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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C11B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C11B
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C11B
管理番号 1325833
異議申立番号 異議2016-700396  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-06 
確定日 2017-01-23 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5803002号発明「香料組成物及びそれを含む繊維製品用処理剤組成物」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5803002号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。 特許第5803002号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。  
理由 第1 手続の経緯

特許第5803002号の請求項1ないし3に係る特許(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成23年6月24日に特許出願されたものであって、平成27年9月11日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許について、平成28年5月6日に、特許異議申立人番場大円により特許異議の申立てがなされ、同年7月14日付けで取消理由が通知され、その指定期間内である同年9月20日に意見書の提出及び訂正の請求(以下、「本件訂正請求」という。)があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人番場大円から同年11月11日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断

(1)訂正の内容

本件訂正請求による訂正の内容は、以下のとおりである。

ア 訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「(1)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5である。」と記載されているのを、「(1)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、β-イオノン、又は、β-イオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及び酢酸ノピルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、」に訂正する。

イ 訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「(2)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.1?0.4であり、香料成分(C)の含有量が0?0.1であり、香料成分(D)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.01?0.2である。」と記載されているのを、「(2)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.1?0.4であり、香料成分(C)の含有量が0?0.1であり、香料成分(D)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.01?0.2であり、
香料成分(A)が、シトラール、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン、又は、γ-メチルイオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(D)が、へディオン及びサリチル酸ベンジルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、」に訂正する。

ウ 訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1に「(3)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(C)の含有量が1.5?2であり、香料成分(D)の含有量が1?2であり、香料成分(E)の含有量が0?0.5である。」と記載されているのを、「(3)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(C)の含有量が1.5?2であり、香料成分(D)の含有量が1?2であり、香料成分(E)の含有量が0?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、ヘリオトロピン及びリリアールからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン及びβ-イオノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトン及びクマリンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及びジャスマサイクレンからなる、」に訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無、特許請求の範囲の拡張・変更の存否及び、一群の請求項について

訂正事項1?3は、条件(1)?(3)において用いる香料成分(A)?(E)の組合せを特定することにより、特許請求の範囲を減縮しようとするものであるから、当該訂正事項は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項1?3は、本件特許明細書【0038】の【表1】の記載を根拠とするものであり、願書に添付した明細書又は特許請求の範囲に記載した事項の範囲内の訂正であるから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項に適合するものである。
さらに、訂正事項1?3は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものでなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は、変更するものに該当しないから、特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項に適合するものである。
そして、訂正事項1?3に係る訂正前の請求項1?3について、請求項2、3は請求項1を引用しているものであって、訂正事項1?3によって記載が訂正される請求項1に連関して訂正されるものであるから、訂正後の請求項1?3は、特許法第120条の5第4項に規定する一群の請求項である。

(3)むすび

以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は、特許法第120条の5第2項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、並びに、第9項において準用する同法第126条第5項及び第6項の規定に適合するので、訂正後の請求項〔1-3〕について訂正することを認める。

第3 本件特許について

本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし3に係る発明(以下、項番に従い、「本件発明1」ないし「本件発明3」という。また、これらを併せて「本件発明」という。)は、それぞれ、下記の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
下記の香料成分(A)?(E)から選ばれた少なくとも4つの香料成分を含有する繊維製品用処理剤組成物用香料組成物であって、
(A)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
シトラール、ボージュナール、ヘリオトロピン、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒド
(B)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-メチルイオノン、β-イオノン及びスピロガルバノン
(C)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-ウンデカラクトン及びクマリン
(D)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
サリチル酸ヘキシル、ジャスマサイクレン、ヘディオン、サリチル酸ベンジル及び酢酸ノピル
(E)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
ペオニール及びシトロネリルニトリル
香料成分の含有量が下記(1)?(3)のいずれかの条件を満たす、繊維製品用処理剤組成物用香料組成物、
(1)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、β-イオノン、又は、β-イオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及び酢酸ノピルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(2)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.1?0.4であり、香料成分(C)の含有量が0?0.1であり、香料成分(D)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.01?0.2であり、
香料成分(A)が、シトラール、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン、又は、γ-メチルイオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(D)が、へディオン及びサリチル酸ベンジルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(3)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(C)の含有量が1.5?2であり、香料成分(D)の含有量が1?2であり、香料成分(E)の含有量が0?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、ヘリオトロピン及びリリアールからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン及びβ-イオノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトン及びクマリンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及びジャスマサイクレンからなる、
及びカチオン性化合物を含む繊維製品用処理剤組成物であって、カチオン性化合物が下記式(I)、(II)及び(IV)で表される3級アミン化合物の中和物及び4級化物、並びに水溶性のカチオン性高分子化合物からなる群より選ばれる、繊維製品用処理剤組成物。
【化1】

(式中、R_(1)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R_(2)は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を示す。
R_(3)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R_(4)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R_(5)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を表す。)
【請求項2】
さらにポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン及びアルキル変性シリコーンからなる群より選ばれるシリコーン化合物を含む請求項1記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項3】
芯物質が繊維製品用処理剤組成物用香料組成物であり、壁物質が、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、メラミン系及びウレタン系高分子物質からなる群から選択された1種以上であるマイクロカプセルを含む請求項1又は2記載の繊維製品用処理剤組成物。」

第4 取消理由の概要

当審において、請求項1ないし3に係る特許に対して通知した取消理由の要旨は、次のとおりである。

(1) 本件特許の特許請求の範囲の記載が、発明の詳細な説明に記載されたものでなく、本件特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、同法第113条第4号に該当し、取り消すべきものである(申立理由3-1に相当。以下、「取消理由1」という。)。
(2) 本件発明1ないし3は、いずれも甲第1号証に記載された発明、又は、甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、同法第113条第2号に該当し、取り消すべきものである(申立て理由1、2に相当。以下、「取消理由2」という。)。

第5 判断

ア. 取消理由通知に記載した取消理由について

1. 取消理由1(特許法第36条第6項第1号の規定について)

