• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04M
管理番号 1325376
審判番号 不服2016-11651  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-03 
確定日 2017-03-21 
事件の表示 特願2014-538600「電子機器及び転送制御方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 4月 3日国際公開、WO2014/050996、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年9月26日(パリ条約による優先権主張 2012年9月28日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年10月26日付けで拒絶理由が通知され、同年12月25日付けで手続補正がされ、平成28年5月17日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年8月3日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに同日付けで手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。

2.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明6」という。)は、平成28年8月3日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項6に記載された事項により特定されるものであると認める。
本願発明1は、以下のとおりのものである。
「【請求項1】
第1通信方式で通信を行う第1通信部と、
第2通信方式で通信を行う第2通信部と、
前記第1通信部が着信を検出した場合、前記着信の着信番号に紐付けられた情報を付加した前記着信を前記第2通信部から特定の電子機器に転送する制御部と
を備え、
前記制御部は、
所定の前記着信番号の着信を転送対象とし、
前記着信が、着信拒否を設定している電話番号からの着信である場合、着信拒否に関する情報を前記着信番号に紐付けられた情報として取得する電子機器。」

本願発明2ないし本願発明5は、本願発明1を減縮した発明である。

本願発明6は、本願発明1に対応する電子機器が行う転送制御方法の発明であり、本願発明1とカテゴリ表現上の差異となる発明である。

3 原査定の概要

原査定時における本願請求項1-7に係る発明は、以下の引用文献1-3に基づいて周知技術(引用文献4-6)を参酌することにより、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>

1.特開2009-111888号公報
2.特開2004-159099号公報
3.特開2002-152829号公報
4.特開平5-56172号公報
5.特開平9-200301号公報
6.特開2002-64640号公報

(当審注:本願発明1は、拒絶原査定時の請求項5に対応しているから、該請求項5に関する理由について検討する。そのため、原査定の各引用文献の番号とは異なっている。)

4.引用文献、引用発明、周知技術
(1)引用文献1
原査定に引用された引用文献1(特開2009-111888号公報)(以下、「引用例1」という。)には、「近距離無線通信機能付き携帯端末を用いた携帯無線通信方法」に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

ア.「【0020】
図1において、2台の携帯端末A,Bは、それぞれLCD等により構成された表示部を有する表示デバイスA1,B1と、キー操作部を有する入力デバイスA2,B2と、通話を行う為の機能としての、スピーカまたはレシーバ等の受話器を有する音声出力デバイスA3,B3、およびマイクを有する音声入力デバイスA4,B4と、携帯電話基地局との間で無線により音声又はデータの送受信を行う無線部A5,B5と、携帯端末A,B間での近距離無線通信を行う手段としてBluetoothモジュールA6,B6を備えている。
【0021】
なお図の携帯端末では、本発明と直接関連するブロックのみを示している。図示されていないが、携帯端末A,Bは、これらの各ブロックの動作を制御するための制御部としての、CPU、CPUの動作プログラムや各種データ等を格納するROM、CPUによりプログラム実行の際に一時記憶領域として用いられるRAM等を有しており、また各ブロックに動作電流を供給するための電源等、一般的な携帯端末が有している各種機能ブロックが備えられている。」(7頁)

イ.「【0028】
なお上記動作は、携帯端末Bによる通話発信動作を携帯端末Aからの指示で行う場合の動作であるが、携帯端末Bに着信があった場合に、着信動作を携帯端末Aからの指示で行うことも可能である。その場合には、公衆無線通信網から携帯端末Bへの着信信号を、MODEM11の接続を通して近距離通信により携帯端末Aへ送信し、携帯端末Aからこの近距離通信により携帯端末Bに着呼に対する接続指示を発行することによって携帯端末Bと公衆無線通信網間の回線接続を実行させる。」(8頁)

摘記事項ア.およびイ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、
摘記事項ア.の【0020】の「携帯電話基地局との間で無線により音声又はデータの送受信を行う無線部A5,B5と、携帯端末A,B間での近距離無線通信を行う手段としてBluetoothモジュールA6,B6」と、摘記事項イ.の【0028】の「携帯端末Bに着信があった場合に、・・・(省略)・・・公衆無線通信網から携帯端末Bへの着信信号を、MODEM11の接続を通して近距離通信により携帯端末Aへ送信し、」と、【0021】の「携帯端末A,Bは、これらの各ブロックの動作を制御するための制御部としての、CPU・・・(省略)・・・備えられている。」の各記載より、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

