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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1325381
審判番号 不服2016-5731  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-18 
確定日 2017-03-16 
事件の表示 特願2011-147932「撮像素子および撮像装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 1月24日出願公開、特開2013- 16608、請求項の数(12)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年7月4日の出願であって、平成26年6月18日付で審査請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされ、平成27年4月15日付で拒絶理由が通知され、同年6月12日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされたが、平成28年1月18日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年4月18日付で審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

第2 補正の適否について
1 補正の内容
(1)本件補正後の特許請求の範囲の記載
平成28年4月18日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の記載は次のとおりである。(なお、下線は、補正の箇所を示すものとして審判請求人が付加したものである。)
「【請求項1】
浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備える
撮像素子。
【請求項2】
前記画素は、
前記配線と前記グランド配線との間隔が前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記配線と前記グランド配線との間隔が前記他の画素よりも狭くなるように形成される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記画素は、前記配線と他の配線とが重畳する部分の配線幅が他の画素と異なるように形成される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記画素は、
前記配線と前記他の配線とが重畳する部分の配線幅が前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記配線と前記他の配線とが重畳する部分の配線幅が前記他の画素よりも太くなるように形成される
請求項3に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記画素は、読み出しゲートのサイズが他の画素と異なるように形成される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記画素は、
前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素よりも大きくなるように形成される
請求項5に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記他の画素は、前記画素に隣接する画素である
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項8】
所定の画素列の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、他の画素列の画素と異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項9】
所定の画素行の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、他の画素行の画素と異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項10】
所定の部分領域の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、他の部分領域の画素と異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項11】
画素群形成のために分割露光が行われる場合のマスクの繋ぎ箇所近傍の画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、前記マスクの繋ぎ箇所近傍でない箇所の画素と異なるように形成された前記画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項12】
浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を有する撮像素子を備える
撮像装置。」
(2)補正前の特許請求の範囲の記載
本件補正前の特許請求の範囲の記載は次のとおりである。
「【請求項1】
浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なるように形成されることにより、前記配線と前記他の構成との間の容量が前記他の画素における前記容量と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備える
撮像素子。
【請求項2】
前記他の構成はグランド配線であり、
前記画素の前記配線と前記グランド配線とが、前記配線と前記グランド配線との間隔が前記他の画素における前記間隔と異なるようなレイアウトで形成される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項3】
前記画素は、
前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記配線と前記グランド配線とが、前記間隔が前記他の画素における前記間隔よりも狭くなるレイアウトで形成される
請求項2に記載の撮像素子。
【請求項4】
前記他の構成は前記配線と重畳する他の配線であり、
前記画素の前記他の配線が、前記他の配線の前記配線と重畳する部分の配線幅が前記他の画素における前記配線幅と異なるようなレイアウトで形成される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項5】
前記画素は、
前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記他の配線が、前記配線幅が前記他の画素における前記配線幅よりも太くなるレイアウトで形成される
請求項4に記載の撮像素子。
【請求項6】
前記他の構成は読み出しゲートであり、
前記画素の前記読み出しゲートが、前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素における前記サイズと異なるようなレイアウトで形成される
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項7】
前記画素は、
前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記読み出しゲートが、前記サイズが前記他の画素における前記サイズよりも大きくなるレイアウトで形成される
請求項6に記載の撮像素子。
【請求項8】
前記他の画素は、前記画素に隣接する画素である
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項9】
所定の画素列の各画素の前記レイアウトが、他の画素列の画素における前記レイアウトと異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項10】
所定の画素行の各画素の前記レイアウトが、他の画素行の画素における前記レイアウトと異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項11】
所定の部分領域の各画素の前記レイアウトが、他の部分領域の画素における前記レイアウトと異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項12】
画素群形成のために分割露光が行われる場合のマスクの繋ぎ箇所近傍の画素の前記レイアウトが、前記マスクの繋ぎ箇所近傍でない箇所の画素における前記レイアウトと異なるように形成された前記画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。
【請求項13】
浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なるように形成されることにより、前記配線と前記他の構成との間の容量が前記他の画素における前記容量と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を有する撮像素子を備える
撮像装置。」
2 補正の適否について
(1)補正の内容
補正後の請求項に係る発明は、補正前の請求項に係る発明に次の補正がなされたものである。

