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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1325652
審判番号 不服2016-1495  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-02 
確定日 2017-03-01 
事件の表示 特願2013- 57120「ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路」拒絶査定不服審判事件〔平成25年10月31日出願公開、特開2013-225119〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成25年3月19日(パリ条約による優先権主張 2012年4月23日 米国)に出願したものであって、平成26年1月30日付けの拒絶理由通知に対して平成26年5月7日付けで手続補正がなされ、平成26年10月29日付けの最後の拒絶理由通知に対して平成27年4月2日付けで手続補正がなされたが、平成27年9月29日付けで補正の却下の決定がなされるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年2月2日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成28年2月2日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]

平成28年2月2日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]

1 本件補正

本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、

「【請求項1】
ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路において、
走査駆動回路であって、複数の走査信号を生成し、該ディスプレイパネルの複数の画素構造を走査する、上記走査駆動回路と、
データ駆動回路であって、複数のデータ信号を生成し、これら画素構造が走査される時、これらデータ信号をこれら画素構造に伝送する、上記データ駆動回路と、
を包含し、該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送し、隣り合うこれら画素構造に同じグレーレベルを表示させる時、該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を、これら画素構造の共同電圧に関して非対称から対称に調整することを特徴とする、ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路。」

とあったところを、

「【請求項1】
ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路において、該駆動回路は隣り合う複数の画素構造の複数の保存電圧が複数のトランジスタの複数の寄生容量の影響を受けて共同電圧に関して非対称となるのを補償し、該駆動回路は、
走査駆動回路であって、複数の走査信号を生成し、該ディスプレイパネルのこれら複数の画素構造を走査する、上記走査駆動回路と、
データ駆動回路であって、複数のデータ信号を生成し、これら画素構造が走査される時、これらデータ信号をこれら画素構造に伝送する、上記データ駆動回路と、
を包含し、該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送し、隣り合うこれら画素構造に同じグレーレベルを表示させる時、該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を調整することで、これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償し、隣り合うこれら画素構造のこれら保存電圧を、これら画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整することを特徴とする、ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路。」

とすることを含むものである。

本件補正について検討する。

本件補正は、本件補正前の請求項1の「駆動回路」について、「該駆動回路は隣り合う複数の画素構造の複数の保存電圧が複数のトランジスタの複数の寄生容量の影響を受けて共同電圧に関して非対称となるのを補償し、」と限定し、さらに、本件補正前の請求項1の「該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を、これら画素構造の共同電圧に関して非対称から対称に調整する」との特定事項を、「該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を調整することで、これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償し、隣り合うこれら画素構造のこれら保存電圧を、これら画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整する」と限定するものである。

よって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の限縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

2 引用例及びその記載事項

(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先権主張の日前に頒布された刊行物である特開2002-214582号公報(平成14年7月31日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は液晶表示装置に係り、特に、アクティブ・マトリクス型の液晶表示装置に関する。」

