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審決分類 |
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H01R 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H01R 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01R |
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管理番号 | 1325391 |
審判番号 | 不服2016-3498 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-03-07 |
確定日 | 2017-03-14 |
事件の表示 | 特願2012-130629「コネクタ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年12月19日出願公開、特開2013-254688、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成24年6月8日の出願であって、平成27年11月11日付けで拒絶理由が通知され、平成28年1月8日付けで手続補正されたが、同年1月25日付け(発送日:同年2月2日)で拒絶査定され、これに対し、同年3月7日に拒絶査定不服審判が請求され、この審判の請求と同時に手続補正され、同年4月12日付けで前置報告書が作成され、同年6月9日付けで上申書が提出され、その後、当審において同年9月26日付けで拒絶理由が通知され、同年11月16日付けで手続補正されたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明3」という。)は、平成28年11月16日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願発明1は、次のとおりである。 「【請求項1】 電線の端末に接続される端子金具と、 該端子金具及び前記電線を収容するハウジングと、を備えたコネクタであって、 前記ハウジングに取り付けられる電線押さえ部材と、 前記電線に外嵌されるリング状のシール部材と、を備え、 前記ハウジングには、前記電線の外周面に沿う曲面を有する第1樋状部が設けられ、 前記電線押さえ部材には、前記電線の外周面に沿う曲面を有する第2樋状部が設けられ、 前記ハウジングの内部には、前記シール部材が、前記第1樋状部の前記曲面及び前記第2樋状部の前記曲面に密着した状態で挟んで保持され、 前記第1樋状部及び前記第2樋状部には、それぞれの前記曲面に、前記シール部材が収容された状態で当該シール部材を前記ハウジングに対して前記電線の長手方向の所定位置に位置決めするための溝部が設けられ、 前記シール部材が、前記溝部内に密着した状態で収容されていることを特徴とするコネクタ。」 第3 原査定の理由について 1 原査定の理由の概要 刊行物1:特開2011-70848号公報 刊行物2:特開2001-76808号公報 刊行物3:特開2000-223206号公報 (1)平成28年1月8日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 ア 請求項1に係る発明について 刊行物1には、リング状シール(止水構造9)を用いる発明として、次の発明が記載されている。 「電線3の端末に接続される端子金具5と、 該端子金具5及び前記電線3を収容するハウジング27と、を備えたコネクタ1であって、 前記ハウジング27に取り付けられる電線押さえ部材25と、 前記電線3に外嵌されるリング状のシール部材9と、を備え、 前記ハウジング27には、前記電線の外周面に沿う曲面を有する第1樋状部(図1、2:収容部43を有する部材27)が設けられ、 前記電線押さえ部材25には、前記電線の外周面に沿う曲面を有する第2樋状部(図2:収容部43を有する部材25)が設けられ、 前記ハウジングの内部には、前記シール部材9が、前記第1樋状部の前記曲面及び前記第2樋状部の前記曲面に密着した状態で挟んで保持され(図2)、 前記第1樋状部及び前記第2樋状部には、それぞれの前記曲面に、前記シール部材を収容するための溝部43,43が設けられているコネクタ1。」 よって、請求項1に係る発明は刊行物1に記載された発明である。 イ 請求項2に係る発明について 刊行物1における「端子金具(5)」も曲げられている。 (2)平成28年1月8日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物1ないし刊行物3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 ア 請求項1及び請求項2に係る発明について 刊行物1、2 本願の実施例を参酌すると、ハウジングが一部材である点が、刊行物1との相違点とみることもできる。 しかしながら、刊行物2(図7)には「カバー(26)」と「単一のハウジング(10)」間に、「シール材(充填材43)」を挟み保持する空間を形成することが記載されている。 イ 請求項3に係る発明について 刊行物1-3 刊行物3には、「ゴム栓(27)」と「充填剤(16)」の併用が記載されている。 2 原査定の理由の判断 (1)刊行物 ア 刊行物1 原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物1の段落【0020】ないし【0039】及び【図1】ないし【図3】には、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。 