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審決分類 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H05B
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 取り消して特許、登録 H05B
管理番号 1325801
審判番号 不服2015-21616  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-04 
確定日 2017-03-28 
事件の表示 特願2011-198945「有機エレクトロルミネッセンスパネルおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 4月 4日出願公開、特開2013- 62094、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年9月13日の出願であって、平成26年10月28日付けで拒絶の理由が通知され、同年12月8日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、平成27年4月8日付けで拒絶の理由が通知され、同年6月10日付けで意見書が提出されるとともに手続補正がなされ、同年10月5日付けで同年6月10日付けの手続補正が却下されるとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、同年12月4日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされ、その後、当審において平成28年10月28日付けで拒絶の理由(以下、「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月26日に意見書が提出されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1?10に係る発明は、平成28年12月26日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1?10に記載された事項により特定されるものと認められるところ、本願の請求項1?10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」?「本願発明10」という。)は以下のとおりである。
「【請求項1】
複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆可能な被覆部材とを備え、
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネルであって、
前記各有機エレクトロルミネッセンス素子の側面が互いに接触し、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が平面状に配置された状態で、前記被覆部材間が大気圧に対して減圧され、前記被覆部材の側縁部間が固定されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項2】
複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆可能な被覆部材とを備え、
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネルであって、
前記各有機エレクトロルミネッセンス素子の非発光領域となる側縁部同士が重なり合い、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が階段状に配置された状態で、前記被覆部材間が大気圧に対して減圧され、前記被覆部材の側縁部間が固定されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項3】
請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記被覆部材が、2つの部材からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項4】
請求項3に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記2つの被覆部材のうち、少なくとも一方が柔軟性を有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項5】
請求項3または4に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記2つの被覆部材のうち、少なくとも一方には前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を位置決めするための凹凸形状が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項6】
請求項3?5のいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子の一方の面が発光面とされ、
前記2つの被覆部材のうち、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子の発光面側に配置された被覆部材が、光透過性を有していることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項7】
請求項1または2に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記被覆部材が、1つの袋状の部材からなることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項8】
請求項7に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記被覆部材には、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を位置決めするための凹凸形状が形成されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項9】
請求項7または8に記載の有機エレクトロルミネッセンスパネルにおいて、
前記被覆部材が、柔軟性および光透過性を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンスパネル。
【請求項10】
複数の有機エレクトロルミネッセンス素子と、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆可能な被覆部材とを備え、
前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法であって、
前記各有機エレクトロルミネッセンス素子の側面を互いに接触させ、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を平面状に被覆部材間に配置する工程と、
前記被覆部材間を大気圧に対して減圧する工程と、
前記被覆部材の側縁部間を固定する工程と、
を備える有機エレクトロルミネッセンスパネルの製造方法。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
(1)特許法第29条第1項第3号(新規性)について
平成26年12月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-3、5、8、9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。



引用例1:特開平6-111936号公報

引用例1に記載された有機エレクトロルミネッセンスパネル及び製造方法と、平成26年12月8日付けの手続補正で補正された請求項1-3、5、8、9に係る有機エレクトロルミネッセンスパネル及び製造方法とで、相違する点がなく、両者は同一である。

(2)特許法第29条第2項(進歩性)について
平成26年12月8日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項4、6、7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例1:特開平6-111936号公報
引用例2:特開2005-236217号公報
引用例3:特表2010-514124号公報

引用例2には、複数の有機半導体素子を被覆部材間に挟持する際に、被覆部材に位置決めするための凹凸形状を形成することが記載されており、当業者であれば、引用例1に記載された発明及び前記引用例2に記載された事項に基づいて、平成26年12月8日付けの手続補正で補正された請求項4に係る発明を導きだすことは、容易に想到し得たことである。
引用例3には、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子を被覆部材間に挟持する際に、被覆部材を1つの袋状の部材とすることが記載されており、当業者であれば、引用例1に記載された発明及び前記引用例3に記載された事項に基づいて、平成26年12月8日付けの手続補正で補正された請求項6に係る発明を導きだすことは、容易に想到し得たことである。
さらに、当業者であれば、引用例1に記載された発明及び前記引用例2、3に記載された事項に基づいて、平成26年12月8日付けの手続補正で補正された請求項7に係る発明を導きだすことは、容易に想到し得たことである。

