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審決分類 審判 一部申し立て 特29条の2  G21K
審判 一部申し立て 1項3号刊行物記載  G21K
審判 一部申し立て 2項進歩性  G21K
管理番号 1325864
異議申立番号 異議2016-700185  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-02 
確定日 2017-02-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第5774156号発明「電子ビーム照射器および電子ビーム発生方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5774156号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1、2、3、4、5について訂正することを認める。 特許第5774156号の請求項1、5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5774156号は、平成19年2月13日になされた特許出願の一部を平成25年5月2日に新たな特許出願とし、さらに、その一部を平成26年3月28日に新たな特許出願としたものであって、平成27年7月10日に特許の設定登録がなされ、同年9月2日に特許掲載公報が発行され、その後、平成28年3月2日付けで、その請求項1及び請求項5に係る特許に対し、特許異議申立人中嶋なは代により特許異議の申立てがなされ、同年4月22日付けで取消理由が通知され、その指定期間(延長期間を含む)内である同年7月8日付けで意見書が提出され、同年8月2日付けで取消理由の通知(決定の予告)がなされ、その指定期間内である同年10月7日付けで意見書の提出及び訂正の請求があり、その訂正の請求に対して特許異議申立人中嶋なは代から同年12月26日付けで意見書が提出されたものである。

第2 訂正の適否についての判断
1 訂正の内容
平成28年10月7日になされた訂正の請求(以下「本件訂正請求」という。)による訂正の内容は、次の(1)ないし(5)のとおりである。
(1)訂正事項1
特許請求の範囲の請求項1に
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。」
と記載されているのを、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出るように構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。」
に訂正する。(下線は訂正個所を示す。)
(2)訂正事項2
特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項2を、当該請求項1を引用しないものとする。具体的には、特許請求の範囲の請求項2に
「電子発生器はハウジングと、このハウジング内に位置決めされて、このハウジング内に前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射器。」
と記載されているのを、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内に位置決めされて、このハウジング内に前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。」
に訂正する。(下線は訂正個所を示す。)
(3)訂正事項3
特許請求の範囲の請求項1の記載を引用する請求項3を、当該請求項1を引用しないものとする。具体的には、特許請求の範囲の請求項3に
「前記電子ビームが、前記ノズル内で収束する収束部と、この後に続く、前記出射窓に到達する前に前記ノズル内で発散する発散部とを有し、前記出射窓を出た後にさらに発散することを特徴とする請求項1に記載の電子ビーム照射器。」
と記載されているのを、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子ビームが、前記ノズル内で収束する収束部と、この後に続く、前記出射窓に到達する前に前記ノズル内で発散する発散部とを有し、前記出射窓を出た後にさらに発散するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。」
に訂正する。(下線は訂正個所を示す。)
(4)訂正事項4
特許請求の範囲の請求項1ないし3の記載を引用する請求項4を、当該請求項1ないし3を引用しないものとして、当該請求項1の記載を加えたものとする。具体的には、特許請求の範囲の請求項4に
「真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部で且つノズルが挿入可能な開口部を有する容器を、前記ノズルに対して移動させ得る支持体が設けられたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の電子ビーム照射器。」
と記載されているのを、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであり、
前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部で且つノズルが挿入可能な開口部をネック部に有するボトルを、前記ノズルに対して移動させ得る支持体が設けられたことを特徴とする電子ビーム照射器。」
に訂正する。(下線は訂正個所を示す。)
(5)訂正事項5
特許請求の範囲の請求項5に
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されることを特徴とする電子ビーム発生方法。」
と記載されているのを、
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出ることを特徴とする電子ビーム発生方法。」
に訂正する。(下線は訂正個所を示す。)

2 訂正の目的の適否、一群の請求項、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否
(1)訂正事項1及び5について
訂正事項1及び5に関連する事項として、本件特許の出願当初の請求項2には
・「電子発生器はハウジングと、このハウジング内に位置決めされて、このハウジング内に前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射することを」
と記載され、また本件特許の出願当初の発明の詳細な説明には、
・「ボトル20の内部18は、ノズル12がボトル20に挿入されるとき、ならびに/もしくはノズル12がボトル20から引き抜かれるとき、または挿入した後に、照射される。」(【0014】)、
・「ハウジング26の軸方向の端部には、フィラメント32および静電レンズ30からの電子e-が通過する、電子を透過または放出するための、直径D5を有する領域もしくは開口部38があり、ここには、電子発生器24から発生した電子e-をさらに収束または成形する、静電気による、収束または成形のための他のレンズもしくは部材が形成されていてもよい。」(【0018】)、及び、
・「・・・電子ビーム44として出射窓42を出る・・・」(【0019】)
と記載されており、これらの記載から、訂正事項1及び5における「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射」すること、及び「(前記真空チェンバが・・・ボトルの当該開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出る」ことについての特定事項は、本件特許の出願当初の特許請求の範囲又は明細書に記載されているものと認められる。
また、訂正前の請求項1及び5を
「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射」すること、及び「(前記真空チェンバが・・・ボトルの当該開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出る」ことで限定したものである。
よって、上記訂正事項1及び5は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
(2)訂正事項2ないし4について
訂正事項2ないし4は、いずれも、他の請求項の記載を引用する請求項の記載を当該他の請求項の記載を引用しないものとすることを目的とするものであって、新規事項の追加に該当せず、また、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
また、訂正請求2ないし4により、他の請求項の記載を引用する請求項は、いずれも、当該他の請求項の記載を引用しないものとなり、かつ、訂正請求人から、別の訂正単位とする求めがあったので、訂正前の一群の請求項は解消された。

3 小活
以上のとおりであるから、本件訂正請求による訂正は特許法第120条の5第2項第1号及び第4号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第4項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第4項から第6項までの規定に適合するので、訂正後の請求項1,2,3,4,5について訂正を認める。

第3 特許異議の申立てについて
1 本件訂正発明
本件訂正請求により訂正された訂正請求項1及び5に係る発明(以下「本件訂正発明1及び5」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1及び5に記載された次の事項により特定されるとおりのものである。
・本件訂正発明1
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出るように構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。」
・本件訂正発明5
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出ることを特徴とする電子ビーム発生方法。」

2 取消理由(決定の予告)の概要
本件訂正請求による訂正前の請求項1及び5(以下「本件特許発明1及び5」という。)に係る発明に対して平成28年8月2日付けで特許権者に通知した取消理由(決定の予告)の概要は、次のとおりである。
(1)本件特許発明1は甲第3号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当する。よって、本件特許発明1は、特許法第29条第1項第3号の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(2)本件特許発明1は甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許発明1は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。
(3)本件特許発明5は甲第1号証に記載された発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。よって、本件特許発明5は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである。

