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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60C
管理番号 1326185
審判番号 不服2014-19674  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2014-10-01 
確定日 2017-03-14 
事件の表示 特願2012-541058号「雪上性能改善用の面取り部を有する側方溝を備えたタイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成23年5月26日国際公開、WO2011/062595、平成25年4月4日国内公表、特表2013-511438号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、2009年11月23日を国際出願日とする出願であって、平成26年6月9日付けで拒絶査定がされ、平成26年10月1日に拒絶査定不服審判の請求がされるとともに、同時に手続補正書が提出され、当審において、平成27年6月23日付けで拒絶の理由が通知され、平成27年12月22日に意見書及び手続補正書が提出され、さらに当審において、平成28年1月21日付けで拒絶の理由(最後)が通知され、平成28年7月25日に意見書及び手続補正書が提出された。

2.平成28年7月25日付けの手続補正について
平成28年7月25日付けの手続補正は、特許請求の範囲を補正するものであって、その補正は、補正前の請求項1を削除し、補正前の請求項7を補正後の請求項1に繰り上げるとともに、「スイープ軸」と他の構成要素との対応関係を明確にし(以下、「補正1」という。)、当該請求項1に、補正前の請求項2?6及び8?14を従属させて請求項2?13とする(以下、「補正2」という。)ものである。
上記補正1は、特許法第17条の2第5項第1号の請求項の削除及び同法同条同項第4号の明りょうでない記載の釈明を目的とする補正に該当するとともに、同法同条第3項及び第4項に規定する要件を満たすものといえるから、適正になされたものといえる。
上記補正2は、発明特定事項を限定するものであって、補正前後で産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一といえるから、特許法第17条の2第5項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とする補正に該当するとともに、同法同条第3項及び第4項に規定する要件を満たすものといえる。

3.本願発明
本願の請求項1?13に係る発明は、平成28年7月25日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?13に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「 【請求項1】
雪上トラクションが改善され、横方向、及び周方向を有するタイヤであって、
該タイヤは、外周部と、該外周部上に配置され、横方向に延びる側方の溝とを有するトレッドを有し、それぞれの前記側方の溝は、前記溝が前記タイヤの前記外周部と交差する箇所に見られる少なくとも1つの第1の面取り部を有し、前記少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であり、前記溝は、所定の深さと幅、及び所定の抜け勾配を有する側壁を有し、前記溝の前記幅は2mmから4mmの範囲にあり、前記タイヤは乗用車又は軽トラック用タイヤであり、前記溝は、前記第1の面取り部の反対側に第2の面取り部を有する、タイヤ。」

4.刊行物に記載された事項及び発明
(1)刊行物に記載された事項
当審の平成28年1月21日付けの拒絶の理由(最後)で引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、特開2004-276861号公報(以下、「刊行物」という。)には、図1?10とともに、次の事項が記載されている。
なお、下線は当審で加筆した。以下、同様である。

