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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 G03G
管理番号 1325684
審判番号 不服2016-6757  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2017-03-28 
事件の表示 特願2015- 14378「画像形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 5月28日出願公開、特開2015- 99383、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成22年6月21日に出願した特願2010-140113号(以下「原出願」という。)の一部を平成27年1月28日に新たな特許出願としたものであって、同年10月26日付けで手続補正がされ、平成28年2月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月9日付けで拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、手続補正がされ、その後、当審において、同年11月17日付けで拒絶の理由を通知したところ、これに対し、平成29年1月19日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願に係る発明は、上記の平成29年1月19日付けの手続補正書によって補正された特許請求の範囲の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認める(以下請求項1乃至請求項9に係る発明を、それぞれ、「本願発明1」乃至「本願発明9」といい、これらを総称して「本願発明」という。)。
「【請求項1】
装置本体と、
トナー像を担持する感光体と、
前記感光体の前記装置本体に対する位置を決める位置決めフレームと、
前記感光体から転写材へトナー像を転写するための無端ベルトと前記無端ベルトの内周面に接触する転写部材と、前記転写部材を支持する支持部材と、前記支持部材を支持する転写フレームと、を備え前記装置本体に対して着脱可能なベルトユニットと、
を有し、前記位置決めフレームは第1係合部を備える画像形成装置において、
前記支持部材は、前記無端ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向において前記転写フレームから突出し前記第1係合部と係合する第2係合部を備え、
前記支持部材は回動軸を中心に回動可能であり、前記回動軸は、前記転写部材よりも前記無端ベルトの移動方向上流側に配置され、
前記回動軸は前記第2係合部であり、前記第1係合部は凹部であり、
前記ベルトユニットを前記装置本体に装着した状態において、前記転写部材は、前記無端ベルトの移動方向に関して前記転写フレームに対して支持されておらず、前記転写部材は、前記装置本体に対する前記移動方向における位置が前記無端ベルトの移動によって前記回動軸が前記凹部の突き当て面に突き当たることで前記位置決めフレームによって決定されることを特徴とする画像形成装置。
【請求項2】
前記感光体はプロセスカートリッジとして前記装置本体に対して着脱可能であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
【請求項3】
前記ベルトユニットは前記無端ベルトを回転駆動する駆動ローラを備え、前記駆動ローラは前記装置本体に対して前記位置決めフレームによって位置決めされることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項4】
前記転写部材は、転写ローラであることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項5】
前記転写部材は、前記転写部材を支持する支持部材に対して回転することなく支持される弾性体であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項6】
前記感光体を前記装置本体の外側で着脱可能な引き出し位置と、前記装置本体の内側で前記感光体に静電潜像を形成できる潜像形成位置と、に移動する移動部材と、
前記感光体を前記無端ベルトから接離可能に前記移動部材をガイドするガイド部材と、前記画像形成装置に開閉可能に支持され、前記移動部材を前記引き出し位置に移動する際に開くカートリッジカバーと、
前記カートリッジカバーを開く動作に連動して、前記ガイド部材が上方に移動し、前記感光体を前記無端ベルトから離間させ、前記移動部材を移動可能とするリンク部材と、を有することを特徴とする請求項2に記載の画像形成装置。
【請求項7】
前記無端ベルトは、前記感光体からトナー像が転写される中間転写ベルトであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項8】
前記無端ベルトは、前記感光体からトナー像が転写される転写材を担持搬送する搬送ベルトであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記感光体は、それぞれが異なる色のトナー像を担持する複数の感光体であり、前記転写部材は、前記複数の感光体に対応して配置される複数の転写部材であることを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載の画像形成装置。」


第3 原査定の理由について
1.原査定の理由の概要
この出願の下記の請求項に係る発明は、その原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1
刊行物1:特開2007-213033号公報
刊行物2:特開2009-204656号公報(周知技術)
・請求項 3、8
刊行物1:特開2007-213033号公報
刊行物2:特開2009-204656号公報(周知技術)
刊行物3:特開2003-43764号公報

2.原査定の理由の判断
(1)刊行物の記載事項
ア.刊行物1
本願の原出願日前の平成19年8月23日に頒布された特開2007-213033号公報(以下「刊行物1」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
電子写真感光体を有するプロセスカートリッジが用いられる電子写真画像形成装置において、
前記電子写真感光体と接触する転写部材であって、前記電子写真感光体から前記転写部材側へトナー像を移動させる転写部材と、
前記プロセスカートリッジが載置されるトレイであって、前記プロセスカートリッジが載置された状態で、前記電子写真感光体を前記転写部材に接触させる接触位置と、前記電子写真感光体を前記転写部材から離間させる離間位置と、を取り得るトレイと、
前記電子写真感光体の軸線方向に沿って見て前記電子写真感光体と前記転写部材との接線と平行な接線方向に移動可能に前記トレイを支持する支持部材であって、前記トレイを前記接触位置に位置させる第一の位置と、前記トレイを前記離間位置に位置させるために前記第一の位置よりも前記転写部材から離れるように、前記接線方向、及び、前記接線方向及び前記軸線方向に対して直交する直交方向、へ退避した第二の位置と、を取り得る支持部材と、
被係合部と、
前記トレイに設けられ、前記トレイが前記接触位置に位置する際に前記転写部材に対して前記接線方向に前記トレイが移動するのを規制するために、前記被係合部と係合する係合部であって、前記支持部材が前記第一の位置から前記第二の位置の方向へ移動する際に、前記被係合部と係合した状態で前記直交方向に前記トレイが移動して前記電子写真感光体が前記転写部材から離間した後に、前記被係合部との係合が解除される係合部と、
を有することを特徴とする電子写真画像形成装置。

