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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G11B
審判 査定不服 5項独立特許用件 取り消して特許、登録 G11B
管理番号 1325519
審判番号 不服2016-6507  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-02 
確定日 2017-03-14 
事件の表示 特願2014-546001「光ディスク媒体および光ディスク装置」拒絶査定不服審判事件〔平成26年12月 4日国際公開、WO2014/192292、請求項の数(3)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成26年5月27日(優先権主張 平成25年5月31日 日本国)を国際出願日とする出願であって、平成27年2月9日付け拒絶理由通知に対して、同年4月6日付けで意見書が提出され、同年4月28日付け拒絶理由通知に対して、同年7月9日付けで手続補正がなされたが、平成28年1月22日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年5月2日に拒絶査定不服の審判請求がなされると同時に手続補正がなされた。

第2 原査定の概要
請求項1,3-5に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
引用例1:特開2005-243135号公報
引用例2:特開2001-143273号公報
引用例3:特開2000-163809号公報
引用例4:特開2000-298842号公報
引用例5:特開2004-265546号公報
引用例6:特開2005-038566号公報
引用例7:古宮成,Blu-ray Disc技術,次世代光ディスク解体新書,
日経BP社,2003年10月7日,p.58-72

第3 平成28年5月2日付けの手続補正の適否
1.補正後の本願発明
平成28年5月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)は、
本件補正前に、
「【請求項1】
ランドおよびグルーブに情報の記録が可能な光ディスク媒体であって、
前記光ディスク媒体の円周方向において、ランドまたはグルーブのアドレス情報を記録したアドレス情報単位が所定数設けられ、
前記ランドのアドレス情報単位は、アドレス情報を記録することが可能な領域であるアドレス記録領域を3個以上有し、前記3個以上のアドレス記録領域の中から選択された1つの領域にアドレス情報が記録され、
前記ランドのアドレス情報を記録するために前記3個以上のアドレス記録領域の中から選択される1つの領域が、半径方向に隣接する3つのアドレス情報単位間において異なり、
前記ランドと前記グルーブとにはウォブルが形成され、
前記ウォブルは、基本ウォブルと、所定の論理値を示す情報ウォブルとを含み、
前記アドレス情報は、前記情報ウォブルの前記論理値を用いて記録され、
前記情報ウォブルは、前記基本ウォブルの波形に対して略?90度異なる位相を持つ波形形状及び略+90度異なる位相を持つ波形形状によって前記論理値が表現され、
前記ランドの情報ウォブルは、前記ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと、外周側のグルーブに設けられたウォブルとで同一の波形形状であり、
前記ランドのトラック幅の変動を所定の範囲内に抑制する
光ディスク媒体。
【請求項2】
前記ランドのトラック幅が変動する所定の範囲とは、前記基本ウォブルの波形に対して180度異なる位相を持つ波形形状のトラック幅に対して略70%である請求項1記載の光ディスク媒体。
【請求項3】
前記円周方向に設けられた前記アドレス情報単位の数と、前記アドレス記録領域の数とが互いに素である、請求項1または請求項2に記載の光ディスク媒体。
【請求項4】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光ディスク媒体から情報の再生を行う光ディスク装置であって、
前記ランドまたはグルーブに形成されたウォブルに応じた信号を生成する信号生成手段と、
前記信号生成手段の生成した信号から前記基本ウォブルに対して90度の位相差を有する信号を生成する位相差波形生成手段と、
前記信号生成手段の生成した信号と、前記位相差波形生成手段の生成した信号を用いて位相検波を行う位相検波手段と、
前記位相検波手段の生成した信号の絶対値に基づいて、前記複数のアドレス記録領域のうち、前記アドレス情報が記録されている1つの領域を決定する領域決定手段と、
前記領域決定手段が決定した前記領域に対して前記位相検波手段の検波結果に基づいて、アドレスの検出を行うアドレス検出手段と、
を備えた光ディスク装置。
【請求項5】
請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の光ディスク媒体から情報の再生を行う方法であって、
前記ランドまたはグルーブに形成されたウォブルに応じたウォブル信号を生成するステップと、
前記ウォブル信号から前記基本ウォブルに対して略90度の位相差を有する信号を生成するステップと、
前記ウォブル信号と、前記略90度の位相差を有する信号とを用いて位相検波を行うステップと、
前記位相検波の絶対値に基づいて、前記複数のアドレス記録領域のうち、前記アドレス情報が記録されている1つの領域を決定するステップと、
前記決定した前記領域に対して前記位相検波の結果に基づいてアドレスの検出を行うステップと、
を備えた光ディスク再生方法。」
とあったところを、