(1a)
「【0002】
【従来技術】
一般に、トレッド面にブロックパターンを形成した空気入りタイヤは、ブロックにヒールアンドトウ摩耗が発生し易い。また、走行条件によっては、ブロックの周方向溝に面した両エッジ部間で段差が発生する所謂カッピング摩耗が発生する。このような偏摩耗が発生すると、トレッドパターンに起因する騒音が増大し、特に摩耗量が大きいタイヤ摩耗初期に騒音の悪化が助長される。そこで、従来、例えば、ブロックのエッジ部に沿って面取りをする(例えば、特許文献1参照)などの対策が施されている。」
(1b)
「【0009】
一般に、ブロックパターンにおけるヒールアンドトウ摩耗は、制動力によってタイヤ回転方向に繰り返し強い剪断変形を受けることにより発生し、それによりブロックの蹴り出し側のエッジ部が高い接地圧となって多く摩耗する一方、接地圧が低くなる踏み込み側のエッジ部が路面を滑って摩耗し、羽のように薄いヒラヒラ状の端部、所謂フェザーエッジとなり、このフェザーエッジが路面を叩く打音により騒音が増大するが、上記のようにブロックのエッジ部を面取りしてエッジ部剛性を高めることで、そのエッジ部をブロックの踏み込み側となるようにしてタイヤを車両に装着した際に、そのエッジ部と路面との滑りが抑制され、かつブロックの蹴り出し側のエッジ部との接地圧差を低減することができるため、ヒールアンドトウ摩耗の発生を抑制すると共にヒールアンドトウ摩耗に起因する騒音の増加を抑えることができる。」
(1c)
「【0013】
一般に、ブロックパターンにおけるカッピング摩耗は、タイヤ周方向に交互に存在するブロックとラグ溝が、駆動時に繰り返し強い剪断変形を受けることにより発生し、それによりブロックの回転方向に対する踏み込み側のエッジ部が高い接地圧となって多く摩耗する一方、接地圧が低くなる蹴り出し側が路面を滑って摩耗したフェザーエッジとなり、このフェザーエッジが路面を叩く打音により騒音が増大するが、上記のようにブロックのエッジ部を面取りしてエッジ部剛性を高めることで、ブロックの一方側に隣接するラグ溝側を回転方向に対して蹴り出し側となるようにしてタイヤを車両に装着した際に、そのエッジ部と路面との滑りが抑制され、かつブロックの両エッジ部間の接地圧差を低減することができるため、カッピング摩耗の発生を抑制すると共にそれに起因する騒音の増加を抑えることができる。」
(1d)
「【0016】
図1は本発明の空気入りタイヤの一例を示し、トレッド面1には、タイヤ周方向Tに沿って延在する複数の周方向溝2がタイヤ幅方向に所定の間隔で設けられている。タイヤ幅方向に沿って延在するラグ溝3がタイヤ周方向Kに所定のピッチで配置され、これら主溝2とラグ溝3とにより複数のブロック4が区分形成されている。
【0017】
図2に示すように、各ブロック4において、一方側のラグ溝3に面するブロック4のラグ溝壁面4aとブロック表面4bとが接する一方側のエッジ部4xが、ラグ溝壁面4aとブロック4のタイヤ幅方向内側に隣接する周方向溝2に面する内側周方向溝壁面4cとが接する第1稜線Qの溝底点aと、ラグ溝壁面4aとブロック表面4bとが接する第2稜線Rのタイヤ幅方向外側端Bとを結ぶ直線Mを含み、ブロック表面4bと内側周方向溝壁面4cとが接する第3稜線Sと交差する平面状の傾斜面5で面取りしてあり、これにより面取り後のラグ溝壁面4aが三角形状の傾斜面5と三角形状のラグ溝残壁面部4azとから構成されるようにしてある。このラグ溝残壁面部4azは、第2稜線Rにおけるタイヤ法線方向に対する角度を0°からブロック側に45°傾斜させた範囲(0?45°)にするのが操安性と排水性の両立の点からよい。」
