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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  F16L
管理番号 1325894
異議申立番号 異議2016-700988  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-10-13 
確定日 2017-03-14 
異議申立件数
事件の表示 特許第5902785号発明「分岐管継手」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5902785号の請求項1ないし4に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
特許第5902785号の請求項1ないし4に係る特許についての出願は、平成22年8月11日に特許出願された特願2010-180047号の一部を平成26年10月22日に新たな特許出願としたものであって、平成28年3月18日にその特許権の設定登録がされ、その後、その特許に対し、特許異議申立人 一條 淳(以下「申立人」という。)により特許異議の申立てがされたものである。

第2 本件発明
特許第5902785号の請求項1ないし4の特許に係る発明(以下「本件発明1ないし4」という。)は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定される、次のとおりのものである。
「【請求項1】
ケーブルを収容して保護するケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐管継手であって、
前記本管の外面に密着して取り付けられるサドル部、
前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部、
前記サドル部の前記枝管部との連結部分に形成され、前記枝管部の内部と連通する略楕円形状の開口、および
前記サドル部の内面から突出し、前記開口の周縁に沿って環状に形成される環状突起を備え、
前記環状突起は、前記サドル部を内面側に陥没させることなく当該サドル部に肉厚の大きい厚肉部を設けることによって形成され、
前記環状突起を形成した部分における前記サドル部の外面は、円筒面をなすように形成され、
前記環状突起の内周面は、前記開口の周縁と滑らかに連結されると共に、前記環状突起の外縁は、平面視で、軸方向両端部分の形状が円弧状とされ、残りの部分の形状が軸方向に直線状とされる略角丸矩形状を有し、
前記環状突起の前記枝管部分岐方向側の外周面は、傾斜面によって形成され、
前記本管の管軸に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記枝管部の分岐角度以下に設定される、分岐管継手。
【請求項2】
ケーブルを収容して保護するケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐管継手であって、
前記本管の外面に密着して取り付けられるサドル部、
前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部、
前記サドル部の前記枝管部との連結部分に形成され、前記枝管部の内部と連通する略楕円形状の開口、および
前記サドル部の内面から突出し、前記開口の周縁に沿って環状に形成される環状突起を備え、
前記環状突起は、前記サドル部を内面側に陥没させることなく当該サドル部に肉厚の大きい厚肉部を設けることによって形成され、
前記環状突起を形成した部分における前記サドル部の外面は、円筒面をなすように形成され、
前記環状突起の内周面は、前記開口の周縁と滑らかに連結されると共に、前記環状突起の外縁は、平面視で、軸方向両端部分の形状が円弧状とされ、残りの部分の形状が軸方向に直線状とされる略角丸矩形状を有し、
前記環状突起の前記枝管部分岐方向側の外周面は、傾斜面によって形成され、
前記本管の管軸に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記枝管部の分岐角度以下に設定され、
前記環状突起の突出高さは、前記本管の肉厚とほぼ同じ、或いは前記本管の肉厚よりも1mm程度大きくなるように設定される、分岐管継手。
【請求項3】
ケーブルを収容して保護するケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐管継手であって、
前記本管の外面に密着して取り付けられるサドル部、
前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部、
前記サドル部の前記枝管部との連結部分に形成され、前記枝管部の内部と連通する略楕円形状の開口、および
前記サドル部の内面から突出し、前記開口の周縁に沿って環状に形成される環状突起を備え、
前記環状突起は、前記サドル部に肉厚の大きい厚肉部を設けることによって形成され、
前記環状突起の内周面は、前記開口の周縁と滑らかに連結され、
前記環状突起の前記枝管部分岐方向側の外周面は、傾斜面によって形成され、
前記本管の管軸に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記枝管部の分岐角度以下に設定される、分岐管継手。
【請求項4】
前記環状突起は、前記ケーブルが前記本管の分岐孔の周縁と接触しない程度のスリットが形成された断続的環状突起である、請求項1ないし3のいずれかに記載の分岐管継手。」

第3 申立理由の概要
1.申立人の主張の概要
本件発明1ないし3は甲第1ないし4号証に基づいて、また、本件発明4は甲第1ないし7号証に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本件発明1ないし4は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであるから、本件特許は同法第113条第2号の規定に該当し、取り消すべきものである。

2.申立人が提出した証拠方法
甲第1号証:米国特許第5788414号明細書
甲第2号証:特開平4-203690号公報
甲第3号証:特開2005-192329号公報
甲第4号証:特公平1-15372号公報
甲第5号証:特開平4-102792号公報
甲第6号証:特開平8-247369号公報
甲第7号証:特開2009-210023号公報

第4 各甲号証の記載事項
1.甲第1号証
(1)甲第1号証の記載事項
甲第1号証には以下の事項が図面とともに記載されている。
仮訳は甲第1号証の部分翻訳を参考にして当審で作成した。また下線は当審で付与した。
(1a)「 TECHNICAL FIELD
