• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
管理番号 1325877
異議申立番号 異議2016-701134  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-12-12 
確定日 2017-03-03 
異議申立件数
事件の表示 特許第5934473号発明「スロットマシン」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5934473号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1 手続の経緯
本件特許第5934473号(以下「本件特許」という。)の請求項1に係る特許についての出願は、平成23年4月28日に特許出願され、平成28年5月13日にその特許権の設定登録がされ、その後、平成28年12月12日付けで特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社より特許異議の申立てがされたものである。

2 本件発明
本件特許の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである(当審において請求項1をA?Hに分説した。)。
「【請求項1】
A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C ゲームの開始に伴い前記可変表示部の変動表示を開始させる変動開始手段と、
D 前記可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件に、前記可変表示部に表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段と、
E 遊技者を検知する遊技者検知手段と、
F 前記可変表示部の変動表示が開始した後、前記導出制御手段により前記可変表示部に表示結果が導出されるまでに、前記遊技者検知手段により遊技者が検知されなくなった場合に、該可変表示部の変動表示を一旦停止させることにより変動表示中よりも消費電力を少なくする変動停止手段と、
G 前記変動停止手段により前記可変表示部の変動表示が停止している状態で、所定の再開条件が成立した場合に、前記可変表示部の変動表示を再開させる変動再開手段と、
を備え、
H 前記変動停止手段は、前記変動表示を一旦停止させる場合に、前記可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件に、遊技者が入賞の発生と誤認しない所定停止態様で変動表示を停止させる
ことを特徴とするスロットマシン。」

3 特許異議申立理由の概要
特許異議申立人日本電動式遊技機特許株式会社は、証拠方法として甲第1?5号証を提出し、本件発明は、甲第1号証に記載の発明及び甲第2?5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであると主張している。

<証拠方法>
甲第1号証:特開2008-142419号公報
甲第2号証:特開2009-219727号公報
甲第3号証:特開2001-58026号公報
甲第4号証:特開2009-261846号公報
甲第5号証:平成19年3月14日公開、特許庁、標準技術集、Web公開のトップページ「標準技術集作成テーマ一覧」及び「遊技機及びその関連技術 第2部 パチスロ 1 遊技内容(機能関連) 1-2 遊技ルール 1-2-1 遊技内容/遊技ルール/基本ルール 1-2-1-4 リールに関するルール」の第11頁、写し

4 甲各号証の記載
(1)甲第1号証
特許異議申立人により特許異議申立書において提出された甲第1号証(特開2008-142419号公報)には、以下の事項が記載されている。

(1-a)「【技術分野】
【0001】
この発明は、スロットマシンに関し、回転リールの回転中に、遊技者がトイレ等により離席した際に、回転中の回転リールを一時停止させ、遊技者が遊技を再開後、一時停止中の回転リールを再始動させることができるようにしたものである。
・・・
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上記した従来のスロットマシンは、回転リールの回転中に、遊技者がトイレ等により離席すると、回転リールが自動停止してしまい、遊技を再開できないという問題点があった。
さらに、最近では回転リールの自動停止機能が付加されていないスロットマシンが存在し、回転リールの回転中に離席してしまうと、モータに負荷がかかるとともに、周りの遊技者に迷惑をかけるという問題点もあった。」

(1-b)「【0020】
(3)スタートスイッチ(70)
スタートスイッチ(70)は、所定数の賭数設定を条件に、複数個(例えば3個)のリールモータ(34?36)を駆動することで、複数個(例えば3個)の回転リール(31?33)の回転を開始させるためのものである。
なお、所定数の賭数設定を条件としては、例えばメダル投入口(50)からの遊技媒体(例えばメダル)の投入、クレジットを利用してのベットスイッチ(60?62)の操作による賭数の設定、さらにカードの度数等が考えられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
(4)ストップスイッチ(80?82)
ストップスイッチ(80?82)は、複数個、例えば3個有り、各回転リール(31?33)に対応するとともに、当該各回転リール(31?33)のリールモータ(34?36)の駆動を停止させることで、当該回転リール(31?33)の図柄(a?c)を表示窓(20)に停止表示可能なものである。」