2 原査定の理由の判断
(1)引用例の記載事項
ア 引用例1について
引用例1には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電界発光灯の製造方法に関し、詳しくは封止の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の電界発光灯の製造方法について図面を参照して説明する。
【0003】図4は封止工程を示す。図に於いて、片面にホットメルト層3aを有する防湿フィルム3をホットメルト層3aが内側に向かい合うように、上下にセットし、この間に、黒矢印方向に電界発光素子1を投入し、加熱した上下ロール14で白矢印で示すように防湿フィルム3の上下から加熱下に押圧することによって電界発光灯2を製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の電界発光灯の製造方法では図5の電界発光灯断面図に示すように、封止の際にげ場を失った空気5も封止してしまう。このため、封止性能が低下しないよう外周部の寸法Lを大きくすることにより封止しろWを確保している。しかし、外周部寸法Lは非発光部であり、製品実装上大きくすることは好ましくない。電界発光灯を小型化する場合の障害となるという問題点があった。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題の解決手段として本発明では電界発光素子と防湿フィルムをセットし、隔壁シートで挟んだ物を真空中で加熱し、大気圧に戻すときの圧力差で間接的に封止することを特徴とするものである。また、第二の手段としては、上述と同様に真空加熱し、隔壁シートの外部から圧縮空気を使って加圧し、封止することを特徴とする。
【0006】
【作用】本発明による電界発光灯の製造方法では真空中で加熱し大気圧差で封止する方法により空気が存在しない封止が出来るので外周寸法Lの全てを封止しろにすることができる。
【0007】
【実施例】以下本発明の一実施例を図1?図3を参照しながら説明する。
【0008】まず、図1に示すように電界発光素子1と防湿フィルム3の相互の位置合わせを行いヒートシールで斜線部を仮止めする。次に図2のように上記仮止め品をシリコンゴム等の隔壁シート10,11で上下からはさみ、真空オーブン12中にセットする。オーブン12で加熱し、吸排気孔13より真空引きを行った後、隔壁シート10の上面より、大気圧にリークさせる事により図3の断面図に示すように隔壁シート内部が真空状態のまま外側が大気圧になることから、この圧力差で白ぬき矢印方向に力が加わり間接的に防湿フィルム3のホットメルト層3a相互が接着、封止される。
【0009】図1の仮止めは、図の場所でなくても良いし、辺状でなくポイントでも良い。また、ヒートシールによらなくても、接着剤、テープ等で行っても良い。また、省略し、各々の材料を真空オーブン内にセットしても良い。
【0010】隔壁シート10,11はポリエステルフィルム等の樹脂フィルムでも良い。下面シート11は省略し、金属板でも良い。また、大気圧にリークさせるだけでなく、圧縮空気を注入し、加圧しても良い。隔壁シート10,11間のからの大気圧リークを遅らせるため、上面シート10より、下面シート11を小さくする方が効果は大きい。」

(イ)「【図1】

【図2】

【図3】



(ウ)引用例1の【図1】(上記(イ))には、複数の電界発光素子1が2枚の防湿フィルム3により上下から挟まれていることが記載され、さらに引用例1の【図2】(上記(イ))には、前記【図1】に記載された複数の電界発光素子1及び2枚の防湿フィルム3が、隔壁シート10及び隔壁シート11により上下から挟まれて、真空オーブン12内に配置されることが記載され、引用例1の【図3】(上記(イ))には、複数の電界発光素子1が、2枚の防湿フィルム3及び隔壁シート10、11により挟まれて被覆されていることが記載されている。
そうすると、前記引用例1の【図1】ないし【図3】の記載からみて、引用例1には、電界発光灯が、複数の電界発光素子1、2枚の防湿フィルム3及び隔壁10、11を備えること、及び2枚の防湿フィルム3及び隔壁フィルム10、11が、複数の電界発光素子を被覆可能であることが記載されているといえる。

(エ)引用例1には「図3の断面図に示すように・・・略・・・この圧力差で白ぬき矢印方向に力が加わり間接的に防湿フィルム3のホットメルト層3a相互が接着、封止される。」(段落【0008】、上記(ア))と記載されているとともに、引用例1の【図3】(上記(イ))には、電界発光素子1が、2枚の防湿フィルム3の側縁部に位置する封止しろWにおいて、ホットメルト層3a同士の相互接着により封止されていることが記載されており、これら各記載からみて、引用例1には、電界発光素子1は、2枚の防湿フィルム3の側縁部に位置する封止しろWにおいて、ホットメルト層3aの相互接着により、封止されることが記載されているといえる。

(オ)引用例1の【図3】(上記(イ))において、ホットメルト層3aの相互接着により封止された電界発光灯の、2枚の防湿フィルム3と電界発光素子1との間に、ホットメルト層3aが存在していることが明らかであることから、引用例1には、電界発光灯の複数の電界発光素子1が、ホットメルト層3aを介して2枚の防湿フィルム3に挟まれた状態で封止されることが記載されているといえる。

