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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G |
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管理番号 | 1325646 |
審判番号 | 不服2015-14942 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2015-08-07 |
確定日 | 2017-03-01 |
事件の表示 | 特願2011- 9877「有機電界発光表示装置及び有機電界発光表示装置の駆動方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 5月17日出願公開、特開2012- 93693〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成23年1月20日(パリ条約による優先権主張 2010年10月28日 韓国)に出願したものであって、平成26年11月14日付けの拒絶理由通知に対して平成27年2月18日付けで手続補正がなされたが、平成27年 3月31日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成27年8月7日付けで拒絶査定不服審判が請求され、その後、平成28年3月31日付けの審尋に対し、平成28年7月5日付けで回答書が提出されたものである。 第2 本願発明 1 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「走査線、発光制御線及びデータ線の交差部に位置する画素と、 前記画素を水平ライン単位で選択するために第1駆動周波数で前記走査線に走査信号を順次供給する走査駆動部と、 前記画素の発光を制御するために前記第1駆動周波数と異なる第2駆動周波数で前記発光制御線に発光制御信号を順次供給するエミッション駆動部と、 を備え、 前記走査駆動部は、前記走査線のそれぞれに1水平期間に前記走査信号を供給し、 前記エミッション駆動部は、j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号と重なるようにj番目の発光制御線に発光制御信号を供給するとともに、前記j番目の発光制御線に発光制御信号が供給された後、前記1水平期間よりも短い第1期間の後にj+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給することを特徴とする有機電界発光表示装置。」 2 引用例及びその記載事項 (1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2010-39398号公報(平成22年2月18日公開、以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。 a「【0001】 この明細書で説明する発明は、電流駆動型の自発光素子を駆動する画素回路の駆動技術に関する。なお、この明細書で提案する発明は、表示パネルモジュール、半導体集積回路、画素アレイ部の駆動方法及び表示パネルモジュールを搭載する電子機器としての側面を有する。」 b「【課題を解決するための手段】 【0018】 そこで、発明者らは、 (a)電流駆動型の自発光素子と、当該自発光素子を駆動制御する画素回路とで構成されるサブ画素をマトリクス状に配置した画素アレイ部と、 (b)信号線を駆動する信号線駆動部と、 (c)信号線に出現する電位のサブ画素への書き込みを、第1のスキャンクロックに基づいて制御する書込制御線駆動部と、 (d)サブ画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源供給制御部であって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のスキャンクロックよりも高速の第2のスキャンクロックに基づいて制御する電源供給制御部と (e)を有する表示パネルモジュールであって、以下の条件を満たすものを提案する。 【0019】 すなわち、各水平ラインにおける信号電位の書き込み完了から点灯開始までの待ち時間は、 (f)信号電位の書き込みが最初に完了する第1の水平ラインが最長になるように設定され、 (g)信号電位の書き込みが最後に完了する第2の水平ラインが最短になるように設定され、 (h)第1及び第2の水平ラインの中間に位置する各水平ラインについては、第1及び第2の水平ラインとの位置関係に応じ、待ち時間の長さが線形に変化するように設定され、(i)第1の水平ラインの点灯開始から第2の水平ラインの点灯終了までの期間で与えられる各フレームの表示期間が、隣接するフレームの間で重複しないように設定されているものを提案する。 【0020】 また、前述した表示パネルモジュールにおける信号線駆動部、書込制御線駆動部及び電源供給制御部は、2次元画像と3次元画像のいずれが画面上に表示される場合にも、共通の駆動タイミングで動作することが望ましい。 また、第1のスキャンクロックの周期は、水平走査周期と一致するように設定されることが望ましい。」 c「【0023】 このことは、各水平ラインの点灯時間が従来技術と同じであれば、先頭行の点灯開始から最終行の点灯終了までの表示期間長を従来技術に比して短縮できることを意味する。