ア 補正前の請求項2を削除し、補正前の請求項3ないし13を補正後の請求項2ないし12とする補正。
イ 補正前の請求項1の「浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なるように形成されることにより、前記配線と前記他の構成との間の容量が前記他の画素における前記容量と異なり、」を「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異なり、」とする補正。
ウ 補正前の請求項3の「前記画素は、
前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記配線と前記グランド配線とが、前記間隔が前記他の画素における前記間隔よりも狭くなるレイアウトで形成される
請求項2に記載の撮像素子。」を補正後の請求項2の「前記画素は、
前記配線と前記グランド配線との間隔が前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記配線と前記グランド配線との間隔が前記他の画素よりも狭くなるように形成される
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
エ 補正前の請求項4の「前記他の構成は前記配線と重畳する他の配線であり、
前記画素の前記他の配線が、前記他の配線の前記配線と重畳する部分の配線幅が前記他の画素における前記配線幅と異なるようなレイアウトで形成される
請求項1に記載の撮像素子。」を補正後の請求項3の「前記画素は、前記配線と他の配線とが重畳する部分の配線幅が他の画素と異なるように形成される
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
オ 補正前の請求項5の「前記画素は、
前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記他の配線が、前記配線幅が前記他の画素における前記配線幅よりも太くなるレイアウトで形成される
請求項4に記載の撮像素子。」を補正後の請求項4の「前記画素は、
前記配線と前記他の配線とが重畳する部分の配線幅が前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記配線と前記他の配線とが重畳する部分の配線幅が前記他の画素よりも太くなるように形成される
請求項3に記載の撮像素子。」とする補正。
カ 補正前の請求項6の「前記他の構成は読み出しゲートであり、
前記画素の前記読み出しゲートが、前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素における前記サイズと異なるようなレイアウトで形成される
請求項1に記載の撮像素子。」を補正後の請求項5の「前記画素は、読み出しゲートのサイズが他の画素と異なるように形成される
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
キ 補正前の請求項7の「前記画素は、
前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記読み出しゲートが、前記サイズが前記他の画素における前記サイズよりも大きくなるレイアウトで形成される
請求項6に記載の撮像素子。」を補正後の請求項6の「前記画素は、
前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素と同一の場合に前記画素出力が前記他の画素に比べて高く、
前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素よりも大きくなるように形成される
請求項5に記載の撮像素子。」とする補正。
ク 補正前の請求項9の「所定の画素列の各画素の前記レイアウトが、他の画素列の画素における前記レイアウトと異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」を補正後の請求項8の「所定の画素列の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、他の画素列の画素と異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
ケ 補正前の請求項10の「所定の画素行の各画素の前記レイアウトが、他の画素行の画素における前記レイアウトと異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」を補正後の請求項9の「所定の画素行の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、他の画素行の画素と異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
コ 補正前の請求項11の「所定の部分領域の各画素の前記レイアウトが、他の部分領域の画素における前記レイアウトと異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」を補正後の請求項10の「所定の部分領域の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、他の部分領域の画素と異なるように形成された画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
サ 補正前の請求項12の「画素群形成のために分割露光が行われる場合のマスクの繋ぎ箇所近傍の画素の前記レイアウトが、前記マスクの繋ぎ箇所近傍でない箇所の画素における前記レイアウトと異なるように形成された前記画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」を補正後の請求項11の「画素群形成のために分割露光が行われる場合のマスクの繋ぎ箇所近傍の画素の前記配線と前記グランド配線との間隔が、前記マスクの繋ぎ箇所近傍でない箇所の画素と異なるように形成された前記画素群を備える
請求項1に記載の撮像素子。」とする補正。
シ 補正前の請求項13の「浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なるように形成されることにより、前記配線と前記他の構成との間の容量が前記他の画素における前記容量と異なり、」を補正後の請求項12の「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異なり、」とする補正。
(2)補正の適否
あ 補正事項アについて検討すると、補正事項アは、本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかであり、請求項の削除を目的とするものであるから、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たし、特許法第17条の2第4項の規定に適合し、また、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除を目的とするものに該当する。
い 補正事項イについて検討すると、補正事項イにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項イは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項イは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項イは、補正前の「浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なる」ことについて、「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なる」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の「前記配線と前記他の構成との間の容量」を「前記配線と前記グランド配線との間の容量」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項イは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項1に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
う 補正事項ウについて検討すると、補正事項ウにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項ウは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項ウは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項ウは、補正前の請求項3の「前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合」について、補正後の請求項2において「前記配線と前記グランド配線との間隔が前記他の画素と同一の場合」に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項ウは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項2に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
え 補正事項エについて検討すると、補正事項エにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項エは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項エは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項エは、補正前の請求項4の「前記他の構成は前記配線と重畳する他の配線であり、
前記画素の前記他の配線が、前記他の配線の前記配線と重畳する部分の配線幅が前記他の画素における前記配線幅と異なるようなレイアウトで形成される」ことについて、補正後の請求項3において「前記画素は、前記配線と他の配線とが重畳する部分の配線幅が他の画素と異なるように形成される」に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項エは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項3に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