「【請求項1】
ランドおよびグルーブに情報の記録が可能な光ディスク媒体であって、
前記光ディスク媒体の円周方向において、ランドまたはグルーブのアドレス情報を記録したアドレス情報単位が所定数設けられ、
前記ランドのアドレス情報単位は、アドレス情報を記録することが可能な領域であるアドレス記録領域を3個以上有し、前記3個以上のアドレス記録領域の中から選択された1つの領域にアドレス情報が記録され、
前記ランドのアドレス情報を記録するために前記3個以上のアドレス記録領域の中から選択される1つの領域が、半径方向に隣接する3つのアドレス情報単位間において異なり、
前記ランドと前記グルーブとにはウォブルが形成され、
前記ウォブルは、基本ウォブルと、所定の論理値を示す情報ウォブルとを含み、
前記アドレス情報は、前記情報ウォブルの前記論理値を用いて記録され、
前記情報ウォブルは、前記基本ウォブルの波形に対して略?90度異なる位相を持つ波形形状及び略+90度異なる位相を持つ波形形状によって前記論理値が表現され、
前記ランドの情報ウォブルは、前記ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと、外周側のグルーブに設けられたウォブルとで同一の波形形状であり、
全ての領域でウォブルが読み出せるように前記ランドのトラック幅の変動を所定の範囲内に抑制する
光ディスク媒体。
【請求項2】
前記ランドのトラック幅が変動する所定の範囲とは、前記基本ウォブルの波形に対して180度異なる位相を持つ波形形状のトラック幅に対して略70%である請求項1記載の光ディスク媒体。
【請求項3】
前記円周方向に設けられた前記アドレス情報単位の数と、前記アドレス記録領域の数とが互いに素である、請求項1または請求項2に記載の光ディスク媒体。」
としたものである。なお、補正された事項には下線部を付与した。

2.補正の目的要件について
補正された請求項1ないし3は、「ランドのトラック幅の変動を所定の範囲に抑制する」事項について、「全ての領域でウォブルが読み出せるように」との限定を付加したものである。また、補正前の請求項4および5は、削除された。よって、本件補正は、発明特定事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、また、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。
そして、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4項に違反するところはない。

そこで、本件補正の請求項1ないし3に係る発明(以下、本件補正の請求項1に係る発明を「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定する要件を満たすか)否かについて以下検討する。

3.引用例
(1)原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ア.「【0006】
但し、このようなランド・グルーブ記録方式において、上記した図14(a)のようにグルーブ部分の両壁をウォブルさせてしまうと、ビームスポットがグルーブ側にあるときはよいとして、ランド側にあるときに隣接する他のトラックのグルーブ側のウォブル情報が混在してしまうことになる。
そこで、特にこのようなランド・グルーブ記録方式を採用する光ディスクメディアでは、次の図14(b)に示されるようにして、トラックの片側の側壁のみをウォブルさせた所謂片側ウォブル方式を採るものがある(例えば上記特許文献1参照)。
このような片側ウォブル方式では、互いに隣接するグルーブ・ランドの組において、これらの間となるグルーブの側壁のみをウォブルさせ、このウォブルによるアドレス情報をこれらグルーブとランドとで共用するようにされる。つまり、これによって片側のみをウォブルさせることができる。
そして、この際、片側のみがウォブルされているということは、グルーブ側の他方の壁面はストレートとされることから、一方のトラックのランドと隣接する他のトラックのグルーブとの間の壁は常にストレートとすることができる。これによって、これら一方のトラックのランド側と、隣接する他のトラックのグルーブとの間でのアドレス情報の混在が防止されるものである。」