(1-c)「【0023】
第2に、遊技制御装置(200)には、例えば図1に示すように、次の構成を備える。
(6)役抽選手段(310)
役抽選手段(310)は、スタートスイッチ(70)の操作にもとづいて、役の当否を抽選により決定するためのものである。
(7)リール停止制御手段(320)
リール停止制御手段(320)は、役抽選手段(310)の抽選結果、及び各ストップスイッチ(80?82)の操作にもとづいて、当該各ストップスイッチ(80?82)に対応するリールモータ(34?36)の駆動を制御することで、当該リールモータ(34?36)に対応する各回転リール(31?33)の停止制御を行うためのものである。
【0024】
第3に、遊技制御装置(200)には、例えば図1に示すように、次の構成を備える。
(8)離席検出手段(例えば遊技一時中断スイッチ110)
離席検出手段(例えば遊技一時中断スイッチ110)は、スロットマシン(10)において遊技を行っていた遊技者が、当該スロットマシン(10)から離れた離席状態を検出するためのものである。
【0025】
なお、離席検出手段として、遊技一時中断スイッチ(110)を例示したが、これに限定されない。
(9)遊技再開検出手段(例えば遊技一時中断スイッチ110)
遊技再開検出手段(例えば遊技一時中断スイッチ110)は、スロットマシン(10)を離席した遊技者が、当該スロットマシン(10)において遊技を再開した遊技再開状態を検出するためのものである。
【0026】
なお、遊技再開検出手段として、遊技一時中断スイッチ(110)を例示したが、これに限定されない。
(10)遊技一時中断手段(360)
遊技一時中断手段(360)は、回転リール(31?33)の回転中に、離席検出手段(例えば遊技一時中断スイッチ110)により離席状態が検出されたことを条件に、当該回転中の回転リール(31?33)に対応するリールモータ(34?36)の駆動を停止させ、例えば図6に示すように、当該回転リール(31?33)を一時停止させることで遊技を一時中断させるためのものである。
【0027】
(11)遊技再開手段(370)
遊技再開手段(370)は、遊技一時中断手段(360)による遊技の一時中断中に、遊技再開検出手段(例えば遊技一時中断スイッチ110)により遊技再開状態が検出されたことを条件に、一時停止させていた回転リール(31?33)に対応するリールモータ(34?36)の駆動を開始させ、当該回転リール(31?33)の回転を再開させることで一時中断中の遊技を再開させるためのものである。
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1に記載の発明の特徴点に加え、次の点を特徴とする。」

(1-d)「【0074】
スロットマシン10の高さの中央には、透明な方形の表示窓20を設けている。
表示窓20の内部には、リールユニット30を配置している。
リールユニット30は、表示窓20に臨む複数個、例えば3個の回転リール31?33と、各回転リール31?33を個々に回転可能な、複数個、例えば3個の回転リール31?33と同数の3個のリールモータ34?36(図1参照)とを備える。
【0075】
なお、回転リール31?33及びリールモータ34?36の個数は、3個に限定されず、2個、或いは4個以上でも良い。
各回転リール31?33には、図6に示すように、外周に複数種類の図柄a?cが表示されている。また、表示窓20には、複数段、例えば上・中・下段の計3個の図柄a?cが停止表示されるようにしているが、これに限定されず、1個の図柄a?cが停止表示されるようにして良い。
・・・
【0078】
なお、ベットスイッチ60?62の個数は、3個に限定されず、単数としても良いし、2個、或いは4個以上としても良い。
3個のベットスイッチ60?62の下側には、スタートスイッチ70を設けている。
スタートスイッチ70は、所定数の賭数設定を条件に、3個のリールモータ34?36を駆動することで、3個の回転リール31?33の回転を開始させるためのものである。」

