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審決分類 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  C22B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  C22B
管理番号 1325884
異議申立番号 異議2016-700661  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-08-02 
確定日 2017-03-09 
異議申立件数
事件の表示 特許第5849880号発明「金属の浸出方法、及び電池からの金属の回収方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5849880号の請求項1ないし5に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5849880号(以下、「本件特許」という。)についての出願は、平成24年 7月18日に特許出願され、平成27年10月29日付けで特許をすべき旨の査定がされ、平成27年12月11日にその特許権の設定の登録がされたものである。
その後、平成28年 8月 2日に、本件特許の請求項1?5に係る特許について、特許異議申立人特許業務法人藤央特許事務所(以下、単に「特許異議申立人」という。)により特許異議の申立てがされ、同年 9月14日付けで当審より取消理由が通知され、これに対し、その指定期間内である同年11月18日付けで特許権者より意見書及び訂正請求書が提出され、同年12月 9日付けで当審より特許権者に審尋が通知され、これに対し、平成29年 1月13日付けで特許権者より回答書(以下、単に「回答書」という。)が提出され、同年 1月20日付けで当審より本件訂正請求に対する訂正拒絶理由が通知され、これに対し、同年 2月 7日付けで特許権者より上申書(以下、単に「上申書」という。)及び訂正請求取下書が提出された。

第2 特許異議の申立てについて
1 本件特許発明
平成28年11月18日付けの訂正請求書による訂正請求は、平成29年 2月 7日付けの訂正請求取下書により取り下げられたから、本件特許の請求項1?5に係る発明(以下、それぞれ「本件特許発明1」?「本件特許発明5」といい、これらを総称して「本件特許発明」という。)は、それぞれ、本件特許の願書に添付した特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

【請求項1】
電池を構成する正極活物質を含むスラリーに還元剤を添加して該正極活物質に含まれる金属を還元浸出させる金属の浸出方法であって、
上記電池の正極活物質を含むスラリーに酸性溶液を添加して該スラリーのpHを所定の範囲に維持した状態で、該スラリーの酸化還元電位の変動に応じて還元剤の供給を制御して金属を還元浸出させる際に、上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったときに該還元剤の供給を一時停止し、再び該酸化還元電位が上昇したときに該還元剤の供給を再開する操作を繰り返し、該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点を浸出終了時点と判定し、該浸出終了時点で該還元剤の供給を完全に停止することを特徴とする金属の浸出方法。
【請求項2】
上記還元剤を供給するに先立ち、上記スラリーを加温することを特徴とする請求項1に記載の金属の浸出方法。
【請求項3】
上記スラリーのpHを0.5?1.5に維持した状態で還元浸出することを特徴とする請求項1又は2に記載の金属の浸出方法。
【請求項4】
上記還元剤は、亜硫酸水素ナトリウム又は亜硫酸ナトリウムであることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の金属の浸出方法。
【請求項5】
電池を構成する正極活物質から金属を回収する電池からの金属の回収方法であって、
上記電池の正極活物質を含むスラリーに還元剤を添加して該正極活物質に含まれる金属を還元浸出させる浸出工程を含み、
上記浸出工程では、上記電池の正極活物質を含むスラリーに酸性溶液を添加して該スラリーのpHを所定の範囲に維持した状態で、該スラリーの酸化還元電位の変動に応じて還元剤の供給を制御して金属を還元浸出させる際に、上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったときに該還元剤の供給を一時停止し、再び該酸化還元電位が上昇したときに該還元剤の供給を再開する処理を繰り返し、該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点を浸出終了時点と判定し、該浸出終了時点で該還元剤の供給を完全に停止することを特徴とする電池からの金属の回収方法。

2 取消理由の概要
本件特許発明1?5に対して、平成28年 9月14日付けで特許権者に通知した取消理由の概要は、以下のものである。なお、これらの理由は、特許異議申立人の主張する取消理由と同様である。

理由1(サポート要件)本件特許発明1?5は、特許請求の範囲の記載が下記ウ、エの点で不備のため、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由2(明確性)本件特許発明1?5は、特許請求の範囲の記載が下記のイ点で不備のため、その特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。
理由3(実施可能要件)本件特許発明1?5は、明細書の記載が下記オの点で不備のため、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものである。



ア 本件特許発明1?5は、「該スラリーの酸化還元電位の変動に応じて還元剤の供給を制御して金属を還元浸出させる際に、上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったときに該還元剤の供給を一時停止し、再び該酸化還元電位が上昇したときに該還元剤の供給を再開する操作を繰り返し、該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点を浸出終了時点と判定し、該浸出終了時点で該還元剤の供給を完全に停止する」(当審注:下線は、当審において付した。)という発明特定事項を有している。

