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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1325775
審判番号 不服2016-4023  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-03-16 
確定日 2017-03-09 
事件の表示 特願2011-125645「反射防止フィルム」拒絶査定不服審判事件〔平成24年12月20日出願公開、特開2012-252224〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年6月3日の出願であって、平成27年2月18日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月27日付けで手続補正がなされるとともに意見書が提出され、同年9月24日付けで最後の拒絶の理由が通知され、同年11月27日付けで意見書が提出され、同年12月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年3月16日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年3月16日付け手続補正についての補正の却下の決定
〔補正の却下の決定の結論〕
平成28年3月16日付け手続補正を却下する。

〔理由〕
1 本件補正の内容
(1)平成28年3月16日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、特許請求の範囲についてするものであって、平成27年4月27日付け手続補正によって補正された本件補正前の請求項1に、
「光透過性基板と、
前記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に、膜厚が5μm?25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、
を有する反射防止フィルムであって、
前記反射防止層を形成する際に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物中の反応性基由来の分子振動による赤外線の吸収強度の値を反応率0%、前記反応性基由来の吸収強度の消失後の値を反応率100%とした場合に、前記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であり、
前記反射防止層および前記ハードコート層の膜厚の比率が、反射防止層:ハードコート層=1.0:0.3?1.0:4.0の範囲内であることを特徴とする反射防止フィルム。」とあったものを、

「光透過性基板と、
前記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に、膜厚が5μm?25μmの範囲内となるように形成され、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備え、潤滑剤を含有する反射防止層と、
を有する反射防止フィルムであって、
前記反射防止層を形成する際に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物中の反応性基由来の分子振動による赤外線の吸収強度の値を反応率0%、前記反応性基由来の吸収強度の消失後の値を反応率100%とした場合に、前記反射防止層を構成する紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上であり、
前記ハードコート層の鉛筆硬度がB?Hの範囲内であり、
前記反射防止層および前記ハードコート層の膜厚の比率が、反射防止層:ハードコート層=1.0:0.3?1.0:4.0の範囲内であり、
前記反射防止フィルムのスチールウール耐性が100g/100mm^(2)以上であることを特徴とする反射防止フィルム。」とする補正を含むものである(下線は当審で付した。以下同様。)。

(2)本件補正は、要するに、請求項1において、「ハードコート層」について、その「鉛筆硬度」が「B?Hの範囲内であ」ることを付加する補正と、「反射防止フィルム」について、その「スチールウール耐性」が「100g/100mm^(2)以上である」ことを付加する補正とからなるものである。

2 本件補正の目的
(1)ア 本件補正前の請求項1は、上記1(1)に本件補正前の請求項1として掲げたとおりであるところ、「反射防止フィルム」は、特定の層構成からなり、各層が所定の特性を有するものであるが、「反射防止フィルム」の「スチールウール耐性」に関する記載は、本件補正前の請求項1には存在していない。また、本件補正前の請求項1において、「ハードコート層」は、特定の膜厚からなるものであるが、「ハードコート層」の「鉛筆硬度」に関する記載は本件補正前の請求項1には存在していない。このように、本件補正前の請求項1に、発明特定事項として、「反射防止フィルム」の「スチールウール耐性」及び「ハードコート層」の「鉛筆硬度」が記載されていない以上、請求項1に係る本件補正は、請求項に記載した発明特定事項を限定するものではない。

イ 上記アからみて、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号でいう「特許請求の範囲の減縮(第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであって、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当しない。また、上記1(2)の補正内容は、同法同条同項第1号の請求項の削除を目的とするものではなく、同法同条同項第3号の誤記の訂正を目的とするものでもなく、同法同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とするものでもないことが明らかである。

(2)上記(1)からみて、本件補正は、特許法第17条の2第5項第1号ないし第4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものではない。
以上のとおりであるから、本件補正は、同法第17条の2第5項の規定に違反するものである。

3 独立特許要件について
仮に、本件補正後の請求項1に係る本件補正が特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものであるとしても、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)は、以下に検討するとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合しない。)。

(1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用文献1として引用された本願の出願前に頒布された刊行物である特開2011-856号公報(以下「引用例1」という。)には、次の事項が図とともに記載されている。

ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体に関するものであり、詳細には、表面に特定の微細構造を有し、表面で測定した鉛筆硬度が特定の範囲内にある上記積層体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)等のフラットパネルディスプレイ(以下、「FPD」と略記する)等は、その視認性確保のために、反射防止膜の装着は必須である。かかる反射防止膜としては、(1)一般にドライ法と言われているもの、すなわち、誘電体多層膜を気相プロセスで作製し、光学干渉効果で低反射率を実現したもの、(2)一般にウエット法と言われているもの、すなわち、低屈折率材料を基板フィルム上にコーティングしたもの等が使用されてきた。
【0003】
また、これらとは原理的に全く異なる技術として、(3)表面に微細構造を付与することにより、低反射率を発現させることができることが知られている(特許文献1?特許文献12)。
【0004】
一般にかかる反射防止膜には、光の反射防止性能や光の透過性向上性能が必要であるのみならず、実用化の際には機械特性が必要である。一般に、反射防止膜は一般に空気と接する最表面に存在するため、上記(3)の方法においては、反射防止膜の機械特性が特に重要であり、また、機械特性に関する種々の特殊の性能が求められる。
【0005】
しかしながら、上記(3)に記載した表面微細構造を利用した反射防止膜については、良好な反射防止性能は得られるが、その一方で、一般に機械特性が十分ではないという問題点があった。すなわち、光学特性と機械特性との両立ができていないのが現状であった。
【0006】
一方、反射防止膜の機械特性を上げるために層を設けることが知られている。特許文献13には、上記(2)の方法において、特定の弾性率を有する層を設けることが記載されている。また、特許文献14には、上記(2)の方法において、反応性シリコーンを含有する材料を用いて形成した層が記載されている。しかしながら、上記(2)の方法と上記(3)の方法では、光の反射を防止する層自体の材質や表面構造が全く異なり、従って、向上が要求される機械特性の種類も全く異なり、上記(2)の方法におけるハードコート層の技術は上記(3)の方法には応用できないものであった。
【0007】
近年、FPDの視認性を更に向上させるために、優れた反射防止膜等の必要性が増しつつあるが、上記(3)に記載した表面微細構造を利用したものについては、その良好な反射防止性能を維持しつつ、機械特性を更に改良する必要があった。」

イ 「【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記背景技術に鑑みてなされたものであり、その課題は、表面に微細構造を付与することにより低反射率を発現させることができる積層体において、機械特性を向上させた積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の物性を有する積層体が、上記課題を解決できることを見出し本発明に到達した。
【0011】
すなわち本発明は、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体であって、該微細凹凸構造膜が、中間膜側とは反対側の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有し、その凸部又は凹部が、少なくともある一の方向に対し平均周期100nm以上400nm以下で存在する微細凹凸構造を有し、該表面で測定した鉛筆硬度がH以上であることを特徴とする積層体を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、光の反射防止性能、光の透過改良性能、機械特性等に優れた積層体を提供することができる。機械特性には、耐傷性等を反映した「耐スチールウール性」、及びそれとは異質な「鉛筆硬度」があり、両物性は二律背反の関係にあるが、本発明によれば、両物性を共に実用範囲にまで引き上げることができる。それによって、具体的には、FPD等に対する反射防止、透過性改良、表面保護等の用途に向けて、優れた機械特性を有する積層体を提供することができる。」

