• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1325555
審判番号 不服2016-7155  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-16 
確定日 2017-03-21 
事件の表示 特願2015-521110号「通行方向に沿って、又は通行方向とは逆方向に、選択的に光を発するための、照明デバイス、及び前記照明デバイスを制御する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 1月23日国際公開、WO2014/013380、平成27年 9月 7日国内公表、特表2015-525954号、請求項の数(13)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年7月5日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2012年7月17日 (CN)中国)を国際出願日とする出願であって、平成27年6月2日付けで拒絶理由が通知され、同年9月2日に意見書及び手続補正書が提出され、同年9月30日付けで拒絶理由が通知され、同年12月22日に意見書が提出され、平成28年1月20日付けで拒絶査定がされ、同年5月16日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成27年9月2日に提出された手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「道路照明のための照明デバイスであり、
照明モジュールと、
前記照明モジュールに結合される制御モジュールであって、第1の所定の条件が満たされるときは、前記道路表面上に第1照明パターンを生成するために第1方向に向けて第1光ビームを発するよう前記照明モジュールを制御し、第2の所定の条件が満たされるときは、前記道路表面上に第2照明パターンを生成するために第2方向に向けて第2光ビームを発するよう前記照明モジュールを制御するよう構成される制御モジュールとを有する照明デバイスであって、
前記第1方向が、通行方向に沿って進むよう方向付けられており、前記第2方向が、前記通行方向とは逆方向に進むよう方向付けられており、前記第2光ビームの出力が、前記第1光ビームの出力より小さい照明デバイス。」
第3 原査定の理由の概要
本願発明は、その出願前(優先日前)に頒布された下記の刊行物1?3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。


刊行物1:特開昭61-138404号公報(拒絶査定時の引用文献5)
刊行物2:特開2002-63803号公報(拒絶査定時の引用文献4)
刊行物3:特開2011-253772号公報(拒絶査定時の引用文献1)

第2光ビーム(カウンター照明)の出力を第1光ビーム(プロ照明)の出力より小さくし、消費電力を少なくすることは、刊行物2や刊行物3にも開示されているように、周知技術である。
そして、道路照明の技術分野において、消費電力を少なくすることは周知の課題であるから、刊行物1記載の発明において、かかる課題を解決するために、上記周知技術を参酌し、本願発明の発明特定事項とすることは、当業者にとって容易である。

第4 当審の判断
1 刊行物の記載事項
(1)刊行物1の記載事項(下線は当審で付した。以下同様。)
(1a)「2、特許請求の範囲
時間交通量検出装置と、自動車の進行方向と逆方向とに配光を可変できるトンネル照明器具と、この配光を制御する制御部とからなり、前記検出装置からの制御信号によって、対象トンネルの時間交通量が計画時間交通量以上のときには前記進行方向に光を配し、計画時間交通量以下のときには進行方向の逆方向に光を配するように構成したトンネル照明装置。」(1頁左下欄4?12行)
(1b)「産業上の利用分野
本発明は、自動車トンネルの路上に存在する障害物を走行中の自動車運転者に知覚しやすくするトンネル照明装置に関するものである。」(1頁左下欄14?17行)
(1c)「従来の技術
従来のトンネル照明装置は、路面からの高さ30cmまでの障害物を知覚することを目的に、トンネル延長方向に対して、第3図に示すような余弦曲線に近似した配光を持った照明器具をトンネル両壁面の上部に、トンネル延長方向に約1?10mの間隔に取付けて、主として路面を照明するものであった〔例えば、高速道路調査会:トンネル照明設計指針(昭54)〕。
発明が解決しようとする問題点
このような従来の照明装置では、主として路面が照明されるので、寸法の大きな障害物の背面(運転者に見えている面)、例えば追突事故の対象物である接近した先行車の背面はほとんど照明されず、先行車の挙動を知覚しにくいという問題があった。また、比較的寸法の小さい障害物、例えば路上に落下している小荷物の背面は路面とともに照明されるので、小荷物と路面との輝度の差、すなわち輝度対比が小さく、小さい障害物の存否を知覚しにくいという問題もあった。
そこで、本発明は接近して走行している先行車の挙動や路上の落下物など障害物の存否を知覚しやすくしようとするものである。」(1頁左下欄18行?同頁右下欄末行)
(1d)「問題点を解決するための手段
前記問題を解決する本発明の技術的手段は、交通量に従って照明器具の配光を変化させることである。」(2頁左上欄1?4行)
(1e)「作用
本来、トンネル照明は、安全交通上危険な路上の障害物(先行車や落下荷物など)の挙動や存否を運転者が容易に知覚できるようにすることを目的に設置されるものである。ここに、先行車の挙動の知覚が特に重要になるのは、交通量が増大して車間距離が縮まり、自車と先行車との相対速度の変化が追突事故に結びつくような場合であり、落下荷物など寸法の小さな障害物の存否の知覚が重要になるのは、交通量が減少して車間距離が長くなり、かつ高速走行している場合である。
一方、トンネルの建設は、あらかじめ1時間あたりの平均交通量〔台/時間〕、すなわち計画時間交通量を設定したうえで、設計速度や車道幅員などを決定してなされるので、おのずとそのトンネルにおける適正車間距離というものは定まる。しかし、交通量は常に一定でなく時間によってかなり増減するので、車間距離は長くなったり短くなったりする。
もし、あるトンネルにおいて時間交通量が計画時間交通量以下であれば、車間距離は適正値あるいはそれ以上の長さになるので、このような場合に重要となる寸法の小さい障害物は、第4図に示すように路面を背景にして見ることになる。この場合には障害物とその背景との輝度対比が大きいほど障害物の知覚は容易である。今、障害物の輝度をLo、背景路面の輝度をLbとすると、障害物とその背景路面との輝度対比Cは(1)式で表わされる。