イ.「【0020】
以下、発明を実施するための最良の形態のうちの1つの形態(以下、実施の形態とする)について説明していく。
先ず、実施の形態としてのディスク状記録媒体である、ディスク50について説明していく。
本実施の形態のディスク50は、磁界変調記録方式により信号の記録再生が行われるMD(Mini Disc:光磁気ディスク)とされる。
このようなMDとしてのディスク50は、記録トラックの側壁がディスク半径方向に蛇行(ウォブル)され、このウォブルによりADIP(ADdress In Pregroove)と呼ばれるディスク上の絶対位置アドレスの情報が記録されている。
【0021】
そして、この場合のディスク50としては、記録トラックの片側の側壁のみがウォブリングされた、所謂片側ウォブルのディスクとされる。すなわち、先の図14(b)にて説明したように、グルーブに対して磁界変調記録方式により信号が記録されると共に、各グルーブ間に形成されるランドに対しても同様に信号が記録される。その上で、グルーブにおける片側の側壁のみがウォブルされて、このウォブルにより記録されたアドレス情報をグルーブとランドとで共用するようにされたものである。」

ウ.「【0024】さらに、ディスク50においては、上記のようなADIPの情報がFM(Frequency Modulation)変調された信号に基づいてウォブルにより記録されることになるが、このようにFM変調信号に基づくウォブルを形成するにあたっては、上記ADIPの情報をバイフェーズ変調するようにされている。
このバイフェーズ変調としては、図2に示されるように、データビット(Data Bit)の1ビットの値を、さらに2値のバイフェーズビット(Bi-phase Bit)により示すようにしたものである。
この場合のバイフェーズ変調では、基本的にデータビットの「0」の値は、2つの同値のバイフェーズビットに変調するようにされる。また、データビットの「1」の値は、2つの異なるバイフェーズビットに変調される。
そして、データビット「0」の値としては、直前のバイフェーズビット値が「0」か「1」かによって、「1」「1」か「0」「0」のバイフェーズビット値に変調されることになる。すなわち、図示するように直前のバイフェーズビット値が「0」であった場合は、データビット「0」の値は「1」「1」のバイフェーズビット値に変調される。そして、次のデータビット値も「0」であった場合は、直前のバイフェーズビット値「1」に応じて、「0」「0」のバイフェーズビット値に変調される。」

エ.「【0028】そして、本実施の形態のディスク50に対しては、上記のようにFM変調処理が施された信号(つまりADIP信号)に基づいたウォブルが形成されていると共に、このFM変調信号のキャリア周波数(中間周波数)で一定とされた、無変調信号に基づくウォブルが形成される領域を挿するものとしている。
すなわち、本例のディスク50では、トラックの周回方向の全域にわたってFM変調信号が記録されるのではなく、このようなFM変調信号に基づくウォブル信号が記録される変調領域と、上記キャリア周波数で一定とされた無変調信号に基づくウォブル信号が記録される無変調領域とを、交互に形成するようにしたものである。
その上で、実施の形態のディスク50では、互いに隣接するトラック間では、上記変調領域どうしが隣り合わないようにするために、ディスク50の半径方向において変調領域と無変調領域とをスタガー(stagger)状に、つまりジグザグに配列するものとしている。
【0029】このような本実施の形態のディスク50の一例としては、例えば次の図4に示すようになる。
図4は、実施の形態のディスク50に形成される、グルーブとランドによる記録トラックと、グルーブの側壁に形成されたウォブルの様子を模式的に示した図である。
この図に示されるように、実施の形態のディスク50では、図示するトラックの周回方向において、FM変調信号に基づいてADIP信号が記録される変調領域(図中斜線部)と、一定の周波数信号が記録された無変調領域とが、交互に且つ連続的に形成されている。
そして、上記もしたように、図示するディスク半径方向においては、グルーブとランドとの組による各記録トラックにおいて、隣接するトラック間ではそれぞれに形成される変調領域どうしが隣り合わないようにされている。換言すれば、隣接する各記録トラック間において、変調領域と隣接するのは必ず無変調領域となるようにされているものである。」

上記アないしエから、引用例1の光ディスクメディアには以下の事項が記載されている。

・上記アおよびイによれば、互いに隣接するグルーブ・ランドの組において、これらの間となるグルーブの側壁のみをウォブルさせ、このウォブルにより記録されたアドレス情報をグルーブとランドとで共用するランド・グルーブ記録方式を採用する光ディスクメディアに関するものである。