(1-e)「【0091】
ホッパーユニット120は、表示窓20に停止表示された回転リール31?33の図柄a?cが、予め設定された図柄a?cの組み合わせに一致する場合に、遊技者に所定枚数のメダルを払い出すためのものである。
(3)演出用制御手段400
(演出用制御手段400)
演出用制御手段400は、遊技用制御手段300に接続され、遊技用制御手段300から一方向に送信される信号、例えばコマンドやデータ等にもとづいて、各種の演出を制御するためのものである。
・・・
【0097】
なお、次の(3)?(5)の役の説明については、後述する。
また、役は、役のうち1個だけ当選する場合のほか、複数の役が同時に2以上、当選する場合もあり、役抽選手段310はいわゆるグループ抽選が可能となっている。
(3)小役
(4)再遊技(リプレイ)
(5)特別遊技(ボーナス)
なお、役の種類は、上記した(3)?(5)に限定されない。
(小役)
小役は、図示しないが、例えば「ベル」や「スイカ」などの予め設定された小役図柄が、図5?6の用いて後述するが、メダルを投入することで有効となったライン21?25(以下、「有効ライン」という。)上に1個や2個出現したり、或いは3個揃うことで入賞となり、所定枚数のメダルを払い出すための役である。
(再遊技)
再遊技は、いわゆるリプレイとも呼ばれ、図6に示すように、予め設定された再遊技図柄a?c(リプレイ図柄)が有効ライン上に3個揃うことを条件に、メダルを投入すること無しに次回の遊技を行えるという役である。
(ボーナス)
ボーナスは、特別遊技の一例である。」

(1-f)「【0134】
具体的には、遊技一時中断手段360により、回転リール31?33の回転中に、遊技一時中断スイッチ110(離席検出手段)により離席状態が検出されたことを条件に、当該回転中の回転リール31?33に対応するリールモータ(34?36)の駆動を停止させ、図8に示すように、当該回転リール31?33に表示された図柄a?cを、表示窓20に表示された上下に隣接する2本のライン21?25の中間に一時停止させることで遊技を一時中断させるようにしている。」

以上の記載によれば、甲第1号証には以下の発明(以下「甲1発明」という。)が記載されていると認められる(当審において甲1発明をa?h’に分説した。)。

「a 外周に複数種類の図柄が表示されている回転リール31?33が停止表示される表示窓20を備え(【0074】【0075】)、
b スタートスイッチ70によって3個の回転リール31?33の回転を開始した後、回転リール31?33のリ-ルモータ34?36の駆動を停止させることで、回転リール31?33の図柄を表示窓20に停止表示し、予め設定された図柄の組み合わせが有効ライン上に揃うことで入賞となるスロットマシン10において(【0020】【0021】【0091】【0097】)、
c 所定数の賭数設定を条件に、3個のリールモータ34?36を駆動することで、3個の回転リール31?33の回転を開始させるためスタートスイッチ70(【0078】)と、
d’ 役抽選手段310の抽選結果、及び各ストップスイッチ80?82の操作にもとづいて、ストップスイッチ80?82に対応するリールモータ34?36の停止制御を行うリール停止制御手段320(【0023】)と、
e’ スロットマシン10において遊技を行っていた遊技者が、当該スロットマシン10から離れた離席状態を検出する離席検出手段(【0024】)と、
f’ 回転リ-ル31?33の回転中に、離席検出手段により離席状態が検出されたことを条件に、当該回転中の回転リール31?33に対応するリールモータ34?36の駆動を停止させ、回転リール31?33に表示された図柄を一時停止させることで遊技を一時中断させるための遊技一時中断手段360(【0026】)と、
g 遊技一時中断手段360による遊技の一時中断中に、遊技再開検出手段により遊技再開状態が検出されたことを条件に、一時停止していた回転リール31?33に対応するリールモータ34?36の駆動を開始させ、当該回転リール31?33の回転を再開させることで一時中断中の遊技を再開させるための遊技再開手段370(【0027】)と、
を備え、
h’ 遊技一時中断手段360は、離席検出手段により離席状態が検出されたことを条件に、回転リール31?33に表示された図柄を、表示窓20に表示された上下に隣接する2本のライン21?25の中間に一時停止させる(【0134】)
スロットマシン。」