This invention relates generally to an apparatus and method for creating a splice or tap-off point into a conduit, pipe or duct, particularly a duct for carrying fiber optic cables.」(1欄6?10行)
(仮訳)「 技術分野
本発明は、導管、パイプ、またはダクト、特に光ファイバケーブルを搬送するためのダクトに接合部又は取出し部を形成するための装置及び方法に関する。」

(1b)「FIG.3 shows an exploded perspective view of saddle 103 of the present invention, as applied to duct 101 having an opening 102 formed therein. As will be discussed below in conjunction with FIGS. 6A-6C, 7A-7C, and 8A-8C, opening 102 may be formed using a technique which is also a subject of the present invention. Saddle 103 comprises an arcuate portion 105 having a radius substantially the same as the radius of duct 101, and a sleeve portion 104 which is attached to and provides passage through arcuate portion 105.
Once opening 102 has been formed, saddle 103 is placed over duct 101 such that an end of sleeve portion 104 at arcuate portion 105 is contiguous with opening 102. Arcuate portion 105 of saddle 103 may be formed from a portion of the material used for duct 101(e. g., four inch "C" duct or the like). Making the arcuate portion 105 of saddle 103 from duct material provides two advantages. First, the cost of the saddle can be kept low, as arcuate portion 105 of saddle 103 can be constructed from discarded scrap portions of duct material left over from the installation of duct 101. These savings can be further compounded by cutting these scrap sections of duct lengthwise, to produce two arcuate portions 105 from each section of scrap duct. Second, if arcuate portion 105 of saddle 103 is constructed from duct material, the internal diameter of arcuate portion 105 of saddle 103 will be slightly less than the outer diameter of duct 101. Thus, when saddle 103 is placed over duct 101, the saddle will tend to ″snap″into place, effectively gripping duct 101. This gripping action verifies to the in staller that the saddle is properly in place and also serves to hold the saddle during subsequent gluing, clamping, or chemical welding operations. When installing saddle 103 to duct 101 at the bottom of an open trench, this gripping action eases installation, as the installer does not need to hold saddle 103 in place, thus leaving both hands free to secure saddle 103 or for other activities.
Saddle 103 can be fixedly attached to duct 101 by the use of chemical welding or adhesive, or by the use of band clamps, or by a combination of any of the three. Further, band clamps nay be used to secure saddle cur.103 to duct 101 while adhesive or chemical welds are curing. If band clamps alone are to be used, it may be desirable to place a gasket(not shown) between arcuate portion 105 of saddle 103 and duct 101 to provide a water-tight or water resistant seal.」(4欄58行?5欄35行)
(仮訳)
「図3は、開口部102を有するダクト101に適用される、本発明のサドル103の分解斜視図を示す。以下の図6A-6C、図7A-7Cおよび図8A-8Cで説明されるように、開口部102は、本発明の技術を用いて形成することができる。サドル103は、ダクト101の半径とほぼ同じ半径を有する円弧部105と、円弧部105を通過するようにして円弧部105に設けられてスリーブ104を有する。