【請求項3】
前記トレイは、複数の前記プロセスカートリッジが載置可能であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真画像形成装置。

【請求項5】
前記電子写真画像形成装置は、
開口を有する本体フレームと、
前記開口を閉じる閉じ位置と、前記開口を開放する開放位置と、を取り得る本体ドアと、
を有し、
前記接触位置は、前記本体ドアを前記閉じ位置に位置させた際に、前記本体フレームの内部に位置して前記電子写真感光体に潜像を形成できる潜像形成位置であることを特徴とする請求項1に記載の電子写真画像形成装置。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、プロセスカートリッジを着脱可能であって、記録媒体に画像を形成するための電子写真画像形成装置に関するものである。
【0002】
ここで、電子写真画像形成装置とは、電子写真画像形成方式を用いて記録媒体に画像を形成するものである。そして、電子写真画像形成装置の例としては、例えば電子写真複写機、電子写真プリンタ(例えばレーザービームプリンタ、LEDプリンタ等)、フアクシミリ装置及びワードプロセッサ等が含まれる。
【0003】
また、プロセスカートリッジとは、電子写真感光体と、この電子写真感光体に作用する帯電手段、現像手段等のプロセス手段とを一体的にカートリッジ化し、このカートリッジを画像形成装置本体に対して着脱可能とするものである。
【0004】
前記プロセスカートリッジは、使用者自身によって画像形成装置本体に対する着脱を行うことができるから、装置本体のメンテナンスを容易に行うことができるものである。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の従来技術の構造は、停止位置(III)を含む特定した位置から、引き出し位置(II)へカートリッジ30を押し込む際に、カートリッジ30が位置(II)に位置していなくても、側面カバー(ドア)80を締めることができる。すなわち、ガイド部材71が位置(III)から位置(II)に完全に移動した後でなければ、側面カバー80を締めることができないとの記載はない。
【0007】
そのため、ガイド部材71が位置(III)から位置(II)に完全に移動していない状態で側面カバー80を締められたときに、カートリッジ30が有する電子写真感光体の下面が他物と摺擦してキズやメモリを発生させることが想定される。
【0008】
そこで本発明は、プロセスカートリッジを着脱可能な電子写真画像形成装置において、プロセスカートリッジの電子写真感光体のこすれによるキズ、メモリの発生を抑制することを目的とする。」
(エ)「【0017】
カートリッジPY・PM・PC・PKの下方部には、転写部材としての中間転写ベルトユニット12が配設されている。このベルトユニット12は、中間転写体(第2の像担持体)としての、誘電体製で、可撓性を有するエンドレスベルト13と、このベルト13を懸回張設して循環移動させる駆動ローラ14・ターンローラ15・テンションローラ16と、を有する。駆動ローラ14とテンションローラ16は装置本体内の後側に配設されている。ターンローラ15は装置本体内の前側に配設されている。各カートリッジのドラム1は、その下面が、ベルト13の上行側ベルト部分の上面に接している。ベルト13の内側には、上行側ベルト部分を介して各カートリッジのドラム1に対向させて4個の一次転写ローラ17が配設されている。駆動ローラ14は、ベルト13を介して二次転写ローラ22に当接されている。」
(オ)「【0034】
すなわち、画像形成装置の前面側には、装置本体内へカートリッジを挿入させる、及び、装置本体からカートリッジを取り出すために、カートリッジを通過させる開口30(図2)を設けてある。ここで、装置本体(本体フレーム101)は開口30を有する。」
(カ)「【0078】
装置本体内の右側には、カートリッジ側の駆動入力部53・54(図7)と連結する駆動出力部としての、ドラム駆動カップリング39と現像駆動カップリング40が設けられている。ドラム駆動カップリング39と現像駆動カップリング40は、各カートリッジのドラム1と現像ローラ3aを回転駆動する。
【0079】
また、装置本体内の右側と左側の両側には、それぞれ、各カートリッジ軸受部51、52の下面部分を受け止める位置決め部41が、装置本体の左右のステー部材81L・81R(図24)に設けられている。また、装置本体内の右側と左側の両側には、軸受部51、52を上記の位置決め部41に嵌合させて固定するために、カートリッジの左右側上面をそれぞれ押圧する押圧部材42が設けられている。押圧部材42は、押圧力発生のための押圧バネ43を有する。」
(キ)上記(エ)【0017】の「カートリッジPY・PM・PC・PK」、「転写部材としての中間転写ベルトユニット12」、及び「ドラム1」は、それぞれ、上記(ア)の「(複数の)プロセスカートリッジ」、「転写部材」、及び「電子写真感光体」に対応する。また、上記(オ)より、装置本体は、本体フレームを指すものである。
(ク)上記(カ)及び図24より、位置決め部41は、凹部であることが看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(ク)の記載事項から、刊行物1には、次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。
「電子写真感光体を有するプロセスカートリッジが用いられる電子写真画像形成装置において、
前記電子写真感光体と接触する転写部材であって、前記電子写真感光体から前記転写部材側へトナー像を移動させる転写部材と、
前記プロセスカートリッジが載置されるトレイであって、前記プロセスカートリッジが載置された状態で、前記電子写真感光体を前記転写部材に接触させる接触位置と、前記電子写真感光体を前記転写部材から離間させる離間位置と、を取り得るトレイと、
前記電子写真感光体の軸線方向に沿って見て前記電子写真感光体と前記転写部材との接線と平行な接線方向に移動可能に前記トレイを支持する支持部材であって、前記トレイを前記接触位置に位置させる第一の位置と、前記トレイを前記離間位置に位置させるために前記第一の位置よりも前記転写部材から離れるように、前記接線方向、及び、前記接線方向及び前記軸線方向に対して直交する直交方向、へ退避した第二の位置と、を取り得る支持部材と、
被係合部と、
前記トレイに設けられ、前記トレイが前記接触位置に位置する際に前記転写部材に対して前記接線方向に前記トレイが移動するのを規制するために、前記被係合部と係合する係合部であって、前記支持部材が前記第一の位置から前記第二の位置の方向へ移動する際に、前記被係合部と係合した状態で前記直交方向に前記トレイが移動して前記電子写真感光体が前記転写部材から離間した後に、前記被係合部との係合が解除される係合部と、
を有し、
前記トレイは、複数の前記プロセスカートリッジが載置可能であり、
前記電子写真画像形成装置は、
開口を有する本体フレームと、
前記開口を閉じる閉じ位置と、前記開口を開放する開放位置と、を取り得る本体ドアと、
を有し、
前記接触位置は、前記本体ドアを前記閉じ位置に位置させた際に、前記本体フレームの内部に位置して前記電子写真感光体に潜像を形成できる潜像形成位置であり、
複数のプロセスカートリッジの下方部には、転写部材が配設されており、この転写部材は、中間転写体(第2の像担持体)としての、誘電体製で、可撓性を有するエンドレスベルトと、このベルトを懸回張設して循環移動させる駆動ローラ・ターンローラ・テンションローラと、を有し、ベルトの内側には、上行側ベルト部分を介して各プロセスカートリッジの電子写真感光体に対向させて4個の一次転写ローラが配設され、
本体フレーム内の右側と左側の両側には、それぞれ、各カートリッジ軸受部の下面部分を受け止める凹部である位置決め部が、本体フレームの左右のステー部材に設けられている、記録媒体に画像を形成するための電子写真画像形成装置。」