ウ 「【発明を実施するための形態】
【0014】
1.微細凹凸構造膜
1-1.微細凹凸構造膜の表面形状
本発明の積層体は、図1に示したように、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる。そして、かかる微細凹凸構造膜は、中間膜側とは反対側の表面に、平均高さ100nm以上1000nm以下の凸部又は平均深さ100nm以上1000nm以下の凹部を有していることが必須である。ここで凸部とは、基準となる面より出っ張った部分をいい、凹部とは、基準となる面より凹んだ部分をいう。本発明の積層体は、その表面に凸部を有していても、凹部を有していてもよい。また、凸部と凹部の両方を有していてもよく、更に、それらが連結して波打った構造を有していてもよい。
【0015】
微細凹凸構造膜の凸部又は凹部は、中間膜側とは反対側の表面に存在することが必須であるが、中でも、空気と接している最表面に有していることが好ましい。一般に空気は固体物質とは屈折率が大きく異なり、互いに屈折率の大きく異なる物質の界面が、本発明の特定の構造になっていることによって、反射防止性能や透過改良性能が良好に発揮されるからである。
【0016】
凸部又は凹部は、微細凹凸構造膜の表面全体に均一に存在していることが、上記効果を奏するために好ましい。凸部の場合には、基準となる面からのその平均高さが、100nm以上1000nm以下であること必須であり、凹部の場合にも、基準となる面からのその平均深さが、100nm以上1000nm以下であることが必須である。高さ又は深さは一定でなくてもよく、その平均値が上記範囲に入っていればよいが、実質的に一定の高さ又は一定の深さを有していることが好ましい。
【0017】
凸部の場合でも、凹部の場合でも、その平均高さ又は平均深さは、150nm以上であることが好ましく、200nm以上であることが特に好ましい。また、600nm以下であることが好ましく、500nm以下であることが特に好ましい。平均高さ又は平均深さが、小さ過ぎると、良好な光学特性が発現されない場合があり、大き過ぎると、製造が困難になる等の場合がある。凸部と凹部が連結して波打った構造を有している場合では、最高部(凸部の上)と最深部(凹部の下)の平均長さは、100nm以上1000nm以下であることが同様の理由から特に好ましい。
【0018】
本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、その表面に、上記凸部又は凹部が、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが必須である。凸部又は凹部は、ランダムに配置されていてもよいし、規則性を持って配置されていてもよい。また、何れの場合でも、上記凸部又は凹部は、積層体の表面全体に実質的に均一に配置されていることが反射防止性や透過改良性の点で好ましい。また、少なくとも、ある一の方向について、平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていればよく、全ての方向に、その平均周期が100nm以上400nm以下となっている必要はない。
【0019】
凸部又は凹部が、規則性を持って配置されている場合、上記のように、少なくともある一の方向の平均周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていればよいが、最も周期が短い方向(以下「x軸方向」という)への周期が、100nm以上400nm以下となるように配置されていることが好ましい。すなわち、ある一の方向として、最も周期が短い方向をとったときに、周期が上記範囲内になっていることが好ましい。更にその際、x軸方向に垂直なy軸方向についても、その周期が100nm以上400nm以下となるように配置されていることが特に好ましい。
【0020】
上記平均周期(凸部又は凹部の配置場所に規則性がある場合は周期)は、120nm以上が好ましく、150nm以上が特に好ましい。また、250nm以下が好ましく、200nm以下が特に好ましい。平均周期が短過ぎても長過ぎても、反射防止効果が充分でない場合がある。
【0021】
平均高さ又は平均深さを平均周期で割った値は、特に限定はないが、0.5以上が光学特性の点で好ましく、1以上が特に好ましい。また、5以下が製造プロセス上好ましく、3以下がより好ましく、2以下が特に好ましい。凸部又は凹部の形状は特に限定はないが、円錐形、紡錘形等が、優れた光学特性や製造の容易さの点で好ましい。
【0022】
本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、表面に上記構造を有することが必須であるが、更に一般に「モスアイ(moth-eye)構造(蛾の眼構造)」と呼ばれる構造を有していることが、良好な反射防止性能を有している点で好ましい。また、特許文献1ないし特許文献12の何れかの文献に記載の表面構造を有していることが、同じく良好な反射防止性能の点で好ましい。
【0023】
本発明の積層体は、上記構造を有する微細凹凸構造膜が存在することによって、光の反射率を低減させたり、光の透過性を向上させたりする。この場合の「光」は、少なくとも可視光領域の波長の光を含む光である。
【0024】
1-2.微細凹凸構造膜の組成
本発明の積層体における微細凹凸構造膜の材質は、硬化性組成物が硬化してなるものであっても、熱可塑性組成物であってもよい。硬化性組成物とは、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって硬化する組成物である。中でも、光照射又は電子線照射により硬化する硬化性組成物が好ましい。
【0025】
1-2-1.光照射又は電子線照射により硬化する組成物
「光照射又は電子線照射により硬化する組成物」(以下、「光硬化性組成物」と略記する)としては特に限定はなく、アクリル系重合性組成物又はメタクリル系重合性組成物(以下、「(メタ)アクリル系重合性組成物」と略記する)、光酸触媒で架橋し得る組成物等、何れも使用できるが、(メタ)アクリル系重合性組成物が、本発明における微細構造に適した機械特性を与える点、化合物群が豊富なため種々の物性の微細凹凸構造膜を調製できる点、型の転写で凹凸を形成させる場合には、型を忠実に転写する点、型からの剥離性に優れる点、等から好ましい。
・・・略・・・
【0027】
1-2-3.(メタ)アクリル系重合性組成物(A)
