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審決分類 審判 査定不服 発明同一 取り消して特許、登録 H01R
管理番号 1325467
審判番号 不服2016-11499  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-08-01 
確定日 2017-03-14 
事件の表示 特願2015- 54811「接続端子の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月13日出願公開、特開2015-146322、請求項の数(4)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成23年6月3日に出願した特願2011-125196号の一部を平成27年3月18日に新たな出願としたものであって、平成27年12月22日付けで拒絶理由が通知され、平成28年2月10日に意見書が提出されたが、平成28年7月4日付け(発送日:同年7月12日)で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月1日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2.本願発明
本願の請求項1ないし4に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし及び「本願発明4」という。)は、それぞれ出願当初の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
相手端子が接続される端子接続部と、電線が接続された電線接続部と、前記端子接続部と前記電線接続部の間を連結する首部とを備え、前記電線接続部と前記電線の接続箇所が樹脂被覆部によって被覆され、前記首部は、底面壁と前記底面壁の両側より立設された一対の側面壁とを有し、一対の前記側面壁は、互いの間隔が同じである平行壁部を有する接続端子の製造方法であって、
前記樹脂被覆部の成型時には、前記電線が接続された前記接続端子を樹脂成型用の金型内にセットし、前記首部の一対の前記平行壁部の位置に、前記端子接続部側への樹脂の流入を阻止する前記金型の樹脂堰止め用駒部を配置すると共に、前記電線と前記接続端子をそれぞれ適正位置に保持部で保持することを特徴とする接続端子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の接続端子の製造方法であって、
前記電線接続部に前記電線を接続する電線接続時には、前記首部の一対の前記平行壁部を適正位置に首部矯正部で矯正することを特徴とする接続端子の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載の接続端子の製造方法であって、
前記首部矯正部は、一対のスリットを有し、一対の前記スリットを前記首部の一対の前記平行壁部に挿入することを特徴とする接続端子の製造方法。
【請求項4】
請求項1?請求項3記載のいずれかに記載の接続端子の製造方法であって、前記樹脂堰止め用駒部は、前記接続端子を適正位置に保持する保持部を兼用することを特徴とする接続端子の製造方法。」

第3.原査定の理由の概要
本願発明1及び4は、その出願の日前の特許出願であって、その出願後に特許掲載公報の発行又は出願公開がされた下記の特許出願の願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一であり、しかも、この出願の発明者がその出願前の特許出願に係る上記の発明をした者と同一ではなく、またこの出願の時において、その出願人が上記特許出願の出願人と同一でもないので、特許法第29条の2の規定により、特許を受けることができない。


引用文献等1:特願2010-135073号(特開2012-003856号)

・請求項 1
・引用文献等 1
先願明細書には、オス端子挿入部10(「端子接続部」相当)と、電線2が接続されたワイヤバレル12(「電線接続部」相当)と、オス端子挿入部10とバレル12との間を連結する箇所(「首部」相当)とを備え、バレル12と電線2との接続箇所がモールド部21(「樹脂被覆部」相当)によって被覆され、前記連結箇所は、底面壁から立設された一対の側面壁を有し、側面壁同士が平行とされた端子の製造方法であって、モールド部21の成形時に、電線2が接続された端子を金型40、41内にセットし、連結箇所の一対の側面壁の位置に、オス端子挿入部10側への樹脂の流入を阻止する金型40の流入防止壁44(「樹脂堰止め用駒部」相当)を配置し、金型40の凹部42及び切込部43(「保持部」相当)により、端子及び電線2を適正位置に保持するようにした端子製造方法の発明が記載されている(段落0047?0049、図4、図7及び図8(a)等)。
したがって、請求項1に係る発明は、先願明細書に記載された発明と同一である。
出願人は、連結箇所(「首部」相当)の側面壁が、互いの間隔が同じである平行壁部を有することが引用文献等1に記載されていないし、その図面からも読み取れないと主張する。
しかし、当該側面壁が平行であるという事項は、図7のA-A矢視断面、即ち、連結箇所(「首部」相当)の断面を示す図8(a)から明確に読み取ることができる。

