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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01L
管理番号 1325599
審判番号 不服2016-9221  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-22 
確定日 2017-03-27 
事件の表示 特願2014-231413「半導体装置の製造方法、及び、半導体装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 4月 9日出願公開、特開2015- 65456、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2013年(平成25年)6月10日を国際出願日とする出願である特願2014-521767号(以下、「原出願」という。)の一部を、平成26年11月14日に新たな出願としたものであって、同年11月17日付で審査請求がなされ、平成27年10月29日付で拒絶理由が通知され、平成28年1月8日付で意見書が提出されるとともに、同日付で手続補正がなされ、同年4月28日付で拒絶査定がなされたものである。
これに対して、平成28年6月22日付で拒絶査定不服審判が請求されたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成28年1月8日付の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである(以下「本願発明」という。)。
「半導体基板上に形成されたフィン状半導体層と、
前記フィン状半導体層の周囲に形成された第1の絶縁膜と、
前記フィン状半導体層上に形成された柱状半導体層と、ここで、前記柱状半導体層のフィン状半導体層に直交する方向の幅は前記フィン状半導体層の自身に直交する方向の幅と同じであり、
前記柱状半導体層の周囲に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の周囲に形成された金属からなるゲート電極と、
前記ゲート電極に接続された前記フィン状半導体層に直交する方向に延在する金属からなるゲート配線と、
前記ゲート電極と前記ゲート配線の周囲と底部に形成された前記ゲート絶縁膜と、ここで、前記ゲート電極の外側の幅と前記ゲート配線の幅は同じであり、
前記柱状半導体層の上部に形成された第1の拡散層と、
前記フィン状半導体層の上部と前記柱状半導体層の下部に形成された第2の拡散層と、
を有し、
前記柱状半導体層の中心は、前記ゲート配線に沿って延びる中心線上に位置することを特徴とし、
前記ゲート配線上にコンタクトを有し、
前記ゲート電極のゲート配線が延在する方向に対して垂直な方向の厚さより、前記コンタクトが接続された前記ゲート配線の前記柱状半導体層に対して反対側の前記ゲート電極の端における前記ゲート電極の前記ゲート配線が延在する方向に対して水平な方向の厚さは厚いことを特徴とする半導体装置。」

第3 査定の理由について
1 原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりである。
「この出願については、平成27年10月29日付け拒絶理由通知書に記載した理由1によって、拒絶をすべきものです。
なお、意見書及び手続補正書の内容を検討しましたが、拒絶理由を覆すに足りる根拠が見いだせません。

備考

●理由1(特許法第29条第2項)について

・請求項 1
・引用文献等 1-3
引用文献1において、ゲート電極及びゲート配線は「レジスト116」によって、その位置(水平方向の厚さ)が決定されるため、ゲート電極及びゲート配線の厚さは、レジストの設計をかえることで、当業者が適宜変更できることに過ぎない。
ここで、引用文献3(図1)は、「柱状半導体層105b」からみると、「前記ゲート電極のゲート配線が延在する方向に対して垂直な方向の厚さより、前記コンタクトが接続された前記ゲート配線の前記柱状半導体層に対して反対側の前記ゲート電極の端における前記ゲート電極の前記ゲート配線が延在する方向に対して水平な方向の厚さは厚い」構造となっており、引用文献1においてこのような厚みとするようにレジストの設計をかえることは、当業者であれば当然行えることである。
その余の点は、前記拒絶理由通知書に記載のとおりである。
また、出願人は、平成28年1月8日付けの意見書において、

「通常、露光装置は合わせずれがあることから、引用文献1において、柱状シリコン層106とゲート電極120aとゲート配線120bは合わせずれが生じます。従って、引用文献1において、柱状シリコン層106の中心は、ゲート配線120bに沿って延びる中心線上からずれた位置に存在することになります。」
と、主張している。
出願人の主張について検討する。
半導体装置の製造において、合わせずれは必ず起こるものではなく、また、合わせずれを極力少なくすることは当業者が当然目指すことであるため、引用文献1において、柱状半導体層の中心とゲート配線の中心線を合わせることは、当業者が当然目標とすることであり、合わせずれが起きずに、結果として中心線に合う構造とすることも当然起こることである。
よって、出願人の主張は採用できない。
さらには、出願人は、同意見書において、