3 甲号証の記載
(1)甲第1号証について
ア 甲第1号証の記載事項
取消理由通知で引用した甲第1号証の特表2003-504605号公報(以下「甲1」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
a 「【0001】
【発明の背景】
電子ビームはインク、塗料および塗装の乾燥や硬化のような、多くの工業プロセスにおいて使用されている。電子ビームは液体、気体および表面の滅菌のほか、有害廃棄物の浄化にも使用されている。
【0002】
工業用の従来の電子ビーム装置は、処理される材料上に電子ビームを照射する電子ビーム加速器を備えている。加速器は鉛で囲んだ大型の真空チャンバを有し、内部に電子発生フィラメントまたはフィラメント電源から電力(パワー)供給されるフィラメントを含む。作動中は、真空チャンバは真空ポンプにより連続的に排気される。フィラメントはハウジングで囲まれており、ハウジングは、真空チャンバの1つの側面に配置された金属箔の電子放射窓に向いている格子状の開口を有する。高電圧が、高電圧電源によってフィラメント・ハウジングと放射窓の間に印加される。フィラメントから発生した電子は加速され、電子ビームとしてフィラメントからハウジングの開口格子を通過し、放射窓から外部に放出される。放射装置の電源は一般に、フィラメントと放射窓との間の領域内の電界線を平坦化するために備えられる。これにより、図1のグラフ1に示すように、電子ビーム内の電子がビームの中心に集中するのを防止し、図1のグラフ2に示すようにビームの幅全体に電子を均一に分散させる。」
b 「【0005】
【発明の概要】
本発明は電子ビーム装置用の小型で、簡単な電子加速器を提供するものであり、それにより電子ビーム装置の保守作業を容易にし、真空技術と加速器技術に関し高度に訓練された要員による保守作業の必要を無くすることである。
【0006】
本発明の好ましい実施形態では、電子ビーム放射窓を有する真空チャンバを備える電子加速器を提供する。放射窓は、真空チャンバに金属接触して接合された金属箔から形成され、両者の間を気密に密封している。放射窓の厚さは約12.5μm未満である。真空チャンバは気密に密封され、内部を恒久的な自己保持真空に維持している。電子発生器は真空チャンバ内に置かれ、電子を発生する。ハウジングが電子発生器を取り囲んでいる。ハウジングは、その壁に、電子発生器と放射窓との間に形成された電子透過領域を有しており、ハウジングと放射窓の間に電圧が印加されると、電子を電子発生器から放射窓の外へ電子ビームとして加速する。」
c 「【0010】
また本発明は、電子ビーム放射窓を有する真空チャンバを備える電子加速器を提供する。電子発生器が真空チャンバ内に配置され、電子を発生する。ハウジングが電子発生器を取り囲んでおり、そのハウジング内に、電子発生器と放射窓との間に形成された電子透過領域を有している。この電子透過領域は、ハウジングと放射窓との間に電圧が印加されると、電子を電子発生器から放射窓の外部に電子ビームとして加速する。ハウジングは受動的電界線シェーパ(整形手段)を備え、電子発生器と放射窓との間の電界線を平坦にすることにより、電子ビームの横方向の電子分布を均一にする。」
d 「【0014】
【好ましい実施形態の詳細な説明】
図2および図3において、電子ビーム加速器10は交換可能なモジュール式加速器であり、電子ビーム装置ハウジング(図示なし)内に組み込まれている。加速器10は、両端が密閉された細長い、一般には円筒状の2分割された外側シェル14を備えている。外側シェル14の基端部は、外側シェルに溶接された基端エンド・キャップ16で閉じられている。好ましくは、外側シェル14とエンド・キャップ16は各々ステンレス鋼で製作されるが、代替方法では他の適切な金属で製作してもよい。」
e 「【0018】
電子発生器31は真空チャンバ46内に位置しており、電気的に並列に接続した3本の長さ8インチ(203mm)のタングステン製のフィラメント32(図4)から構成するのが望ましい。別の形態としては、2本のフィラメント32を使用することもできる。電子発生器31はステンレス鋼製のハウジング30で囲まれている。フィラメント・ハウジング30は、平坦な底壁33に設けた一連の格子状の開口34と、ハウジング30の4つの側壁に設けた一連の開口35とを有し、これら開口34,35が電子通過領域を形成している。フィラメント32は、ハウジング30内でハウジング30の底壁33と上壁のほぼ中間に配置するのが望ましい。開口35は実質的にフィラメント32よりも上方までは延びていない。」
f 「【0021】
使用に際しては、加速器10を電子ビーム装置に組み込み、コネクタ12に電気的に接続する。電子ビーム装置のハウジングいは加速器10を囲む鉛製の包囲体が組み込まれている。フィラメント32は、フィラメント電源50(ACまたはDC)から電力が供給されて、最高で約4200°Fまで加熱され、フィラメント32に自由電子を発生させる。図3の高電圧電源48から印加されるフィラメント・ハウジング30と放射窓24間の高電圧により、図4に示すフィラメント32上の自由電子56をフィラメント32から電子ビーム58の形にして加速し、ハウジング30の開口34および放射窓24(図3)を通過して外部へ放射する。
【0022】
側面開口35は、その周辺に弱い電界を発生させ、この電界が、フィラメント32と放射窓24との間の高電圧電界線54を、ハウジング30の底壁33の平面に対して平坦化(この平面と平行化)する。高電圧電界線54を平坦にすることで、電子ビーム58の電子56は、図1のグラフ1に示すように中心位置に集束することなく、比較的直線的に開口34を通ってハウジング30から放射される。この結果、電子ビーム58は、図1のグラフ2のプロファイルと同様のプロファイルを有する、幅が約2インチ(50.8mm)、長さが約8インチ(203mm)の幅広いビームになる。図1のグラフ1の細い高密度電子ビームは、放射窓24を貫通する孔を焼き抜くため、好ましくない。
【0023】
側面開口35の機能をさらに図解するために、図5に側面開口を省いたハウジング30を示す。図5から分かるように、側面開口35を省いた状態では、電界線54は上方にアーチ形に湾曲する。電子56は電界線54にほぼ直交するように進むため、電子56は細い電子ビーム57に集束する。対照的に、図4では、電界線54は平坦になり、電子56は幅広の実質的に集束しない電子ビーム58の状態で進む。したがって、従来の加速器では、高電圧のエキストラクタ(抽出器)の電源を使用して高電圧電界力線を平坦化し、電子を電子ビームの横方向に均一に分散させる必要があったのに対し、本発明では、開口35を設けることにより、簡単かつ安価な方法で同一結果を得ることができる。」
g 「【0030】
図6は3台の加速器10a、10b、10cを含むシステムを示す。これらの加速器は、電子ビームを移動製品62の全幅に渡って隙間なく照射するように、相互にジグザグに配置されている。電子ビーム60で照射する。それぞれの加速器10a、10b、10cの電子ビームは、1台の加速器の外径よりも細いため、3台を横に並べても製品62の全幅に渡って電子ビーム60を照射することはできない。その代わりに、加速器10bを、製品62の移動方向に沿って、加速器10aと10cに対して若干横後方にずれせて配置する。その結果、それぞれの電子ビーム60の側端が相互に横方向に隙間なく整列することになる。結果的に、図のように、移動製品62は、電子ビーム60により階段状に全面が照射される。3台の加速器を示しているが、別の方法として、4台以上の加速器10をジグザグに配置してさらに幅広の製品を照射したり、2台の加速器10をジグザグ配置して狭い幅の製品を照射することもできる。」
h 「【0044】
図16に示すように、必要に応じて、延長ノズル144を加速器100および130(図12および13)に固定できる。この場合、放射窓24はノズルの先端部に配置できる。ノズル144はカップおよびボトルなどの狭い開口内に挿入して、内部を滅菌するのに使用できる。」
i 「【図12】


j 「【図13】


k 「【図16】


イ 甲1に記載された発明
上記アのiの図12から、真空チャンバ104が所定の幅を有すること及びフィラメント32を取り囲んでフィラメント・ハウジング30が設けられていることが見て取れる。
よって、上記アのa?kの記載事項から甲1には、
「電子ビーム放射窓24を有する所定の幅の真空チャンバ46を備える電子加速器100であり、
真空チャンバ46内に電子発生器31が位置しており、電気的に並列に接続した3本の長さ8インチ(203mm)のタングステン製のフィラメント32から構成され、
フィラメント32を取り囲んでフィラメント・ハウジング30が設けられ、
使用に際しては、フィラメント32は、フィラメント電源(ACまたはDC)から電力が供給されて、最高で約4200°Fまで加熱され、フィラメント32に自由電子を発生させ、高電圧電源から印加されるフィラメント・ハウジング30と放射窓24間の高電圧により、フィラメント32上の自由電子をフィラメント32から電子ビームの形にして加速し、ハウジング30の開口34および放射窓24を通過して外部へ放射し、
延長ノズル144を加速器100に固定でき、この場合、放射窓24はノズルの先端部に配置でき、ノズル144はカップおよびボトルなどの狭い開口内に挿入して、内部を滅菌するのに使用できる電子加速器100。」
の発明(以下「引用甲1発明」という。)が記載されている。