・上記イおよびウによれば、ディスク上の絶対位置アドレスの情報であるADIP情報がFM変調処理されたADIP信号を、データビットの「0」の値、「1」の値として示すウォブルを形成するものである。

・上記エによれば、ディスクには、ADIP信号に基づいたウォブルが形成された領域と、中間周波数で一定とされた無変調信号に基づくウォブルが形成された領域とが、トラック周回方向に交互に且つ連続的に形成されるものである。

以上の事項により、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

「ランド・グルーブ記録方式を採用する光ディスクメディアであって、
トラックの周回方向に、ADIP信号に基づいたウォブルが形成された領域と、無変調信号に基づくウォブルが形成された領域とが、交互に連続的に形成され、
ADIP信号は、データビットの「0」、「1」を示すウォブルとし、
互いに隣接するグルーブ・ランドの組において、これらの間となるグルーブの側壁のみにウォブルを形成するものである
光ディスクメディア。」

(2)原査定の拒絶の理由に引用された引用例2には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

オ.「【0020】
図4は本発明に係るグルーブトラックの両側壁に記録されるウォッブルを用いたPIDアドレッシング構造を示した図面であって、本発明はランド/グルーブ上の物理的な位置を別にアクセスする必要のあるディスクとして、例えばランド/グルーブ記録方式を使用するディスクとしてZCLV(Zoned Constant Linear Velocity)またはCAV(Constant Angular Velocity)のように隣接トラック間の角速度が一定に構成された場合に適用される構造であり、グルーブの両側壁の変化が常に同一なのでマスタリング時単一ビームを使用しうる。
【0021】
グルーブトラックには、ウォッブルキャリアの形成されている区間と位相変調されたアドレス情報の形成されている区間とを繰返して配置し、即ち時間軸に対して多重化(時分割多重化)してアドレスデータを配置している。ここで、位相変調はPSK(Phase Shift Keying)変調を使用し、アドレスデータビットが“0b”の時は0°の位相を有するウォッブル信号を記録し、“1b”の時は180°の反対位相を有するウォッブル信号を記録する。また、グルーブトラックを奇数トラックと偶数トラックとに区分し、奇数トラック及び偶数トラックのアドレスデータの位置を交互に配置する。
【0022】
また、単一ビームを用いる場合には、グルーブの両側壁に全て該当グルーブのアドレスを記録するようになっていて、ランドの場合には隣接グルーブのアドレスとZCLVを適用する場合、該当地域のトラック当りセクター数を用いて間接的にアドレッシングしうる。CAVを使用する場合はトラック当りセクター数が決まっていて隣接トラックのセクター住所を知ると現在のセクター住所が分かる。」

上記オによれば、グルーブトラックに、ウォッブルキャリアの形成されている区間と位相変調されたアドレス情報の形成されている区間とを繰返して配置し、ランドの場合には、隣接グールブのアドレスを利用して間接的にアドレッシングすることが記載されている。そして、図4には、ランドトラックが、隣接するグルーブトラックのアドレスデータウォッブルとウォッブルキャリアに挟まれていることが図示されている。
しかしながら、引用例2には、「ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと外周側のグルーブに設けられたウォブルの波形形状が同一である」旨の技術事項は記載されていない。

(3)原査定の拒絶の理由に引用された引用例3には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

カ.「【0033】そこで、この問題を解決するために、アドレスの最小単位である1セクタ(情報領域)をその長さ方向に3以上に等分割して、そのうち隣接する内周側トラックと相互に重ならない1つの領域にそのセクタのアドレス情報を記録し、残りの領域はウォブル信号を無変調で記録しまたはウォブルなしとしている。図8はその一例を示すもので(ウォブルのうねりは図示せず。)、各セクタをその長さ方向に領域a,b,cにそれぞれ3等分し、そのうち隣接する内周側のトラックと相互に重ならないハッチングで示した領域に該セクタのアドレス情報(ADIPデータ)を、該アドレス情報でウォブルを180°2相位相変調して記録し、残りの白ぬきで示した2つの領域に無変調のウォブル信号を記録し(ADIPデータをオール“0”またはオール“1”とする。)、またはウォブルなしとする(ウォブルなしの場合はTp とλの関係は任意でよい。)。これにより、アドレス情報を読む位置では隣接トラックからのウォブルのクロストークによる位相変調が生じなくなる。なお、アドレス情報には該アドレス情報が3分割された領域a,b,cのいずれに記録されているかを示す識別情報が例えばADIPのいずれか2ビットを使用して記録されている。」