(1)式からわかるように、輝度対比CはLb≫Loであるほど大きい。したがってこの場合、第5図に示すように、照明器具の光を自動車の進行方向の逆方向に配すれば、その光は路面で自車の方向に反射されるので、背景となる路面輝度Lbは高くなる。一方、障害物の背面は照明されないので輝度Loは低くなる。したがって輝度対比は大きくなる。
これに対して、時間交通量が計画時間交通量以上であれば、車間距離は適正値よりも短くなり、第6図に示すように運転者の視野の大部分は先行車の背面で占められるので、先行車の挙動は先行車とその背景との輝度対比よりも先行車の背面そのものの明るさが重要になる。この場合、第7図に示すように照明器具の光を自動車の進行方向に配すれば、先行車の背面そのものの輝度が高くなり、先行車の挙動を知覚しやすくなる。」(2頁左上欄5行?同頁左下欄12行)
(1f)「実施例
第1図は本発明のトンネル照明装置の一実施例の構成を示すブロック図である。第1図において、時間交通量検出装置1によって検出された時間交通量が計画時間交通量を上廻わった場合には、そのことを示す時間交通量検出装置1からの制御信号で配光制御部2を作動させ、配光可変照明器具3によって光を自動車の進行方向に配する。時間交通量が計画時間交通量を下廻わった場合には、そのことを示す時間交通量検出装置1からの制御信号で配光制御部2を作動させ、配光可変照明器具3によって光を自動車の進行方向の逆方向に配する。
第2図は本発明のトンネル照明装置の配光可変照明器具の一実施例を示す構成図である。第2図において、4,4′はランプ、5,5′は反射鏡、6は配光制御部である。7は前面ガラス、8は器具の本体である。
時間交通量検出装置1からの信号によって配光制御部6が作動し、時間交通量が計画時間交通量以上のときはランプ4′が点灯し、反射鏡5′によって9′で示される自動車の進行方向へ光を配し、時間交通量が計画時間交通量以下のときには、ランプ4が点灯し、反射鏡5によって9で示される自動車の進行方向の逆方向に光を配する。」(2頁左下欄13行?同頁右下欄17行)
(1g)「発明の効果
以上述べたように、本発明によれば、交通量の大小にかかわらずトンネル路上の障害物を容易に知覚でき、トンネル内の安全走行にきわめて有用である。」(2頁右下欄18行?3頁左上欄2行)
(1h)刊行物1には、以下の図が示されている。