(2)甲第2号証について
ア 甲第2号証の記載事項
甲第2号証の特公昭57-20665号公報(以下「甲2」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
a 「第6図に示すように、適当な高を圧ブッシングは部材79の全長を覆い且つ伸びる絶縁性のスリーブ80と金属ワツシヤ82で分離された複数のガラスのリング81からなり、隣接したワツシヤは抵抗89を通じて電気的に接続されて分圧器を形成する。そのような高電圧ブツシングは例えば100KV以上の総合電圧の分割を行うものであり、従つてアークを生じるには不充分な比較的低い電圧のみが各ガラスリングに現われる。この高電圧ブツシングはねじ等により主ハウジング71に除去しうるように固着されて修理あるいは交換をしうるごとくなつており、そしてまた主ハウジング71内の真空の損失を防止するためシールされる。大きな金属のリング82は補助ハウジング74に隣接して設けられてこの点の電界を整形する。
主ハウジング71から外向きに伸びてその方形の開口86にまたがつているのは中空のスペーサ部材87でありその開口86から離れた方の端部には第8図に示すようにスロツトを有する支持板85の上に配置されてそれを覆う箔84からなる電子窓がシール状態で装置される。主ハウジング71の開口86と内室73の開ロア8は夫々グリッド91と92で覆われる。第7図に示すようにグリツド91と92は同じでよく互いに均一に間隔をとられてフレーム94内に支持される小さいロツド93で形成される。グリツド91は主ハウジング71と電気的に接触しそしてグリツド92は内室73と電気的に接触する。」(第4ページ右欄末行?第5ページ第28行)
b「第6図


イ 甲2に記載された発明
上記アのbの第6図から、「主ハウジング71が所定の幅を有する」こと、「スペーサ部材87が主ハウジング71から長手軸心方向に沿って延出している」こと、「スペーサ部材の遠位端に箔84を備えること」、「主ハウジング71内に配置された内室73の内部にはフィラメント78が配設され、当該フィラメント78で形成された電子ビームがスペーサ部材87を通って放出される」こと、及び「スペーサ部材87の幅が主ハウジング71の幅より小さい」ことが見て取れる。そして、スペーサ部材87の幅より大きくハウジング71の幅より小さな幅のボトル開口部が想定されうることから、「スペーサ部材87が、主ハウジング71に挿入されるには小さすぎる開口部に挿入可能に構成されたものである」といえる。
よって、上記アのa,bの記載事項から甲2には、
「所定の幅を有する真空の主ハウジング71と、主ハウジング71から長手方向に沿って延出したスペーサ部材87と、スペーサ部材87の遠位端に備えられた箔84からなる電子窓と、スペーサ部材87を通って放出される電子ビームを形成するフィラメント78と、主ハウジング内に配置され、その内部には前記フィラメント78が配設された内室73とを備える電子放出装置であって、
スペーサ部材87の幅が主ハウジング71の幅より小さく、スペーサ部材87が、主ハウジング71に挿入されるには小さすぎる開口部に挿入可能に構成されたものである電子放出装置。」
の発明(以下「引用甲2発明」という。)が記載されている。

(3)甲第3号証について
ア 甲第3号証に記載された事項
取消理由通知で引用した甲第3号証の西ドイツ特許第1010201号明細書(以下「甲3」という。)には、次の事項が記載されている。(日本語訳を記載する。なお、日本語訳は、異議申立人が提出した甲第3号証の抄訳文を参酌してなされたものである。また、下線は当審において付されたものである。)
a 「本発明は、電子ビームを材料に照射し、この材料の化学変換を発生させるための方法及び装置に関するものである。
本発明では、高エネルギーおよび高強度の、好適には連続的である電子ビームでの材料の高速走査が行われる。
本発明の方法および装置は、食品、薬品およびその他の物質を滅菌すること、または、材料における化学変換を達成することに特に適している。高エネルギーの連続的な電子ビームで材料における規定の高速に走査することによって、瞬間的な電離密度が増加させられ、これにより、照射が行われた材料の特性に悪影響が与えられることが回避される。」(第1ページ左欄第1?17行)
b 「本明細書にて説明される走査方法(いわゆる傾斜運動を有する)は、電子ビームが、断面において例えば25.4mm以下という小さい直径で得られる場合、有利に利用される。記載される走査方法は、電子ビームが非常に小さい断面、例えば6.35mm、3.18mmまたはそれ以下の直径を有する場合、特に有利である。」(第1ページ左欄第51行?右欄第31行)
c 「図1および図2には、ヴァンデグラフ静電起電機の加速管の実施形態の一部破断された部分を参照符号1で示す。ただし、本発明は、ヴァンデグラフ静電起電機の利用に限定されるものではない。この起電機は、細い高速電子ビームを発生させることができ、そのエネルギーは、数百万ボルトのオーダ、例えば、500万ボルト以上であり得る。図1Aには、ヴァンデグラフ静電起電機の加速管のより新しい実施形態を示し、以下では、本発明に関する限り、作用が実質的に同一であるにせよ、詳細に説明する。
加速管1のカソードから放射された高速電子ビームには、参照符号2が付されている。ビーム2の電子は、加速管1の真空領域を通り、本明細書では詳細な説明を必要としない方法で加速される。図1、図1Aおよび図2に示した構成では、電子は直線または真っ直ぐな経路で進行し、下端の窓3から放出される前に、図1および図2に参照符号3aを付した調整磁石3aによって調整または収束される。」(第3ページ右欄第5?31行)
d 「


イ 甲3に記載された発明
上記アのdの図面の記載から、加速管1は上部側の直径の大きな部分(以下「加速管大径上部」という。)とその下部側に長手軸心に沿って延出して設けられた小径の部分(以下「加速管小径下部」という。)からなり、加速管大径上部が所定の幅を有し、加速管小径下部は加速管大径上部よりも小さな直径を有していることが見て取れる。
また、加速管小径下部が、加速管大径上部の直径よりも小さいから、加速管大径上部の直径よりは小さいが加速管小径下部の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能であることは当然のことである。
よって、上記アのa?dの記載から、甲3には、
「所定の幅を有している加速管大径上部と、
加速管大径上部から長手軸心に沿って延出して設けられた加速管小径下部とからなる加速管1を備えるヴァンデグラフ静電起電機であって、
加速管1のカソードから放射された高速電子ビーム2の電子は、加速管1の真空領域を通り、直線または真っ直ぐな経路で進行し、下端の窓3から放出される前に、調整磁石3aによって調整または収束され、
加速管小径下部は加速管大径上部よりも小さな直径を有し、加速管小径下部が、加速管大径上部の直径よりも小さいから、加速管大径上部の直径よりは小さいが加速管小径下部の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能であるヴァンデグラフ静電起電機。」
の発明(以下「引用甲3発明」という。)が記載されている。