従って、フレーム画像の表示期間の配置の自由度が高くなり、従来技術のように黒画面を挿入しなくても、前後のフレームの表示期間を互いに分離できる。」 d「【0026】 以下、発明を、アクティブマトリクス駆動型の有機ELパネルモジュールに適用する場合について説明する。 なお、本明細書で特に図示又は記載されない部分には、当該技術分野の周知又は公知技術を適用する。また以下に説明する形態例は、発明の一つの形態例であって、これらに限定されるものではない。」 e「【0030】 (B)形態例1 (B-1)システム構成 図7に、この形態例に係る有機ELパネルモジュール31のシステム構成例を示す。 図7に示す有機ELパネルモジュール31は、画素アレイ部33と、その駆動回路である信号線駆動部35、書込制御線駆動部37、電源制御線駆動部39及びタイミングジェネレータ41で構成される。このうち、電源制御線駆動部39は、特許請求の範囲における「電源供給制御部」に対応する。 【0031】 (a)画素アレイ部 この形態例の場合、画素アレイ部33には、ホワイトユニットを構成する1画素が、画面内の垂直方向と水平方向についてそれぞれ規定の解像度で配置される。図8に、ホワイトユニットを構成するサブ画素51の配列構造を示す。図8に示すように、ホワイトユニットは、R(赤)画素51、G(緑)画素51、B(青)画素51の集合体として構成される。」 f「【0035】 (b)信号線駆動部の構成 信号線駆動部35は、信号線DTLを駆動する回路デバイスである。個々の信号線DTLは、画面の垂直方向(Y方向)に延びるように配線され、画面の水平方向(X方向)に3×N本配置される。この形態例の場合、信号線駆動部35は、信号線DTLを特性補正電位Vofs_L 、初期化電位Vofs_H 、信号電位Vsig の3値で駆動する。」 g「【0041】 (c)書込制御線駆動部の構成 書込制御線駆動部37は、書込制御線WSLを通じて、信号線電位のサブ画素51への書き込みを線順次に制御する駆動デバイスである。なお、書込制御線WSLは、画面の水平方向(X方向)に延びるように配線され、画面の垂直方向(Y方向)にM本配置される。」 h「【0044】 セット用シフトレジスタ71は、垂直解像度に対応するM個の遅延段で構成される。セット用シフトレジスタ71は、水平走査クロックに同期した第1のシフトクロックCK1に基づいて動作し、第1のシフトクロックCK1が入力される度、次段の遅延段にセットパルスを転送する。ここでの第1のシフトクロックCK1は、特許請求の範囲における「第1のスキャンクロック」に対応する。なお、転送開始タイミングは、スタートパルスst1により与えられる。 i「【0048】 (d)電源制御線駆動部の構成 電源制御線駆動部39は、電源制御線DSLを通じて、サブ画素51に対する駆動電源VDDの供給と供給停止を制御する駆動デバイスである。なお、電源制御線DSLは画面の水平方向(X方向)に延びるように配線され、画面の垂直方向(Y方向)にM本配置される。」 j「【0050】 また、電源制御線駆動部39は、発光期間のうち有機EL素子OLEDを点灯制御する期間についてのみ駆動電源VDDを供給するように動作する。この形態例の場合、電源制御線駆動部39による発光期間中の制御動作は、非発光期間時のスキャン速度よりも高速のスキャン速度で実行される。すなわち、第1のシフトクロックCKよりも高速の第2のシフトクロックCK2を用いて実行される。ここでの第2のシフトクロックCK2は、特許請求の範囲における「第2のスキャンクロック」に対応する。 k「【0077】 図18(B)は、画像ストリームを表す図である。図では、第1フレームを構成する左眼用画像L1と右眼用画像R1と、第2フレームを構成する左眼用画像L2の一部が表されている。図に示すように、各フレーム画像は、垂直同期パルスと垂直同期パルスの間に入力される。 【0078】 図18(C)は、書込制御線WSLを駆動する制御パルスのスキャン動作を示す図である。図に示すように、制御パルスは、第1のシフトクロックCK1に基づいて線順次にシフト駆動される。この形態例に場合、第1のシフトクロックCK1は、水平走査クロックが用いられる。 【0079】 図18(D)は、各水平ラインの非発光期間と、発光期間中の点灯期間と消灯期間の配置関係を説明する図である。図中、白抜きで示す区間が非発光期間である。また、図中、塗り潰し区間が消灯期間である。一方、斜線網掛け期間が点灯期間である。図に示すように消灯期間は、点灯期間の前後に配置される。このうち、点灯期間の前方に設けられる消灯期間の長さが前述した待ち時間Tである。 図18に示すように、各水平ラインの待ち時間Tは、先頭行である水平ライン1の待ち時間T1が最長になり、最終行である水平ラインMの待ち時間TMが最短になる。なお、点灯期間の後方に設けられる消灯期間は、この反対に、先頭行である水平ライン1の消灯期間が最短になり、最終行である水平ラインMの消灯期間が最長になる。このように、点灯期間の前後に消灯期間を配置するのは、各水平ラインの点灯期間長を同じ長さにするためである。すなわち、水平ライン間で輝度差が生じないようにするためである。」 l 図7から、画素アレイ部33において、「サブ画素51」が、書込制御線WSL(段落【0041】)、電源制御線DSL(段落【0048】)及び信号線DTL(段落【0035】)の交差部に位置することがみてとれる。 上記引用例1には、次の事項が記載されているということができる。 