お 補正事項オについて検討すると、補正事項オにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項オは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項オは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項オは、補正前の請求項5の「前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合」について、補正後の請求項4において「前記配線と前記他の配線とが重畳する部分の配線幅が前記他の画素と同一の場合」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項5の「前記他の配線が、前記配線幅が前記他の画素における前記配線幅よりも太くなるレイアウトで形成される」を補正後の請求項4において「前記配線と前記他の配線とが重畳する部分の配線幅が前記他の画素よりも太くなるように形成される」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項オは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項4に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
か 補正事項カについて検討すると、補正事項カにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項カは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項カは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項カは、補正前の請求項6の「前記画素の前記読み出しゲートが、前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素における前記サイズと異なるようなレイアウトで形成される」ことについて、補正後の請求項5において「読み出しゲートのサイズが他の画素と異なるように形成される」に限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項カは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項5に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
き 補正事項キについて検討すると、補正事項キにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項キは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項キは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項キは、補正前の請求項7の「前記レイアウトが前記他の画素と同一の場合」について、補正後の請求項6において「前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素と同一の場合」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項7の「前記読み出しゲートが、前記サイズが前記他の画素における前記サイズよりも大きくなるレイアウトで形成される」を補正後の請求項6において「前記読み出しゲートのサイズが前記他の画素よりも大きくなるように形成される」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項キは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項6に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
く 補正事項クについて検討すると、補正事項クにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項クは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項クは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項クは、補正前の請求項9の「所定の画素列の各画素の前記レイアウト」について、補正後の請求項8において「所定の画素列の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項9の「他の画素列の画素における前記レイアウトと異なる」を補正後の請求項8において「他の画素列の画素と異なる」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項クは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項8に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
け 補正事項ケについて検討すると、補正事項ケにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項ケは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項ケは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項ケは、補正前の請求項10の「所定の画素行の各画素の前記レイアウト」について、補正後の請求項9において「所定の画素行の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項10の「他の画素行の画素における前記レイアウトと異なる」を補正後の請求項9において「他の画素行の画素と異なる」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項ケは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項9に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
こ 補正事項コについて検討すると、補正事項コにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項コは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項コは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項コは、補正前の請求項11の「所定の部分領域の各画素の前記レイアウト」について、補正後の請求項10において「所定の部分領域の各画素の前記配線と前記グランド配線との間隔」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項11の「他の部分領域の画素における前記レイアウトと異なる」を補正後の請求項10において「他の部分領域の画素と異なる」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項コは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項10に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
さ 補正事項サについて検討すると、補正事項サにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項サは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項サは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項サは、補正前の請求項12の「マスクの繋ぎ箇所近傍の画素の前記レイアウト」について、補正後の請求項11において「マスクの繋ぎ箇所近傍の画素の前記配線と前記グランド配線との間隔」に限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項12の「画素における前記レイアウト」を補正後の請求項11において「画素」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項サは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項11に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
し 補正事項シについて検討すると、補正事項シにより補正された部分は、当初明細書等に記載されているものと認められるから、補正事項スは当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において新たな技術的事項を導入するものではない。したがって、補正事項シは、当初明細書等に記載された事項の範囲内においてなされたものであるから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たす。
また、補正事項シは、補正前の請求項13の「浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なる」ことについて、補正後の請求項12において「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なる」と限定するものであり、また、それに伴い、補正前の請求項13の「前記配線と前記他の構成との間の容量」を補正後の請求項12において「前記配線と前記グランド配線との間の容量」とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。そうすると、補正事項シは、特許法第17条の2第4項の規定に適合することは明らかである。
そして、補正後の請求項12に係る発明は、下記第6のとおり、独立特許要件を満たすから、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
(3)小括
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号に掲げる請求項の削除および同法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、同法第17条の2第3項、第4項及び第6項のそれぞれの規定に適合するから、適法にされたものである。