開口102が形成されると、サドル103は、円弧部105におけるスリーブ104の端部が開口部102と連続するように、ダクト101上に配置される。サドル103の円弧部105はダクト101に使用される材料の一部から形成されてもよい(例えば、4インチの「C」ダクトなど)。ダクト材料からサドル103の円弧部105を作ることは二つの利点がある。第一に、サドル103の円弧部105は、ダクト101の設置で使い残された部分であるダクト材料の不要な断片から形成することができるため、サドルのコストを低く抑えることができる。これらの節減は、ダクトの不要部分を縦方向に切断して、各不要ダクトから2つの円弧部105を形成することによって、より強められる。第2に、サドル103の円弧部105がダクト材料から構成されている場合には、サドル103の円弧部105の内径は、ダクト101の外径よりも若干小さくなる。それゆえ、サドル103がダクト101の上に配置された際、サドルが所定の位置に「パチン」と、効果的に管101を把持するようになる。この把持動作は、設置者に対しサドルが正しい位置にあることを確認し、また、その後の接着、クランプ、または化学溶接作業中にサドルを保持するものである。開溝の底部にあるダクト101にサドル103をインストールする場合、設置者は、サドル103を保持する必要がなく、したがって、サドル103の固定または他の作業のために両手を自由に使うことができるため、この把持動作は、設置を容易にする。
サドル103は、化学的溶接または接着剤の使用によって、またはバンドクランプを使用することによって、またはこれら3つの任意の組み合わせによりダクト101に固定して取り付けることができる。さらに、バンドクランプは、接着剤や化学溶接部が硬化している間にサドル103をダクト101に固定するために使用できる。バンドクランプが単独で使用される場合、防水または耐水性シールを提供するために、サドル103の円弧部105とダクト101との間に図示しないガスケットを配置することが望ましい。」
(1c)「FIG.5 shows yet another embodiment of the saddle of the present invention. To distinguish the saddle of FIG.5 from those of FIGS.4A and 4B, different reference numerals have been used. However, saddle 503 of FIG.5 may be substituted for the saddles shown in FIGS.4A and 4B. Saddle 503 of FIG.5 is similar to saddle 103 of FIG.4B in that it may be fabricated in one piece by injection molding or the like to facilitate construction. Saddle 503 however, has an additional raised portion 506 extending on the inner surface of arcuate portion 505 of saddle 503. Raised portion 506 may be formed so as to match the size and shape of opening 102 shown in FIG.3. By providing a matching shape to opening 102, raised portion 506 creates a flush inner surface when installed in duct 101. This flush inner surface allows wires or cables to be more easily "snaked" through duct 101(or corresponding interducts)without catching on any protruding or recessed surfaces. In addition, raised portion 506, by mating with the shape of opening 102, further secures saddle 503 to duct 101 so as to prevent movement of saddle 103 during adhesive, chemical welding or clamping operations. A1though opening 101 shown in FIG.3 is shown as rectangular, other sized and shaped openings may also be used along with correspondingly sized and shaped raised portion 506.」(6欄16?39行)
(仮訳)
「図5は、本発明のサドルのさらに別の実施形態を示している。図5のサドルを図4A及び図4Bに示されたものと区別するために、異なる参照番号を使用する。
しかし、図5のサドル503は図4Aおよび4Bに示すサドルの代わりに使用することができる。図5のサドル503は射出成形等により一体的に製造することができるという点で図4Bのサドル103に似ている。しかしながら、サドル503は、サドル503の円弧部505の内面に延在する付加的な隆起部506を有している。隆起部506は図3に示す開口部102のサイズ及び形状に一致するように形成することができる。開口部102に一致する形状にすることにより、ダクト101内に設置した場合、隆起部506は、平坦な内面を形成する。この平坦な内面はワイヤまたはケーブルを、任意の突出または窪んだ表面に引っ掛かることなく、より容易にダクト101(または対応するインターダクト)を通して「蛇行」させることができる。また、開口部102の形状と嵌合することにより、接着剤、化学的溶接またはクランプ作業の間にサドル103が移動するのを防止するように、隆起部506はサドル503をダクト101にさらに固定する。図3に示す開口101は矩形として示されているが、他のサイズ及び形状の開口部がまた、対応するサイズおよび形状の隆起部506と一緒に使用できる。」
(1d)「As shown in FIG.8A, a cable 635 may be then snaked out through opening 102. Cable 635 may be a cable spliced from one of cables 620, 621 or 622, or may be an additional cable run through duct 101.
・・・As shown in FIG.8B, cable 635 is then threaded through saddle 103 which is then fitted over opening 102.