イ 上記発明特定事項の「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」について、それぞれ、特許異議申立書第8頁下から第2行?第9頁下から第1行に記載された理由により、明確ではないから、本件特許発明1?5は明確ではない。

ウ 上記イのとおり、上記発明特定事項の「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」は、それぞれ明確ではないが、これらの発明特定事項が文言どおり、「酸化還元電位が下がらなくなった」及び「該酸化還元電位が上昇しなくなった」ことであると解すると、特許異議申立書第7頁第7行?第8頁第11行に記載された理由により、発明の詳細な説明には、上記発明特定事項が、文言どおり、「酸化還元電位が下がらなくなった」及び「該酸化還元電位が上昇しなくなった」ことであるものは、発明の詳細な説明に記載されていないから、本件特許発明1?5は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

エ さらに、上記発明特定事項が文言どおり、「酸化還元電位が下がらなくなった」及び「該酸化還元電位が上昇しなくなった」ことであると解すると、特許異議申立書第8頁第12行?同頁第24行に記載された理由により、本件特許発明1?5は、本件特許発明が解決しようとする課題を解決できることを当業者が認識できる範囲を超えていると解されるから、本件特許発明1?5は、発明の詳細な説明に記載されたものではない。

オ また、上記発明特定事項が文言どおり「酸化還元電位が下がらなくなった」及び「該酸化還元電位が上昇しなくなった」ことではないと解すると、特許異議申立書第5頁第14行?第7頁第5行に記載された理由により、それぞれの発明特定事項の判断基準が不明であるから、発明の詳細な説明の記載が、当業者が本件特許発明1?5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものではない。

3 判断
(1)理由2について
ア 本件特許発明1?5の「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」という発明特定事項について、本件特許の願書に添付した明細書(以下、「本件特許明細書」という。)の【0038】?【0042】には、図1がスラリーの酸化還元電位の変動に応じて還元材の供給を制御しながら還元浸出反応を進行させた時のORP(酸化還元電位)及びpHのトレンドグラフである(【0039】)こと、本実施の形態に係る浸出方法が、図1のグラフに示すように、スラリーのORPの変動に応じて、還元剤を供給してORP値を低下させ、そのORPが下がらなくなったときに還元剤の供給を一時停止し、再びORPが上昇したときに還元剤の供給を再開し(【0039】)、還元剤の供給を停止してもORPが上昇しなくなったとき、その時点を浸出終了時点と判定し、還元剤の供給を完全に停止する(【0040】)方法であることが記載されている。

イ 上記アによれば、本件特許発明の実施の形態に係る浸出方法は、図1のグラフに示されるものといえるから、本件特許発明1?5の「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」という発明特定事項について、本件特許発明の実施の形態を示す図1のグラフに基づいて検討する。

ウ まず、本件特許発明の実施の形態を示す図1は以下のものである。

図1:


エ 次に、上記アの記載によれば、「還元剤の供給を一時停止」した時点は、当該一時停止前は「還元剤を供給してORP値を低下させ」、当該一時停止後は「再びORPが上昇」することから、酸化還元電位の値が低下から上昇に変化する挙動を示した時点であると認められる。

オ また、上記アの記載によれば、「還元剤の供給を停止してもORPが上昇しなくなったとき、その時点を浸出終了時点と判定」することから、「浸出終了時点」とするか、しないかの判定をする時点は、還元剤の供給を停止した直後の時点であり、上記エの「還元剤の供給を一時停止」した直後の時点であると認められる。

カ そこで、図1のグラフのうち、還元剤NaHSO_(3)を添加した後について拡大させた図1(B)のグラフにおいて、酸化還元電位の値が、低下から上昇に変化する挙動を示した時点を図示すると、次図のとおりである。

加筆した図1(B):


キ この加筆した図1(B)において、上記エの検討によれば、酸化還元電位の値が低下から上昇に変化する挙動を示した時点である「D1」?「D9」の「↑」の時点(以下、それぞれを単に「D1の時点」?「D9の時点」という。)が、「還元剤の供給を一時停止」した時点であると認められる。

ク また、この加筆した図1(B)において、上記オの検討によれば、「浸出終了」とするかしないかの判定は、上記キの「還元材の供給を一時停止」した時点(D1の時点?D9の時点)の直後の時点にされ、最も最後に判定をした点であるD9の時点の直後の時点が、判断の結果、「浸出終了」とした「浸出終了時点」であると認められる。

