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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1325896
異議申立番号 異議2016-700822  
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2017-04-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-09-06 
確定日 2017-03-16 
異議申立件数
事件の表示 特許第5878190号発明「粉粒状混合調味料およびその製造方法」の特許異議申立事件について、次のとおり決定する。 
結論 特許第5878190号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1 手続の経緯
本件特許第5878190号の請求項1ないし7に係る特許についての出願は、平成28年2月5日付けでその特許権の設定登録がされ、その後、特許異議申立人 伊藤礼子 より請求項1ないし7に対して特許異議の申立てがなされ、平成28年11月2日付けで取消理由が通知され、その指定期間内に特許権者より平成29年1月6日付けで意見書が提出されたものである。

第2 本件の発明
特許第5878190号の請求項1ないし7の特許に係る発明は、それぞれ、その特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された以下の事項により特定されるとおりのものである。
「【請求項1】
常温で固形の油脂および加水加熱によりα化する澱粉を必須成分とする固形ルウ粉粒物と、
下記1)および2)を満たす食品原料からなる混合・粉砕用粉体とを含む粉粒状混合調味料であって、
前記粉粒状混合調味料中の前記混合・粉砕用粉体の含量が10?55質量%であり、
前記粉粒状混合調味料中の、目開き5mmの篩をパスする部分の割合が70質量%以上であり、前記混合・粉砕用粉体が、前記固形ルウ粉粒物の表面に付着ないし表面近傍に分散して存在していることを特徴とする粉粒状混合調味料。
1)前記混合・粉砕用粉体中に含まれる加水加熱によりα化する澱粉の含量が、前記混合・粉砕用粉体に対して30質量%以下であり、且つ、前記粉粒状混合調味料に対して20質量%以下である。
2)前記混合・粉砕用粉体中に含まれる前記油脂の含量が、前記混合・粉砕用粉体に対して20質量%以下であり、且つ、前記粉粒状混合調味料に対して7質量%以下である。
【請求項2】
前記粉粒状混合調味料中の前記常温で固形の油脂の全含量が12?25質量%であることを特徴とする請求項1記載の粉粒状混合調味料。
【請求項3】
前記混合・粉砕用粉体の70質量%以上が、目開き0.35mmの篩をパスする粉体で
あることを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の粉粒状混合調味料。
【請求項4】
前記混合・粉砕用粉体が、加水加熱によりα化する澱粉を実質的に含まないことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の粉粒状混合調味料。
【請求項5】
前記混合・粉砕用粉体が、油脂を実質的に含まないことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の粉粒状混合調味料。
【請求項6】
前記食品原料からなる混合・粉砕用粉体が、動植物の乾燥粉砕加工物、各種液体原料の乾燥粉末化物、調味料粉末、その他粉体香料、粉体増粘多糖類、粉体色素から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の粉粒状混合調味料。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粉粒状混合調味料の製造方法であって、下記の工程(1)?(4)を含むことを特徴とする粉粒状混合調味料の製造方法。
(1)常温で固形の油脂および加水加熱によりα化する澱粉を必須成分として準備する。
(2)前記油脂の融解する温度以上で前記油脂および前記加水加熱によりα化する澱粉を加熱混合する時および/または加熱混合した後に、必要に応じて調味料を混合し、冷却固化して固形ルウを調製する。
(3)冷却固化した固形ルウを必要に応じて予備粉砕した後、加水加熱によりα化しない粉体を含む混合・粉砕用粉体を、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の粉粒状混合調味料中の前記混合・粉砕用粉体の含量が10?55質量%となるように、粉砕機を用いて混合しながら粉砕して、前記粉粒状混合調味料を調製する。
(4)調製した前記粉粒状混合調味料を、充填機を用いて容器に充填し、密封包装する。」

第3 当審の判断
1 取消理由通知に記載した取消理由について
(1) 平成28年11月2日付けの取消理由通知に記載した取消理由の概要は、以下のとおりである。
本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、又は、その出願前に日本国内又は外国において頒布された刊行物(甲第1号証)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その発明に係る特許は取り消すべきものである。