上記したように、本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、(メタ)アクリル系重合性組成物が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって硬化したものであることが、上記した点から特に好ましい。微細凹凸構造の形成に用いられる(メタ)アクリル系重合性組成物を「(メタ)アクリル系重合性組成物(A)」とする。
【0028】
(メタ)アクリル系重合性組成物(A)は、(メタ)アクリル基の炭素-炭素間二重結合が、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって反応してなるものであることが好ましい。また、「光照射、電子線照射及び/又は加熱によって」とは、光照射、電子線照射及び加熱からなる群のうち、何れか1つの処理によってでもよく、そこから選ばれた2つの処理の併用によってでもよく、3つの処理全ての併用によってでもよい。
【0029】
(メタ)アクリル基の炭素-炭素間二重結合の反応率は特に限定はないが、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが特に好ましい。ここで「反応率」とは、露光前後の(メタ)アクリル系重合性組成物を赤外線分光法(IR)、具体的にはフーリエ変換赤外分光光度計Spectrum One D(perkin Elmer社製)全反射法(ATR法)で測定されるエステル結合の炭素-酸素結合に帰属される1720cm^(-1)の吸光度と、炭素-炭素結合に帰属される811cm^(-1)の吸光度の比率から求めたものである。反応率が低過ぎると、機械特性の低下や耐薬品性の低下をまねく場合がある。
・・・略・・・
【0042】
1-2-4.微細凹凸構造膜における変性シリコーンオイル
更に、本発明の積層体における微細凹凸構造膜は、変性シリコーンオイルを含有することも好ましい。「変性シリコーンオイル」とは、分子中にシロキサン結合を有し、ケイ素原子(Si)にメチル基以外の有機基も結合している化合物をいう。「変性シリコーンオイル」には、シリコーン(メタ)アクリレートが含まれる。「シリコーン(メタ)アクリレート」とは、分子中にシロキサン結合を有する(メタ)アクリレート化合物をいう。従って、本発明における(メタ)アクリル系重合性組成物(A)は、シリコーン(メタ)アクリレートを含有することも好ましい。
・・・略・・・
【0051】
1-2-8.微細凹凸構造膜におけるその他の化合物
本発明の積層体における微細凹凸構造膜には、更に、シリコーンオイル、前記した変性シリコーンオイル、バインダーポリマー、微粒子、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、離型剤、滑剤、レベリング剤等を配合することもできる。これらは、従来公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
【0052】
このうち、変性シリコーンオイルを含有することによって、前記した特殊な表面形状に対し、耐傷性等の機械特性が特に優れたものになる。また、硬化させた微細凹凸構造膜を型から剥離する工程を有する場合には賦型性が重要になるが、本発明においては、該変性シリコーンオイルの使用は、この賦型性の改良よりはむしろ鉛筆硬度と関係して表面耐傷性等の機械特性の改良に効果的である。
【0053】
変性シリコーンオイルの数平均分子量としては、400?20000が好ましく、1000?15000が特に好ましい。数平均分子量が大き過ぎるときには、他成分との相溶性が悪化する場合があり、一方、数平均分子量が小さ過ぎるときには、表面耐傷性等の機械特性が劣る場合がある。
【0054】
1-3.微細凹凸構造膜の膜厚
微細凹凸構造膜の膜厚は、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整でき、積層体を問題なく形成でき、問題なく使用できれば特に限定はないが、0.1μm?10μmが好ましく、0.3μm?7μmがより好ましく、0.5μm?5μmが特に好ましい。微細凹凸構造膜の膜厚が小さ過ぎると、微細凹凸構造を転写しにくくなる場合がある。
【0055】
2.中間膜
2-1.中間膜の組成
本発明の積層体は、図1に示したように、少なくとも、基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる。該中間膜は、硬化性組成物が硬化してなるものであっても、熱可塑性組成物であってもよいが、光照射、電子線照射及び/又は加熱によって、(メタ)アクリル系重合性組成物が重合したものであることが、鉛筆硬度をH以上にし易い点、それによって、優れた機械特性を与える点等から好ましい。中間膜の形成に用いられる(メタ)アクリル系重合性組成物を「(メタ)アクリル系重合性組成物(B)」とする。また、「光照射、電子線照射及び/又は加熱によって」とは、光照射、電子線照射及び加熱からなる群のうち、何れか1つの処理によってでもよく、そこから選ばれた2つの処理の併用によってでもよく、3つの処理全ての併用によってでもよい。
【0056】
(メタ)アクリル系重合性組成物(B)は、ウレタン(メタ)アクリレート及び/又はエステル(メタ)アクリレート及び/又はエポキシ(メタ)アクリレートを含有するものであることが上記点で特に好ましい。
【0057】
ウレタン(メタ)アクリレート、エステル(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレートの種類としては、微細凹凸構造膜の部分で記載したものと同様のものが用いられる。
・・・略・・・
【0070】
2-2.中間膜の膜厚
中間膜の膜厚は、積層体の鉛筆硬度をH以上に調整でき、積層体として問題なく使用できれば特に限定はないが、0.1μm?100μmが好ましく、0.5μm?50μmがより好ましく、0.8μm?30μmが特に好ましい。中間膜の膜厚が大き過ぎると、反射防止積層体の全光線透過率が低下する場合があり、一方、小さ過ぎると、十分な鉛筆硬度や機械特性が得られない場合がある。
【0071】
2-3.中間膜の物性
中間膜の膜厚と物性は、積層体の表面の鉛筆硬度がH以上にするように調整される。中間膜自体の鉛筆硬度は特に限定はないが、H?5Hが好ましく、2H?4Hが特に好ましい。中間膜の硬度が低過ぎると、積層体の鉛筆硬度が低くなり、積層体表面の機械特性が悪化する場合がある。」

