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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  H01L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  H01L
管理番号 1325859
異議申立番号 異議2016-700427  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-05-13 
確定日 2017-02-03 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5830250号発明「半導体装置の製造方法」の特許異議申立事件について,次のとおり決定する。 
結論 特許第5830250号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり訂正することを認める。 特許第5830250号の請求項1ないし3に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5830250号の請求項1ないし3に係る特許についての出願は,平成23年2月15日に特許出願され,平成27年10月30日にその特許権の設定登録がされ,その後,その特許について,特許異議申立人中川賢治(以下「異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ,平成28年9月13日付けで取消理由が通知され,その指定期間内である平成28年11月2日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり,その訂正の請求に対して異議申立人から平成28年12月14日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
本件訂正請求による訂正の内容は,以下のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に「前記熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させ,保護層を形成する工程と,」とあるのを,「前記熱硬化性樹脂層を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱して硬化させ,保護層を形成する工程と,」に訂正する。

(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1に「前記の保護膜」とあるのを,「前記の保護層」に訂正する。

(3)訂正事項3
請求項1の記載を直接又は間接に引用する請求項2及び3を,訂正事項1及び2と同様に訂正する。

2.訂正の目的の適否,新規事項の有無,及び特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
(1)訂正の目的の適否
訂正事項1は,熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させ,保護層を形成する工程について,その加熱温度や加熱時間が特定されていなかったものを,加熱温度を120?200℃,加熱時間を30分?3時間と特定するものであるから,訂正事項1の訂正の目的は,特許法第120条の5第2項第1号の特許請求の範囲の減縮に該当する。
また,訂正事項2は,請求項1には「保護膜」という記載が存在しないのに,「前記の保護膜」と記載されていたのを,「前記の保護層」とするものであるから,訂正事項2の訂正の目的は,特許法第120条の5第2項第2号の誤記又は誤訳の訂正に該当する。
そして,訂正事項3は,請求項1の記載を直接又は間接に引用する請求項2及び3を,訂正事項1及び2と同様に訂正するものであるから,その目的は,特許請求の範囲の減縮及び誤記又は誤訳の訂正に該当する。
したがって,訂正事項1ないし3は,特許法第120条の5第2項第1及び2号に掲げる事項を目的とするものである。

(2)新規事項の有無
特許明細書の段落【0093】には,「次に,熱硬化性樹脂層16を加熱して硬化させ,保護層17を形成する(図4参照)。加熱条件としては,加熱温度120?200℃が好ましく,140?180℃がより好ましい。また,加熱時間は,30分?3時間が好ましく,1時間?2時間がより好ましい。」との記載があるから,訂正事項1に係る訂正は,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものである。
また,訂正事項2及び3に係る訂正が,願書に添付した明細書,特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてされたものであることは明らかである。
したがって,訂正事項1ないし3は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第5項の規定に適合する。

(3)特許請求の範囲の拡張又は変更の存否
訂正事項1ないし3は,特許請求の範囲を減縮し,誤記を訂正するものであるから,特許請求の範囲の拡張し,又は変更するものでないことは明らかである。
したがって,訂正事項1ないし3は,特許法第120条の5第9項で準用する同法第126条第6項の規定に適合する。

3.小結
以上のとおりであるから,本件訂正請求による訂正は,特許法第120条の5第1及び2号に掲げる事項を目的とするものであり,かつ,同条第9項で準用する同法第126条第5及び6項の規定に適合するので,訂正後の請求項1ないし3について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1.本件特許
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1ないし3に係る発明(以下「特許発明1ないし3」という。)は,訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
「 【請求項1】
バンプが形成されている面側に低誘電材料層が形成されているバンプ付きウエハのバンプが形成されている面に,支持基材と粘着剤層と熱硬化性樹脂層とがこの順で積層された保護層形成用フィルムを,前記熱硬化性樹脂層を貼り合わせ面にして貼り合わせる工程と,
前記支持基材と前記粘着剤層とを,前記熱硬化性樹脂層から剥離する工程と,
前記熱硬化性樹脂層を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱して硬化させ,保護層を形成する工程と,
前記の保護層を形成する工程の後に,前記バンプ付きウエハを保護層と共にダイシングする工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂層の溶融粘度は,前記バンプ付きウエハに前記保護層形成用フィルムを貼り合わせる際の温度において,1×10^(2)Pa・S以上2×10^(4)Pa・S未満であり,
前記粘着剤層のせん断弾性率は,前記バンプ付きウエハに前記保護層形成用フィルムを貼り合わせる際の温度において,1×10^(3)Pa以上2×10^(6)Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂層は,バンプ高さの0.05?0.9倍の厚みを有することを特徴とする請求項1又はと2に記載の半導体装置の製造方法。」