・・・
Once saddle 103 has been installed, cable 635 (if present) is snaked thought(合議体注:throughの誤記と考えられる。)interduct 638 and interduct 638 is attached to sleeve 104 of saddle 103.」(8欄15?40行)
(仮訳)
「図8Aに示されるように、ケーブル635は開口部102を通して蛇行されてもよい。ケーブル635はケーブル620,621又は622の一つから継がれたものでもよいし、ダクト101を通る追加のケーブルでもよい。
・・・
図8Bに示されるように、ケーブル635は、開口部102上に装着されているサドル103に通される。
・・・
サドル103が設置されると、ケーブル635(存在するならば)は、インターダクト638を通して蛇行させられ、インターダクト638はサドル103のスリーブ104に取り付けられる。」
(1e)「FIG.10C shows an alternative embodiment of the technique of FIG.10A. Rather than resting against duct 101, base plate 629 is slidably fittable over template 624 which has an opening 625 smaller than base plate 629. Cutting bit 632 is fitted with a smooth collet 633 when travels against opening 625. As in FIG.10A, cutting bit 632 is preferably dimensioned to cut only a portion of the way through duct 101. The technique of FIG.10C may be preferred when it is desirable to form an opening 102 in duct 101 which is not square(e.g, oval, round or the like)」 (8欄48?57行)
(仮訳)
「図10Cは、図10Aの手法の別の実施形態を示す。ダクト101に対する支えよりむしろ、ベースプレート629は、ベースプレート629よりも小さい開口部625を持っているテンプレート624上で、スライド可能に嵌合可能である。開口部625に対して移動する際、切削ビット632は滑らかなコレット633が装着されている。図10Aのように、切削ビット632は、ダクト101へ抜ける部分のみを切断するような好ましい寸法である。ダクト101の正方形でない開口部102(例えば、楕円形、円形など)を形成することが望ましい場合、図10Cの手法が好ましい。」
(1f)以下の図3、図4B、図5、図8A、図8B、図8C及び図10Cが示されている。

(2)甲第1号証に記載されている発明
ア.摘示(1a)、(1d)及び図8Aないし図8Cより、ダクト101及びインターダクト638は、それぞれケーブル620,621,622,635を収容するものであり、サドル103は、かかるケーブルが収容されるダクト101とインターダクト638とを接続するものであることが明らかである。
イ.摘示(1b)、図8B及び図8Cより、サドル103の円弧部105は、ダクト101上に取り付けられ、ダクト101の半径とほぼ同じ半径を有するものであることが明らかである。
ウ.摘示(1b)、(1d)、図3、図8B及び図8Cより、スリーブ104は、円弧部105の外面から突出し、円弧部105をダクト101に取り付けた状態で、ダクト101の軸に対して鋭角に設けられることが明らかである。
エ.摘示(1c)、(1d)、図4B、図5及び図8Aないし図8Cより、円弧部105,505のスリーブ104,504との連結部分にスリーブ104,504の内部と連通する開口が形成されていることが明らかである。
オ.摘示(1c)及び図5より、サドル503は、円弧部505の内面に延在する付加的な隆起部506を備えていること、かかる隆起部506は、上記エの連結部分に形成される開口の周縁に沿って形成されていることが明らかである。
カ.摘示(1c)によれば、図5の実施形態における、サドル503、円弧部505、スリーブ504についても上記ア?ウの事項が当てはまることは明らかである。
以上の記載事項(1a)?(1f)及び認定事項ア?カによれば、甲第1号証には以下の発明が記載されていると認められる(以下「甲1発明」という。)。
