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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G01R
管理番号 1325563
審判番号 不服2016-9059  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-17 
確定日 2017-03-21 
事件の表示 特願2011-241484「プローブカード及び検査装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月20日出願公開、特開2013- 96909、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月2日の出願であって、平成27年3月5日付けで拒絶理由が通知され、平成27年4月27日付けで手続補正がなされ、平成27年8月20日付けで最後の拒絶理由が通知され、平成27年10月8日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月25日付けで、平成27年10月8日付けの手続補正についての補正却下の決定がなされ、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年6月17日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年6月17日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)の適否
1 補正の内容
平成28年6月17日付けの手続補正は、特許請求の範囲および明細書についてするもので、
(補正事項1)
本件補正前の平成27年4月27日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1(以下、「本件補正前の請求項1」という。)に「上記被検査体と電気的に接続するための接触子」とあったところを「上記被検査体と電気的に接続した際に上記被検査体に押圧され縮む、垂直型の接触子」と限定し、
(補正事項2)
本件補正前の請求項1に「上記照明部から発光された光を拡散する拡散板」とあったところを「上記接触子が縮む分を考慮して、上記照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に所定の照度で当てるように調整された拡散板」と限定し、
(補正事項3)
本件補正前の平成27年4月27日付けの手続補正により補正された明細書の段落【0007】の記載を、上記補正事項1及び補正事項2に整合させ、
(補正事項4)
本件補正前の明細書の段落【0057】に「押厚され」とあった誤記を「押圧され」と訂正するものである。

2 補正の適否
本件補正の(補正事項1)及び(補正事項1)は、特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものに該当する。
また、本件補正は、特許法第17条の2第3項、第4号に違反するところはない。

そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について以下に検討する。

ア 本願補正発明
本願補正発明は、本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「受光部と電極を備える被検査体と電気的に接続するプローブカードにおいて、
上記被検査体と電気的に接続した際に上記被検査体に押圧され縮む、垂直型の接触子と、
上記接触子と電気的に接続する基板と、
上記基板で、上記接触子と同じ板面上に配置された、上記被検査体に向けて光を照射することが可能な光源を備える照明部と、
上記接触子が縮む分を考慮して、上記照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に所定の照度で当てるように調整された拡散板と
を有することを特徴とするプローブカード。」

イ 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2010-267913号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、つぎの事項が記載されている(下線は,当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、CCDイメージセンサやCMOSイメージセンサのように、複数の受光素子を備えた光センサの試験に用いる発光装置に関する。」

「【0026】
図1から図4に示す発光装置10は、図9に示すように、矩形をした多数のセンサチップ領域、すなわち光センサ12を、CCDウエーハ、CMOSウエーハのような円板状のセンサ基板14にマトリクス状に配置した基板を被検査体とし、それらセンサチップ領域12の受光素子を複数回に分けて試験することにより、光センサ12の良否を決定する試験装置に用いられる。
【0027】
各光センサ12は、CCD素子、CMOS素子等で構成された多数の受光素子16(図4参照)をマトリクス状に配置している。各受光素子16は、図6に示すように、センサ基板14に設けられた複数の電極14aの少なくとも1つに、センサ基板14に設けられた配線14bを介して電気的に接続されている。」

「【0030】
発光装置10は、それぞれが上面及び下面を有する第1,第2及び第3の基板20,22及び24を、それらの厚さ方向が上下方向となる状態に、上下に重ね合わせており、また複数の光源26を第1の基板20の下面に複数列に好ましくはマトリクス状に配置していると共に、複数の接触子28を第2の基板22に支持させている。」
【0031】
第1,第2及び第3の基板20,22及び24は、図示の例では、同じ直径寸法を有する円板状の形状を有する。しかし、第1,第2及び第3の基板20,22及び24は、同
じ大きさを有する必要はなく、また平面的に見て、矩形、八角形等の多角形のような他の形状を有していてもよい。
【0032】
図4に示すように、第1の基板20は、光源26に電気的に接続された複数の第1の内部配線30と、接触子28に電気的に接続された複数の第2の内部配線32とを多層に有する配線基板である。」