(4)甲第4号証について
ア 甲第4号証の記載事項
甲第4号証の特表2005-516778号公報(以下「甲4」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
a「【技術分野】
【0001】
本発明は、ビーム処理の方法に関し、好ましくは、例えば電子ビームが内部で発生される真空室の外に配置された工作物の電子ビーム溶接のような、電子ビーム処理の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子ビーム溶接は、溶接する高速品に最小限の熱を入力することで、非常に深く狭い溶接を行うことが可能である。これにより、歪みが殆どない溶接が得られる。
【0003】
通常、電子ビーム溶接は真空内で実施される。しかし、これは、懸案の工作物を真空室内に配置し、溶接後にはここから取り出す必要があることを意味する。これは時間がかかり、また、処理を大きく制限してしまうが、最大の利点は、非常に厚い工作物の溶接が可能なことである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大気圧下で電子ビーム溶接を行う装置が開発されたが、これらの装置には、電子ビームが空気中の分子と衝突することにより、ビームが急速に拡散し、処理の利点が失われてしまうという欠点が伴う。
【0005】
そのため、本発明の目的は、電子ビーム処理の方法、特に、上述した欠点を排除した、大気圧での電子ビーム溶接の方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、序文に記載したタイプの方法は、針金が、真空室から、真空室内に配置した工作物へと供給され、真空室内で生成されたビームが、工作物に供給された針金を介して工作物へ向けられ、該針金が好ましくは中空であることを特徴とする。したがって、真空室、針金、工作物が完全な連鎖を形成する場合には、ビームを工作物へと下方に向けて伝送することができる。こうすることで、電子ビーム処理中に、工作物を真空室の外に配置することが可能になる。」
b「【0021】
これ以外の別例は、事前製造した中空針金を使用することで、形成工程と結合工程を省略するというものである。この場合には、中空針金が、真空室4内の電子ビーム2の前の、針金曲線の経路に誘導されるため、中空針金を、真空室の外へ、電子ビーム2に対して近軸的に誘導することができる。適切な針金寸法と、針金の前進速度を選択することにより、電子ビーム2が、針金の、針金が電子ビームの経路と交差する正にその地点に小孔3を穿孔する。この場合、ビームのより大きな部分が鍵穴を直線的に通過するため、ここで記述している技術は、電子ビームおよびレーザ溶接の鍵穴溶接特徴と同一である。孔3周囲の融成物が電子ビーム2の後ろで下方へ移動し、針金が前進している最中に、孔3の底部を密封(図4)し、これと同時に、孔3の上方部分において第2の穿孔が実施される。換言すれば、孔3が針金と共に変位される。鍵穴3のサイズは、ビーム直径によって事前定義され、さらに、ビームよりも若干、一般に0.3?1.0mm(集束によって異なる)小さく、該集束は、溶接深度、電子ビームの調整および構造によって異なる。
【0022】
別の実施形態は、連続的に前進する非中空針金を使用するものである。中空針金と同様に、非中空針金も真空室4内の電子ビーム2の前の、針金曲線の経路へと誘導されることで、針金を、真空室外へ、電子ビーム2に対して近軸的に誘導することが可能になる。適切な針金直径と、針金の前進速度を選択することで、電子ビーム2が、針金が電子ビーム経路と交差する正にその地点に小径3を穿孔する。この場合でも、孔3を包囲する融成物が、電子ビーム2の後ろで下方へ移動し、針金が前進している最中に、やはり孔3を部分的に密封する。この実施形態では、針金全長にかけて、さらに工作物へと孔を穿孔する必要があるため、針金の穿孔には電子ビームのエネルギーの大部分が使用される。
【0023】
図5は、真空室4内の収納庫に収納された、連続的に前進する管部品13の手段によって電子ビームを処理するための装置を示しており、この収納庫から、管部品13が、数個のクランプローラ14の形態をした排出システムへと誘導され、該クランプローラ14の間を前進し、該誘導は握持システム(図示せず)によって実施される。管部品13の一端、つまり下方端部には底部13aが設けられ、さらに、凹部13bが一端、または両端に設けられている。各々の管部品13の底部13aは、溶接中にガスが真空室4に到達することを確実に遮断するために使用される。換言すれば、全溶接処理中に、真空室4とその周囲部分が、相互から実質的に緊密に密封される。しかし、当然ながら、真空室4内の収納庫を新しい管部品13で補充するために、溶接処理を通常の間隔で停止する必要があることが明白である。
【0024】
選択した針金のタイプに従って、異なる針金前進手段を使用することができる。前進は、例えば、図5に示すような、針金または針金片の両側にローラを2個ずつ配置したクランプローラ14の手段によって、あるいは、連続的に前進する管片の場合には、最上の管片の後端部が推進されている推進機構(図示せず)の手段によって実施することができる。当然ながら、これら全ての場合において、前進速度を効果的な条件に適合させる必要があることは明白であるが、この速度は一般に1mm/秒の範囲内である。しかし、特定の処理タイプでは、前進速度を大幅に高速化することができる。
【0025】
電子ビームの集束のために、電子ビーム2が針金内に入る距離を最少に維持しなければならない。これと同時に、前進手段が必要な前進力を針金に伝達できるようにするために、或る特定の長さの針金が必要となる。」
c「【図5d】



イ 甲4に記載された発明
上記アのcの図5dから、「真空室4は所定幅を有すること」、「電子ビームが伝送されている実施状態では、管部材13は中空となっていること、」「管部品13は真空室4から長手軸心に反って延出していること、」、「電子ビーム2が、細長い状態で管部品13に入って管部品13を通り、管部品13の遠位端から放出されること」、「管部品13の幅は、真空室13の幅より小さいこと」が見て取れる。
ここで、【0006】等に記載の「針金」は、図5に示された実施例においては「管部材13」と記載されているものである。また、管部材13が、真空室4の直径よりも小さいことから、管部材13の幅より大きく真空室4の幅より小さな幅のボトル開口部が想定されうるから、真空室4の直径よりは小さいが管部材13の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能であることは当然のことである。
よって、上記アのa?cの記載事項から甲4には、
「大気圧での電子ビーム溶接の装置であって、
真空室内に収納された管部品13が、真空室4から工作物へと供給され、真空室4内で生成されたビームが、工作物に供給された管部品13を介して工作物へと下方に向けて伝送することができ、
管部品13の供給は、供給真空室4内の収納庫から、管部品13が、数個のクランプローラ14の形態をした排出システムへと誘導され、該クランプローラ14の間を前進することによって実施され、管部品13の供給がされ、電子ビームが伝送されている実施状態では、管部材13は中空となっており、
真空室4は所定幅を有し、
電子ビームが伝送されている実施状態では、管部材13は中空となっており、
管部品13は真空室4から長手軸心に沿って延出しており、
電子ビーム2が、細長い状態で管部品13に入って管部品13を通り、管部品13の遠位端から放出され、
管部品13の幅は、真空室13の幅より小さく、真空室4の直径よりは小さいが管部材13の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能である電子ビーム溶接の装置。」
の発明(以下「引用甲4発明」という。)が記載されている。