(カ)上記(ア)ないし(オ)から、引用例1には次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
「複数の電界発光素子1、2枚の防湿フィルム3及び隔壁10、11を備え、前記2枚の防湿フィルム3及び前記隔壁フィルム10、11が、複数の電界発光素子を被覆可能である、電界発光灯であって、
前記複数の電界発光素子1と前記2枚の防湿フィルム3の相互の位置合わせを行いヒートシールで仮止めし、前記仮止めしたものをシリコンゴム等の隔壁シート10,11で上下からはさみ、真空オーブン12中にセットし、前記真空オーブン12で加熱し、吸排気孔13より真空引きを行った後、前記隔壁シート10の上面より、大気圧にリークさせる事により、前記隔壁シート10、11の内部が真空状態のまま外側が大気圧になることから、この圧力差で前記隔壁シート10の上面から力が加わり、間接的に前記2枚の防湿フィルム3のホットメルト層3a相互が接着、封止され、
前記電界発光素子1は、前記2枚の防湿フィルム3の側縁部に位置する封止しろWにおいて、前記ホットメルト層3aの相互接着により、前記ホットメルト層3aを介して、前記2枚の防湿フィルム3に挟まれた状態で封止される、
電界発光灯。」

イ 引用例2について
引用例2には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0053】
図3は本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法の一例における太陽電池モジュールの構造を示す図である。図3は特に太陽電池モジュール用封止材である受光面側封止材22に太陽電池素子及び/または接続タブを嵌め込むための位置決め凹部が設けられたものを示している。
【0054】
図3において、21は透光性基板、22は受光面側封止材、23は太陽電池素子、24は裏面側封止材、25は裏面シート、26は接続タブ、27は受光面側封止材に設けられた位置決め凹部である。
【0055】
以下、各部材について説明する。
【0056】
透光性基板21としては、ガラスやポリカーボネート樹脂などからなる基板が用いられる。ガラス板ついては、白板ガラス、強化ガラス、倍強化ガラス、熱線反射ガラスなどが用いられるが、一般的には厚さ3mm?5mm程度の白板強化ガラスが使用される。他方、ポリカーボネート樹脂などの合成樹脂からなる基板を用いた場合には、厚みが5mm程度のものが多く使用される。
【0057】
太陽電池モジュール用封止材である受光面側封止材22及び裏面側封止材24は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(以下EVAと略す)やポリビニルブチラール(PVB)から成り、Tダイと押し出し機により厚さ0.4?1mm程度のシート状に成形されたものが用いられる。これらはラミネート装置により減圧下にて加熱加圧を行うことで、軟化、融着して他の部材と一体化する。
【0058】
EVAやPVBは、酸化チタンや顔料等を含有させ白色等に着色させることがあるが、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法における受光面側封止材22においては、着色させると太陽電池素子23に入射する光量が減少し、発電効率が低下するため透明とする。

・・・略・・・

【0068】
次に太陽電池モジュールの作製方法について述べる。
【0069】
太陽電池モジュールを作製するにあたっては、透光性基板21上に太陽電池素子23及び接続タブ26を嵌め込むための位置決め凹部27を形成した受光面側封止材22を、位置決め凹部27の形成された面が透光性基板21と対向する受光面側封止材22の面の反対側になるように上に置く。接続タブ26を接続した太陽電池素子23を受光面側封止材22の位置決め凹部27に嵌め込むように置く。さらにその上に裏面側封止材24、裏面シート25を順次積層する。このような状態にして、ラミネーターにセットし、減圧下にて加圧しながら100?200℃で例えば15分?1時間加熱することにより、これらが一体化する。
【0070】
このように受光面側封止材22に太陽電池素子23及び接続タブ26を嵌め込むための位置決め凹部を設けることで、ラミネート時の加圧においてその位置決め凹部27により太陽電池素子23に圧力がかかることが無くなりラミネートにおいて太陽電池素子23に割れや欠けが発生することがなくなる。」

(イ)「【図3】



(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用例2には次の技術事項(以下、「引用例2の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「透光性基板21上に置かれた受光面側封止部材22、前記受光面側封止部材22に置かれた太陽電池素子23、さらにその上に裏面側封止材24、裏面シート25を順次積層し、ラミネーターにセットし、減圧下にて加圧しながら100?200℃で例えば15分?1時間加熱することにより、これらが一体化されてなる太陽電池モジュールにおいて、前記受光面側封止部材22には、前記太陽電池素子23及び接続タブ26を嵌め込むための位置決め凹部27が形成され、前記位置決め凹部27の形成された面が透光性基板21と対向する受光面側封止材22の面の反対側になるように上に置かれ、接続タブ26を接続した太陽電池素子23を受光面側封止材22の位置決め凹部27に嵌め込むように置くこと。」