b「【0002】
【従来の技術】この種の液晶表示装置は、液晶を介して対向配置される各透明基板のうち一方の透明基板の液晶側の面に、x方向に延在しy方向に並設されるゲート信号線とy方向に延在しx方向の並設されるドレイン信号線が形成され、これら各信号線に囲まれた領域を画素領域としている。
【0003】そして、各画素領域には、片側のゲート信号線からの走査信号(電圧)によって作動される薄膜トランジスタと、この薄膜トランジスタを介して片側のドレイン信号線からの映像信号(電圧)が供給される画素電極とが備えられている。
【0004】この画素電極は前記透明基板のうちいずれかの側に形成された対向電極との間に電界を生じせしめ、この電界によって液晶の光透過率を制御するようになっている。
【0005】また、各ゲート信号線からの走査信号は該各ゲート信号線の一端側に接続された垂直走査駆動回路によって生成され、各ドレイン信号線からの映像信号は該各ドレイン信号線の一端側に接続された映像信号駆動回路によって生成されるようになっている。
【0006】垂直走査駆動回路および映像信号駆動回路はいずれも半導体集積回路(IC)から構成され、たとえば前記一方の透明基板上に搭載されている。
【0007】さらに、前記映像信号駆動回路によって各ドレイン信号線に映像信号を供給する場合、それら各ドレイン信号線には正極性の信号電圧および負極性の信号電圧を1フィールド毎に交互に印加するようにして、液晶に直流電圧が長く印加されて分極が生じるのを回避するようにしたいわゆるドット反転駆動を行うものが知られている。
【0008】すなわち、正極性の信号電圧は各階調レベルに対応した電圧によって液晶の透過率(表示の明暗)を決定させ、負極性の信号電圧は各階調レベルに対応した電圧によって液晶の透過率(表示の明暗)を決定させるようにしており、これら各電圧の階調に対する関係は対称となっている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上述したように、正極性の信号電圧および負極性の信号電圧の階調に対する対称性を映像信号駆動回路によって設定した場合に、各液晶表示装置の製造ばらつきによって該対称性にずれが生じてしまうことがある。
【0010】このため、たとえば、映像信号駆動回路によって正極性の信号電圧および負極性の信号電圧の階調に対する対称性を予めずらした特性(非対称性)にしておき、前記対向電極に印加する電圧(いわゆるVcomと称される)を調整する方法が提案されている。
【0011】しかし、この場合、正極性の信号電圧および負極性の信号電圧の階調に対する前記特性が液晶表示装置の製造ばらつきによって変化してしまった場合には、その調整はできなくなってしまうことが指摘されるに到った。
【0012】このことから、液晶の直流電圧による分極を完全に回避できるに到らず、その解決が望まれていた。
【0013】本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、液晶の直流電圧による分極を回避できる液晶表示装置を提供することにある。

c「【0017】このため、たとえ液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合に、正極性階調電圧および負極性階調電圧の階調に対する傾きを可変できることから、液晶に電圧の直流成分を印加させることを回避でき、フリッカ、残像の発生を抑制できるようになる。」

d「【0019】実施例1.図2は本発明による液晶表示装置の一実施例を示す等価回路図である。同図は回路図であるが、実際の幾何学的配置に対応して描かれている。
【0020】同図において、透明基板SUB1があり、この透明基板SUB1は液晶を介して他の透明基板SUB2と対向して配置されている。
【0021】前記透明基板SUB1の液晶側の面には、図中x方向に延在しy方向に並設されるゲート信号線GLと、このゲート信号線GLと絶縁されてy方向に延在しx方向に並設されるドレイン信号線DLとが形成され、これら各信号線で囲まれる矩形状の領域が画素領域となり、これら各画素領域の集合によって表示部ARを構成するようになっている。
【0022】各画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)の供給によって駆動される薄膜トランジスタTFTと、この薄膜トランジスタTFTを介して一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される画素電極PIXが形成されている。
【0023】また、画素電極PIXと前記一方のゲート信号線GLと隣接する他方のゲート信号線GLとの間には容量素子Caddが形成され、この容量素子Caddによって、前記薄膜トランジスタTFTがオフした際に、画素電極PIXに供給された映像信号を長く蓄積させるようになっている。
【0024】各画素領域における画素電極PIXは、たとえば液晶を介して対向配置される他方の透明基板SUB2の液晶側の面にて各画素領域に共通に形成された対向電極CT(図示せず)との間に電界を発生せしめるようになっており、これにより各電極の間の液晶の光透過率を制御するようになっている。
【0025】各ゲート信号線GLの一端は透明基板の一辺側(図中左側)に延在され、その延在部は該透明基板SUB1に搭載される半導体集積回路からなる垂直走査駆動回路GDRCのバンプと接続される端子部GTMが形成され、また、各ドレイン信号線DLの一端も透明基板SUB1の一辺側(図中上側)に延在され、その延在部は該透明基板SUB1に搭載される半導体集積回路からなる映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続される端子部DTMが形成されている。」