第3 本願発明
本願の請求項1ないし12に係る発明は、平成28年4月18日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲1ないし12に記載される事項により特定されるとおりであって、そのうち請求項1および12に係る発明(以下、「本願発明1」および「本願発明2」という。)は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】
浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備える
撮像素子。」
「【請求項12】
浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を有する撮像素子を備える
撮像装置。」

第4 査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成27年 4月15日付け拒絶理由通知書に記載した理由4によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書および手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由4(特許法第29条第2項)について

・請求項 1,13
・引用文献等 2
先の拒絶理由において示した引用文献2には、浮遊拡散層(フローティングディフュージョン)に接続される配線(図8,10における38FD、図9における38ad)のレイアウトを他の画素における前記レイアウトと異なるように形成することにより、前記配線と他の構成との間の容量が前記他の画素における容量と異なるものとする発明が記載されている(主に、図8-10およびそれらの説明を参照)。
そして、引用文献2に記載された発明は、上記の構成を採用することにより、画素の単位構成要素の信号変換能力を場所ごとに調整することで光学的シェーディングを抑制していることから(段落0025)、同一の入射光に対する画素出力の他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備えるものと認められる。
また、引用文献2に記載された発明では、フローティングディフュージョンの容量成分を調整する際、配線容量に限らずその他のパラメータを制御する旨が記載されていることから(段落0104)、浮遊拡散層に接続される他の構成のレイアウトを他の画素における前記レイアウトと異なるように形成することに、格別な困難性は認められない。
したがって、本願請求項1,13に係る発明は、依然として、引用文献2に記載された発明から、当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項 2-8
・引用文献等 2
引用文献2に記載された発明では、フローティングディフュージョンの容量成分に寄与する何れかのパラメータを調整することが記載されている(主に、段落0104を参照)。そして、配線の幅や、配線間の距離を考慮して最適な容量値とすることは、一般的に行われることである。
また、引用文献2には、読み出しゲートのゲート幅を調整し、画素間のばらつきを抑制することも示唆されている(第3実施形態を参照)。
したがって、本願請求項2-8に係る発明は、依然として、引用文献2に記載された発明から、当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項 9-11
・引用文献等 2
引用文献2には、画素の単位構成要素の信号変換能力を場所ごとに調整することで光学的シェーディングを抑制することが記載されていることから(主に、段落0025を参照)、画素列、画素行、所定部分領域の画素を他の部分に対して異なるものとすることは、当業者にとって容易である。
したがって、本願請求項9-11に係る発明は、依然として、引用文献2に記載された発明から、当業者が容易に想到し得たものである。

・請求項 12
・引用文献等 1,2
先の拒絶理由において示した引用文献1に記載された発明に、引用文献2に記載された技術を採用し、画素群形成のために分割露光が行われる場合のマスクの繋ぎ箇所近傍におけるばらつきを抑制することは、当業者が容易に想到し得たことである。
したがって、本願請求項12に係る発明は、引用文献1,2から当業者が容易に想到し得たものである。

・意見書における主張に関して
出願人は、平成27年6月12日付け意見書において、「浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトが他の画素における前記レイアウトと異なるように形成されることは記載も示唆もされていない」という旨の主張をしている。
しかし、引用文献2に記載された発明は、画素の単位構成要素の信号変換能力を場所ごとに調整することにより光学的シェーディングを抑制しており(段落0025)、フローティングディフュージョンの容量成分を調整する際、配線容量に限らずその他のパラメータを制御する旨も記載されている(段落0104)。
すると、引用文献2に記載された発明において、浮遊拡散層に接続される配線と他の構成の少なくともいずれか一方のレイアウトを他の画素における前記レイアウトと異なるように形成することは、当業者にとって容易である。
したがって、出願人の主張は採用できない。

<引用文献等一覧>
1.特開平5-205990号公報
2.特開2006-108467号公報」

また、平成27年4月15日付け拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。

「4.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由3,4について
・請求項1-19
・引用文献1-3
・備考
a)引用文献1の図1及びその説明箇所参照。
b)引用文献2の図1,8,10及びその説明箇所参照
c)引用文献3の図1,2及びその説明箇所参照。

当該請求項に係る発明と引用文献1,2又は3に記載の発明とに相違点があったとしても、上述の理由1,2の拒絶理由があることから、その点は設計的事項の範疇にすぎないといわざるをえない。