2.取消理由の概要
訂正前の請求項1ないし3に係る特許に対して平成28年9月13日付けで特許権者に通知した取消理由の要旨は,次のとおりである。
(1)特許法第29条第2項に係る取消理由
訂正前の請求項1及び3に係る発明は,甲第2号証に記載された発明及び従来周知の技術的事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,訂正前の請求項2に係る発明は,甲第2号証に記載された発明,従来周知の技術的事項,及び甲第1号証に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明することができたものであり,訂正前の請求項1ないし3に係る特許は,取り消されるべきものである。

(2)特許法第36条第6項第2号に係る取消理由
訂正前の請求項1に係る特許は,特許請求の範囲の記載が特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり,取り消されるべきものである。

3.各刊行物の記載及び刊行物発明
(1)甲2の記載及び甲2発明
異議申立書において甲第2号証として提出され,本件特許に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である米国特許第7105424号明細書(以下「甲2」といい,他の甲号証も同様にいう。)には,以下の記載がある。なお,この取消理由通知では,読点は全て「,」で表記する。また,甲2の記載箇所を示す行数は,米国特許第7105424号明細書の公表(publication)イメージ表示における行数であり,下線は当審で付したものである。また,括弧内に当審での翻訳文を付記する。
ア.第3欄第1ないし29行
「Referring to FIG. 2 , it illustrates the step 1 . Therein, the film 10 , such as a grinding film, has a base layer 11 , a removable layer 12 and an underfill layer 13 , and the removable layer 12 is interposed between the base layer 11 and the underfill layer 13 . Besides, the base layer 11 can be made of a flexible material or a rigid material, for example PET, polyester, Ethylene Vinyl Acetate and the combination thereof, the removable layer 12 can be made of an adhesive epoxy layer with flexible material contained therein, which may be selected from thermal activated adhesive, such as thermoplastic resin, photo-resist, photosensitive resin and ultraviolet (UV) tape or epoxy and the combination thereof. To be noted, the removable layer 12 is made of a material with the adhesion can be changed, erased, or reduced during the processing steps so as to be regarded as an impermanently interposed layer. ・・・(中略)・・・Therein, the reaction layer of the removable layer 12 is adhered to the underfill layer 13 and the adhesive layer of the removable layer 12 is adhered to the base layer 11 . In addition, the underfill layer 13 may be made of B-stage.」
(図2は,工程1を示している。ここで,例えば研削フィルムとしてのフィルム10は,ベース層11,取り外し可能な層12,及びアンダーフィル層13を有し,取り外し可能な層12がベース層11とアンダーフィル層13との間に挟持されている。また,ベース層11は,例えばPET,ポリエステル,エチレン酢酸ビニル,或いはそれらの組み合わせの可撓性材料又は剛性材料で作ることができ,そして,その取り外し可能な層12は,その中に含まれる可撓性材料との接着エポキシ層で作ることができる。これは,熱可塑性樹脂のような熱活性化接着剤,フォトレジスト,感光性樹脂,紫外線(UV)テープ又はエポキシ,及びそれらの組合せから選択することができる。取り外し可能な層12は,接着性を有する材料で作られており,一時的な挟持層となるように,処理工程の間に,変更,消去又は減少させることができる。・・・(中略)・・・ここで,取り外し可能な層12の反応層はアンダーフィル層13に接着され,そして,取り外し可能な層12の接着剤層はベース層11に接着される。また,アンダーフィル層13はBステージであってもよい。)

イ.第3欄第30ないし32行
「Afterwards, referring to FIG. 3 , it illustrates the step 2 of disposing a film 10 on the wafer 20 and pressing the film 10 onto the bumped wafer 20 under heating. 」
(その後,図3に参照されるように,工程2において,ウエハ20上にフィルム10を配置し,加熱下,バンプ付きウエハ20の上にフィルム10を押圧する。)

ウ.第3欄第48ないし53行
「Preferably, the bumps 23 are contacted to the removable layer 12 . Thus, the underfill layer 13 of the film 10 is adhered to the active surface 21 of the bumped wafer 20 and the bumps 23 are enclosed by the underfill layer 13 so as to be well protected from being damaged.」
(好ましくは,バンプ23は取り外し可能な層12に接触している。したがって,フィルム10のアンダーフィル層13は,バンプ付きウエハ20の活性表面21に接着して,バンプ23はアンダーフィル層13によって損傷から十分に保護されるように包囲されている。)