e「【0041】このように構成されることによって、映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値は図4に示すようになる。
【0042】図中上側の特性は正極性階調電圧を、下側の特性は負極性階調電圧を示し黒表示されるそれらの電圧差は図1に示す電源ΔVBの値に対応するようになっている。
【0043】そして、上記各特性は、図1に示す電源VBPからの電圧を変化することによって、図4の点線に示すように調整するようになる。
【0044】すなわち、正極性および負極性の各階調電圧の最大、最小振幅は変化することなく、その間において比例的にレベルを可変することができるようになる。
【0045】また、この場合、図示していないが、前記対向電極に印加される対向電圧(Vcom)は、正極性階調電圧のうち最低レベルと負極性階調電圧のうち最高レベルの間に位置づけられるように、すなわち、VBPと(VBP-ΔVB)の間に位置づけられるように調整されるようになっている。
【0046】このようにすることによって、たとえ液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合にも、図4に示す正極性階調電圧および負極性階調電圧の各特性を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくすることができるようになる。
【0047】このため、簡単な調整によって、液晶の直流電圧による分極を回避できる構成とすることができる。」

ア 上記a(【0001】)、c(【0017】)の記載から、引用例には、「液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合に、正極性階調電圧および負極性階調電圧の階調に対する傾きを可変することによって、フリッカの発生を抑制できるようにした液晶表示装置」が記載されているということができる。

イ 上記bの「【0002】【従来の技術】この種の液晶表示装置は、‥‥‥ゲート信号線と‥‥‥ドレイン信号線が形成され、これら各信号線に囲まれた領域を画素領域としている。‥‥‥(略)‥‥‥【0007】‥‥‥各ドレイン信号線には正極性の信号電圧および負極性の信号電圧を1フィールド毎に交互に印加するようにして、液晶に直流電圧が長く印加されて分極が生じるのを回避するようにしたいわゆるドット反転駆動を行うものが知られている。【0008】すなわち、正極性の信号電圧は‥‥‥液晶の透過率(表示の明暗)を決定させ、負極性の信号電圧は‥‥‥液晶の透過率(表示の明暗)を決定させるようにしており、これら各電圧の階調に対する関係は対称となっている。
【0009】【発明が解決しようとする課題】しかし、上述したように、‥‥‥該対称性にずれが生じてしまうことがある。‥‥‥(略)‥‥‥【0012】このことから、液晶の直流電圧による分極を完全に回避できるに到らず、その解決が望まれていた。
【0013】本発明は、このような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、液晶の直流電圧による分極を回避できる液晶表示装置を提供することにある。」との記載から、本発明は、液晶の直流電圧による分極を回避するものであるところ(【0013】)、分極は、正極性の信号電圧と負極性の信号電圧の各電圧の階調に対する対称性のずれに起因するものであり(【0008】、【0009】)、対称性のずれを生じさせる液晶表示装置として(【0002】)、正極性の信号電圧および負極性の信号電圧を1フィールド毎に交互に印加するようにして、液晶に直流電圧が長く印加されて分極が生じるのを回避するようにしたいわゆるドット反転駆動を行うもの(【0007】)が挙げられていることから、引用例に記載の本発明の液晶表示装置においても、ドット反転駆動を行う液晶表示装置が対象とされていることは明らかである。
そして、ドット反転駆動とは、1走査線の画素について、隣り合う1画素毎に極性を反転させると共に、1走査線毎にも反転させ、尚且つ1フレーム期間毎にも反転させる方法であるから(例えば、特開2003-255909号公報(段落【0013】-【0016】、図18)、特開2002-108313号公報(段落【0026】-【0027】、図27))、隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させる動作を備えるものである。

したがって、引用例に記載された「液晶表示装置」は「隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させる」ものということができる。