エ 「【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、これらに限定されるものではない。
【0086】
実施例1
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、下記式(1)で示されるウレタン(メタ)アクリレート32.7g、下記式(2)で示されるウレタン(メタ)アクリレート65.3g、光重合開始剤として、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に5μmの中間膜を形成させた。
【0087】
<微細凹凸構造膜形成材料の調製>
下記式(1)で示される化合物(1)11.8重量部、下記化合物(2)23.0重量部、テトラエチレングリコールジアクリレート45.2重量部、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート20.0重量部及び光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0重量部を混合して光硬化性組成物(a)を得た。
【0088】
化合物(1)は、下記の式(1)で示される化合物である。
【化1】 ・・・略・・・
[式(1)中、Xは、ジペンタエリスリトール(6個の水酸基を有する)残基を示す。]
【0089】
化合物(2)は、
2HEA--IPDI--(アジピン酸と1,6-ヘキサンジオールとの重量平均分子量3500の末端水酸基のポリエステル)--IPDI--2HEA
で示される化合物である。ここで、「2HEA」は、2-ヒドロキシエチルアクリレート
を示し、「IPDI」は、イソホロンジイソシアネートを示し、「--」は、イソシアネート基と水酸基の通常の下記の反応による結合を示す。
-NCO + HO- → -NHCOO-
【0090】
<積層体の製造>
アルミニウムの陽極酸化とエッチング(孔径拡大)処理を交互に5回繰り返すことで、周期200nm、細孔径開口部160nm、底部50nm、細孔深さ300nmのテーパー形状の細孔を有する陽極酸化被膜表面を得た。以下、これを型として用いた。
【0091】
微細凹凸構造膜形成材料である上記光硬化性組成物(a)を、上記中間膜が形成されたPETフィルムの中間膜側に採取、バーコーターNO28にて、均一な膜厚になるよう塗布した。その後、上記で得られた型を貼り合わせ、細孔内に光硬化性組成物(a)が充填されたことを確認して、フュージョン製UV照射装置によって、3.6J/cm^(2)の紫外線照射によって硬化させた。硬化後、膜を型から剥離することで、表面に、平均高さ300nmの凸部が平均周期200nmで存在する積層体を得た。
【0092】
実施例2
実施例1において、中間膜の厚さを5μmから10μmに代えた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0093】
実施例3
実施例1において、中間膜の厚さを5μmから15μmに代えた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
【0094】
実施例4
実施例1において、中間膜の製造を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、ビスフェノールA系エポキシアクリレート65.4g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート32.6g、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に15μmの中間膜を形成させた。
【0095】
実施例5
実施例1において、中間膜の製造を以下のように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
<中間膜の製造>
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、テトラエチレングリコールジアクリレート65.4g、ポリエチレングリコール#400ジアクリレート32.6g、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させた。次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に15μmの中間膜を形成させた。
【0096】
比較例1
実施例1において、中間膜を形成させずに、基材の上に直接微細凹凸構造膜を形成させた以外は実施例1と同様にして積層体を得た。
・・・略・・・
【0099】
<光学特性>
[反射率の測定方法]
島津製作所製、自記分光光度計「UV-3150」を用い、積層体の裏面(PETフィルム側)に黒色テープを貼り付け、裏面から波長380nm?750nmの光をスキャンさせて、正5°反射率スペクトルを測定した。波長380nm?750nmの範囲で最も正5°反射率の大きかった波長での正5°反射率(%)を表1に示す。
【0100】
<機械特性>
[耐スチールウール性の測定方法]
積層体の表面上を、新東科学(株)社製の表面試験機ドライボギアTYPE-14DRを用い、25mm円柱の平滑な断面にスチールウール#0000を均一に貼り付け、荷重400gをかけながら、速度10cm/秒で10往復させたときの傷の付き具合を観察した。以下の基準で判定した。結果を表1に示す。
【0101】
(判定基準)
5:25mm円柱内に引掻き傷なし
4:25mm円柱の一部に数本程度の引掻き傷あり
3:25mm円柱の一部に無数の引掻き傷あり
2:25mm円柱の全面に無数の引掻き傷あり
1:25mm円柱の全面に無数の激しい引掻き傷あり
【0102】
[鉛筆硬度の測定方法]
JIS K5400に基づいた鉛筆硬度試験機に荷重500gを載せ測定を行った。結果を表1に示す。
【0103】
【表1】

