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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C12N
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 C12N
管理番号 1325650
審判番号 不服2015-20400  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-11-16 
確定日 2017-03-01 
事件の表示 特願2012-514152「改善された発現、活性、及び安定性を有するセルラーゼ変異体、並びにこれらの使用方法」拒絶査定不服審判事件〔平成22年12月 9日国際公開、WO2010/141779、平成24年11月15日国内公表、特表2012-528598〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月3日(パリ条約による優先権主張 平成21年6月3日 米国)を国際出願日とする出願であって、平成26年10月16日付け拒絶理由通知に対して、平成27年2月23日付けで意見書および補正書が提出され、平成27年7月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月16日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正書が提出されたものである。


第2 平成27年11月16日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成27年11月16日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.本件補正
本件補正は、補正前の特許請求の範囲の請求項1に、
「【請求項1】
セルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の位置番号において、表3-1からなる群より選択される置換を1つ以上含み、A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない、セルラーゼ変異体。」(補正前)とあったものを、
「【請求項1】
配列番号3のアミノ酸配列の位置番号において、S5、P18、T19、V28、S30、D32、S35、S38、P79、P80、S89、A100、A102、Y103、Y104、A105、E107、L111、T117、A119、A121、A125、A126、F133、D137、T138、L139、D140、K141、P143、L144、A150、R153、N158、N161、Y162、A177、A178、A180、S181、N182、Y185、S186、A188、G190、G191、V192、A193、K194、K196、T201、R203、V207、S210、T214、N225、L226、T228、N229、L230、P233A、K234、A236、S240、L243、C245、T251、Q252、V258、H266、A267、G268、W272、A274、N275、S292、P293、V303、A304、Y306、N307、S313、Q319、A322、L328、H331、A338、H340、F346、Q361、Q362、Q363、W364、G365、I371、G384、V394、P396、E399、C400、D405、S406、S407、R410、H414、L417、Q422、A427、F431、A433、V436、T440、N441、N443、P444、S445、L447からなる群より選択される置換を1つ以上含み、A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない、セルラーゼ活性を有する変異体。」(補正後)とする補正を含むものである。

2.補正事項
本件補正によって、補正前の「セルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体」が補正後の「セルラーゼ活性を有する変異体」に補正され(補正事項1)、補正前の「配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の位置番号」が補正後の「配列番号3のアミノ酸配列の位置番号」に補正され(補正事項2)、補正前の「表3-1からなる群より選択される置換」が「S5、P18、T19、V28、S30、D32、S35、S38、P79、P80、S89、A100、A102、Y103、Y104、A105、E107、L111、T117、A119、A121、A125、A126、F133、D137、T138、L139、D140、K141、P143、L144、A150、R153、N158、N161、Y162、A177、A178、A180、S181、N182、Y185、S186、A188、G190、G191、V192、A193、K194、K196、T201、R203、V207、S210、T214、N225、L226、T228、N229、L230、P233A、K234、A236、S240、L243、C245、T251、Q252、V258、H266、A267、G268、W272、A274、N275、S292、P293、V303、A304、Y306、N307、S313、Q319、A322、L328、H331、A338、H340、F346、Q361、Q362、Q363、W364、G365、I371、G384、V394、P396、E399、C400、D405、S406、S407、R410、H414、L417、Q422、A427、F431、A433、V436、T440、N441、N443、P444、S445、L447からなる群より選択される置換」に補正された(補正事項3)。

3.補正の適否
上記補正事項3について検討する。
補正後の請求項1の「S5、P18、T19、V28、S30、D32、S35、S38、P79、P80、S89、A100、A102、Y103、Y104、A105、E107、L111、T117、A119、A121、A125、A126、F133、D137、T138、L139、D140、K141、P143、L144、A150、R153、N158、N161、Y162、A177、A178、A180、S181、N182、Y185、S186、A188、G190、G191、V192、A193、K194、K196、T201、R203、V207、S210、T214、N225、L226、T228、N229、L230、P233A、K234、A236、S240、L243、C245、T251、Q252、V258、H266、A267、G268、W272、A274、N275、S292、P293、V303、A304、Y306、N307、S313、Q319、A322、L328、H331、A338、H340、F346、Q361、Q362、Q363、W364、G365、I371、G384、V394、P396、E399、C400、D405、S406、S407、R410、H414、L417、Q422、A427、F431、A433、V436、T440、N441、N443、P444、S445、L447からなる群より選択される置換」では、セルラーゼ変異体における置換後のアミノ酸が特定されていないから、任意のアミノ酸への置換を包含すると認められる。
一方、補正前の請求項1に特定されている表3-1には、S005A、S005C、S005D・・・L447V、L447W、L447Yのように、特定のアミノ酸へ置換したセルラーゼ変異体が記載されている。
そして、例えば補正後の請求項1に係る発明に該当する、「T19」に置換を含む変異体は、T19Dの変異体、T19Hの変異体を包含すると認められるが、表3-1には、T19Dの変異体、T19Hの変異体は記載されていない。
そうすると、補正事項3は補正前の発明を拡張するものであるから、補正事項3を含む本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当しない。また、誤記の訂正、明瞭でない記載の釈明を目的とするものに該当しないことも明らかである。

