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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H02J
管理番号 1325510
審判番号 不服2016-4476  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-25 
確定日 2017-02-23 
事件の表示 特願2011-181913「電動車両用充電装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 3月 4日出願公開,特開2013- 46474〕について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成23年 8月23日の特許出願であって,平成27年 1月 9日付けで拒絶理由を通知し(発送日:同年 1月20日),同年 3月23日に意見書,手続補正書が提出され,同年 4月 6日付けで最後の拒絶理由が通知され(発送日:同年 4月14日),同年 6月15日に意見書,手続補正書が提出されたが,同年12月22日付けで平成27年 6月15日付けの手続補正が却下されるとともに,拒絶査定(送達日:平成28年 1月 5日)がなされ,これに対して,平成28年 3月25日に拒絶査定不服審判の請求がなされると同時に手続補正がなされたものである。

第2 本願発明について
1.本願発明
平成28年 3月25日付けで補正(請求項の削除)された特許請求の範囲,明細書及び図面の記載からみて,本願の請求項1に係る発明は,特許請求の範囲の請求項1に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認められる。
「【請求項1】
施工場所に取り付けるための取付部を有する充電装置本体に,給電対象の電動車両に着脱自在に接続される充電コネクタが結線された充電ケーブルと,前記充電コネクタが接続された前記給電対象の電動車両への充電を制御する充電制御部と,外部電源に接続するための電源コネクタが結線された電源ケーブルとが設けられ,
前記充電制御部が,前記給電対象の電動車両から充電開始信号が入力されると,前記外部電源から前記電源ケーブルを介して供給を受けた電力を前記充電ケーブルを介して前記給電対象の電動車両に供給する電力供給を開始しており,
前記充電装置本体に,前記電源ケーブル及び前記電源コネクタを収納する収納部が設けられたことを特徴とする電動車両用充電装置。」
(以下,請求項1に係る発明を「本願発明」という。)

2.引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-52861号公報(以下,「刊行物1」という。)には,「電気自動車充電用コードセット」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審により付与した。)。

・「【0001】
本発明は,電気自動車の電池を充電するために使用される電気自動車充電用コードセットに関するものである。」

・「【0004】
特許文献1に示すものは,ガレージ内に設置されるものであり,このようなものを設置するには,多額の費用が必要になり,また外出先で充電したいという要求に応えることができない。かかる点に鑑みて,より簡易に電気自動車を充電することができるものとしては,図6に示すような,電気自動車充電用コードセット100が提案されている。
【0005】
図6に示す電気自動車充電用コードセット100は,建物(例えば住宅)の壁面(外壁面)に設置されるコンセントPに接続されるプラグ111が設けられた第1のコード110と,自動車Cのインレットに接続されるコネクタ121が設けられた第2のコード120と,第1のコード110と第2のコード120とを連結し漏電発生時に第1のコード110と第2のコード120との間の電路を遮断する漏電遮断装置130とを備えている。」

・「【0006】
ところで,電気自動車充電用コードセット100において,コンセントPと漏電遮断器たる遮断装置130との間に挿入される第1のコード110の長さは,UL(Underwriters Laboratories Inc)規格によって,10cm?30cmと定められている。そのため,第2のコード120には,コンセントPと自動車Cとの距離が遠い場合でも接続できるように,比較的長いコードが使用される。
【0007】
したがって,電気自動車充電用コードセット100を使用する場合,第2のコード120の余長部分が地面に置かれることが多く,このような第2のコード120の余長部分に人が引っ掛かって転倒するおそれがあり,安全面に問題があった。また,第2のコード120の余長部分が地面に置かれていると見栄えが悪いという問題があった。さらに,第2のコード120が比較的長い場合には,持ち運び難く使い勝手が悪いという問題もある。
【0008】
本発明は上述の点に鑑みて為されたもので,安全に使用でき,見栄えも良い電気自動車充電用コードセットを提供することにある。」