(引用発明1)
「携帯電話基地局との間で無線により音声又はデータの送受信を行う無線部と、
近距離無線通信を行うBluetoothモジュールと、
前記無線部に着信があった場合、着信信号をBluetoothモジュールから携帯端末Aへ送信する動作を制御するための制御部としてのCPUを備える携帯端末B。」

(2)引用文献2
原審の拒絶理由に引用された引用文献2(特開2004-159099号公報)(【0010】?【0012】)(以下、「引用例2」という。)には、「通話装置、着信表示装置及び着信表示システム」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

「携帯電話機に着信があると、CPUが、
電話番号がすでに登録されたものであれば、発信者の発信者名等の情報を取得し、赤外線パルス送信し、テレビの画面に、発信者の電話番号及び発信者名を表示する着信表示システム。」

(3)引用文献3
原査定に引用された引用文献3(特開2002-152829号公報)(以下、「引用例3」という。)には、「移動体電話機及びそれに用いる音声入出力装置」(発明の名称)に関して、図面とともに以下の事項が記載されている。

カ.「【0015】・・・(省略)・・・また、CPU15には、着信時に無線部16から着信情報を受信して発信者の電話番号を検出する電話番号検出装置17が接続されている。さらに、CPU15には、無線部16により通信する相手の名前、電話番号などの発信者情報を予め記録する記録手段19を接続している。従って、本体10は、無線部16が着信状態になった場合、CPU15の制御により電話番号検出手段17が無線部16の着信情報から電話番号情報を検出するとともに、この電話番号情報と記録手段19に予め記録した発信者情報とを比較する。そして、本体10内では、CPU15の制御により比較した電話番号情報と発信者情報とが一致した場合、記録手段19の名前、電話番号などの発信者情報を表示部12に表示する。ここで、記録手段19は、表示部12に表示する名前、電話番号などの発信者情報に対して着信拒否または会社、友人などの識別設定を行えるように設けている。
【0016】また、本発明による移動体電話機の実施の形態は、図9に示した従来技術とは異なり、表示部12に表示する発信者情報を本体10とコード21aを通じて接続した音声入出力装置20の表示部24bに表示できるように形成している。この本発明による移動体電話機に用いる音声入出力装置20の実施の形態は、図1に示したように、移動体電話機の本体10に接続するプラグ22と、このプラグ22にコード21aにより接続されて本体10の通信時に音声を収音する送話用のマイク24cを有して音声情報の出力を操作する操作ボタン24aを備えたコントロール部24と、このコントロール部24から更なるコード21bにより接続されて使用者の耳に装着して音声情報を送出するヘッドホン状の出力部26とを備えている。
【0017】ここで、プラグ22は、本体10の外側面に形成したジャック部(図示せず)に接続し、本体から音楽または着信音及び通信音などの音声情報を出力部26に送出できるように形成している。このプラグ22は、本体10のジャック部に差し込むと、本体10のマイク14による送話用音声の収音がコントロール部24のマイク24cに切り替わるとともに、スピーカ13による音声の出力が出力部26に切り替わるように形成されている。また、プラグ22は、コード21aを介してコントロール部24に接続されている。」(5頁)