エ.第3欄第65行ないし第4欄第8行
「Afterwards, referring to FIG. 6 , it illustrates the step 4 of removing the film 10 by decomposing the removable layer 12 . Therein, removing the removable layer 12 of the film 10 can be performed by utilizing the methods of performing a light radiation on the removable layer 12 , heating and cooling on the removable layer 12 , and disposing the removable layer 12 in a decomposition solution so as to decompose the removable layer 12 or reduce the adhesion of the removable layer 12 to the underfill layer 13 . Hence, the underfill layer 13 is easily separated from the base layer 11 and the removable layer 12 .」
(その後,図6を参照して,取り外し可能な層12を分解してフィルム10を除去する工程4を示す。ここで,取り外し可能な層12に光照射をする,取り外し可能な層12上に加熱と冷却をする,或いは,取り外し可能な層12を分解液中に配置する方法を利用することによって,取り外し可能な層12を分解するか,又はアンダーフィル層13に対する取り外し可能な層12の密着性を低減させて,フィルム10の取り外し可能な層12の除去を行うことができる。したがって,アンダーフィル層13はベース層11及び取り外し可能な層12から容易に分離される。)

オ.第4欄第15ないし18行
「To be noted, the underfill layer 13 is partially solidified after the removable layer 12 and the base layer 11 are removed from the underfill layer 13 .」
(注目すべきことに,取り外し可能な層12及びベース層11がアンダーフィル層13から除去された後に,アンダーフィル層13は部分的に固化される。)

カ.第4欄第21ないし34行
「Referring to FIG. 7 , after the step 4 of removing the removable layer 12 and the base layer 11 of the film 10 , the step of attaching a sawing tape 50 on the back surface 22 of the bumped wafer 20 can be performed so as to continuously process the following step of singulating the bumped wafer 20 into a plurality of chips 24 .・・・(中略)・・・Because the underfill layer 13 covers the bumps 23 formed on the active surface 21 of the chips 24 , it is unnecessary to dispense another underfill in the gap between the chip and a substrate when such chip 24 with bumps 23 is attached to the substrate to form a flip chip package.」
(図7に参照されるように,取り外し可能な層12及びベース層11をアンダーフィル層13から除去する工程4の後に,バンプ付きウエハ20の裏面22にダイシングテープ50を貼り付ける工程を行うことができ,連続的にバンプ付きウエハ20を個片化して複数の半導体チップ24にする,次の工程に移ることができる。・・・(中略)・・・アンダーフィル層13は半導体チップ24の活性表面21の上に形成されて,バンプ23を被覆しているので,バンプ23を有するそのような半導体チップ24が半導体基板に取り付けられ,フリップチップパッケージを形成するときに,半導体チップと半導体基板との間の隙間に別のアンダーフィルを配置する必要がない。)

キ.第1欄第34行ないし第2欄第2行
「As mentioned above, in a flip chip package, there is usually provided an underfill material between the substrate and the chip so as to enhance the reliability of the packaging products. In a conventional method, the underfill is dispensed at the peripheral of the chip or disposed through an opening of the substrate so as to be filled in the gap between the substrate and the chip. Hence, the bumps of the chip between the chip and the substrate are enclosed by the underfill material. However, this method usually spends a lot of time and causes a lot of voids in the underfill layer.
As disclosed in U.S. Publications 2002/0001688 and 2003/0034128, there is disclosed a wafer level packaging method. Therein, an underfill layer is preformed on a film and then the underfill layer with the film formed thereon is disposed on the bumped wafer and then a pressing and heating process is performed so as to have the underfill layer enclosing the bumps. Afterwards, the bumped wafer with the underfill layer formed thereon is singulated into a plurality of chips. However, the bumps are easy to be damaged when the underfill layer is pressing and heating. In addition, the film is not easy to be removed from the underfill layer. Besides, the process of grinding the backside of the wafer is not easy performed due to not enough protection for the bumps.
Therefore, providing another method to solve the mentioned-above disadvantages is the most important task in this invention.

SUMMARY OF THE INVENTION

In view of the above-mentioned problems, an objective of this invention is to provide a method of forming an underfill layer on a bumped wafer by utilizing a film having a base layer, a removable layer and an underfill layer and performing a process of pressing the film under heating on a bumped wafer to have the bumps embedded in the underfill layer.」
(フリップチップパッケージでは,上記のように包装製品の信頼性を高めるために,通常,基板とチップとの間にアンダーフィル材が提供される。従来の方法では,アンダーフィルはチップの周辺に分配されるか,又は基板とチップとの間の隙間に充填されるように基板の開口部を通って配置されている。したがって,チップと基板との間のチップのバンプはアンダーフィル材によって包囲されている。しかし,この方法は通常,多くの時間を費やしアンダーフィル層に多くの隙間を引き起こす。
米国特許出願公開第2002/0001688号明細書,米国特許出願公開第2003/0034128号明細書に記載されているように,ウエハレベルパッケージング方法が開示されている。ここで,アンダーフィル層はフィルム上に予め形成され,次いで,そのフィルム上に形成されたアンダーフィル層はバンプ付きウエハ上に配置され,その後,バンプをアンダーフィル層が包囲するように押圧及び加熱処理が行われる。その後,アンダーフィル層を有するバンプ付きウエハは複数のチップに分割される。しかし,アンダーフィル層が押圧及び加熱されたとき,バンプは破壊しやすい。又はフィルムはアンダーフィル層から除去することが容易ではない。また,ウエハの裏面を研削する工程がバンプのための十分な保護を行い得ない原因になる。
したがって,上記の欠点を解決するために別の方法を提供することは本発明において最も重要な課題である。

