• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H04W
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H04W
管理番号 1325681
審判番号 不服2016-8048  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-01 
確定日 2017-04-03 
事件の表示 特願2014-167190「空間多重を使用したマルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス(MBMS)」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 1月15日出願公開、特開2015- 8511、請求項の数(15)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1.手続の経緯
本願は、平成21年(2009年)3月20日(パリ条約による優先権主張 2008年3月21日(US)アメリカ合衆国)を国際出願日とする特願2011-500310号の一部を平成25年7月16日に新たに特許出願した特願2013-147527号、その特願2013-147527号の一部を新たに特許出願したものであって、手続の概要は以下のとおりである。

平成26年 8月20日 特許出願
平成26年 8月20日 手続補正書
平成27年 7月 7日 拒絶理由通知
平成27年10月 2日 意見書、手続補正書
平成28年 1月28日 拒絶査定
平成28年 6月 1日 審判請求
平成29年 2月 7日 拒絶理由通知
平成29年 2月16日 手続補正書


第2.特許請求の範囲の記載
本願の特許請求の範囲の記載は、平成29年2月16日付けの手続補正書の特許請求の範囲に記載された以下のとおりのものである。

「 【請求項1】
第1のMBMS地帯にサービスを提供する1つ以上の第1の基地局であって、前記1つ以上の第1の基地局が前記第1のMBMS地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された1つ以上の第1の基地局と、
第2のMBMS地帯にサービスを提供する1つ以上の第2の基地局であって、前記1つ以上の第2の基地局が前記第2のMBMS地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された1つ以上の第2の基地局とを備え、
前記第1と第2のMBMS地帯に位置する複数のユーザ・エレメントは、前記1つ以上の第1の基地局が第1のMBMS地帯に属すると識別する前記1つ以上の第1の基地局によって送信された情報と、前記1つ以上の第2の基地局が第2のMBMS地帯に属すると識別する前記1つ以上の第2の基地局によって送信された情報とに基づいて、前記第1と第2のMBMS地帯の間のハンドオフをいつ行うか判定することができ、
マルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャストサービス(MBM
S)を供給する無線通信システム。
【請求項2】
前記1つ以上の第1の基地局はさらに、SM地帯内に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントに、前記1つ以上の第1の基地局が前記SM地帯に属すると識別する情報を送信するように構成され、
前記1つ以上の第2の基地局はさらに、非SM地帯内に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントに、前記1つ以上の第2の基地局が前記非SM地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された、
請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記SM地帯に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントは、前記1つ以上の第1の基地局からの、前記1つ以上の第1の基地局が前記SM地帯に属すると識別する情報の受信に呼応してSM受信モードに入り、前記非SM地帯に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントは、前記1つ以上の第2の基地局からの、前記1つ以上の第2の基地局が前記非SM地帯に属すると識別する情報の受信に呼応して非SM受信モードで動作する、請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
共通のパイロット・パターンは、第1のMIMOレイヤのための前記1つ以上の第1の基地局と前記1つ以上の第2の基地局とに利用されている、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項5】
空間多重送信方式を使用して高度サービスをブロードキャストしているとき、利用されている1つ以上の追加MIMOに追加の複数のパイロット・シンボル位置が含まれている、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
第1のMBMS地帯には複数の第1の基地局が存在し、前記第1のMBMS地帯に属する第1の基地局を識別する情報を、前記第1の基地局から受信する処理と、
第2のMBMS地帯には複数の第2の基地局が存在し、前記第2のMBMS地帯に属する第2の基地局を識別する情報を、前記第2の基地局から受信する処理と、
前記1の基地局が前記第1のMBMS地帯に属すると識別する、前記第1の基地局によって送信された情報と、前記2の基地局が前記第2のMBMS地帯に属すると識別する、前記第2の基地局によって送信された情報とに基づいて、前記第1のMBMS地帯と前記第2のMBMS地帯との間のハンドオフをいつ行うかを判定する処理と、
を含む方法。
【請求項7】
前記複数の第1の基地局は、SM地帯内に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントに、前記複数の第1の基地局が前記SM地帯に属すると識別する情報を送信するよう適合され、
前記複数の第2の基地局は、非SM地帯内に位置する1つ以上のSMイ