本件特許明細書の段落【0003】によれば、本件特許が解決しようとする技術課題は、「衣類への香料の吸着性を高め、着用中において人の印象を向上させる繊維製品用処理剤組成物を提供すること」であると認められる。
そして、同段落【0008】によれば、香料成分の含有量が、請求項1に記載の条件(1)を満たすことで、本件特許の繊維製品用処理剤組成物で処理した衣類を身につけた人に明るい・前向きな印象を付与することができ、条件(2)を満たすことで、エレガントな・上品な印象を付与することができ、条件(3)を満たすことで、可憐な・魅惑的な印象を付与することができるから、本件特許において、香料成分の含有量を条件(1)?(3)を満たすように調製することで、技術課題の一つである「着用中において人の印象を向上させ」られることが理解される。また、同段落【0010】によれば、「カチオン性化合物は、香料成分を繊維製品の表面に効率的に吸着させる作用を有する」から、本件特許は、カチオン性化合物を用いることで、技術課題のもう一つである「衣類への香料の吸着性を高め」られることが理解される。
そして、実施例・比較例を参照すると、カチオン性化合物を有さない比較例1、4、5、及び、香料成分の含有量が条件(1)?(3)のいずれも満たさないが、その他成分はおよそ類似している香料組成物が用いられている比較例2、3では、繊維製品用処理剤組成物で処理した衣類に「明るい・前向きな印象」、「エレガントな・上品な印象」、「可憐な・魅惑的な印象」のいずれの印象も付与しなかったことが確認されている(なお、比較例1、4、5は、カチオン性化合物を有しないので、衣類への香料の吸着性が低く、そもそも香りの付与が不十分であったものと推測され、一方、比較例2、3は、カチオン性化合物を有しているから、何らかの香りの付与は行われているものの、それが、「明るい・前向きな印象」、「エレガントな・上品な印象」、「可憐な・魅惑的な印象」のいずれの印象とも異なっていたものと推察される。)。
ここで、同段落【0038】【表1】、【表1-2】を参照すると、香料組成物A-1、A-2は、「香料成分(A)が、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、香料成分(B)が、β-イオノン、又は、β-イオノン及びスピロガルバノンからなり、香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトンからなり、香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及び酢酸ノピルからなり、香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる」ものであって、それぞれの比率は、香料成分(A):香料成分(B):香料成分(C):香料成分(D):香料成分(E)=1:0.5:0.9:0.9:0.2であるから、「香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5であり」、したがって、香料組成物A-1、A-2は、本件特許請求の範囲の請求項1の条件(1)を満たすところ、【0059】【表4】及び【0060】【表5】によれば、当該香料組成物A-1、A-2を用いた実施態様では、繰り返し5回処理しても「明るい・前向き」な印象を与える香りが付与されることが確認されているから、上記条件(1)を満たせば、上記技術課題を解決し得るといえる。
同様に、香料組成物A-3、A-4は、本件特許請求の範囲の請求項1の条件(2)を満たすものであり、香料組成物A-5、A-6は、本件特許請求の範囲の請求項1の条件(3)を満たすものであるところ、これらの香料組成物を用いた実施態様では、繰り返し5回処理しても「エレガントな・上品な」又は「可憐な・魅惑的な」印象を与える香りが付与されることが確認されているから、上記条件(2)又は(3)を満たしても、上記技術課題を解決し得るといえる。
したがって、本件発明は、上記技術課題を解決し得るものとして、本件特許明細書の発明の詳細な説明に記載されたものである。

2. 取消理由2(特許法第29条第2項の規定について)

(1) 刊行物
甲第1号証:特開2006-124884号公報
甲第2号証:特開2010-285737号公報
甲第3号証:特開2008-7872号公報
甲第4号証:特開2009-155767号公報
甲第5号証:特開2007-284816号公報
甲第6号証:特開2007-63741号公報
(以下、甲第1号証などを「甲1」などという。)

(2)刊行物に記載の事項
A.甲1に記載の事項
(a1)
「【請求項1】
下記の香料成分(A)及び(B)を含有し、その質量比が(A)>(B)である柔軟剤用香料組成物。
香料成分(A): リリアール(p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド)、γ-デカラクトン、テンタローム(6-アセチルヘキサテトラリン)、ムスクケトン、γ-ウンデカラクトン、α-アミルシンナミックアルデヒド、リラール(4-(4-ヒドロキシ-4-メチル-ペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)、アンブロキサン(3α,6,6,9α-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン)、δ-デカラクトン、ラズベリーケトン(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン)、イソ・イー・スーパー(7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オタタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン)及びローズフェノン(酢酸トリクロロメチルフェニルカルビニル)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料成分
香料成分(B): アルデヒド C-12 MNA シッフベース(メチルノニルアセトアルデヒドとメチルアンスラニレートとのシッフベース)、サリチル酸イソアミル、アルデヒド C-10 シッフベース(デシルアルデヒドとメチルアンスラニレートとのシッフベース)、ガラクソリド(ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)、メチルイオノン、ペンタライド(シクロペンタデカノリド)、アンブレッドライド(シクロヘキサデカノリド)、ハバノライド(シクロペンタデセノライド)及びエチレンブラシレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料成分」

(a2)
「【請求項7】
請求項1?6のいずれかに記載の香料組成物を含有する柔軟剤組成物。
【請求項8】
更に成分(C)として、下記一般式(1)
【化1】

〔式中、R^(1)は炭素数10?36の炭化水素基を示し、Xは-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-及び-O-から選ばれる基を示し、R^(2)はメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基を示し、R^(3)及びR^(4)は炭素数1?3のアルキル基、炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基又はR^(1)-[X-R^(2)]_(n)-を示し、nは0又は1の数を示す。〕
で表されるアミン化合物、又はその塩若しくは4級化物から選ばれる1種又は2種以上を含有する請求項7記載の柔軟剤組成物。」

(a3)
「【0007】
本発明は、煙草臭、焼肉臭等の不快な臭気に対しての防臭・消臭効果を有し、更に柔軟剤としての残香性を有する香料組成物及びそれを含む柔軟剤を提供することを目的とする。」

(a4)
「【0016】
成分(A)の含有量は、不快臭に対するマスキング性の観点から、香料組成物中の90質量%以下、特に75質量%以下が好ましい。また、不快臭の消臭・防臭効果及び残香性の観点から、成分(A)全量に対し50質量%以上が単一香料成分であることが好ましい。」

(a5)
「【0018】
本発明の香料組成物中の成分(B)の含有量は、不快臭の低減の観点から、0.1?50質量%、更には1?40質量%、特に5?35質量%が好ましい。」