「「2個のマスクで、フィン状半導体層、柱状半導体層、後にゲート電極とゲート配線となる第1のダミーゲート及び第2のダミーゲートを形成することができる。」という効果をそうするものです。」

とも、主張している。
出願人の主張について検討する。
出願人の主張する効果は、製造方法上の効果であるが、本願の請求項1に係る発明は、「半導体装置」であるため物の発明である。
そして、請求項1の「半導体装置」の構造自体は、上述の記載及び前記拒絶理由通知書の記載のように、当業者であれば容易に相当できるものであり、出願人の主張する効果による製造方法を経なくても、製造できるものである。
よって、本願の請求項1に係る発明に、進歩性が肯定できる程の格段の効果が存在しているとは認められない。
よって、出願人の主張は採用できない。

よって、請求項1に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、3に記載された技術に基づいて、当業者であれば容易になし得たものであるから、依然として、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

<引用文献等一覧>
1.国際公開第2013/069102号
2.国際公開第2009/110050号
3.特開2010-251586号公報」

2 拒絶理由通知の概要
平成27年10月29日付拒絶理由通知の概要は、次のとおりである。
「1.(進歩性)この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

記 (引用文献等については引用文献等一覧参照)

●理由1(進歩性)について

・請求項 1
・引用文献等 1-3
・備考
引用文献1(段落[0018]-段落[0062]、図1-図42)には、「フィン状シリコン層103」(フィン状半導体層に相当)、「柱状シリコン層106」(柱状半導体層に相当)、「ゲート絶縁膜113」(ゲート絶縁膜に相当)、「金属ゲート電極120a」(ゲート電極に相当)、「金属ゲート配線120b」(ゲート配線に相当)を有するSGTが記載されている。
引用文献1は、「金属ゲート電極120a」と「金属ゲート配線120b」との幅が異なるが、SGTにおいてゲート電極とゲート配線の幅を等しくすることは引用文献2(段落[0086]、図34、図35)、引用文献3(段落[0043]-段落[0045]、図1)に記載されているように周知技術であるため、引用文献1に当該周知技術を適用することは当業者が容易になし得たものである。
また、引用文献1はゲートラストプロセスにより形成されるものであるが、「ゲート絶縁膜113」はダミーゲート形成前に形成されるため、ゲート電極及びゲート配線の周囲に形成されていない点で本願の請求項1に係る発明と相違する。
ここで、引用文献2(段落[0086]、図34、図35)には、ゲートラストプロセスによりSGTを形成する際に、ダミーゲートを除去してからゲート絶縁膜を形成することで、ゲート電極及びゲート配線の周囲にもゲート絶縁膜を有する構成とする技術が開示されており、引用文献1に当該技術を用いることは、当業者が容易になし得たことである。


<引用文献等一覧>
1.国際公開第2013/069102号
2.国際公開第2009/110050号(周知技術を示す文献)
3.特開2010-251586号公報(周知技術を示す文献)」

第4 原査定の理由についての当審の判断
1 引用文献
(1)引用例1について
ア 引用例1の記載
原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2013/069102号(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。(なお、下線は、当審において付与した。以下、同じ。)