ウ 上記d(【0019】、【0021】)の記載から、引用例には、「液晶表示装置は、x方向に延在しy方向に並設されるゲート信号線GLと、このゲート信号線GLと絶縁されてy方向に延在しx方向に並設されるドレイン信号線DLとが形成され、これら各信号線で囲まれる矩形状の領域が画素領域となり、これら各画素領域の集合によって表示部ARを構成する」ことが記載されているということができる。

エ 上記d(【0022】)の記載から、引用例には、「各画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)の供給によって駆動される薄膜トランジスタTFTと、この薄膜トランジスタTFTを介して一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される画素電極PIXが形成されている」ことが記載されている。

オ 上記d(【0024】)の記載から、引用例には、「各画素領域における画素電極PIXは、各画素領域に共通に形成された対向電極CTとの間に電界を発生せしめるようになっており、これにより各電極の間の液晶の光透過率を制御するようになっている」ことが記載されている。

カ 上記d(【0025】)の記載から、引用例には、「各ゲート信号線GLの一端は垂直走査駆動回路GDRCのバンプと接続され、また、各ドレイン信号線DLの一端も映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続され」ることが記載されている。

キ 上記e(【0046】)の記載から、引用例には、「液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合にも、正極性階調電圧および負極性階調電圧の各特性を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことが記載されている。
そして、上記eの「【0041】‥‥‥映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値‥‥‥」との記載から、調整される正極性階調電圧および負極性階調電圧の各特性は、映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値の特性であるといえるから、引用例には、「液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合にも、映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことが記載されているということができる。

ク したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしキを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、引用発明という。)。

「液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合に、正極性階調電圧および負極性階調電圧の階調に対する傾きを可変することによって、フリッカの発生を抑制できるようにした液晶表示装置であって、
液晶表示装置は、
隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させるものであり、
x方向に延在しy方向に並設されるゲート信号線GLと、このゲート信号線GLと絶縁されてy方向に延在しx方向に並設されるドレイン信号線DLとが形成され、これら各信号線で囲まれる矩形状の領域が画素領域となり、これら各画素領域の集合によって表示部ARを構成し、
各画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)の供給によって駆動される薄膜トランジスタTFTと、この薄膜トランジスタTFTを介して一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される画素電極PIXが形成されており、
各画素領域における画素電極PIXは、各画素領域に共通に形成された対向電極CTとの間に電界を発生せしめるようになっており、これにより各電極の間の液晶の光透過率を制御するようになっており、
各ゲート信号線GLの一端は垂直走査駆動回路GDRCのバンプと接続され、また、各ドレイン信号線DLの一端も映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続されており、
液晶表示装置の製造バラツキが生じている場合にも、映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする
液晶表示装置。」


3 対比

本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「フリッカの発生を抑制できるようにした液晶表示装置」は、「表示部AR」のフリッカの発生を抑制できるようにしたものと捉えることができ、ここで、「表示部AR」の「フリッカの発生」の「抑制」は、「映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことによりなされるものである。
そして、「フリッカ」は「ちらつき」ということができ、また、「表示部AR」をディスプレイパネルで構成することは常套手段であるから、引用発明の「フリッカの発生を抑制できるようにした液晶表示装置」における「映像信号駆動回路DDRC」は、本願補正発明の「ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路」に相当する。

(2)引用発明は、「各ゲート信号線GLの一端は垂直走査駆動回路GDRCのバンプと接続され」、「各画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)」が「供給」されるものであり、ここで、「垂直走査駆動回路GDRC」において走査信号を生成することは常套手段であり、また、引用発明は、「画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)の供給によって駆動される薄膜トランジスタTFTと、この薄膜トランジスタTFTを介して」「画素電極PIXが形成され」るものであるから、画素領域は、画素構造が形成される領域と捉えることができ、垂直走査駆動回路GDRCからの複数の走査信号が、複数の画素構造を走査しているということができる。
したがって、引用発明の「各画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)」が「供給」される「垂直走査駆動回路GDRC」は、本願発明の「走査駆動回路であって、複数の走査信号を生成し、該ディスプレイパネルのこれら複数の画素構造を走査する、上記走査駆動回路」に相当する。