(a6)
「【0021】
本発明の香料組成物には、上記成分(A)及び(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、汎用的に用いられている香料成分を含むことができる。このような香料成分としては、例えば、アセチルイソオイゲノール、アセチルオイゲノール、アセチルセドレン、アセトフェノン、アニスアルコール、アニスアルデヒド、アネトール、アリルアミルグリコレート、アリルヨノン、アンスラニル酸メチル、安息香酸ベンジル、イオノン、インドール、オイゲノール、n-オクタナール、カロン、カンファー、ケイ皮酸ベンジル、ゲラニオール、酢酸セドリル、酢酸シンナミル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸フェニルエチル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸 p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸シクロヘキシル、サンダルマイソールコア(2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール))、シス-3-ヘキセノール、シトラール、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロミルセノール、ターピネオール、ダマスコン、チモール、デカナール、δ-デカラクトン、γ-デカラクトンデシルアルデヒド、テルピネオール、テルピネン、n-ノナナール、γ-ノナラクトン、2-ノネン酸メチル、バクダノール、ピネン、フェニルエチルアルコール、フェノキシ酢酸アリル、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、フルーテート(エチル トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イル カルボキシレート)、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸ベンジル、n-ヘキサナール、ヘキサン酸アリル、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘプタン酸アリル、ヘリオトロピン、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マイラックアルデヒド(4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキアルデハイド))、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、3-メチル-5-フェニルペンタノール、2-メチル酪酸エチル、ライムオキサイド、酪酸エチル、リグストラール(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド)、リナロール、リモネン、スチラックスオイル、トンカビーンズ、パインオイル、ペチグレンオイル、ペッパーオイル、ペパーミントオイル、ローズマリーオイルが挙げられる。これらの香料成分の含有量は、本発明の香料組成物中の50質量%以下、特に40質量%以下、更に35質量%以下が好ましい。」

(a7)
「【実施例】
【0073】
実施例1 香料組成物の調製
表1に示す成分(A)、成分(B)及びその他の香料成分を混合して香料組成物とした。試料が粉末あるいは粘度の高いものである場合は、適宜熱を加えて溶解させた。なお、成分(C)としては、以下の(C-1)?(C-3)を用いた。
【0074】
(C-1):ステアリン酸/パルミチン酸を50/50(質量比)で混合した混合脂肪酸とN-(3-アミノプロピル)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアミンとを、脂肪酸/アミン=1.9/1(モル比)で通常の方法により脱水縮合反応させて得られたN-(3-アルカノイルアミノプロピル)-N-(2-アルカノイルオキシエチル)-N-メチルアミン及びN-(3-アルカノイルアミノプロピル)-N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアミン、並びに未反応脂肪酸を80/15/5(質量比)で含む混合物
【0075】
(C-2):ステアリン酸とN-(3-アミノプロピル)-N,N-ジメチルアミンとを、モル比1/1で通常の方法により脱水縮合反応させて得られたN-(3-アルカノイルアミノプロピル)-N,N-ジメチルアミンとステアリン酸の混合物〔組成比99/1(質量比)〕
【0076】
(C-3):未硬化パーム脂肪酸とトリエタノールアミンとを、モル比1.6/1で通常の方法により脱水縮合反応させた後、この化合物をジメチル硫酸を用いてアルキル化して得られたN,N-ビス(2-アルカノイルオキシエチル)-N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アンモニウムメチルサルフェート、N-(2-アルカノイルオキシエチル)-N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N,N-トリス(2-アルカノイルオキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N,N-トリス(2-ヒドロキシエチル)-N-メチルアンモニウムメチルサルフェート、N,N-ビス(2-アルカノイルオキシエチル)-N-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)アミンのメチル硫酸塩及びN,N,N-トリス(2-アルカノイルオキシエチル)-N-メチルアミンのメチル硫酸塩、並びに未反応脂肪酸を55/10/7/2/21/5の質量比で含む混合物(なお、アルキル化時の反応溶媒はエタノールを使用し、合成品中のエタノール含有量は10質量%である)
【0077】
【表1】

【0078】
実施例2
〔柔軟剤の調製方法〕
300mLビーカーに、柔軟剤組成物の出来あがり質量が200gになるのに必要な量の90質量%相当量のイオン交換水を入れ、ウォーターバスで60℃に昇温した。1つの羽根の長さが2cm、幅0.8cmの攪拌羽根が、傾斜角度45℃で3枚ついたタービン型の攪拌羽根で攪拌しながら(200rpm)、所要量のエタノールを添加し、次に加熱溶融させた成分(C)を添加した。塩化カルシウム又は塩化ナトリウムを添加する場合には、成分(C)を添加した後に添加した。また、脂肪酸を添加する場合には、あらかじめ成分(C)と加熱溶融した状態で混合し、均一な溶融液を調製して添加した。そのまま5分間攪拌後、10%塩酸水溶液と10%水酸化ナトリウム水溶液で所定のpHに調整した。次に出来あがり質量にするのに必要な量の60℃のイオン交換水を添加した。その後、香料組成物を添加し、10分間攪拌し、5℃の水を入れたウォーターバスにビーカーを移し、攪拌しながら(80rpm)、30℃まで冷却して、表2に示す柔軟剤組成物を調製した。
【0079】
【表2】

【0080】
〔評価方法〕
1.柔軟剤処理・脱水後における未乾燥及び乾燥後の衣類に残る香りの評価
新品のブラウス(アクリル60%、ポリエステル20%、ナイロン20%)3枚、バスタオル(綿100%)2枚、Tシャツ(綿100%)2枚を市販の弱アルカリ洗剤(花王(株),アタック)を用いて洗濯機で洗浄した(東芝(株),2槽式洗濯機VH-360S1、洗剤濃度0.0667質量%、水道水30L使用、水温20℃、10分間)。その後、洗浄液を排水し、3分間脱水後、30Lの水道水を注入して5分間すすぎを行い、排水後3分間脱水を行った。その後、再度30Lの水道水を注入し、同様にすすぎ及び脱水を行った。この操作をもう一度繰り返した後、表2に示す配合の柔軟剤組成物を添加し、5分間攪拌した。柔軟剤の添加量は、10mLとした。
その後、脱水し、濡れた衣類の香りの強さ、及びこれを自然乾燥した衣類に残った香りの強さを、10人の専門パネラーにより評価した。評価は、以下に示す基準に従って行い平均値で示す。平均値が3以上のサンプルは望ましい香りの強さを満たしており、4以上では更に望ましい強さである。
【0081】
5:かなり強く匂う
4:強く匂う
3:あきらかに匂う
2:かすかに匂う
1:ごくわずかに匂う
0:匂わない
【0082】
2.香りの質に関する評価
乾燥した衣類の香りの清潔な又は柔らかい感じについて、専門パネラー10人によりそれぞれ評価した。清潔な又は柔らかい香りと評価した人数が6以上8人以下では望ましい香りの質を満たしており、9人以上では更に望ましい質を満たしているといえる。」
「【0087】
〔評価の結果〕
以上の評価の結果を、表3に示す。
【0088】
【表3】



B.甲2に記載の事項
(b1)
「【請求項1】
(A) 常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体、及び
(B) カチオン性化合物
を含有する繊維製品用処理剤組成物。」
「【請求項6】
前記カチオン性化合物が、下記式(I)、(II)又は(IV)で表される化合物の中和物又は4級化物である請求項1?4のいずれか1項記載の繊維製品用処理剤組成物。
【化1】