(1e)
「【0023】
また、傾斜面5は、上述した平面状に代えて、図3に示すように、ブロック表面4bのエッジ部4xのエッジがジグザグ状となるような、凹凸がタイヤ幅方向に並ぶ凹凸面にしてもよく、これによりエッジ効果を高めて、氷雪路における制駆動性を高めることができる。」
(1f)
「【0025】
両エッジ部4xを上記傾斜面5で面取りすることにより、蹴り出し側と踏み込み側のエッジ部における接地圧差を一層低減して、ヒールアンドトウ摩耗の発生をより抑制することができる。このように両エッジ部4xを傾斜面5で面取りする場合には、上述した交点Cの位置としては、両エッジ部4xの各交点Aから各交点Cまでの合計の距離が長さXの50%を超えないようにするのが操安性と排水性の両立の点からよい。
【0026】
図5は、本発明の空気入りタイヤの他の例を示し、上記ラグ溝3をタイヤ周方向Tに対して斜めに配置し、トレッド面1に平行四辺形状のブロック4を区分形成したものである。このようなブロックパターンでも、上記と同様にして一方側のエッジ部4xを傾斜面5で面取りすることにより同様の効果を得ることができる。
【0027】
なお、ここでは、上述した内側周方向溝壁面4cは、ブロック4のタイヤ幅方向一方側に隣接する周方向溝2に面する一方側周方向溝壁面4c、好ましくは面取りするエッジ部4xの鋭角部が位置する側である一方側周方向溝壁面である。また、タイヤ幅方向外側端Bは、第2稜線Rのタイヤ幅方向他方側端Bである。図5の点線で示すように、他方側のエッジ4xも傾斜面5で面取りするようにしてもよく、両交点Cの規定は上記と同様である。」
(1g)
「【0049】
【実施例】
実施例1
タイヤサイズを205/65R15で共通にし、ブロックの一方側のエッジ部を傾斜面で面取りした図1に示す構成を有する本発明タイヤ1,2と、傾斜面の面取りに代えて、エッジ部に沿って同じ幅で面取りした従来タイヤ1とをそれぞれ作製した。
【0050】
本発明タイヤ1における交点Cは、第3稜線の長さXの10%に位置し、また本発明タイヤ2は20%である。従来タイヤ1の面取り幅は1mmである。
【0051】
これら各試験タイヤをリムサイズ15×6Jのリムに装着し、空気圧を200kPa にして排気量2000ccの乗用車(前輪駆動)の前輪に取り付け、以下に示す測定方法により、排水性能、騒音性能、及び耐ヒールアンドトウ摩耗性の評価試験を行ったところ、表1に示す結果を得た。なお、本発明タイヤ1,2は傾斜面で面取りしたエッジ部をブロックの踏み込み側となるようにして車両に装着した。」
(1h)
「【0057】
実施例2
タイヤサイズを実施例1と同じにし、一方側のエッジ部を傾斜面で面取りした図6のブロックを使用したブロックパターンを有する本発明タイヤ3,4と、傾斜面の面取りに代えて、エッジ部に沿って同じ幅で面取りした従来タイヤ2とをそれぞれ作製した。
【0058】
本発明タイヤ3における交点Ca1,Canはそれぞれ10%の所に位置し、また本発明タイヤ4はそれぞれ20%である。従来タイヤ2の面取り幅は1mmである。
【0059】
これら各試験タイヤを実施例1と同様にして乗用車に取り付け、実施例1に示す測定方法により排水性能、騒音性能、及び耐ヒールアンドトウ摩耗性(耐偏摩耗性)の評価試験を行ったところ、表2に示す結果を得た。なお、表2における各値は、従来タイヤ2を100とする指数値である。」