イ.刊行物2
本願の原出願日前の平成21年9月10日に頒布された特開2009-204656号公報(以下「刊行物2」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
トナー像を担持する像担持体と、前記像担持体を保持する装置本体フレームと、前記装置本体フレームに設けられた位置決め部と、前記位置決め部に係合して装置本体に位置決め装着される着脱可能なベルトユニットとを有し、前記ベルトユニットは、前記像担持体のトナー像を記録材へ転写するためのベルトと、前記ベルトの前記像担持体に対向する面を張架する第1及び第2の張架手段と、前記ベルトを張架し前記ベルトに張力を付与する第3の張架手段と、前記張架手段を保持するベルトフレームとを有する画像形成装置であって、
前記第3の張架手段を前記ベルトに張力を付与する第1の位置から前記ベルトへの張力の付与を解除する第2の位置へ移動させる圧解除手段を有し、
前記圧解除手段により前記第3の張架手段を前記第2の位置へ移動させた状態で、前記第1及び第2の張架手段を前記装置本体フレームの位置決め部に係合して前記ベルトユニットを装置本体に位置決め装着し、その後、前記圧解除手段により前記第3の張架手段を前記第1の位置に移動させて前記ベルトに張力を付与することを特徴とする画像形成装置。」
(イ)「【0025】
前記ベルトユニット125は、装置本体の左右フレームとともに装置本体フレームを構成するフレーム126に設けられた位置決め部126a,126bに係合することにより、装置本体101に位置決めされる。ベルトユニット125を交換する際はカートリッジドア140を開き、カートリッジトレイ144を図4に示すように画像形成装置本体101から取り出した状態で行う。カートリッジトレイ144を取り出した後、ベルトユニット125の手前側を図5に示す矢印方向に持ち上げ、フレーム126の位置決め部126a,126bから外すことにより、ベルトユニット125を装置本体101から前方に取り出すことができる。
【0026】
次にベルトユニット125の位置決め構成について図6及び図7を用いて説明する。図6はベルトユニットと装置本体フレームの位置決め部との関係を示す概略斜視図である。図7はベルトユニットの側面図である。」
(ウ)図2より、転写部材を備えるベルトユニットが看取できる。
(エ)図6より、ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向において、ベルトユニット125から突出した軸受け部105a、及び121aが装置本体フレーム126の位置決め部126a、及び126bに係合する係合構造が看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(エ)の記載事項から、刊行物2には、次の技術事項(以下「周知の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「一般に画像形成装置において、ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向に、転写部材を備え、装置本体に位置決め装着される着脱可能なベルトユニットから突出した軸受け部が装置本体フレームの位置決め部に係合する係合構造。」

ウ.刊行物3
本願の原出願日前の平成15年2月14日に頒布された特開2003-43764号公報(以下「刊行物3」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】 ベルト部材の走行方向に対して垂直方向または交差方向にイメージングユニットを抜き差しできる画像形成装置において、
前記イメージングユニットを抜き差しする際に前記イメージングユニットと前記ベルト部材との干渉を防止するための干渉防止部材を設けたことを特徴とする画像形成装置。