(式中、R1は、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1?4のアルキル基または炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を示す。
R3は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R4は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R5は、前記R4、炭素数1?4のアルキル基または炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を表す。)」

(b2)
「【0011】
<香料組成物>
本発明において用いることのできる香料組成物は、繊維製品用処理剤組成物、繊維製品用仕上げ剤組成物又は柔軟剤組成物に一般的に使用される香料成分を1種類以上含む香料組成物である。
前記香料成分の具体例としては、例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料、動物性香料などが挙げられる。
前記アルデヒド類としては、ウンデシレンアルデヒド、ラウリルアルデヒド、アルデヒドC-12MNA、ミラックアルデヒド、α-アミルシンナミックアルデヒド、シクラメンアルデヒド、シトラール、シトロネラール、エチルバニリン、ヘリオトロピン、アニスアルデヒド、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、オクタナール、リグストラール、リリアール、リラール、トリプラール、バニリン、ヘリオナールなどが挙げられる。
前記フェノール類としては、オイゲノール、イソオイゲノールなどが挙げられる。
前記アルコール類としては、バクダノール、シトロネロール、ジハイドロミルセノール、ジハイドロリナロール、ゲラニオール、リナロール、ネロール、サンダロール、サンタレックス、ターピネオール、テトラハイドロリナロール、フェニルエチルアルコールなどが挙げられる。
【0012】
前記エーテル類としては、セドランバー、グリサルバ、メチルオイゲノール、メチルイソオイゲノールなどが挙げられる。
前記エステル類としては、シス-3-ヘキセニルアセテート、シス-3-ヘキセニルプロピオネート、シス-3-ヘキセニルサリシレート、p-クレジルアセテート、p-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、アミルアセテート、メチルジヒドロジャスモネート、アミルサリシレート、ベンジルサリシレート、ベンジルベンゾエート、ベンジルアセテート、セドリルアセテート、シトロネリルアセテート、デカハイドロ-β-ナフチルアセテート、ジメチルベンジルカルビニルアセテート、エリカプロピオネート、エチルアセトアセテート、エリカアセテート、ゲラニルアセテート、ゲラニルフォーメート、ヘディオン、リナリルアセテート、β-フェニルエチルアセテート、ヘキシルサリシレート、スチラリルアセテート、ターピニルアセテート、ベチベリルアセテート、o-t-ブチルシクロヘキシルアセテート、マンザネート、アリルヘプタノエートなどが挙げられる。
【0013】
前記ケトン類としては、α-イオノン、β-イオノン、メチル-β-ナフチルケトン、α-ダマスコン、β-ダマスコン、δ-ダマスコン、シス-ジャスモン、メチルイオノン、アリルイオノン、カシュメラン、ジハイドロジャスモン、イソイースーパー、ベルトフィックス、イソロンジフォラノン、コアボン、ローズフェノン、ラズベリーケトン、ダイナスコンなどが挙げられる。
前記ラクトン類としては、γ-デカラクトン、γ-ウンデカラクトン、γ-ノナラクトン、γ-ドデカラクトン、クマリン、アンブロキサンなどが挙げられる。
前記ムスク類としては、シクロペンタデカノライド、エチレンブラシレート、ガラクソライド、ムスクケトン、トナリッド、ニトロムスク類などが挙げられる。
前記テルペン骨格を有する香料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ゲラニオール(ゼラニオール)、ネロール、リナロール、シトラール、シトロネロール、メントール、ミント、シトロネラール、ミルセン、ピネン、リモネン、テレピネロール、カルボン、ヨノン、カンファー(樟脳)、ボルネオールなどが挙げられる。」

(b3)
「【実施例】
【0051】
実施例及び比較例の繊維製品用処理剤組成物を製造するのに用いた成分を以下に示す。
〔油脂〕
a-1:1-テトラデカノール(常圧における融点37.9℃)
a-2:グリセリンモノステアレート(常圧における融点59℃)
a-3:オクタデカン酸(常圧における融点69.6℃)
a-4:1-オクタデカノール(常圧における融点58℃)
a-5:1-ドコサノール(常圧における融点70.6℃)
a-6:1-ドデカノール(常圧における融点24℃)
なお、上記a-1?a-6の融点は、油化学辞典-脂質・界面活性剤-(丸善)から引用した。
【0052】
【表1】

【0053】
〔カチオン性化合物〕
B-1:カチオン化セルロース(レオガードKGP:ライオン(株)社製、カチオン化度18%、重量平均分子量16万)
B-2:カチオン性高分子(マーコート100:NALCO社製、カチオン化度8.7%、重量平均分子量15万)
B-3:カチオン界面活性剤(アーカードT-800:ライオンアクゾ社製)
B-4:カチオン界面活性剤(アーカード210:ライオンアクゾ社製)
B-5:カチオン界面活性剤(特開2003-12471 実施例4に記載の化合物)
B-6:カチオン界面活性剤(特開2002-167366 実施例1に記載の化合物)
【0054】
【表2】

【0055】
B-7:カチオン界面活性剤(ステアリン酸に代えて硬化牛脂脂肪酸を使用し、4級化しなかったこと以外は特開平5-230001号公報の実施例1の記載に従って3級アミン300gを得た。得られた反応物の酸価、ケン化価、水酸基価、全アミン価、3級アミン価を測定し、反応物の組成を調べた結果、ジアルキル体が86重量%、モノアルキルアミド体が10重量%、未反応脂肪酸が4重量%であった。また、ガスクロマトグラフィーによる分析から、未反応のN-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-1,3-プロピレンジアミンが反応物中に0.1重量%含有されていた。最後に53gの未変性エタノール(日本エタノール(株))を加え、固形分が85質量%のエタノール溶液を調製した。
【0056】
〔繊維製品用処理剤組成物の調製〕
<乳化物粒子を含有する水性液体の調製>(実施例1?7、比較例1?3)
上に示した油脂50g、香料組成物100g、エチルアルコール(95%合成エタノール(日本合成アルコール(株)))50g及びイソトリデシルエーテルEO60モル付加物((ルテンゾールTO3(BASF社製)にエチレンオキサイドを57モル付加したもの)25g(有効成分75%で、残りは水)を混合し、70℃に加温して混合溶液を調製した。これを60℃のイオン交換水425gに乳化分散させた。このとき、ジェットアジター((株)島崎製作所製、タイプSJ)を用いて、回転数1000rpmの条件で攪拌した。この乳化物をそのまま放置し、ゆっくりと常温まで冷却して、乳化物粒子を含有する水性液体(A成分)を調製した。使用した油脂及び香料組成物を表3に示す。なお、表3中のA-7は油脂の代わりに水を50g増やして調製した。単位%は、A成分の全質量を基準とした質量%を表す。
これらの乳化物粒子の平均粒子径は、株式会社堀場製作所 LASER SCATTERING PARTICLE SIZE DISTRIBUTION ANALYZER(型番:LA-920)を用いて、装置に120?150mLのイオン交換水を注いだ後、攪拌後透過率が90±2%となるよう(A)成分を加えて測定した。
【0057】
【表3】