<引用文献等一覧>
1.特開平05-205990号公報
2.特開2006-108467号公報
3.特開2009-252982号公報」

第5 原査定の理由についての当審の判断
1 引用例について
(1)引用例1について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開平5-205990号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。(下線は、当審において付与したものである。以下同じ。)
ア 引用例1の記載について
(ア)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明によるパターン形成方法は、第1の膜11上に第1のフォトレジストを塗布する工程と、形成すべきパターン13、14のうちの第1の方向における第1のパターン部を前記第1のフォトレジストに形成する工程と、前記第1のフォトレジストをマスクにして前記第1の膜11に前記第1のパターン部15を形成する工程と、前記第1の膜11の上層に第2の膜16を形成する工程と、前記第1のフォトレジストとは逆感光性の第2のフォトレジストを前記第2の膜16上に塗布する工程と、前記パターン13、14のうちの前記第1の方向と交わる第2の方向における第2のパターン部を前記第2のフォトレジストに形成する工程と、前記第2のフォトレジストをマスクにして前記第2の膜16に前記第2のパターン部17、18を形成して、前記第1及び第2のパターン部15、17、18の重畳部で前記第1及び第2の膜11、16に前記パターン13、14を形成する工程とを有している。
【0007】
【作用】本発明によるパターン形成方法では、第1及び第2のフォトレジストが互いに逆感光性であるので、露光装置のランプの照度むら等のために、互いに交わる方向における第1及び第2のパターン部15、17、18のうちの第1のパターン部15の幅が所望の幅よりも例えば太くなれば、第2のパターン部17、18の幅は所望の幅よりも細くなる。」
(イ)「【0017】このため、式と式との比較からも明らかな様に、本実施例で形成した開口14の面積の方が、既述の一従来例で形成した開口14の面積よりも、開口13の面積に近い。従って、本実施例では、分割露光で形成した開口13、14の面積のばらつきが小さく、チップ内での感度差が小さいリニアイメージセンサを製造することができる。」
イ 引用例1記載事項について
上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の事項(以下、「引用例1記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「第1の膜11上に第1のフォトレジストを塗布する工程と、形成すべきパターン13、14のうちの第1の方向における第1のパターン部を前記第1のフォトレジストに形成する工程と、前記第1のフォトレジストをマスクにして前記第1の膜11に前記第1のパターン部15を形成する工程と、前記第1の膜11の上層に第2の膜16を形成する工程と、前記第1のフォトレジストとは逆感光性の第2のフォトレジストを前記第2の膜16上に塗布する工程と、前記パターン13、14のうちの前記第1の方向と交わる第2の方向における第2のパターン部を前記第2のフォトレジストに形成する工程と、前記第2のフォトレジストをマスクにして前記第2の膜16に前記第2のパターン部17、18を形成して、前記第1及び第2のパターン部15、17、18の重畳部で前記第1及び第2の膜11、16に前記パターン13、14を形成する工程とを有することにより、
分割露光で形成した開口13、14の面積のばらつきが小さく、チップ内での感度差が小さいリニアイメージセンサを製造すること。」