・「【0020】
本発明の一実施形態の電気自動車充電用コードセット(以下,単に「コードセット」と略称する)1は,建物(例えば住宅)の壁面(外壁面)に設置されるアウトレットである交流電源用のコンセントP(図6参照)と電気自動車である自動車C(図6参照)のインレット(図示せず)との接続に使用される電源コードセットである。なお,本願では,電池(二次電池)と電動機(モータ)が搭載された自動車を電気自動車と呼び,これには,内燃機関(ガソリンエンジン)と電動機とが搭載された所謂ハイブリッドカーや,プラグインハイブリッドカーも含むものとする。
【0021】
自動車Cのインレットは,自動車Cに搭載される電池の規格等に応じて好適な形状や,構造が採用される。本実施形態では,自動車Cに交流電力を直流電力に変換して上記電池を充電する充電装置(図示せず)が搭載されていることを前提とし,インレットは交流に対応するものとする。すなわち,自動車Cのインレットは,交流電源(例えば,周波数が50Hzあるいは60HzのAC200Vの商用電源)に接続可能な形に構成されており,交流電源の一対の電圧極に接続される一対の端子(図示せず)と,接地極用の端子(図示せず)とを有している。一方,コンセントPは,例えば,交流電源に対応するものであり,一対の電圧極用の刃受(図示せず)と,接地極用の刃受(図示せず)とを備えている。このようなコンセントPは従来周知のものであるから詳細な説明は省略する。」

・「【0022】
コードセット1は,図2に示すように,電源の接続に使用する第1のコード2と,負荷の接続に使用する第2のコード3と,これらの間に挿入される遮断装置4とを有している。
【0023】
第1のコード2は,3本の絶縁被覆電線2a?2cを1本の絶縁チューブ(図示せず)内に配置してなる3芯のものであり,絶縁被覆電線2a,2bが電圧極の接続に,絶縁被覆電線2cが接地極の接続に使用される。この第1のコード2の一端にはプラグ20が設けられている。プラグ20は,コンセントPに接続するためのものであり,コンセントPの一対の電圧極用の刃受それぞれに接続される一対の栓刃20a,20bと,接地極用の刃受に接続される栓刃20cとを備えている。そして,プラグ20の3つの栓刃20a,20b,20cそれぞれは,第1のコード2の3本の絶縁被覆電線2a,2b,2cそれぞれの一端に接続されている。このようなプラグ20は従来周知のものを採用することができるから詳細な説明は省略する。
【0024】
第2のコード3は,第1のコード2と同様に,3本の絶縁被覆電線3a?3cを1本の絶縁チューブ(図示せず)内に配置してなる3芯のものであり,絶縁被覆電線3a,3bが電圧極の接続に,絶縁被覆電線3cが接地極の接続に使用される。この第2のコード3の一端にはコネクタ30が設けられている。コネクタ30は,自動車Cのインレットに接続するためのものであり,インレットの一対の電圧極用の端子それぞれに接続される一対の端子30a,30bと,接地極用の端子に接続される端子30cとを備えている。そして,コネクタ30の3つの端子30a,30b,30cそれぞれは,第2のコード3の3本の絶縁被覆電線3a,3b,3cそれぞれの一端に接続されている。」