(ア)「[0017][図1](a)は本発明に係る半導体装置の平面図である。(b)は(a)のX-X’線での断面図である。(c)は(a)のY-Y’線での断面図である。
・・・ 後 略 ・・・」
(イ)「[0056]図38に示すように、金属を堆積し、コンタクト143、127、128を形成する。以上によりコンタクトを形成するための製造方法が示された。柱状シリコン層106上部の拡散層110にシリサイドを形成しないため、コンタクト127と柱状シリコン層106上部の拡散層110とが直接接続されることとなる。」
(ウ)「[0061]上記製造方法の結果を図1に示す。
基板101上に形成されたフィン状シリコン層103と、
フィン状シリコン層103の周囲に形成された第1の絶縁膜104と、
フィン状シリコン層103上に形成された柱状シリコン層106と、
柱状シリコン層106の直径はフィン状シリコン層103の幅と同じであって、
フィン状シリコン層103の上部と柱状シリコン層106の下部に形成された拡散層112と、
柱状シリコン層106の上部に形成された拡散層110と、
フィン状シリコン層103の上部の拡散層112の上部に形成されたシリサイド118と、
柱状シリコン層106の周囲に形成されたゲート絶縁膜113と、
ゲート絶縁膜の周囲に形成された金属ゲート電極120aと、
金属ゲート電極120aに接続されたフィン状シリコン層103に直交する方向に延在する金属ゲート配線120bと、
拡散層110上に形成されたコンタクト127とを有し、
拡散層110とコンタクト127とは直接接続する構造となる。
[0062]以上から、ゲート配線と基板間の寄生容量を低減し、ゲートラストプロセスであるSGTの製造方法とその結果であるSGTの構造が提供されうる。」
(エ)図1


イ 引用例1発明について
上記ア(エ)から、引用例1に記載された発明は、金属ゲート電極120aの外側の幅と金属ゲート配線120bの幅は異なっており、また、柱状シリコン層106の中心は、金属ゲート配線120bに沿って延びる中心線上に位置しており、さらに、金属ゲート電極120aの金属ゲート配線120bが延在する方向に対して垂直な方向の厚さと、コンタクト128が接続された金属ゲート配線120bの柱状シリコン層106に対して反対側の金属ゲート電極120aの端における金属ゲート電極120aの金属ゲート配線120bが延在する方向に対して水平な方向の厚さは略等しいことがわかる。
してみると、上記アの記載から、引用例1には、実質的に次の発明(以下、「引用例1発明」という。)が記載されているものと認められる。
「基板101上に形成されたフィン状シリコン層103と、
フィン状シリコン層103の周囲に形成された第1の絶縁膜104と、
フィン状シリコン層103上に形成された柱状シリコン層106と、
柱状シリコン層106の直径はフィン状シリコン層103の幅と同じであって、
フィン状シリコン層103の上部と柱状シリコン層106の下部に形成された拡散層112と、
柱状シリコン層106の上部に形成された拡散層110と、
フィン状シリコン層103の上部の拡散層112の上部に形成されたシリサイド118と、
柱状シリコン層106の周囲に形成されたゲート絶縁膜113と、
ゲート絶縁膜の周囲に形成された金属ゲート電極120aと、
金属ゲート電極120aに接続されたフィン状シリコン層103に直交する方向に延在する金属ゲート配線120bと、
拡散層110上に形成されたコンタクト127と、
金属ゲート配線120b上に形成されたコンタクト128とを有し、
拡散層110とコンタクト127とは直接接続する構造となり、
柱状シリコン層106の中心は、金属ゲート配線120bに沿って延びる中心線上に位置しており、
金属ゲート電極120aの外側の幅と金属ゲート配線120bの幅は異なっており、
金属ゲート電極120aの金属ゲート配線120bが延在する方向に対して垂直な方向の厚さと、コンタクト128が接続された金属ゲート配線120bの柱状シリコン層106に対して反対側の金属ゲート電極120aの端における金属ゲート電極120aの金属ゲート配線120bが延在する方向に対して水平な方向の厚さは略等しいことを特徴とする半導体装置。」