「ケーブルを収容するダクト101とインターダクト638とを接続するサドル503であって、
前記ダクト101上に取り付けられ、前記ダクト101の半径とほぼ同じ半径を有する円弧部505と、
前記円弧部505の外面から突出し、前記円弧部505を前記ダクト101に取り付けた状態で、前記ダクト101の軸に対して鋭角に設けられる、スリーブ504と
前記円弧部505の前記スリーブ504との連結部分に形成され、前記スリーブ504の内部と連通する開口と、
前記円弧部505の内面に延在し、前記開口の周縁に沿って形成される、付加的な隆起部506とを備える、
サドル503」。

2.甲第2号証
甲第2号証には以下の事項が図面とともに記載されている。
(2a)「[産業上の利用分野]
本発明は各種ケーブル配設用本管からケーブルを分岐させるために分岐配管を形成する目的等で使用される分岐管継手に関し、特に合成樹脂製や金属製の分岐管継手に関するものである。」 (1頁左下欄下から3行?右下欄1行)
(2b)「分岐管継手2はサドル部21と分岐管部22が一体的に形成され、サドル部21の頂部内面側には、該分岐管部22の根元部分に突出部26が突設される。図例においては分岐管部22の根元部分をサドル部21の内側へ陥没させて該突出部26を形成し、該突出部26は管軸方向の一方端(符号26aに示す部分)より管軸長手方向(符号26bに示す部分)にU字形に設けられる。なお上記突出部26は成形時に厚内部として一体形成されるものや、別に成形した部材をサドル部21の内面側に接着するもの等であっても良い。また該突出部26の形成される範囲は、少なくとも管軸方向の一方端でケーブルの接する部分(符号26aに示す部分)に配設することとし、貫通孔1Aの周囲におけるその他の部分については任意に設けるもので良く、該貫通孔の全周に亘るものであっても良い。さらに該突出部26の配設形状は、本管1に穿設される貫通孔1Aの寸法及び形状に合わせて任意に変更したものであってもよい。
他方上記突出部26(26a、26b)の先端は曲面で滑らかに形成されると共に、突出高さは本管1の肉厚以上に形成され、本管1の内面と同-若しくはこれより突び出る様に構成される。これによって第1図に示す様にケーブルWを分岐管部22側へ挿通するとき、該ケーブルWが貫通孔1Aの周縁角部に擦られる様なことはなく、上記突出部26の先端に接することになる。」(2頁右下欄11行?3頁左上欄18行)
(2c)以下の第1図、第2図及び第4図が示されている。

3.甲第3号証
甲第3号証には以下の事項が図面とともに記載されている。
(3a)「【技術分野】
【0001】
この発明は、主に、共同溝等に埋設される本管から、支管若しくは、家庭引込管等の分岐管を枝分かれさせる際に、分岐部分に用いる分岐管継手に関するものである。
・・・
【0003】
まず、構成から説明すると、従来のものでは、地中の共同溝内に埋設される光ファイバケーブル等の通信ケーブルが、幹線を構成する本管1内に挿通されている。」
(3b)「【0056】
まず、構成から説明すると、この実施例1の分岐管継手11では、主に、可撓性軟質材料であるゴム状弾性材から構成されるサドル部材12と、このサドル部材12と別体となるように設けられて、分岐角度が、前記本管1の管軸方向に対して、一定の鋭角αを有して固着されるように構成される硬質塩化ビニール樹脂製材料で構成された分岐管部材13とを有している。」
(3c)「【0062】
また、前記分岐管部材13は、図8乃至図10に示すように、中空筒状の管本体13aと、この管本体13aの本管側に設けられて、前記分岐貫通孔10の周縁部10aに、この本管1の外側方から当接される基端部13bとを有して、主に構成されている。」
3d)「【0065】
更に、この実施例1の前記分岐管部材13の基端部13bの裏面側には、前記分岐貫通孔10に、本管1の厚み程度の一定深さ挿入されて、この分岐貫通孔10の内周面部に嵌着されるか或いは、この内周面部よりも小さく形成されるケーブル保護突起部13e(図9,図10)が、一体に形成されている。
【0066】
このケーブル保護突起部13eは、前記分岐貫通孔10の形状に適合させて、管軸方向に沿って、長手方向を有する長円環形状を呈していて、前記係止片部13c,13cと一体に連設されることにより、角部を形成していない断面略R形状に構成されている。」
(3e)以下の図1、図2及び図4が示されている。

4.甲第4号証
甲第4号証には以下の事項が図面とともに記載されている。
(4a)「1 管体の一端外周にサドル鍔を有し、他端部に拡径した受口を有する下水用支管を製造するにあたり、まず一端外周にサドル鍔を有する管体を射出成形によつて一体成形し、次いで該管体の他端部を加熱軟化させてから外金型で包囲し、管体内に加圧流体を導入して外金型の成形内壁面に密着するまで膨出させて拡径した受口を成形することを特徴とする下水用支管の製法。」 (特許請求の範囲)