・「【0025】
遮断装置4は,漏電遮断器としての機能を有しており,一対の端子部40,41を備えている。一方の端子部40は,3つの端子40a,40b,40cを有しており,3つの端子40a,40b,40cそれぞれには第1のコード2の3本の絶縁被覆電線2a,2b,2cそれぞれの他端が接続される。端子部40は,交流電源に接続するための電源接続端子部として使用される。他方の端子部41は,3つの端子41a,41b,41cを有しており,3つの端子41a,41b,41cそれぞれには第2のコード3の3本の絶縁被覆電線3a,3b,3cそれぞれの他端が接続される。端子部41は,負荷である自動車Cに接続するための負荷接続端子部として使用される。
【0026】
一対の端子部40,41間は,電気接続部42により電気的に接続されている。電気接続部42は,端子40aと端子41aとを接続する電路42aと,端子40bと端子41bとを接続する電路42bと,端子40cと端子41cとを接続する電路42cとを有している。電気接続部42において,電力供給に使用される給電用の電路42a,42bそれぞれには,接点部43a,43bが挿入されている。接点部43a,43bは,固定接点と,当該固定接点に接離する可動接点とで構成される機械接点よりなり,これら接点部43a,43bによって,自動車Cへの給電をオン/オフする開閉部43が構成されている。すなわち,開閉部43が閉じていれば(両接点部43a,43bが閉じていれば),給電用の間の電路42a,42bを通じて自動車Cに給電可能になり,開閉部43が開いていれば(両接点部43a,43bが開いていれば),給電用の電路42a,42bが遮断されて自動車Cには給電されない。
【0027】
遮断装置4には,開閉部43の開閉を行う開閉機構部44と,開閉機構部44を制御する制御部45とを備えている。
【0028】
開閉機構部44は,例えば,開閉部43の各接点部43a,43bの固定接点が固着された固定端子板や,可動接点が固着された可動接触子,ばね材,係止部材などの種々の部材が機械的に結合されてなり,制御部45より与えられる制御信号に応じて開閉部43の開閉を行う。この種の開閉機構部44は従来周知のものを採用することができるから詳細な説明は省略する。
【0029】
制御部45は,例えば,マイクロコンピュータ(マイクロコントローラ,略称としてマイコン,広義にはCPUとも称される)であり,メモリに記憶されたプログラムをCPUで実行することにより後述する種々の処理を実行する。この制御部45は,給電用の電路42a,42bに不平衡電流が生じているか否かを検出する零相変流器46の検出出力に基づいて,漏電が生じているか否かを判定する処理を実行する。制御部45は,当該処理の結果,漏電が生じていると判定すれば,開閉部43が開状態となるように開閉機構部44を制御する。これによって一対の端子部40,41間が遮断されて,交流電源から自動車Cに電力が供給されないようにする。一方,制御部45は,漏電が生じていないと判定すれば,開閉部43が閉状態となるように開閉機構部44を制御し,交流電源から自動車Cに電力が供給されるようにする。
【0030】
また,制御部45は,後述する収納部6に収納された第2のコード3の温度(第2のコード3そのものの温度ではなくて雰囲気温度でもよい)を検出する温度センサ47の検出結果に基づいて開閉機構部44を制御する処理を実行する。当該処理において,制御部45は,温度センサ47で検出された温度が所定温度以上であれば,開閉部43が開状態となるように開閉機構部44を制御する。これによって一対の端子部40,41間が遮断されて,交流電源から自動車Cに電力が供給されないようにする。一方,制御部45は,所定温度未満であれば,開閉部43が閉状態となるように開閉機構部44を制御し,交流電源から自動車Cに電力が供給されるようにする。ここで,上記の所定温度は,第2のコード3を構成する絶縁被覆電線の絶縁被覆の材料や絶縁チューブの材料である絶縁材料(ビニルなど)の融点を基準に定められ,これら絶縁被覆や絶縁チューブが溶け出す前に,電路42a,42bを遮断することができる温度に設定される。
【0031】
このように遮断装置4は,漏電が生じた際に一対の端子部40,41間を遮断して給電を停止する機能と,第2のコード3の絶縁被覆や絶縁チューブが溶けるおそれがある場合に一対の端子部40,41間を遮断して給電を停止する機能とを有している。」

・「【0033】
上述した遮断装置4は,図1(a),(b)に示すような筐体5に収納されている。なお,以下では,説明の簡略化のために,図1(a)における上下方向を筐体5の高さ方向,図1(a)における左右方向を筐体5の幅方向,図1(a)における紙面の法線方向を筐体5の厚み方向として説明する。
【0034】
筐体5は,高さ方向と幅方向の寸法がほほ同じで,厚み方向の寸法が高さ方向の寸法より小さい直方体の箱状に形成されている。この筐体5の幅方向の一側面(図1(a)における左側面)には,第1のコード2を通すための第1の開孔部(図示せず)が設けられている。すなわち,第1のコード2の他端は筐体5内で遮断装置4の端子部40に接続され,第1のコード2の一端は上記開孔部を通して筐体5の外部に引き出される。なお,コンセントPと漏電遮断器たる遮断装置4との間に挿入される第1のコード2の長さは,UL規格によって,10cm?30cmと定められているため,第1のコード2の長さはこの範囲で定められる。
【0035】
筐体5の厚み方向の一面側(図1(b)における左面)には,第2のコード3を出し入れ自在に収納可能な収納部6が設けられている。
【0036】
収納部6は,第2のコード3が巻き付けられるドラム60を有している。ドラム60は,断面が真円の筒状に形成され,中心軸方向を筐体5の厚み方向に沿わせた状態で,中心軸を回転軸として筐体5の厚み方向の一面側に回転自在に取り付けられている。ドラム60における筐体5側とは反対側(図1(b)における左側)には正円の円盤部61が設けられており,円盤部61の中心軸とドラム60の中心軸とは一致している。この円盤部61におけるドラム60側とは反対側(図1(b)における左側)の縁部には,ドラム60を手動で回転させるための摘み部61aが突設されている。また,この円盤部61は,内周形状が円形状(円盤部61の外周形状よりやや大きい円形状),外周形状が矩形状に形成された枠体であるフレーム部62の内側に回転自在に支持されている。フレーム部62の外形サイズは筐体5の厚み方向の一面と同サイズに形成されている。フレーム部62は,棒状(図示例では丸棒状)の連結部63により筐体5に取り付けられている。連結部63は全部で4本あり,フレーム部62の四隅に位置している。
【0037】
筐体5の厚み方向の一面には,第2のコード3を通すための第2の開孔部(図示せず)が設けられており,第2のコード3の一端は当該第2の開孔部より収納部6側に引き出される。なお,第2のコード3の他端は筐体5内において遮断装置4の他方の端子部41に接続され,これによって,第2のコード3が遮断装置4を介して第1のコード2に連結される。筐体5より引き出された第2のコード3は,ドラム60の外周面(回転軸に直交する面内における外周面)に巻き付けられる。そのため,ドラム60の回転に応じて,収納部6より外部に引き出すことができる第2のコード3の長さを調整することができる。」