ウ 引用例3について
引用例3には、次の事項が図とともに記載されている。
(ア)「【0039】
以下の記載では、透明多層バリアを有するOLEDパッケージを参照して、本発明について説明する。この透明多層バリアは、内側に設置された内部物質結合部材を有する内側バリアフォイルと、内側に提供された中間物質結合部材を有する外側バリアフォイルと、によって形成される。OLEDは、バリアフォイルの熱シール処理によって取り囲まれる。

・・・略・・・

【0046】
図1bに示すように、OLED2および担体3の装置支持部分4は、内部バリア層10により取り囲まれる。内部バリア層10は、上部膜シート11aおよび下部膜シート11bにより形成され、これらは、担体3の導出部分5に対応する周辺部分を除き、内側バリア層10の周囲12に沿って、相互に熱シールされる。上部11aおよび下部11bの膜シートは、それぞれ、導出部分5の上部面13aおよび下部面13bに熱シールされる。内側バリア層10の内側、ここでは下部膜シート11bの上部には、内部物質結合部材14が提供され、これは、内側バリア層10に侵入した物質の分子と結合する。
【0047】
内側バリア層10は、今度は、外側バリア層15によって取り囲まれ、この外側バリア層15は、内側バリア層10について示したように、上部膜シート16aおよび下部膜シート16bによって形成される。外側バリア層15の内側、ここでは下部膜シート16bの上部には、中間物質結合部材17が提供され、これは、外側バリア層15に侵入した物質の分子と結合する。これにより、内側バリア層10に侵入することができる物質の分子数が有効に抑制される。
【0048】
図1bおよび対応する前述の記載において、内側バリア層10および外側バリア層15は、上部および下部膜シートの形態で提供される。当業者には明らかなように、内側バリア層10および外側バリア層15は、密閉時に片側のみが封止された、単なる袋の形態で提供されても良い。」

(イ)「【図1b】



(ウ)上記(ア)及び(イ)から、引用例3には次の技術事項(以下、「引用例3の技術事項」という。)が記載されているものと認められる。
「OLED2および担体3の装置支持部分4は、内部バリア層10により取り囲まれ、内側バリア層10は、今度は、外側バリア層15によって取り囲まれる透明多層バリアを有するOLEDパッケージにおいて、内側バリア層10および外側バリア層15は、密閉時に片側のみが封止された、袋の形態であること。」

(2)対比及び判断
ア 本願発明1と引用発明との対比及び判断
(ア)本願発明1と引用発明とでは、少なくとも以下の点で相違する。

相違点1:
本願発明1は、複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、「接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定され」るのに対し、
引用発明は、複数の電界発光素子1が、ホットメルト層3aを介して2枚の防湿フィルム3に挟まれた状態で封止される点。

相違点2:
本願発明1は、「複数の有機エレクトロルミネッセンス素子」を備える「有機エレクトロルミネッセンスパネル」であるのに対し、
引用発明は、複数の電界発光素子1を備える電界発光灯であって、電界発光素子1が、有機エレクトロルミネッセンス素子であるかどうか、明らかでなく、電界発光灯が有機エレクトロルミネッセンスパネルであるかどうか、明らかでない点。

相違点3:
本願発明1は、「複数の有機エレクトロルミネッセンス素子」が、「各有機エレクトロルミネッセンス素子の側面が互いに接触し、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が平面状に配置された状態」であるのに対し、
引用発明は、複数の電界発光素子1を備えているものの、各電界発光素子1の側面が互いに接触し、平面上に配置されているかどうか、明らかでない点。

(イ)上記(ア)からみて、引用発明は、上記相違点1ないし3において本願発明1と相違していることから、本願発明1は、引用発明と同一でなく、引用例1に記載された発明ではない。

(ウ)上記相違点1について検討する。
a 引用例1には、ホットメルト層3a(本願発明1の「接着剤」に相当。以下、「」の後の()内は、対応する本願発明1の構成である。)の相互接着によって、複数の電界発光素子1を封止しているものである。

b 引用例1には、前記ホットメルト層3a(接着剤)を除外して、複数の電界発光素子1が、防湿フィルム3(被覆部材)に直接的に密着された状態で挟まれることについて、記載も示唆もない。

c 上記aで示したように、引用例1においてはホットメルト層3a(接着剤)の相互接着及び封止を行うものであるところ、上記bのとおりであるから、引用例1の記載に接した当業者にとって、前記ホットメルト層3aを除外することは、容易に想到し得たことであるとはいえない。

d 引用例2及び3にも、発光素子が、接着剤を介さずに被覆部材により直接的に密着された状態で挟持、固定されることについて記載されておらず、また、発光素子を接着剤を介さずに被覆部材により挟持して固定することが、本件出願日前において周知技術であったということもできない。

e 以上のとおりであるから、当業者が引用発明、引用例2及び引用例3の技術事項に基づいて、上記構成のようになすことは容易に想到し得たことであるとはいえない。

f よって、上記相違点2及び相違点3については検討するまでもなく、本願発明1は、当業者が引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて容易に想到し得たものでもない。