・請求項 4
・引用文献等 1
・備考
引用文献等1に記載された発明における流入防止壁44(「樹脂堰止め用駒部」相当)は、凹部42(「保持部」相当)を画定する部材であるから、当該流入防止壁44も端子を適正位置に保持する機能を有する部材である。

第4.先願明細書の記載について
原査定において引用された先願明細書(引用文献等1:特願2010-135073号(特開2012-003856号))には、「電線端子防食構造、ワイヤハーネス、及び電線端子防食構造の生産方法」に関し、次の事項が図面(特に図4、図5、図7ないし図11参照)と共に記載されている。

(1)「【0001】
本発明は、主として、アルミ電線に対して、アルミ以外の金属からなる端子を接続した際に発生し得る電食を防止するための電線端子防食構造に関する。」

(2)「【0008】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その主要な目的は、簡単な構成で異種金属接触腐食を防止できる電線端子防食構造を提供することにある。」

(3)「【0010】
本発明の第1の観点によれば、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる導体を絶縁被覆で被覆した電線に対して、アルミニウム及びアルミニウム合金以外の金属からなる端子を接続した場合の異種金属接触腐食を防止するための電線端子防食構造であって、以下の構成の電線端子防食構造が提供される。即ち、この電線端子防食構造は、前記端子と、モールド部と、を有する。前記端子は、自身を前記導体の端部に接続するための導体接続部を有する。前記モールド部は、前記導体接続部と、前記絶縁被覆の端部と、を少なくとも覆うように形成される。そして、前記端子は、前記モールド部によって、前記絶縁被覆に対して固定される。
【0011】
このように、アルミとアルミ以外の金属が接触する導体接続部を、モールドによって覆うことにより、当該導体接続部に水分が侵入することを防ぐことができるので、異種金属接触腐食(電食)を防止することができる。また、モールド部は、端子を絶縁被覆に対して固定する機能も兼ねている。このように、モールド部に、導体接続部の封止と、端子の固定と、の機能を兼ねさせることにより、電線端子防食構造を全体としてコンパクトに構成することができる。」

(4)「【0026】
図2及び図3に示すように、電線端子防食構造20はメス端子6を備えている。このメス端子6は、前記電線2の導体30に対して電気的に接続されている。また、メス端子6の先端には、角筒状のオス端子挿入部(電気接続部)10が形成されている。この角筒状のオス端子挿入部10の内部には、後述のオス端子9を挿入可能である。また、図3に点線で示すように、オス端子挿入部10の内部には、弾性変形可能な接触片11が形成されている。」

(5)「【0032】
前述のように、電線2は、アルミニウム(又はアルミニウム合金)製の導体30と、当該導体30の周囲を覆った絶縁被覆31と、を備えている。当該電線2の先端部においては、導体30に対してメス端子6を接続するために、絶縁被覆31の一部が除去して導体30を露出させている。なお導体30は、複数のアルミ線かなる撚り線であっても良いし、単線であっても良い。
【0033】
メス端子6は、前述のオス端子挿入部10と、一対のワイヤバレル(導体接続部)12と、を有している。そして、このワイヤバレル12をかしめることにより、電線2の導体30を圧着固定している。これにより、導体30とメス端子6とが電気的に接続されている。なお、メス端子6は、銅(又は銅合金)からなる板材をプレス加工した後、曲げ加工して得られたものであり、オス端子挿入部10とワイヤバレル12は一体的に形成されている。
【0034】
前記モールド部21は、このワイヤバレル12の部分を主に覆うように形成されている。即ち、ワイヤバレル12をかしめて導体30を圧着している部分には、銅とアルミの異種金属接触が発生しているので、周囲に水分が存在していると電食が発生してしまう。そこで、図3及び図4に2点鎖線で示すように、ワイヤバレル12の部分をモールド部21によって封止することにより、前記異種金属接触部分に対して水分が外部から入りこむことを防止している。」