発明の概要

上記問題点に鑑みて,本発明の目的は,ベース層,取外し可能な層,及びアンダーフィル層を有するフィルムを利用して,バンプがアンダーフィル層に埋設されるようにフィルムを加熱プレスすることにより,バンプ付きウエハ上にアンダーフィル層を形成する方法を提供することにある。)

ク.甲2発明
上記ア.ないしカ.の記載を総合すると,甲2には,次の発明(以下「甲2発明」という。)が記載されていると認める。

「バンプ付きウエハ20の上に,ベース層11,接着性を有する材料で作られた取り外し可能な層12及びBステージであるアンダーフィル層13を有するフィルム10を,アンダーフィル層13が,バンプ付きウエハ20の活性表面21に接着するように押圧する工程2と,
ベース層11及び取り外し可能な層12を,アンダーフィル層13から除去する工程4と,
アンダーフィル層13を部分的に固化する工程と,
アンダーフィル層13を部分的に固化する工程の後に,バンプ付きウエハ20を個片化して複数の半導体チップ24にする工程を具備する半導体チップ24の製造方法。」

(2)甲1の記載
異議申立書において甲1として提出され,本件特許に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2005-28734号公報には,以下の記載がある。

ア.段落【0008】
「【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従って,本発明の目的は,フリップチップ実装に好適に使用される,バンプ充填性に優れ,優れたウエハ加工性が得られ,樹脂封止後に優れた電気接続信頼性をもたらす積層シート,該シートを用いた半導体の製造方法ならびに該方法によって製造され得る半導体装置を提供することにある。」

イ.段落【0011】
「【0011】
フリップチップ実装においては、突起電極を形成したウエハを所定の厚さまで研削した後、該ウエハを個々の半導体素子に切断し、得られた半導体素子を配線回路基板上に搭載し、樹脂封止を行う。本発明の積層シートを突起電極が存在する回路面に貼りつけた場合、通常、突起電極はA層を貫通してB層に至ることになるが、B層は突起電極を埋め込み得る柔軟性を有しており、該電極を包み込んで保護するので、ウエハ加工時の突起電極の損傷等が防止される。また、本発明の積層シートは充分に密に回路面上に貼りつけることができるので、突起電極と該シートとの間に実質的にボイドが生ずることはなく、バンプ充填性に優れる。」

(3)甲6の記載
異議申立書において甲6として提出され,本件特許に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000-40711号公報には,以下の記載がある。

ア.段落【0043】ないし【0045】
「【0043】次いで,半導体ウエハ1上に透明,半透明または不透明の樹脂をポッティングし,これをダム用樹脂と同時に所定条件で硬化させて図7(c)に示すように樹脂保護膜36を形成する。この樹脂保護膜36形成用の樹脂としては,透明,半透明または不透明のポリイミド,エポキシ,アクリル,エポキシアクリレート,シリコーン,ポリイミドシリコーン等が用いられる。なお,前記のダム35形成用の樹脂,および樹脂保護膜36用の樹脂については,紫外線照射硬化型でかつ加熱硬化型である樹脂を用いるのが好ましく,その場合の硬化条件としては,例えば2000?3000(mJ/cm^(2))での紫外線照射と,80?130℃で30?60分間の加熱とが採られる。
【0044】次いで,図1(a)?(e)に示した例と同様にして研磨処理し,図7(d)に示すようにダム35,樹脂保護膜36,はんだバンプ10を所定の高さ(例えば30μm程度)に加工する。次いで,図1に示した例,あるいは図3に示した例と同様にして研削および研磨加工を行い,切削溝12内の樹脂保護膜36を半導体ウエハ1の裏面側に露出させ,さらに樹脂保護膜36を所定の厚さ,例えば30μm程度とするとともに,はんだバンプ10の高さも30μm程度としてこれを樹脂保護膜36の表面に露出させる。
【0045】続いて,露出したはんだバンプ30と樹脂保護膜36とを覆って半導体ウエハ1の表面側にダイシング用支持テープ16を貼合し,その後,半導体ウエハ1の裏面側に露出させた樹脂保護膜36に沿って該半導体ウエハ1を,その裏面側からダイシングブレード17によってフルカットダイシング処理し,各半導体チップに分割して樹脂封止型半導体装置を得る。」