(2)刊行物2の記載事項
(2a)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は道路照明方法及び視線誘導型照明装置に関する。具体的には、運転者の視線誘導を確保しつつ路面の輝度を確保した道路照明方法及び当該道路照明方法に適した視線誘導型照明装置に関する。」
(2b)「【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、配光形状を改良し、車線軸進行方向に路面輝度を確保する照明装置と、視線誘導を確保する照明装置とに分けることによって、視線誘導だけでなく路面輝度を確保した視線誘導型の照明装置を提供することにある。」
(2c)「【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の道路照明方法は、道路側方の路面から所定高さ位置に、ちらつきを感じない程度の所定間隔を設けて略連続的に車輌進行方向と逆向きの第一の配光を配すると共に、路面輝度を確保するのに十分な光量を路面へ照射する第二の配光を、前記第一の配光の所定間隔と略等間隔で配したことを特徴としている。
(2d)「【0008】また、前記第一の配光の光量と前記第二の配光の光量とをほぼ等しくすることもできるが、前記第一の配光の光量が前記第二の配光の光量よりも小さくなるようにするのが好ましい。」
(2e)「【0024】このように第一の配光イの光量を第二配光の光量よりも小さくすることによって、グレアが小さくなり、上記第1の実施の形態に比べてさらにちらつきを感じさせることがない。また、消費電力が少なくなるというメリットもある。」

(3)刊行物3の記載事項
(3a)「【0001】
本発明は、配光を可変とした配光可変式照明器具及びそれを用いた道路用照明システムに関する。」
(3b)「【0003】
道路・トンネル等を照明する照明器具の配光を図10乃至図12に示す。トンネルT内の道路には車両進行方向Dが指定されており、車両Vはその方向に路面R上を前進走行する。図10に示すように、照明器具100は、車両進行方向断面において配光曲線111aで示すような前後対称形状の配光を持つものであり、図11及び図12に示すように、照明器具101は、前後非対称形状の配光を持つものである。この照明器具101による配光曲線111bで示すように車両進行方向Dに配光する照明は、プロ照明と呼ばれ、配光曲線111cで示すように車両進行方向Dの逆方向に配光する照明は、カウンター照明と呼ばれる。」
(3c)「【0004】
プロ照明は、進行方向向きの鉛直面照度を上げるための照明であり、先行車の視認性を向上するので、道路の交通量が多く、先行車との車間距離が小さくなる場合に好適であるが、同じ照度の対称照明やカウンター照明よりも路面輝度が低い。」
(3d)「【0005】
カウンター照明は、路面が全方向に均一な反射特性を持たず、正反射に近い方向に比較的高い輝度反射率を持つことを利用し、路面輝度を上げるための照明であり、障害物の視認性を向上する。カウンター照明は、対称に配光する対称照明と比べて、光源の光束が同じであれば路面輝度が高くなり、路面輝度を同じにする場合は、光源の消費電力が抑えられるが、先行車付近の鉛直面照度を上げる作用を得るものではない。」

2 刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「自動車トンネルの路上に存在する障害物を走行中の自動車運転者に知覚しやすくするトンネル照明装置」に関する技術について開示されているところ(摘示(1b))、その特許請求の範囲には、「時間交通量検出装置と、自動車の進行方向と逆方向とに配光を可変できるトンネル照明器具と、この配光を制御する制御部とからなり、前記検出装置からの制御信号によって、対象トンネルの時間交通量が計画時間交通量以上のときには前記進行方向に光を配し、計画時間交通量以下のときには進行方向の逆方向に光を配するように構成したトンネル照明装置。」と記載されている(摘示(1a))。
また、上記「トンネル照明装置」の実施の形態について、
トンネル照明器具は、ランプ4,4′及び反射鏡5,5′を含む配光可変照明器具3として構成されること、及び、
制御部は、前記時間交通量検出装置からの信号によって作動する配光制御部2,6として構成されること(摘示(1f)、摘示(1h)第1,2図)、が明らかである。

したがって、引用文献1には、
「時間交通量検出装置と、
自動車の進行方向と逆方向とに配光を可変できるトンネル照明器具と、
この配光を制御する制御部とからなり、
前記検出装置からの制御信号によって、対象トンネルの時間交通量が計画時間交通量以上のときには前記進行方向に光を配し、計画時間交通量以下のときには進行方向の逆方向に光を配するように構成したトンネル照明装置であって、
前記トンネル照明器具は、ランプ4,4′、反射鏡5,5′、前面ガラス7及び器具の本体8を含む配光可変照明器具3として構成され、
前記制御部は、前記時間交通量検出装置からの信号によって作動する配光制御部2,6として構成される、トンネル照明装置。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。