イ 本願発明2と引用発明との対比及び判断
(ア)本願発明2と引用発明とでは、上記ア(ア)で示した相違点1及び2に加えて、以下の点で相違する。

相違点4:
本願発明2は、「複数の有機エレクトロルミネッセンス素子」が、「前記各有機エレクトロルミネッセンス素子の非発光領域となる側縁部同士が重なり合い、前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が階段状に配置された状態」であるのに対し、
引用発明は、複数の電界発光素子1を備えているものの、各電界発光素子1の側面部同士が重なり合い、階段状に配置されているかどうか、明らかでない点。

(イ)よって、本願発明2は、引用発明と同一でなく、引用例1に記載された発明ではない。

(ウ)そして、相違点1について、上記ア(ウ)で示したように、当業者であっても引用発明、引用例2及び引用例3に記載された事項に基づいて、相違点1に係る本願発明2の構成のようになすことは容易に想到し得たことであるとはいえないから、上記相違点2及び相違点4については検討するまでもなく、本願発明2は、当業者が引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて容易に想到し得たものでもない。

ウ 本願発明3ないし本願発明9と引用発明との対比及び判断
本願発明3ないし9は、請求項1(本願発明1)または請求項2(本願発明2)の記載を引用する発明であって、本願発明1または本願発明2の上記相違点1に係る構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本願発明1または本願発明2と同じ理由により、本願発明3ないし本願発明9は、引用例1に記載された発明ではなく、かつ、当業者が引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて容易に想到し得たものでもない。

エ 本願発明10と引用発明との対比及び判断
本願発明10は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点1に係る構成に対応する構成を備えるものである。したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明10は、引用例1に記載された発明ではなく、かつ、当業者が引用例1ないし引用例3に記載された発明に基づいて容易に想到し得たものでもない。

(3)小括
上記(2)からみて、本願発明1ないし10は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物に記載された引用例1に記載された発明ではなく、また、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された引用例1ないし引用例3に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたとはいえない。
よって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することができない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本願は、平成27年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。



本願明細書の発明の詳細な説明には、接着剤を用いることと有機エレクトロルミネッセンス素子単位での交換が困難になることを課題として、当該課題を解決するために、2つの被覆部材が接着剤(層)を介さないで複数の有機エレクトロルミネッセンス素子に直接的に密着して、これらを挟持、固定することが記載されているところ、平成27年12月4日付けの手続補正で補正された請求項1及び9には、「複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が前記被覆部材間に挟持され」るとしか記載されておらず、当該記載は被覆部材が接着剤(層)を有しているもの等も含み得る記載であって、その場合にどのようにして前記本件の課題を解決し得るのか、不明であるので、平成27年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び9、並びに請求項1の記載を引用する請求項2?8に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

(2)特許法第36条第6項第2号(明確性)について
本願は、平成27年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の記載が下記の点で不備であり、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。



平成27年12月4日付けの手続補正で補正された請求項1及び9には、「被覆部材間に挟持され」るとの記載、及び「被覆可能な被覆部材」との記載がされているところ、「挟持」とは接着剤層等を介した挟持を含むのか、「被覆部材」とは接着剤層等を有したものを含むのか、明確ではないので、平成27年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1及び9、並びに請求項1の記載を引用する請求項2?8に係る発明は、明確ではない。

(3)特許法第29条第2項(進歩性)について
平成27年12月4日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



引用例A:特開平6-111936号公報(原査定の引用例1)
引用例B:特開2004-185945号公報
引用例C:特開2001-52865号公報
引用例D:特開平10-208877号公報
引用例E:特開平8-185975号公報
引用例F:特開2005-236217号公報(原査定の引用例2)
引用例G:特表2010-514124号公報(原査定の引用例3)

2 当審拒絶理由の判断
(1)特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
平成28年12月26日付け手続補正書によって、本願の請求項1及び10は「・・・前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネル・・・」と補正された。
また、平成28年12月26日付け手続補正書によって、新たに追加された請求項2にも「・・・前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネル・・・」との記載がなされている。
これらのことにより、請求項1、2及び10、並びに請求項1又は2の記載を引用する請求項3?9に係る発明は、発明の詳細な説明に記載されたものとなった。
よって、上記1(1)で示した当審拒絶理由は解消した。

(2)特許法第36条第6項第2号(明確性)について
平成28年12月26日付け手続補正書によって、本願の請求項1及び10は「・・・前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネル・・・」と補正された。
また、平成28年12月26日付け手続補正書によって、新たに追加された請求項2にも「・・・前記複数の有機エレクトロルミネッセンス素子が、接着剤を介さずに前記被覆部材に直接的に密着された状態で、前記被覆部材間に挟持されて固定された有機エレクトロルミネッセンスパネル・・・」との記載がなされている。
これらのことにより、請求項1、2及び10、並びに請求項1又は2の記載を引用する請求項3?9に係る発明は、明確なものとなった。
よって、上記1(2)で示した当審拒絶理由は解消した。