上記カによれば、各セクタを領域a,b,cに3等分し、隣接する内周側のトラックと相互に重ならない領域(ハッチング)にアドレス情報をウォブルで180°2相位相変調して記録し、残りを無変調のウォブル信号とする。そして、図8には、アドレス情報を記録した領域(ハッチング)と、白抜きした2つの無変調のウォブル信号が記録された領域が図示されている。
しかしながら、引用例3には、「ランドの内周側のウォブルと外周側のウォブルの波形形状が同一である」旨の技術事項は記載されていない。

(4)原査定の拒絶の理由に引用された引用例4には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

キ.「【0051】この発明の別の記録可能型光ディスクの実施の形態を説明する。この記録可能型光ディスクは、Tp をトラックピッチ、λをウォブルの波長として、2πTp/λがほぼ0.5の偶数倍となるようにトラックが形成され、1ECCブロックで1アドレス区間を構成し、かつ1アドレス区間に記録する1アドレス情報を複数のアドレス情報構成要素に分割して、該各アドレス情報構成要素を該当する1アドレス区間内で、隣接するトラックの情報記録領域を構成するシンクフレームとディスク径方向に相互に重ならない位置のシンクフレームにそれぞれ割り当て、該割り当てられたシンクフレームのウォブルを該割り当てられたアドレス情報構成要素で180°2相位相変調して記録し、他のシンクフレームのウォブルを無変調で記録している。この発明が適用された図1の光ディスク10のある部分の隣接する複数本のトラックにおける情報記録領域の設定例を図12に示す(ウォブルのうねりは省略して図示する。また、図示した範囲にセクタの境界は存在しないものとする。)。図12の例では、1シンクフレーム全長を情報記録領域としている。ウォブル記録情報のフォーマットは、図5(d)の1シンクフレーム全体を情報記録領域とするほかは図5と同じである。図12の例では、情報記録領域を2つ置きのシンクフレームに設定することを基本として、隣接するトラックと該情報記録領域がディスク径方向に相互に重なる位置では該情報記録領域を相対的に1シンクフレーム分位置をずらして該重なりが生じないようにしている。なお、1シンクフレームの全長よりも短い範囲に情報記録領域を設定することもできる。」

上記キによれば、シンクフレームのウォブルを180°2相位相変調してアドレス情報を記録した情報記録領域と、無変調のシンクフレームを有し、情報記録領域をディスク径方向に相互に重ならないようにしている。そして、図12では、トラックm,m+1,m+2,m+3で、相互に重ならない情報記録領域が図示されている。
しかしながら、引用例4には、「隣合うそれぞれのウォブルの波形形状が同一である」旨の技術事項は記載されていない。