ネーブルされたユーザ・エレメントに、前記複数の第2の基地局が前記非SM地帯に属すると識別する情報を送信するよう適合される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記SM地帯に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントは、前記複数の第1の基地局からの、前記複数の第1の基地局が前記SM地帯に属すると識別する情報の受信に呼応してSM受信モードに入り、前記非SM地帯に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントは、前記複数の第2の基地局からの、前記複数の第2の基地局が前記非SM地帯に属すると識別する情報の受信に呼応して非SM受信モードで動作する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
共通のパイロット・パターンは、第1のMIMOレイヤのための前記複数の第1の基地局と前記複数の第2の基地局によって利用されている、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
空間多重送信方式を使用して高度サービスをブロードキャストしているとき、利用されている1つ以上の追加MIMOに追加の複数のパイロット・シンボル位置が含まれている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
複数の基地局と無線通信を実行するよう構成された無線通信回路と、
前記無線通信回路に結合されたハードウェアプロセッサと、を含むユー
ザ・エレメントであって、
前記ハードウェアプロセッサは、前記無線通信回路と共に動作し、
第1のMBMS地帯には複数の第1の基地局が存在し、前記第1のMBMS地帯に属する第1の基地局を識別する情報を、前記第1の基地局から受信し、
第2のMBMS地帯には複数の第2の基地局が存在し、前記第2のMBMS地帯に属する第2の基地局を識別する情報を、前記第2の基地局から受信し、
前記1の基地局が前記第1のMBMS地帯に属すると識別する、前記第1の基地局によって送信された情報と、前記2の基地局が前記第2のMBMS地帯に属すると識別する、前記第2の基地局によって送信された情報とに基づいて、前記第1のMBMS地帯と前記第2のMBMS地帯との間のハンドオフをいつ行うかを判定する、ように構成されたユーザ・エレメント。
【請求項12】
前記複数の第1の基地局は、SM地帯内に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントに、前記複数の第1の基地局が前記SM地帯に属すると識別する情報を送信するよう適合され、
前記複数の第2の基地局は、非SM地帯内に位置する1つ以上のSMイ
ネーブルされたユーザ・エレメントに、前記複数の第2の基地局が前記非SM地帯に属すると識別する情報を送信するよう適合される、請求項11に記載のユーザ・エレメント。
【請求項13】
前記SM地帯に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントは、前記複数の第1の基地局からの、前記複数の第1の基地局が前記SM地帯に属すると識別する情報の受信に呼応してSM受信モードに入り、前記非SM地帯に位置する1つ以上のSMイネーブルされたユーザ・エレメントは、前記複数の第2の基地局からの、前記複数の第2の基地局が前記非SM地帯に属すると識別する情報の受信に呼応して非SM受信モードで動作する、請求項12に記載のユーザ・エレメント。
【請求項14】
共通のパイロット・パターンは、第1のMIMOレイヤのための前記複数の第1の基地局と前記複数の第2の基地局によって利用されている、請求項12に記載のユーザ・エレメント。
【請求項15】
空間多重送信方式を使用して高度サービスをブロードキャストしているとき、利用されている1つ以上の追加MIMOに追加の複数のパイロット・シンボル位置が含まれている、請求項14に記載のユーザ・エレメント。」

第3.当審の拒絶理由
平成29年2月7日付けで通知した当審の拒絶理由の概要は、特許請求の範囲の請求項の記載が不備のため、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものである。
上記「第2.特許請求の範囲の記載」に記載したように、本願の特許請求の範囲の請求項の記載は、補正によって明確なものとなり、当審の拒絶理由は解消した。

第4.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、本願の請求項1-15に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。

1.米国特許出願公開第2004/0203816号明細書(以下、「引用例1」という。)
2.特表2007-536790号公報(以下、「引用例2」という。)
3.特開2003-32179号公報(以下、「引用例3」という。)
4.国際公開第2008/020736号(以下、「引用例4」という。)

第5.当審の判断
1.引用発明
原査定の拒絶の理由に引用された引用例1には、図面とともに、以下の記載がなされている。

(1)「[0010] It is another object of the present invention to provide an apparatus and method for adapting broadcast service zone IDs to identify zones in which the same broadcast service is available.
[0011] It is yet another object of the present invention to provide a broadcast service apparatus and method for controlling a base station to transmit a broadcast service zone ID to a mobile station (MS) via an overhead message, such that the MS can recognize a broadcast service zone of a corresponding area.