(5)甲第5号証について
ア 甲第5号証の記載事項
甲第5号証の特表2005-519292号公報(以下「甲5」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
a「【0021】
(好適な実施形態の詳細な説明)
広義には、本発明は、電子ビーム放射線とX線ビーム放射線とを生成するための、バッテリなどの低電圧電源で動作可能な、携帯用放射線生成装置を具体化する。ここで使用する「携帯用」という用語は、装置が小型であり、現場から現場に手で持ち運べることを意味する。このような装置は、微生物汚染の非活性化に利用すると好都合であり、例として、炭疽菌胞子などの危険な胞子を宿している郵便物の汚染除去などが挙げられるが、これに限定されるものではない。本発明の装置は、熱硬化性ポリマーの重合や熱可塑性ポリマーの橋かけなどの化学反応を開始するために使用してもよい。
【0022】
放射線生成装置10は、図1および図2から最もよくわかるように、放射線発生装置20と、パルス高電圧発生器40と、制御系60とで基本的に構成される。
【0023】
(放射線発生装置)
放射線発生装置20は、電子ビームを生成するように構成されている電子ビーム発生装置22で基本的に構成される。当業者にはわかるように、電子ビーム発生装置22は、さまざまな方法で構成してよい。図示の実施形態においては、電子ビーム発生装置22は、陰極24と陽極26とを備え、陽極26と陰極24とは、その間に所定距離のギャップを画定するように、互に離して配置されている。陽極26は、接地されている。陰極24と陽極26とは、陰極24と陽極26とを取り囲む室30の内部に配置されている。陰極24と陽極26とを囲む室30は、約10-5Torr(1.33×10-3Pa)の真空下にある。本願明細書をさらに読むとわかるように、電子ビーム発生装置22は、X線も発生させる。この理由により、電子ビーム発生装置は、放射線発生装置20としても設計されている。
【0024】
放射線生成装置10は、潜在的に有害な漂遊放射線を減衰するように構成されている。このような減衰は、放射線生成装置10を金属製の筐体12内に封入することによって行ってもよい。筐体12は、ステンレス鋼またはチタンで構成してもよい。あるいは、電子ビームまたはX線の漂遊放射線を無害なレベルまで減衰するために、放射線生成装置10を十分な壁厚を持つ筐体12内に封入してもよい。
【0025】
図1および図2を参照して、好適な実施形態をより詳細に説明する。提供される放射線生成装置10は、電子ビームとX線ビームとを生成する。上記のように、電子ビーム発生装置22は、その中に陰極24と陽極26とが配置されている真空室30を含む。陽極26は、低原子番号の金属箔でよく、例として約150ミクロン厚のベリリウムが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0026】
本発明の一局面によると、電子ビーム発生装置22は、陽極26から陰極24に広がる電界を生成するように、動作可能である。この電界は、図2に示すように、パルス高電圧発生器40によって、陽極26と陰極24との間に生成される(パルス高電圧発生器40については、後文にさらに詳細に説明する)。この電界は、陽極26から陰極24に向かうので、この電界の存在下で、電子が陰極24から陽極26へと加速される。この電界が生じると、電子は陰極24から電界放出される。陽極26は、電界放出された電子が陽極26を高レベルで透過できるように、低原子番号の金属製の箔でよい。
【0027】
電子ビーム発生装置22は、陰極24と陽極26との間に高電界が生じるように設計されている。この高電界は、パルス高電圧によって陰極24と陽極26との間の小さなギャップにバイアスをかけると、生じる。このギャップの距離は、約4mmから約7mmの範囲内の値にでき、高電圧は、約200キロボルトから約700キロボルトの範囲内の値にできる。この電界の大きさは、V/Dに等しい。ここで、Vは、ギャップ両端にバイアスされる電圧であり、本発明においては、約100キロボルトから約300キロボルトの範囲内の値とすることができ、またDは、陰極24から陽極26までのギャップの長さである。この大きな電界は、陽極26と陰極24との間に位置するギャップに、高電圧による真空中の絶縁破壊を引き起こす。
【0028】
電子ビーム発生装置22は次のように動作すると考えられるが、これに拘束されるものではない。基本的に、このプロセスは、真空中の絶縁破壊を伴う。これは、2つのステップを伴うと考えられる。第1のステップでは、陽極26と陰極24との間で前面立ち上がり時間が1ナノ秒の高電圧パルスが発生してプラズマを形成し、これが陰極24を囲んで陰極24に接触する。陽極26から陰極24に広がる電界が約2×107V/mから約5×107V/mの範囲であると、このプラズマが形成される。第2のステップでは、陰極24を囲んで陰極24に接触しているプラズマから、高電流の電子ビームが陽極26で取り出される。
【0029】
この陰極プラズマを形成するプロセスは、陰極24の表面に位置する表面放出点での電子の電界放出から始まると考えられる。表面放出点は、一般に、高電界にさらされる表面の点である。陰極24内の表面放出点に近い電子の運動によって、陰極24の表面放出点がジュール加熱される。このジュール加熱によって、陰極24を構成する、表面放出点の近くの物質が熱によって気化する。熱によって気化した陰極24の物質は、イオン化され、陰極24の付近に高度にイオン化されたプラズマを形成する。電界に結合された、この高度にイオン化されたプラズマは、プラズマエミッタを形成する。陰極24と陽極26との間の電界によって、そこから電子が取り出され、「電子雲」が陽極26に向かって移動する。この運動によって、電子流が増加する。電子流の増加は、チャイルド・ラングミュアの法則つまり「二分の三乗」則に従う。この放出されたプラズマが消滅すると、このプロセスは別のプラズマエミッタの生成を続行する。
【0030】
このような真空放電が形成され存在する時間は短く、一般に約数ナノ秒である。前述の絶縁破壊の結果、室30内の真空中に生成される電子とイオンの密度は非常に高い。陰極/放出プラズマからの電子の抽出は非常に高速であるので、この電子流の増加は「爆発的」特性を有す。この結果、この種の電子放出は、「爆発的な電子放出」と呼ばれる。ここで説明する電子ビームの持続時間は、約100ナノ秒またはそれ以下であることが好ましい。このパルスの持続時間は、50ナノ秒またはそれ以下であることがより好ましい。このパルスの持続時間は、約20ナノ秒またはそれ以下であることがより好ましい。このパルスの持続時間は、約10ナノ秒またはそれ以下であることがより好ましい。このパルスの持続時間は、約5ナノ秒またはそれ以下であることがより好ましい。このパルスの持続時間は、約3ナノ秒が最も好ましい。
【0031】
放出される電子のエネルギースペクトルは、パルス高電圧の形態によって決まる。放出される電子の多くは、約100keVから約1,000keVの範囲内の運動エネルギーを持ちうるので、特に陽極26が箔でできている場合は、陽極26を通過するには十分な運動エネルギーである。放出される電子の運動エネルギーと陽極26の箔の性質によっては、放射線生成装置10から出る電子ビーム電流を約10?10,000アンペアにすることができる。
【0032】
上で言及したように、放射線生成装置10によってX線も生成される。X線は、次のように生成してもよいと考えられるが、これに拘束されるものではない。ある場合は、放射線生成装置10は、広いエネルギースペクトルを持つX線を生成する。これらのX線は、非線形効果によって陰極プラズマ内に生成されると考えられるが、これに拘束されるものではない。さらに、プラズマ内に生成されるこのX線は不安定なものとして現れると考えられる。別の場合は、X線は、K殻放出によって生成される。このプロセスでは、陽極26の原子内の低レベルの軌道周回電子が、陰極24からの電界放出電子の衝突によって、軌道からはじき出される。このプロセスでは、これらの原子のうちの1つのより高エネルギー軌道にある原子内電子が空のK殻に落ちてX線を生成する。当然、このプロセスは陽極26の多くの原子で起きるので、複数のX線が放出される。それぞれのK殻の穴に落ちる各電子がより高エネルギーの同じ原子殻から落ちてくる限りは、放出されるX線は単一エネルギーである。複数の異なる原子内の電子が、それぞれ異なるエネルギーレベルから、それぞれのK殻穴に落ちると、それぞれ規定のエネルギーを持つ、単一エネルギーのX線ビームが複数生成される。
【0033】
単一エネルギーのX線ビームを生成するために、陽極26を、低原子番号の箔上の銅箔膜または銅箔の形態にしてもよい。また、電子ビームによって照射したときに、広いエネルギースペクトルを持つX線が生成されるように、陽極26を高原子番号の箔ターゲットの形態にしてもよい。高原子番号を持つこのような金属箔の例として、タンタルとタングステンが挙げられる。ここで説明するように、放射線発生装置20ひいては放射線生成装置10は、放射線の組み合わせ、つまりX線と電子との組み合わせ、を提供する。」
b「【図1】