(6)「【0045】
絶縁被覆除去工程においては、電線2の端部の絶縁被覆31を除去し、内部の導体30を露出させる。続いて、端子接続工程において、メス端子6のワイヤバレル12をかしめることにより、前記露出させた導体30に対してメス端子6を接続する。
【0046】
続いて、端子載置工程では、導体30に接続されたメス端子6と、絶縁被覆31の先端部とを、下側金型40の上に載置する。この下側金型40及び上側金型41は、モールド部21を樹脂成形するための金型である。
【0047】
図7に示すように、下側金型40には、オス端子挿入部10及びワイヤバレル12に対応した凹部42が形成されている。この下側金型40にメス端子6を載置する際には、図9に示すように、前記凹部42にオス端子挿入部10及びワイヤバレル12を嵌め込むようにして載置する。このように下側金型40に凹部42が形成されているので、メス端子6を金型に設置する際の位置決めが行い易くなり、作業性が向上する。
【0048】
また、図8(b)に示すように、下側金型40の側面には、断面形状が略U字状の切込部43が形成されている。メス端子6を下側金型40に載置する際、絶縁被覆31の残りの部分(モールドを形成しない部分)は、切込部43の前記U字状の部分に通して、下側金型40の外側へ出すようにして載置する(図9及び図10(b)参照)。このように、下側金型に形成されたU字状の切込に電線2を通すので、下側金型40と上側金型41とを組み合わせる際に、電線2の位置がズレて両金型40,41の間に挟み込まれてしまうことを防止することができる。
【0049】
上記のようにしてメス端子及び絶縁被覆を下側金型に載置すると、この下側金型に上側金型を組み合わせて樹脂成形を行う(モールド部形成工程)。これにより、図11に示すように、モールド部21が形成され、本実施形態の電線端子防食構造20が生産される。
なお、この樹脂成形のときに、仮にオス端子挿入部10に樹脂が流入して接触片11等に樹脂が付着してしまうと、メス端子6の接触不良の原因となってしまう。そこで、図7及び図8(a)等に示すように、下側金型40には、ワイヤバレル12からオス端子挿入部10に向かって樹脂が流入することを防止する流入防止壁44が形成されている。これにより、メス端子6の接続信頼性を高めるとともに、モールド部21によってワイヤバレル12を確実に封止することができる。」

(7)(4)及び(5)より、メス端子6は、銅(又は銅合金)からなる板材をプレス加工した後、曲げ加工して得られたものであり、一体的に形成されたオス端子挿入部10(電気接続部)とワイヤバレル(導体接続部)12を有するので、オス端子挿入部10(電気接続部)とワイヤバレル(導体接続部)12の間は、首部で連結されていることが分かる。
また、図3ないし図5、図7、図8(a)、及び図10(a)の記載からみて、首部は、底面壁と前記底面壁の両側より立設された一対の側面壁とを有していることが分かる。

(8)(4)、(5)より、メス端子6にワイヤバレル(導体接続部)12により電線2が接続されたものは、全体として接続端子を構成していることが分かる。

(9)(6)より、下側金型40の切込部43に電線2を載置しており、また、オス端子挿入部10及びワイヤバレル12に対応した凹部42が形成されているので、切込部43及び凹部42は、前記電線2と前記接続端子を適正位置に保持していることが分かる。

上記記載事項及び認定事項を総合し、本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、先願明細書には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。
「オス端子9が接続されるオス端子挿入部(電気接続部)10と、電線2が接続されたワイヤバレル(導体接続部)12と、前記オス端子挿入部(電気接続部)10と前記ワイヤバレル(導体接続部)12の間を連結する首部とを備え、前記ワイヤバレル(導体接続部)12と前記電線2の接続箇所がモールド部21によって被覆され、前記首部は、底面壁と前記底面壁の両側より立設された一対の側面壁とを有する接続端子の製造方法であって、
前記モールド部21の成型時には、前記電線2が接続された前記接続端子をモールド部21を樹脂成形するための下側金型40及び上側金型41内にセットし、前記首部の位置に、前記オス端子挿入部(電気接続部)10側への樹脂の流入を防止する前記下側金型40の流入防止壁44を配置すると共に、前記電線2と前記接続端子をそれぞれ適正位置に切込部43及び凹部42で保持する接続端子の製造方法。」