4.小括
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明1について
1.本願発明1
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?30に係る発明は、平成27年2月23日付け手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?30に記載の事項により特定される発明であると認める。
そのうち、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、上記第2 1.で補正前の請求項1として記載したとおりのものである。
そして、請求項1に記載される、「表3-1からなる群」の置換とは、表3-1に列挙されるS005A、S005C、S005D・・・L447V、L447W、L447Yからなる2828種の置換である。
したがって、表3-1に列挙される置換のうちの10種の置換を含むものに係る下記の発明(これを「本願発明1’」という。)を認定することができ、本願発明1はこの本願発明1’を包含するものである。

「セルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の位置番号において、L144G、L144S、R153Q、K194E、R203Q、S210L、S210R、T214Y、D405N、R410Qからなる群より選択される置換を1つ以上含み、A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない、セルラーゼ変異体。」(本願発明1’)


2.引用例
(1)引用例1および引用発明1
本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2008/025164号(以下、「引用例1」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるため、パテントファミリーである特表2010-501189号公報の記載を翻訳文とする。また、下線は当審が付したものである。

ア 「1.位置413でプロリン残基を含む修飾したファミリー6セルラーゼであって、該位置は配列番号:1において定義されるようなトリコデルマ・リーゼイCel6Aアミノ酸配列と該修飾したセルラーゼの配列アライメントから決定され、該修飾したセルラーゼが対応する元のファミリー6セルラーゼと比較して強化された耐熱性、好アルカリ性、好熱性またはその組合せを示す、修飾したファミリー6セルラーゼ。
・・・・
4.GlnおよびAsnからなる群から選択される位置410での置換アミノ酸をさらに含む、請求項1に記載の修飾したファミリー6セルラーゼ。
・・・・
17. TrCel6A-S413P(配列番号:12);
TrCel6A-G82E-G231S-N305S-R410Q-S413P(配列番号:13);
TrCel6A-G231S-S413P(配列番号:14);
TrCel6A-N305S-S413P(配列番号:15);
TrCel6A-R410Q-S413P(配列番号:16);
TrCel6A-G231S-N305S-S413P(配列番号:17);
TrCel6A-G231S-R410Q-S413P(配列番号:18);
TrCel6A-N305S-R410Q-S413P(配列番号:19);
TrCel6A-G231S-N305S-R410Q-S413P(配列番号:20);
HiCel6A-Y420P (配列番号:21);および
PcCel6A-S407P(配列番号:22)からなる群から選択される、修飾したファミリー6セルラーゼ。」(特許請求の範囲)

イ 「ファミリー6セルラーゼの耐熱性の増加
[0071] 変異ファミリー6セルラーゼの耐熱性を、基質の非存在下において、異なる温度での酵素のプレインキュベーションによって比較した。15分後に、基質として可溶性β(ベータ)-グルカンを用いてセルラーゼの残存活性を標準的な分析によって決定した。
[0072] ファミリー6セルラーゼの耐熱性に対するS413P変異の効果は、単独でまたは1つもしくは複数のG231S、N305SおよびR410Qとの組合せで、修飾したTrCel6A-S413Pと元のTrCel6Aの比較研究によって決定された。最大120分間のより高い温度でのプレインキュベーション後に、前者は後者よりも高い残存活性を保持した(図5a)。」

上記ア、イの記載より、引用例1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「セルラーゼ活性を有する変異体であり、配列番号1のアミノ酸配列を有するトリコデルマ・リーゼイセルラーゼCel6A(TrCel6A)の、R410Q-S413P変異体。」

(2)引用例2
本願の優先日前に頒布された刊行物である特表2008-526206号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下の事項が記載されている。