【0104】
表1の結果から判るように、実施例1?5の積層体は、耐スチールウール性と鉛筆硬度が何れも良好であり、優れた機械特性を有するものであった。一方、比較例1?2の積層体は、耐スチールウール性と鉛筆硬度の何れも劣り、優れた機械特性が得られないものであった。」

オ 「【図1】



カ 【0103】【表1】(上記エ)には、実施例4の積層体は、耐スチールウール性が5(25mm円柱内に引掻き傷なし)であり、鉛筆硬度がHであることが記載されている。

キ 上記アないしカから、引用例1には、実施例1の中間膜の製造を変更した実施例4について、次の発明が記載されているものと認められる。なお、引用した箇所の段落番号を併記した。
「基材、中間膜、微細凹凸構造膜をこの順に積層してなる積層体であって(【0001】、【0055】、【図1】)、
厚さ80μmのPETフィルムを基材として用い、その上に、ビスフェノールA系エポキシアクリレート65.4g、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート32.6g、光重合開始剤として1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン2.0gを混合して得た塗布液を塗布、乾燥させ、次いで、フュージョン製UV照射装置を用いて光硬化させ、基材上に15μmの中間膜を形成させ(【0094】)、中間膜はH?5Hの鉛筆硬度を有し(【0071】)、
微細凹凸構造膜形成材料である光硬化性組成物を、上記中間膜が形成されたPETフィルムの中間膜側に採取、バーコーターNO28にて、均一な膜厚になるよう塗布し、その後、型を貼り合わせ、該型の細孔内に光硬化性組成物が充填されたことを確認して、フュージョン製UV照射装置によって、3.6J/cm^(2)の紫外線照射によって硬化させ、その後、膜を型から剥離し、表面に平均高さ300nmの凸部が平均周期200nmで存在する微細凹凸構造膜を得てなるものであり(【0091】)、微細凹凸構造膜の存在により、光の反射率を低減させており(【0022】、【0023】)、
耐スチールウール性は、下記測定方法によると5(25mm円柱内に引掻き傷なし)であり、鉛筆硬度はHであり(【0103】)、
光の反射防止性能、光の透過改良性能、機械特性等に優れる(【0012】)、
積層体。

[耐スチールウール性の測定方法]
積層体の表面上を、新東科学(株)社製の表面試験機ドライボギアTYPE-14DRを用い、25mm円柱の平滑な断面にスチールウール#0000を均一に貼り付け、荷重400gをかけながら、速度10cm/秒で10往復させたときの傷の付き具合を観察した(【0100】)。」(以下、「引用発明」という。)

(2)対比
ア 引用発明は、光の透過改良性能に優れた積層体であり、積層体全体として光透過性であるから、引用発明の基材として用いられる「PETフィルム」も光透過性であることは明らかであり、本願補正発明の「光透過性基板」に相当する。

イ 引用発明の「15μmの中間膜」は、「PETフィルム」(本願補正発明の「光透過性基板」に相当。以下「」に続く()内の用語は対応する本願補正発明の用語を表す。)上に形成され、H?5Hの鉛筆硬度を有し、ハードコート層であることは明らかであるから、本願補正発明の「光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層」に相当する。

ウ 引用発明の「微細凹凸構造膜」は、その存在により、光の反射率を低減させているから、本願補正発明の「反射防止層」に相当する。

エ 引用発明において、「微細凹凸構造膜」(反射防止層)は、「中間膜」(ハードコート層)が形成された「PETフィルム」(光透過性基板)の「中間膜」(ハードコート層)側に採取、バーコーターNO28にて、均一な膜厚になるよう塗布し、その後、型を貼り合わせ、該型の細孔内に光硬化性組成物が充填されたことを確認して、紫外線照射によって硬化させ、その後、膜を型から剥離し、表面に平均高さ300nmの凸部が平均周期200nmで得てなるものであるから、引用発明の「微細凹凸構造膜」(反射防止層)と、本願補正発明の「反射防止層」とは、「ハードコート層上に、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える」点で一致する。

オ 上記アないしエからみて、引用発明の「積層体」は、本願補正発明の「反射防止フィルム」に相当することは明らかである。

カ 上記アないしオからみて、本願補正発明と引用発明とは、
「光透過性基板と、
前記光透過性基板上に、膜厚が7μm以上となるように形成されたハードコート層と、
前記ハードコート層上に、可視光領域の波長以下の周期で形成された凹凸形状を表面に備える反射防止層と、
を有する
反射防止フィルム。」である点(以下、「一致点」という。)で一致し、次の点で相違する。

・相違点1
本願補正発明では、「反射防止層」が、「潤滑剤を含有」し、「前記反射防止層を形成する際に用いられる紫外線硬化性樹脂組成物中の反応性基由来の分子振動による赤外線の吸収強度の値を反応率0%、前記反応性基由来の吸収強度の消失後の値を反応率100%とした場合に」、「紫外線硬化性樹脂の反応率が60%以上」であるのに対し、
引用発明では、反射防止層が、上記構成を有しているかどうかが明らかでない点。

・相違点2
本願補正発明では、「ハードコート層」は、「鉛筆硬度がB?Hの範囲内」であるのに対し、
引用発明では、「ハードコート層」は、「H?5Hの鉛筆硬度を有する」点。

・相違点3
本願補正発明では、「反射防止層」が「膜厚が5μm?25μmの範囲内となるように形成され」、「反射防止層およびハードコート層の膜厚の比率が、反射防止層:ハードコート層=1.0:0.3?1.0:4.0の範囲内」であるのに対し、
引用発明では、「反射防止層」が「膜厚が5μm?25μmの範囲内となるように形成され」ているかどうかが明らかでなく、「反射防止層およびハードコート層の膜厚の比率が、反射防止層:ハードコート層=1.0:0.3?1.0:4.0の範囲内」であるかどうかも明らかでない点。