(2)甲第2号証
特許異議申立人により特許異議申立書において提出された甲第2号証(特開2009-219727号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0014】
また、下扉13bには、遊技者検知センサ(検知手段)24が設けられている。遊技者検知センサ24は、発光部及び受光部を備えた赤外線センサである。発光部及び受光部は、下扉13bの前面に配置され、スロットマシン本体12の正面に遊技者がいる場合、発光部から発光された赤外光が遊技者により反射されて受光部に入射するように構成されている。そして、遊技者検知センサ24は、発光部からの赤外光を受光部が受光できる場合、すなわち、スロットマシン本体12の正面に遊技者がいる場合、この旨を示す遊技者検知信号を出力する。
・・・
【0022】
また、制御部34は、リールの回転中、遊技者検知センサ24から遊技者検知信号が出力されているか否かを監視しており、遊技者検知信号が出力されなくなると、すなわち、スロットマシン本体12の正面に遊技者がいない状態(非検知状態)なると、タイマ40を作動させ、非検知状態が継続した時間(非検知時間)の測定を開始する。そして、制御部34は、非検知時間がメモリ33に記憶された第1時間(例えば、5秒)以上となった場合、ストップボタン21a?21cの操作を待たずに、回転中のリールを自動停止制御にて停止させる。他方、制御部34は、遊技者検知信号が出力されると、すなわち、スロットマシン本体12の正面に遊技者がいる状態(検知状態)となると、タイマ40を停止させるとともにタイマ40の値をリセットし、非検知時間の測定を終了する。」

(3)甲第3号証
特許異議申立人により特許異議申立書において提出された甲第3号証(特開2001-58026号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0081】また、図12の制御においては、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された後各操作無効タイマが終了した順にストップ操作を有効化するようにしたが、これに限定されるものではなく、各リール駆動モータ7L?7Rが回転を開始した後、その回転速度が一定速度に達した後で、各リール6L?6Rのリール基準位置6La?6Raが検出された場合にストップ操作を有効化するようにしてもよい。この記載によって、前記所定の条件とは、前記可動表示部材の動きが一定速に達した後に前記基準位置検出手段により前記基準位置を検出することであることが開示されている。」

(4)甲第4号証
特許異議申立人により特許異議申立書において提出された甲第4号証(特開2009-261846号公報)には、以下の事項が記載されている。

「【0062】
なお、前記回転リール40は、回転を開始してから、回転リール40が回転する際の速度の変化量を予め定めた所定の速度変化パターンに基づいて、加速や減速をしながら回転を行う。そして、総ての回転リール40の回転速度がいずれも予め定められた所定速度に達していることを条件に(すなわち、総ての回転リール40の回転速度が一定速度に達した状態である定常回転状態になると、)ストップスイッチ19が、ストップスイッチ有効化手段110により操作可能(すなわち、ストップ信号を出力可能)となるように形成されている。
(出力段)
前記制御装置20の出力段には、図1に示すように、次のパーツが接続されている。」

(5)甲第5号証
特許異議申立人により特許異議申立書において提出された甲第5号証(平成19年3月14日公開、特許庁、標準技術集、Web公開のトップページ「標準技術集作成テーマ一覧」及び「遊技機及びその関連技術 第2部 パチスロ 1 遊技内容(機能関連) 1-2 遊技ルール 1-2-1 遊技内容/遊技ルール/基本ルール 1-2-1-4 リールに関するルール」の第11頁、)には、以下の事項が記載されている。

「<リールの停止に関するルール>

全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えないものとし、それ以降も任意にストップボタンを操作しない限り、リールが一定の速度に達した後、30秒以内に自動停止しないものとする。なお、ストップボタンを操作したのちには0.19秒以内に停止するものとする(以上、別表第5(1)性能に関する規格内「イ」参照)。」

5 対比
本件発明と甲1発明とを対比すると、甲1発明の「表示窓20」、「スタートスイッチ70」、「遊技再開手段370」は、それぞれ、本件発明の「可変表示部」、「変動開始手段」、「変動再開手段」に相当する。
以下、分説に従って対比する。

(a)甲1発明の「外周に複数種類の図柄が表示されている回転リール31?33が停止表示される表示窓20」は、本件発明の「各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部」に相当する。

(b)甲1発明において、「スタートスイッチ70によって3個の回転リール31?33の回転を開始」することは、表示窓20(可変表示部)において変動表示することを意味することは明らかである。
よって、甲1発明の「スタートスイッチ70によって3個の回転リール31?33の回転を開始した後、回転リール31?33のリ-ルモータ34?36の駆動を停止させることで、回転リール31?33の図柄を表示窓20に停止表示し、予め設定された図柄の組み合わせが有効ライン上に揃うことで入賞となるスロットマシン10」は、本件発明の「可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシン」に相当する。