第5.当審の判断
1.本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比する。
引用発明の「オス端子9」は、その機能・構造からみて、本願発明1の「相手端子」に相当し、同様に、「オス端子挿入部(電気接続部)10」は「端子接続部」に、「電線2」は「電線」に、「ワイヤバレル(導体接続部)12」は「電線接続部」に、「モールド部21」は「樹脂被覆部」に、「モールド部21を樹脂成形するための下側金型40及び上側金型41」は、「樹脂成型用の金型」に、「流入防止壁44」は「樹脂堰止め用駒部」に、「切込部43及び凹部42」は「保持部」に、それぞれ相当する。

以上の点からみて、本願発明1と引用発明とは、以下の一致点及び相違点を有すると認められる。
[一致点]
「相手端子が接続される端子接続部と、電線が接続された電線接続部と、前記端子接続部と前記電線接続部の間を連結する首部とを備え、前記電線接続部と前記電線の接続箇所が樹脂被覆部によって被覆され、前記首部は、底面壁と前記底面壁の両側より立設された一対の側面壁とを有する接続端子の製造方法であって、
前記樹脂被覆部の成型時には、前記電線が接続された前記接続端子を樹脂成型用の金型内にセットし、前記首部に、前記端子接続部側への樹脂の流入を阻止する前記金型の樹脂堰止め用駒部を配置すると共に、前記電線と前記接続端子をそれぞれ適正位置に保持部で保持する接続端子の製造方法。」
[相違点]
本願発明1は、首部は、「一対の前記側面壁は、互いの間隔が同じである平行壁部を有」し、当該「一対の前記平行壁部の位置に、」「樹脂堰止め用駒部を配置」するのに対して、引用発明は、かかる構成を有するのか明らかでない点。