(5)原査定の拒絶の理由に引用された引用例5には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ク.「【0038】
【発明の実施の形態】
(実施例1)
図18は本実施例の概要を示したものである。アドレス情報は角度情報部分とトラック情報に分けて表す。この角度情報31とトラック情報32は各トラック内でインターリーブして配置される。アドレス情報自体はグルーブ部にのみ溝ウォブル信号(溝部の半径方向への微小な変位)として配置される。このウォブル信号は溝が光スポットの中心部からずれることにより生じる再生光の反射光量分布の非対称性を利用して検出する、いわゆる、プッシュプル信号により検出することができる。このプッシュプル信号は溝に光スポットを追従させるトラッキングサーボ際のトラッキング誤差信号として用いるものと同様であるが、サーボは光ヘッドのレンズを移動させて行うため、サーボ追従帯域は数kHzである。したがって、ウォブル信号として数100kHz以上の信号を配置しておくと、サーボによって光スポットが溝を追従したとしても、このウォブル信号には追従しないため、溝が光スポットの中心からずれることによるプッシュプル信号が発生し、ウォブル信号が得られる。
【0039】
ランド部は図2に示したように両隣のグルーブにはさまれた領域であるので、両隣のグルーブのウォブルが同一である場合には、ランド部も全く同様にウォブルされることなり、ランド部でも同一の情報が配置されることになる。しかしながら、両隣のグルーブ部分の情報が異なる部分では、ランド部分は純粋な「ウォブル」ではなく溝部の幅が変調されることになるため、ウォブル信号を再生することができない。本発明では、インターリーブされて配置された情報のうち角度情報310は、全トラックに亘って同じものとしている。インターリーブされたトラック情報部分320に関しては、領域を前後にさらに分割し、マーク330、第1のトラック情報領域331、第2のトラック情報領域332の3つに分割される。第1のトラック情報領域と第2のトラック情報領域に記録されるトラック情報は異なる。図ではグルーブトラックTr2-Gでは第1と第2のトラック情報として「Tr1」「Tr2」という情報が配置される。「Tr1」「Tr2」が第1と第2のどちらに記録されるかは各々のインターリーブされたトラック情報領域(セグメント)毎に異なり、交互に配置されるようになっている。隣接グルーブトラックTr3-Gでは第1と第2のトラック情報として「Tr2」「Tr3」という情報が配置される。この場合は「Tr2」の情報が先ほどのトラックでの「Tr2」の情報に隣接するように配置される。すなわち、「Tr2」という情報はランドトラックTr2-Lに隣接する2つのグルーブトラックでまったく同一であるため、ウォブル信号も同じになり、このランドトラックにおいても、ウォブル信号から「Tr2」という情報を再生することが可能となる。しかしながら、このランドトラックTr2-Lにおいては、隣接グルーブ部に「Tr1」あるいは「Tr3」という情報が記録されている領域では隣接するトラックの情報は異なっており、この領域ではランド部でのウォブル信号が普通には得られない。このため、ランド部においては。「Tr2」の情報のみが正確に再生されることになる。角度情報についてはすべてのトラックで共通であるため、ランドトラックにおいても、隣接トラックのグルーブウォブル信号と同一の信号が得られることは言うまでもない。」

上記クによれば、グルーブ部のTr1あるいはTr3という情報が記録されている領域は、トラックのアドレス情報が異なり、グルーブ部のTr1とTr3のウォブルの波形形状は異なるものである。
しかしながら、引用例5には、「隣合うそれぞれのウォブルの波形形状が同一である」旨の技術事項は記載されていない。

(6)原査定の拒絶の理由に引用された引用例6には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

ケ.「【0045】
図8には、本実施形態におけるGトラックアドレス系とLトラックアドレス系が模式的に示されている。グルーブN、ランドN、グルーブN+1、ランドN+1が示され、それぞれのトラックにGトラックアドレス系及びLトラックアドレス系が形成されている。なお、アドレス情報のうちの領域アドレスは「セグメント」(セグメント情報の意)として示されている。
【0046】
ランドNに着目すると、Gトラックアドレス系は逆相ウォブルを含むため不定であるが(図中Aで示す)、上述したように変化ビット位置を検出し、変化ビット位置において2進アドレスを「0」に置き換えることでランドアドレスを算出できる。一方、Gトラックアドレス系に続くLトラックアドレス系では同相ウォブルであるためウォブル信号を復調することでランドアドレスを検出できる。システムコントローラ32は、2つのランドアドレスを入力して両アドレスを比較し、両アドレスが一致する場合にはLトラックアドレス系から検出されたランドアドレスにエラーがなく、正しいランドアドレスであると判定する。一方、両アドレスが一致しない場合、Lトラックアドレス系から検出されたランドアドレスにエラーがあると判定する。グレーコードにおいて、パリティビットを付加することでパリティチェックによりエラーを検出することも可能であるが、パリティビットの付加によりグレーコードの符号間距離が増大してしまう。本実施形態のように、Gトラックアドレス系とLトラックアドレス系を用い、逆相ウォブルとなるため本来的に不定となるアドレス系から2進アドレスを算出し、これを用いて検出アドレスを検証することで、実質的にパリティチェックと同様のエラー検出、さらにはエラー訂正を行うことができる。」