(2)引用例2について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2006-108467号公報(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 引用例2の記載について
(ア)「【0044】
<固体撮像装置の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係るCMOS固体撮像装置の概略構成図である。この固体撮像装置1は、たとえばカラー画像を撮像し得る電子スチルカメラやFA(Factory Automation)カメラとして適用されるようになっている。
【0045】
固体撮像装置1は、入射光量に応じた信号を出力する図示しない検知部としての受光素
子を含む単位画素が行および列の正方格子状に配列された(すなわち2次元マトリクス状の)撮像部を有し、各単位画素からの信号出力が電圧信号であって、CDS(Correlated Double Sampling ;相関2重サンプリング)処理機能部やその他の機能部が垂直列ごとに設けられたカラム型のものである。
【0046】
すなわち、図1に示すように、固体撮像装置1は、複数の単位画素3(単位構成要素の一例)が行および列に(2次元行列状に)多数配列された撮像部(画素部)10、いわゆるエリアセンサと、撮像部10の外側に設けられた駆動制御部7と、各垂直列に配されたカラム信号処理部(図ではカラム回路と記す)22を有するカラム処理部20とを備えている。」
(イ)「【0070】
<第1実施形態>
<単位画素の回路構成例>
図2は、本発明の第1実施形態を説明する図であって、単位画素3の一構成例の回路図である。図示するように、単位画素3は、寄生容量を持った拡散層を主要部に持つフローティングディフュージョン(FDA;Floating Diffusion)を電荷蓄積部として利用する構成を採りつつ、単位画素に4つのトランジスタ(TRansistor)を有する4トランジスタ型画素構成(以下4TR構成という)のものとなっている。
・・・ 中 略 ・・・
【0104】
フローティングディフュージョン38の容量成分は、たとえば、拡散容量や、ゲートとのオーバーラップ容量、あるいは配線容量などから決定されるので、これらの何れかに対して操作を加えることで、容量成分を調整できる。
【0105】
第1実施形態の構成においては、金属配線膜564も増幅用トランジスタ42のゲートにぶら下がった状態のフローティング配線として接続されているので、フローティングディフュージョン38の容量成分に寄与する。
【0106】
フローティングディフュージョン38の変換効率はFD容量に反比例するが、本実施形態の構成では、金属配線膜564を付加したことで、フローティングディフュージョン38の面積が金属配線膜564を利用することで調整できる。これによって、FD容量を大きくすることで、変換効率を小さくすることができる。よって、単位画素3を構成する画素信号生成部5の信号変換特性を線形領域に設定でき、画素信号のレベルを、後段に接続される回路の動作レンジに合わせることができる。」
(ウ)「【0111】
<第2実施形態>
<単位画素の回路構成例>
図5は、本発明の第2実施形態を説明する図であって、単位画素3の一構成例の回路図である。また、図6は、図5に示した単位画素3におけるフローティングディフュージョン近傍の断面構造例を示す図である。
・・・ 中 略 ・・・
【0116】
よって、第1実施形態の構成と同様に、金属配線膜564を付加したことで、FD容量を大きくすることで変換効率を小さくすることができ、画素信号の出力範囲をソースフォロアの線形性がある領域内に納める、すなわち、後段の動作レンジに合わせてFD変換効率を調節することができる。
【0117】
なお、第1および第2実施形態においては、フローティングディフュージョン38の面積を調整するに際して、フローティングディフュージョン38に寄与する配線の電極面積を調整する一例を示したが、その他の手法によって、電極面積を調整することもできる。たとえば、層間膜542内に設けた配線金属膜560bの長さを調整することでも実現できる。
【0118】
配線長の調整は、配線ルートの調整(たとえば直線状やジグザグ状と、その形状の違い)で実現できる。あるいは、層間膜542内に設けた配線金属膜560bの幅を調整することでも実現できる。もちろん、配線長と配線幅の双方を調整することで、フローティングディフュージョン38の面積を調整することもできる。配線長と配線幅の少なくとも一方を調整すればよく、何れを対象として調整するかは、デバイスの構成のし易さから決めるのがよい。
・・・ 中 略 ・・・
【0120】
また、フローティングディフュージョン38に寄与する配線の電極面積を調整する手法に代えて、フローティングディフュージョン38の形成に寄与する主要部である拡散層532bの面積を調整することでも、FD容量を調整し変換効率を調整することで、信号変換特性を線形領域に設定することができる。この手法は、新たな電極(金属配線膜564)の形成が不要であり、FD容量を変えて変換効率を調整する手法として容易な方法であると考えられる。」
(エ)「【0143】
この第4実施形態は、FD容量を調整することでFD変換効率を変化させる構成を利用する点で第1あるいは第2実施形態と同様であるが、その調整手法に違いがある。具体的には、フローティングディフュージョン38の面積を金属配線膜564を利用して調整するのではなく、フローティングディフュージョン38の不純物濃度を変えることで、実現する点に特徴を有する。」
(オ)「【0149】
<第5実施形態>
図13および図14は、本発明の第5実施形態を説明する、センサ入射光量に対する出力の様子を示す図である。ここで図13は、撮像部10における中央部と周辺部(隅画素)の光量に対する出力の様子を説明する図である。また、図14は、第5実施形態を適用した後における撮像部10における中央部と周辺部(隅画素)の光量に対する出力の様子を説明する図である。
【0150】
この第5実施形態は、第1?第4実施形態で説明した構成を利用することで、単位構成要素である単位画素3の信号変換能力を、撮像エリア内の画素位置(すなわち場所)ごとに調整・設定し、これによって、入射される物理量の場所依存性に応じて信号変換能力を調整するようにした点に特徴を有する。
【0151】
具体的事例として、ここでは、第1あるいは第2実施形態で説明した、FD容量を調整する構成を利用して、物理量の場所依存性の一例である光学的シェーディングを抑えるようにする。すなわち、従来技術の項で述べた、画素部中央から周辺部に遠ざかっていくに従って感度が下がっていく光学シェーディングに対し、第1あるいは第2実施形態で説明したフローティングディフュージョン38の拡散層に接続する第2の金属配線としての金属配線膜564の面積を光学シェーディングに応じて調整してFD変換効率を画素位置ごとに変えることにより、撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え、これにより、光学シェーディングを抑えるようにする。」