【請求項3】 前記干渉防止部材は、前記イメージングユニットの感光体に前記ベルト部材を介して圧接する転写部材を前記感光体から離隔させるための圧接離隔部材に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。」
(イ)「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば中間転写ベルトのようなベルト部材に対向して配置される着脱自在のイメージングユニットを有する画像形成装置に関する。」
(ウ)「【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、重力の影響により中間転写ベルトが下側に垂れ下がったり、あるいは、中間転写ベルトの多くが樹脂製であることから樹脂成型時の精度のばらつきなどにより中間転写ベルトの端部が波打っている場合には、交換等のメンテナンス時にイメージングユニットを装置に着脱する際に中間転写ベルトとイメージングユニットとが干渉することにより互いに傷が付いたりベルト折れが発生したりして、画像品質の低下をもたらすという問題があった。
【0004】この問題を解決するために、イメージングユニットの着脱時には、まず、中間転写ベルトユニットを大きく持ち上げてイメージングユニットから離隔させるようにした画像形成装置が知られているが、この場合には中間転写ベルトユニットを持ち上げるのに複雑な機構が必要になるだけでなく、各イメージングユニットの感光体に対して高精度に位置決めする必要がある中間転写ベルトを大きく移動させることになるので中間転写ベルトユニットを元の状態に戻したときに位置決め精度が損なわれるおそれがある。」
(エ)「【0024】前記一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kは、以下に説明する離隔機構を備えている。離隔機構は、各一次転写ローラ11Y,11M,11C,11Kについて同様であるため、一次転写ローラ11Mを例にとって説明する。一次転写ローラ11Mは、その両端側において、略L字状レバー(圧接離隔部材)29の一端部に回転可能にそれぞれ軸支されている。レバー29は、中間転写ベルト2用ローラ4,5の両端を回転可能に軸支する2枚のフレーム27(1枚のみ図示)に軸28により回動可能にそれぞれ支持されている。各レバー29とフレーム27の間にはばね31が装着され、レバー29を時計回り方向に付勢している。これにより、一次転写ローラ11Mは、中間転写ベルト2を介して感光体ドラム7Mに圧接されることになる。」
(オ)「【0053】また、前記プリンタ1,50では中間転写ベルトユニットの下側に各イメージングユニットを配置した場合について説明したが、本発明は中間転写ベルトの上側に各イメージングユニットを配置した場合にも適用可能である。」
(カ)【請求項3】の「転写部材」、「圧接離隔部材」、「ベルト部材」、及び「軸」は、それぞれ、【0024】の「一次転写ローラ11M」、「略L字状レバー(圧接離隔部材)29」、「中間転写ベルト2」、及び「軸28」に対応する。
(キ)図1、及び図4より、略L字状レバー(圧接離隔部材)29を回転可能に軸支する軸28が、転写部材(一次転写ローラ)よりも中間転写ベルト2の回転方向上流側に配置されていることが看取できる。

そうすると、上記(ア)乃至(キ)の記載事項から、刊行物3には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されているものと認められる。
「ベルト部材の走行方向に対して垂直方向または交差方向に、中間転写ベルトユニットの下側に配置したイメージングユニットを抜き差しできる画像形成装置において、
前記イメージングユニットを抜き差しする際に前記イメージングユニットと前記ベルト部材との干渉を防止するための干渉防止部材を設け、
前記干渉防止部材は、前記イメージングユニットの感光体に前記ベルト部材を介して圧接する転写部材を前記感光体から離隔させるための圧接離隔部材に設けられ、
転写部材は、その両端側において、圧接離隔部材の一端部に回転可能にそれぞれ軸支され、圧接離隔部材は、ベルト部材用ローラの両端を回転可能に軸支する2枚のフレームに軸により回動可能にそれぞれ支持され、
圧接離隔部材を回転可能に軸支する軸が、転写部材よりもベルト部材の回転方向上流側に配置されている画像形成装置。」

(2)対比
そこで、本願発明1と引用発明1とを対比すると、
ア.後者の「トナー像」、「電子写真感光体」、「記録媒体」、「エンドレスベルト」、「一次転写ローラ」、「電子写真画像形成装置」は、それぞれ、前者の「トナー像」、「感光体」、「転写材」、「無端ベルト」、「転写部材」、「画像形成装置」に相当する。
イ.電子写真画像形成装置の技術において、「電子写真感光体」が「トナー像」を担持することは明らかであるし、「エンドレスベルト」は、中間転写体(第2の像担持体)として機能を有するものであるから、後者の「エンドレスベルト」は、「感光体から転写材へトナー像を転写するための無端ベルト」といえる。
ウ.後者の「本体フレーム」は、前者の「装置本体」に相当し、また、その右側と左側の両側には、それぞれ、各カートリッジ軸受部の下面部分を受け止める位置決め部が、左右のステー部材に設けられているものであって、カートリッジは電子写真感光体を有するものであるから、後者の「本体フレーム」は、「感光体の装置本体に対する位置を決める位置決めフレーム」といえる。
エ.後者の「一次転写ローラ」は、ベルトの内側に配設されるものであるから、「無端ベルトの内周面に接触する転写部材」といえる。
オ.後者の「転写部材」は、「転写部材としての中間転写ベルトユニット12」に対応するものであるから「ベルトユニット」といえる。
カ.後者の「位置決め部」は、本体フレームに設けられ、凹部であるから、前者の「第1係合部(凹部)」に相当し、「位置決めフレームは第1係合部を備える」といえる。
キ.後者の「各カートリッジ軸受部」は、位置決め部により、下面部分を受け止められ、回動することは明らかであるから、「第2係合部(回動軸)」といえる。