(c)甲1発明の「所定数の賭数設定を条件に、3個のリールモータ34?36を駆動すること」は、ゲームの開始を意味することは明らかである。
よって、甲1発明の「所定数の賭数設定を条件に、3個のリールモータ34?36を駆動することで、3個の回転リール31?33の回転を開始させるためスタートスイッチ70」は、本件発明の「ゲームの開始に伴い前記可変表示部の変動表示を開始させる変動開始手段」に相当する。

(d’)甲1発明の「役抽選手段310の抽選結果、及び各ストップスイッチ80?82の操作にもとづいて、ストップスイッチ80?82に対応するリールモータ34?36の停止制御を行うリール停止制御手段320」と、本件発明の「前記可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件に、前記可変表示部に表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段」とは、
「可変表示部に表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段」という点で共通する。

(e’)甲1発明の「スロットマシン10において遊技を行っていた遊技者が、当該スロットマシン10から離れた離席状態を検出する離席検出手段」と本件発明の「遊技者を検知する遊技者検知手段」とは、「検知手段」という点で共通する。

(f’)甲1発明の「回転リ-ル31?33の回転中」は、本件発明の「可変表示部の変動表示が開始した後、導出制御手段により可変表示部に表示結果が導出されるまで」に相当し、甲1発明の「離席検出手段により離席状態が検出されたことを条件に」とは、本件発明の「遊技者検知手段により遊技者が検知されなくなった場合に」相当する。
そして、甲1発明の「回転リール31?33に表示された図柄を一時停止させること」により、変動表示中よりも消費電力を少なくすることは、自明な事項である。
以上のことから、甲1発明の「回転リ-ル31?33の回転中に、離席検出手段により離席状態が検出されたことを条件に、当該回転中の回転リール31?33に対応するリールモータ34?36の駆動を停止させ、回転リール31?33に表示された図柄を一時停止させることで遊技を一時中断させるための遊技一時中断手段360」と、本件発明の「可変表示部の変動表示が開始した後、導出制御手段により可変表示部に表示結果が導出されるまでに、遊技者検知手段により遊技者が検知されなくなった場合に、該可変表示部の変動表示を一旦停止させることにより変動表示中よりも消費電力を少なくする変動停止手段」とは、「可変表示部の変動表示が開始した後、導出制御手段により可変表示部に表示結果が導出されるまでに、検知手段により検知されなくなった場合に、該可変表示部の変動表示を一旦停止させることにより変動表示中よりも消費電力を少なくする変動停止手段」という点で共通する。

(g)甲1発明の「遊技一時中断手段360による遊技の一時中断中に、遊技再開検出手段により遊技再開状態が検出されたこと」は、本件発明の「所定の再開条件が成立した場合」に相当する。
よって、甲1発明の「遊技一時中断手段360による遊技の一時中断中に、遊技再開検出手段により遊技再開状態が検出されたことを条件に、一時停止していた回転リール31?33に対応するリールモータ34?36の駆動を開始させ、当該回転リール31?33の回転を再開させることで一時中断中の遊技を再開させるための遊技再開手段370」は、本件発明の「変動停止手段により前記可変表示部の変動表示が停止している状態で、所定の再開条件が成立した場合に、前記可変表示部の変動表示を再開させる変動再開手段」に相当する。

(h’)甲1発明の「回転リール31?33に表示された図柄を、表示窓20に表示された上下に隣接する2本のライン21?25の中間に一時停止させる」点は、本件発明の「遊技者が入賞の発生と誤認しない所定停止態様で変動表示を停止させる」点に相当する。
よって、甲1発明の「遊技一時中断手段360は、離席検出手段により離席状態が検出されたことを条件に、回転リール31?33に表示された図柄を、表示窓20に表示された上下に隣接する2本のライン21?25の中間に一時停止させる」と本件発明の「変動停止手段は、変動表示を一旦停止させる場合に、可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件に、遊技者が入賞の発生と誤認しない所定停止態様で変動表示を停止させる」とは、「変動停止手段は、変動表示を一旦停止させる場合に、遊技者が入賞の発生と誤認しない所定停止態様で変動表示を停止させる」点で共通する。