ア 「【特許請求の範囲】
【請求項1】
変異体CBH2セルラーゼであって、前記変異体が、ハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina(配列番号2)由来のCBH2におけるV94、P98、G118、M120、M134、T142、L144、M145、T148、T154、L179、Q204、V206、S210、I212、T214、L215、G231、T232、V250、Q276、N285、S291、G308、T312、S316、V323、N325、1333、G334、S343、T349、G360、S380、A381、S386、F411、S413、A416、Q426及び/又はA429の1つ以上にの残基に相当する位置における置換又は欠失を含むことを特徴とする、変異体CBH2セルラーゼ。
【請求項2】
請求項1に記載の変異体CBH2セルラーゼであって、前記変異体がハイポクレアジェコリーナ(Hypocrea jecorina(配列番号2))由来のCBH2におけるV94E、P98L、G118P、M120L、M134(G/L/V)、T142V、L144(G/R/S)、M145L、T148Y、T154A、L179A、Q204E、V206L、S210(L/R)、I212V、T214(M/Y)、L215I、G231N、T232V、V250I、Q276L、N285Q、S291G、G308A、T312S、S316P、V323(L/M/Y)、N325D、I333L、G334A、S343P、T349L、G360R、S380T、A381T、S386P、F411Y、S413Y、A416G、Q426E及び/又はA429Tの1つ以上にの残基に相当する位置における置換又は欠失を含むことを特徴とする、変異体CBH2セルラーゼ。」

イ 「 【0113】
B. 変異体CBH2ポリペプチド
野生型ハイポクレアジェコリーナ(H.jecorina)CBH2のアミノ酸配列を図1に示す。変異CBH2ポリペプチドは、ハイポクレアジェコリーナ(H.jecorina)(配列番号2)由来CBH2のV94、P98、G118、M120、M134、T142、L144、M145、T148、T154、L179、Q204、V206、S210、I212、T214、L215、G231、T232、V250、Q276、N285、S291、G308、T312、S316、V323、N325、I333、G334、S343、T349、G360、S380、A381、S386、F411、S413、A416、Q426及び/又はA429残基の1以上の対応する部位の置換又は欠損を含む。」

ウ 「



上記アの記載より、引用例2には、以下の発明(以下、「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「配列番号2のハイポクレアジェコリーナ由来のセルラーゼCBH2において、L144(G/R/S)、S210(L/R)、又はT214(M/Y)より選択される置換を1つ以上を含む、変異体CBH2セルラーゼ。」

(3)引用例3
本願の優先日前に頒布された刊行物である国際公開第2008/153925号(以下、「引用例3」という。)には、以下の事項が記載されている。なお、英文であるため、パテントファミリーである特表2010-528656号公報の記載を翻訳文とする。

ア 「[425] 親野生型トリコデルマ レーシ(T. reesei)cbh2成熟タンパク質のアミノ酸配列を下記に示す。

(配列番号35)

イ 「[427] CBH2電荷ラダーの調製に関して、10のCBH2電荷変異体(C1からC10)を野生型CBH2に比較して+8から-32の電荷範囲にわたって設計し、表14-3に示す。


(表14-3には、R153Q、K194E、R203Q、D405Nの置換を含むCBH2電荷変異体が記載されている。)

上記ア、イの記載より、引用例3には、以下の発明(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。
「配列番号35のトリコデルマ レーシ(T.reesei)CBH2成熟タンパク質において、R153Q、K194E、R203Q、D405Nより選択される置換を1つ以上を含む、変異体」

3.対比、当審の判断
(1)引用発明1に対し
本願発明1’の配列番号3のセロビオヒドロラーゼII(CBH2)は、ハイポクレアジェコリーナ由来のものであり、ハイポクレアジェコリーナと引用発明1のトリコデルマ レーシ(T.reesei)とは同じものを指す。
そして、引用発明1の「配列番号1」は、本願発明1’の「配列番号3」と一致するものであるから、本願発明1’と同じく成熟形態のセルラーゼのアミノ酸配列であると認められる。
したがって、引用発明1の「配列番号1のアミノ酸配列を有するトリコデルマ・リーゼイセルラーゼCel6A(TrCel6A)の」「セルラーゼ活性を有する変異体」は、本願発明1’の「セルラーゼ活性を有する成熟形態の」、「配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)」の「セルラーゼ変異体」に相当する。
また、引用発明1の「R410Q-S413P変異体」における「R410Q」の置換は、本願発明1’の「R410Q」の置換に相当する。
さらに、引用発明1の変異体は、「A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない」ものである。

したがって、本願発明1’と引用発明1とは「セルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の位置番号において、R410Qの置換を含み、A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない、セルラーゼ変異体。」である点で一致し、相違点はない。
よって、本願発明1’は引用例1に記載された発明と同一である。

