、現像剤の供給力を高め、画像濃度の低下を抑えることを可能にし、また、同様に、加圧力を上げることで、現像剤の剥ぎ取り能力を高め、ゴースト画像の発生を抑えることを可能にしている、現像装置。」

4 引用文献4
原査定の拒絶の理由で引用された特開2011-75653号公報(以下「引用文献4」という。)には、以下の記載がある。

「【0070】
特に、このプロセスユニット9では、現像ローラ17が供給ローラ18の反対側において感光ドラム14に当接されるように、現像カートリッジ13がプロセスユニット9に装着されている(すなわち、現像ローラ17、供給ローラ18および感光ドラム14が略一直線状に並び、現像ローラ17の感光ドラム14への当接方向(第2傾斜方向Y)と、第1線L1に沿う方向とが略平行である。)ので、現像ローラ17の感光ドラム14への当接方向(第2傾斜方向Y)において、プロセス側電極46のコンパクト化を図ることができる。」

以上より、引用文献4には次の発明(以下、「引用発明4」という。)が記載されている。

「現像ローラが供給ローラの反対側において感光ドラムに当接されるように、現像カートリッジがプロセスユニットに装着され、すなわち、現像ローラ、供給ローラおよび感光ドラムが略一直線状に並ぶので、現像ローラの感光ドラムへの当接方向において、プロセス側電極のコンパクト化を図ることができるプロセスユニット。」

第4 当審の判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると、引用発明1の「回転駆動」される「感光ドラム」は、「軸線」について回転するように構成されていることは自明であり、引用発明1の当該「軸線」は、本願発明1の「第1の軸線」に相当する。また、引用発明1の「感光ドラム」は、「ドラム軸とドラム本体とを有する」ことは自明であるから、本願発明1の「ドラム軸とドラム本体とを有する感光ドラム」に相当する。
引用発明1の「感光ドラム」を「所定の極性・電位に帯電」する「帯電ローラ」は、本願発明1の「感光ドラムと向かい合うスコロトロン型帯電器」と、「帯電器」である点で共通する。
引用発明1の「トナー」は、本願発明1の「現像剤」に相当する。
引用発明1の「回転駆動」される「現像ローラ」は、「軸線」について回転することは自明であるから、当該「軸線」は本願発明1の「第2の軸線」に相当する。したがって、引用発明1の「感光ドラムに接触させてあり、回転駆動され」、「感光ドラム上の静電潜像の画像部である露光明部に現像ローラ上のマイナス帯電トナーが移行付着して静電潜像が反転現像され」る「現像ローラ」は、本願発明1の「前記感光ドラムに接触し、第2の軸線について回転することで前記感光ドラムに現像剤を供給して前記感光ドラムの周面に可視像を形成するように構成される現像ローラ」に相当する。
引用発明1の「現像ローラの面に現像ローラ容器部内のトナーが供給塗布され」る「トナー供給ローラ」は、「ローラ」であるから「軸線」について回転可能であって、「軸」を備えていることは自明であり、当該「軸線」、「軸」は、それぞれ本願発明1の「第4の軸線」、「供給ローラ軸」に相当する。また、引用発明1の「トナー供給ローラ」は「現像ローラ」に「トナー」を「塗布」するものであるから、「現像ローラ」と接触することは自明である。したがって、引用発明1の「トナー供給ローラ」は、本願発明1の「第4の軸線について回転可能であり、前記現像ローラと接触し前記現像ローラに現像剤を供給する供給ローラであって、供給ローラ軸を有する供給ローラ」に相当する。
引用発明1の「転写残トナー等の付着物は、帯電ローラによって再帯電され、
感光ドラム面の静電潜像の非画像部に存在する転写残トナー等の付着物は現像ローラに印加した現像バイアスと感光ドラム面の静電潜像の非画像部の電位である暗部電位との電位差により感光ドラム面側から現像装置に回収され」ることは、本願発明1の「帯電器によって帯電された転写残トナー」は、「帯電器に印加される電圧よりも低い電圧が印加された前記現像ローラとの電位差により前記現像ローラのみによって回収され」ることに相当する。
引用発明1の「現像ローラの回転軸の軸線は、感光ドラムの回転軸の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置され」ていることは、本願発明1の「前記第2の軸線は、前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置されて」いることに相当する。
引用発明1の「現像剤担持体としての現像ローラ、現像ローラに対するトナー供給ローラ(弾性ローラ)を配設」した「現像ローラ容器部」は、本願発明1の「前記現像ローラと前記供給ローラとが収容される現像室」に相当する。また、引用発明1の「現像剤を収容」し、「水平方向において現像ローラ容器部と並んで形成されている」「トナーホッパー部」は、引用発明1の「水平方向において前記現像室と並んで形成されるトナー収容室」に相当する。そして、引用発明1の「現像ローラ容器部」及び「トナーホッパー部」は、「現像ローラ」と「現像剤」を収容するものであるから、引用発明1の「現像剤を内部に収容し、前記現像ローラが設けられる現像フレーム」であって、「前記現像ローラと前記供給ローラとが収容される現像室と、水平方向において前記現像室と並んで形成されるトナー収容室と、を有」する「現像フレーム」に相当する。
以上より、本願発明1と引用発明1とは、
「第1の軸線について回転するように構成される感光ドラムであって、ドラム軸とドラム本体とを有する感光ドラムと、
帯電器と、
前記感光ドラムに接触し、第2の軸線について回転することで前記感光ドラムに現像剤を供給して前記感光ドラムの周面に可視像を形成するように構成される現像ローラと、
第4の軸線について回転可能であり、前記現像ローラと接触し前記現像ローラに現像剤を供給する供給ローラであって、供給ローラ軸を有する供給ローラと、
現像剤を内部に収容し、前記現像ローラが設けられる現像フレームと、
を備え、
前記帯電器によって帯電された転写残トナーは、前記帯電器に印加される電圧よりも低い電圧が印加された前記現像ローラとの電位差により前記現像ローラのみによって回収され、
前記第2の軸線は、前記第1の軸線を含む水平な平面よりも鉛直方向下側に位置するように配置されており、
前記現像フレームは、前記現像ローラと前記供給ローラとが収容される現像室と、水平方向において前記現像室と並んで形成されるトナー収容室と、を有する、
画像形成装置。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
本願発明1では、帯電器が「感光ドラムと向かい合うスコロトロン型帯電器」であるのに対し、引用発明1では「帯電ローラ」である点。