上記ケによれば、トラックのグルーブNとトラックのグルーブN+1に挟まれるトラックのランドNは、グルーブNとグルーブN+1の逆相ウォブルを含むものである。そして、図8には、トラックのランドNが、トラックのグルーブNとトラックのグルーブN+1に挟まれていることが図示されている。
しかしながら、引用例6には、「隣合うそれぞれのウォブルの波形形状が同一である」旨の技術事項は記載されていない。

(7)原査定の拒絶の理由に引用された引用例7には、図面とともに以下の事項が記載されている。なお、下線は当審で付与した。

コ.「BD-REディスクには、記録トラックとして蚊取り線香の渦巻きのように極めて細い溝が刻まれている。記録マークを書き込むのは、その凹凸のうち、レーザ光の入射方向から見て凸の部分だけである。この部分を我々は、「オン・グルーブ」と呼んでいる。凹の部分は、「イン・グルーブ」である。すなわちBD-REの記録トラック方式は「オン・グルーブ」ということになる。
アドレス情報はCD-Rディスクなどと同じように、このグルーブをわずかにウオブル(蛇行、揺動)させることによって埋め込んでいる。信号を変調し、蛇行の形状や周期などに“1”や“0”を表すデジタル・データを載せているわけだ(図8)。」
(第64頁右欄下から4行?第65頁左欄11行)

サ.「この単一周波数をベースとしたウオブルにタイミング情報やアドレス情報を付加する。」(第65頁右欄9?10行)。

上記コないしサによれば、BD-RE(Blu-ray Disc)のアドレス情報は、単一周波数をベースとしたグルーブのウオブルに埋め込まれている。また、第65頁の図8には、波形形状が異なる複数のウォブルが図示されている。
しかしながら、引用例7には、ランドの情報ウォブルが、ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと外周側に設けられたウォブルとで同一形状であることは記載も示唆もされていない。

4.対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比する。

a.引用発明の「光ディスクメディア」は、本願補正発明の「光ディスク媒体」に相当する。また、引用発明の「ランド・グルーブ記録方式」は、本願補正発明の「ランドおよびグルーブに情報の記録が可能」であることに相当する。
よって、引用発明の「ランド・グルーブ記録方式を採用する光ディスクメディア」は、本願補正発明の「ランドおよびグルーブに情報の記録が可能な光ディスク媒体」に相当する。

b.引用発明の「トラックの周回方向」は、本願補正発明の「光ディスク媒体の円周方向」に相当する。
また、引用発明の「ADIP信号に基づいたウォブルが形成された領域と、無変調信号に基づくウォブルが形成された領域とが、交互に連続的に形成」は、ADIP信号に基づいたウォブルがアドレス情報であり、複数箇所に設けられているといえるから、本願補正発明の「ランドまたはグルーブのアドレス情報を記録したアドレス情報単位」に相当する。
よって、引用発明の「トラックの周回方向に、ADIP信号に基づいたウォブルが形成された領域と、無変調信号に基づくウォブルが形成された領域とが、交互に連続的に形成され」は、本願補正発明の「前記光ディスク媒体の円周方向において、ランドまたはグルーブのアドレス情報を記録したアドレス情報単位が所定数設けられ」に相当する。
ただし、本願補正発明は「ランドのアドレス情報単位は、アドレス情報を記録することが可能な領域であるアドレス記録領域を3個以上有し、3個以上のアドレス記録領域の中から選択された1つの領域にアドレス情報が記録され、ランドのアドレス情報を記録するために3個以上のアドレス記録領域の中から選択される1つの領域が、半径方向に隣接する3つのアドレス情報単位間において異なり」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

c.引用発明の「互いに隣接するグルーブ・ランドの組において、これらの間となるグルーブの側壁のみにウォブルを形成」は、ウォブルがグルーブとランドに共用のウォブルが形成されてことであるから、本願補正発明の「ランドとグルーブとにはウォブルが形成され」に相当する。
ただし、本願補正発明は「ランドの情報ウォブルは、ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと、外周側のグルーブに設けられたウォブルとで同一の波形形状であり」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