・「【0040】
また,筐体5の幅方向の他面(図1(a)における右面)における高さ方向の一面側(図1(a)における下面側)には,保持部9が設けられている。保持部9は,コネクタ30を保持するためのものであり,筐体5の高さ方向の他面側(図1(b)における上面側)が開口された箱状に形成されている。したがって,コネクタ30の先部を上記開口より保持部9内に差し入れることで,コネクタ30が保持部9に保持されることになる。なお,保持部9の形状は上記の例に限定されず,コネクタ30の先端が地面に着かないように保持できるものであればよい。
【0041】
以上述べたように,コードセット1は,一対の端子部40,41を有し漏電時に一対の端子部40,41間を遮断する遮断装置4が収納された筐体5と,建物の壁面に設置されるアウトレット(コンセントP)に接続されるプラグ20が一端に設けられ他端が遮断装置4の一方の端子部40に接続される第1のコード2と,自動車Cのインレットに接続されるコネクタ30が一端に設けられ他端が遮断装置4の他方の端子部41に接続される第2のコード3とを備えている。コードセット1の筐体5には,第2のコード3を出し入れ自在に収納可能な収納部6と,地面に安定して置くための台部であるスタンド7と,持ち運び用の把手8とが設けられている。そして,収納部6は,筐体5に回転自在に取り付けられるとともに回転軸に直交する面内における外周面に第2のコード3が巻かれるドラム60を備えている。
【0042】
本実施形態のコードセット1を使用するにあたっては,把手8を持ってコードセット1を所望の位置まで持ち運び,スタンド7により所望の位置に置く。その後に,第1のコード2のプラグ20をコンセントPに接続し,コネクタ30を自動車Cのインレットに接続すればよい。ここで,コネクタ30を自動車Cのインレットに接続するにあたっては,コネクタ30を保持具9より外し,収納部6より第2のコード3を必要な分だけ引き出せばよい。第2のコード3を引き出し過ぎた場合には,摘み部61aを持って,第2のコード3を巻き取る方向にドラム60を回転させて第2のコード3の余長分を収納部6に引き入れればよい。
【0043】
このように本実施形態のコードセット1によれば,第2のコード3を必要な分だけ収納部6から引き出して使用することができる(第2のコード3の余長部分を収納することができる)ので,第2のコード3の余長部分が地面に置かれることがないから,第2のコード3の余長部分に人が引っ掛かって転倒してしまうことを防止できて,安全に使用することができ,しかも見た目がすっきりして,見栄えも良い。また,把手8を持って持ち運ぶことができ,しかもスタンド7により地面に安定して置くことができるから,使い勝手が良い。特に第2のコード3を収納部6に収納することができるから,持ち運びが容易である。
【0044】
また,筐体5には,コネクタ30を保持する保持具9が設けられているので,コネクタ30を筐体5に保持させることができる。そのため,コネクタ30の垂れ下がりに起因する第2のコード3の断線や,コネクタ30を地面に放置した際に水が浸入するといった不具合が発生することを防止することができる。
【0045】
また,収納部6に収納された第2のコード3の温度を検出する温度センサ47を備え,遮断装置4は,温度センサ47で検出された温度が所定温度以上であれば,一対の端子部40,41間を遮断する機能を有している。そのため,温度センサ47で検出された温度が所定温度以上になると一対の端子部40,41間が遮断されて第2のコード3に電流が流れなくなる。よって,第2のコード3の温度が上がりすぎて,第2のコード3の絶縁被覆が溶けて導線が露出してしまうことを防止することができる。」