(3)特許法第29条第2項(進歩性)について
ア 引用例の記載事項
(ア)引用例A(原査定の引用例1)について
引用例Aには、上記「第3 2(1)ア(ア)?(オ)」に示した事項が記載されており、前記記載事項からみて、引用例Aには、上記「第3 2(1)ア(カ)」に示した引用発明が記載されている。

(イ)引用例F(原査定の引用例2)について
引用例Fには、上記「第3 2(1)イ(ア)及び(イ)」に示した事項が記載されており、前記記載事項からみて、引用例Fには、上記「第3 2(1)イ(ウ)」に示した引用例2の技術事項が記載されている。

(ウ)引用例G(原査定の引用例3)について
引用例Gには、上記「第3 2(1)ウ(ア)及び(イ)」に示した事項が記載されており、前記記載事項からみて、引用例Fには、上記「第3 2(1)ウ(ウ)」に示した引用例3の技術事項が記載されている。

イ 周知技術
(ア)引用例Bの記載事項
引用例Bには、次の事項が図とともに記載されている。
a 「【0003】
ところで、有機EL素子を用いた表示装置を大画面化するにあたっては、複数の小型パネルを平面的に繋ぎ合わせることにより、一つの大きな表示画面を構成する技術(例えば、特許文献1参照)が知られている。この場合、高精細な表示画面を実現するためには、繋ぎ合わせた部分(繋ぎ目)を目立たなくするように≡ぎ目での画素間の距離をできるだけ小さくすることが要求される。ところが、一般に、画素回路や配線、画素電極、さらには有機膜等のパターンを、基板の端面にまで形成することは困難である。

・・・略・・・

【0022】
以上の後、図1(4)および図5に示すように、切断された(切り溝7aが設けられた)素子基板1の機能領域3における表示部3a上に有機膜13を形成し、さらにこの有機膜13が形成された機能領域3上に上部電極(例えば陰極)の形成を行うことで、機能領域3の表示部3aに有機EL素子を完成させる。また、その後、必要に応じて保護膜の形成を行う。これらの各形成工程では、各製造装置において、素子基板1のアライメントマーク5を用いた位置合わせが行われることとする。
【0023】
そして次に、図1(5)および図6に示すように、先ず、素子基板1に切り溝7aが設けられている場合には、スクライブ・ブレークにより、切り溝7aに沿って素子基板1を完全に分割する。尚、この状態においては、支持基板9上に、全ての素子基板1の分割部分が固定された状態となっている。
【0024】
その後、支持基板9を、機能領域3に沿って切断する。これにより、支持基板9および素子基板1の周縁部(アライメントマーク5の形成部)を除去して小型の表示パネル15を形成する。この支持基板9の切断に際しては、表示パネル15に残された素子基板1(つまり機能領域3)から、切断によって残された支持基板9がはみ出すことのないように、素子基板1の機能領域3の周縁よりも内側で支持基板9を切断することが好ましい。
【0025】
次いで、以上のようにして形成された小型の表示パネル15を繋ぎ合わせる。
【0026】
この場合、先ず、図7の平面図に示すように、4枚の表示パネル15を、その表示部3a側の切断面を突き合わせる様に配置する。この状態において、表示部3a間の間隔を、分割部分での画素ピッチが他の部分と同一になるように、4枚の表示パネル15を配置する。この際、表示パネル15においては、素子基板1よりも小さめに支持基板9が分割されているので、このような配置状態が支持基板9によって阻害されることはない。
【0027】
以上のように4枚の表示パネル15を配置することにより、これらの表示パネル15の4つの表示部3aによって、1枚の大型の表示画面17を形成する。この表示画面17は、その周囲が周辺回路部3bで囲まれた状態となる。
【0028】
次に、図7のように配置された表示パネル15の素子基板1側に、図8に示すように封止基板19を対向配置し、封止剤21を介して4枚の表示パネル15(図8においては2枚のみを図示)を封止基板19に貼り合わせ固定する。」

b「【図7】



(イ)引用例Cの記載事項
引用例Cには、次の事項が図とともに記載されている。
a 「【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の技術の場合、有機EL表示装置は、次世代の表示装置として期待されており、構造が簡単であることから大画面の表示装置の可能性も大きい。しかし、従来の有機EL表示装置は、1枚のガラス板に真空蒸着等により発光層の形成等を行うため、真空装置の大きさにより1枚のガラス板の大きさには限度があった。また、複数の表示装置を並べて大画面を形成するものもCRT等ではあるが、その場合、表示装置間に非表示部が形成され、表示品質が良くないものであった。
【0004】この発明は、上記従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、容易に大画面の有機EL表示装置を形成することができ、表示品質も良好な有機EL表示装置とその製造方法を提供することを目的とする。