イ 引用例2発明について
上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の発明(以下、「引用例2発明」という。)が記載されているものと認められる。
「フローティングディフュージョン38の面積を金属配線膜564を利用することで調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の面積を層間膜542内に設けた配線金属膜560bの長さや幅を調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の形成に寄与する主要部である拡散層532bの面積を調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の不純物濃度を変えること、
により、フローティングディフュージョン38の容量を調整し、
単位構成要素である単位画素3の信号変換能力を、撮像エリア内の画素位置(すなわち場所)ごとに調整・設定し、これによって、入射される物理量の場所依存性に応じて信号変換能力を調整し、撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え、これにより、光学シェーディングを抑えるようにするCMOS固体撮像装置。」

(3)引用例3について
原査定の理由に引用され、本願の出願日前に日本国内において頒布され又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった文献である特開2009-252982号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。
ア 引用例3の記載について
(ア)「【発明が解決しようとする課題】
【0005】
我々は、CMOSセンサの画素の縮小化を検討している際に、CCDセンサの画素縮小化とは異なる問題があることを見出した。それは、配線による光の回折である。CMOSセンサの配線は、数百nmから数μm程度の透明なパッシベーション絶縁層を介して半導体の上方に配置されている。このため、光は、配線近傍で回折して半導体層に届くまでに、パッシベーション絶縁層内で広がってしまい、その一部が隣の画素まで届いてしまう恐れがある。回折には波長依存性があり、長波長の光ほど回折起因の光学的混色が増大することを見出した。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、長波長光の回折起因の光学的混色を低減し、色再現性が高く、鮮明な映像を写す光電変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光電変換装置は、第1の波長の光を通すカラーフィルタと光電変換部とがそれぞれ配された複数の第1の画素と、前記第1の波長より大きい第2の波長を通すカラーフィルタと光電変換部とがそれぞれ配された複数の第2の画素と、が配列された画素領域と、前記画素領域の上に配された複数の第1の配線と、前記複数の第1の配線の上に絶縁層を介して配された複数の第2の配線とを備え、前記複数の第2の配線は、前記第1の画素の開口の一部を構成する部分と、前記第2の画素の開口の一部を構成する部分とを有し、前記第2の画素の開口の一部を構成する部分の前記複数の第2の配線の距離は、前記第1の画素の開口の一部を構成する部分に比べて大きいことを特徴とする。」
イ 引用例3記載事項について
上記アの記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「第1の波長の光を通すカラーフィルタと光電変換部とがそれぞれ配された複数の第1の画素と、前記第1の波長より大きい第2の波長を通すカラーフィルタと光電変換部とがそれぞれ配された複数の第2の画素と、が配列された画素領域と、前記画素領域の上に配された複数の第1の配線と、前記複数の第1の配線の上に絶縁層を介して配された複数の第2の配線とを備え、前記複数の第2の配線は、前記第1の画素の開口の一部を構成する部分と、前記第2の画素の開口の一部を構成する部分とを有し、前記第2の画素の開口の一部を構成する部分の前記複数の第2の配線の距離は、前記第1の画素の開口の一部を構成する部分に比べて大きいことにより、
長波長光の回折起因の光学的混色を低減し、色再現性が高く、鮮明な映像を写す光電変換装置を提供すること。」

2 対比・判断
(1)本願発明1と引用例2発明とを対比する。
ア 引用例2発明の「フローティングディフュージョン38」「CMOS固体撮像装置」は、本願発明1の「浮遊拡散層」「撮像素子」に相当する。
イ 引用例2発明の「フローティングディフュージョン38の面積を金属配線膜564を利用することで調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の面積を層間膜542内に設けた配線金属膜560bの長さや幅を調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の形成に寄与する主要部である拡散層532bの面積を調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の不純物濃度を変えること、
により、フローティングディフュージョン38の容量を調整」することと、本願発明1の「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異な」ることは、「浮遊拡散層」に関する「容量が前記他の画素と異な」る点で共通する。
ウ 引用例2発明は「単位構成要素である単位画素3の信号変換能力を、撮像エリア内の画素位置(すなわち場所)ごとに調整・設定し、これによって、入射される物理量の場所依存性に応じて信号変換能力を調整し、撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え、これにより、光学シェーディングを抑えるように」しており、「撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え、これにより、光学シェーディングを抑えるようにする」ことは、本願発明1の「同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制され」ることに対応し、また、引用例2発明は、「撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え」ることを、「単位構成要素である単位画素3の信号変換能力を、撮像エリア内の画素位置(すなわち場所)ごとに調整・設定し」ているから、これらの「調整・設定」された「単位画素3」を少なくとも1つ備えていると言える。
そうすると、引用例2発明は、本願発明1の「同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備える」ことと同様の構成を有していると認められる。