・「【0046】
ところで,第1のコード2の長さはUL規格によって規制されているため,コンセントPが比較的高所にある場合には,コードセット1を地面に置くことができず,筐体5や収納部6が第1のコード2で吊り下げられた形になり,第1のコード2やコンセントPに多大な負荷がかかり,第1のコード2が断線したり,プラグ20が破損したりするおそれがある。
【0047】
そこで,筐体5は,図3(a),(b)に示すような取付プレート50に取り付けることができるように構成されている。取付プレート50は,筐体5を壁面に取り付けるための取付部として用いられるものであって,矩形板状に形成されている。取付プレート50の長手方向の一端側(図3(a)における上端側)には,コンセントPを壁面に取り付けるための取付ねじ(図示せず)が挿通される挿通孔(図示せず)や,コンセントPに交流電源の電線を接続するための開口部(図示せず)が設けられている。このような取付プレート50は,図3(a),(b)に示すように,コンセントPと壁面との間に位置する形で壁面に取り付けられる。
【0048】
また,取付プレート50における壁面側とは反対面(図3(b)における左面)には,複数(図示例では4本)の引掛部51が設けられている。引掛部51は,いずれもコンセントPが配置される部位よりも取付プレート50の長手方向の他端側(図3(a)における下端側)に位置している。各引掛部51は,取付プレート50の上記反対面より突出する突出部51aと,突出部51aの先端から取付プレート50の長手方向の一端側に向かうように延出された爪部51bとを有する断面L字形に形成されている。これら引掛部51は,筐体5の四隅それぞれに対向する形に配置されている。
【0049】
そして,筐体5の厚み方向の他面の四隅それぞれには,引掛部51が個別に挿入される引掛孔52が設けられている。引掛孔52は,爪部51bの先部と凹凸嵌合する嵌合凹部52aと,爪部51bを嵌合凹部52aに導入するための導入部52bとを有する断面L字形の孔である。
【0050】
コードセット1は,図4(a),(b)に示すように,4つの引掛孔52それぞれに引掛部51を差し入れて,引掛部51の爪部51aを引掛孔52の嵌合凹部52a内に挿入することによって,取付プレート50に取り付けられる。したがって,引掛孔52が,筐体5をコンセントPが設置された壁面に設けた取付部である取付プレート50に取り付けるための被取付部を構成する。
【0051】
このように筐体5を取付プレート50に取り付けることによって,第1のコード2の長さの都合上,地面に置くことができない場合であっても,建物の壁面に取り付けて使用することができて,第1のコード2やプラグ20などに過剰な負荷がかかったり,破損したりすることを防止することができる。
【0052】
また,上記の収納部6の連結部63は,棒状のものであったが,図5に示すように,ドラム60に巻かれた第2のコード3を囲繞する矩形枠状のものであってもよい。図5に示す連結部63は,筐体5の各側面とフレーム部62の各側面とが同一平面上に位置する形でフレーム部62と筐体5とを連結するように形成されている。連結部63における筐体5の幅方向の他端側の側面には,第2のコード3用の挿通孔63aが設けられており,第2のコード3は挿通孔63aを通って収納部6に出し入れされる。このような連結部63を採用すれば,第2のコード3の余長部分(ドラム60に巻かれている部分)を隠すことができて,コードセット1の見た目がさらにすっきりし,見栄えが良くなる。」

・「【0054】
なお,以上述べた実施形態は,本発明の一実施形態に過ぎないものであって,本発明の技術的範囲を本実施形態に限定する趣旨ではなく,本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することができる。例えば,第2のコード3用の収納部6に加えて,第1のコード2を出し入れ自在に収納する収納部を設けてもよく,このようにすれば,第1のコード2の長さを調整することができる。ここで,UL規格に準じる場合,第1のコード2の長さを10cm?30cmの範囲で調整することができる。また,筐体5は必ずしも直方体状である必要はないし,スタンド7や把手8の形状も図示例に限定されるものではない。」