したがって、本件発明1と甲1発明とは、
「A 各々が識別可能な複数種類の識別情報を変動表示可能な可変表示部を備え、
B 前記可変表示部を変動表示した後、前記可変表示部の変動表示を停止することで表示結果を導出し、該表示結果に応じて入賞が発生可能なスロットマシンにおいて、
C ゲームの開始に伴い前記可変表示部の変動表示を開始させる変動開始手段と、
D’ 前記可変表示部に表示結果を導出させる制御を行う導出制御手段と、
E’ 検知手段と、
F’ 前記可変表示部の変動表示が開始した後、前記導出制御手段により前記可変表示部に表示結果が導出されるまでに、前記検知手段により検知されなくなった場合に、該可変表示部の変動表示を一旦停止させることにより変動表示中よりも消費電力を少なくする変動停止手段と、
G 前記変動停止手段により前記可変表示部の変動表示が停止している状態で、所定の再開条件が成立した場合に、前記可変表示部の変動表示を再開させる変動再開手段と、
を備え、
H’ 前記変動停止手段は、前記変動表示を一旦停止させる場合に、遊技者が入賞の発生と誤認しない所定停止態様で変動表示を停止させるスロットマシン。」
である点で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1](構成D)
可変表示部に表示結果を導出する導出制御手段に関して、本件発明は、可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件としているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

[相違点2](構成E、F)
検知手段に関して、本件発明は、遊技者を検出する遊技者検知手段であるのに対して、遊技者の離席状態を検出する離席検知手段である点。

[相違点3](構成H)
可変表示部の変動表示を一旦停止させる変動停止手段に関して、本件発明は、可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件としているのに対し、甲1発明は、そのように特定されていない点。

6 判断
(1)特許異議申立人の主張について
ア 相違点1について
甲第3、4号証に記載されているように、回転リールの回転速度が一定速度に達したことを条件にストップスイッチを有効化し、回転リールの停止制御を行うことは周知の事項であるから、相違点1は、甲1発明に上記周知の事項を適用することにより容易に想到し得るものである(特許異議申立書第26頁第13行?第27頁第2行)。

イ 相違点2について
甲第2号証には、スロットマシン本体12の正面に遊技者がいる場合、この旨を示す遊技者検知信号を出力する遊技者検知センサ24を設けることが記載されているから、相違点2は、甲1発明に上記甲第2号証に記載された事項を適用することにより容易に想到し得るものである(特許異議申立書第27頁第5?22行)。

ウ 相違点3について
甲第5号証に記載されているとおり、全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えないようにすることは、当業者において技術標準として認識されている。そして、上記の「全ての操作」には、当然ながら、離席検出手段(例えば、遊技一時中断スイッチ110)の操作も含まれる。従って、甲1発明において、「回転リールの回転速度が一定速度に達したことを条件に離席検出手段の操作を行うことにより、回転リールの一時停止の制御を行う」ようになっていることは、当業者にとっては当然の事項である。
以上から、甲第5号証に記載された技術標準を考慮すれば、甲1発明が相違点3の構成を備えていることは、当業者にとって当然の事項である(特許異議申立書第28頁第1?17行)。