(2)引用例2について
原査定の拒絶の理由に引用された、国際公開第2009/110050号(以下、「引用例2」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
ア 引用例2の記載について
(ア)「[0052]図41(a)は本発明を用いて形成されたNMOS SGTの平面図であり、図37(b)は、図37(a)のカットラインA-A'に沿った断面図である。以下に図41を参照して、本発明を用いて形成されたNMOS SGTについて説明する。
Si基板111上に形成されたBOX層120上に、平面状シリコン層112が形成され、平面状シリコン層112上に柱状シリコン層113が形成され、柱状シリコン層113の周囲にゲート絶縁膜145およびゲート電極147が形成されている。柱状シリコン層の下部の平面状シリコン層112には、N+ドレイン拡散層200が形成され、柱状シリコン層の上部にはN+ソース拡散層201が形成されている。N+ドレイン拡散層200上にはコンタクト179が形成され、N+ソース拡散層201上にはコンタクト178が形成され、ゲート電極147aより延在するゲート配線147b上にはコンタクト177が形成されている。 図42は図41(b)のカットラインB-B'に沿った断面図である。ソース領域を低抵抗化するためにはソース領域にシリサイドを形成することが必要である。そのため、平面シリコン層112にシリサイドを形成するためには以下の条件が必要である。
Wa>Wp+Wox+Wg+Ws 式(1)
ここでWaはシリコン柱113の中心から平面シリコン層112の端までの長さ、Wpはシリコン柱113の中心から側壁までの長さ、Woxはゲート酸化膜145の厚さ、Wgはゲート電極147の幅、Wsは窒化膜サイドウォール133の幅である。
N+ソース拡散層をGND電位に接続し、N+ドレイン拡散層をVcc電位に接続し、ゲート電極に0?Vccの電位を与えることにより上記SGTはトランジスタ動作を行う。また、柱状シリコン層の上部に形成されるN+拡散層がN+ソース拡散層であり、柱状シリコン層下部の平面状シリコン層に形成されるN+拡散層がN+ドレイン拡散層でもよい。
[0053]以下に本発明のSGTを形成するための製造方法の一例を図1-図35を参照して説明する。なお、これらの図面では、同一の構成要素に対しては同一の符号が付されている。図1は、本発明のSGTを形成するための製造工程であり、図2#図35は、この発明に係るSGTの製造例を示している。(a)は平面図、(b)はA-A’の断面図を示している。
・・・ 中 略 ・・・
[0085]図33を参照して、ダミーゲート電極141とポリシリコン層142をドライエッチングする。さらに、シリコン酸化膜124をウェットエッチングにより除去する。(図1ステップ90、91)
[0086]図34を参照して、high-kゲート酸化膜145を成膜する。さらに、メタルゲート層147を成膜し、CMPで平坦化する。絶縁膜形成前に、洗浄を行ってもよい。また、形成後に、熱処理を行ってもよい。また、CMPの平坦化は、シリコン窒化膜135をCMPのストッパーとして使用することにより、再現性よくCMP研磨量を制御することができる。(図1ステップ92、93、94、95、96、97)」
(イ)図41


イ 引用例2記載事項について
上記ア(イ)から、引用例2に記載された発明のゲート酸化膜145は、ゲート電極147aとゲート配線147bの周囲と底部に形成されていることがわかるとともに、ゲート電極147aの幅と、ゲート配線147bの幅は同じであることがわかる。
してみると、上記アの記載から、引用例2には、実質的に次の事項(以下、「引用例2記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「NMOS SGTにおいて、
Si基板111上に形成されたBOX層120上に、平面状シリコン層112が形成され、
平面状シリコン層112上に柱状シリコン層113が形成され、
柱状シリコン層113の周囲にゲート絶縁膜145およびゲート電極147が形成され、
柱状シリコン層の下部の平面状シリコン層112には、N+ドレイン拡散層200が形成され、
柱状シリコン層113の上部にはN+ソース拡散層201が形成され、
N+ドレイン拡散層200上にはコンタクト179が形成され、
N+ソース拡散層201上にはコンタクト178が形成され、
ゲート電極147aより延在するゲート配線147b上にはコンタクト177が形成されており、
ゲート酸化膜145は、ゲート電極147aとゲート配線147bの周囲と底部に形成されており、
ゲート電極147aの幅と、ゲート配線147bの幅は同じであること。」