(2) 特許異議申立書の甲号証及び記載事項等
1) 特許異議申立書の各甲号証及び参考資料
甲第1号証:特公昭44-31749号公報
甲第2号証:特開2011-193756号公報
甲第3号証:特公昭53-45380号公報
甲第4号証:特開平6-125717号公報
参考資料1:和光純薬工業のお客様相談室だより7
参考資料2:第十六改正日本薬局方改正点のポイント(2011年5月)

2) 特許異議申立書の各甲号証及び参考資料の記載事項等
(ア) 甲第1号証には以下の事項が記載されている。
(ア-1) 「スープをインスタント食品化したものは乾燥品、固形状スープ(高脂肪含有の圧縮成型品)と濃縮品があるが前2者はとかく吸水性と復元性にかけ又後者はその容器が限定されるので今迄のところ満足のものが得難かつた。
本発明は顆粒状のインスタントスープ及びホワイトソースの製造方法に関するものであつて極めて復元性に富み自動販売機による販売にも適する製品を得ることができるものである。
顆粒状の分散性のよいインスタントスープの製造法に関し近時研究が進んできたが、そのあるものにおいては顆粒状にする場合まず油脂を熔融しこれに澱粉類を加えて冷却硬化せしめた澱粉油脂混合物を”おろし機”で処理する手段を採用しているが、”おろし機”が使用し得るのは脆弱な材料に限られるので、冷却硬化したとは言え油脂含有物は”おろし機”の目づまりを生ずるのみで”おろす”ことができず、敢えて”おろす”為には摩擦熱による軟化を防止する冷却装置を必要とする。
本発明の製造法によれば圧出方式で線状におし出すゆえむしろ加温されて好ましくまたその直後に親水性原料を添加する場合も附着が容易である
前記のものはα化していない澱粉成分を使用するので温水に分散後ボイルしα化せしめなければ飲用できないが本発明のものはα化澱粉を使用するので熱湯を注入するのみで復元し飲用できるのである。かくの如く本発明ではα化澱粉を使用するがこのα化澱粉は親水性が過大である為使用時に浮遊小塊を生じ易い欠点をもつている。
そこで本発明ではこのα化澱粉の過大の親水性による凝塊化を調節するとともに、製品に扱い易さ(自動販売機による販売可能性)を与える為に固形食用油脂を混和して顆粒状とするものである
ただしこゝに用いる固形食用油脂には水中崩壊性を与えるために適宜乳化剤を加えなければならない。」(第1欄14行-第2欄12行)

(ア-2) 「次に本発明のインスタントスープの製造法の実施例を説明する(ただしインスタントホワイトソース類を製造するには適宜油いためした小麦粉、粉乳、肉汁濃縮物、香辛料等を添加すればよい)
(1)α化澱粉40?50部と融点40℃?50℃硬化油20?30部(0.1%の乳化剤含有)とを均一に混合し、ついでこの混合物を線状圧出顆粒機によつて顆粒化する。
顆粒機より押出された直後は油脂が軟化しているのでその圧出線状物に調味料香辛料その他の親水性粉末の1部を散布附着せしめ線状物質の相互附着を防止せしめたのち残余の上記親水性粉末を入れた混合機で攪拌混合することにより線状物質の径とほぼ同じ程度の長さに切断成型されその切断面に上記親水性粉末が附着せしめられ完全な非粘着性の顆粒が得られる。親水性粉末としては糖類、塩類、グルタミン酸ソーダ等が好適でこれら粉末の附着後は常温に永くおいても相互附着することなく顆粒状に保存し得るものである。
以上のようにして得られたインスタントスープは煮沸することなく単に熱湯を加えるだけでまず上記浸水性粉末が水に溶解するとともに油脂は徐徐に溶解水和し澱粉物質を遊離せしめ膠状液となり直ちに飲用に供し得るものである。」(第2欄17行-第3欄2行)