・相違点4
本願補正発明では、「反射防止フィルムのスチールウール耐性が100g/100mm^(2)以上である」のに対し、
引用発明では、上記「耐スチールウール性の測定方法」(上記(1))によれば、25mm円柱内に引掻き傷がないが、「反射防止フィルムのスチールウール耐性が100g/100mm^(2)以上である」かどうかが明らかでない点。

(3)判断
ア 相違点1について検討する。
(ア)引用例1の【0042】、【0051】及び【0052】(上記(1)ウ)には、微細凹凸構造膜は、変性シリコーンオイルを含有することが好ましく、変性シリコーンオイルを含有することによって、鉛筆硬度と関係して表面耐傷性等の機械特性の改良に効果的であることが記載されている。そして、変性シリコーンオイルが潤滑剤であることは技術常識であり、当該技術常識を踏まえれば、引用発明において、「微細凹凸構造膜」(反射防止層)に潤滑剤を含有させることは、引用例1に記載された事項に基づいて、当業者が容易になし得たことである。
(イ)引用例1の【0027】ないし【0029】(上記(1)ウ)には、微細凹凸構造膜は、(メタ)アクリル系重合性組成物が、光照射、電子線照射によって硬化したものであり、(メタ)アクリル系重合性組成物は、(メタ)アクリル基の炭素-炭素間二重結合の反応率は、85モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることが特に好ましく、反応率が低過ぎると、機械特性の低下や耐薬品性の低下をまねく場合があることが記載されている。当該記載事項や、一般的な技術常識としてアクリル基の反応率を高くすることが好ましいことを考慮すると、引用発明においても、各アクリレートのアクリル基の炭素-炭素間二重結合の反応率を85%以上の高い反応率となすことは、引用例1に記載された事項に基づいて、当業者が適宜なし得たことである。
(ウ)上記(ア)及び(イ)からみて、引用発明において、相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは、当業者が引用例1の記載事項に基づいて容易になし得たことである。そして、結果として、引用発明の「微細凹凸構造膜」(反射防止層)内における潤滑剤の挙動の自由度が抑制されることとなる。

イ 相違点2について検討する。
引用例1の【0071】(上記(1)ウ)には、積層体の表面の鉛筆硬度がH以上になるように調整されること、「中間層」(ハードコート層)の鉛筆硬度はH?5Hが好ましいことが記載されており、当該記載事項及び技術常識からみて、積層体の表面の鉛筆硬度は、「微細凹凸構造膜」(反射防止層)の材料や表面形状等の他に「中間層」(ハードコート層)の鉛筆硬度にも依存するから、引用発明において、積層体の表面の鉛筆硬度を適正とするために、「微細凹凸構造膜」(反射防止層)の材料や表面形状に応じて「中間層」(ハードコート層)の鉛筆硬度をHとなし、上記相違点2に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が引用例1の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。

ウ 相違点3について検討する。
(ア)原査定の拒絶の理由に引用文献3として引用された特開2009-230045号公報(以下「引用例2」という。)には、
「【実施例】
【0075】
下記の実施例を用いて、本発明の内容をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例の内容に限定して解釈されるものではない。
・・・略・・・
【0080】例1
反射防止積層体の調製
・・・反射防止層用組成物1を賦型用金型に滴下し上記TACフィルムを金型上に載せラミネータ(大成ラミネータ、MA-700)を用いてラミネートした後、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ社製)を用いて積算光量1000mJ/cm^(2)にて硬化させた。その後金型より剥離することでTACフィルム上にモスアイ構造を含む反射防止層を設けた反射防止積層体を得た。この時のモスアイ層および樹脂層の総厚みは5μmであった。
・・・略・・・
【0082】
例3
実施例1で用いたTACフィルム上にハードコート反射防止層用組成物1をミヤバーにて塗布した後、50度にて80秒間乾燥させ、その後積算光量60mJ/cm^(2)にて硬化させて膜厚10μmのハードコート層を形成した。その後、反射防止層用組成物3を用いて実施例1と同様にしてハードコート層上にモスアイ構造を有する反射防止層を設けた反射防止積層体を得た。」と記載されている。
そうすると、引用例2の実施例3の反射防止層及びハードコート層の膜厚の比率は、反射防止層:ハードコート層=1.0:2.0である。
(イ)引用例1の【0054】(上記(1)ウ)には、微細凹凸構造膜の膜厚は、0.1μm?10μmが好ましく、0.3μm?7μmがより好ましく、0.5μm?5μmが特に好ましく、微細凹凸構造膜の膜厚が小さ過ぎると、微細凹凸構造を転写しにくくなる場合があることが記載されている。
(ウ)上記(イ)からみて、引用発明の「微細凹凸構造膜」(反射防止層)の膜厚は、0.1μm?10μmの範囲で適宜決定し得るものであるところ、上記(ア)の引用例2の実施例3を参照すれば、具体的に5μmとすることは、当業者が適宜なし得ることである。そして、引用発明において、「微細凹凸構造膜」(反射防止層)の膜厚を5μmとした場合、「中間膜」(ハードコート層)の膜厚は15μmであり、反射防止層及びハードコート層の膜厚の比率は、反射防止層:ハードコート層=1.0:3.0となるから、本願補正発明の反射防止層及びハードコート層の膜厚の比率を満たすものである。
また、引用例2の反射防止層の膜厚を5μmとした実施例3においては、ハードコート層の膜厚は10μmであり、反射防止層及びハードコート層の膜厚の比率は、反射防止層:ハードコート層=1.0:2.0であるから、引用例2の実施例3における反射防止層及びハードコート層の膜厚を引用発明にそのまま採用したとしても、本願補正発明の反射防止層及びハードコート層の膜厚の比率を満たすものである。
(エ)以上のとおり、引用発明において、上記相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が引用例2の記載事項に基づいて適宜なし得たことである。