・「【請求項1】
一対の端子部を有し漏電時に一対の端子部間を遮断する遮断装置が収納された筐体と,
建物の壁面に設置されるアウトレットに接続されるプラグが一端に設けられ他端が遮断装置の一方の端子部に接続される第1のコードと,
電気自動車のインレットに接続されるコネクタが一端に設けられ他端が遮断装置の他方の端子部に接続される第2のコードとを備え,
筐体には,上記第2のコードを出し入れ自在に収納する収納部と,地面に安定して置くための台部と,持ち運び用の把手とが設けられ,
上記収納部は,上記筐体に回転自在に取り付けられるとともに回転軸に直交する面内における外周面に上記第2のコードが巻かれるドラムを備えていることを特徴とする電気自動車充電用コードセット。
【請求項2】
上記筐体には,上記建物の壁面に設置された取付部に取り付けるための被取付部が設けられていることを特徴とする請求項1記載の電気自動車充電用コードセット。
【請求項3】
上記収納部は,上記ドラムを上記第2のコードを巻き取る方向に回転させる駆動装置を備えていることを特徴とする請求項1または2記載の電気自動車充電用コードセット。
【請求項4】
上記筐体には,上記コネクタを保持する保持具が設けられていることを特徴とする請求項1?3のうちいずれか1項記載の電気自動車充電用コードセット。
【請求項5】
上記収納部に収納された上記第2のコードの温度を検出する温度センサを備え,
上記遮断装置は,温度センサで検出された温度が所定温度以上であれば,上記一対の端子部間を遮断する機能を有していることを特徴とする請求項1?4のうちいずれか1項記載の電気自動車充電用コードセット。」

そうすると,これらの事項に基づいて,本願発明の表現に倣って整理すると,刊行物1には,以下の発明(以下,「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「建物の壁面に設置された取付部に取り付けるための被取付部が設けられている筐体5に,
電気自動車Cのインレットに接続されるコネクタ30が一端に設けられている第2のコード3と,
前記自動車Cへの給電をオン/オフする開閉部43の開閉を行う開閉機構部44と,開閉機構部44を制御する制御部45とを備えている遮断装置4と,
建物の壁面に設置されるアウトレットである交流電源用のコンセントPに接続されるプラグ20が一端に設けられた第1のコード2とが設けられ,
前記遮断装置4が,漏電が生じた際に給電を停止する機能と,第2のコード3の温度を検出する温度センサ47で検出された温度が所定温度以上であれば給電を停止する機能とを有しており,
前記筐体5に前記第1のコード2を出し入れ自在に収納する収納部を設けた電気自動車充電用コードセット。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された,本願の出願前に頒布された刊行物である特開2010-104209号公報(以下,「刊行物2」という。)には,「プラグイン車両用充電システム」に関し,図面とともに以下の事項が記載されている(下線は,当審により付与した。)。
・「【0001】
本発明は,プラグイン車両に搭載されているバッテリを充電するプラグイン車両用充電システムに関するものである。」

・「【0027】
まず,充電装置1の概略的な構成について説明を行う。充電装置1は,プラグイン車両へ家庭用電源からの電力を供給するものであって,充電場所に近接した家屋に設置される。また,充電装置1は,図1に示すようにスイッチ11,充電ケーブル12,プラグ13,ICタグ14,電力線通信部15,および主制御装置16を備えている。
【0028】
スイッチ11は,主制御装置16に制御されることにより,家庭用の交流電源とプラグ13とを充電ケーブル12を介して電気的に接続させる電力供給許可状態と,家庭用の交流電源とプラグ13とを電気的に切り離す電力遮断状態とに切り替わる。なお,スイッチ11としては,リレーを用いてもよい。
【0029】
プラグ13は,充電ケーブル12の端部に設けられた差込プラグであって,例えば樹脂製の筐体から導体となる刃が突き出ている。なお,プラグ13およびこのプラグ13に連結された充電ケーブル12の一部は,充電装置1から着脱可能な構成であってもよく,プラグイン車両の充電時にのみ充電装置1に接続される構成であってもよい。この場合,プラグ13およびこのプラグ13に連結された充電ケーブル12の一部は,外部接続端子を介して充電装置1と着脱可能に接続される構成とすればよい。」