[0012] In accordance with one aspect of the present invention, the above and other objects can be accomplished by a method for controlling a Mobile Station (MS) to receive BCMCS (Broadcast/Multicast Service) data in a mobile communication system including at least one BCMCS controllers and the MS for receiving the BCMCS data through a BSs (Base stations), comprising the steps of: receiving, from a new BS, a new BCMCS zone ID that is different from a prestored old BCMCS zone ID, while receiving old BCMCS data from an old BS; requesting new BCMCS data to the new BS; establishing a channel with the new BS; receiving a BCMCS information from the new BS; and receiving the new BCMCS data from the new BS using the BCMCS information.」

(当審訳
[0010]本発明の別の目的は、同じブロードキャスト・サービスが得られる区域を識別するブロードキャスト・サービス区域IDを適合させるための装置と方法を提供することである。

[0011]本発明の更に別の目的は、基地局が移動局(MS)に、MSが同じブロードキャスト・サービス区域の範囲であるとわかるように、オーバヘッド・メッセージを介して、ブロードキャスト・サービス区域IDを送信することを制御するための装置と方法を提供することである。

[0012]本発明の一態様によれば、上記及び他の目的は、少なくとも一つのBCMCSコントローラ及びBS(基地局)を介してBCMCSデータを受信するMSを含む移動通信システムにおいて、移動局(MS)がBCMCS(ブロードキャスト/マルチキャスト・サービス)データを受信することを制御する、以下のステップを含む方法により達成される。

旧BSからBCMCSデータを受信する一方で、以前に記憶した旧BCMCS区域IDとは異なる新BCMCS区域IDを、新BSから受信するこ
と、
新BSへ、BCMCSデータを要求すること、
新BSとのチャネルを確立すること、
新BSから、BCMCS情報を受信すること、
BCMCS情報を用いて、新BSから、BCMCSデータを受信するこ
と。)

(2)「[0022] FIG. 1 is a block diagram illustrating a broadcast service system in accordance with the present invention. Referring to FIG. 1 , a BCMCS (Broadcast/Multicast Service Server or Contents Server) server 120 generates broadcast data including video and sound data used for a broadcast service in the form of a compressed IP (Internet Protocol) packet. The broadcast data in the compressed IP is transmitted to a plurality of base stations (BSs) 150 a , 150 b , 150 c , and 150 d over PDSNs (Packet Data Service Nodes) 140 a and 140 b included in a packet communication network such as the Internet.

[0023] The BSs 150 a , 150 b , 150 c , and 150 d each include a BTS (Base Transceiver Subsystem), a BSC (Base Station Controller), and a PCF (Packet Control Function) module. A second BCMCS controller 110 b , which is connected to a first BCMCS controller 110 a , controls communication between the BCMCS server 120 and the MSs 160 a and 160 b , and performs some functions between an air interface and a RAN (Radio Access Network) to implement a desired broadcast service. Although the present invention discloses only one BCMCS server 120 for the convenience of description, it should be noted that the present invention can also use a plurality of BCMCS servers.
……

[0027] The BSs 150 a , 150 b , 150 c , and 150 d require information associated with broadcast service zone IDs for identifying the BCMCS controller zone in which either of the MSs 160 a and 160 b is positioned. The requisite information is shown below in Table 1.

TABLE 1 Field Length(Bits) BCMCS_SUPPORT 1 BCMCS_ZONE_ID 0 or 8

[0028] With reference to Table 1, the BCMCS_SUPPORT field indicates whether a broadcast/multicast service of 1 bit is supported. If it a corresponding cell can support the broadcast/multicast service, the BCMCS_SUPPORT field is set to #1#. However, if a corresponding cell cannot support the broadcast/multicast service, the BCMCS_SUPPORT field is set to #0#. The BCMCS_ZONE_ID field identifies a broadcast service zone ID, and is comprised of 8 bits when the BCMCS_SUPPORT field is set to #1#. Additionally, the BCMCS_ZONE_ID indicates zone ID information of a BCMCS controller controlling a current broadcast service.」