したがって、両者は、
「装置本体と、
トナー像を担持する感光体と、
前記感光体の前記装置本体に対する位置を決める位置決めフレームと、
前記感光体から転写材へトナー像を転写するための無端ベルトと前記無端ベルトの内周面に接触する転写部材と、ベルトユニットと、
を有し、前記位置決めフレームは第1係合部を備える画像形成装置において、
前記第1係合部と係合する第2係合部を備え、
前記回動軸は前記第2係合部であり、前記第1係合部は凹部である、画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明1が、「転写部材を支持する支持部材と、支持部材を支持する転写フレームと、装置本体に対して着脱可能な」ベルトユニット、を有し、「支持部材は、無端ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向において転写フレームから突出し第1係合部と係合する第2係合部を備え、支持部材は回動軸を中心に回動可能であり、回動軸は、転写部材よりも無端ベルトの移動方向上流側に配置され」、「ベルトユニットを装置本体に装着した状態において、転写部材は、無端ベルトの移動方向に関して転写フレームに対して支持されておらず、転写部材は、装置本体に対する移動方向における位置が無端ベルトの移動によって回動軸が凹部の突き当て面に突き当たることで位置決めフレームによって決定される」のに対して、引用発明1は、そのようなものでない点。

(3)判断
上記周知の技術事項の「転写部材」、「装置本体に位置決め装着される着脱可能なベルトユニット」、「ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向に、ベルトユニットから突出した軸受け部」、「装置本体フレーム」、及び「位置決め部」は、それぞれ、本願発明1の「転写部材」、「装置本体に対して着脱可能なベルトユニット」、「無端ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向において転写フレームから突出する第2係合部」、「位置決めフレーム」、及び「第1係合部」に相当する。
しかし、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項における「転写部材を支持する支持部材と、支持部材を支持する転写フレーム」を有し、「支持部材は」、「第1係合部と係合する第2係合部を備え」、「支持部材は回動軸を中心に回動可能であり、回動軸は、転写部材よりも無端ベルトの移動方向上流側に配置され」、「ベルトユニットを装置本体に装着した状態において、転写部材は、無端ベルトの移動方向に関して転写フレームに対して支持されておらず、転写部材は、装置本体に対する移動方向における位置が無端ベルトの移動によって回動軸が凹部の突き当て面に突き当たることで位置決めフレームによって決定される」点は、上記周知の技術事項には示されていないから、周知の技術事項とはいえない。
そして、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠もない。
そして、本願発明1は、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「本発明によれば、像担時体と転写部材との位置決めを精度良く行うことができ、良好な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。」(段落【0011】)という作用効果を奏するものである。

なお、引用発明3の「転写部材」、「圧接離隔部材」、「フレーム」、「中間転写ベルトユニット」、及び「軸」は、それぞれ、本願発明1の「転写部材」、「支持部材」、「支持部材を支持するフレーム」、「ベルトユニット」、及び「回動軸」に相当し、引用発明3の「圧接離隔部材」は、「転写部材を、一端部に回転可能にそれぞれ軸支」し、「回転可能に軸支する軸がベルト部材の回転方向上流側に配置されている」ものであるから、「支持部材は回動軸を中心に回動可能であり、回動軸は、転写部材よりも無端ベルトの移動方向上流側に配置され」といえるが、上記相違点1に係る本願発明1の発明特定事項の「ベルトユニットを装置本体に装着した状態において、転写部材は、無端ベルトの移動方向に関して転写フレームに対して支持されておらず、転写部材は、装置本体に対する移動方向における位置が無端ベルトの移動によって回動軸が凹部の突き当て面に突き当たることで位置決めフレームによって決定される」点は示されていないし、設計的事項といえる理由もない。

したがって、本願発明1は、引用発明1、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本願発明2乃至本願発明9について
本願発明2乃至本願発明9は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至本願発明9は、上記(3)と同様の理由により、引用発明1、引用発明3、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第4 当審拒絶理由について
1.当審拒絶理由の概要
【理由1】
この出願の下記の請求項に係る発明は、その分割原出願日前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
・請求項 1、2、5、6、9?11
刊行物4:特開2006-208843号公報

【理由2】
この出願の下記の請求項に係る発明は、その分割原出願日前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その分割原出願日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1、2、5?7、9?11
刊行物4:特開2006-208843号公報
・請求項 3
刊行物4:特開2006-208843号公報
刊行物3:特開2003-43764号公報
・請求項 8
刊行物4:特開2006-208843号公報
刊行物3:特開2003-43764号公報
刊行物1:特開2007-213033号公報