【0058】
<繊維製品用処理剤組成物の調製>
イオン交換水に、上に示したB成分を溶解または分散させた後、上で得られたA成分をスターラーで攪拌しながら添加し、A及びB成分の濃度が表4に記載の値となるよう繊維製品用処理剤組成物を調製した。なお、表中のA及びB成分の値は、繊維製品用処理剤組成物の全量を基準としたA及びB成分の質量%を表す。但し、A成分の配合量は、繊維製品用処理剤組成物中の香料組成物の量として記載した。
【0059】
〔ロングラスティングの評価〕
3Lのビーカーに2Lの水道水を入れたものを準備した。そこに、組成物として1000ppmとなるように、上で得られた実施例及び比較例の繊維製品用処理剤組成物を投入し、分散させた。その中に市販の綿タオルを入れ(浴比20倍)、3分間攪拌した。その後タオルを取り出し、二槽式洗濯機の脱水槽に入れて2分間脱水した。このタオルを20℃、40%RH下で1晩乾燥させた。一晩乾燥後及び1週間後、タオルに残っている香りの強度と質を、20?30代の女性10人により下記の基準に従って評価した。なお、タオルの乾燥は湿度を調整していない25℃の室内で行った。実験中の湿度はおおよそ30?50%RHであった。結果を表4に併記する。
<香りの強度>
3点:強い
2点:楽に感知できる程度
1点:弱い
<香りの質>
3点:トップノートを含むフレッシュな香りを感じる
2点:トップノートを含むフレッシュな香りをやや感じる
1点:トップノートを含むフレッシュな香りを感じない
【0060】
【表4】




(3)刊行物に記載の発明

A.甲1に記載の発明
上記摘示事項(a1)、(a2)、(a4)?(a6)によれば、甲1には、
「下記の香料成分(A)及び(B)を含有し、
香料成分(A): リリアール(p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド)、γ-デカラクトン、テンタローム(6-アセチルヘキサテトラリン)、ムスクケトン、γ-ウンデカラクトン、α-アミルシンナミックアルデヒド、リラール(4-(4-ヒドロキシ-4-メチル-ペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)、アンブロキサン(3α,6,6,9α-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン)、δ-デカラクトン、ラズベリーケトン(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン)、イソ・イー・スーパー(7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オタタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン)及びローズフェノン(酢酸トリクロロメチルフェニルカルビニル)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料成分50?90質量%
香料成分(B): アルデヒド C-12 MNA シッフベース(メチルノニルアセトアルデヒドとメチルアンスラニレートとのシッフベース)、サリチル酸イソアミル、アルデヒド C-10 シッフベース(デシルアルデヒドとメチルアンスラニレートとのシッフベース)、ガラクソリド(ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)、メチルイオノン、ペンタライド(シクロペンタデカノリド)、アンブレッドライド(シクロヘキサデカノリド)、ハバノライド(シクロペンタデセノライド)及びエチレンブラシレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料成分0.1?50質量%
上記成分(A)及び(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、アセチルイソオイゲノール、アセチルオイゲノール、アセチルセドレン、アセトフェノン、アニスアルコール、アニスアルデヒド、アネトール、アリルアミルグリコレート、アリルヨノン、アンスラニル酸メチル、安息香酸ベンジル、イオノン、インドール、オイゲノール、n-オクタナール、カロン、カンファー、ケイ皮酸ベンジル、ゲラニオール、酢酸セドリル、酢酸シンナミル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸フェニルエチル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸 p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸シクロヘキシル、サンダルマイソールコア(2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール))、シス-3-ヘキセノール、シトラール、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロミルセノール、ターピネオール、ダマスコン、チモール、デカナール、δ-デカラクトン、γ-デカラクトンデシルアルデヒド、テルピネオール、テルピネン、n-ノナナール、γ-ノナラクトン、2-ノネン酸メチル、バクダノール、ピネン、フェニルエチルアルコール、フェノキシ酢酸アリル、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、フルーテート(エチル トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イル カルボキシレート)、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸ベンジル、n-ヘキサナール、ヘキサン酸アリル、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘプタン酸アリル、ヘリオトロピン、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マイラックアルデヒド(4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキアルデハイド))、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、3-メチル-5-フェニルペンタノール、2-メチル酪酸エチル、ライムオキサイド、酪酸エチル、リグストラール(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド)、リナロール、リモネン、スチラックスオイル、トンカビーンズ、パインオイル、ペチグレンオイル、ペッパーオイル、ペパーミントオイル、ローズマリーオイル等の汎用的に用いられている香料成分を含むことができる柔軟剤組成物であって、
更に成分(C)として、下記一般式(1)

〔式中、R^(1)は炭素数10?36の炭化水素基を示し、Xは-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-及び-O-から選ばれる基を示し、R^(2)はメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基を示し、R^(3)及びR^(4)は炭素数1?3のアルキル基、炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基又はR^(1)-[X-R^(2)]_(n)-を示し、nは0又は1の数を示す。〕
で表されるアミン化合物、又はその塩若しくは4級化物から選ばれる1種又は2種以上を含有する柔軟剤組成物。」(以下、「甲1発明」という。)が記載されていると認められる。

B.甲2の記載の発明
上記摘示事項(b1)によれば、甲2には、
「(A) 常圧における融点が30℃以上の油脂と香料組成物との混合物を水に乳化分散させることにより得られる乳化物粒子を含有する水性液体、及び
(B) 下記式(I)、(II)又は(IV)で表される化合物の中和物又は4級化物であるカチオン性化合物
【化1】

(式中、R1は、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R2は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1?4のアルキル基または炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を示す。
R3は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R4は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基またはアミド基で分断されてもよい、炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R5は、前記R4、炭素数1?4のアルキル基または炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を表す。)
を含有する繊維製品用処理剤組成物。」(以下、「甲2発明」という。)が記載されていると認められる。

(4)対比・検討

(4-1)甲1発明を主発明とした場合

(4-1-1)本件発明1について
本件発明1と甲1発明とを対比する。
○甲1発明の「柔軟剤組成物」は、本件発明1の「繊維製品用処理剤組成物」に相当する。

○甲1発明の『「下記の香料成分(A)及び(B)を含有し、」「上記成分(A)及び(B)以外に、」「汎用的に用いられている香料成分を含むことができる」』とは、複数の香料成分を有するものであるから、本件発明1の「香料組成物」に相当する。