(4)甲7の記載
異議申立書において甲7として提出され,本件特許に係る出願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000-40773号公報には,以下の記載がある。

ア.段落【0017】ないし【0021】
「【0017】このようにしてはんだバンプ10を形成したら,図1(e)に示すように半導体ウエハ1の上面全面に厚さ5?10μm程度の透明または半透明の樹脂保護膜11を形成する。この樹脂保護膜11は,ポリイミド,エポキシ,エポキシアクリレート,アクリル,シリコーン,ポリイミドシリコーン等の透明または半透明の樹脂からなるもので,その形成法としては,該透明または半透明の樹脂からなるコーティング剤を半導体ウエハ1の上面にスピンコートし,所定の条件で硬化処理するといった手法が採用される。このようにして樹脂保護膜11を形成すると,はんだバンプ10はこの樹脂保護膜11に覆われた状態となる。硬化前に樹脂保護膜中に存在する気泡を除去し,半導体ウエハ表面及びバンプとの密着性向上の為に,加圧加熱又は減圧加熱の脱泡処理を施すのが望ましい。加熱は,硬化温度以下,例えば50?80℃,加圧は5?10kg/cm^(2)の空気又はN_(2)ガス,減圧は10^(-2)?1Torrの真空条件が望ましい。
【0018】なお,この樹脂保護膜11の形成により,半導体ウエハ1上のダイシング用オートアライメントマーク5やスクライブライン4も該樹脂保護膜11に覆われているが,これらダイシング用オートアライメントマーク5やスクライブライン4は,透明または半透明である樹脂保護膜11を透して視認可能になっているのはもちろんである。すなわち,「透明または半透明」とした記載は,本明細書中においては,その下地が視認可能となる程度の透明度を有する状態を意味しているのである。
【0019】ここで,硬化処理として具体的には,透明または半透明のポリイミドの場合では180?200℃で1時間程度加熱硬化処理し,透明または半透明のエポキシの場合では120?150℃で2?3時間程度加熱硬化処理し,透明または半透明のシリコーンの場合では150?160℃1時間程度加熱硬化処理する。また,透明または半透明のエポキシの場合,2000?3000(mJ/cm^(2))程度紫外線照射硬化処理した後,100?130℃で30分間程度加熱硬化処理してもよい。さらに,透明または半透明のアクリルの場合,1000?3000(mJ/cm^(2))程度紫外線照射硬化処理してもよく,透明または半透明のエポキシアクリレートの場合,2000?3000(mJ/cm^(2))程度紫外線照射硬化処理した後,80?100℃で60分間程度加熱硬化処理してもよい。
【0020】次いで,ウレタン発泡体または不織布基材の研磨クロスと酸化セリウム系スラリーにより,樹脂保護膜11およびはんだバンプ10を樹脂保護膜11が50μm程度の厚さとなるように研磨処理し,図2(a)に示すようにはんだバンプ10の研磨面を樹脂保護膜11表面に露出させる。次いで,無電解メッキ法により,図2(b)に示すようにはんだバンプ10上に厚さ0.02?0.03μm程度のフラッシュ金メッキ層12を形成する。また,必要に応じて半導体ウエハの裏面研削で所定の半導体ウエハ(チップ)厚みとする。半導体ウエハ表面に紫外線照射硬化型テープを貼合し,この状態で半導体ウエハの裏面を研削,例えばインフィールド研削法では粗削り#400の450μm厚仕上げ,精密仕上げ#2000の400μm厚仕上げにより,所望の厚さの半導体ウエハを得る。
【0021】次いで,半導体ウエハ1の裏面(下面)に厚さ90μm程度のダイシング用支持テープ13を貼合する。その後,樹脂保護膜11を透して例えば赤十字マークのダイシング用アライメントマーク5を検出し,これを基にして図2(b)に示したようにダイシングブレード14によってダイシング用支持テープ13を30?40μm程度切り込む条件のフルカットダイシング処理を行い,各半導体チップに分割して樹脂封止型半導体装置を得る。」