「シールド線3の端末に接続される接続端子5と、 該接続端子5及び前記シールド線3を組み付けるハウジング本体21と、を備えたシールドコネクタ1であって、 前記ハウジング本体21に取り付けられる電線固形具23と、 前記ハウジング本体21に取り付けられるカバー25と、 前記カバー25の下端部に締結される端部カバー27と、 前記シールド線3に装着される止水構造9と、を備え、 前記端部カバー27には、前記シールド線3の外周面に沿う曲面を有する止水構造収容部43が設けられ、 前記カバー25には、前記シールド線3の外周面に沿う曲面を有する止水構造収容部43が設けられ、 前記カバー25及び前記端部カバー27の内部には、前記止水構造9が、止水構造収容部43に密着した状態で挟んで保持され、収容されているシールドコネクタ1。」 イ 刊行物2 原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物2には、図面(特に【図1】、【図5】及び【図7】ないし【図9】参照。)とともに、次の事項が記載されている。なお、下線は当審が付した。以下同様。 (ア)「【0013】(省略)この導出用受け溝25は、半円形をなし、その半径は電線42の外径とほぼ同じ寸法とされている。かかる導出用受け溝25は、カバー26の導出用押さえ溝38と協動して導出孔39を形成する。」 (イ)「【0020】次に、実施形態の作用を説明する。コネクタの組付けの際には、まず、カバー26を開いた状態でキャビティ11に端子金具41を挿入するとともに、端子挿入口16及び充填室23が上向きに開放されるようにハウジング10の姿勢を決める。この状態で、端子挿入口16から延出した電線42を、延出溝18から仕切壁20に沿わせつつ後方へ延出させるとともに、受け室19の後壁21の導入用受け溝22及び充填室23の後壁24Rの導出用受け溝25に載せるようにし、その状態でカバー26をハウジング10に組み付ける。 【0021】カバー26を組み付けた状態では、カバー26の周壁32が充填室23の周壁24の内周に沿って嵌合され、凹部33が端子挿入口16及び受け室19の上端の開口を塞ぎ、カバー26の導入用押さえ突部36と導出用押さえ溝38が、ハウジング10の導入用受け溝22と導出用受け溝25との間で各電線42を挟圧する。これにより、ハウジング10とカバー26との間に、充填空間35と受け空間34が形成され、端子挿入口16から延出した電線42が、ハウジング10とカバー26の合わせ目の導入孔37を液密状に貫通して充填空間35内へ導入されるとともに、ハウジング10とカバー26の合わせ目の導出孔39を液密状に貫通してコネクタ外へ導出されるようにして配索される。」 ウ 刊行物3 原査定の拒絶理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物3には、図面(特に【図1】、【図2】及び【図5】参照。)とともに、次の事項が記載されている。 (ア)「【0014】かかる雄端子金具25は、雄タブ25Aを上向きにした姿勢でゴム栓嵌合孔15からコネクタハウジング10に挿入される。 (省略) ゴム栓27の外周はゴム栓嵌合孔15の内周に弾性的に密着した状態で嵌合され、雄端子金具25の挿入方向後端部が挿抜方向と直交する方向への遊動を規制されている。さらに、ゴム栓27とゴム栓嵌合孔15との間の摩擦力により、雄端子金具25の挿抜方向への遊動が規制される。そして、ゴム栓27から下方へ延出する電線26はコネクタハウジング10の外部下方へ引き出されている(図2を参照)。 【0015】上記のように雄端子金具25をコネクタハウジング10に仮保持した状態で、ゴム栓嵌合孔15を下向きにして注入口22から充填空間14内に充填材16を注入する。 (省略)」 (2)本願発明1について ア 対比 本願発明1と引用発明とを対比すると、引用発明の「シールド線3」は本願発明の「電線」に相当し、以下同様に、「接続端子5」は「端子金具」に、「組み付ける」ことは「収容する」ことに、「ハウジング本体21」は「ハウジング」に、「シールドコネクタ1」は「コネクタ」に、「電線固定具23」は「電線押さえ部材」に、「止水構造9」は「シール部材」に、それぞれ相当する。 したがって、本願発明1と引用発明とは、次の一致点及び相違点を有する。 [一致点] 「電線の端末に接続される端子金具と、 該端子金具及び前記電線を収容するハウジングと、を備えたコネクタであって、 前記ハウジングに取り付けられる電線押さえ部材と、 前記電線に外嵌されるシール部材と、を備えるコネクタ。」 [相違点] 本願発明1は、シール部材が「リング状」であり、「前記ハウジングには、前記電線の外周面に沿う曲面を有する第1樋状部が設けられ、前記電線押さえ部材には、前記電線の外周面に沿う曲面を有する第2樋状部が設けられ、前記ハウジングの内部には、前記シール部材が、前記第1樋状部の前記曲面及び前記第2樋状部の前記曲面に密着した状態で挟んで保持され、前記第1樋状部及び前記第2樋状部には、それぞれの前記曲面に、前記シール部材が収容された状態で当該シール部材を前記ハウジングに対して前記電線の長手方向の所定位置に位置決めするための溝部が設けられ、前記シール部材が、前記溝部内に密着した状態で収容されている」のに対し、 引用発明は、「前記ハウジング本体21に取り付けられるカバー25と、 前記カバー25の下端部に締結される端部カバー27と、」を備え、「前記端部カバー27には、前記シールド線3の外周面に沿う曲面を有する止水構造収容部43が設けられ、前記カバー25には、前記シールド線3の外周面に沿う曲面を有する止水構造収容部43が設けられ、前記カバー25及び前記端部カバー27の内部には、前記止水構造9が、止水構造収容部43に密着した状態で挟んで保持され、収容されている」点。 