(ア-3) 「本発明によれば、細粒化の為油脂の熔融、モールデイング、冷却硬化を行うことなくまた細粒化中に摩擦熱が発生し塊が軟化し細粒化が困難となる為操作中は常に冷却を必要とする等工程上の煩わしさがあるに較べ油脂の熔融を行なうことなく単に油脂と粉末とを均一に混合しこれを顆粒機にかけ圧出成形するだけで充分細粒化は行なわれ且つ顆粒にする際生ずる摩擦熱により幾分油脂が軟化する為却つて親水性粉末の附着が完全に行なわれる等経済的であるばかりでなく加熱による油脂の酸敗化をも防止することができる。またα化した澱粉類を使用する為に単に熱湯を注加し攪拌するだけで飲用に供し得るので自動販売機を利用しても販売が可能となるものである。」(第3欄10行-第4欄6行)

(ア-4) 「特許請求の範囲
1 α化澱粉の一種又は混合物を親水性を与えた固形食用油脂と充分混合して得られる捏和物を圧出型顆粒機によつて顆粒としついで適宜可食性粉末を附着させることを特徴とするインスタントスープおよびホワイトソースの製造法。」(第4欄7-12行)

これらの事項を総合すると、甲第1号証には、以下の「甲1発明」が記載されていると認められる。

「α化澱粉の一種又は混合物を親水性を与えた固形食用油脂と充分混合して得られる捏和物を圧出型顆粒機によつて顆粒としついで適宜可食性粉末を附着させるインスタントスープおよびホワイトソース。」

(イ) 甲第2号証には以下の事項が記載されている。
(イ-1) 「【0001】
本発明は、低温溶媒への優れた分散性を有する顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法に関し、特に冷水又は冷たい牛乳に良好な分散性を有するインスタントスープ又はインスタントソースの製造方法に関する。」

(イ-2) 「【0016】
顆粒状或いは粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースは、一般に、原料として澱粉類、増粘多糖類、粉乳類、穀粉、野菜・果実パウダー、調味料、香辛料、賦形剤、食用油脂等を含むものであるが、これらに限定されるものではない。また、必要に応じてパセリ等の具材を加えることもできる。これらの原料を、混合機等を用いて混合して粉末状のインスタントスープ又はインスタントソースとしても良いし、必要に応じ、流動層造粒等、公知の方法で顆粒化して顆粒状のインスタントスープ又はインスタントソースとしても良い。また、これらの原料の一部を顆粒化した後、残りの原料を混合することもできる。・・・インスタントスープ又はインスタントソースの分散性を悪化させる傾向にある。」

(イ-3) 「【0025】「【表1】」の「顆粒状インスタントスープの原料」に「原料」及び「配合割合(重量部)」として、順に「ポテトパウダー」が「27.925」、「脱脂粉乳」が「16.000」、「クリーミングパウダー」が「8.000」、「調味料」が「5.500」、「野菜パウダー」が「1.350」、「香辛料」が「0.150」、「麦芽糖」が「25.000」、「澱粉」が「11.000」、「菜種油」が「5.000」、「各種乳化剤のいずれか、又は麦芽糖」が「0.075」で「計」が「100.000」であることが記載されている。

(ウ) 甲第3号証には以下の事項が記載されている。
(ウ-1) 「1 澱粉類および粉乳、食塩、砂糖、化学調味料、香辛料などの適宜材料とさらに食用油脂より成る原料の水分含量を8?13%に調整し、これを押し出し型の造粒機にかけて造粒した後、熱風乾燥により5?9%の水分を蒸発させ、冷却、篩別することを特徴とする顆粒状食品の製造方法。」(第1欄22-27行)