3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア 本願明細書の「本発明の照明モジュールは、様々な手法で得られ得る。或る例においては、照明モジュール551は、図5に示されているように、2つの照明ユニット552及び553を含み得る。」(【0023】)、「別の例においては、照明モジュール651は、図6に示されているように、1つの照明ユニット652と、駆動ユニット654とを含み得る。」(【0024】)、及び図5,6等の記載によれば、本願発明の「照明モジュール」は、照明ユニットや駆動ユニットを含み得るものとして構成されるものであるところ、引用発明の「トンネル照明器具」は、「ランプ4,4′、反射鏡5,5′、前面ガラス7及び器具の本体8を含む配光可変照明器具3として構成され」るものであるから、照明ユニットとして位置付けられることは技術的に明らかである。
したがって、引用発明の「配光可変照明器具3」を構成する「トンネル照明器具」は、本願発明の「照明モジュール」に相当するものといえる。
イ 本願明細書の「制御モジュール455は、センサと、センサに結合される処理装置とを含み得る。センサは、現在の交通流量を測定し、結果を処理装置に供給する。」(【0020】)との記載によれば、本願発明の「制御モジュール」は、現在の交通流量を測定するセンサや、センサに結合される処理装置とを含み得るものとして構成されるものであるところ、引用発明の「制御部」は、「配光を制御する」ものであって、「前記時間交通量検出装置からの信号によって作動する配光制御部2,6として構成される」ものであるから、引用発明の「配光制御部2,6」を構成する「制御部」は、「時間交通量検出装置」とともに「配光を制御する」という機能単位(モジュール)として位置付けられることは技術的に明らかである。
したがって、引用発明の「配光制御部2,6」を構成する「制御部」及び「時間交通量検出装置」は、本願発明の「制御モジュール」に相当するものといえる。
また、引用発明の「制御部」は、「前記検出装置からの制御信号によって、対象トンネルの時間交通量が計画時間交通量以上のときには前記進行方向に光を配し、計画時間交通量以下のときには進行方向の逆方向に光を配するように構成」されるものであり、「制御部」が「トンネル照明器具(配光可変照明器具3)」と技術的に結びついていることは明らかであるから、上記「制御部」は、本願発明の「前記照明モジュールに結合される制御モジュール」に相当するものといえる。
ウ 引用発明の「進行方向」は、本願発明の「第1方向」であって「通行方向に沿って進むよう方向付けられて」いる方向に相当し、引用発明の「進行方向の逆方向」は、本願発明の「第2の方向」であって「前記通行方向とは逆方向に進むよう方向付けられて」いる方向に相当する。
したがって、引用発明の「対象トンネルの時間交通量が計画時間交通量以上のときには前記進行方向に光を配」すること、及び「計画時間交通量以下のときには進行方向の逆方向に光を配する」ことは、その技術的意義において、本願発明の「第1の所定の条件が満たされるときは、前記道路表面上に第1照明パターンを生成するために第1方向に向けて第1光ビームを発するよう前記照明モジュールを制御」こと、及び「第2の所定の条件が満たされるときは、前記道路表面上に第2照明パターンを生成するために第2方向に向けて第2光ビームを発するよう前記照明モジュールを制御する」にそれぞれ相当するものといえる。
エ 本願明細書の「道路照明のための照明デバイス450は、照明モジュール451と、照明モジュール451に結合される制御モジュール455とを有する。」(【0019】)との記載によれば、本願発明の「照明デバイス」は、「照明モジュール」と「制御モジュール」とを有するものとして構成されるものであるところ、引用発明の「トンネル照明装置」は、「時間交通量検出装置」、「トンネル照明器具(配光可変照明器具3)」及び「制御部(配光制御部2,6)」を有するものであり、さらに、トンネル内の道路の照明として機能することも明らかであるから(摘示(1b))、上記ア?ウをも踏まえると、本願発明の「道路照明のための照明デバイス」に相当するものといえる。