キ.「【0021】そして、このような本体10の待受け時に着信があった場合、図2及び図4に示すように、ステップS1の待受け状態からCPU15がオーディオ部18の動作状況を確認するステップS2を実行するとともに、無線部16の着信情報(電話番号等)を確認するステップS3を実行する。その後、CPU15は、着信情報に基づいて電話番号検出部17により電話番号を検出し、この電話番号と記録手段19の発信者情報とを比較して一致する情報を検索する。この際、CPU15は、検索した情報に着信拒否が設定されているかをステップS4により確認する。そして、発信者情報に着信拒否が設定されていない場合、CPU15は出力部26(図1参照)に着信音を出力して着信状態を知らせるとともに、コントロール部24の表示部24bに発信者情報を表示するステップS5を実行する。また、ステップS4において発信者情報に着信拒否が設定されている場合、CPU15は出力部26に着信音を出力せず、コントロール部24の表示部24bに着信拒否の対象であることを表示するステップS6を実行する。
【0022】ここで、ステップS5による発信者情報の表示は、図5に示すように、表示部24bに発信者の名前、電話番号などの発信者情報を表示し、着信状態にあることを知らせる。また、ステップS6による着信拒否の表示は、図6(a)に示すように表示部24bに発信者の名前、電話番号などの発信者情報と所定のマークAとによる表示、または図6(b)に示すように表示部24bに発信者情報を白黒反転表示(例えば、着信拒否設定がない場合はポジ表示、着信拒否設定がある場合はネガ表示)のいずれかにより表示状態を切り替えて直観的に着信状態を知らせる。」(6頁)

摘記事項カ.?キ.の記載及び図面ならびにこの分野における技術常識を考慮すると、

(カ)摘記事項カ.の【0015】の「無線部16が着信状態になった場合、」と、同【0016】の「移動体電話機の本体10に接続するプラグ22と、このプラグ22にコード21aにより接続されて本体10の通信時に音声を収音する送話用のマイク24cを有して音声情報の出力を操作する操作ボタン24aを備えたコントロール部24と、」と、同【0017】の「このプラグ22は、本体10のジャック部に差し込むと、本体10のマイク14による送話用音声の収音がコントロール部24のマイク24cに切り替わるとともに、スピーカ13による音声の出力が出力部26に切り替わるように形成されている。また、プラグ22は、コード21aを介してコントロール部24に接続されている。」と、摘記事項キ.の【0021】の「無線部16の着信情報(電話番号等)を確認するステップS3を実行する。その後、CPU15は、着信情報に基づいて電話番号検出部17により電話番号を検出し、この電話番号と記録手段19の発信者情報とを比較して一致する情報を検索する。この際、CPU15は、検索した情報に着信拒否が設定されているかをステップS4により確認する。」と、同【0021】の「そして、発信者情報に着信拒否が設定されていない場合、CPU15は出力部26(図1参照)に着信音を出力して着信状態を知らせるとともに、コントロール部24の表示部24bに発信者情報を表示するステップS5を実行する。」と、同【0021】の「ステップS4において発信者情報に着信拒否が設定されている場合、CPU15は出力部26に着信音を出力せず、コントロール部24の表示部24bに着信拒否の対象であることを表示するステップS6を実行する。」との各記載より、引用例3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認める。

(引用発明3)
「無線部と、
コードを介して音声入出力装置に接続される出力部と、
着信があった場合、着信情報に基づいて検索された発信者情報を着信音とともに前記音声入出力装置に出力するCPUとを備え、前記CPUは、着信拒否が設定されていない着信を前記音声入出力装置に出力する対象とし、前記着信が、着信拒否が設定されている電話番号からの着信である場合、着信拒否が設定されていることを前記電話番号を検索して確認する
移動体電話機。」

(5)周知技術
原審の拒絶査定時に、周知技術として加えられた引用文献4(特開平5-56172号公報)(【0003】、【0009】、図2)、引用文献5(特開平9-200301号公報)(【0024】、【0025】)、引用文献6(特開2002-64640号公報)(【0024】-【0026】)より、「電話の着信転送において、所定の電話番号の着信を転送対象とすること。」は周知技術(以下、「周知事項」という。)といえる。