(3)引用発明は、「各ドレイン信号線DLの一端」は「映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続され」、「各画素領域には」、「一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される」ものであり、ここで、「映像信号駆動回路DDRC」が映像信号を生成することは常套手段である。
そして、引用発明は「画素領域には、一方のゲート信号線GLからの走査信号(電圧)の供給によって駆動される薄膜トランジスタTFTと、この薄膜トランジスタTFTを介して一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される画素電極PIXが形成され」るものであって、「映像信号」はデータ信号と捉えることができ、また、「映像信号」は走査信号により走査されるときに「各画素領域」に伝送されることは明らかであり、画素領域は、画素構造が形成される領域と捉えることができる(上記(2))から、引用発明は、映像信号駆動回路DDRCからの複数の映像信号が、複数の画素構造が走査されるとき複数の画素構造に伝送されるということができる。
したがって、引用発明の、「各画素領域には」「一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される」「映像信号駆動回路DDRC」は、本願発明の「データ駆動回路であって、複数のデータ信号を生成し、これら画素構造が走査される時、これらデータ信号をこれら画素構造に伝送する、上記データ駆動回路」に相当する。

(4)引用発明は、「各ドレイン信号線DLの一端」は「映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続され」、「各画素領域には」、「一方のドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給され」、「隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させる」ものということができ、ここで、「反転駆動」は映像信号駆動回路DDRCからの映像信号が画素に伝送されることによってなされることは明らかであるから、引用発明の「映像信号駆動回路DDRC」からの「映像信号」によって「隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させる」ことは、本願発明の「該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送」することに相当する。

(5)
ア 引用発明は、「隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させるものであ」って、「映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ものである。

イ ここで、引用発明の「対向電圧(Vcom)」については、「各画素領域における画素電極PIXは、各画素領域に共通に形成された対向電極CTとの間に電界を発生せしめるようになって」おり、各画素領域に共通に形成された対向電極CTに印加する電圧ということができるから共同電圧ということができ、本願発明の「共同電圧」に相当する。

ウ また、引用発明の「映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値を調整する」ことは、「映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続され」た「ドレイン信号線DL」に供給される「画像信号(電圧)」の階調順位を調整するものということができるから、本願発明の「データ信号の準位を調整する」ことに相当する。

エ 引用発明の「前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことにおいて、「各階調における正極性電圧および負極性電圧」は、「映像信号駆動回路DDRCのバンプと接続され」た「ドレイン信号線DLからの映像信号(電圧)が供給される画素電極PIX」に印加されるものであって、画素電極PIXに印加される電圧は、保存電圧と捉えることができ、また、「対向電圧」は共同電圧ということができる(上記イ)。
したがって、引用発明の「前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことは、本願発明の「保存電圧を、」「画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整する」ことに相当する。

オ そして、引用発明は、「正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」調整を、「各階調にお」いて行うものであるから、同じ階調の場合には、すなわち、同じグレーレベルを表示させる時には、正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値が等しくされているということができる。

カ また、引用発明は、「隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させるもの」であるから、映像信号駆動回路DDRCが、画像信号を隣り合う画素に伝送することは明らかである。

キ したがって、引用発明の、「隣り合う1画素毎に極性を反転駆動させるもの」において、「映像信号駆動回路DDRCに供給される正極性階調電圧と負極性階調電圧のそれぞれの階調に対する電圧値を調整するとともに、前記対向電圧(Vcom)を所定の値に設定することによって、各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことは、本願発明の「該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送し、隣り合うこれら画素構造に同じグレーレベルを表示させる時、該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を調整することで、これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償し、隣り合うこれら画素構造のこれら保存電圧を、これら画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整する」ことに相当する。