・・・略・・・

【0008】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施形態について図面に基づいて説明する。この実施形態の有機EL表示装置に用いる表示素子11は、ガラスや石英、樹脂等の透明な基板10の一方の表面に、ITOやSnO_(2)等の透明な電極材料による透明電極12がストライプ状に等ピッチで形成されている。透明電極12の表面全面には、100?500Å程度の厚さにCuPc(銅フタロシアン)のバッファ層が形成され、さらにその表面に300?700Å程度の厚さのホール輸送材料が形成されている。

・・・略・・・

【0012】この後、図2,図3に示すように、分離端部20を再度分離除去し、同様にして形成した基板10の端面10a同士を接合する。このとき、基板10の発光層14が形成された側とは反対側の面には、この基板10の2倍の大きさで形状も等しい透明保持基板22を設け、その透明保持基板22に基板10を貼り付ける。透明保持基板22は、ガラスやプラスチックまたは透明なシートでも良い。」

b 「【図2】

【図3】



(ウ)引用例Dの記載事項
引用例Dには、次の事項が図とともに記載されている。
a 「【0009】
【発明の実施の形態】本発明の電界発光灯の第一の実施例について図1、図2、図3を参照しながら説明する。本発明の大型化した電界発光灯35は図1(a)の断面図及び図1(b)の平面図に示すような構造をしている。その製造方法を図2を用いて説明する。まず、図2(a)の断面図に示すようにアルミ箔等からなる裏面電極1上にチタン酸バリウム等の白色高誘電体物を樹脂中に分散させた反射絶縁層2、硫化亜鉛を銅で付活した蛍光体を樹脂中に分散した発光層3、酸化インジウム等の透明導電粉末を熱可塑性の樹脂に分散させた透明導電層4を順次印刷し、積層シ-ト5を形成する。次に透明フィルム6aにITOなどの透明電極6bを蒸着形成した透明導電フィルム6の透明電極6b上の所定の箇所に銀ペースト等からなる集電帯7を印刷形成し、集電帯7からリード電極8aを導出する。次に、積層シート5の透明導電層4の端部a部が露出するように透明導電フィルム6を透明導電層4上に熱圧着で貼り付け、電界発光素子9を得る。
【0010】次に図2(b)の断面図に示すように別のアルミ箔等からなる裏面電極11上にチタン酸バリウム等の白色高誘電体物を樹脂中に分散させた反射絶縁層12、硫化亜鉛を銅で付活した蛍光体を樹脂中に分散した発光層13、酸化インジウム等の透明導電粉末を熱可塑性の樹脂に分散させた透明導電層14を順次印刷し、積層シート15を形成する。次に透明フィルム16a上にITOなどの透明電極16bを蒸着形成した透明導電フィルム16の透明電極16b上の所定の箇所に銀ペースト等かなる集電帯17を印刷形成し、透明導電フィルム16のb部及び積層シート15の透明導電層14の端部cが露出するように透明導電フィルム16を透明導電層14上に位置をずらして熱圧着で貼り付け、電界発光素子19を得る。
【0011】次に、図2(c)の断面図に示すように別のアルミ箔等からなる裏面電極21上にチタン酸バリウム等の白色高誘電体物を樹脂中に分散させた反射絶縁層22、硫化亜鉛を銅で付活した蛍光体を樹脂中に分散した発光層23、酸化インジウム等の透明導電粉末を熱可塑性の樹脂に分散させた透明導電層24を順次印刷し、積層シート25を形成する。次に透明フィルム26a上にITO等の透明電極26bを蒸着形成した透明導電フィルム26の透明電極26b上の所定の箇所に銀ペースト等からなる集電帯27を印刷形成し、透明導電フィルム26のd部が露出するように食み出させて透明導電フィルム26を透明導電層24上に熱圧着で貼り付け、電界発光素子29を得る。
【0012】次に、図3の断面図に示すようにリード電極8bを導出したアルミ箔等からなる導電シート30の上に前記の各電界発光素子9,19,29の裏面電極1,11,21が電気的に接続し、かつ電界発光素子9のa部と電界発光素子19のb部、電界発光素子19のc部と電界発光素子29のd部が電気的に接続するように配置し、透明フィルム31a上に熱可塑性の接着層31bを形成した外皮フィルム31で上下から熱圧着で封止し大型の電界発光灯35を得る。
【0013】 ここで、それぞれの電界発光素子9,19,29の発光層3,13,23の上には印刷された透明導電層4,14,24が配置されているため、これらの透明導電層と集電帯7,17,27を介して3つの電界発光素子9,19,29の透明電極6b,16b,26bを接続することができ、1つのリード電極で同時に3つの電界発光素子に給電することができる。また、電界発光素子のつなぎ目に段差ができず、透明電極のつなぎ目に隙間が生じても集電帯7,17,27と発光層上の透明導電層4,14,24によって発光層3,13,23に電界が印加されるため不発光部が生じることもない。」