4.特許法第29条第2項に係る取消理由についての判断
(1)特許発明1と甲2発明との対比
特許発明1と甲2発明を対比すると,甲2発明の「バンプ付きウエハ20」が特許発明1の「バンプ付きウエハ」に相当することは明らかであり,同様に,「ベース層11」が「支持基材」に相当する。また,甲2発明の「接着性を有する材料で作られた取り外し可能な層12」は,「Bステージであるアンダーフィル層13」に接着した後に,「アンダーフィル層13」から除去できる程度の接着性を有するものであるから,特許発明1の「粘着剤層」に相当する。また,一般に,「Bステージ」とは,熱硬化性樹脂が半硬化した状態をいうから,甲2発明の「Bステージであるアンダーフィル層13」は,特許発明1の「熱硬化性樹脂層」に相当し,甲2発明の「ベース層11,接着性を有する材料で作られた取り外し可能な層12及びBステージであるアンダーフィル層13を有するフィルム10」と,特許発明1の「支持基材と粘着剤層と熱硬化性樹脂層とがこの順で積層された保護層形成用フィルム」は,「支持基材と粘着剤層と熱硬化性樹脂層とがこの順で積層されたフィルム」という点で一致する。また,甲2発明の「アンダーフィル層13が,バンプ付きウエハ20の活性表面21に接着するように押圧する工程2」は,特許発明1の「バンプ付きウエハのバンプが形成されている面に」,「前記熱硬化性樹脂層を貼り合わせ面にして貼り合わせる工程」に相当することは明らかである。
そして,甲2発明の「ベース層11及び取り外し可能な層12を,アンダーフィル層13から除去する工程4」が,特許発明1の「前記支持基材と前記粘着剤層とを,前記熱硬化性樹脂層から剥離する工程」に相当することは明らかである。
また,甲2発明の「アンダーフィル層13を部分的に固化する工程」と,特許発明1の「前記熱硬化性樹脂層を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱して硬化させ,保護層を形成する工程」とは,「前記熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させる工程」という点で共通する。
さらに,甲2発明の「アンダーフィル層13を部分的に固化する工程の後に,バンプ付きウエハ20を個片化して複数の半導体チップ24にする工程を具備する半導体チップ24の製造方法」と,特許発明1の「前記の保護膜を形成する工程の後に,前記バンプ付きウエハを保護層と共にダイシングする工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法」とは,「前記の熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させる工程の後に,前記バンプ付きウエハを硬化した熱硬化性樹脂と共にダイシングする工程とを具備する半導体装置の製造方法」という点で共通する。

以上から,特許発明1と甲2発明は,以下の点で一致及び相違する。

<一致点>
バンプ付きウエハのバンプが形成されている面に,支持基材と粘着剤層と熱硬化性樹脂層とがこの順で積層されたフィルムを,前記熱硬化性樹脂層を貼り合わせ面にして貼り合わせる工程と,
前記支持基材と前記粘着剤層とを,前記熱硬化性樹脂層から剥離する工程と,
前記熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させる工程と,
前記の熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させる工程の後に,前記バンプ付きウエハを硬化した熱硬化性樹脂と共にダイシングする工程とを具備する半導体装置の製造方法。

<相違点1>
バンプ付きウエハが,特許発明1では,「バンプが形成されている面側に低誘電材料層が形成されている」ものであるのに対して,甲2発明では,そのようなものか不明な点。

<相違点2>
特許発明1では,フィルムが「保護層形成用」であり,硬化した熱可塑性樹脂層により「保護層」が形成されるのに対して,甲2発明では,フィルムが「フィルム10」であり,硬化した熱可塑性樹脂層により保護層が形成されるかどうか不明な点。

<相違点3>
「前記熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させる工程」が,特許発明1では「加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱」するものであるのに対して,甲2発明では「アンダーフィル層13を部分的に固化」するものである点。