すると、本願補正発明と引用発明とは、次の<一致点>及び<相違点>を有する。

<一致点>
「ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路において、該駆動回路は隣り合う複数の画素構造の複数の保存電圧が共同電圧に関して非対称となるのを補償し、該駆動回路は、
走査駆動回路であって、複数の走査信号を生成し、該ディスプレイパネルのこれら複数の画素構造を走査する、上記走査駆動回路と、
データ駆動回路であって、複数のデータ信号を生成し、これら画素構造が走査される時、これらデータ信号をこれら画素構造に伝送する、上記データ駆動回路と、
を包含し、該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送し、隣り合うこれら画素構造に同じグレーレベルを表示させる時、該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を調整することで、隣り合うこれら画素構造のこれら保存電圧を、これら画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整することを特徴とする、ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路。」

<相違点>
隣り合うこれら画素構造のこれら保存電圧を、これら画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整することについて、本願発明は、「これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償」するものであるのに対し、引用発明はこのような特定がない点。

4 判断

<相違点>について
液晶表示装置において、スイッチングトランジスタの寄生容量が形成するシフト電圧により正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する電圧が非対称となってちらつき(フリッカ)が生じることは周知である(例えば、特開2011-209388号公報(「【0003】通常の液晶装置では、液晶層が交流駆動されている。液晶層を交流駆動するには、例えば、対向電極を所定の対向電極電位に保持しておき、連続する2フレームの期間で画素電極の電位を対向電極電位に対する高電位(正極性)と低電位(負極性)とに切替える。‥‥‥【0004】電荷の偏りを減らすと、電荷の偏りにより液晶層に印加される直流電圧成分を減らすことができ、表示不具合の発生を抑制することができる。すなわち、正負極性の電気量のバランスが直流電圧成分により崩れることが抑制され、正負極性の期間で液晶装置の透過率が変化することに起因する表示画像のちらつき(フリッカー)を生じにくくなる。‥‥‥【0005】ところで、対向電極電位と高電位との電位差を、対向電極電位と低電位との電位差と同じにして液晶装置を駆動すると、直流電圧成分が発生してしまうことが知られている。‥‥‥【0006】‥‥‥直流電圧成分の発生については、スイッチング素子の寄生容量に起因する画素電極の電位の変動量を予め測定あるいは推定しておき、この変動量による正負極性の電気量の変動を打ち消すように対向電極電位を設定すれば、解消可能である。‥‥‥」)、特開2005-128101号公報(「【0003】液晶表示装置の画素を駆動するスイッチング素子51(nチャネルのMOSトランジスタ)のドレイン端子には、蓄積容量52と液晶層53が接続され、蓄積容量52と液晶層53の他方の端子は、液晶層53の画素電極に対向して配置された対向電極(図示せず)につながる共通電極線56に接続される。‥‥‥【0009】この画素電極59には、スイッチング素子51がONの時に、画像信号Vsが書き込まれる。ところが、スイッチング素子51がOFFになると、スイッチング素子51のゲート-ドレイン間に存在する寄生容量60により、Dに示すように画素電極電位Cに突き抜け電圧ΔVが生じ、画素電極59とその対向する電極との間に直流電圧成分が印加されてしまう。‥‥‥【0011】この突き抜け電圧ΔVを無視して、対向電極電位Vcomを画像信号の中心値Vsigcに設定してしまうと、交流駆動している液晶に印加される電圧について高電位側と低電位側で電位差が生じ、ちらつき(フリッカー)や焼付けが生じることとなる。」))。