(2)引用発明2に対し
上記2.(2)のイ、ウの記載から、引用発明2の「配列番号2」のアミノ酸配列は、成熟形態(配列番号3)である本願発明1’のCBH2の、完全長形態のアミノ酸配列(本願明細書に配列番号2として示される)と一致するものと認められる。そして、引用例2に変異させるアミノ酸残基および位置番号として記載される「V94、P98、G118、M120、M134、T142、L144、M145、T148、T154、L179、Q204、V206、S210、I212、T214、L215、G231、T232、V250、Q276、N285、S291、G308、T312、S316、V323、N325、I333、G334、S343、T349、G360、S380、A381、S386、F411、S413、A416、Q426及び/又はA429」は、「配列番号2」における25番目のアミノ酸QをQ1、26番目のアミノ酸AをA2、・・・、471番目のアミノ酸LをL447とした場合のものであること、配列番号2のうちの25番目?471番目の447アミノ酸からなるアミノ酸配列のCBH2セルラーゼは、成熟形態のセルラーゼであること、などが理解される。
つまり、引用例2の「配列番号2」における、25番目?471番目の447アミノ酸からなるアミノ酸配列のCBH2セルラーゼは、本願発明1’の配列番号3セロビオヒドロラーゼII(CBH2)と同じものであり、また、アミノ酸配列の位置番号も、本願発明1’のものと同じものを示していると認められる。
そうすると、引用発明2の「配列番号2のハイポクレアジェコリーナ由来のセルラーゼCBH2」の「変異体CBH2セルラーゼ」と、本願発明1’の「セルラーゼ活性を有する」、「配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)」の「セルラーゼ変異体」とは、ハイポクレアジェコリーナ由来のCBH2セルラーゼであって、その成熟形態のアミノ酸配列が配列番号3で定義される、CBH2セルラーゼの変異体である点で共通する。
また、引用発明2の「L144(G/R/S)、S210(L/R)、又はT214(M/Y)より選択される置換」は、本願発明1’の「L144G、L144S、S210L、S210R、T214Yより選択される置換」に相当する。
さらに、引用発明2の変異体は、「A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない」ものである。

したがって、本願発明1’と引用発明2とは「セルラーゼ活性を有する変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の位置番号において、L144G、L144S、S210L、S210R、T214Yより選択される置換を1つ以上を含み、A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない、セルラーゼ変異体。」である点で一致し、本願発明1’が「成熟形態の」変異体であるに対し、引用発明2は「完全長形態の」変異体である点で相違する。

しかし、セルラーゼなどの酵素における酵素活性は、該酵素が成熟する際に除かれるシグナル配列部分ではなく、成熟形態のタンパク質部分にあることが技術常識であるから、引用発明2において、変異体CBH2セルラーゼとして、完全長形態のものに代えて成熟形態のものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、本願発明1’において、引用例2の記載から予測できない効果が奏されたとも認められない。

(3)引用発明3に対し
引用発明3の「配列番号35」のアミノ酸配列は、本願発明1’の「配列番号3」のアミノ酸配列と一致するものであるから、引用発明3の「配列番号35のトリコデルマ レーシ(T.reesei)CBH2成熟タンパク質」の「変異体」は、本願発明1’の「セルラーゼ活性を有する成熟形態の」、「配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)」の「セルラーゼ変異体」に相当する。
そして、引用発明3の「R153Q、K194E、R203Q、D405Nより選択される置換」は、本願発明1’の「R153Q、K194E、R203Q、D405Nより選択される置換」に相当する。
また、引用発明3の変異体は、「A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない」ものである。

したがって、本願発明1’と引用発明3とは「セルラーゼ活性を有する成熟形態の変異体であり、配列番号3で定義される対照セロビオヒドロラーゼII(CBH2)のアミノ酸配列の位置番号において、R153Q、K194E、R203Q、D405Nからなる群より選択される置換を1つ以上含み、A121Q、L243H、A322Q、L328C、L328Y、V436Yを含まない、セルラーゼ変異体。」である点で一致し、相違点はない。
よって、本願発明1’は引用例3に記載された発明と同一である。

4.小活
本願発明1’は引用例1、3に記載された発明と同一であるから、本願発明1’を包含する本願発明1も、引用例1、3に記載された発明と同一であると認められる。
また、本願発明1’は引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、本願発明1’を包含する本願発明1も、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易も発明をすることができたものと認められる。

第4 むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1、3に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができず、また、本願発明1は、引用例2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項に係る発明について言及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する
 
審理終結日 2016-10-03 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-17 
出願番号 特願2012-514152(P2012-514152)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C12N)
P 1 8・ 113- Z (C12N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 北田 祐介  
特許庁審判長 佐々木 秀次
特許庁審判官 中島 庸子
高堀 栄二
発明の名称 改善された発現、活性、及び安定性を有するセルラーゼ変異体、並びにこれらの使用方法  
代理人 内藤 忠雄  
代理人 尾首 亘聰  
代理人 赤松 利昭  
代理人 奥谷 雅子  
代理人 山崎 行造  

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