(2)刊行物に記載された発明
ア.
タイヤ(特にタイヤのトレッド面)が、横方向及び周方向を有することは技術常識である。
イ.
図1?2から、ラグ溝3は、面取り、所定の深さと幅、及びラグ溝壁面4aを有していることが看取される。
ウ.
上記(1)(1a)?(1h)、図1における従来タイヤ(上記(1g))及び図2並びに上記ア.?イ.から、刊行物には、次の発明(以下、引用発明」という。)が記載されているものと認められる。
[引用発明]
「横方向、及び周方向を有するタイヤであって、
該タイヤは、トレッド面1には、タイヤ幅方向に沿って延在するラグ溝3がタイヤ周方向Kに所定のピッチで配置され、それぞれの前記ラグ溝3は、傾斜面5の面取りに代えて、ブロック4の一方側のエッジ部に沿って同じ幅で面取りを有し、前記ラグ溝3は、所定の深さと幅、及びラグ溝壁面4aを有し、前記タイヤは乗用車用タイヤである、タイヤ。」

5.対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明とを対比する。
ア.
引用発明の「トレッド面1」は、トレッドの外面であり、タイヤの外周の面であるから、本願発明のタイヤの「外周部」に相当する。
イ.
タイヤの「横方向」は「タイヤ幅方向」を意味しており、これらの方向は、タイヤの「タイヤの回転軸の方向」と同じであるところ、引用発明の「タイヤ幅方向に沿って延在するラグ溝3」は、タイヤの回転軸の方向に概ね延びているといえる(図1も参照)から、本願発明の「側方溝102」の定義(本願明細書の段落【0014】の「側方溝102は、タイヤの回転軸に平行である、タイヤの側方方向すなわち軸方向Lに概して延びているため、そう称されている。」という記載を参照)と合致しており、本願発明の「横方向に延びる側方の溝」に相当する。
ウ.
上記ア.及びイ.から、引用発明の「トレッド面1には、タイヤ幅方向に沿って延在するラグ溝3がタイヤ周方向Kに所定のピッチで配置され」ることは、本願発明の「タイヤは、外周部と、該外周部上に配置され、横方向に延びる側方の溝とを有するトレッドを有」することに相当する。
エ.
図1?5及び4.(1)(1g)及び(1h)を参照すると、引用発明の「ラグ溝3」は、排水機能を備えた直線状の経路を構成していることが明らかであること、及び、「スイープ軸」の定義(本願明細書の段落【0020】の「スイープ軸すなわちスイープ経路114」という記載)から、引用発明の「ラグ溝3」は、直線状のスイープ経路を構成して、直線の「スイープ軸」を備えているといえる。
オ.
引用発明の各ラグ溝3は、溝幅が一定であることが明らかである(図1?5を参照)から、上記エ.で述べた「スイープ軸」と、面取りされる前のブロック4のエッジとは平行であり、「エッジ部に沿って同じ幅で面取り」をすれば、その面取りは、エッジと平行、すなわち、「スイープ軸」と平行であるといえるから、引用発明の「ラグ溝3は、傾斜面5の面取りに代えて、ブロック4の一方側のエッジ部に沿って同じ幅で面取りを有し」ていることは、本願発明の「側方の溝は、前記溝が前記タイヤの前記外周部と交差する箇所に見られる少なくとも1つの第1の面取り部を有し、前記少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であ」ることに相当する。
このことについて、以下、詳述する。
(ア)
図1では、ブロック4の一方側のエッジ部4xに沿って平面状の傾斜面5で面取りがされている。
(イ)
「エッジ部4x」は、「一方側のラグ溝3に面するブロック4のラグ溝壁面4aとブロック表面4bとが接する一方側のエッジ部4x」であると、また、「第2稜線R」は、「ラグ溝壁面4aとブロック表面4bとが接する第2稜線R」であると、それぞれ定義されている(刊行物の段落【0017】を参照)ところ、図1及び図2(a)から、面取りした面が沿うことになる、面取り前のエッジ部4xは、第2稜線Rと等しいといえる。ここで、「ブロック表面4b」は、「トレッド面1」(外周部)でもある。
(ウ)
面取りがされる前のブロック4自体の形状は、ショルダー部のブロックを除き(図2(b)のブロックを除き)、図2(a)のように、ラグ溝壁面4a及び第2稜線Rを含む、周方向及び幅方向に対称な、立方体形状であるといえる。
(エ)
ラグ溝3の幅は一定であるから(図1?5を参照)、ラグ溝3のスイープ軸(上記エ.を参照)は、上記(イ)及び(ウ)から、ラグ溝壁面4aと平行であり、面取り前のエッジ部4x(第2稜線R)に対しても平行であるといえる。
(オ)
引用発明(刊行物に記載の従来タイヤ)の面取りは、図1及び図2(a)の「傾斜面5の面取りに代えて、ブロック4の一方側のエッジ部に沿って同じ幅で面取り」したものであり、エッジ部に沿って同じ幅で面取りした面取り面は、立方体形状の一辺であるエッジ部、すなわち、面取り前のエッジ部4x(第2稜線R)に対して平行となるから、上記(エ)から、ラグ溝3のスイープ軸に対しても平行であるといえる。
(カ)
上記(イ)及び(オ)から、引用発明の「ラグ溝3は、傾斜面5の面取りに代えて、ブロック4の一方側のエッジ部に沿って同じ幅で面取りを有し」ていることは、本願発明の「側方の溝(ラグ溝3)は、前記溝(ラグ溝3)が前記タイヤの前記外周部(トレッド面1、すなわち、ブロック表面4b)と交差する箇所(エッジ部4x(第2稜線R))に見られる少なくとも1つの第1の面取り部を有し、前記少なくとも1つの第1の面取り部は該溝(ラグ溝3)のスイープ軸に平行であ」ることに相当する。
カ.
引用発明の「ラグ溝壁面4a」は、本願発明の「側壁」に相当すること、及び、上記オ.から、「側方の溝(ラグ溝3)」について、引用発明の「それぞれの前記ラグ溝3は、傾斜面5の面取りに代えて、ブロック4の一方側のエッジ部に沿って同じ幅で面取りを有し、前記ラグ溝3は、所定の深さと幅、及びラグ溝壁面4aを有」することと、本願発明の「それぞれの側方の溝は、前記溝が前記タイヤの外周部と交差する箇所に見られる少なくとも1つの第1の面取り部を有し、前記少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であり、前記溝は、所定の深さと幅、及び所定の抜け勾配を有する側壁を有し、前記溝の前記幅は2mmから4mmの範囲にあり、前記溝は、前記第1の面取り部の反対側に第2の面取り部を有する」こととは、「それぞれの側方の溝は、前記溝がタイヤの外周部と交差する箇所に見られる少なくとも1つの第1の面取り部を有し、前記少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であり、前記溝は、所定の深さと幅、及び側壁を有」することの限りで共通する。