イ 判断 上記相違点に係る本願発明1の、「シール部材」が、「第1樋状部」及び「第2樋状部」に設けられた「溝部内に密着した状態で収容され」、「前記電線の長手方向の所定位置に位置決め」される構成について検討する。 刊行物2からは、ハウジング10の導入用受け溝25(【図5】、【図9】参照)と導出用受け溝22(【図5】、【図8】参照)によって形成される、半円形(本願発明1の「電線の外周面に沿う曲面」に相当する。)を有する樋状部(本願発明1の「第1樋状部」に相当する。)の構成が見て取れる。 しかしながら、刊行物2には、導出用受け溝22又は導入用受け溝25に、本願発明1の「溝部」に相当する構成を設けることは、記載も示唆もされていない。 また、刊行物3には、コネクタハウジング10にゴム栓嵌合孔15を設け、雄端子金具25のゴム栓27がゴム栓嵌合孔15に弾性的に密着した状態で嵌合される構成が記載されている。 しかしながら、刊行物3には、ゴム栓嵌合孔15に、本願発明1の「溝部」に相当する構成を設けることは、記載も示唆もされていない。 そして、本願発明1は、上記相違点に係る本願発明1の構成により、「ゴム栓をゴム栓嵌合孔内に圧入する必要がなくなり、作業性の向上を図ることができる。」との効果、「電線屈曲時において、第1樋状部及び第2樋状部それぞれの曲面とシール部材との間に隙間が生じることがなくなって、防水性の向上を図ることができる。」との効果(段落【0013】)及び「使用する電線を、電線径の異なる電線に変更した際においても、シール部材が弾性変形することで、電線の外周面と第1樋状部及び第2樋状部それぞれの曲面との間に隙間ができたとしても、それを吸収できるから、ハウジング及び電線押さえ部材を変更せずにそのまま利用することができる。このように、部品を汎用的に利用することができるから、電線径の異なる電線に対応した複数のハウジング及び電線押さえ部材を用意する必要がなくなり、部品点数の削減を図ることができる。」(段落【0014】)との効果を奏するものである。 そうであれば、上記相違点に係る本願発明1の構成は、当業者が引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項から容易に想到したとはいえない。 ウ 小括 したがって、本願発明1は、当業者が引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項から容易に発明をすることができたとはいえない。 (3)本願発明2及び本願発明3について 本願発明2及び本願発明3は、本願発明1をさらに限定したものであるので、本願発明1と同様に、当業者が引用発明、刊行物2に記載された事項及び刊行物3に記載された事項から容易に発明をすることができたとはいえない。 (4)まとめ よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができたとはいえない。 第4 当審拒絶理由について 1 当審拒絶理由の概要 この出願は、特許請求の範囲の記載が下記の点で、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。 記 発明の詳細な説明の段落【0013】ないし【0015】の記載から、発明の詳細な説明に記載されたものは、第1樋状部及び第2樋状部それぞれの曲面と「電線の外周面」との間に「隙間」があることと、シール部材が第1樋状部及び第2樋状部の「曲面」の「溝部内」に「密着した状態」で収容されることが理解できる。 これに対し、請求項1には、第1樋状部及び第2樋状部それぞれの曲面について、「電線の外周面に沿う」と記載されているものの、「電線の外周面」との間に「隙間」があることについて記載されていない。 また、請求項1には、シール部材が、第1樋状部及び第2樋状部の「曲面に密着した状態」と記載されており、「曲面」の「溝部内」に「密着した状態」であることについて記載されていない。 よって、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものでない。 2 当審拒絶理由の判断 平成28年11月16日付けの手続補正により、特許請求の範囲の請求項1の記載が「前記シール部材が、前記溝部内に密着した状態で収容されている」と補正され、発明の詳細な説明の段落【0014】の記載が「電線の外周面と第1樋状部及び第2樋状部それぞれの曲面との間に隙間ができたとしても、それを吸収できる」と補正された。 これにより、当審拒絶理由は解消した。 第5 むすび 以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。 また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審決日 | 2017-02-27 |
出願番号 | 特願2012-130629(P2012-130629) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WY
(H01R)
P 1 8・ 537- WY (H01R) P 1 8・ 113- WY (H01R) |
最終処分 | 成立 |
前審関与審査官 | 前田 仁 |
特許庁審判長 |
冨岡 和人 |
特許庁審判官 |
内田 博之 小関 峰夫 |
発明の名称 | コネクタ |
代理人 | 瀧野 秀雄 |
代理人 | 鳥野 正司 |
代理人 | 川崎 隆夫 |
代理人 | 瀧野 文雄 |
代理人 | 津田 俊明 |
代理人 | 福田 康弘 |