・「【0031】
電力線通信部15は,充電ケーブル12を介した電力線搬送通信(電力線通信)によって車両側装置2から送信されてくる給電要求信号や給電中止信号などの情報を受信するものである。また,電力線通信部15は,受信した給電要求信号や給電中止信号などの情報を主制御装置16に送る。
【0032】
主制御装置16は,CPU,ROM,RAM,バックアップRAM等(いずれも図示せず)よりなるマイクロコンピュータを主体として構成され,ROMに記憶された各種の制御プログラムを実行することで各種の処理を実行するものである。主制御装置16は,電力線通信部15から給電要求信号を受け取ったときに,スイッチ11を電力遮断状態から電力供給許可状態へと切り替え,電力線通信部15から給電中止信号を受け取ったときには,スイッチ11を電力供給許可状態から電力遮断状態へと切り替える。よって,主制御装置16は,請求項の切り替え部として機能する。また,主制御装置16は,電力線通信部15から給電中止信号を受け取っていない場合であっても,プラグ13が車両側装置2の充電ケーブル差込口23から抜かれたことを検知した場合には,スイッチ11を電力供給許可状態から電力遮断状態へと切り替える。なお,プラグ13が車両側装置2の充電ケーブル差込口23から抜かれたことの検知は,例えば,プラグ13側に接触により押し込まれるスイッチをセンサとして設け,このセンサからの出力をもとにして行う構成などが可能である。
【0033】
なお,充電装置1は,例えば家屋の外に設けられた家庭用の電源コンセントに着脱可能に取り付けられる構成であってもよいし,この家庭用の電源コンセントと一体に組み付けられていてもよい。」

・「【0068】
さらに,本実施形態では,スイッチ11およびスイッチ25を切り替えることによってバッテリ3への充電の可否を切り替える構成を示したが,必ずしもこれに限らない。例えば,車両側装置2にスイッチ25を備えず,スイッチ11の切り替えのみによってバッテリ3への充電の可否を切り替える構成としてもよい。」

3.発明の対比
本願発明と引用発明とを対比すると,後者の「建物の壁面に設置された取付部」は前者の「施工場所」に相当し,以下同様に,「被取付部」は「取付部」に,「筐体5」は「充電装置本体」に,「電気自動車C」は「給電対象の電動車両」に,インレットは着脱自在に接続されるものであるから「インレットに接続される」ことは「着脱自在に接続される」ことに,「コネクタ30」は「充電コネクタ」に,「一端に設けられている」は「結線された」に,「第2のコード3」は「充電ケーブル」に,それぞれ相当する。
後者の「建物の壁面に設置された取付部に取り付けるための被取付部が設けられている筐体5」は「施工場所に取り付けるための取付部を有する充電装置本体」に相当する。
本願明細書段落0018の「充電制御部2は,電動車両100の充電回路101から電線L4を介して入力される信号に基づいて,リレーR1を開極又は閉極させ,電動車両100への電力供給をオン/オフすることによって,電動車両100の充電を制御する。」との記載からみて,本願発明の「充電制御部」とは,接点(リレーR1)をオン/オフさせて,電動車両100への電力供給をオン/オフするものである。そして,後者の「自動車Cへの給電をオン/オフする開閉部43の開閉を行う開閉機構部44と,開閉機構部44を制御する制御部45とを備えている遮断装置4」は前者の「充電制御部」に相当する。
また,後者の「建物の壁面に設置されるアウトレットである交流電源用のコンセントP」は前者の「外部電源」に相当し,「接続される」態様は「接続するための」態様に,「プラグ20」は「電源コネクタ」に,「一端に設けられた」ことは「結線された」ことに,「第1のコード2」は「電源ケーブル」に,それぞれ相当する。
また,後者の「第1のコード2を出し入れ自在に収納する収納部」と前者の「電源ケーブル及び前記電源コネクタを収納する収納部」とは,「電源ケーブルを収納する収納部」である限りにおいて共通し,後者の「電気自動車充電用コードセット」は前者の「電動車両用充電装置」に相当する。