(3)引用例3について
原査定の拒絶の理由に引用された、特開2010-251586号公報(以下、「引用例3」という。)には、図面とともに、以下のことが記載されている。
ア 引用例3の記載について
(ア)「【0043】
〔実施の形態1〕
単体SGTのゲート長Lsの2倍のゲート長(2Ls)を持つトランジスタの構造を以下に示す。
図1(a)は2Lsのゲート長を持つNMOSSGTの平面図、同図(b)は、(a)のカットラインA-A’に沿って切った断面図である。以下に図1を参照して、2Lsのゲート長を持つNMOSSGTについて説明する。
【0044】
埋め込み酸化膜層101上に平面状シリコン層102が形成され、平面状シリコン層102上には柱状シリコン層(105a、105b)が形成され、柱状シリコン層(105a、105b)の下部の平面状シリコン層102にはN+下部拡散層103が形成され、柱状シリコン層(105a、105b)の周囲にゲート絶縁膜107およびゲート電極108が形成されている。ゲート電極はコンタクト117によって配線層122に接続される。柱状シリコン層105aの上部にはN+ソース拡散層109aが形成され、コンタクト115によってソース電極である配線層120に接続され、柱状シリコン層105bの上部にはN+ソース拡散層109bが形成され、コンタクト116によってドレイン電極である配線層121に接続される。
【0045】
図1のSGTにおいては、柱状シリコン層105aにより形成される第1のSGTと柱状シリコン層105bにより形成される第2のSGTが直列に接続されているため、実質的にゲート長が2LsであるSGTとして動作する。」
(イ)図1


イ 引用例3記載事項について
上記ア(イ)から、引用例3に記載された発明は、コンタクト117ないし柱状シリコン層(105a、105b)の並んだ方向に対して垂直な方向で、ゲート電極の幅は同じであることがわかる。
してみると、上記アの記載から、引用例3には、実質的に次の事項(以下、「引用例3記載事項」という。)が記載されているものと認められる。
「NMOSSGTにおいて、
埋め込み酸化膜層101上に平面状シリコン層102が形成され、
平面状シリコン層102上には柱状シリコン層(105a、105b)が形成され、
柱状シリコン層(105a、105b)の下部の平面状シリコン層102にはN+下部拡散層103が形成され、
柱状シリコン層(105a、105b)の周囲にゲート絶縁膜107およびゲート電極108が形成され、
ゲート電極はコンタクト117によって配線層122に接続され、
柱状シリコン層105aの上部にはN+ソース拡散層109aが形成され、
コンタクト115によってソース電極である配線層120に接続され、
柱状シリコン層105bの上部にはN+ソース拡散層109bが形成され、
コンタクト116によってドレイン電極である配線層121に接続されており、
コンタクト117ないし柱状シリコン層(105a、105b)の並んだ方向に対して垂直な方向で、ゲート電極の幅は同じであること。」

2 対比・判断
(1)本願発明と引用例1発明とを対比する。
ア 引用例1発明の「基板101」、「フィン状シリコン層103」、「第1の絶縁膜104」、「柱状シリコン層106」、「ゲート絶縁膜113」、「金属ゲート電極120a」、「金属ゲート配線120b」、「拡散層110」、「拡散層112」、および、「コンタクト128」は、それぞれ本願発明の「半導体基板」、「フィン状半導体層」、「第1の絶縁膜」、「柱状半導体層」、「ゲート絶縁膜」、「ゲート電極」、「ゲート配線」、「第1の拡散層」、「第2の拡散層」、および、「コンタクト」に相当する。
イ 引用例1発明の「柱状シリコン層106の直径はフィン状シリコン層103の幅と同じであ」ることの「柱状シリコン層106の直径」および「フィン状シリコン層103の幅」は、本願発明の「前記柱状半導体層のフィン状半導体層に直交する方向の幅」および「前記フィン状半導体層の自身に直交する方向の幅」に相当するから、引用例1発明も、本願発明の「前記柱状半導体層のフィン状半導体層に直交する方向の幅は前記フィン状半導体層の自身に直交する方向の幅と同じであ」ることと同様の構成を有していると認められる。