d.引用発明の「無変調信号に基づくウォブル」は、中間周波数で一定とされたウォブルであるから、本願補正発明の「基本ウォブル」に相当する。
また、引用発明の「ADIP信号は、データビットの「0」、「1」を示すウォブル」は、本願補正発明の「所定の論理値を示す情報ウォブル」であり、「アドレス情報は、情報ウォブルの論理値を用いて記録され」たことに相当する。
よって、引用発明の「無変調信号に基づくウォブル」および「ADIP信号は、データビットの「0」、「1」を示すウォブル」は、本願補正発明の「前記ウォブルは、基本ウォブルと、所定の論理値を示す情報ウォブルとを含み」および「アドレス情報は、情報ウォブルの論理値を用いて記録され」に相当する。

e.本願補正発明は「情報ウォブルは、基本ウォブルの波形に対して略?90度異なる位相を持つ波形形状及び略+90度異なる位相を持つ波形形状によって論理値が表現され」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。
また、本願発明は「全ての領域でウォブルが読み出せるように前記ランドのトラック幅の変動を所定の範囲内に抑制する」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

そうすると、本願補正発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違する。

<一致点>
「ランドおよびグルーブに情報の記録が可能な光ディスク媒体であって、
前記光ディスク媒体の円周方向において、ランドまたはグルーブのアドレス情報を記録したアドレス情報単位が所定数設けられ、
前記ランドと前記グルーブとにはウォブルが形成され、
前記ウォブルは、基本ウォブルと、所定の論理値を示す情報ウォブルとを含み、
前記アドレス情報は、前記情報ウォブルの前記論理値を用いて記録される
光ディスク媒体」

<相違点1>
本願補正発明は「ランドのアドレス情報単位は、アドレス情報を記録することが可能な領域であるアドレス記録領域を3個以上有し、3個以上のアドレス記録領域の中から選択された1つの領域にアドレス情報が記録され、ランドのアドレス情報を記録するために3個以上のアドレス記録領域の中から選択される1つの領域が、半径方向に隣接する3つのアドレス情報単位間において異なり」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

<相違点2>
本願補正発明は「情報ウォブルは、基本ウォブルの波形に対して略?90度異なる位相を持つ波形形状及び略+90度異なる位相を持つ波形形状によって論理値が表現され」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

<相違点3>
本願補正発明は「ランドの情報ウォブルは、ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと、外周側のグルーブに設けられたウォブルとで同一の波形形状であり」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

<相違点4>
本願発明は「全ての領域でウォブルが読み出せるように前記ランドのトラック幅の変動を所定の範囲内に抑制する」と特定されているのに対して、引用発明はその旨の特定がされていない。

5.判断
上記相違点3について判断する。
拒絶の理由で引用された引用例2ないし引用例7(上記「3.(2)ないし(7)」を参照。)には、ランドの情報ウォブルを、ランドに隣接する内周側のグルーブに設けられたウォブルと、外周側のグルーブに設けられたウォブルとで同一の波形形状とする記載や示唆はない。
また、引用発明と、上記引用例2ないし引用例7に記載された事項を組み合わせたとしても、上記相違点3に係る発明特定事項が、当業者にとって容易に導き出せるものであるとはいえない。
よって、他の相違点を検討するまでもなく、本願補正発明は、引用発明および引用例2ないし7に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。
そして、本願請求項2ないし3に係る発明は、本願補正発明をさらに限定したものであるから、本願補正発明と同様に、引用発明および引用例2ないし7に記載された技術事項に基づいて、当業者が容易に発明することができたものではない。

6.むすび
本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合する。

第3 本願発明
本件補正は上記のとおり、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし3に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定されるとおりのものである。

そして、本願の請求項1に係る発明(本願補正発明)は、上記「第2」のとおり、引用例1および引用例7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
また、本願の請求項1に係る発明を直接又は間接的に引用する請求項2ないし3に係る発明は、請求項1に係る発明を更に限定した発明であるから、同様に、引用例1ないし引用例7に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、本願については、原査定の拒絶の理由を検討してもその理由によって拒絶すべきものとすることはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-02-27 
出願番号 特願2014-546001(P2014-546001)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G11B)
P 1 8・ 575- WY (G11B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ゆずりは 広行中野 和彦  
特許庁審判長 井上 信一
特許庁審判官 酒井 朋広
関谷 隆一
発明の名称 光ディスク媒体および光ディスク装置  
代理人 川端 純市  
代理人 鮫島 睦  
代理人 田中 光雄  

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