(当審訳
[0022]図1は、本発明に基づくブロードキャスト・サービス・システムを説明するブロック図である。図1によれば、BCMCS(ブロードキャスト/マルチキャスト・サービス・サーバまたはコンテンツ・サーバ)サーバ120は、圧縮したIP(インターネット・プロトコル)パケット形式でブロードキャスト・サービスに使用する、映像及び音声データを含むブロードキャスト・データを生成する。圧縮したIPのブロードキャスト・データは、複数の基地局(BSs)150a、150b、150c、及び150dに、インターネットのようなパケット通信ネットワークに含まれるPDSNs(パケット・データ・サービス・ノード)140a及び140bを介して送られる。

[0023]BS150a、150b、150c、及び150dはそれぞ
れ、BTS(ベース・トランシーバ・サブシステム)、BSC(基地局コントローラ)、及びPCF(パケット制御機能)モジュールを含む。第1BCMCSコントローラ110aに接続された第2BCMCSコントローラ110bは、BCMCSサーバ120とMS160a及び160bとの間の通信を制御し、希望されるブロードキャスト・サービスの実施のためにエア・インタフェースとRAN(無線アクセスネットワーク)との間のいくつかの機能を実行する。本発明は、説明の便宜上ただ一つのBCMCSサーバ120を開示するが、本発明は複数のBCMCSサーバを用いることができる点に留意すべきである。

……

[0027]BS150a、150b、150c、及び150dは、MS160a及び160bのいずれかが位置するBCMCSコントローラ区域を識別するため、ブロードキャスト・サービス区域IDに関連した情報を必要とする。必要な情報を下記の表1に示す。

表1 フィールド 長さ(ビット) BCMCS_SUPPORT 1 BCMCS_ZONE_ID 0 or 8

[0027]表1を参照すると、BCMCS_SUPPORTフィールド
は、1ビットで、ブロードキャスト/マルチキャスト・サービスがサポートされることを示す。通信するセルが、ブロードキャスト/マルチキャスト・サービスをサポート可能であれば、BCMCS_SUPPORTフィールドは、「1」にセットされる。しかしながら、通信するセルが、ブロードキャスト/マルチキャスト・サービスをサポート不可能であれば、BCMCS_SUPPORTフィールドは、「0」にセットされる。BCMCS_ZONE_IDフィールドは、ブロードキャスト・サービス区域IDを識別し、BCMCS_SUPPORTフィールドは、「1」にセットされていると、8ビットに構成される。さらに、BCMCS_ZONE_IDは、現在のブ
ロードキャスト・サービスを制御しているBCMCSコントローラの区域ID情報を示す。)

(3)「[0043] FIG. 4 is a flow chart illustrating a call control procedure in which a mobile station (MS) receives the same BCMCS content information in a new BCMCS zone as was received in the previous BCMCS zone in accordance with a third preferred embodiment of the present invention. Referring to FIG. 4 , at step 400 , the MS 160 has received BCMCS data or currently receives the BCMCS data. The MS 160 receives a changed BCMCS zone ID "BCMCS_ZONE_ID" through the BSPM at step 410 , such that it can recognize that the BCMCS zone is changed to another zone. The MS 160 informs the new BS 150 a of the BCMCS zone conversion, and indicates that a current mode is handed off to the second BCMCS controller 110 b over the new PDSN 140 a at step 420 . More specifically, the MS 160 transmits a registration message including a previous BCMCS zone ID "BCMCS_ZONE_ID" to the new BS 150 a to indicate the BCMCS zone conversion at step 421 . The new BS 150 a transmits a BCMCS zone handoff command message "Inter-BCMCS Zone Handoff" to the new PDSN 140 a at step 422 . The new PDSN 140 a transmits the received Inter-BCMCS Zone Handoff message to the second BCMCS controller 110 b functioning as the new BCMCS controller at step 423 . As a result, the new PDSN 140 a and the second BCMCS controller 110 b can recognize a handoff state of the MS 160 .
……
[0047] Thereafter, the MS 160 recognizes that there is no change in the BCMCS contents, and transmits, at step 440 , a registration message to the new BS 150 a so as to receive BCMCS data using its own current information. The MS 160 performs the same operation as described in step 350 of FIG. 3 , and continues to receive the BCMCS data at step 450 .」