そして、引用発明においても、薄膜トランジスタTFT(スイッチングトランジスタ)の寄生容量が存在し、その影響を考慮すべきことはいうまでもないことであるから、寄生容量が存在する場合における前記周知な事項を適用し、「各階調における正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する絶対値をそれぞれ等しくする」ことで、薄膜トランジスタTFT(スイッチングトランジスタ)の寄生容量が形成するシフト電圧により正極性電圧および負極性電圧の対向電圧に対する電圧が非対称となって生じるちらつき(フリッカ)が抑制されるようにすることは、当業者が容易に想到し得ることである。
よって、引用発明において、薄膜トランジスタの寄生容量が形成するシフト電圧を補償するようにすることは、当業者が容易になし得る事項である。

したがって、本願補正発明の<相違点>に係る構成とすることは格別なことではなく、また、本願補正発明が奏する効果は引用発明及び周知な事項から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び周知な事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 本件補正についてのむすび

以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について

1 本願発明

平成28年2月2日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2[理由]1」の本件補正前の「請求項1」として記載した、次のとおりのものである。

「ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路において、
走査駆動回路であって、複数の走査信号を生成し、該ディスプレイパネルの複数の画素構造を走査する、上記走査駆動回路と、
データ駆動回路であって、複数のデータ信号を生成し、これら画素構造が走査される時、これらデータ信号をこれら画素構造に伝送する、上記データ駆動回路と、
を包含し、該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送し、隣り合うこれら画素構造に同じグレーレベルを表示させる時、該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を、これら画素構造の共同電圧に関して非対称から対称に調整することを特徴とする、ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路。」

2 引用例

原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2[理由]2 引用例及びその記載事項(1)」に記載したとおりである。

3 対比・判断

上記「第2[理由]3 対比」を踏まえて本願発明と引用発明とを対比する。

本願発明は、上記「第2」で検討した本願補正発明の「該駆動回路は隣り合う複数の画素構造の複数の保存電圧が複数のトランジスタの複数の寄生容量の影響を受けて共同電圧に関して非対称となるのを補償し、」との限定を削除し、本願補正発明の「該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を調整することで、これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償し、隣り合うこれら画素構造のこれら保存電圧を、これら画素構造の該共同電圧に関して非対称から対称に調整する」との特定事項から、「これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償」するとの事項を削除し、「該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を、これら画素構造の共同電圧に関して非対称から対称に調整する」と上位概念にするものである。

そうすると、本願発明は、本願補正発明から「これらトランジスタのこれら寄生容量が形成するシフト電圧を補償」するとの事項を削除するものであるから、本願補正発明と引用発明との<相違点>(上記「第2[理由]3 対比」)は、本願発明と引用発明の相違点ではない。

よって、本願発明と引用発明との一致点は、本願補正発明についての<一致点>(上記「第2[理由]3 対比」)に対応する、次のとおりのものとなる。

「ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路において、
走査駆動回路であって、複数の走査信号を生成し、該ディスプレイパネルの複数の画素構造を走査する、上記走査駆動回路と、
データ駆動回路であって、複数のデータ信号を生成し、これら画素構造が走査される時、これらデータ信号をこれら画素構造に伝送する、上記データ駆動回路と、
を包含し、該データ駆動回路がこれらデータ信号を隣り合うこれら画素構造に伝送し、隣り合うこれら画素構造に同じグレーレベルを表示させる時、該データ駆動回路は隣り合うこれら画素構造のこれらデータ信号の準位を、これら画素構造の共同電圧に関して非対称から対称に調整することを特徴とする、ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路。」

したがって、本願発明は引用発明である。

4 むすび

以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-09-13 
結審通知日 2016-09-20 
審決日 2016-10-19 
出願番号 特願2013-57120(P2013-57120)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G09G)
P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 537- Z (G09G)
P 1 8・ 113- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 武田 悟  
特許庁審判長 清水 稔
特許庁審判官 酒井 伸芳
関根 洋之
発明の名称 ちらつき除去可能なディスプレイパネルの駆動回路  
代理人 あいわ特許業務法人  

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