ケ なお、D9の時点以降の酸化還元電位の挙動について、特許権者は、回答書(第5頁第27行?最下行)において、「D9の浸出反応終了時点以降は、残存する還元材を処分するために、空気と接触するに任せ、空気の酸化力によって緩やかにORPが上昇し・・・ORPが600mVに達したところで、空気との接触を終了し・・・(・・・空気の酸化力は約600mV・・・)・・・空気の流入を制限することにより、容器内の水蒸気の蒸発に負けて酸素分圧が低下し、ORPが・・・下降した」ものであり、このことが「ORPの下降の傾きがそれ以前とは異なることや、pHが極端に上下していることからも判別することができる」と主張している。そこで、図1を見ると、D9の時点以前の下降後のORPの値が400程度であるのに対し、D9の時点以降の下降後のORPの値が470程度であること、及び、D9の時点以降において、pHのプロットが1.3?1.4の間及び0.6?0.7の間にあることが、それぞれ視認され、D9の時点以前のORPの挙動とD9の時点以降のORPの挙動が異なるとともに、D9の時点以降においてpHが1程度に維持されていないといえるから、D9の時点が「浸出終了時点」であり、D9の時点以降は、スラリーのpHを所定の範囲に維持した状態で還元剤の供給と一時停止とを繰り返す操作とは異なる操作が行われていると推認できる。そして、この推認は、D9の浸出反応終了時点以降に、還元剤の供給と一時停止とを繰り返す操作とは異なる操作を行っているとする上記主張と整合し、また、上記クで検討した、D9の時点が「浸出終了時点」であるとの認定とも整合する。

コ そこで、加筆した図1(B)において、「還元剤の供給を一時停止」した時点であるD1の時点?D9の時点のORPの値を示すプロットの挙動をみると、時刻とともに、隣接するプロットの減少幅が小さくなっていき、隣接するプロットが横ばいとなっていることが視認される。してみると、「還元剤の供給を一時停止」した時点である「ORPが下がらなくなったとき」とは、時刻とともに、隣接するプロットの減少幅が小さくなっていき、隣接するプロットが横ばいになった時点であると認められる。

サ また、加筆した図1(B)において、「浸出終了時点」であるD9の時点の直後の時点のORPの値を示すプロットの挙動をみると、隣接するプロットが横ばいのまま経過していることが視認され、これは、隣接するプロットが横ばいとなり「還元剤の供給を一時停止」した後にも、そのまま隣接するプロットが横ばいである挙動であると認められる。してみると、「浸出終了時点」である「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」とは、「還元剤の供給を一時停止」した後にも、そのまま隣接するプロットが横ばいである時点であると認められる。

シ なお、特許権者は、上申書において、「すなわち、上述したような技術常識を適宜適用しながらノイズを低減し、還元材を供給しながら測定器を用いてORP値を測定すると、やがて減少幅が小さくなり、プロットが横ばいとなって、その時を『下がらなくなったとき』とすることができます。・・・『下がらなくなったとき』に還元材の供給を一時停止してもプロットが横ばいのままであれば、「上昇しなくなった時点」と判断することが可能です。」(第3頁第12行?第23行)と主張しており、上記コ及びサの認定は、この主張と整合している。

ス してみると、「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」は、それぞれ明確であるといえ、これらの発明特定事項により、本件特許発明1?5が明確でないとはいえない。

セ なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「十分な還元材の添加によっても少なくとも僅かながら変動し得る酸化還元電位のどのような状態をもって、「下がらなくなった」と判断すべきであるのか不明である。」(第8頁下から第1行?第9頁第4行)と主張しているが、上記のとおり、「下がらなくなった」状態とは、酸化還元電位の隣接するプロットが横ばいとなった状態であると認められ、どのような状態をもって判断すべきであるのか不明であるとはいえない。また、上申書において特許権利者が主張するように、技術常識によれば、酸化還元電位値のプロットは、測定器により測定され、その測定値はノイズを低減されたものと認められるから、実際の酸化還元電位の値が、ノイズとして低減されるような僅かな範囲や、測定間隔内において測定値の最小単位以下の僅かな範囲で、変動し得るとしても、酸化還元電位の隣接するプロットが横ばいとなった状態として、「下がらなくなった」と判断できるから、酸化還元電位が僅かに変動することを理由に「下がらなくなった」と判断すべきか不明であるとはいえない。
よって、この主張を採用することができない。

ソ また、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「図1のグラフのような、酸化還元電位が下がっている途中で還元剤の供給を停止している様態であっても、これを「そのORPが下がらなくなったときに還元材の供給を一時停止し、」としており(【0039】参照)、本件特許発明1及び5でいう「下がらなくなったとき」が、酸化還元電位のどのような状態まで含んでいるのか極めて不明確であると言わざるを得ない。」(第9頁第5行?第10行)と主張しているが、本件特許発明1?5、本件明細書及び図面において、「下がらなくなった」状態とは、酸化還元電位の隣接するプロットが横ばいとなった状態であると認められるから、明確でないとはいえない。
よって、この主張を採用することができない。