2.当審拒絶理由の判断
(1)刊行物の記載事項
平成28年11月17日付けの拒絶の理由に引用された刊行物、及び、その記載内容は上記「第3 2.(1)刊行物の記載事項」に記載したもの、及び以下のとおりである。
ア.刊行物4
本願の原出願日前の平成18年8月10日に頒布された特開2006-208843号公報(以下「刊行物4」という。)には、以下の記載がある。
(ア)「【請求項1】
(a)像担持体と、
(b)装置本体と、
(c)少なくとも二つのローラ、該各ローラ間に張設されたベルト、及びフレームを備え、前記装置本体に対して着脱自在に配設されたベルトユニットと、
(d)該ベルトユニット内において前記フレームに対して移動自在に配設され、前記像担持体上に形成された現像剤像を記録媒体に転写する転写部材と、
(e)前記装置本体に配設され、前記転写部材を、回転自在に支持し、かつ、前記装置本体に対して位置決めする支持部材と、
(f)前記ベルトユニットが装置本体に装着されたときに、前記転写部材を像担持体に向けて付勢する付勢部材とを有することを特徴とする画像形成装置。」
(イ)「【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置に関するものである。」
(ウ)「【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前記従来のプリンタにおいては、各転写ローラは転写ベルトユニットに対して位置決めされるので、転写ベルトユニットが装置本体に対して歪(ゆが)むと、転写ローラも装置本体に対して歪んでしまう。その場合、各転写ローラが感光体ドラムに対して均一に押し付けられず、画像に白抜けが生じ、画像品位が低下してしまう。
【0004】
本発明は、前記従来のプリンタの問題点を解決して、転写部材を像担持体に対して均一に押し付けることができ、画像品位を向上させることができる画像形成装置を提供することを目的とする。」
(エ)「【0010】
図において、P1?P4はブラック、イエロー、マゼンタ及びシアンの各色の画像形成部であり、該各画像形成部P1?P4は、像担持体ユニットとしての感光体ドラムユニット22、及び該感光体ドラムユニット22の像担持体としての感光体ドラム24と対向させて配設された露光装置としてのLEDヘッド23を備える。また、11はプリンタの装置本体に対して着脱自在に配設されたベルトユニットとしての転写ベルトユニットであり、該転写ベルトユニット11は、図示されない駆動源に連結され、回転を受ける第1のローラとしての駆動ローラ12、第2のローラとしてのアイドルローラ13、前記駆動ローラ12とアイドルローラ13との間に張設され、各色の画像形成部P1?P4に沿って走行させられるベルト14、該ベルト14の裏側においてベルト14を各感光体ドラム24に押し付ける転写部材としての転写ローラ15、フレーム16等を備える。」
(オ)「【0016】
図において、11は転写ベルトユニットであり、該転写ベルトユニット11は、感光体ドラムユニット22(図2)と共に、装置本体に配設され、感光体ドラム24及び転写ベルトユニット11の位置を決める支持部材を構成する装置本体板金30、31に対して着脱自在に装着される。該装置本体板金30、31は所定の間隔を置いて底部材frに取り付けられ、垂直に突出させて形成された第1の立上げ部301、311、該第1の立上げ部301、311の上端から水平に形成された第1の水平部302、312、該第1の水平部302、312の先端から垂直に突出させて形成された第2の立上げ部303、313、及び該第2の立上げ部303、313の上端から水平に形成された第2の水平部304、314を備える。そして、前記第1の立上げ部301から第1の水平部302にかけて溝30a?30cが、前記第2の立上げ部303から第2の水平部304にかけて溝30dが、前記第1の立上げ部311から第1の水平部312にかけて溝31a?31cが、前記第2の立上げ部313から第2の水平部314にかけて溝31dが形成される。
【0017】
前記転写ベルトユニット11は、駆動ローラ12及びアイドルローラ13は、端部が駆動ローラ12及びアイドルローラ13に対応させて装置本体板金30、31に形成された前記溝30a、30b、31a、31bに入り込むことによって、装置本体に対して位置決めされる。また、前記各転写ローラ15は、端部が各転写ローラ15に対応させて装置本体板金30、31に形成された前記溝30c、31cに入り込むことによって、装置本体に対して位置決めされる。
【0018】
そして、転写ベルトユニット11が装置本体に装着された後、感光体ドラムユニット22は、感光体ドラム24の軸24a、24bが各感光体ドラム24に対応させて装置本体板金30、31に形成された溝30d、31dに入り込むことによって、装置本体に対して位置決めされる。なお、図3においては感光体ドラム24が一つだけ示されているが、四つの感光体ドラム24は、軸24a、24bが装置本体板金30、31の所定の溝30d、31dに入り込むことによって、装置本体に対して位置決めされる。
【0019】
次に、各組立ユニットの装置本体に対する取付状態について説明する。この場合、転写ローラ15と装置本体板金30との関係について説明するが、転写ローラ15と装置本体板金31との関係も同様であるので説明を省略する。
【0020】
前記転写ベルトユニット11に内装される転写ローラ15は、転写ベルトユニット11を構成しているフレーム16の穴16aを貫通して、かつ、フレーム16に対して移動自在に配設され、転写ローラ15の両端に、非導電材料から成るベアリング35が着脱自在に取り付けられる。前記転写ローラ15は、イーリング36によってベアリング35に取り付けられ、ベアリング35の穴35b内において、摺動自在に、かつ、回転自在に支持される。また、装置本体に転写ベルトユニット11が装着される際に、転写ローラ15及びベアリング35がフレーム16の穴16aに接触しないような形状にされる。
【0021】
そして、転写ベルトユニット11を装置本体に装着すると、ベアリング35は、装置本体板金30の溝30cに入り込み、前記ベアリング35及び装置本体板金30において、面35cと面30eとを、面35dと面30fとをそれぞれ接触させた状態で、溝30cに沿って摺動し、転写ローラ15と共に上下方向に移動させられる。
【0022】
また、図12に示されるように、転写ローラ15の段差面15aとベアリング35の面35aとは接触する。したがって、ベアリング35は、転写ローラ15を軸方向において位置決めする。
【0023】
さらに、装置本体側に付勢部材としてのコイルばねから成るスプリング37が配設される。該スプリング37は、装置本体板金30に形成された突起30hに対して外嵌され、前記転写ベルトユニット11が装置本体に装着されると、ベアリング35の面35fに当たり、ベアリング35及び転写ローラ15を感光体ドラム24に向けて、すなわち、ベルト14の内面からベルト14の外面に向けて所定の付勢力で付勢する。その結果、転写ベルトユニット11を装置本体に装着した際に、転写ローラ15は、ベルト14を介して転写ローラ15と対向させて配設された感光体ドラム24に前記付勢力で押し付けられる。
【0024】
なお、38は転写ローラ15の端面15bに接触させて配設された電極であり、図示されない電源によって印刷時に発生された所定の転写電圧は、電極38を介して転写ローラ15に印加される。
【0025】
次に、前記構成の組立ユニットの組立方法について説明する。
【0026】
まず、装置本体に転写ベルトユニット11を装着すると、駆動ローラ12及びアイドルローラ13の端部が装置本体板金30、31の溝30a、30b、31a、31bに入り込み、駆動ローラ12及びアイドルローラ13における装置本体板金30、31上の位置が決められる。したがって、転写ベルトユニット11は装置本体に対して位置決めされる。
【0027】
また、転写ローラ15に取り付けられたベアリング35は、装置本体板金30、31の溝30c、31cに入り込み、転写ローラ15は、軸方向及び用紙21の搬送方向における装置本体板金30、31上の位置が決められる。このとき、前述されたように、スプリング37はベアリング35及び転写ローラ15を、ベルト14の内面からベルト14の外面に向けて所定の付勢力で付勢し、装置本体板金30、31及び感光体ドラム24に対する転写ローラ15の位置が決られる。また、転写ローラ15はベルト14を介して感光体ドラム24に一定の押圧力で押し付けられる。したがって、各転写ローラ15は装置本体に対して位置決めされる。
【0028】
このように、本実施の形態においては、転写ベルトユニット11を装置本体に装着したときに、転写ベルトユニット11及び各転写ローラ15は、いずれも装置本体に対して位置決めされ、しかも、フレーム16に接触していないので、仮に、図14に示されるように、フレーム16が歪んでも、転写ローラ15と感光体ドラム24との相対位置は変わらない。したがって、各転写ローラ15を感光体ドラム24に対して均一に押し付けることができるので、画像に白抜けが生じることがなくなり、画像品位を向上させることができる。
【0029】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与することによってその説明を省略し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0030】
図15は本発明の第2の実施の形態における組立ユニットの要部を示す斜視図、図16は本発明の第2の実施の形態における組立ユニットの要部を示す正面図、図17は本発明の第2の実施の形態におけるベアリングの取付状態を示す斜視図、図18は本発明の第2の実施の形態における組立ユニットの分解斜視図である。
【0031】
本実施の形態においては、図に示されるように、装置本体板金30に、転写部材としての転写ローラ15を回転自在に支持するための非導電材料から成る軸受け部材41が取り付けられる。そのために、前記装置本体板金30は、垂直に突出させて形成された第1の立上げ部301、該第1の立上げ部301の上端から水平に形成された第1の水平部302、該第1の水平部302の先端から垂直に突出させて形成された第2の立上げ部303、及び該第2の立上げ部303の上端から水平に形成された第2の水平部304を備える。そして、前記第1の立上げ部301から第1の水平部302にかけて溝30a、30c、30kが、前記第2の立上げ部303から第2の水平部304にかけて溝30dが形成される。前記溝30kは、幅の広い挿脱部分a1、及び該挿脱部分a1より上方に形成された幅の狭い案内部分a2を備え、前記挿脱部分a1に対して前記軸受け部材41が挿脱される。
【0032】
一方、該軸受け部材41は、両側面に高さ方向に形成された溝41a、41bを、上面に転写ローラ15の両端の小径部分を支持するための凹面41dを備える。
【0033】
したがって、軸受け部材41を、挿脱部分a1内に挿入し、溝41a、41bに溝30kの両側のエッジ30i、30jに嵌め込むことによって、軸受け部材41をエッジ30i、30jに沿って上下方向に移動させることができる。
【0034】
この場合、溝41a、41b及びエッジ30i、30jによって、軸受け部材41は、転写ローラ15の軸方向及び記録媒体としての用紙21の搬送方向における装置本体板金30上の位置が決められる。また、装置本体側の付勢部材としてのスプリング37は、軸受け部材41の面41cに接触し、軸受け部材41を上方向に付勢し、装置本体板金30のストッパ30qに軸受け部材41は突き当たる。
【0035】
そして、装置本体にベルトユニットとしての転写ベルトユニット11が装着されると、転写ベルトユニット11内に配設される転写ローラ15は、軸受け部材41の凹面41dに当たり、用紙21の搬送方向における軸受け部材41上の位置が決められる。なお、31kは溝である。
【0036】
前記構成の組立ユニットにおいて、転写ベルトユニット11が装置本体に装着されていないときは、軸受け部材41は、ストッパ30qに突き当てられていて、上方から力を受けると、前記溝41a、41bに沿って下方向に移動させられる。
【0037】
そして、転写ベルトユニット11を装置本体に装着すると、転写ベルトユニット11内の転写ローラ15は、端部が軸受け部材41の凹面41d上に乗り、用紙21の搬送方向における軸受け部材41上の位置が決められる。なお、前記転写ローラ15は軸受け部材41上で滑らかに摺動させられ、回転させられる。
【0038】
また、前記感光体ドラムユニット22が装置本体に装着されると、像担持体としての感光体ドラム24によって転写ローラ15は押し下げられるが、スプリング37は、軸受け部材41を介して転写ローラ15をベルト14を挟んで感光体ドラム24に押し付ける。したがって、転写ローラ15は、上下方向における装置本体板金30上の位置が決められる。このようにして、各転写ローラ15は装置本体に対して位置決められる。
【0039】
また、本実施の形態においては、ベアリング35に代えて軸受け部材41が装置本体側に配設され、転写ローラ15の両端における軸がそのまま装置本体に装着されるので、転写ローラ15にベアリング35等の付属品を取り付ける必要がない。したがって、転写ベルトユニット11を装置本体に対して容易に着脱することができる。」