(当審訳
[0043]図4は、本発明の第3実施例に基づいた、移動局(MS)が、以前のBCMCS区域で受信したものと同じBCMCSコンテンツ情報を、新BCMCS区域で受信する、呼制御処理を示す、フローチャートである。図4において、ステップ400で、MS160は、BCMCSデータを受信したか、現在受信中である。MS160は、ステップ410で、BSPMを介して、変化したBCMCS区域ID「BCMCS_ZONE_ID」を受信して、それによって、BCMCS区域が別の区域に変わったことを認識する。MS160は、ステップ420で、新BS150aにBCMCS区域の変更を通知し、PDSN140aの上位の第2BCMCSコントローラ110bに、現在のモードがハンドオフであると示す。より詳細には、MS160は、ステップ421で、新BS150aにBCMCS区域の変更を示すために、以前のBCMCS区域ID「BCMCS_ZONE_ID」を含んだ登録メッセージを送信する。
新BS150aは、ステップ422で、BCMCS区域ハンドオフ命令メッセージ「Inter-BCMCS Zone Handoff」を送信す
る。新PDSN140aは、ステップ423で、受信したBCMCS区域間ハンドオフ・メッセージを、新BCMCSコントローラとして機能する第2BCMCSコントローラ110bに、送信する。その結果、新PDSN140a及び第2BCMCSコントローラ110bは、MS160のハンドオフ状態を認識できる。
……
[0047]その後、MS160はBCMCSコンテンツに変化がないことを認識し、ステップ440で、自身の現在の情報を用いてBCMCSデータを受信するために、登録メッセージを新BS150aに送信する。MS160は図3のステップ350と同様の処理を実行し、ステップ450で、BCMCSデータの受信を続ける。)

したがって、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

少なくとも一つのBCMCSコントローラ及びBS(基地局)を介してBCMCSデータを受信するMSを含む移動通信システムにおいて、移動局
(MS)がBCMCS(ブロードキャスト/マルチキャスト・サービス)
データを受信する制御において、
旧BSからBCMCSデータを受信する一方で、以前に記憶した旧BCMCS区域IDとは異なる新BCMCS区域IDを、新BSから受信し、それによって、BCMCS区域が別の区域に変わったことを認識すること、
新BSへ、現在のモードがハンドオフであると示し、BCMCSデータを要求すること、
新BSとのチャネルを確立すること、
新BSから、BCMCS情報を受信すること、
BCMCS情報を用いて、新BSから、BCMCSデータを受信すること
を特徴とする移動通信システム。

2.対比
本願の請求項1-15に係る発明は、その特許請求の範囲の請求項1-15に記載された事項により特定されるとおりのものである。
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)と引用発明とを対比する。

(1)引用発明は、「旧BSからBCMCSデータを受信する一方で、以前に記憶した旧BCMCS区域IDとは異なる新BCMCS区域IDを、新BSから受信し、それによって、BCMCS区域が別の区域に変わったことを認識すること」とするものであるから、「旧BS」は「旧BCMCS区域」に、「新BS」は「新BCMCS区域」に属していることを示しているといえる。
引用発明は明示的な記載はないが、「新BCMCS区域ID」を「新B
S」から受信するのと同様に、「旧BCMCS区域ID」は「旧BS」から受信したものであることは明らかであり、「新BS」は「新BCMCS区域ID」を送信し、「旧BS」は「旧BCMCS区域ID」を送信することを示しているといえる。
引用発明は、「旧BSからBCMCSデータを受信する」とあるから、
「旧BS」は「BCMCSデータ」を送信するものであり、「旧BCMCS区域」に送信することは当然のことである。
引用発明は、「新BSから、BCMCSデータを受信すること」とあるから、「新BS」は「BCMCSデータ」を送信するものであり、「新BCMCS区域」に送信することは当然のことである。
MBMSはブロードキャスト/マルチキャスト・サービスの一種であるから、本願発明と引用発明とは、
第1のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯にサービスを提供する1つ以上の第1の基地局であって、前記1つ以上の第1の基地局が前記第1のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された1つ以上の第1の基地局と、
第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯にサービスを提供する1つ以上の第2の基地局であって、前記1つ以上の第2の基地局が前記第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された1つ以上の第2の基地局とを備え、
とする点で共通するといえる。