ア 上記b(【0018】)から、引用例1には、「(a)電流駆動型の自発光素子と、当該自発光素子を駆動制御する画素回路とで構成されるサブ画素をマトリクス状に配置した画素アレイ部と、(b)信号線を駆動する信号線駆動部と、(c)信号線に出現する電位のサブ画素への書き込みを、第1のスキャンクロックに基づいて制御する書込制御線駆動部と、(d)サブ画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源供給制御部であって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のスキャンクロックよりも高速の第2のスキャンクロックに基づいて制御する電源供給制御部と(e)を有する表示パネルモジュール」が記載されている。 ここで、上記d(【0026】)から、引用例1には、「発明を、アクティブマトリクス駆動型の有機ELパネルモジュールに適用する」ことが記載されているから、上記(e)の「表示パネルモジュール」は、「有機ELパネルモジュール」ということができる。 また、上記dの「【0030】‥‥‥電源制御線駆動部39は、‥‥‥「電源供給制御部」に対応する。」との記載、上記hの「【0044】‥‥‥第1のシフトクロックCK1は、特許請求の範囲における「第1のスキャンクロック」に対応する。」との記載、及び上記jの「【0050】‥‥‥第2のシフトクロックCK2は、特許請求の範囲における「第2のスキャンクロック」に対応する。」との記載から、引用例1に記載の特許請求の範囲と同一の記載である、上記「(c)」、「(d)」については、それぞれ、「(c)信号線に出現する電位のサブ画素への書き込みを、第1のシフトクロックCK1に基づいて制御する書込制御線駆動部」、「(d)サブ画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源制御線駆動部であって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて制御する電源制御線駆動部」ということができる。 イ 上記b(【0020】)、及び上記アに記載した、第1のシフトクロックCK1と第1のスキャンクロックとの対応関係から、引用例1には、「第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定されることが望ましい」ことが記載されているということができる。 ウ 上記c(【0023】)から、引用例1には、「黒画面を挿入しなくても、前後のフレームの表示期間を互いに分離できる」ことが記載されている。 エ 上記g(【0041】)から、引用例1には、「書込制御線駆動部は、書込制御線WSLを通じて、信号線電位のサブ画素51への書き込みを線順次に制御する駆動デバイス」であることが記載されている。 オ 上記i(【0048】)から、「電源制御線駆動部は、電源制御線DSLを通じて、サブ画素51に対する駆動電源VDDの供給と供給停止を制御する駆動デバイス」であることが記載されている。 カ 上記k(【0078】)から、「書込制御線WSLを駆動する制御パルスは、第1のシフトクロックCK1に基づいて線順次にシフト駆動される」ことが記載されており、ここで、「第1のシフトクロックCK1」の周期については、「水平走査周期と一致するように設定されることが望ましい」(上記イ)ことから、引用例には、「書込制御線WSLを駆動する制御パルスは、第1のシフトクロックCK1に基づいて線順次にシフト駆動され、第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定され」ることが記載されているということができる。 キ 上記lから、画素アレイ部33において、「サブ画素51が、書込制御線WSL、電源制御線DSL及び信号線DTLの交差部に位置する」ことが示されている。 ク 図8及び上記eの「【0031】‥‥‥画素アレイ部33には、ホワイトユニットを構成する1画素が、‥‥‥配置される。図8に、ホワイトユニットを構成するサブ画素51の配列構造を示す。図8に示すように、ホワイトユニットは、R(赤)画素51、G(緑)画素51、B(青)画素51の集合体として構成される。」との記載から、「サブ画素51」は、R(赤)画素51、G(緑)画素51、B(青)画素51の集合体として構成される、ホワイトユニットを構成する「画素」と捉えることができる。 したがって、上記ウから「表示パネルモジュール」を「有機ELパネルモジュール」とし、上記エから、「サブ画素」を「画素」として、上記引用例1に記載された事項、及び上記アないしクを総合すると、引用例1には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。 「(a)電流駆動型の自発光素子と、当該自発光素子を駆動制御する画素回路とで構成される画素をマトリクス状に配置した画素アレイ部と、 (b)信号線を駆動する信号線駆動部と、 (c)信号線に出現する電位の画素への書き込みを、第1のシフトクロックCK1に基づいて制御する書込制御線駆動部と、 (d)画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源制御線駆動部であって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて制御する電源制御線駆動部と (e)を有する有機ELパネルモジュールであって、 画素は、書込制御線WSL、電源制御線DSL及び信号線DTLの交差部に位置し、 書込制御線駆動部は、書込制御線WSLを通じて、信号線電位の画素への書き込みを線順次に制御する駆動デバイスであり、 電源制御線駆動部は、電源制御線DSLを通じて、画素に対する駆動電源VDDの供給と供給停止を制御する駆動デバイスであって、 書込制御線WSLを駆動する制御パルスは、第1のシフトクロックCK1に基づいて線順次にシフト駆動され、 第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定され、 黒画面を挿入しなくても、前後のフレームの表示期間を互いに分離できる、 有機ELパネルモジュール。」 