そうすると,両者は,
「施工場所に取り付けるための取付部を有する充電装置本体に,給電対象の電動車両に着脱自在に接続される充電コネクタが結線された充電ケーブルと,前記充電コネクタが接続された前記給電対象の電動車両への充電を制御する充電制御部と,外部電源に接続するための電源コネクタが結線された電源ケーブルとが設けられ,
前記充電装置本体に,前記電源ケーブルを収納する収納部が設けられた電動車両用充電装置。」
の点で一致し,以下の各点で相違する。
<相違点1>
「充電制御部」に関して,本願発明では,「給電対象の電動車両から充電開始信号が入力されると,外部電源から電源ケーブルを介して供給を受けた電力を前記充電ケーブルを介して前記給電対象の電動車両に供給する電力供給を開始」するものであるのに対して,引用発明では,遮断装置4(充電制御部)についてそのような特定はなされていない点。
<相違点2>
「収納部」に関して,本願発明では「電源ケーブル及び電源コネクタ」を収納するのに対して,引用発明では,第1コード2(電源ケーブル)を収納することを特定しているものの,プラグ20(電源コネクタ)を収納することは特定していない点。

4.相違点の検討
<相違点1について>
刊行物2に,「プラグイン車両(本願発明の「給電対象の電動車両」に相当。)の車両側装置2から送信されてくる給電要求信号(本願発明の「充電開始信号」に相当。)を電力線通信部15が受信し,充電装置1の主制御装置16は,前記電力線通信部15から給電要求信号等を受け取ったときに,スイッチ11を電力供給許可状態へと切り替え,家庭用の交流電源(外部電源)から給電路を介して供給を受けた電力を充電ケーブル12を介してプラグイン車両に供給する電力供給を開始すること」が記載されているように,給電対象の電動車両から充電開始信号が入力されると,外部電源から給電路を介して供給を受けた電力を,充電ケーブルを介して前記給電対象の電動車両に供給する電力供給を開始することは,本願出願前に周知の技術的事項(必要があれば,他にも特開2007-228695号公報の段落【0023】に「車両100側から充電装置200側に給電要求があり,カード216の情報が正規の登録者情報と一致した場合には制御ECU208はスイッチ204を閉じて給電を開始し,」と記載,特開2011-24293号公報の段落【0069】に「認証機能なし充電器3の車両通信部31を介して充電要求信号を受け取った主制御部33が,認証機能なし充電器3の充電切り替え部32の接続状態を,電源34から得られる電力を充電制御装置1に供給する状態に切り替えさせ,認証機能なし充電器3からの充電を実施する。」との記載を参照のこと。)である。
そして,給電対象が必要とする場合に充電を行うことは,一般的な課題であるから,引用発明の給電をオン/オフする開閉部を制御する遮断装置4の制御において,刊行物2に記載されたような周知の技術的事項を適用し,相違点1に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易に想到し得たことである。

<相違点2について>
電気機器に,電源ケーブル及び電源コネクタを収納する収納部を設けることは,本願出願前に周知の技術的事項(例えば,特開平11-8941号公報の図1には,電源ケーブル31が,その一端に結合されたプラグを含めて凹部28A内に折り曲げられて収納されたものが示されており,特開2010-200561号公報の図1,図4には,電源コード100が,交流電源コード110の両端に結合された交流電源プラグ6及び雄形コネクタ7,並びに直流電源プラグ120を含めて収納部17内に折り曲げられて収納されたものが示されていることを参照のこと。)である。
そして,電源ケーブル及び電源コネクタを不使用時に邪魔にならないようにすることは,一般的な課題であるから,引用発明の第1コード2(電源ケーブル)を収容する収納部に周知の技術的事項を適用し,第1コード2(電源ケーブル)に接続されたプラグ20(電源コネクタ)も収容して,相違点2に係る本願発明の構成とすることは,当業者が容易になし得たことである。

そして,本願発明の効果について検討しても,引用発明,刊行物2に記載された事項及び周知の技術的事項から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって,本願発明は,引用発明,刊行物2に記載された事項及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第3 むすび
以上のとおり,本願発明は,引用発明,刊行物2に記載された事項及び周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると,本願は,他の請求項に係る発明について検討するまでもなく,拒絶されるべきものである。
よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-22 
結審通知日 2016-12-27 
審決日 2017-01-10 
出願番号 特願2011-181913(P2011-181913)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H02J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大手 昌也土居 仁士  
特許庁審判長 中川 真一
特許庁審判官 藤井 昇
永田 和彦
発明の名称 電動車両用充電装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  

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