「【0037】
第2の基板22は、厚さ方向に貫通する複数の第1の貫通穴40と、厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通穴42とを有する。各光源26は第1の貫通穴40に受け入れられており、各接触子28は第2の貫通穴42に配置されている。
【0038】
図示の例では、第2の基板22は、第1の基板20の下面に配置された上板44と、上板44の下面に配置された板状のハウジング46と、ハウジング46に下面に配置された下板48とを備え、また上板44の上面を第1の基板20の下面に当接させた状態に、第1の基板20の下面に取り外し可能に取り付けられている。
【0039】
上板44、ハウジング46及び下板48は、第1及び第2の貫通穴40及び42を共同して形成している。貫通穴40及び42のそれぞれは、上板44、ハウジング46及び下板48を貫通している。各第1の貫通穴40は、矩形又は円形の形状を有する。しかし、各第2の貫通穴42は、円形の形状を有する。
【0040】
図6に示すように、各第2の貫通穴42のうち、上板44及び下板48の穴部分42a及び42cの直径寸法は、ハウジング46の穴部分42bの直径寸法より小さい。
【0041】
第3の基板24は、第3の基板24を厚さ方向に貫通して、第1の基板20の貫通穴40及び42に連通された複数の矩形の開口50を有する遮光板であり、シリコーンゴムのような弾性変形可能の材料で製作されている。
【0042】
第1,第2及び第3の基板20,22及び24は、第1及び第2の貫通穴40及び42が開口50に連通し、かつ第1の基板20が第1の貫通穴40を閉鎖するように、積層されて分離可能に結合されている。
【0043】
各光源26は、図5に示すように、3種類の発光素子52R,52G,52Bをホルダー54に設けられた下方に開放する有底穴56の奥底面に配置し、それら発光素子52R,52G,52Bからの光を収束するレンズ58を有底穴56の開放部に配置している。
【0044】
発光素子52R,52G及び52Bは、それぞれ、赤色、緑色及び青色の光を発生するLEDであり、またそれぞれの発光素子による発光量を前記した電気回路により制御されることにより、適宜な合成色の光を発生する。
【0045】
上記のような各光源26は、図4に示すように、その大部分が第1の貫通穴40内に位置し、かつ発光素子52R,52G,52Bからの光が第1の貫通穴40から開口50に向かうように第1の基板20の下面に支持されている。
【0046】
上記のような複数の光源26は、センサ基板14の受光素子16と同様に、複数列に、好ましくはセンサ基板14の受光素子16の配列と同じ状態に配置されている。
【0047】
図6に示すように、各接触子28は、上部材28aと、下部材28cと、ハウジング46の穴部42bに配置されて、両部材28a,28cをこれらが離間する方向へ付勢する圧縮コイルばね28bを備えたポゴピンとされている。
【0048】
上部材28aは、ハウジング46の穴部42bに位置されたフランジ部と、該フランジ部から上方へ延びて上板44の穴部42aに下方から挿入された端子部を有する。下部材28cは、ハウジング46の穴部42bに位置されたフランジ部と、該フランジ部から下方へ延びて下板48の穴部42cに挿入された針先部を有する。
【0049】
両部材28a及び28cのフランジ部は、ばね28bにより上板44又は下板48に押圧されて、第2の貫通穴42からの脱落を防止されている。上部材28aの端子部は第1の基板20の下面に設けられて内部配線32に電気的に接続された接続ランド(図示せず)に押圧されている。下部材28cの針先部は、第3の基板24の開口50から下方へ突出されており、また試験時に下端をセンサ基板14の上面の電極14a(図6参照)に押圧される。」