(2)判断
相違点に係る本願発明1の構成に関して、本願明細書には、「しかしながら、前記従来例の接続端子100では、首部120の一対の側面壁122が傾斜しているため、図14(a)に示すように、首部120の所定位置より端子接続部101側にずれた位置に樹脂堰止め用駒部142がセットされると、樹脂堰止め用駒部142と各側面壁122の間に隙間dができ、溶融樹脂を確実に堰き止めることができない。図14(b)に示すように、首部104の所定位置より電線接続部103側にずれた位置に樹脂堰止め用駒部142がセットされると、樹脂堰止め用駒部142が各側面壁122の上端面に突き当たり、樹脂堰止め用駒部142をセットすることができない。その際に、樹脂堰止め用駒部122や側面壁104bが損傷等するおそれがある。従って、樹脂堰止め用駒部142を高精度に位置決め管理する必要があり、樹脂堰止め部142の位置決め管理が面倒であるという問題があった。」(段落【0011】)、「そこで、本発明は、前記した課題を解決すべくなされたものであり、樹脂堰止め用駒部の位置決め管理が容易である接続端子の製造方法を提供することを目的とする。」(段落【0012】)、「本発明によれば、首部は、互いの間隔が同じである一対の平行壁部を有するため、この一対の平行壁部の範囲内に樹脂堰止め用駒部を配置するため、樹脂堰止め用駒部は適正にセットされる。従って、樹脂堰止め用駒部の位置決め管理が容易である。」(段落【0017】)と記載されている。
これらの記載からみて、本願発明1は、従来、首部の一対の側面壁が傾斜していたため、樹脂堰止め用駒部と各側面壁の間に隙間ができ、溶融樹脂を確実に堰き止めることができない等樹脂堰止め部の位置決め管理が面倒である、との課題を解決するため、首部に互いの間隔が同じである一対の平行壁部を設けて、当該平行壁部の範囲内に樹脂堰止め用駒部を配置することにより、樹脂堰止め用駒部は適正にセットされ、樹脂堰止め用駒部の位置決め管理を容易とすることができるという効果を奏するものであると認められる。
一方、引用発明は、前記相違点に係る本願発明1に係る構成を有するのか明らかでないので、先願明細書に記載された事項につき検討する。
引用発明におけるメス端子6は、銅(又は銅合金)からなる板材をプレス加工した後、曲げ加工して得られたものであり、一体的に形成されたオス端子挿入部10(電気接続部)とワイヤバレル(導体接続部)12を有するので、オス端子挿入部10(電気接続部)とワイヤバレル(導体接続部)12の間は、首部で連結されている(第4.(7))。引用文献等1の図面において、この首部には符号が付されておらず、明細書にも首部の具体的な構成ついて説明した記載は見当たらない。
首部は、銅(又は銅合金)からなる板材をプレス加工した後、曲げ加工して得られたものであり、図3ないし図5、図7、図8(a)、及び図10(a)の記載を踏まえると、首部は、少なくとも当該板材の底面壁と前記底面壁の両側より立設された一対の側面壁とを有していることは把握可能である。 しかしながら、図8(a)は、金型の概略的な構成を示す図である図7のA-A断面図であることから、図8(a)の記載からは、図7のA-A線に切った面において、当該板材からなるメス端子6は、「コ字状」の断面形状をしていることが把握されるに留まり、図7及び図8(a)の記載から、一義的にメス端子6の一対の側面壁が、「互いの間隔が同じである平行壁部を有」していると認定することはできない。また、電線端子防食構造の側面図である図3、モールド部の内部の様子を示す斜視図である図4、モールド部の内部の様子を示す側面図である図5等他の図をみても、首部の側面壁の具体的構成は明らかではなく、少なくとも「互いの間隔が同じである平行壁部を有」していると一義的に認めることはできない。
一方、本願明細書において従来技術として提示された「首部の一対の側面壁が傾斜」しているもの(本願明細書の段落【0005】及び【0011】、図11ないし図14))においても、首部120における断面は、引用発明に係る先願明細書の図8(a)と同様に「コ字状」の断面形状となると認められることを踏まえると、図7及び図8(a)の記載から、先願明細書に、首部は、「一対の前記側面壁は、互いの間隔が同じである平行壁部を有」し、当該「一対の前記平行壁部の位置に、」「樹脂堰止め用駒部を配置」する構成が記載されていると認めることはできない。また、他に先願明細書に当該構成が記載されていると認定できる記載及び示唆もない。
さらに、前記したように、本願発明1は、相違点に係る本願発明1に係る構成により、樹脂堰止め用駒部の位置決め管理を容易とすることができるという効果を奏するものであり、相違点に係る本願発明1に係る構成が、課題解決のための具体化手段における微差であるとも認められず、当該構成が先願明細書に記載されているに等しい事項と認定することもできないので、本願発明1と引用発明は実質同一であるとも認められない。
したがって、本願発明1は、先願明細書に記載された発明であるとすることはできないので、特許法第29条の2の規定により特許をすることができないものであるとすることはできない。

2.本願発明2ないし4について
本願発明1を直接的に又は間接的に引用する本願発明2ないし4は、本願発明1をさらに限定したものである。第5.1.(2)のとおり、本願発明1は、先願明細書に記載された発明であるとすることはできないから、本願発明2ないし4は、先願明細書に記載された発明であるとすることはできないので、特許法第29条の2の規定により特許をすることができないものであるとすることはできない。

第6.むすび
以上のとおり、本願発明1ないし4は、先願明細書に記載された発明であるとすることはできないので、特許法第29条の2の規定により特許をすることができないものであるとすることはできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2015-54811(P2015-54811)
審決分類 P 1 8・ 161- WY (H01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 楠永 吉孝  
特許庁審判長 冨岡 和人
特許庁審判官 阿部 利英
内田 博之
発明の名称 接続端子の製造方法  
代理人 三好 秀和  

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