エ 相違点4について検討する。
(ア)引用発明の「耐スチールウール性の測定方法」は、25mm円柱の平滑な断面にスチールウール#0000を均一に貼り付け、荷重400gをかけながら、速度10cm/秒で10往復させたときの傷の付き具合を観察したのである。「25mm円柱の平滑な断面」は径25mmの円であるから、その面積を算出すると、491mm^(2) (=12.5mm×12.5mm×3.14)であり、100mm^(2)当たりの荷重を算出すると、81.5g/100mm^(2)(=400g/491mm^(2) ×100)となる。
(イ)本願の明細書には「【0093】 ここで、本発明におけるスチールウール耐性の値とは、スチールウール#0000で荷重をかけながら10往復摩擦試験を行い、裏面に黒テープを貼付した状態でキズが10本以下となる最大荷重の値を算出したものである。」と記載されている。
(ウ)引用例1の【0103】【表1】(上記(1)エ)の記載から、中間膜を有しない比較例1でも、耐スチールウール性が「4」(25mm円柱の一部に数本程度の引掻き傷あり)、すなわち、キズが10本以下であるから、上記(イ)からみて、比較例1における本願補正発明でいう「スチールウール耐性」は、81.5g/100mm^(2) であったといえる。そうすると、引用例1において、比較例1を上回る耐スチールウール性「5」(25mm円柱内に引掻き傷なし)を有する実施例4であれば、本願補正発明でいう「スチールウール耐性」が100g/100mm^(2) を上回る蓋然性が極めて高いといえる。仮に実施例4が100g/100mm^(2) を上回るとはいいきれないとしても、「スチールウール耐性」は、ハードコート層の特性だけに依存するわけではなく、反射防止層の材料や表面形状等にも依存するものであるから、引用発明において、必要とされる「スチールウール耐性」に応じて、相違点4に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が適宜なし得た設計的事項である。

オ 本願補正発明の奏する効果は、引用発明の奏する効果及び引用例2の記載事項の奏する効果から予測することができた程度のものである。

(4)独立特許要件のむすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。
よって、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4 小括
本件補正は、上記2のとおり、特許法第17条の2第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
また、仮に本件補正が特許法第17条の2第5項の規定に違反しないものだとしても、本願補正発明は、上記3のとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
本件補正は上記第2のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成27年4月27日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された事項によって特定されるものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2〔理由〕1(1)に本件補正前の請求項1として記載したとおりのものである。

2 引用例1
引用例1の記載事項は、上記第2〔理由〕3(1)に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記第2〔理由〕1に記載したとおり、「ハードコート層」について、その「鉛筆硬度」が「B?Hの範囲内であ」るという事項、及び、「反射防止フィルム」において、その「スチールウール耐性」が「100g/100mm^(2)以上である」という事項をそれぞれ削除したものである。
そうすると、本願発明と引用発明とは、上記第2〔理由〕3(2)に記載した相違点1及び3で相違する。
そして、引用発明において、相違点1及び3に係る本願補正発明の構成となすことは、上記第2〔理由〕3(3)ア及びウに記載したとおり、当業者が容易になし得たものであるから、本願発明は、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
本願発明は、以上のとおり、当業者が引用例1に記載された発明及び引用例2の記載事項に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-28 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-23 
出願番号 特願2011-125645(P2011-125645)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G02B)
P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 貴之最首 祐樹  
特許庁審判長 西村 仁志
特許庁審判官 多田 達也
鉄 豊郎
発明の名称 反射防止フィルム  
代理人 山下 昭彦  
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