「【0054】
次いで、各光源26が前記した電気回路からの点灯指令信号により点灯される。これにより、光源26からの光は、対応する第1の貫通穴40及び開口50かた対応する受光素子16に照射され、各受光素子16は受光量に応じた電気信号を出力する。」(当審注:「開口50かた」とある記載は、「開口50から」の誤記と認める。)

よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる(なお、括弧内の段落番号は、認定の根拠とした記載箇所である。)。
「発光装置10は、光センサ12をセンサ基板14にマトリクス状に配置した基板を被検査体とし、光センサ12の良否を決定する試験装置に用いられ(【0026】)、
各光センサ12は、多数の受光素子16をマトリクス状に配置しており、各受光素子16は、センサ基板14に設けられた複数の電極14aの少なくとも1つに、センサ基板14に設けられた配線14bを介して電気的に接続され(【0027】)、
発光装置10は、それぞれが上面及び下面を有する第1,第2及び第3の基板20,22及び24を、それらの厚さ方向が上下方向となる状態に、上下に重ね合わせており、また複数の光源26を第1の基板20の下面に複数列に好ましくはマトリクス状に配置していると共に、複数の接触子28を第2の基板22に支持させており(【0030】)、
第1の基板20は、光源26に電気的に接続された複数の第1の内部配線30と、接触子28に電気的に接続された複数の第2の内部配線32とを多層に有する配線基板であり(【0032】)、
第2の基板22は、厚さ方向に貫通する複数の第1の貫通穴40と、厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通穴42とを有し、各光源26は第1の貫通穴40に受け入れられており、各接触子28は第2の貫通穴42に配置されており(【0037】)、第2の基板22は、第1の基板20の下面に配置された上板44と、上板44の下面に配置された板状のハウジング46と、ハウジング46に下面に配置された下板48とを備え(【0038】)、
第3の基板24は、第3の基板24を厚さ方向に貫通して、第1の基板20の貫通穴40及び42に連通された複数の矩形の開口50を有する遮光板であり(【0041】)、
第1,第2及び第3の基板20,22及び24は、第1及び第2の貫通穴40及び42が開口50に連通し、かつ第1の基板20が第1の貫通穴40を閉鎖するように、積層されて分離可能に結合されており(【0042】)、
各光源26は、3種類の発光素子52R,52G,52Bをホルダー54に設けられた下方に開放する有底穴56の奥底面に配置し、それら発光素子52R,52G,52Bからの光を収束するレンズ58を有底穴56の開放部に配置しており(【0043】)、
各光源26は、その大部分が第1の貫通穴40内に位置し、かつ発光素子52R,52G,52Bからの光が第1の貫通穴40から開口50に向かうように第1の基板20の下面に支持されており(【0045】)、
複数の光源26は、センサ基板14の受光素子16と同様に、複数列に、好ましくはセンサ基板14の受光素子16の配列と同じ状態に配置されており(【0046】)、
各接触子28は、上部材28aと、下部材28cと、ハウジング46の穴部42bに配置されて、両部材28a,28cをこれらが離間する方向へ付勢する圧縮コイルばね28bを備えたポゴピンとされており(【0047】)、上部材28aの端子部は第1の基板20の下面に設けられて内部配線32に電気的に接続された接続ランドに押圧されており、下部材28cの針先部は、第3の基板24の開口50から下方へ突出されており、また試験時に下端をセンサ基板14の上面の電極14aに押圧され(【0049】)、
各光源26が前記した電気回路からの点灯指令信号により点灯され、これにより、光源26からの光は、対応する第1の貫通穴40及び開口50から対応する受光素子16に照射され、各受光素子16は受光量に応じた電気信号を出力する(【0054】)、
発光装置10。」

(引用例2)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった、国際公開2008/059767号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「[0001] 本発明は、イメージセンサ、固体撮像素子等の光電変換素子いわゆる光デバイス の検査に用いられる光デバイス用検査装置に関する。」