イ 甲5に記載された発明
上記アのbの図1から、「筺体12が所定幅を有すること」、「室30は筺体12から長手軸心に沿って延出していること」、「陽極26は、室30の遠位端に備えられること」、「室30の幅は筺体12の幅より小さいこと」が見て取れる。
また、室30の幅3が、筺体12の幅よりも小さいことから、室30の幅より大きく筺体12の幅より小さな幅のボトル開口部が想定されうるから、筺体12の直径よりは小さいが室30の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能であることは当然のことである。
よって、上記アのa,bの記載事項から甲5には、
「放射線発生装置20と、パルス高電圧発生器40と、制御系60とで基本的に構成される放射線生成装置10であって、
放射線発生装置20は、電子ビームを生成するように構成されている電子ビーム発生装置22で基本的に構成され、
電子ビーム発生装置22は、陰極24と陽極26とを備え、陽極26と陰極24とは、その間に所定距離のギャップを画定するように、互に離して配置され、陰極24と陽極26とは、陰極24と陽極26とを取り囲む室30の内部に配置され、
放射線生成装置10は十分な壁厚を持つ所定幅の筐体12内に封入されており、
パルス高電圧発生器40によって、陽極26と陰極24との間に電界が生成され、この電界の存在下で、電子は陰極24から電界放出され、陰極24から遠位端にある陽極26へと加速され、低原子番号の金属製の箔で構成された陽極26を高レベルで透過して、外界へと放出され、
筺体12が所定幅を有し、
室30は筺体12から長手軸心に沿って延出しており、
室30の幅は筺体12の幅より小さく、筺体12の直径よりは小さいが室30の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能である放射線生成装置10。」
の発明(以下「引用甲5発明」という。)が記載されている。

(6)甲第6号証について
ア 甲第6号証の記載事項
甲第6号証の特表2009-539718号公報(以下「甲6」という。)には、次の事項が記載されている。(下線は当審において付されたものである。)
a「【0025】
以下において、また、図2を参照して、電子ビーム発生器16、電子ビーム殺菌装置18、および電子ビーム殺菌装置の概念が簡単に説明される。電子ビーム発生器16は放射路に沿って電子ビーム20を放出する手段を含み、この手段はパッケージ10へ向けてビーム20を分散する殺菌装置18に連結される。
【0026】
通常、電子ビーム発生器16は、望まれる適用例の電子ビーム発生器16を駆動するために十分な電圧を与えることに適した高電圧電源22に接続される。電子ビーム発生器16はフィラメント電流供給源24にも接続されており、フィラメント電流供給源は高電圧電源22からの電圧を発生器16のフィラメント26に適当な入力電圧へと変換する。さらに、高電圧電源22は電子ビーム発生器16のグリッド30を制御するグリッド制御装置28を含んでいる。
【0027】
パッケージの殺菌に使用される電子ビーム発生器は一般に底電圧電子ビーム・ユニットを意味しており、このユニットは通常は300kV未満の電圧を有する。開示する設計では、加速電圧は70?90kV内である。この電圧は各電子に関して大体70?90keVの運動(移動)エネルギーを生じる。
【0028】
フィラメント26はタングステンで作ることができ、また、真空室32内に収容できる。典型例では、真空室は機密にできる。作動において、電流がフィラメント26を通して流され、そのフィラメントの電気抵抗がフィラメントを大体2000℃の温度にまで加熱する。この加熱はフィラメント26に電子e-の雲を放出させる。それらの電子は電子ビーム路に沿って目標面積部分、この例ではパッケージ10内部の1つの面積部分へ向けて放出される。フィラメントと電子ビーム出口窓との間に配置されたグリッド30は、多数の開口を備え、また、電子ビーム20を一層均一なビームとするように拡散させて、その電子ビーム20を目標面積部分に向けて集中させるために使用されている。
【0029】
図示実施例において、電子ビーム発生手段は電子ビーム殺菌装置18内に収容されている。殺菌装置18は真空室を含み、この真空室は、この例では電子ビーム発生器16の真空室32と同じである。殺菌装置18は電子出口窓34をさらに備えている。窓34は例えばチタンのような金属箔で作ることができ、大体4?12μmの厚さを有する。アルミニュウムまたは銅で形成された支持ネットが電子ビーム発生器16の内側から箔を支持している。電子は出口窓34を通して真空室32から放出される。」
b「【0055】
図6aに示される第1殺菌装置18は、円形横断面を有するパッケージの寸法に対応した寸法の円形筒体42を有する。筒体42は電子ビーム発生器44を取囲み、また、発生器のフィラメントおよびグリッドが同図に概略的に示されている。筒体の軸線方向の一端内部に電子ビーム出口窓46が備えられている。この実施例で、窓46は平たい円形をしており、寸法は筒体42の円形端部に実質的に等しい寸法である。フィラメントはリング形状とされるか、直線形状とされる。グリッドは、電子ビーム20を拡散させて一層均一なビームとするように、また、電子が実質的に窓の全面を通して、または選ばれた部分を通して放出されるように電子ビーム20を出口窓46へ向けて集中させるようになされている。この構造は、例えばパッケージの平たい底部の形状をした面積部分を照射するための使用に適している。その後殺菌装置18はパッケージの開口頂部からパッケージ内へ降下されるか、パッケージが殺菌装置の周囲へ上昇される。これに替えて、殺菌装置18は円筒対称形またはドーム状のパッケージ頂部の形状をした面積部分の照射に使用できる。その後殺菌装置18はパッケージの開口底端からパッケージ内へ降下されるか、パッケージが殺菌装置18の周囲へ上昇される。これに替えて、パッケージの底部および筒体内面の両方で面積部分が形成される。このようにして相対的な動きは、殺菌装置の緩やかな降下と、パッケージ底部付近での短時間の停止との両方を含む。
【0056】
図6bに示される第2殺菌装置18は実質的に第1殺菌装置に似ているが、筒体42が細い円形ノズル50を備えている。電子ビーム出口窓46は軸線方向の一方の端部内に配置され、平たい円形をしている。殺菌装置18は細い開口端部を有するボトルのようなパッケージの照射に使用でき、パッケージの開口端部を通して殺菌装置を降下および上昇させることが必要となる。これに似た形状は、例えば開口装置や蓋装置および他の不規則形状をした小さな面積部分のような特定の面積部分における電子ビーム20の増強にも使用できる。このノズル形状は円形以外の形状にすることができ、例えば正方形、長方形、三角形、楕円形、または他のあらゆる異なる形状にできることを理解しなければならない。」
c「【図2】