○甲1発明の『「アミン化合物」「の塩若しくは4級化物」』は、技術的にみて、本件発明1の「カチオン性化合物」に相当する。

上記より、本件発明1と、甲1発明とは、
「香料組成物及びカチオン性化合物を含む繊維製品用処理剤組成物。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1-1>
香料組成物について、本件発明1では、「下記の香料成分(A)?(E)から選ばれた少なくとも4つの香料成分を含有する繊維製品用処理剤組成物用香料組成物であって、
(A)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
シトラール、ボージュナール、ヘリオトロピン、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒド
(B)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-メチルイオノン、β-イオノン及びスピロガルバノン
(C)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-ウンデカラクトン及びクマリン
(D)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
サリチル酸ヘキシル、ジャスマサイクレン、ヘディオン、サリチル酸ベンジル及び酢酸ノピル
(E)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
ペオニール及びシトロネリルニトリル
香料成分の含有量が下記(1)?(3)のいずれかの条件を満たす、繊維製品用処理剤組成物用香料組成物
(1)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、β-イオノン、又は、β-イオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及び酢酸ノピルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(2)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.1?0.4であり、香料成分(C)の含有量が0?0.1であり、香料成分(D)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.01?0.2であり、
香料成分(A)が、シトラール、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン、又は、γ-メチルイオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(D)が、へディオン及びサリチル酸ベンジルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(3)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(C)の含有量が1.5?2であり、香料成分(D)の含有量が1?2であり、香料成分(E)の含有量が0?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、ヘリオトロピン及びリリアールからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン及びβ-イオノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトン及びクマリンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及びジャスマサイクレンからなる、」のに対し、甲1発明では、「下記の香料成分(A)及び(B)を含有し、
香料成分(A): リリアール(p-t-ブチル-α-メチルヒドロシンナミックアルデヒド)、γ-デカラクトン、テンタローム(6-アセチルヘキサテトラリン)、ムスクケトン、γ-ウンデカラクトン、α-アミルシンナミックアルデヒド、リラール(4-(4-ヒドロキシ-4-メチル-ペンチル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキシアルデヒド)、アンブロキサン(3α,6,6,9α-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン)、δ-デカラクトン、ラズベリーケトン(4-(4-ヒドロキシフェニル)-2-ブタノン)、イソ・イー・スーパー(7-アセチル-1,2,3,4,5,6,7,8-オタタヒドロ-1,1,6,7-テトラメチルナフタレン)及びローズフェノン(酢酸トリクロロメチルフェニルカルビニル)からなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料成分50?90質量%
香料成分(B): アルデヒド C-12 MNA シッフベース(メチルノニルアセトアルデヒドとメチルアンスラニレートとのシッフベース)、サリチル酸イソアミル、アルデヒド C-10 シッフベース(デシルアルデヒドとメチルアンスラニレートとのシッフベース)、ガラクソリド(ヘキサメチルヘキサヒドロシクロペンタベンゾピラン)、メチルイオノン、ペンタライド(シクロペンタデカノリド)、アンブレッドライド(シクロヘキサデカノリド)、ハバノライド(シクロペンタデセノライド)及びエチレンブラシレートからなる群より選ばれる1種又は2種以上の香料成分0.1?50質量%
上記成分(A)及び(B)以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、アセチルイソオイゲノール、アセチルオイゲノール、アセチルセドレン、アセトフェノン、アニスアルコール、アニスアルデヒド、アネトール、アリルアミルグリコレート、アリルヨノン、アンスラニル酸メチル、安息香酸ベンジル、イオノン、インドール、オイゲノール、n-オクタナール、カロン、カンファー、ケイ皮酸ベンジル、ゲラニオール、酢酸セドリル、酢酸シンナミル、酢酸トリシクロデセニル、酢酸フェニルエチル、酢酸o-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸 p-t-ブチルシクロヘキシル、酢酸ベンジル、サリチル酸アミル、サリチル酸シクロヘキシル、サンダルマイソールコア(2-メチル-4-(2,2,3-トリメチル-3-シクロペンテン-1-イル)-2-ブテン-1-オール)、シス-3-ヘキセノール、シトラール、シトロネロール、ジヒドロジャスモン酸メチル、ジヒドロミルセノール、ターピネオール、ダマスコン、チモール、デカナール、δ-デカラクトン、γ-デカラクトンデシルアルデヒド、テルピネオール、テルピネン、n-ノナナール、γ-ノナラクトン、2-ノネン酸メチル、バクダノール、ピネン、フェニルエチルアルコール、フェノキシ酢酸アリル、1-(2-t-ブチルシクロヘキシルオキシ)-2-ブタノール、フルーテート(エチル トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-2-イル カルボキシレート)、プロピオン酸スチラリル、プロピオン酸ベンジル、n-ヘキサナール、ヘキサン酸アリル、α-ヘキシルシンナミックアルデヒド、ヘプタン酸アリル、ヘリオトロピン、ベンジルアルコール、ベンズアルデヒド、ボルネオール、マイラックアルデヒド(4-(4-メチル-3-ペンテニル)-3-シクロヘキセン-1-カルボキアルデハイド)、4-メチル-3-デセン-5-オール、3-メチル-3-フェニルグリシド酸エチル、3-メチル-5-フェニルペンタノール、2-メチル酪酸エチル、ライムオキサイド、酪酸エチル、リグストラール(2,4-ジメチル-3-シクロヘキセニルカルボキシアルデヒド)、リナロール、リモネン、スチラックスオイル、トンカビーンズ、パインオイル、ペチグレンオイル、ペッパーオイル、ペパーミントオイル、ローズマリーオイル等の汎用的に用いられている香料成分を含むことができる」点。

<相違点1-2>
カチオン性化合物が、本件発明1では、「下記式(I)、(II)及び(IV)で表される3級アミン化合物の中和物及び4級化物、並びに水溶性のカチオン性高分子化合物からなる群より選ばれる
【化1】

(式中、R^(1)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R^(2)は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を示す。
R^(3)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R^(4)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R^(5)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を表す。)」ことが特定されているのに対し、甲1発明では、「下記一般式(1)

〔式中、R^(1)は炭素数10?36の炭化水素基を示し、Xは-COO-、-OCO-、-NHCO-、-CONH-及び-O-から選ばれる基を示し、R^(2)はメチレン基又は炭素数2若しくは3のアルキレン基を示し、R^(3)及びR^(4)は炭素数1?3のアルキル基、炭素数2若しくは3のヒドロキシアルキル基又はR^(1)-[X-R^(2)]_(n)-を示し、nは0又は1の数を示す。〕
で表されるアミン化合物、又はその塩若しくは4級化物」である点。