「[0010] このような光デバイスを用いた撮像カメラでは、レンズの絞りに決定される射出瞳が存在し、光学系の中心から周辺に遠ざかるに従って光センサへの入射光が傾くことになるので、この傾きに対応するように中心から周辺に遠ざかるに従って、光センサはマイクロレンズに対して外側にオフセットされている。」

「[0020] 本発明の光デバイス用検査装置は、センサ領域に複数の光センサを有する光デバイスに光源からの光を照射して試験を行う光デバイス用検査装置において、光源と上記センサ領域との間に、光学系の中心から周辺に向かうに従って照射光を傾斜させる瞳レンズを設けたことにより、光デバイスが実際に使用される状態と同じ状態で検査することが可能となる。」

「[0036] 上記レンズユニット6には、瞳レンズ11が用いられている。また、光源としては LED等の、平行光線で、あまり発熱しないものを用いる。そして、上記瞳レンズ 11を用いることにより、従来の光デバイス検査装置で問題となっていた、光センサがマイクロレンズに対してオフセットされた光デバイスのセンサ出力感度を検査する場合に、平行光線を使用して検査することにより、オフセット量が大きいセンサの出力感度が低く現れ、良品であるにもかかわらず、不良品と判断してしまうという問題を解決することが可能となった。

[0037] つまり、光デバイスを用いた撮像カメラの射出瞳に用いられているのと同じ瞳レンズ 1 1を用いることにより、撮像カメラでの光デバイスに対する、光学系の中心から周辺に遠ざかるに従って傾く入射光を再現することができ、光デバイスが実際に使用される状態と同じ状態で検査することが可能となった。これにより、光センサに適切に光を照射することにより、光センサがマイクロレンズに対してオフセットされた光デバイスのセンサ出力感度を検査する場合の問題点が解消され、良品が不良品として判断される ことがなくなり、より正確な検査が可能となった。」

「[0039] 図4に示すように、光源装置14から照射される光は、レンズユニット6の瞳レンズ11を通って拡散されて、被測定物の光デバイスへと照射される。この時、レンズユニット6を通った光は、ガイド板9に設けられた開口を通るが、ガイド板9により光の一部が遮られることにより、光の照射領域は、固体撮像素子1のセンサ領域 2とほぼ同じ範囲となり、隣接する他の固体撮像素子1への影響はほとんどない。

[0040] このように、センサ領域2に光が照射された状態で、プローブ7が電極パッド3へと接触させられることにより、電極パッド3から取出される電気信号を測定し、固体撮像素子1の検査を行う。」

よって、引用例2には、次の技術(以下、「引用例2に記載された技術」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内の段落番号は、認定の根拠とした記載箇所である。)。
「センサ領域に複数の光センサを有する光デバイスに光源からの光を照射して試験を行う光デバイス用検査装置において、光源と上記センサ領域との間に、光学系の中心から周辺に向かうに従って照射光を傾斜させる瞳レンズを設け([0020])、光源装置から照射される光は、レンズユニットの瞳レンズを通って拡散されて、被測定物の光デバイスへと照射され([0039])、撮像カメラでの光デバイスに対する、光学系の中心から周辺に遠ざかるに従って傾く入射光を再現することができ、光デバイスが実際に使用される状態と同じ状態で検査することが可能となる([0037])、光デバイス用検査装置([0020])。」

(引用例3)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2010-271160号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されてといる(下線は、当審で付与した。)。
「【0001】
本発明は、半導体集積回路のような平板状被検査体の電気的試験に用いるプローブカードのような電気的接続装置に関し、特に被検査体とその電気的試験を行うテスターの電気回路との接続に用いられる電気的接続装置に関する。」