そうすると、上記(ア)乃至(オ)の記載事項から、刊行物4には、次の発明(以下「引用発明4」という。)が記載されているものと認められる。「(a)像担持体と、
(b)装置本体と、
(c)少なくとも二つのローラ、該各ローラ間に張設されたベルト、及びフレームを備え、前記装置本体に対して着脱自在に配設されたベルトユニットと、
(d)該ベルトユニット内において前記フレームに対して移動自在に配設され、前記像担持体上に形成された現像剤像を記録媒体に転写する転写部材と、
(e)前記装置本体に配設され、前記転写部材を、回転自在に支持し、かつ、前記装置本体に対して位置決めする支持部材と、
(f)前記ベルトユニットが装置本体に装着されたときに、前記転写部材を像担持体に向けて付勢する付勢部材とを有する画像形成装置であって、
装置本体に対して着脱自在に配設されたベルトユニットとしての転写ベルトユニットであり、
像担持体としての感光体ドラム及び転写ベルトユニットの位置を決める支持部材を構成する装置本体板金に対して着脱自在に装着され、
転写部材としての各転写ローラは、端部が各転写ローラに対応させて装置本体板金に形成された溝に入り込むことによって、装置本体に対して位置決めされ、
転写ベルトユニットに内装される転写ローラは、転写ベルトユニットを構成しているフレームの穴を貫通して、かつ、フレームに対して移動自在に配設され、
転写ローラに取り付けられたベアリングは、装置本体板金の溝に入り込み、
転写ローラは、軸方向及び用紙の搬送方向における装置本体板金上の位置が決められる、画像形成装置。」