b 「【図3】



(エ)引用例Eの記載事項
引用例Eには、次の事項が図とともに記載されている。
a 「【0012】各ELランプは、その同一の要素同志の各端面を当接して一体化され且つ防湿フイルムで被覆され、本発明の大型ELランプを構成する。一体化の手段としては、特に制限されず、当接された背面電極(1)、(1)の当接ライン上に導電性材料を設ける方法、接着剤を塗布する方法、当接された集電帯(5)、(5)の当接ライン上に導電性材料を設ける方法、当接された透明電極(2)、(2)の当接ライン上に接着剤を塗布する方法、コの字型の留め具で当接面の両端部を挟み込む方法などが挙げられる。」

b 「【図1】

【図2】

【図3】



(オ)引用例B及びCに記載された周知技術
上記(ア)及び(イ)からみて、以下の技術が本願出願日前において周知であったと認められる(以下、「周知技術1」という。)。
「複数の電界発光素子を被覆部材間に配置した電界発光灯において、電界発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子を備え、電界発光灯を有機エレクトロルミネッセンスパネルとすること。」

(カ)引用例Cないし引用例Eに記載された周知技術
上記(イ)ないし(エ)からみて、以下の技術が本願出願日前において周知であったと認められる(以下、「周知技術2」という。)。
「複数の電界発光素子を有した電界発光灯において、複数の電界発光素子の側面を互いに接触するように平面上に配置すること。」

ウ 対比及び判断
(ア)本願発明1と引用発明との対比及び判断
a 本願発明1と引用発明とを比較すると、上記「第3 2(2)ア(ア)」で示した上記相違点1ないし3において、少なくとも相違する。

b そして、上記相違点1については、上記「第3 2(2)ア(ウ)」で示したように、当業者であっても引用発明、引用例F(原査定の引用例2)及び引用例G(原査定の引用例3)の技術事項に基づいて、上記相違点1に係る本願発明1の構成のようになすことは容易に想到し得たことであるとはいえない。

c さらに、上記イ(ア)ないし(オ)からみて、上記相違点1に係る本願発明1の構成は、引用例BないしEにも特段記載ないし示唆もなく、上記イ(オ)及び(カ)を参酌しても、本願出願日前において周知技術であったともいえない。

d したがって、上記相違点2及び相違点3については検討するまでもなく、本願発明1は当業者が引用例Aないし引用例Gに記載された発明に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。

(イ)本願発明2と引用発明との対比及び判断
a 本願発明2と引用発明とを比較すると、上記「第3 2(2)イ(ア)」で示した上記相違点1、2及び4において、少なくとも相違する。

b そして、上記相違点1については、上記(ア)b及びcと同様の判断のとおりであるから、上記相違点2及び相違点4については検討するまでもなく、本願発明2は当業者が引用例Aないし引用例Gに記載された発明に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。

(ウ)本願発明3ないし本願発明9と引用発明との対比及び判断
本願発明3ないし9は、請求項1(本願発明1)または請求項2(本願発明2)の記載を引用する発明であって、本願発明1または本願発明2の上記相違点1に係る構成と同一の構成を備えるものである。したがって、本願発明1または本願発明2と同じ理由により、本願発明3ないし本願発明9は当業者が引用例Aないし引用例Gに記載された発明に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。

(エ)本願発明10と引用発明との対比及び判断
本願発明10は、本願発明1に対応する方法の発明であり、本願発明1の上記相違点1に係る構成に対応する構成を備えるものである。したがって、本願発明1と同じ理由により、本願発明10は当業者が引用例Aないし引用例Gに記載された発明に基づいて容易に想到し得たものであるとはいえない。

エ 上記アないしウから、上記1(3)で示した当審拒絶理由は解消した。

(4)小括
そうすると、もはや、当審で通知した拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審で通知した拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-14 
出願番号 特願2011-198945(P2011-198945)
審決分類 P 1 8・ 537- WY (H05B)
P 1 8・ 113- WY (H05B)
P 1 8・ 121- WY (H05B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 川口 聖司  
特許庁審判長 中田 誠
特許庁審判官 渡邉 勇
鉄 豊郎
発明の名称 有機エレクトロルミネッセンスパネルおよびその製造方法  
代理人 特許業務法人光陽国際特許事務所  

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