「【0027】
図1から図5を参照するに、接続装置10は、前記した複数の接触子20の他に、さらに、平坦な下面を有する補強部材22と、補強部材22の下面に保持された円形平板状の配線基板24と、配線基板24の下面に配置された平板状の電気接続器26と、電気接続器26の下面に配置されたプローブ基板28と、補強部材22及び配線基板24から上方に間隔をおいて配置されたチップ基板30と、チップ基板30の上面に配置された複数の回路チップ32と、チップ基板30の下面に配置された円板状の熱処理部材34と、熱処理部材34の下面に取り付けられた複数の放熱板36とを含む。」

「【0061】 しかし、チップ基板30が補強部材22及び配線基板24から上方に離間されていて、熱処理部材34及び複数の放熱板36と補強部材22及び配線基板24との間に空気の通過を許す空間が存在するから、チップ基板30は、熱処理部材34及び複数の放熱板36による吸熱作用及び放熱作用により、冷却される。」

よって、引用例3には、次の技術(以下、「引用例3に記載された技術」という。)が記載されていると認められる(なお、括弧内の段落番号は、認定の根拠とした記載箇所である。)。
「平板状被検査体の電気的試験に用いるプローブカードのような電気的接続装置であって(【0001】)、接続装置10は、複数の接触子20の他に、さらに、平坦な下面を有する補強部材22と、補強部材22の下面に保持された円形平板状の配線基板24と、配線基板24の下面に配置された平板状の電気接続器26と、電気接続器26の下面に配置されたプローブ基板28と、補強部材22及び配線基板24から上方に間隔をおいて配置されたチップ基板30と、チップ基板30の上面に配置された複数の回路チップ32と、チップ基板30の下面に配置された円板状の熱処理部材34と、熱処理部材34の下面に取り付けられた複数の放熱板36とを含み(【0027】)、チップ基板30が補強部材22及び配線基板24から上方に離間されていて、熱処理部材34及び複数の放熱板36と補強部材22及び配線基板24との間に空気の通過を許す空間が存在するから、チップ基板30は、熱処理部材34及び複数の放熱板36による吸熱作用及び放熱作用により、冷却される(【0061】)、プローブカードのような電気的接続装置(【0001】)。」

(引用例4)
拒絶査定の備考欄において周知技術を示す文献として引用された、特開2009-176724号公報(以下、「引用例4」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【背景技術】
【0002】
液晶テレビ等に組み込まれて用いられる面光源装置(3)としては、図1に示すように、光拡散板(1)と、その背面側に配置された光源(2)とを備えたものが一般に用いられており、光拡散板(1)としては、無色で薄型化の観点から厚みが精々2mmのものが、また光源(2)としては、冷陰極蛍光管が用いられており、最近では、省エネルギーの観点から、光源(2)としてLED(発光ダイオード)を用いたものも提案されている〔非特許文献1〕。
【0003】
光源としてLEDを用いる場合、光の三原色に対応する赤色LED、緑色LEDおよび青色LEDを並べて用いられており、これら各LEDからの光は、光拡散板を透過する間に混色し、白色光となって面光源装置(3)の前面側に出射する。」

(引用例5)
拒絶査定の備考欄において周知技術を示す文献として引用された、特開2011-210515号公報(以下、「引用例5」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。
「【0002】
従来のLED照明器具51は、これを斜視した図8、その縦断面を示す図9のように、反射板53の下方を覆う拡散板54は、LED素子光源52と反射板53を覆ってその内部に埃等の汚染物の進入を防止している。」