そうすると、本願発明1と引用例2発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「浮遊拡散層に関する容量が他の画素と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備える
撮像素子。」

[相違点1]
本願発明1は「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異な」っているのに対して、引用例2発明は、対応する構成を有していない点。

(2)当審の判断
[相違点1]について検討する。
引用例2には、「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異な」ることについて記載されておらず、また、引用例2の記載から、当業者が容易に想起することができたとは認められない。
また、引用例1および3には、「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異な」ることについて記載されていない。
そうすると、引用例1および3の記載から、引用例2発明において、上記[相違点1]について、本願発明1の構成を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明1は、特に[相違点1]を有することによって、「本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、撮像特性の局所的な不均一性を抑制することができるようにすることを目的とする。」(【0009】)という格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]に係る構成は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明1は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

また、本願発明1を引用する本願の請求項2ないし11に係る発明も同様に、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

(3)本願発明2と引用例2発明とを対比する。
ア 引用例2発明の「フローティングディフュージョン38」「CMOS固体撮像装置」は、本願発明2の「浮遊拡散層」「撮像素子」に相当する。
イ 引用例2発明の「フローティングディフュージョン38の面積を金属配線膜564を利用することで調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の面積を層間膜542内に設けた配線金属膜560bの長さや幅を調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の形成に寄与する主要部である拡散層532bの面積を調整すること、もしくは、
フローティングディフュージョン38の不純物濃度を変えること、
により、フローティングディフュージョン38の容量を調整」することと、本願発明2の「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異な」ることは、「浮遊拡散層」に関する「容量が前記他の画素と異な」る点で共通する。
ウ 引用例2発明は「単位構成要素である単位画素3の信号変換能力を、撮像エリア内の画素位置(すなわち場所)ごとに調整・設定し、これによって、入射される物理量の場所依存性に応じて信号変換能力を調整し、撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え、これにより、光学シェーディングを抑えるように」しており、「撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え、これにより、光学シェーディングを抑えるようにする」ことは、本願発明2の「同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制され」ることに対応し、また、引用例2発明は、「撮像エリア(撮像部10)全体の感度を揃え」ることを、「単位構成要素である単位画素3の信号変換能力を、撮像エリア内の画素位置(すなわち場所)ごとに調整・設定し」ているから、これらの「調整・設定」された「単位画素3」を少なくとも1つ備えていると言える。
そうすると、引用例2発明は、本願発明2の「同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を備える」ことと同様の構成を有していると認められる。

そうすると、本願発明2と引用例2発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「浮遊拡散層に関する容量が他の画素と異なり、かつ、同一の入射光に対する画素出力の前記他の画素との差が抑制された少なくとも1つの画素を有する撮像素子。」

[相違点1]
本願発明2は「浮遊拡散層に接続される配線とグランド配線との間隔が他の画素と異なるように形成されることにより、前記配線と前記グランド配線との間の容量が前記他の画素と異な」っているのに対して、引用例2発明は、対応する構成を有していない点。
[相違点2]
本願発明2は「撮像装置」であるのに対して、引用例2発明はそうでない点。

(4)当審の判断
[相違点1]について検討する。
上記「(2)当審の判断」で検討したように、引用例2には、[相違点1]に係る構成について記載されておらず、また、引用例2の記載から、当業者が容易に想起することができたとは認められない。さらに、引用例1および3の記載から、引用例2発明において、上記[相違点1]について、本願発明2の構成を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明2は、特に[相違点1]を有することによって、「本開示は、このような状況に鑑みてなされたものであり、撮像特性の局所的な不均一性を抑制することができるようにすることを目的とする。」(【0009】)という格別の効果を有するものである。
そうすると、[相違点1]に係る構成は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明2は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
したがって、本願発明2は、他の相違点については検討するまでもなく、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 原査定の理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第6 結語
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶するべき理由は発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-03 
出願番号 特願2011-147932(P2011-147932)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柴山 将隆上田 智志  
特許庁審判長 深沢 正志
特許庁審判官 小田 浩
飯田 清司
発明の名称 撮像素子および撮像装置  
代理人 西川 孝  
代理人 稲本 義雄  

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