<相違点1-1>について
甲1発明において、香料成分(A)として、「リリアール」、「γ-ウンデカラクトン」がそれぞれ選択可能とされており、また、香料成分(B)として、「メチルイオノン」が選択可能とされているが、これらは、それぞれ、本件発明1の香料成分(A)(リリアール)、香料成分(B)(メチルイオノン)、香料成分(C)(γ-ウンデカラクトン)に相当する。また、甲1発明において、香料成分(A)、(B)以外に含むことができる例示されている香料成分として、「イオノン」、「酢酸トリシクロデセニル」、「シトラール」、「ジヒドロジャスモン酸メチル」、「ヘリオトロピン」が選択可能とされているが、これらは、それぞれ、本件発明1の香料成分(A)(シトラール、ヘリオトロピン)、香料成分(B)(イオノン)、香料成分(D)〔酢酸トリシクロデセニル(ジャスマサイクレン)、ジヒドロジャスモン酸メチル(へディオン)〕に相当するから、甲1発明では、本件発明1の香料成分(A)?(D)である香料成分の選択が許容されているといえる。そして、上記摘示事項(a7)の段落【0077】【表1】によれば、本件発明1の香料成分(A)である「リリアール」、香料成分(B)である「メチルイオノン」又は「β-イオノン」、香料成分(C)である「γ-ウンデカラクトン」、香料成分(D)である「ジヒドロジャスモン酸メチル」(へディオン)が同時に併用された香料組成物1?3、5?7が具体的に開示されているように、これら4カテゴリーに属する香料組成物を併用することまでは、当業者が容易になし得ることといえなくもない。
しかしながら、香料成分(A)として特定の成分の組合せを選択し、香料成分(B)として特定の成分(の組合せ)を選択し、香料成分(C)として特定の成分(の組合せ)を選択し、香料成分(D)として特定の成分の組合せを選択し、香料成分(E)として特定の成分の組合せを選択し、しかも、これら香料成分(A)?(E)を特定の比率で含有させることは、甲1に記載も示唆もされておらず、また、甲2?6にも記載も示唆もされていない。

しかるに、上記摘示事項(a3)のとおり、甲1発明は、「柔軟剤としての残香性」を有するものであるところ、どのような印象を与える香りを乾燥した衣類に付与したいかは、当業者がその都度決定し得る事項であるとしても、本件特許請求の範囲の請求項1で規定される、極めて限定された香料成分の選択と配合比率を満たす香料組成物についてまで、当業者が容易に想到し得る事項であると認めることはできない。

<有利な効果>について
本件特許明細書には、実施例として、本件発明1の条件(1)を満たす香料組成物A-1、A-2で処理した衣類を身につけた人に明るい・前向きな印象を付与することができ、条件(2)を満たす香料組成物A-3、A-4で処理した衣類を身につけた人にエレガントな・上品な印象を付与することができ、条件(3)を満たす香料組成物A-5、A-6で処理した衣類を身につけた人に可憐な・魅惑的な印象を付与することができることが実際に確認されている。
そして、特定の条件を満たす香料組成物を用いれば、そのような効果を奏するだろうことは、甲1に記載の事項及び本件特許の出願時点での技術常識を参酌しても、自明であるとはいえない。

よって、本件発明1は、相違点1-2について検討するまでもなく、当業者といえども甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものでない。

(4-1-2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2、3も本件発明1と同様の理由により、甲1発明に基いて容易に発明をすることができたものでない。

(4-2)甲2発明を主発明とした場合

(4-2-1)本件発明1について
本件発明1と甲2発明とは、
「香料組成物及びカチオン性化合物を含む繊維製品用処理剤組成物であって、カチオン性化合物が下記式(I)、(II)及び(IV)で表される3級アミン化合物の中和物及び4級化物からなる群より選ばれる、繊維製品用処理剤組成物。
【化1】

(式中、R^(1)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R^(2)は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を示す。
R^(3)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R^(4)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R^(5)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を表す。)」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点2-1>
香料組成物は、本件発明1では、「下記の香料成分(A)?(E)から選ばれた少なくとも4つの香料成分を含有する繊維製品用処理剤組成物用香料組成物であって、
(A)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
シトラール、ボージュナール、ヘリオトロピン、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒド
(B)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-メチルイオノン、β-イオノン及びスピロガルバノン
(C)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-ウンデカラクトン及びクマリン
(D)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
サリチル酸ヘキシル、ジャスマサイクレン、ヘディオン、サリチル酸ベンジル及び酢酸ノピル
(E)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
ペオニール及びシトロネリルニトリル
香料成分の含有量が下記(1)?(3)のいずれかの条件を満たす、繊維製品用処理剤組成物用香料組成物、
(1)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、β-イオノン、又は、β-イオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及び酢酸ノピルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(2)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.1?0.4であり、香料成分(C)の含有量が0?0.1であり、香料成分(D)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.01?0.2であり、
香料成分(A)が、シトラール、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン、又は、γ-メチルイオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(D)が、へディオン及びサリチル酸ベンジルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(3)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(C)の含有量が1.5?2であり、香料成分(D)の含有量が1?2であり、香料成分(E)の含有量が0?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、ヘリオトロピン及びリリアールからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン及びβ-イオノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトン及びクマリンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及びジャスマサイクレンからなる、」のに対し、甲2発明では斯かる事項が特定されていない点。

<相違点2-1>について
上記摘示事項(b2)によれば、甲2発明において選択し得る香料成分は、「繊維製品用処理剤組成物、繊維製品用仕上げ剤組成物又は柔軟剤組成物に一般的に使用される香料成分」であって、「例えば、アルデヒド類、フェノール類、アルコール類、エーテル類、エステル類、ハイドロカーボン類、ケトン類、ラクトン類、ムスク類、テルペン骨格を有する香料、天然香料、動物性香料などが挙げられる」ところ、アルデヒド類として、「シトラール」、「ヘリオトロピン」、「α-ヘキシルシンナミックアルデヒド」、「リリアール」(以上、いずれも本件発明1の香料成分(A)に相当)が選択でき、エステル類として、「メチルジヒドロジャスモネート」(へディオン)、「ベンジルサリシレート」、「ヘキシルサリシレート」(以上、いずれも本件発明1の香料成分(D)に相当)が選択でき、ケトン類として、「β-イオノン」、「メチルイオノン」(以上、いずれも本件発明1の香料成分(B)に相当)、ラクトン類として、「γ-ウンデカラクトン」、「クマリン」(以上、いずれも本件発明1の香料成分(C)に相当)が選択できることが記載されており、甲2発明では、本件特許1の香料成分(A)?(D)である香料成分の選択が許容されているといえる。そして、上記摘示事項(b3)の段落【0052】【表1】によれば、本件発明1の香料成分(A)である「シトラール」、「ヘキシルシンナミックアルデヒド」、「ヘリオトロピン」又は「リリアール」、香料成分(B)である「メチルイオノン」、香料成分(C)である「γ-ウンデカラクトン」又は「クマリン」、香料成分(D)である「へディオン」又は「ベンジルサリシレート」が同時に併用された香料3、4が具体的に開示されているように、これら4カテゴリーに属する香料組成物を併用することまでは、当業者が容易になし得ることといえなくもない。
しかしながら、許容されている香料成分を調合して、どのような香りとするかは、当業者がその都度決定し得る事項であるとしても、本件特許請求の範囲の請求項1で規定される、極めて限定された香料成分の選択と配合比率を満たす香料組成物についてまでは、甲2に記載も示唆もされておらず、また、甲1、3?6にも記載も示唆もされていないことから、このような香料組成物についてまで、当業者が容易に想到し得る事項であると認めることはできない。