(ウ-2) 「実施例1
小麦粉 40.0(重量部)
牛 脂 17.5
コーンスターチ 3.0
脱脂粉乳 3.7
砂 糖 7.5
食 塩 10.0
グルタミン酸ソーダ 少 量
乳 化 剤 〃
オニオンパウダー 〃
酵母エキス 〃
有 機 酸 〃
香 辛 料 〃
上記の配合により、牛脂以外の他の原料をミキサーで混合し、これに70℃前後の液状の牛脂を加えて加熱混合した後、冷却し、水8重量部を加えて水分含有量を約12%とし、得られた原料混合物をニーダーで3分間捏和し、その後、押出し型造粒機にかけ、得られた造粒物を流動層乾燥機に入れ、100℃の温度で12?13分間乾燥して約8%の水分量を蒸発させ、冷風を送つて冷却し、不定形でかつ溶解性、流動性に優れた顆粒状のインスタントシチューを得た。」(第6欄17-39行)

(ウ-3) 第7欄及び第8欄にまたがる表には「本発明」の「得られる顆粒の平均粒径(算術平均)」が「33メツシュ」であることが記載されている。

(エ) 甲第4号証には以下の事項が記載されている。
(エ-1) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 被造粒物を水を添加することなく上昇融点40?55℃の油脂と共に加熱・混合した後、押出し造粒し、その後急速冷却することを特徴とする顆粒状食品の製造方法。」

(エ-2) 「【0011】
【実施例】
実施例1(クリームシチュー)
攪拌機付きの混合容器内で小麦粉30重量部と上昇融点48℃のパーム硬化油15重量部(造粒物全重量の15重量%に相当する)を品温が120℃になるように加熱しながら混合した。その後、澱粉17重量部、砂糖9重量部、食塩8重量部、コーンスターチ6重量部、粉乳5重量部、その他調味料10重量部を添加し、品温が95℃になるように加熱しながら混合した。その後、品温を約60℃に冷却した後、押出し造粒機(不二パウダル(株)製エッグペレッター;スクリーンの孔の直径1.2mm)を用いて押出し造粒した。品温60℃の造粒物は、造粒機から排出された後、乾燥処理を施すことなくドライアイス0.3Kg/造粒物1Kgの条件で直ちにドライアイスと接触させて1分間で品温約20℃にまで急速冷却して顆粒状のクリームシチュー(粒径1.2mm)を得た。得られた顆粒状のクリームシチューは風味的に優れた見栄えのよいものであり、粒子強度もさほど強くなく、溶解性にすぐれたものであった。」

(オ) 参考資料1には、図2の下の「対応表」中に「JISフルイ^(*)」の「<フルイ目の開き>」の「425μm」に対応して「Tylerフルイ」の「メッシュ(mesh)」が「35」であることが記載されている。

(カ) 参考資料2には以下の事項が記載されている。
(カ-1) 9ページの「表6 散剤の規定の新旧対照」中の「日局15」の欄に「13.散剤・・・(中略)・・・(3)本剤は,製剤の粒度の試験法<6.03>を行うとき,18号(850μm)ふるいを全量通過し,30号(500μm)ふるいに残留するものは全量の5%以下である.本剤のうち,200号(75μm)ふるいを通過するものが全量の10%以下のものを細粒と称することができる.・・・(以下略)」と記載されている。

(カ-2) 10ページの「表7 顆粒剤の規定の新旧対照」中の「日局15」の欄に「7.顆粒剤・・・(中略)・・・(3)本剤は,製剤の粒度の試験法<6.03>を行うとき,10号(1700μm)ふるいを全量通過し,12号(1400μm)ふるいに残留するものは全量の5%以下であり,また,42号(355μm)ふるいを通過するものは全量の15%以下である.・・・(以下略)」と記載されている。

3) 対比・判断
1) 本件特許の請求項1に係る発明(以下「特許発明」ともいう。)について
特許発明と甲1発明とを対比すると、両者は、少なくとも、
含まれる澱粉が、特許発明では「加水加熱によりα化する澱粉」であるのに対し、甲1発明では「α化澱粉の一種又は混合物」である点、
で相違している。