ウ 対比
(ア)引用発明1における「被検査体」は、「光センサ12をセンサ基板14にマトリクス状に配置した基板」であって、「各光センサ12は、多数の受光素子16をマトリクス状に配置しており、各受光素子16は、センサ基板14に設けられた複数の電極14aの少なくとも1つに、センサ基板14に設けられた配線14bを介して電気的に接続され」ているから、本願補正発明における「受光部と電極を備える被検査体」に相当する。そして、引用発明1における「受光部と電極を備える被検査体」の「センサ基板14に設けられた複数の電極14a」に、「ポゴピン」の「下部材28cの針先部」の「下端」が「押圧され」ることが、本願補正発明における「受光部と電極を備える被検査体と電気的に接続する」ことに相当する。
(イ)引用発明1における「発光装置10」は、「それぞれが上面及び下面を有する第1,第2及び第3の基板20,22及び24を、それらの厚さ方向が上下方向となる状態に、上下に重ね合わせて」おり「複数の接触子28を第2の基板22に支持させて」いるから、次の相違点は別として、本願補正発明における「プローブカード」に相当する。
(ウ)引用発明1における「各接触子28」は、「上部材28aと、下部材28cと、ハウジング46の穴部42bに配置されて、両部材28a,28cをこれらが離間する方向へ付勢する圧縮コイルばね28bを備えたポゴピンとされており」、「下部材28cの針先部は、第3の基板24の開口50から下方へ突出されており、また試験時に下端をセンサ基板14の上面の電極14aに押圧され」るものである。そして、「圧縮コイルばね」が、「押圧」により縮むことは自明であるから、引用発明1における「各接触子28」が、本願補正発明における「上記被検査体と電気的に接続した際に上記被検査体に押圧され縮む、垂直型の接触子」に相当するといえる。
(エ)引用発明1における「各接触子28」の「上部材28aの端子部は第1の基板20の下面に設けられて内部配線32に電気的に接続された接続ランドに押圧されて」いるから、引用発明1における「第1の基板20」が、本願補正発明における「上記接触子と電気的に接続する基板」に相当する。
(オ)引用発明1における、「第1,第2及び第3の基板20,22及び24」は「積層されて分離可能に結合されて」おり、「第2の基板22は、厚さ方向に貫通する複数の第1の貫通穴40と、厚さ方向に貫通する複数の第2の貫通穴42とを有し、各光源26は第1の貫通穴40に受け入れられており、各接触子28は第2の貫通穴42に配置されて」いる。そして、引用発明1における「各光源26」は、「発光素子52R,52G,52Bからの光が第1の貫通穴40から開口50に向かうように第1の基板20の下面に支持され」、「点灯され」ると、「光源26からの光は、対応する第1の貫通穴40及び開口50から対応する受光素子16に照射され」るから、引用発明1の「各光源26」における「発光素子52R,52G,52B」が、本願補正発明における「上記基板で、上記接触子と同じ板面上に配置された、上記被検査体に向けて光を照射することが可能な光源を備える照明部」に相当するといえる。
(カ)引用発明1の「光源26」における「レンズ58」は、「発光素子52R,52G,52Bからの光を収束」し、「受光素子16に照射」するための光学要素であるから、本願補正発明における「上記接触子が縮む分を考慮して、上記照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に所定の照度で当てるように調整された拡散板」とは、「上記照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に当てるための光学要素」である点で共通する。

すると、本願補正発明と引用発明1との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
受光部と電極を備える被検査体と電気的に接続するプローブカードにおいて、
上記被検査体と電気的に接続した際に上記被検査体に押圧され縮む、垂直型の接触子と、
上記接触子と電気的に接続する基板と、
上記基板で、上記接触子と同じ板面上に配置された、上記被検査体に向けて光を照射することが可能な光源を備える照明部と、
上記照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に当てるための光学要素と
を有することを特徴とするプローブカード。」

(相違点)
本願補正発明では、「上記接触子が縮む分を考慮して、上記照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に所定の照度で当てるように調整された拡散板」を有しているに対し、引用発明1では、光源26における発光素子52R,52G,52B(本願補正発明における「光源」に相当する。)からの「光を収束」し、受光素子16に照射するための「レンズ58」を有している点。