(4b)以下の第3図が示されている。

第5 当審の判断
事案にかんがみて、まず本件発明3について検討する。
1.本件発明3について
(1)対比・判断
ア.対比
(ア)甲1発明の「ケーブル」は、本件発明3の「ケーブル」に相当するといえる。そして、甲1発明の「ケーブル」は、「ダクト101とインターダクト638」に収容されるものであるから、技術的にみて、収容されるとともに保護されているといえる。そうすると、甲1発明の「ダクト101」と「インターダクト638」は、それぞれ本件発明3の「本管」と「分岐管」に相当し、「ダクト101」と「インターダクト638」を合わせて本件発明3の「ケーブル保護管」に相当するといえる。また、甲1発明の「サドル503」は、本件発明3の「分岐管継手」に相当するといえる。
(イ)甲1発明の「円弧部505」は、本件発明3の「サドル部」に相当するといえる。そうすると、甲1発明の「前記ダクト101上に取り付けられ、前記ダクト101の半径とほぼ同じ半径を有する円弧部505」と本件発明3の「前記本管の外面に密着して取り付けられるサドル部」とは、「前記本管の外面に取り付けられるサドル部」の構成の限度で共通するといえる。
(ウ)甲1発明の「スリーブ504」は、本件発明3の「枝管部」に相当するといえる。そして、「スリーブ504」は、「前記ダクト101の軸に対して鋭角に設けられる」ものであるから、ダクト101の軸に対して鋭角の分岐角度を有するということができ、上記(ア)(イ)の相当関係をも踏まえると、甲1発明の「前記円弧部505の外面から突出し、前記円弧部505を前記ダクト101に取り付けた状態で、前記ダクト101の軸に対して鋭角に設けられる、スリーブ504」は、本件発明3の「前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部」に相当するといえる。
(エ)甲1発明の「前記円弧部505の前記スリーブ504との連結部分に形成され、前記スリーブ504の内部と連通する開口」は、上記(イ)(ウ)の相当関係を踏まえると、本件発明3の「前記サドル部の前記枝管部との連結部分に形成され、前記枝管部の内部と連通する略楕円形状の開口」と「前記サドル部の前記枝管部との連結部分に形成され、前記枝管部の内部と連通する開口」の構成の限度で共通するといえる。
(オ)甲1発明の「隆起部506」は「前記円弧部505の内面に延在」する「付加的な」ものであり、「前記開口の周縁に沿って形成される」ものであるから、上記(イ)(エ)の相当関係をも踏まえると、甲1発明の「前記円弧部505の内面に延在し、前記開口の周縁に沿って形成される、付加的な隆起部506」と本件発明3の「前記サドル部の内面から突出し、前記開口の周縁に沿って環状に形成される環状突起」とは、「前記サドル部の内面から突出し、前記開口の周縁に沿って形成される突起」の構成の限度で共通するといえる。
以上によれば、本件発明3と甲1発明とは以下の点で一致するといえる。
<一致点>
「ケーブルを収容して保護するケーブル保護管の本管と分岐管とを接続する分岐管継手であって、
前記本管の外面に取り付けられるサドル部、
前記サドル部の外面から突出し、前記サドル部を前記本管に取り付けた状態で前記本管の管軸に対して鋭角となる分岐角度を有する枝管部、
前記サドル部の前記枝管部との連結部分に形成され、前記枝管部の内部と連通する開口、および
前記サドル部の内面から突出し、前記開口の周縁に沿って形成される突起を備える、分岐管継手。」
そして、以下の点で相違するといえる。
<相違点1>
サドル部の本管への取り付け態様に関し、本件発明3では、「密着して取り付けられ」ているのに対して、甲1発明では、「円弧部505」が「ダクト101の半径とほぼ同じ半径を有する」ものであるものの、ダクト101の外面に密着して取り付けられるものか特定されていない点。
<相違点2>
開口に関し、本件発明3では、「略楕円形状」をしているのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3>
突起の構造に関し、本件発明3では、「環状」であり、「前記サドル部に肉厚の大きい厚肉部を設けることによって形成され」、その内周面は「前記開口の周縁と滑らかに連結され」、その「枝管部分岐方向側の外周面は、傾斜面によって形成され、前記本管の管軸に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記枝管部の分岐角度以下に設定される」ものであるのに対して、甲1発明では、そのように特定されていない点。
イ.判断
事案にかんがみて、相違点3について検討する。