したがって、本願発明と引用発明とは、
「道路照明のための照明デバイスであり、
照明モジュールと、
前記照明モジュールに結合される制御モジュールであって、第1の所定の条件が満たされるときは、前記道路表面上に第1照明パターンを生成するために第1方向に向けて第1光ビームを発するよう前記照明モジュールを制御し、第2の所定の条件が満たされるときは、前記道路表面上に第2照明パターンを生成するために第2方向に向けて第2光ビームを発するよう前記照明モジュールを制御するよう構成される制御モジュールとを有する照明デバイスであって、
前記第1方向が、通行方向に沿って進むよう方向付けられており、前記第2方向が、前記通行方向とは逆方向に進むよう方向付けられている、照明デバイス。」
の点で一致し、以下の点で相違している。

〔相違点〕
本願発明は、「前記第2光ビームの出力が、前記第1光ビームの出力より小さい」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。

4 判断
上記相違点について検討する。
ア 引用発明は、「自動車トンネルの路上に存在する障害物を走行中の自動車運転者に知覚しやすくするトンネル照明装置」に関し(摘示(1b))、従来の照明装置が有する「寸法の大きな障害物の背面(運転者に見えている面)、例えば追突事故の対象物である接近した先行車の背面はほとんど照明されず、先行車の挙動を知覚しにくいという問題」や「比較的寸法の小さい障害物、例えば路上に落下している小荷物の背面は路面とともに照明されるので、小荷物と路面との輝度の差、すなわち輝度対比が小さく、小さい障害物の存否を知覚しにくいという問題」に鑑みて、「接近して走行している先行車の挙動や路上の落下物など障害物の存否を知覚しやすくしようとする」ことのできるトンネル照明装置を提供することを技術課題としたものであって(摘示(1c))、かかる課題を解決するために「交通量に従って照明器具の配光を変化させる」との課題解決手段(摘示(1d))、すなわち、本願発明の「前記検出装置からの制御信号によって、対象トンネルの時間交通量が計画時間交通量以上のときには前記進行方向に光を配し、計画時間交通量以下のときには進行方向の逆方向に光を配するように構成」との事項を具備したものと理解することができる。
イ そして、引用発明の効果は、「交通量の大小にかかわらずトンネル路上の障害物を容易に知覚でき、トンネル内の安全走行にきわめて有用である」というものであり(摘示(1g))、その効果は、障害物とその背景との輝度対比を大きく設定することで奏し得るものと理解することができる(摘示(1e))。
ウ 以上を踏まえて検討する。
(ア)刊行物2には、「運転者の視線誘導を確保しつつ路面の輝度を確保した道路照明方法及び当該道路照明方法に適した視線誘導型照明装置」に関する技術について開示されるところ(摘示(2a))、「配光形状を改良し、車線軸進行方向に路面輝度を確保する照明装置と、視線誘導を確保する照明装置とに分けることによって、視線誘導だけでなく路面輝度を確保した視線誘導型の照明装置を提供する」という課題を解決するために(摘示(2b))、「道路側方の路面から所定高さ位置に、ちらつきを感じない程度の所定間隔を設けて略連続的に車輌進行方向と逆向きの第一の配光を配すると共に、路面輝度を確保するのに十分な光量を路面へ照射する第二の配光を、前記第一の配光の所定間隔と略等間隔で配」することが記載されている(摘示(2c))。
さらに、刊行物2には、上記「第一の配光の光量」と「第二の配光の光量」について、「前記第一の配光の光量と前記第二の配光の光量とをほぼ等しくすることもできるが、前記第一の配光の光量が前記第二の配光の光量よりも小さくなるようにするのが好ましい」こと(摘示(2d))、及び「このように第一の配光イの光量を第二配光の光量よりも小さくすることによって、グレアが小さくなり、・・・さらにちらつきを感じさせることがない。また、消費電力が少なくなるというメリットもある。」こと(摘示(2e))が記載されている。
そうすると、刊行物2には、車線軸進行方向に路面輝度を確保する照明装置、及び視線誘導を確保する照明装置を具備する視線誘導型照明装置を前提として、前記視線誘導を確保する照明装置による光量(第一の配光の光量)を、車線軸進行方向に路面輝度を確保する照明装置による光量(第二の配光の光量)よりも小さくすることで、ちらつきを感じさせることがなく、また、消費電力を少なくする、という技術事項が記載されているものといえる。