(2)相違点の判断
ア.相違点3について
事案に鑑みて,まず相違点3について検討する。
(ア)上記3.(1)キ.に示す記載からみて,甲2発明が解決しようとする課題は,従来の技術では,フリップチップパッケージの信頼性を高めるために,基板とチップとの間にアンダーフィル材を充填していたが,基板の開口部を通して充填することから,多くの時間を費やし,アンダーフィル層に多くの隙間を引き起こすという課題があり,また,他の従来技術として,アンダーフィル層をフィルム上に予め形成して,そのフィルム上に形成されたアンダーフィル層をバンプ付きウエハ上に配置する方法では,フィルムをアンダーフィル層から除去することが容易ではなく,バンプを十分に保護できないという課題があったというものである。
そして,甲2発明は,それらの課題を解決するために,ベース層,取外し可能な層,及びアンダーフィル層を有するフィルムを利用して,バンプがアンダーフィル層に埋設されるようにフィルムを加熱プレスすることにより,バンプ付きウエハ上にアンダーフィル層を形成する方法を提供することを目的としている。
これらの甲2の記載に接した当業者であれば,甲2発明は,アンダーフィルを改善しようとした発明であると当然に理解できるところ,アンダーフィルは,半導体チップと基板との熱膨張係数が異なることにより,半導体チップと基板との接合部が破壊されることを防止するために,半導体チップと基板との間に充填して熱応力を緩和させる樹脂をいう。そして,半導体チップと基板との間の熱応力を緩和するためには,アンダーフィルは,半導体チップと基板の双方に接着しなければならないことから,甲2の記載に接した当業者であれば,半導体チップを基板に取り付ける前に,甲2発明のアンダーフィル層13を完全に硬化させようと試みることはない。
(イ)これを前提に,甲2発明のアンダーフィル層13を部分的に固化するにあたって,特許発明1のように,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱することが,当業者にとって容易に想到できる事項であるかどうかを検討すると,上記3.(3)ア.に示すように,甲6には,樹脂保護膜36の硬化条件として,80?130℃で30?60分間の加熱を行うことが示されているが,それにより,樹脂保護膜36が部分的に硬化するかどうかは,明記されていない。むしろ,樹脂保護膜36を硬化させた後,研磨処理とダイシング処理が行われて,樹脂封止形半導体装置が得られることから見て,樹脂保護膜36は完全に硬化して樹脂封止が行われていると解するのが相当である。
また,上記3.(4)ア.に示すように,甲7には,樹脂保護膜11の硬化処理として,ポリイミドの場合では180?200℃で1時間程度加熱硬化処理すること,エポキシの場合では120?150℃で2?3時間程度加熱硬化処理すること,シリコーンの場合では150?160℃で1時間程度加熱硬化処理すること,エポキシの場合では2000?3000(mJ/cm^(2) )程度紫外線照射硬化処理した後,100?130℃で30分間程度加熱硬化処理すること,エポキシアクリレートの場合では2000?3000(mJ/cm^(2) )程度紫外線照射硬化処理した後,80?100℃で60分間程度加熱硬化処理することが示されているが,それにより,それぞれの樹脂保護膜11が部分的に硬化するかどうかは,明記されていない。むしろ,樹脂保護膜11を硬化させた後,研磨処理とダイシング処理が行われて,樹脂封止形半導体装置が得られることから見て,樹脂保護膜11は完全に硬化して樹脂封止が行われていると解するのが相当である。
(ウ)そうすると,熱硬化性樹脂を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱することにより,部分的に硬化させることは,甲6及び7には示されていないから,甲6及び7の記載に接した当業者が,甲2発明のアンダーフィル層13を部分的に固化するにあたって,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱することを試みるとはいえない。
また,異議申立人が提出した他の証拠,すなわち甲1,3ないし5,及び8ないし10を参照しても,熱硬化性樹脂を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱することにより,部分的に硬化させることは示されていない。
したがって,甲2発明のアンダーフィル層13を加熱して硬化させるにあたり,特許発明1のように「加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱」することは,当業者が容易に想到できた事項ではない。

イ.異議申立人の意見について
(ア)平成28年12月14日付けの意見書(以下「意見書」という。)において,異議申立人は,熱硬化性樹脂を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱して硬化させることは,甲6及び7に記載されていること(意見書の第4ページ第16行ないし第7ページ第5行。),甲5に,バンプ付き半導体ウエハにポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂をスピンコートした後に熱硬化させて樹脂膜3を形成することが記載され,ポリイミド樹脂又はエポキシ樹脂を,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間の範囲内の条件で熱硬化させることは自明であること(意見書の第7ページ第6行ないし第8ページ第3行。),甲2発明のアンダーフィル層13を部分的に固化した後にダイシングすることに代えて,熱硬化性樹脂を加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱して硬化させた後にダイシングすることは,甲5ないし7に記載された周知技術を甲2発明に適用することにより,当業者が容易に想到できたこと(意見書の第8ページ第4ないし10行。)を主張している。
(イ)しかし,甲6及び7には,熱硬化性樹脂を部分的に硬化させることが示されておらず,また,熱硬化性樹脂を部分的に硬化するために,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱することが自明ではない以上,当業者が甲2発明のアンダーフィル層13を部分的に固化するにあたって,加熱温度120?200℃,加熱時間30分?3時間で加熱することを試みるとはいえない。
(ウ)むしろ,上記ア.で説示したように,甲6及び7には,甲6及び7に示された硬化条件で,熱硬化性樹脂を完全に硬化させることが示されていると解されるところ,そのような硬化条件を甲2発明に適用すれば,甲2発明のアンダーフィル層13は,基板に取り付ける前に完全に硬化してしまい,アンダーフィルとしての機能を失い,甲2発明の目的であるアンダーフィル層を提供することにはならないから,異議申立人の主張は採用できない。
(エ)また,異議申立人は,甲5ないし7の記載に照らして,甲2発明のアンダーフィル層13の熱硬化が,必ずしも,基板に接続された後に行われる必要はない(意見書の第8ページ最終行ないし第9ページ第2行)などと主張しているが,上記ア.に説示するとおり,甲2発明は,従来のアンダーフィルの課題を解決しようとして,アンダーフィルの改善を目的とするものであるから,甲2発明のアンダーフィル層13の完全な熱硬化を,基板に接続する前に行うなどと解する余地はなく,異議申立人の主張は採用できない。