(2)対比
そこで、本願発明1と引用発明4とを対比する。
引用発明4の「装置本体」、「現像剤像」、「像担持体」、「用紙」、「ベルト」、「転写部材」、「フレーム」、「装置本体に対して着脱自在に配設されたベルトユニット」、「装置本体板金の溝」、及び「ベアリング」は、それぞれ、本願発明1の「装置本体」、「トナー像」、「感光体」、「転写材」、「無端ベルト」、「転写部材」、「転写フレーム」、「装置本体に対して着脱可能なベルトユニット」、「第1係合部」、及び「第2係合部」に相当する。
引用発明4の「装置本体板金」は、「転写ローラに取り付けられたベアリングが、装置本体板金の溝に入り込み、転写ローラは、軸方向及び用紙の搬送方向における装置本体板金上の位置が決められる」ものであるから、引用発明4の「装置本体板金」は、「感光体の装置本体に対する位置を決める位置決めフレーム」といえ、「装置本体板金の溝」は、「凹部」といえ、「無端ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向において転写フレームから突出し第1係合部と係合する第2係合部」を備えるといえる。


したがって、両者は、
「装置本体と、
トナー像を担持する感光体と、
前記感光体の前記装置本体に対する位置を決める位置決めフレームと、
前記感光体から転写材へトナー像を転写するための無端ベルトと前記無端ベルトの内周面に接触する転写部材と、転写フレームと、を備え前記装置本体に対して着脱可能なベルトユニットと、
を有し、前記位置決めフレームは第1係合部を備える画像形成装置において、
前記無端ベルトの移動方向と直交するベルト幅方向において前記転写フレームから突出し前記第1係合部と係合する第2係合部を備え、
前記第1係合部は凹部である画像形成装置。」
の点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点2]
本願発明1が、「転写部材を支持する支持部材と、支持部材を支持する」転写フレームと、を有し、「支持部材は回動軸を中心に回動可能であり、回動軸は、転写部材よりも無端ベルトの移動方向上流側に配置され、回動軸は第2係合部であり」、「ベルトユニットを装置本体に装着した状態において、転写部材は、無端ベルトの移動方向に関して転写フレームに対して支持されておらず、転写部材は、装置本体に対する移動方向における位置が無端ベルトの移動によって回動軸が凹部の突き当て面に突き当たることで位置決めフレームによって決定される」のに対して、引用発明4は、そのようなものでない点。

(3)判断
ア.【理由1】について
そうすると、引用発明4は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備していない。
したがって、本願発明1が、引用発明4であるとすることはできない。
また、本願発明2、5、6、9乃至11は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2、5、6、9乃至11も引用発明4であるとすることはできない。

イ.【理由2】について
上記「第3 2. (3)判断」で示したのと同様に、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項が、当業者にとって設計事項であるとする根拠はない。
そして、本願発明1は、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項を具備することにより、本願明細書に記載の「本発明によれば、像担時体と転写部材との位置決めを精度良く行うことができ、良好な画像を形成することができる画像形成装置を提供することを目的とする。」(段落【0011】)という作用効果を奏するものである。

なお、引用発明1、引用発明3、及び上記周知の技術事項をみても、上記相違点2に係る本願発明1の発明特定事項は示されていない。

したがって、本願発明1は、引用発明4に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。

(4)本願発明2乃至本願発明9について
本願発明2乃至本願発明9は、本願発明1の発明特定事項に加えてさらなる発明特定事項を追加して限定を付したものであるから、本願発明2乃至本願発明9は、上記(3)と同様の理由により、引用発明4、引用発明3、及び引用発明1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。


第5 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明4と同一とすることはできないし、また、引用発明1、引用発明3、引用発明4、及び上記周知の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたとものとすることもできないから、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
 
審決日 2017-03-15 
出願番号 特願2015-14378(P2015-14378)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (G03G)
最終処分 成立  
前審関与審査官 三橋 健二佐々木 創太郎  
特許庁審判長 黒瀬 雅一
特許庁審判官 藤本 義仁
森次 顕
発明の名称 画像形成装置  
代理人 特許業務法人中川国際特許事務所  

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