(2)引用発明は、「以前に記憶した旧BCMCS区域IDとは異なる新BCMCS区域IDを、新BSから受信し、それによって、BCMCS区域が別の区域に変わったことを認識すること」とし、その後に「新BSへ、現在のモードがハンドオフであると示し」とするので、「新BCMCS区域I
D」を受信することで、ハンドオフを行うことを決定しているといえ、「BCMCS区域が別の区域に変わったことを認識すること」としていることからも明らかなように、このハンドオフは「旧BCMCS区域」から「新BCMCS区域」へのハンドオフである。
また、上記のようにMBMSはブロードキャスト/マルチキャスト・サービスの一種であるから、本願発明と引用発明とは、
第1と第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に位置する複数のユーザ・エレメントは、1つ以上の第2の基地局が第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する前記1つ以上の第2の基地局によって送信された情報に基づいて、第1と第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯の間のハンドオフをいつ行うか判定することができ、
とする点で共通するといえる。

(3)引用発明と本願発明とは、ブロードキャスト/マルチキャスト・サービスを供給する無線通信システムである点で共通するといえる。

したがって、本願発明と引用発明とを対比すると、以下の点で一致し、また相違する。

一致点
第1のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯にサービスを提供する1つ以上の第1の基地局であって、前記1つ以上の第1の基地局が前記第1のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された1つ以上の第1の基地局と、
第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯にサービスを提供する1つ以上の第2の基地局であって、前記1つ以上の第2の基地局が前記第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する情報を送信するように構成された1つ以上の第2の基地局とを備え、
第1と第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に位置する複数のユーザ・エレメントは、1つ以上の第2の基地局が第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する前記1つ以上の第2の基地局によって送信された情報に基づいて、第1と第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯の間のハンドオフをいつ行うか判定することができ、
ブロードキャスト/マルチキャストサービスを供給する無線通信システ
ム。

相違点1
本願発明は、ブロードキャスト/マルチキャストサービスがマルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャストサービス(MBMS)であるのに対して、引用発明は、マルチメディアのサービスであるか否か明らかでない
点。

相違点2
本願発明は、ハンドオフをいつ行うかの判定を、「1つ以上の第2の基地局が第2のブロードキャスト/マルチキャスト・サービス地帯に属すると識別する前記1つ以上の第2の基地局によって送信された情報」だけでなく、「1つ以上の第1の基地局が第1のMBMS地帯に属すると識別する前記1つ以上の第1の基地局によって送信された情報」にも基づいて行うのに対して、引用発明は「1つ以上の第1の基地局が第1のMBMS地帯に属すると識別する前記1つ以上の第1の基地局によって送信された情報」に対応する「旧BCMCS区域ID」に基づくことについては特定がない点。

3.判断
上記相違点2について検討する。
引用発明は、「以前に記憶した旧BCMCS区域IDとは異なる新BCMCS区域IDを、新BSから受信し、それによって、BCMCS区域が別の区域に変わったことを認識すること」とするものであるから、「新BCMCS区域ID」を受信するだけで、「旧BCMCS区域ID」を受信する必要はないものである。
また、引用例2-4、及び拒絶査定で示された周知例1、2にも、上記相違点2を本願発明のようにすることは、記載も示唆もされていない。
したがって、引用発明において、ブロードキャスト/マルチキャストサービスをマルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャストサービスとすることが、容易にできることであるとしても、本願発明は、引用発明、引用例2-4、及び拒絶査定で示された周知例1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
請求項6に係る発明は本願発明に対応する方法の発明であり、請求項11に係る発明は本願発明に対応するユーザ・エレメントの発明であり、請求項2-5は請求項1を引用するもので、請求項7-10は請求項6を引用するもので、請求項12-15は請求項11を引用するものであるから、他の請求項に係る発明についても同様である。

第5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1-15に係る発明は、引用例1-4に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることができないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-17 
出願番号 特願2014-167190(P2014-167190)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H04W)
P 1 8・ 121- WY (H04W)
最終処分 成立  
前審関与審査官 ▲高▼橋 徳浩望月 章俊  
特許庁審判長 近藤 聡
特許庁審判官 加藤 恵一
山本 章裕
発明の名称 空間多重を使用したマルチメディア・ブロードキャスト・マルチキャスト・サービス(MBMS)  
代理人 大塚 文昭  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 弟子丸 健  
代理人 西島 孝喜  
代理人 越柴 絵里  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