5.当審の判断
(1)対比
本願発明1と引用発明1とを対比する。

a.引用発明1の「携帯端末A」、「携帯端末B」は、それぞれ、本願発明1の「特定の電子機器」、「電子機器」に含まれる。
b.引用発明1の「携帯電話基地局との間で無線により音声又はデータの送受信を行う」が所定の通信方式により実行されることは自明であるから、引用発明1の「携帯電話基地局との間で無線により音声又はデータの送受信を行う」は、本願発明1の「第1通信方式」に含まれる。
c.引用発明1の「近距離無線通信」は、「Bluetoothモジュール」で行うものであり、本願発明の1の「第2の通信方式」は、本願明細書【0022】の「第2の通信方式は、近距離無線通信方式である。近距離無線通信方式には、Bluetooth(登録商標)、・・・(略)・・・等が含まれる。」の記載より、Bluetooth通信方式を含むものなので、引用発明1の「近距離無線通信」は、本願発明1の「第2の通信方式」に含まれる。
d.引用発明1の「前記無線部に着信があった場合、」は、携帯端末Bは、着信を検出することは自明であるから、本願発明1の「前記第1通信部が着信を検出した場合」に含まれる。
e.引用発明1の「着信信号をBluetoothモジュールから携帯端末Aへ送信する動作を制御するための制御部としてのCPU」は、前記無線部に着信があった場合、着信信号をBluetoothモジュールから携帯端末Aへ送信する動作を制御するので、本願発明1の「前記第1通信部が着信を検出した場合、前記着信の着信番号に紐付けられた情報を付加した前記着信を前記第2通信部から特定の電子機器に転送する制御部」とは、「第1通信部が着信を検出した場合、第2通信部から特定の電子機器に通知する制御手段」である点で共通する。

以上より、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致し、相違する。

(一致点)
「第1通信方式で通信を行う第1通信部と、
第2通信方式で通信を行う第2通信部と、
前記第1通信部が着信を検出した場合、
前記着信を第2通信部から特定の電子機器に通知する制御手段と、
を備え、
前記制御手段は着信を転送対象とする
電子機器。」

(相違点1)一致点の「前記着信」が、本願発明1が、「前記着信の着信番号に紐付けられた情報を付加した前記着信」であるのに対して、引用発明1はそのような特定がない点。

(相違点2)一致点の「着信を転送対象」の「着信」が、本願発明では、「所定の前記着信番号の着信」に限定されているのに対し、引用発明1はそのような限定がない点。
それに伴い、本願発明では、「前記着信が、着信拒否を設定している電話番号からの着信である場合、着信拒否に関する情報を前記着信番号に紐付けられた情報として取得する」であるのに対して、引用発明1は、そのような特定がない点。

(2)判断
事案に鑑み(相違点2)について検討する。
本願発明1において、「前記着信が、着信拒否を設定している電話番号からの着信である場合、着信拒否に関する情報を前記着信番号に紐付けられた情報として取得する」と「前記着信の着信番号に紐付けられた情報を付加した前記着信を前記第2通信部から特定の電子機器に転送する」との記載を照らし合わせると「所定の前記着信番号の着信を転送対象とし、」の「転送対象」となる「所定の前記着信番号の着信」には、「着信拒否を設定している電話番号からの着信」が含まれることは明らかであり、これは本願明細書【0048】の「さらに、制御部10は、記憶部9の着信拒否設定データ9dから着信番号と一致する電話番号を検索し、該当する電話番号が着信を拒否する電話番号として登録されている場合には、着信拒否の設定に関する情報を着信番号に紐付けられた情報として取得する。」の記載とも整合する。そして、「電話の着信転送において、所定の電話番号の着信を転送対象とすること」が周知の技術(「4 引用文献、引用発明等の項中の「(5)周知技術」参照)であったとしても、着信拒否を設定している電話番号の着信を転送することまでは周知ということはできない。
引用発明2,引用発明3、周知事項のいずれにも、そのような事項は記載されておらず当業者に自明のものでもない。よって、本願発明1の(相違点2)に係る構成は、当業者が引用発明1ないし引用発明3に基づいて周知技術を参酌しても容易に想到し得たとはいえない。

また、本願発明2ないし本願発明5は、本願発明1を減縮した発明であり、本願発明6は、本願発明1に対応する電子機器が行う転送制御方法の発明であり、本願発明1とはカテゴリ表現上の差異しかない発明であるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明1ないし引用発明3に基づいて周知技術を参酌することにより容易に想到し得たとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明1ないし本願発明6に係る発明は、当業者が引用発明1ないし3に基づいて周知技術を参酌することにより容易に発明することができたものとはいえない。
したがって、原査定の理由によっては本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由も発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-07 
出願番号 特願2014-538600(P2014-538600)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H04M)
最終処分 成立  
前審関与審査官 藤江 大望北元 健太松原 徳久  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 林 毅
山中 実
発明の名称 電子機器及び転送制御方法  
代理人 特許業務法人酒井国際特許事務所  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