エ 判断
そこで、相違点について検討する。
(ア)引用例2に記載された技術を再掲すれば、次のとおりである。
「センサ領域に複数の光センサを有する光デバイスに光源からの光を照射して試験を行う光デバイス用検査装置において、光源と上記センサ領域との間に、光学系の中心から周辺に向かうに従って照射光を傾斜させる瞳レンズを設け、光源装置から照射される光は、レンズユニットの瞳レンズを通って拡散されて、被測定物の光デバイスへと照射される、撮像カメラでの光デバイスに対する、光学系の中心から周辺に遠ざかるに従って傾く入射光を再現することができ、光デバイスが実際に使用される状態と同じ状態で検査することが可能となる、光デバイス用検査装置。」
引用例2に記載された技術では「光源装置から照射される光は、レンズユニットの瞳レンズを通って拡散されて」いるが、ここでいう「拡散」とは、「光学系の中心から周辺に遠ざかるに従って傾く入射光を再現する」ことを意味しているのであるから、本願補正発明における「拡散板」が行う、「照明部から発光された光を上記被検査体の受光面の所定の領域に所定の照度で当てる」ための光の「拡散」とは、技術的意味が異なるものである。

(イ)また、引用例3に記載された技術からは、プローブカードにおいて、チップ基板30が補強部材22及び配線基板24から上方に離間され、空気の通過を許す空間が存在することで、チップ基板30が冷却されることが読み取れるものの、上記相違点に係る本願補正発明の構成は、記載も示唆もされていない。

(ウ)次に、拒絶査定の備考欄において周知技術を示す文献として引用された引用例4、引用例5には、LED光源と拡散板を用いた面光源が記載されている。
しかし、本願補正発明は、プローブカード及び検査装置において、「照明装置から発光した光を集光させる機構(レンズ等)が必要となり、構成が複雑となっていた。」(本願明細書段落【0006】参照。)ことを従来技術における問題点として認識し、さらに「照明距離が短い場合、照射距離だけで、所定の領域で均一の強度の光が半導体装置W1に当たるように調整することが難しい」(本願明細書段落【0059】参照。)との課題を解決するために、照明部に拡散板を設ける構成を採用したのであるから、周知技術(引用例4、引用例5)にこれらの動機付けが示されていない以上、LED光源と拡散板を用いた面光源が周知技術(引用例4、引用例5)であったとしても、引用発明1において、光源26における発光素子52R,52G,52Bからの「光を収束」し、受光素子16に照射するための「レンズ58」に代え、周知技術(引用例4、引用例5)に係る拡散板を用いる構成とすることは、当業者といえども動機付けられないことである。

(エ)よって、本願補正発明は、引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、周知技術(引用例4、引用例5)から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

オ 本願補正発明についてのまとめ
本願補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

カ 本件補正後の請求項2ないし6に係る発明について
本件補正後の請求項2ないし6に係る発明は、本願補正発明をさらに限定した発明であるから、引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術、周知技術(引用例4、引用例5)から、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
よって、本件補正後の請求項2ないし6に係る発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3 むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合する。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項に適合する。

第3 本願発明
上記のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第3項ないし第6項の規定に適合するから、本願の請求項1ないし6に係る発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1ないし6に記載された事項により特定されるとおりのものである。
そして、本願補正発明は、上記第2の「2」のとおり、当業者が、引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知技術(引用例4、引用例5)に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
また、本願補正発明を直接または間接的に引用する請求項2ないし6に係る発明は、本願補正発明をさらに限定した発明であるから、当業者が、引用発明1、引用例2に記載された技術、引用例3に記載された技術及び周知技術(引用例4、引用例5)に基づいて容易に発明をすることができたものではない。

したがって、本願については、原査定の理由を検討しても、その理由によって拒絶すべきものとすることはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-07 
出願番号 特願2011-241484(P2011-241484)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G01R)
最終処分 成立  
前審関与審査官 柳 重幸永井 皓喜菅藤 政明  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 清水 稔
大和田 有軌
発明の名称 プローブカード及び検査装置  
代理人 若林 裕介  
代理人 吉田 倫太郎  

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