(2)当審の判断
事案に鑑み、相違点3について検討する。

ア [相違点3]について
上記相違点3に係る本件発明の「変動停止手段」については、請求項1の構成Fにおいて「前記可変表示部の変動表示が開始した後、前記導出制御手段により前記可変表示部に表示結果が導出されるまでに、前記遊技者検知手段により遊技者が検知されなくなった場合に、該可変表示部の変動表示を一旦停止させることにより変動表示中よりも消費電力を少なくする変動停止手段」と特定されているので、「遊技者検知手段により遊技者が検知されなくなった場合該可変表示部の変動表示を一旦停止させる」構成が前提となるものである。
甲1発明においては、離席検出手段により離席状態が検出されたことを条件に、回転リール31?33に表示された図柄を一時停止させるものであるから、上記「遊技者検知手段により遊技者が検知されなくなった場合該可変表示部の変動表示を一旦停止させる」構成とするためには、甲1発明の当該離席検出手段を、甲第2号証に記載された遊技者検知センサ24で置換した構成(以下、「甲1発明に甲第2号証記載の事項を適用した構成」という。)にする必要がある。
一方、甲第5号証には、「全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えないものとし、それ以降も任意にストップボタンを操作しない限り、リールが一定の速度に達した後、30秒以内に自動停止しないものとする。なお、ストップボタンを操作したのちには0.19秒以内に停止するものとする。」と記載されている。
ここで、「操作」とは、「(機械などを)あやつって働かせること。また、自分に都合のよいようにうまく運用・処理すること。」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)を意味するものであり、その操作の主体は人間であるといえる。また、甲第5号証の記載には「ストップボタンの操作」と記載されており、ストップボタンは人間が操作するものであるから、人間の操作を意図していることは明らかである。
さらに言えば、甲第5号証は、特許庁が「遊技機及びその関連技術」における標準技術を公開した標準技術集の一部であり、全てのリールが一定の速度に達するまでは遊技者が全ての操作を行えないことは遊技機において標準技術であることを示すに過ぎず、遊技者検出手段により遊技者が検出されなくなった場合に変動表示を停止させる技術を前提として、全てのリールが一定の速度に達するまでは、変動表示を停止しないことは標準技術ということはできないから、上記標準技術集に記載された「全ての操作」には、人間以外の操作(検知手段に基づく制御動作等)は含まれないといえる。
よって、上記甲第5号証の「全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えない」との記載があったとしても、甲第5号証からは、全てのリールが一定の速度に達するまでは遊技者の全ての操作を行えないことがいえるに過ぎず、遊技者の操作を要さない「甲1発明に甲第2号証記載の事項を適用した構成」において、可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件に変動表示を停止することは、当業者が容易に想到できたこととはいえない。
したがって、甲1発明において、甲第2号証の記載を適用するとともに、甲第5号証の記載を考慮して上記相違点3に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

特許異議申立人は、「全ての操作」には、甲1発明の離席検出手段(例えば、遊技一時中断スイッチ110)の操作も含まれるから、甲1発明において、「回転リールの回転速度が一定速度に達したことを条件に離席検出手段の操作を行うことにより、回転リールの一時停止の制御を行う」ようになっていることは、当業者にとっては当然の事項であると主張する。
確かに、甲1発明における離席検出手段(遊技一時中段スイッチ110)は、遊技者が操作するものを含むといえるから、甲1発明のみにおいて甲第5号証の記載を適用することは可能である。
しかしながら、甲1発明に甲第5号証の記載を適用しただけでは、上記相違点3に係る本件発明とならず、上記で検討したとおり、甲1発明の離席検知手段を甲第2号証に記載された遊技者検知センサ24で置換しなければならない。
そうすると、甲第5号証に記載された「全てのリールが一定の速度に達するまでは全ての操作を行えない」ようにする必然性はないから、同様に、上記相違点3に係る本件発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

また、甲第3、4号証には、回転リールの回転速度が一定速度に達したことを条件に遊技者が操作するストップスイッチを有効化し、回転リールの停止制御を行うことが記載されているが、遊技者検出手段により遊技者が検出されなくなった場合に可変表示部の変動表示を一旦停止させる変動停止手段に関して、可変表示部の変動速度が所定速度となっていることを条件とする上記相違点3に係る本件発明の構成を開示するものではない。

したがって、甲1発明に甲第2?5号証の記載事項を適用し、上記相違点3に係る本件発明とすることは、当業者が容易になし得たこととはいえない。

イ まとめ
よって、相違点1、2について検討するまでもなく、本件発明は、甲1発明及び甲第2?5号証の記載事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

7 むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立の理由及び証拠によっては、請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-02-21 
出願番号 特願2011-102369(P2011-102369)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 太田 恒明  
特許庁審判長 瀬津 太朗
特許庁審判官 平城 俊雅
川崎 優
登録日 2016-05-13 
登録番号 特許第5934473号(P5934473)
権利者 株式会社三共
発明の名称 スロットマシン  
代理人 重信 和男  
代理人 溝渕 良一  
代理人 渡辺 敏章  
代理人 広瀬 幹規  
代理人 堅田 多恵子  
代理人 平木 祐輔  
代理人 石川 好文  
代理人 林 修身  
代理人 大久保 岳彦  
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