[相違点2]
本願発明1は、「前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに前記第1の軸線と重なるように、前記ドラム本体の鉛直方向下側に配置されるロアフィルムであって、前記第1の軸線が延びる方向に沿って延びるロアフィルムであって、前記現像ローラの周面に接触する一端と、前記現像フレームに固定され、前記一端とは反対の他端であって、前記一端よりも鉛直方向上側に配置される他端と、を有するロアフィルム」を備え、「前記現像室の下壁は、
前記ロアフィルムが固定されるロアフィルム貼着面であって、前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに前記第1の軸線と重なるように前記ドラム本体の下側に配置されるロアフィルム貼着面であって、前記ロアフィルムの前記一端に向かうにつれて鉛直方向下側に傾斜するように延びるロアフィルム貼着面と、
前記ロアフィルム貼着面と連続し、前記供給ローラに向かうにつれて鉛直方向下方に傾斜するように延びる現像ローラ対向面であって、鉛直方向において前記ロアフィルムの前記一端の下方に間隔を空けて配置される現像ローラ対向面と、
前記現像ローラ対向面の前記ロアフィルム貼着面とは反対側の端部から鉛直方向下方に向かって窪むように形成され、前記供給ローラの周面に沿って延びる円弧形状の供給ローラ溝と、を有し、
前記ロアフィルム貼着面は、前記供給ローラ軸よりも鉛直方向上側に配置されている」のに対し、引用発明1はそうではない点。

[相違点3]
本願発明1は「前記第1の軸線と、前記第2の軸線と、前記第4の軸線とは、前記第1の軸線と直交する仮想線上に配置され」るのに対し、引用発明1ではそうではない点。