d「【図6a】


e「【図6b】




イ 甲6に記載された発明
上記アのd,eの第6a,b図から、「筒体18が所定幅を有すること」、「ノズル50は筒体18から長手軸心に沿って延出していること」、「電子ビーム出口窓46は、ノズル50の遠位端に備えられること」、「ノズル50の幅は筒体18の幅より小さいこと」が見て取れる。
また、ノズル50の幅が、筒体18の幅よりも小さいことから、ノズル50の幅より大きく筒体18の幅より小さな幅のボトル開口部が想定されうるから、筒体18の直径よりは小さいがノズル50の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能であることは当然のことである。
よって、上記アのa?eの記載事項から甲6には、
「電子ビーム発生器44を収容している電子ビーム殺菌装置18であって、
電子ビーム殺菌装置18は真空室を含み、電子ビーム発生器44を取囲んで円形横断面を有するパッケージの寸法に対応した寸法の円形筒体42を有し、
筒体42が細い円形ノズル50を備え、軸線方向の一方の端部内に電子ビーム出口窓46が配置され、平たい円形をしており、円形ノズル50によって殺菌装置18は細い開口端部を有するボトルのようなパッケージの照射に使用でき、
筒体18が所定幅を有し、
ノズル50は筒体18から長手軸心に沿って延出し、
電子ビーム出口窓46は、ノズル50の遠位端に備えられ、
ノズル50の幅は筒体18の幅より小さく、筒体18の直径よりは小さいがノズル50の直径よりも大きな開口部をネック部に有するボトルの当該開口部から挿入可能である電子ビーム殺菌装置18。」
の発明(以下「引用甲6発明」という。)が記載されている。

(7)甲第7号証について
甲第7号証は、甲第6号証の特許公開公報に関する特許出願の優先権主張の基礎となる出願の写しであり、上記の甲第6号証の特許公報に関する特許出願の優先権主張が認められないことを示すために提出された証拠である。

4 判断
(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について
ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について
(ア)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と引用甲3発明とを対比する。
(a)引用甲3発明の「所定の幅を有している加速管大径上部」および「加速管大径上部から長手軸心に沿って延出して設けられた加速管小径下部」が、それぞれ、本件訂正発明1の「所定の幅を有する真空チェンバ」および「前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズル」に相当する。
(b)引用甲3発明の「高速電子ビーム2の電子」が「放出される」「下端の窓3」が、本件訂正発明1の「前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓」に相当する。
(c)引用甲3発明の「電子」が「加速管1の真空領域を通り、直線または真っ直ぐな経路で進行し、下端の窓3から放出される前に、調整磁石3aによって調整または収束され」る「高速電子ビーム2」を放出する「加速管1のカソード」が、本件訂正発明1の「前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器」に相当する。
(d)引用甲3発明の「ヴァンデグラフ静電起電機」が、本件訂正発明1の「電子ビーム照射器」に相当する。
(e)引用甲3発明の「加速管小径下部は加速管大径上部よりも小さな直径を有し、加速管小径下部が、加速管大径上部の直径よりも小さいから、加速管大径上部の直径よりは小さいが加速管小径下部の直径よりも大きな開口部をネック部に有する」ことと、本件訂正発明1の「前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出るように構成されたものである」こととは、「前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるように構成されたものである」点で一致する。
b 一致点・相違点
よって、本件訂正発明1と引用甲3発明とは、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるように構成されたものである電子ビーム照射器。」
において一致し、次の各点で相違する。
c 相違点
(a)相違点1
本件訂正発明1が「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲3発明においてはその特定がない点。
(b)相違点2
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明1においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲3発明においては、その点の特定がない点。
d 判断
上記相違点1について検討する。
「電子発生器のハウジング内または当該ハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズ」を備えることは、異議申立人が提出した甲第1?7号証のいずれの文献にも記載されておらず、また、それば周知の技術的事項であるということもできない。
したがって、引用甲3発明において、「電子発生器のハウジング内または当該ハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズ」を備えるとすることに動機付けはなく、そして上記相違点1の構成によって本件訂正発明1は、ノズルを通過できる細長い電子ビームを形成することができるという顕著な効果を奏するのであるから、上記相違点1は、引用甲3発明に基づいて当業者が容易に想到し得たことであるということはできない。
以上のとおりであるから、上記相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用甲3発明であるということはできず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するということはできない。
また、上記相違点2について検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

(イ) 本件訂正発明5について
本件訂正発明5と引用甲3発明とを対比すると、本件訂正発明1と引用甲3発明との対比と同様の手法及び結果により、両者は
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入される電子ビーム発生方法。」
において一致し、次の各点で相違する。
a 相違点3
本件訂正発明5が「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射する」のに対して、引用甲3発明においてはその特定がない点。
b 相違点4
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明5においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲3発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点3は、上記「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、本件訂正発明1と同様に、上記相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明5は引用甲3発明であるということはできず、特許法第29条第1項第3号に規定する発明に該当するということはできない。
また、本件訂正発明1と同様に、上記相違点4について検討するまでもなく、本件訂正発明5は引用甲3発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

イ 引用甲1発明を主引例とした取消理由について
(ア)本件訂正発明1について
a 対比
本件訂正発明1と引用甲1発明とを対比すると、
(a)引用甲1発明の「所定の幅の真空チャンバ46」が、本件訂正発明1の「所定の幅を有する真空チェンバ」に相当する。
(b)引用甲1発明の「放射窓24はノズルの先端部に配置でき」るように「真空チャンバ46を備える」「加速器100に固定」された「延長ノズル144」が、本件訂正発明1の「前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズル」に相当する。
(c)引用甲1発明の「ノズルの先端部に配置放射窓24」が、本件訂正発明1の「前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓」に相当する。
(d)引用甲1発明の「フィラメント32に自由電子を発生させ、高電圧電源から印加されるフィラメント・ハウジング30と放射窓24間の高電圧により、フィラメント32上の自由電子をフィラメント32から電子ビームの形にして加速し、ハウジング30の開口34および放射窓24を通過して外部へ放射」する「電子発生器31」が、本件訂正発明1の「前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器」に相当する。
(e)引用甲1発明の「フィラメント32を取り囲んでフィラメント・ハウジング30が設けられ」ることが、本件訂正発明1の「前記電子発生器はハウジング」「を有」することに相当する。
(f)引用甲1発明の「ノズル144はカップおよびボトルなどの狭い開口内に挿入して、内部を滅菌するのに使用できる」ことが、本件訂正発明1の「前記ノズル」が「開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものである」ことに相当する。
b 一致点
よって、本件訂正発明1と引用甲1発明とは、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングを有し、
前記ノズルが、開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものである電子ビーム照射器。」
において一致し、次の点で相違する。
c 相違点
(a)相違点5
本件訂正発明1においては、ノズルが、「真空チェンバの幅よりも小さい幅」を有し、「ノズルを挿入する」ボトルのネック部の開口が「真空チェンバが挿入されるには小さすぎる」、すなわち、幅の大きさが、真空チャンバ>ボトルのネック部の開口>ノズルであるのに対して、引用甲1発明においてはその点についての特定がない点。
(b)相違点6
本件訂正発明1が「ハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射する」のに対して、引用甲1発明においてはその特定がない点。
(c)相違点7
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明1においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲1発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点6は、上記「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点5,7について検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