3 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 (1)引用発明の「有機ELパネルモジュール」、「書込制御線」、「電源制御線」、「信号線」は、それぞれ、本願発明の「有機電界発光表示装置」、「走査線」、「発光制御線」、「データ線」に相当する。 (2)引用発明において、「書込制御線WSL、電源制御線DSL及び信号線DTLの交差部に位置」する「画素」は、本願発明の「走査線、発光制御線及びデータ線の交差部に位置する画素」に相当する。 (3)引用発明において、「書込制御線駆動部は、書込制御線WSLを通じて、信号線電位の画素への書き込みを線順次に制御する駆動デバイス」であり、また、「書込制御線駆動部」は、「(c)信号線に出現する電位の画素への書き込みを、第1のシフトクロックCK1に基づいて制御する書込制御線駆動部」であって、ここで「第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定され」るものである。 ここで、引用発明の「書込制御線駆動部」は、書込制御線WSLを通じて、信号線電位の画素への書き込みを線順次に制御するものであって、書込制御線WSLに、「水平走査周期」の書込制御信号が供給されることは明らかであるから、書込制御線駆動部は、書込制御信号によって、画素を水平ライン単位で選択するものであるといえる。 そして、「書込制御信号」は、本願発明の「走査信号」に、また、「水平走査周期」は、本願発明の「第1駆動周波数」に対応するものということができるから、引用発明の「(c)信号線に出現する電位の画素への書き込みを、第1のシフトクロックCK1に基づいて制御する書込制御線駆動部」は、本願発明の「前記画素を水平ライン単位で選択するために第1駆動周波数で前記走査線に走査信号を順次供給する走査駆動部」に相当する。 (4) ア 引用発明は、「(d)画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源制御線駆動部であって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて制御する電源制御線駆動部」を有し、「電源制御線駆動部は、電源制御線DSLを通じて、画素に対する駆動電源VDDの供給と供給停止を制御する駆動デバイス」である。 そして、電源制御線DSLに電源制御信号が流れることは明らかであって、「電源制御線」、「電源制御信号」はそれぞれ、本願発明の「発光制御線」(上記(1))、「発光制御信号」に相当するから、引用発明の「電源制御線駆動部」は、本願発明の「前記発光制御線に発光制御信号を順次供給するエミッション駆動部」に相当する。 イ そして、引用発明の「電源制御線駆動部」が、「自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて制御する」ものであることを踏まえると、「電源制御線駆動部」は、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源からの電源制御信号(本願発明の「発光制御信号」に相当。)を順次供給するものということができる。 ここで、「第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定され」ており、「水平走査周期」は、本願発明の「第1駆動周波数」に対応するものということができるから(上記(3))、「第2のシフトクロックCK2」の周波数は、本願発明の「前記第1駆動周波数と異なる第2駆動周波数」に相当する。 したがって、引用発明の「画素に対する駆動電源の供給と停止を制御」し「自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて制御する電源制御線駆動部」は、本願発明の「前記画素の発光を制御するために前記第1駆動周波数と異なる第2駆動周波数で前記発光制御線に発光制御信号を順次供給するエミッション駆動部」に相当する。 (5)引用発明の「(c)信号線に出現する電位の画素への書き込みを、第1のシフトクロックCK1に基づいて制御する書込制御線駆動部」について、「第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定され」るものであり、ここで、「水平走査周期」は、本願発明の「1水平期間」に相当し、「書込制御線駆動部」は、「書込制御線」に「書込制御信号」を供給することは明らかであるから、書込制御線(本願発明の「走査信号線」に相当(上記(1)))のそれぞれに1水平期間に書込制御信号(本願発明の「走査信号」に相当(上記(3)))を供給しているものということができる。 したがって、引用発明において「書込制御線駆動部」は「(c)信号線に出現する電位の画素への書き込みを、第1のシフトクロックCK1に基づいて制御」し「第1のシフトクロックCK1の周期は、水平走査周期と一致するように設定され」ることは、本願発明の「前記走査駆動部は、前記走査線のそれぞれに1水平期間に前記走査信号を供給」することに相当する。 (6)引用発明は、「画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源制御線駆動部」であって、ここで、「画素は、書込制御線WSL、電源制御線DSL及び信号線DTLの交差部に位置し」、「画素をマトリクス状に配置した画素アレイ部」を有する「有機ELパネルモジュール」であるから、電源制御線駆動部が、j番目の「電源制御線」に電源制御信号を供給するものということができる。 そして、引用発明の「電源制御線駆動部」は「自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミング」を「制御する」ものであるから、「画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源制御線駆動部」(本願発明の「エミッション駆動部」に相当。)は、自発発光素子の点灯を制御するものである。 したがって、引用発明において、電源制御線駆動部が、j番目の電源制御線に電源制御信号を供給し、「自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミング」を「制御する」することと、本願発明の「前記エミッション駆動部は、j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号と重なるようにj番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」こととは、「前記エミッション駆動部は、j番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」点で共通する。 (7)引用発明は、電源制御線駆動部がj番目の電源制御線に電源制御信号を供給するものであって(上記(6))、「画素は、書込制御線WSL、電源制御線DSL及び信号線DTLの交差部に位置し」、「画素をマトリクス状に配置した画素アレイ部」を有する「有機ELパネルモジュール」である。このような「有機ELパネルモジュール」において、j番目の電源制御線に電源制御信号を供給したあと、次の電源制御線、すなわちj+1番目の電源制御線に電源制御信号を供給することは常套手段であるから、引用発明において、電源供給制御部がj番目の電源制御線に電源制御信号を供給したあと、次の電源制御線、すなわちj+1番目の電源制御線に電源制御信号を供給することと、本願発明の「前記j番目の発光制御線に発光制御信号が供給された後、前記1水平期間よりも短い第1期間の後にj+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」こととは、「前記j番目の発光制御線に発光制御信号が供給された後、j+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」点で共通する。 すると、本願発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。 <一致点> 「走査線、発光制御線及びデータ線の交差部に位置する画素と、 前記画素を水平ライン単位で選択するために第1駆動周波数で前記走査線に走査信号を順次供給する走査駆動部と、 前記画素の発光を制御するために前記第1駆動周波数と異なる第2駆動周波数で前記発光制御線に発光制御信号を順次供給するエミッション駆動部と、 を備え、 前記走査駆動部は、前記走査線のそれぞれに1水平期間に前記走査信号を供給し、 前記エミッション駆動部は、j番目の発光制御線に発光制御信号を供給するとともに、前記j番目の発光制御線に発光制御信号が供給された後、j+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給することを特徴とする有機電界発光表示装置。」 <相違点> (ア)本願発明の、前記エミッション駆動部は、「j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号と重なるように」j番目の発光制御線に発光制御信号を供給するのに対し、引用発明は、このような点について明示的な特定がない点。 (イ)前記j番目の発光制御線に発光制御信号が供給された後、j+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給するにあたり、本願発明は、「前記1水平期間よりも短い第1期間の後に」j+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給するのに対し、引用発明は、このような点について明示的な特定がない点。 4 判断 <相違点>(ア)について 最初に、本願発明の記載について検討する。 当審において、本願発明の「前記エミッション駆動部は、j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号と重なるようにj番目の発光制御線に発光制御信号を供給するとともに、」との記載についての審尋(平成28年3月31日付け)を行ったところ、請求人は、「本願特許請求の範囲の請求項1に誤記は存在しない。本願の出願当初明細書の段落0058を参照すると、「制御トランジスタCMのゲート電極は、発光制御線Enに接続される。このような制御トランジスタCMは、発光制御線Enに発光制御信号が供給される時にターンオフされ、発光制御信号が供給されない時にターンオンされる。」