(2)相違点についての判断
上記相違点1に先立ち上記相違点2について検討する。
引用文献2の「感光ドラム」、「感光ドラムの軸線」、「ロアフィルム」、「現像ローラ」、「ロアフィルム貼着面」、「供給ローラ」は、それぞれ本願発明1の「感光ドラム」、「第1の軸線」、「ロアフィルム」、「現像ローラ」、「ロアフィルム貼着面」、「供給ローラ」に相当する。
引用発明2の「筐体」は、「現像剤と、現像剤を担持する現像ローラ」を「収容」するものであるから、本願発明1の「現像剤を内部に収容し、前記現像ローラが設けられる現像フレーム」に相当する。
したがって、引用発明2は、上記相違点2の「前記第1の軸線が延びる方向に沿って延びるロアフィルムであって、前記現像ローラの周面に接触する一端と、前記現像フレームに固定され、前記一端とは反対の他端」を有する「ロアフィルム」を備え、「前記現像室の下壁は前記ロアフィルムが固定されるロアフィルム貼着面」と、「前記ロアフィルム貼着面と連続し」、「鉛直方向において前記ロアフィルムの前記一端の下方に間隔を空けて配置される現像ローラ対向面」と、「前記現像ローラ対向面の前記ロアフィルム貼着面とは反対側の端部から鉛直方向下方に向かって窪むように形成され、前記供給ローラの周面に沿って延びる円弧形状の供給ローラ溝と、を有し」ている点を備えている。
しかしながら、引用発明2は、「ロアフィルム」は「前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに前記第1の軸線と重なるように、前記ドラム本体の鉛直方向下側に配置され」、「前記一端よりも鉛直方向上側に配置される他端」を有し、「ロアフィルム貼着面」は、「前記感光ドラムを鉛直方向下側に投影したときに前記第1の軸線と重なるように前記ドラム本体の下側に配置され」、「前記ロアフィルムの前記一端に向かうにつれて鉛直方向下側に傾斜するように延び」、「前記供給ローラ軸よりも鉛直方向上側に配置され」、「現像ローラ対向面」は「供給ローラに向かうにつれて鉛直方向下方に傾斜するように延びる」点を備えていない。
引用発明3、4も同様に、この点を備えていないし、この点が設計的事項であるとする根拠はない。
そして、この点により、本願発明1は、発明の詳細な説明【0156】から【0159】に記載された
「【0156】
そのため、ドラム本体57の周面から重力により付着物(例えば、紙粉などの異物)が落下しても、ロアフィルム36の上面に堆積する。
【0157】
そして、ロアフィルム36の前端部が、現像ローラ34のゴムローラ66の周面に接触されているので、堆積された付着物は、ゴムローラ66の周面に回収される。
【0158】
とりわけ、ロアフィルム36は、その後端部が、ゴムローラ66の周面に接触する前端部よりも上側に配置されているので、ロアフィルム36の上面に堆積された付着物は、ロアフィルム36の上面に沿って前方に向かって移動され、ゴムローラ66の周面に到達する。そして、ゴムローラ66の周面に到達した付着物は、ゴムローラ66の周面に保持され、現像ローラ34の回転駆動に伴って、現像フレーム25内に確実に回収される。
【0159】
そのため、感光ドラム20のドラム本体57の周面から重力により付着物が落下しても、ロアフィルム36および現像ローラ34により、感光ドラム20の周辺が付着物により汚染されることが抑制できる。」
という格別の効果を奏するものである。
したがって、相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明2ないし4に基づいて、当業者が容易に想到し得たものとはいえない。
よって、相違点1、3について検討するまでもなく、本願発明1は引用発明1ないし4に係る発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

2 本願発明2ないし6について
本願発明2ないし6は、本願発明1を引用して限定を付加したものであるから、本願発明1同様に、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

3 まとめ
以上のとおり、本願発明1ないし6は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定は、請求項1ないし6に係る発明について、上記引用文献1ないし4に記載の発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないというものである。しかしながら、上記のとおり、本願発明1ないし6は、引用発明1ないし4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 当審拒絶理由について
当審拒絶理由は、請求項1ないし6に係る発明が不明確であるから、特許法第36条第6項第2号の規定により、本願は特許をうけることができない、というものである。しかしながら、当審拒絶理由は、平成28年12月20日付け手続補正書による手続補正により、請求項1ないし6に係る発明は明確となったから、当審拒絶理由は解消した。

第7 むすび
以上のとおり、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-22 
出願番号 特願2012-154154(P2012-154154)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (G03G)
P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 田代 憲司佐々木 創太郎齋藤 卓司  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 吉村 尚
植田 高盛
発明の名称 画像形成装置  

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