(ア)甲第2号証ないし甲第4号証に記載された技術事項について
甲第2号証には、分岐管継手2において、サドル部21に突出部26を設ける技術事項が示されているといえ(上記摘示(2a)(2b)(2c)参照)、かかる「分岐管継手」、「サドル部21」は、それぞれ本件発明3の「分岐管継手」、「サドル部」に相当するといえ、「突出部26」は、本件発明3の「環状突起」と「突部」の限度で一致するといえる。
しかし、甲第2号証には、突出部26が「貫通孔の全周に亘るものであっても良い。」(上記摘示(2b)参照)との記載があるものの、本件発明3でいう「前記環状突起の前記枝管部分岐方向側の外周面は、傾斜面によって形成され、前記本管の管軸に対する前記傾斜面の傾斜角度は、前記枝管部の分岐角度以下に設定される」ことについては記載も示唆もないから、甲1発明に上記甲第2号証に記載された技術事項を適用しても上記相違点3に係る本件発明3の構成に至らないことは明らかである。
甲第3号証には、管本体13aと基端部13bとを有する分岐管部材13とサドル部材12とに分割して形成された分岐管継手11に関し(上記摘示(3b)(3c)参照)、前記基端部13bの裏面側にケーブル保護突起部13eが一体形成する(上記摘示(3d)参照)技術事項が示されている。当該保護突起部13eは、分岐貫通孔10の形状に適合させて、管軸方向に沿って、長手方向を有する長円環形状を呈していて、分岐貫通孔10の内周面部に嵌着されるものであるから(上記摘示(3d)参照)、本件発明3の「環状突起」と類似の構成を有しているということができるところ、図4(上記摘示(3e)参照)から、前記管本体13aの分岐方向側の前記保護突起部13eの外周面が傾斜しているようにも看取できたとしても、かかる傾斜が、前記管本体13aの分岐角度以下に設定されているかは不明であるから、甲1発明に上記甲第3号証に記載された技術事項を適用しても上記相違点3に係る本件発明3の構成に至らないことは明らかである。
甲第4号証には、管体の一端外周にサドル鍔を有し、他端部に拡径した受口を有する下水用支管に関する技術事項が示されているといえる(上記摘示(4a)参照)。
図3(上記摘示(4b)参照)には、管体1の基端部側がサドル鍔12から下方に突出する構成が看取できるが、かかる突出する構成の下端が図示省略されているため、かかる突出する構成が全体として一定の傾斜角度で傾斜しているのか判別できない。また、仮に、一定の傾斜角度で傾斜していたとしても、管体1の分岐角度に対してどのように設定されるのか不明であるから、いずれにしても、甲1発明に上記甲第4号証に記載された技術事項を適用しても上記相違点3に係る本件発明3の構成に至らないことは明らかである。
(イ)甲1発明への上記技術事項の適用について
甲1発明の「隆起部506」は、甲第1号証に「開口部102のサイズ及び形状に一致するように形成することができる。開口部102に一致する形状にすることにより、ダクト101内に設置した場合、隆起部506は、平坦な内面を形成する。この平坦な内面はワイヤまたはケーブルを、任意の突出または窪んだ表面に引っ掛かることなく、より容易にダクト101(または対応するインターダクト)を通して「蛇行」させることができる。また、開口部102の形状と嵌合することにより、接着剤、化学的溶接またはクランプ作業の間にサドル103が移動するのを防止するように、隆起部506はサドル503をダクト101にさらに固定する。」(上記摘示(1c)参照)と記載されているように、隆起部506は、ダクト101に形成された開口部102に嵌合することにより、サドル103が移動するのを防止するように、ダクト101に固定する機能を有するものであり、加えて、開口部102のサイズ及び形状に一致することにより、ダクト101内に設置した場合、隆起部506は、平坦な内面を形成し、かかる平坦な内面は、ケーブルが突出または窪んだ表面に引っ掛かることがなく容易にダクト101に通すことができるものとするものであるから、ダクト101の開口部102に嵌合した隆起部506の周囲には突出または窪んだ表面は有しないということができる。
ここで、甲1発明において、隆起部506の形状と隆起部506が嵌合される開口部102の形状についてみると、隆起部506の形状は図5(上記摘示(1f)参照)に図示されているように、円弧部505の内面に対してその外周面が略垂直に延在していることが看取でき、開口部102は、例えば、上記摘示(1e)や図10Cによると、円筒状の切削ビット632をダクト101の半径方向に向けて移動させるとともに、所望の開口部の形状に沿って移動することにより形成されるものといえるから、開口部102の切削された面(以下「内周面」という。)は、ダクト101の半径方向に沿った面になるといえる(このことは、図10Cからも看取できる。)。