そこで、かかる技術事項を引用発明に適用することについて検討すると、引用発明は、上記アで述べたとおり、「接近して走行している先行車の挙動や路上の落下物など障害物の存否を知覚しやすくしようとする」ことのできるトンネル照明装置を提供することを技術課題としたものであるところ、「トンネル照明器具(配光可変照明器具3)」により「進行方向の逆方向」に配光された光は、あくまでも「自動車トンネルの路上に存在する障害物を走行中の自動車運転者に知覚しやすくする」ために配光し路面を照明するものであるから、必ずしも路面への照明が要求されない上記刊行物2に記載された「視線誘導を確保する照明装置による光量(第一の配光の光量)」とはその配光の目的が異なることが明らかである。
したがって、課題及び目的等が異なる刊行物2に記載された技術事項を、引用発明に適用する動機付けはない。
さらに、上記イで述べた引用発明の効果、すなわち、「交通量の大小にかかわらずトンネル路上の障害物を容易に知覚でき、トンネル内の安全走行にきわめて有用である」との効果は、障害物とその背景との輝度対比を大きく設定することで奏し得るものと理解することができるから(摘示(1e))、それに反して輝度対比を小さくするように設定すること、言い換えれば、「進行方向の逆方向」に配光された光の出力を低下させることには阻害要因が存在するものということもできる。
したがって、引用発明及び上記刊行物2に記載された技術事項に基いて、上記相違点に係る本願発明の構成が当業者にとって容易に想到できたものということはできない。
(イ)刊行物3には、「配光を可変とした配光可変式照明器具及びそれを用いた道路用照明システム」に関する技術について開示されるところ(摘示(3a))、その背景技術として、「道路・トンネル等を照明する照明器具の配光」について、「車両進行方向Dに配光する照明は、プロ照明と呼ばれ」ること、「車両進行方向Dの逆方向に配光する照明は、カウンター照明と呼ばれる」こと(摘示(3b))、「プロ照明は、進行方向向きの鉛直面照度を上げるための照明であり、先行車の視認性を向上するので、道路の交通量が多く、先行車との車間距離が小さくなる場合に好適であるが、同じ照度の対称照明やカウンター照明よりも路面輝度が低い」こと(摘示(3c))、及び「カウンター照明は、路面が全方向に均一な反射特性を持たず、正反射に近い方向に比較的高い輝度反射率を持つことを利用し、路面輝度を上げるための照明であり、障害物の視認性を向上する。カウンター照明は、対称に配光する対称照明と比べて、光源の光束が同じであれば路面輝度が高くなり、路面輝度を同じにする場合は、光源の消費電力が抑えられるが、先行車付近の鉛直面照度を上げる作用を得るものではない」こと(摘示(3d))、が記載されている。
そうすると、刊行物3には、車両進行方向に配光するプロ照明と車両進行方向の逆方向に配光するカウンター照明について開示され、特に、カウンター照明について、対称照明と比べて、路面輝度を同じにする場合は、光源の消費電力が抑えられることの記載は認められるものの、カウンター照明の出力を、プロ照明の出力より小さく構成することについては記載も示唆もなされていない。
したがって、引用発明及び上記刊行物3に記載された技術事項に基いて、上記相違点に係る本願発明の構成が当業者にとって容易に想到できたものということはできない。
エ 以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明及び刊行物2、3に記載された技術事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
また、本願の請求項2?13に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。

第5 むすび
以上のとおり、本願の請求項1?13に係る発明は、いずれも、当業者が刊行物1?3に記載された発明(技術事項)に基いて容易に発明をすることができたものではないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-07 
出願番号 特願2015-521110(P2015-521110)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 米山 毅  
特許庁審判長 和田 雄二
特許庁審判官 氏原 康宏
一ノ瀬 覚
発明の名称 通行方向に沿って、又は通行方向とは逆方向に、選択的に光を発するための、照明デバイス、及び前記照明デバイスを制御する方法  
代理人 特許業務法人M&Sパートナーズ  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