と記載されている。言い換えれば、発光制御信号の供給とは、ハイレベルの信号が供給されていることを表している。また、本願の出願当初明細書の段落0055を参照すると、「第1トランジスタM1は、走査線Snに走査信号が供給される時にターンオンされてデータ線Dmと第2トランジスタM2のゲート電極を電気的に接続させる。」と記載されている。言い換えれば、走査信号の供給とは、ローレベルの信号が供給されていることを表している。」と釈明した(下線は、請求人が付した。)。 したがって、本願発明の「前記エミッション駆動部は、j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号と重なるようにj番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」との記載は、「前記エミッション駆動部は、j(jは自然数)番目の走査線に供給されるローレベルの信号と重なるようにj番目の発光制御線にハイレベルの信号を供給する」ことに対応するものであり、このことは、本願図面第5図を参酌すれば、走査線に「ローレベルの信号」が供給される場合には、第1トランジスタM1、すなわちゲートトランジスタ・サンプリングトランジスタがオンされ、発光制御信号に「ハイレベル」の信号が供給される場合には、制御トランジスタCMがターンオフされ、有機発光ダイオードOLEDがオフ(消灯)するものであるから、本願発明は、「前記エミッション駆動部は、j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号により、j番目ゲートトランジスタ・サンプリングトランジスタがオンしているときは、有機発光ダイオードOLEDが消灯するようにj番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」ことを意味するものと解される。 上記検討を踏まえ、相違点について検討するに、一般に、走査信号によりゲートトランジスタをオンし、データ線からデータ信号が供給されているときに、有機発光ダイオードOLEDが消灯状態となるように制御することは当業者が普通になし得る事項であるから、引用発明において、「j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号により、j番目ゲートトランジスタ・サンプリングトランジスタがオンしているときは、有機発光ダイオードOLEDを消灯するようにj番目の発光制御線に発光制御信号を供給する」ことは当業者が容易になし得る事項である。 そして、走査線に供給される走査信号、有機発光ダイオードOLEDの発光制御信号を正論理の信号とするか、負論理の信号をするかは、当業者が適宜選択し得る事項であるから、本願発明のように「j(jは自然数)番目の走査線に供給される走査信号と重なるように」j番目の発光制御線に発光制御信号を供給することに格別な困難性を有しない。 よって、本願発明の<相違点>(ア)に係る構成のようにすることは格別なことではない。 <相違点>(イ)について 引用発明は「(d)画素に対する駆動電源の供給と停止を制御する電源制御線駆動部であって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを、第1のシフトクロックCK1よりも高速の第2のシフトクロックCK2に基づいて制御する電源制御線駆動部」を有するものであって、「第2のシフトクロックCK2」に着目すると、「第2のシフトクロックCK2」は、「画素に対する駆動電源の供給と停止を制御するするものであって、自発光素子の点灯期間を規定する駆動電源の供給タイミングを制御する」するものであるといえる。 ここで、引用発明において、「第2のシフトクロックCK2」は「第1のシフトクロックCK1よりも高速」であることから、j番目の電源制御線に電源制御信号を供給し、次に、j+1番目の電源制御線に電源制御信号(段落【0062】)を供給するまでの期間が、「第1のシフトクロックCK1」の周期、すなわち水平走査周期よりも短いということができる。 そして、このようにすることにより、引用発明は、「黒画面を挿入しなくても、前後のフレームの表示期間を互いに分離できる」ものであるから、本願発明のように「前記1水平期間よりも短い第1期間の後に」j+1番目の発光制御線に発光制御信号を供給することは当業者が容易になし得る事項である。 よって、本願発明の<相違点>(イ)に係る構成のようにすることは格別なことではない。 そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。 よって、本願発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2016-09-15 |
結審通知日 | 2016-09-20 |
審決日 | 2016-10-19 |
出願番号 | 特願2011-9877(P2011-9877) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G09G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 西島 篤宏 |
特許庁審判長 |
清水 稔 |
特許庁審判官 |
大和田 有軌 酒井 伸芳 |
発明の名称 | 有機電界発光表示装置及び有機電界発光表示装置の駆動方法 |
代理人 | アイ・ピー・ディー国際特許業務法人 |