そうすると、本願発明1と引用例1発明とは、以下の点で一致し、また、相違する。

[一致点]
「半導体基板上に形成されたフィン状半導体層と、
前記フィン状半導体層の周囲に形成された第1の絶縁膜と、
前記フィン状半導体層上に形成された柱状半導体層と、ここで、前記柱状半導体層のフィン状半導体層に直交する方向の幅は前記フィン状半導体層の自身に直交する方向の幅と同じであり、
前記柱状半導体層の周囲に形成されたゲート絶縁膜と、
前記ゲート絶縁膜の周囲に形成された金属からなるゲート電極と、
前記ゲート電極に接続された前記フィン状半導体層に直交する方向に延在する金属からなるゲート配線と、
前記柱状半導体層の上部に形成された第1の拡散層と、
前記フィン状半導体層の上部と前記柱状半導体層の下部に形成された第2の拡散層と、
を有し、
前記柱状半導体層の中心は、前記ゲート配線に沿って延びる中心線上に位置することを特徴とし、
前記ゲート配線上にコンタクトを有する半導体装置。」

[相違点1]
本願発明の「ゲート絶縁膜」は、「前記ゲート電極と前記ゲート配線の周囲と底部に形成され」ているのに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。
[相違点2]
本願発明は「前記ゲート電極の外側の幅と前記ゲート配線の幅は同じであ」るのに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。
[相違点3]
本願発明は「前記ゲート電極のゲート配線が延在する方向に対して垂直な方向の厚さより、前記コンタクトが接続された前記ゲート配線の前記柱状半導体層に対して反対側の前記ゲート電極の端における前記ゲート電極の前記ゲート配線が延在する方向に対して水平な方向の厚さは厚」くなっているのに対して、引用例1発明はそのようになっていない点。

(2)当審の判断
[相違点3]について検討する。
引用例1は、「金属ゲート電極120aの金属ゲート配線120bが延在する方向に対して垂直な方向の厚さと、コンタクト128が接続された金属ゲート配線120bの柱状シリコン層106に対して反対側の金属ゲート電極120aの端における金属ゲート電極120aの金属ゲート配線120bが延在する方向に対して水平な方向の厚さは略等しい」から、引用例1の記載から、本願発明の「前記ゲート電極のゲート配線が延在する方向に対して垂直な方向の厚さより、前記コンタクトが接続された前記ゲート配線の前記柱状半導体層に対して反対側の前記ゲート電極の端における前記ゲート電極の前記ゲート配線が延在する方向に対して水平な方向の厚さは厚」くする構成を、当業者が容易に想起することができたとは認められない。
また、引用例2および3には、「前記ゲート電極のゲート配線が延在する方向に対して垂直な方向の厚さより、前記コンタクトが接続された前記ゲート配線の前記柱状半導体層に対して反対側の前記ゲート電極の端における前記ゲート電極の前記ゲート配線が延在する方向に対して水平な方向の厚さは厚」くすることについて記載されていない。
そうすると、引用例2および3の記載から、引用例1発明において、上記[相違点3]について、本願発明の構成を採用することが容易であるとも言えない。
そして、本願発明は、特に[相違点3]を有することによって、ゲート配線が延在する方向に対して垂直な方向のゲート電極の厚さをレジストの合わせずれ以下とすることができるという格別の効果を有するものであるから、[相違点3]に係る構成は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に想到したものであるとは言えない。
したがって、本願発明は、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
そうすると、本願発明は、他の相違点については検討するまでもなく、引用例1ないし3に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

3 原査定の理由についての当審の判断についてのまとめ
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第5 結語
以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-10 
出願番号 特願2014-231413(P2014-231413)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01L)
最終処分 成立  
前審関与審査官 市川 武宜小堺 行彦  
特許庁審判長 飯田 清司
特許庁審判官 小田 浩
深沢 正志
発明の名称 半導体装置の製造方法、及び、半導体装置  
代理人 西島 孝喜  
代理人 上杉 浩  
代理人 大塚 文昭  
代理人 須田 洋之  
代理人 田中 伸一郎  

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