以上より、本願発明と刊行物に記載の発明と一致点及び相違点は、次のとおりである。
<一致点>
「横方向、及び周方向を有するタイヤであって、
該タイヤは、外周部と、該外周部上に配置され、横方向に延びる側方の溝とを有するトレッドを有し、それぞれの側方の溝は、前記溝がタイヤの外周部と交差する箇所に見られる少なくとも1つの第1の面取り部を有し、前記少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であり、前記溝は、所定の深さと幅、及び側壁を有し、前記タイヤは乗用車用タイヤである、タイヤ。」
<相違点1>
「タイヤ」が、本願発明は、「雪上トラクションが改善される」のに対して、引用発明は、そのように特定されていない点。
<相違点2>
「側方の溝」の「側壁」が、本願発明では、「所定の抜け勾配を有する」のに対して、引用発明では、そのように特定されていない点。
<相違点3>
「側方の溝」に関して、本願発明では、「溝の前記幅は2mmから4mmの範囲にあり」、「溝は、前記第1の面取り部の反対側に第2の面取り部を有する」のに対して、引用発明では、側方の溝がそのように特定されていない点。

(2)判断
ア.相違点について
以下、相違点について検討する。
<相違点1について>
(ア)
引用発明の「タイヤ」は、刊行物における従来タイヤではあるが、雪上での使用を想定している実施例(刊行物の本発明タイヤ1?4)と比較するものである(上記4.(1)(1e)、(1g)及び(1h)を参照)から、同様に雪上での使用を想定しているものと認められ、「エッジ部を面取りしてエッジ部剛性を高めることで」、「エッジ部と路面との滑りが抑制され」るので(上記4.(1)(1b)及び(1c)を参照)、面取りされていないものと比べると、トラクションについては改善がされているといえる。
(イ)
そうすると、引用発明の「タイヤ」は、本願発明の「雪上トラクションが改善され」る「タイヤ」に相当するといえるから、相違点1は、実質的には相違点ではない。
(ウ)
仮に、相違点1が、実質的な相違点であったとしても、引用発明の「タイヤ」は、トラクションが改善されており、それは雪上でも機能するといえるから、刊行物の実施例のタイヤと同様に雪上で使用するようにすることで、上記相違点1に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。
<相違点2について>
(ア)
タイヤのトレッド部に形成される溝の側壁に抜け勾配を設けることは、例えば、特開平3-186405号公報(第2?3図を参照)、特開2001-163013号公報(段落【0005】、【0028】、【0029】、【0042】及び図3?7を参照)に示されるように、タイヤの製造工程における周知技術である。
(イ)
したがって、タイヤの製造工程等を考慮して、引用発明の「側方の溝」の「側壁」を「所定の抜け勾配を有する側壁」とすることで、上記相違点2に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。
<相違点3について>
(ア)
特開平3-167008号公報(第1頁右下欄第3?6行、第3頁左上欄第16?19行、第3頁右下欄第19行?第4頁左上欄第6行及び第3図等参照)には、一般路及び氷雪路用のタイヤにおいて、タイヤの横方向に延びる側方の溝の幅として2?3mmのものが記載されており、特開2006-103522号公報(段落【0001】、【0024】、【0025】及び図1等参照)には、氷雪路用のタイヤにおいて、タイヤの横方向に延びる側方の溝の幅として2?4mmのものが記載されており、特開2006-123760号公報 (段落【0003】、【0016】、【0017】、【0019】及び図1等参照)には、空気入りタイヤにおいて、タイヤの横方向に延びる側方の溝の幅として3?5mmのものが記載されている。
(イ)
上記(ア)から、タイヤの横方向に延びる側方の溝の幅として2?4mm程度の幅のものを採用することは、氷雪上で使用するタイヤを含めタイヤの種類を問わず、タイヤの分野においては周知技術といえる。
(ウ)
また、トラクションの改善を目的として、ラグ溝の周方向の両側に面取り部を備えることも、例えば、刊行物(4.(1f)及び図4?5を参照)、特開平3-186405号公報(第2頁右上欄第1?13行、同頁左下欄第10?16行、同頁右下欄第4?14行及び第1図を参照)に示されるように、タイヤの分野においては周知技術といえる。
(エ)
上記(イ)及び(ウ)の周知技術は、いずれもタイヤの分野における周知技術であり、当該各周知技術を、トラクションを改善する引用発明のタイヤにそれぞれ適用して、引用発明の「側方の溝」(側方のラグ溝3)を、「溝の幅は2mmから4mmの範囲にあり」、「溝は、第1の面取り部の反対側に第2の面取り部を有する」ように構成することで、上記相違点3に係る本願発明の構成を想到することは、当業者が容易になし得たといえる。