上記相違点について検討する。
甲1発明の「澱粉」は「α化澱粉の一種又は混合物」すなわちα化した澱粉である。そして、甲1号証に「前記のものはα化していない澱粉成分を使用するので温水に分散後ボイルしα化せしめなければ飲用できないが本発明のものはα化澱粉を使用するので熱湯を注入するのみで復元し飲用できるのである。」(上記「(ア-1)」参照)と記載されていることからして、甲1発明は、α化していない澱粉成分を使用するのでは飲用のために温水に分散後ボイルしα化しなければならないという課題があったものを、α化澱粉を使用することにより熱湯を注入するのみで復元し飲用できるとした発明ということができる。そうすると、甲1発明には、その「α化澱粉の一種又は混合物」すなわちα化した澱粉を、α化していない澱粉成分に替えることに阻害要因があるといえる。
したがって、甲1発明をして特許発明の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到し得たとはいえない。
そうすると、特許発明は、甲1発明であるとはいえないし、又、甲1発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものともいえない。

2) 本件特許の請求項2ないし7に係る発明について
請求項2ないし7は直接・間接的に請求項1を引用しているから、特許発明と同様の理由により、本件特許の請求項2ないし7に係る発明は、甲1発明であるとはいえず、又、甲1発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものともいえない。

3) よって、本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当するとはいえず、又、同法第29条第2項の規定により特許を受けることができないともいえない。

2 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由について
(1) 取消理由通知において採用しなかった特許異議申立理由(特許法第36条第6項第2号)の概要
特許請求の範囲に(例えば請求項1)に記載された「常温で固形の油脂」という記載(請求項2ないし7は直接・間接的に請求項1を引用しているので、同様に記載されているといえる。)は、特許明細書の段落【0041】に、菜種油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、胡麻油、月見草油、パーム油、イリッペ脂、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油などの植物性油脂、並びに乳脂、牛脂、豚脂、魚油、鯨油などの動物性油脂、これらの油脂類の単独または混合油あるいはそれらの硬化、分別、エステル交換などを施した加工油脂が挙げられており、これらの油脂には、常温で液体の油脂が明らかに多数含まれているので、明確でない。(特許異議申立書第6ページ22行-第7ページ1行参照。)

(2) 上記特許異議申立理由(特許法第36条第6項第2号)についての判断
特許請求の範囲の「常温で固形の油脂」という記載について、特許明細書の段落【0038】に「本発明における、常温で固形の油脂とは、20℃で、自重によって変形しない油脂であり、荷重が加わったときの変形は許容される。常温で液体状や、流動性のある半固体状の油脂を含まない。なお本発明における、常温とは、特筆していない限り、JIS Z 8703で定義される常温、即ち20℃±15℃である。」と記載され、「常温で固形の油脂」について明確に説明されており、常温で液体の油脂が含まれているとは解せないから、その記載が不明確であるということはできない。
なお、特許明細書の段落【0041】には「本発明で使用する油脂は、具体的には、例えば菜種油、大豆油、・・・加工油脂などを挙げることができる。本発明の粉粒状混合調味料中の油脂含量は、特に限定されないが、12?25質量%であると好ましく、15?22%であるとより好ましい。」と記載されており、段落【0041】の記載は「油脂」についての説明であって、「常温で固形の油脂」についての説明とはいえない。
よって、本件特許の請求項1ないし7の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないとすることはできない。

第4 むすび
以上のとおりであるから、取消理由通知に記載した取消理由及び特許異議申立書に記載した特許異議申立理由によっては、本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を取り消すことはできない。
さらに、他に本件特許の請求項1ないし7に係る発明についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2017-03-02 
出願番号 特願2014-34082(P2014-34082)
審決分類 P 1 651・ 121- Y (A23L)
P 1 651・ 113- Y (A23L)
P 1 651・ 537- Y (A23L)
最終処分 維持  
前審関与審査官 渡邉 潤也  
特許庁審判長 千壽 哲郎
特許庁審判官 田村 嘉章
大山 広人
登録日 2016-02-05 
登録番号 特許第5878190号(P5878190)
権利者 ヱスビー食品株式会社
発明の名称 粉粒状混合調味料およびその製造方法  
代理人 吉澤 大輔  
代理人 秋元 輝雄  

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