<有利な効果>について
上記(4-1-1)における検討参照。

よって、本件発明1は、当業者といえども甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものでない。

(4-2-2)本件発明2、3について
本件発明2、3は、本件発明1をさらに限定するものであるから、本件発明2、3も本件発明1と同様の理由により、甲2発明に基いて容易に発明をすることができたものでない。

(5)まとめ
上記のとおりであるから、本件発明1ないし3は、甲1発明、又は、甲2発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものでなく、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものではないから、その発明にかかる特許は取り消すべきものでない。

イ. 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について

1. 申立理由3-2(特許法第36条第4項第1号の規定について)

上記ア.の「1. 取消理由1」で検討したとおり、本件特許請求の範囲の請求項1に規定される条件(1)?(3)を満たす香料組成物と式(I)、(II)、(IV)で表される3級アミン化合物の中和物等であるカチオン性化合物を含む繊維製品用処理剤組成物を用いれば、本件発明の技術課題を解決し得ることが、実施例・比較例として示された実験データによって裏付けられていると認められるから、本件特許明細書の発明の詳細な説明には、当業者が、本件発明が解決しようとする課題及びその解決手段その他の本件発明の技術上の意義を理解し、その実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されていると認められる。

第6 まとめ

上記「第5」で検討したとおり、上記取消理由1、2、及び、特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件特許を取り消すことはできない。
また、他に本件特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の香料成分(A)?(E)から選ばれた少なくとも4つの香料成分を含有する繊維製品用処理剤組成物用香料組成物であって、
(A)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
シトラール、ボージュナール、ヘリオトロピン、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒド
(B)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-メチルイオノン、β-イオノン及びスピロガルバノン
(C)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
γ-ウンデカラクトン及びクマリン
(D)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
サリチル酸ヘキシル、ジャスマサイクレン、ヘディオン、サリチル酸ベンジル及び酢酸ノピル
(E)下記からなる群より選ばれた1種以上の香料成分
ペオニール及びシトロネリルニトリル
香料成分の含有量が下記(1)?(3)のいずれかの条件を満たす、繊維製品用処理剤組成物用香料組成物、
(1)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.2?1であり、香料成分(C)の含有量が0.7?1.3であり、香料成分(D)の含有量が0.4?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.05?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、β-イオノン、又は、β-イオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及び酢酸ノピルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(2)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.1?0.4であり、香料成分(C)の含有量が0?0.1であり、香料成分(D)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(E)の含有量が0.01?0.2であり、
香料成分(A)が、シトラール、ボージュナール、リリアール及びヘキシルシンナミックアルデヒドからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン、又は、γ-メチルイオノン及びスピロガルバノンからなり、
香料成分(D)が、ヘディオン及びサリチル酸ベンジルからなり、
香料成分(E)が、ペオニール及びシトロネリルニトリルからなる、
(3)香料成分(A)の含有量を1とした場合に、香料成分(B)の含有量が0.9?1.5であり、香料成分(C)の含有量が1.5?2であり、香料成分(D)の含有量が1?2であり、香料成分(E)の含有量が0?0.5であり、
香料成分(A)が、ボージュナール、ヘリオトロピン及びリリアールからなり、
香料成分(B)が、γ-メチルイオノン及びβ-イオノンからなり、
香料成分(C)が、γ-ウンデカラクトン及びクマリンからなり、
香料成分(D)が、サリチル酸ヘキシル及びジャスマサイクレンからなる、
及びカチオン性化合物を含む繊維製品用処理剤組成物であって、カチオン性化合物が下記式(I)、(II)及び(IV)で表される3級アミン化合物の中和物及び4級化物、並びに水溶性のカチオン性高分子化合物からなる群より選ばれる、繊維製品用処理剤組成物。
【化1】

(式中、R_(1)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数12から20の炭化水素基を表す。
R_(2)は、同一でも異なっていてもよく、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を示す。
R_(3)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数8から12の炭化水素基を表す。
R_(4)は、同一でも異なっていてもよく、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基を表す。
R_(5)は、エステル基、エーテル基又はアミド基で分断されてもよい炭素数14から20の炭化水素基、炭素数1?4のアルキル基又は炭素数2?4のヒドロキシアルキル基を表す。)
【請求項2】
さらにポリエーテル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、ジメチルシリコーン及びアルキル変性シリコーンからなる群より選ばれるシリコーン化合物を含む請求項1記載の繊維製品用処理剤組成物。
【請求項3】
芯物質が繊維製品用処理剤組成物用香料組成物であり、壁物質が、ポリアクリル酸系、ポリメタクリル酸系、メラミン系及びウレタン系高分子物質からなる群から選択された1種以上であるマイクロカプセルを含む請求項1又は2記載の繊維製品用処理剤組成物。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-12 
出願番号 特願2011-140963(P2011-140963)
審決分類 P 1 651・ 121- YAA (C11B)
P 1 651・ 536- YAA (C11B)
P 1 651・ 537- YAA (C11B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 井上 恵理  
特許庁審判長 冨士 良宏
特許庁審判官 岩田 行剛
日比野 隆治
登録日 2015-09-11 
登録番号 特許第5803002号(P5803002)
権利者 ライオン株式会社
発明の名称 香料組成物及びそれを含む繊維製品用処理剤組成物  
代理人 服部 博信  
代理人 弟子丸 健  
代理人 服部 博信  
代理人 市川 さつき  
代理人 山崎 一夫  
代理人 箱田 篤  
代理人 弟子丸 健  
代理人 浅井 賢治  
代理人 山崎 一夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 田中 伸一郎  
代理人 西島 孝喜  
代理人 西島 孝喜  
代理人 箱田 篤  
代理人 市川 さつき  
代理人 田中 伸一郎  

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