タ したがって、本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(2)理由1について
ア 本件特許発明が解決しようとする課題は、本件特許明細書の【0003】?【0009】の記載によれば、電池を構成する正極活物質から還元剤を用いて金属を還元浸出させる方法において、従来の方法が還元剤の亜硫酸ガスを飽和するまで硫酸水溶液に注入して正極活物質を溶解させるものであり、反応に必要な量以上に還元剤を使用し、十分に経済性を改善できていないという問題に対して、経済性を高めて効率的に且つ高い浸出率で効果的に金属を浸出させることを可能にする金属の浸出方法を提供することであるといえる。

イ そして、本件特許明細書の【0020】?【0042】の記載によれば、還元浸出反応において、還元剤の供給量が過剰となると、還元剤が還元反応に寄与せずロスとなり(【0034】)、還元剤使用量に対する浸出効率が著しく低下する(【0035】)ことから、上記課題を解決するために、本件特許発明は、還元剤の供給によるスラリーの酸化還元電位(ORP)の変動に応じて、その還元剤の供給を制御しながら金属を還元浸出させていく(【0037】)ものであり、図1のグラフに示すように、スラリーのORPの変動に応じて、還元剤を供給してORP値を低下させ、そのORPが下がらなくなったときに還元剤の供給を一時停止し、再びORPが上昇したときに還元剤の供給を再開し(【0039】)、還元剤の供給を停止してもORPが上昇しなくなったとき、その時点を浸出終了時点と判定し、還元剤の供給を完全に停止する(【0040】)ことにより、供給した還元剤が反応に寄与せずロスとなることを制御することができ、必要最小限の使用量で効果的に金属を浸出させることができる(【0041】)ものである。

ウ また、本件特許明細書の【0077】?【0088】の記載によれば、本件特許発明により、試薬使用量を低減することができ、解決しようとする課題を解決することが、具体的な実施例と比較例とにより示されている。

エ そして、上記(1)で検討したとおり、本件特許発明1?5の「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」という発明特定事項は、それぞれ、「酸化還元電位の隣接するプロットの減少幅が小さくなっていき、酸化還元電位の隣接するプロットが横ばいとなった点」及び「還元材の供給を停止した時点において、その後も、酸化還元電位の隣接するプロットが横ばいとなっている時点」であるから、本件特許発明1?5は、上記ア?ウで検討した本件特許明細書の記載と整合しており、本件特許発明1?5は、解決しようとする課題を解決することができるものといえる。

オ なお、特許異議申立人は、特許異議申立書において、「図1のグラフで示された形態では、酸化還元電位が下がっている途中で還元剤の供給が停止され、それにより、その後、酸化還元電位は『下がらなくなったとき』を経ること無く上昇している」から、「図1のグラフに示された形態は、本件特許発明1及び5に対応する実施形態であると解することはできない」、また、「明細書の実施例・・・もまた、酸化還元電位が「下がらなくなった」時点で還元剤が供給停止されたものではない蓋然性が高い」(第7頁第7行?第8頁第11行)と主張しているが、上記(1)で検討した理由と同様の理由により、図1のグラフには、酸化還元電位が、その隣接するプロットが横ばいとなったとき、すなわち、酸化還元電位が下がらなくなったときを経て、上昇する形態が示されているから、この主張を採用することができない。

カ してみると、本件特許発明1?5は、発明の詳細な説明に記載したものでないとはいえないから、その特許は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

(3)理由3について
ア 上記(1)で検討したとおり、本件特許発明1?5の「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」という発明特定事項はそれぞれ明確であって、当業者は、「上記還元剤の供給により上記スラリーの該酸化還元電位を低下させ、該酸化還元電位が下がらなくなったとき」及び「該還元剤の供給を停止しても該酸化還元電位が上昇しなくなった時点」をそれぞれ理解することができるから、当業者が本件特許発明1?5の実施をすることができないとはいえない。

イ してみると、発明の詳細な説明の記載は、当業者が本件特許発明1?5の実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載したものでないとはいえない、その特許は、特許法第36条第4項第1号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものとはいえない。

第3 まとめ
したがって、本件特許の請求項1?5に係る特許は、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載された特許異議申立理由によっては、取り消すことができない。
また、他に本件特許の請求項1?5に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-02-27 
出願番号 特願2012-159786(P2012-159786)
審決分類 P 1 651・ 536- Y (C22B)
P 1 651・ 537- Y (C22B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大塚 徹  
特許庁審判長 池渕 立
特許庁審判官 土屋 知久
富永 泰規
登録日 2015-12-11 
登録番号 特許第5849880号(P5849880)
権利者 住友金属鉱山株式会社
発明の名称 金属の浸出方法、及び電池からの金属の回収方法  
代理人 祐成 篤哉  
代理人 野口 信博  
代理人 藤井 稔也  
代理人 河野 貴明  
代理人 小池 晃  
代理人 伊賀 誠司  
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