ウ.むすび
以上のとおり,相違点3に係る構成は,甲2発明,並びに甲1及び3ないし10に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものではないから,他の相違点1及び2について検討するまでもなく,特許発明1は,甲2発明,並びに甲1及び3ないし10に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものではない。

(3)特許発明2及び3について
特許発明2及び3は,特許発明1を直接又は間接に引用する発明であるから,特許発明1の発明特定事項を全て含んでいる。
そして,特許発明1は,甲2発明,並びに甲1及び3ないし10に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものではないことから,特許発明1の発明特定事項を全て含む特許発明2又は3についても,甲2発明,並びに甲1及び3ないし10に記載された事項に基づいて,当業者が容易に想到できたものではない。

5.特許法第36条第6項第1号に係る取消理由についての判断
上記第2の2.(1)に示すとおり,訂正前の請求項1には「保護膜」という記載が存在しないのに,「前記の保護膜」と記載されていたところ,特許発明1は「前記の保護層」と記載され,誤記が解消しているから,特許発明1の記載は明確である。
したがって,特許発明1は,特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしている。

6.取消理由通知において採用しなかった特許異議申立て理由について
(1)異議申立人は,甲1に記載された発明(異議申立書第12ページ下から第9ないし最終行,以下「甲1発明」という。)と訂正前の請求項1に係る発明(以下「訂正前発明」という。)を対比して,一致点並びに相違点1及び2を挙げ(異議申立書第28ページ最終行ないし第30ページ第1行),各相違点がいずれも容易相当であること(異議申立書第30ページ第2行ないし第32ページ第17行)を主張している。

(2)そこで,異議申立人の挙げた相違点2,すなわち訂正前発明では,熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させ,保護層を形成する工程の後に,バンプ付きウエハを保護層と共にダイシングするが,甲1発明では,バンプ付きウエハを熱硬化性樹脂層と共にダイシングする工程の後に,熱硬化性樹脂層を加熱して硬化させている点,を念のため検討する。
甲1発明が解決しようとする課題は,上記3.(2)ア.に示すとおりであって,樹脂封止後に優れた電気接続信頼性をもたらすことが示されているところ,その電気接続信頼性は,上記3.(2)イ.に示すように,半導体素子を配線回路基板上に搭載し、樹脂封止を行うことでもたらされる。
そうすると,甲1のこれらの記載に接した当業者であれば,半導体素子を配線回路基板上に搭載するよりも前に,樹脂封止を行うなどと試みることはないから,異議申立人の挙げた相違点2は,当業者が容易に想到できたものとはいえない。
したがって,異議申立人の主張は,理由がない。

第4.むすび
以上のとおりであるから,取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては,特許発明1ないし3に係る特許を取り消すことはできない。
また,他に特許発明1ないし3に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バンプが形成されている面側に低誘電材料層が形成されているバンプ付きウエハのバンプが形成されている面に、支持基材と粘着剤層と熱硬化性樹脂層とがこの順で積層された保護層形成用フィルムを、前記熱硬化性樹脂層を貼り合わせ面にして貼り合わせる工程と、
前記支持基材と前記粘着剤層とを、前記熱硬化性樹脂層から剥離する工程と、
前記熱硬化性樹脂層を、加熱温度120?200℃、加熱時間30分?3時間で加熱して硬化させ、保護層を形成する工程と、
前記の保護層を形成する工程の後に、前記バンプ付きウエハを保護層と共にダイシングする工程とを具備することを特徴とする半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記熱硬化性樹脂層の溶融粘度は、前記バンプ付きウエハに前記保護層形成用フィルムを貼り合わせる際の温度において、1×10^(2)Pa・S以上2×10^(4)Pa・S未満であり、
前記粘着剤層のせん断弾性率は、前記バンプ付きウエハに前記保護層形成用フィルムを貼り合わせる際の温度において、1×10^(3)Pa以上2×10^(6)Pa以下であることを特徴とする請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記熱硬化性樹脂層は、バンプ高さの0.05?0.9倍の厚みを有することを特徴とする請求項1又はと2に記載の半導体装置の製造方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-23 
出願番号 特願2011-29884(P2011-29884)
審決分類 P 1 651・ 537- YAA (H01L)
P 1 651・ 121- YAA (H01L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 今井 聖和矢澤 周一郎  
特許庁審判長 平岩 正一
特許庁審判官 長清 吉範
刈間 宏信
登録日 2015-10-30 
登録番号 特許第5830250号(P5830250)
権利者 日東電工株式会社
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 特許業務法人 ユニアス国際特許事務所  
代理人 特許業務法人ユニアス国際特許事務所  

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