イ.作用効果について
本願発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知技術から予測される範囲内のものにすぎず、格別に顕著な作用効果ということはできない。

ウ.審判請求書における主張について
請求人は、審判請求書において、
「(2)引用文献1に記載された発明では、排水性と耐摩耗性を向上しながら、騒音性能を改善することを目的としている(段落0005)。そして、引用文献1に記載された発明では、「トレッド面にタイヤ周方向に延在する周方向溝とタイヤ周方向に所定のピッチで配置したタイヤ幅方向に延びるラグ溝とによりブロックを区分形成した空気入りタイヤにおいて、前記ラグ溝に面するブロックのラグ溝壁面とブロック表面とが接する少なくとも一方のエッジ部を、前記ラグ溝壁面と前記ブロックのタイヤ幅方向内側に隣接する周方向溝に面する内側周方向溝壁面とが接する第1稜線の溝底点と、前記ラグ溝壁面とブロック表面とが接する第2稜線のタイヤ幅方向外側端とを結ぶ線を含み、前記ブロック表面と前記内側周方向溝壁面とが接する第3稜線と交差する傾斜面で面取り」するという構成を有する(請求項1)。言い換えると、引用文献1に記載された発明では、図2に示すように、ブロック4の壁面を三角錐状に面取りしているのである。
(3)ここで、引用文献1に記載された発明では、ブロック4の壁面を三角錐状に面取りしているため、図2に示されているように、点Bと点Cとを結ぶ直線BCは溝とは平行には成り得ない。すなわち、引用文献1に記載された発明では、本願発明の「少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であ」るという構成は開示も示唆もされていない。このように、引用文献1に記載された発明は、本願発明と目的も構成も異なるものである。
(4)また、上述の通り、引用文献1に記載された発明では、排水性と耐摩耗性を向上しながら、騒音性能を改善することを目的としており、この目的を達成するために、ブロック4の壁面を三角錐状に面取りしているのであるから、その構成を本願発明のように、「少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であ」るように変更することはあり得ない。
(5)さらに、引用文献1に記載された発明では、段落0023にされているように、ブロック表面4bのエッジ部4xのエッジをジグザグ状とすることによりエッジ効果を高めて氷雪路における制動動作を高めることができることが記載されている。したがって、引用文献1には、すでにエッジをジグザグ状とするという氷雪路における制動動作を向上する方法が示唆されている以上、本願発明のような構成とする必要はない。
(6)以上の通り、引用文献1には、本願発明の「少なくとも1つの第1の面取り部は該溝のスイープ軸に平行であ」るという構成は開示も示唆もされておらず、さらに、引用文献1に記載された発明を本願発明のような構成に変更することはあり得ない。よって、本願発明は引用文献1?6に基づき当業者が容易に想到できたものではない。」
と主張している。
しかしながら、当審は、平成28年1月21日付けの拒絶の理由(2.(カ)及び「刊行物に記載の発明」を特に参照)で示したとおり、刊行物に記載の「従来技術」を、刊行物に記載の発明として認定しているところ、その認定に誤りはないのだが(上記4.(2)を参照)、出願人は、当該認定を誤認している、又は、充分に理解していないと考えられ、上記5.(1)エ.及びオ.で述べたとおり、引用発明は、少なくとも1つの第1の面取り部は側方の溝のスイープ軸に平行であるから、上記(2)?(4)及び(6)の主張は採用できないし、上記5.(2)ア.<相違点1について>(ア)及び(イ)で述べたとおり、引用発明は、スイープ軸に平行である面取り部により、雪上トラクションが改善されているから、上記(5)の主張も採用できない。

6.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明(本願発明)は、その出願前日本国内において頒布された刊行物に記載された発明(引用発明)及び周知技術に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-03 
結審通知日 2016-10-05 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2012-541058(P2012-541058)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 莊司 英史  
特許庁審判長 島田 信一
特許庁審判官 氏原 康宏
出口 昌哉
発明の名称 雪上性能改善用の面取り部を有する側方溝を備えたタイヤ  
代理人 井野 砂里  
代理人 松下 満  
代理人 松下 満  
代理人 井野 砂里  
代理人 辻居 幸一  
代理人 辻居 幸一  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 弟子丸 健  
代理人 倉澤 伊知郎  
代理人 弟子丸 健  
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