そうすると、隆起部506の外周面と、開口部102の内周面はともにダクト101の半径方向に沿った面として形成されているということができ、このことは、上述した、ダクト101の開口部102に嵌合した隆起部506の周囲には突出または窪んだ表面は有しないこととも整合するといえる。
以上を踏まえると、甲1発明において、スリーブ504の分岐方向側の隆起部506の外周面を分岐角度以下の傾斜角度にするためには、甲第1号証の図5(上記摘示(1f)参照)において、ダクト101の半径方向に延在する隆起部506の外周部をスリーブ504の分岐角度以下になるようにテーパ状に一部除去しなければならないことが明らかである。しかし、そのように隆起部506を除去した場合には、開口部102の内周面との間に窪み(断面三角形状)が形成されることになるから、上記平坦な内面を形成することはできなくなり、かかる窪みはケーブルをダクト102内に通す際の障害になることは明らかであるから、当業者は、あえて、隆起部506の外周面をテーパ状に一部除去するような構成は採用しないとするのが相当である。すなわち、そのように構成する動機付けはないというべきである。また、かかる窪みにより、隆起部506が開口部102に嵌合した際に、隆起部506の外周面と開口部102の内周面との間の接触面積が極端に少なくなるとともに、係る外周面がテーパ状とされているため、サドル503に対して分岐方向側に向けて力が作用すると、サドル503が開口部102から外れやすくなる(浮き上がりやすくなる)ということもできるから、隆起部506が開口部102に嵌合することにより、サドル103が移動するのを防止するという作用効果が阻却される結果となるということもできる。
以上より、甲1発明において、隆起部506の外周面に傾斜面を形成することには動機付けがないばかりか阻害要因があるということができるのであるから、仮に甲第2号証ないし甲第4号証に傾斜面に係る構成が示唆されていたとしても、甲1発明に適用して当業者が容易に想到しうるものということはできない。
したがって、本件発明3は、上記相違点1及び2について検討するまでもなく、甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

2.本件発明1、2及び4について
本件発明1及び2は、本件発明3の発明特定事項の全てを含み、さらに本件発明3の環状突起及びサドル部に関する構成を限定するものであって、上記1.のとおり、本件発明3が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明1及び2も、甲第1号証ないし甲第4号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
また、本件発明4は、本件発明3の発明特定事項の全てを含み、さらに環状突起に関する構成を限定するものであり、しかも、甲第5号証ないし甲第7号証には、上記1.において説示した傾斜面に係る構成は記載も示唆もされていないから、上記1.のとおり、本件発明3が当業者にとって容易に発明することができたものとはいえないのであるから、同様に、本件発明4も、甲第1号証ないし甲第7号証に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

第6 むすび
以上のとおり、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、請求項1ないし4に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものとはいえないことから、特許法第113条第2号の規定に該当するものとして取り消すことはできない。
また、他に請求項1ないし4に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-03-03 
出願番号 特願2014-215379(P2014-215379)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (F16L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 黒石 孝志  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 尾崎 和寛
和田 雄二
登録日 2016-03-18 
登録番号 特許第5902785号(P5902785)
権利者 株式会社クボタケミックス
発明の名称 分岐管継手  
代理人 山田 義人  
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