(イ)本件訂正発明5について
本件訂正発明5と引用甲1発明とを対比すると、本件訂正発明1と引用甲1発明との対比と同様の手法及び結果により、両者は
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記電子発生器はハウジングを有し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入される電子ビーム発生方法。」
において一致し、次の各点で相違する。
a 相違点8
本件訂正発明5においては、ノズルが、「真空チェンバの幅よりも小さい幅」を有し、「ノズルを挿入する」ボトルのネック部の開口が「真空チェンバが挿入されるには小さすぎる」、すなわち、幅の大きさが、真空チャンバ>ボトルのネック部の開口>ノズルであるのに対して、引用甲1発明においてはその点についての特定がない点。
b 相違点9
本件訂正発明5が「ハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射する」のに対して、引用甲1発明においてはその特定がない点。
c 相違点10
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明5においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲1発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点9は、上記「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点5,7について検討するまでもなく、本件訂正発明5は引用甲1発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

ウ 小活
以上のとおり、取消理由通知の理由及び証拠によっては、請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。

(2)取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
ア 引用甲2発明を主引例とした取消理由について
(ア)本件訂正発明1についての対比・判断
本件訂正発明1と引用甲2発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングを有し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるものである電子ビーム照射器。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点a
本件訂正発明1が「ハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲2発明においてはその特定がない点。
・相違点b
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明1においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲2発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点aは、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点bについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。
(イ)本件訂正発明5についての対比・判断
本件訂正発明5と引用甲2発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記電子発生器はハウジングを有し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入される電子ビーム発生方法。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点c
本件訂正発明5が「ハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲2発明においてはその特定がない点。
・相違点d
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明5においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲2発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点cは、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点dについて検討するまでもなく、本件訂正発明5は引用甲2発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

イ 引用甲4発明を主引例とした取消理由について
(ア)本件訂正発明1についての対比・判断
本件訂正発明1と引用甲4発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるものである電子ビーム照射器。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点e
本件訂正発明1が「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲4発明においてはその特定がない点。
・相違点f
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明1においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲4発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点eは、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点fについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。
(イ)本件訂正発明5についての対比・判断
本件訂正発明5と引用甲4発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入される電子ビーム発生方法。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点g
本件訂正発明5が「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲4発明においてはその特定がない点。
・相違点h
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明5においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲4発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点gは、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点hについて検討するまでもなく、本件訂正発明5は引用甲4発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

ウ 引用甲5発明を主引例とした取消理由について
(ア)本件訂正発明1についての対比・判断
本件訂正発明1と引用甲5発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるものである電子ビーム照射器。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点j
本件訂正発明1が「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲5発明においてはその特定がない点。
・相違点k
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明1においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲5発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点jは、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点kについて検討するまでもなく、本件訂正発明1は引用甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。
(イ)本件訂正発明5についての対比・判断
本件訂正発明5と引用甲5発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入される電子ビーム発生方法。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点m
本件訂正発明5が「前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲5発明においてはその特定がない点。
・相違点n
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明5においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲5発明においては、その点の特定がない点。
そして、上記相違点mは、上記「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「c」における相違点1と実質的に同じ相違点であり、当該相違点1については、「(1)取消理由通知に記載した取消理由(特許法第29条第1項3号違反及び第29条第2項違反)について」の「ア 引用甲3発明を主引例とした取消理由について」の「(ア) 本件訂正発明1について」の「d」で検討したとおりである。
したがって、上記相違点nについて検討するまでもなく、本件訂正発明5は引用甲5発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるということはできず、特許法第29条第2項の規定に違反したものであるということもできない。

エ 引用甲6発明を主引例とした取消理由について
(ア)本件訂正発明1についての対比・判断
本件訂正発明1と引用甲6発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングを有し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるものである電子ビーム照射器。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点p
本件訂正発明1が「ハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲6発明においてはその特定がない点。
・相違点q
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明1においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲6発明においては、その点の特定がない点。
したがって、上記相違点p、qが認められることから、本件訂正発明1は実質的に引用甲6発明と同一であるということはできず、特許法第29条の2の規定に違反したものであるということもできない。
(イ)本件訂正発明5についての対比・判断
本件訂正発明5と引用甲6発明とを対比すると、両者は、
「所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記電子発生器はハウジングを有し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入される電子ビーム発生方法。」
である点で一致し、次の各点で相違する。
・相違点r
本件訂正発明5が「ハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するもの」であるのに対して、引用甲6発明においてはその特定がない点。
・相違点s
電子ビームが出射窓を出るのが、本件訂正発明5においては「(ノズルが、ボトルの開口部に)挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後」であるのに対して、引用甲6発明においては、その点の特定がない点。
したがって、上記相違点r、sが認められることから、本件訂正発明5は実質的に引用甲6発明と同一であるということはできず、特許法第29条の2の規定に違反したものであるということもできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、本件請求項1及び5に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1及び5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出るように構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。
【請求項2】
所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内に位置決めされて、このハウジング内に前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。
【請求項3】
所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記電子ビームが、前記ノズル内で収束する収束部と、この後に続く、前記出射窓に到達する前に前記ノズル内で発散する発散部とを有し、前記出射窓を出た後にさらに発散するものであり、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであることを特徴とする電子ビーム照射器。
【請求項4】
所定の幅を有する真空チェンバと、
前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出したノズルと、
前記ノズルの遠位端に備えられた出射窓と、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細長い電子ビームを形成して案内するように、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めされた電子発生器とを備える電子ビーム照射器であって、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入可能に構成されたものであり、
前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部で且つノズルが挿入可能な開口部をネック部に有するボトルを、前記ノズルに対して移動させ得る支持体が設けられたことを特徴とする電子ビーム照射器。
【請求項5】
所定の幅を有する真空チェンバ内に位置決めされた電子発生器を用いて電子を発生させ、当該ノズルの遠位端に出射窓を備え、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有する細長いノズルを、前記真空チェンバから長手軸心に沿って延出させ、
前記ノズルに入って前記ノズルを通り、そして前記出射窓から出る細い電子ビームを形成して案内するように、前記電子発生器を、前記真空チェンバ内に形成、寸法合わせ、および位置決めし、
前記電子発生器はハウジングと、このハウジング内またはハウジングの軸方向の端部に位置決めされて、前記電子ビームを収束させる静電レンズとを有し、電子ビームが前記静電レンズによって細くされて前記電子発生器のハウジングを出射し、
前記ノズルが、前記真空チェンバの幅よりも小さい幅を有し、前記真空チェンバが挿入されるには小さすぎる開口部をネック部に有するボトルの当該開口部に挿入されるとき、および/もしくは引き抜かれるとき、または挿入された後に、電子ビームが出射窓を出ることを特徴とする電子ビーム発生方法。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2017-01-20 
出願番号 特願2014-67320(P2014-67320)
審決分類 P 1 652・ 113- YAA (G21K)
P 1 652・ 16- YAA (G21K)
P 1 652・ 121- YAA (G21K)
最終処分 維持  
前審関与審査官 藤本 加代子  
特許庁審判長 伊藤 昌哉
特許庁審判官 松川 直樹
森林 克郎
登録日 2015-07-10 
登録番号 特許第5774156号(P5774156)
権利者 日立造船株式会社
発明の名称 電子ビーム照射器および電子ビーム発生方法  
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所  
代理人 特許業務法人森本国際特許事務所  

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