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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 B60C
管理番号 1326207
審判番号 不服2016-55  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-04 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2014-104204号「タイヤ」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 8月14日出願公開、特開2014-144777号、請求項の数(6)〕について、次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は、特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、2010年1月19日(優先権主張 2009年1月20日 日本国)を国際出願日とする特願2010-547482号の一部を平成26年5月20日に新たな特許出願としたものであって、同日に上申書が提出され、平成27年2月24日付けで拒絶理由が通知され、同年4月30日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、同年9月25日付けで拒絶査定がされ、平成28年1月4日付けで拒絶査定不服審判が請求され、その後、当審において同年10月25日付けで拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)が通知され、同年12月28日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。

第2 本願発明
本願の特許を受けようとする発明は、平成28年12月28日付けでなされた手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1?6に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は以下のとおりである。

「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝と、前記周方向主溝で区画された複数のブロックと、をトレッドに備え、
前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端し、前記オープンサイプよりも深く形成されたクローズドサイプと、が設けられていて、
前記トレッドのタイヤ幅方向中央部分には、タイヤ赤道面に沿ってジグザグ状に延びる周方向サイプが形成され、
タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられており、
タイヤ赤道面に最も近い位置に配置された前記ラグ溝に設けられた前記連結部は、前記周方向サイプ側に形成されているタイヤ。」

第3 原査定の理由について
1 原査定の理由の概要
この出願の平成27年4月30日付けの手続補正により補正された請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物等
引用文献1: 特開2006-103464号公報
引用文献2: 特開平10-203121号公報
引用文献3: 特開2003-118320号公報
引用文献4: 特開平08-192607号公報
引用文献5: 特開平11-129709号公報

引用文献1(【0023】-【0024】、【0027】-【0028】、図2等)、引用文献2(【0007】、【0010】-【0011】、【0016】、図1及び図2等)には、複数のブロックをトレッドに備え、ブロックには、タイヤ幅方向に延びてブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端するクローズドサイプと、が設けられているタイヤ、及び、氷上性能や耐偏摩耗性という課題が開示されている。
引用文献3には、ブロックの間に連結部を設ける点、氷上性能、耐偏摩耗性能という課題が開示されている(【請求項1】、【0001】等)。
引用文献4には、偏摩耗低減という課題(【0001】)が開示されるタイヤにおいて、オープンサイプはブロックの高さ(主溝深さ)の1/2、クローズドサイプはブロックの高さ(主溝深さ)と同じ深さとすること(【0016】)が開示されている。
引用文献5には、サイプの維持とブロック剛性の確保を考慮しつつ、オープンサイプ(一次サイプ)とクローズドサイプ(二次サイプ)の深さを異ならせてもよいこと、クローズドサイプ(二次サイプ)はオープンサイプ(一次サイプ)の80?120%の範囲に設定すること、が開示されている。

引用文献1又は2に記載のタイヤにおいて、氷上性能、耐偏摩耗性能を考慮して引用文献3に記載された連結部を設けること、及び、偏摩耗低減やサイプ機能の維持、剛性確保を考慮して、引用文献4-5の開示に照らして本願発明と同様にオープンサイプとクローズドサイプの深さ寸法を定めることは、いずれも当業者にとって容易である。
そうすると、本願の請求項1-2に係る発明は、引用文献1-5に記載された発明から、当業者が容易に想到し得たものである。

2 原査定の理由の判断
(1) 刊行物等の記載事項
ア 引用文献1には、次の事項が記載されている(下線は当審で付与。以下同様。)。
(1a) 「【0001】
本発明は、走行性能を向上させた空気入りタイヤに関し、更に詳細には、特にトラックやバスに用いるのに最適な空気入りタイヤに関する。」

(1b) 「【0019】
以下、実施形態を挙げ、本発明の実施の形態について説明する。図1に示すように、本発明の一実施形態に係る空気入りタイヤ10は、バスやトラックに用いる空気入りタイヤであって、一対のビードコア11からトロイド状に延びるカーカス12と、カーカス12のクラウン部の外側に設けられたベルト14と、ベルト14の外側に設けられ、サイドウォール部相互間にわたりトロイド状に連なるトレッド部16と、を有する。
【0020】
図2に示すように、トレッド部16の中央領域19には、タイヤ赤道面CLに対して対称で、タイヤ周方向に延びる中央主溝20L、20Rが形成されている。中央主溝20L、20Rのタイヤ幅方向外側には、それぞれ、タイヤ周方向に延びるショルダ主溝22L、22Rが形成されている。このように、トレッド部16にはタイヤ周方向に沿った4本の主溝が形成されている。なお、本実施形態では、この4本の主溝の深さは同一にされている。
【0021】
また、トレッド部16には多数本のラグ溝24が形成されている。ラグ溝24の両端は、これら4本の主溝のうちの2本にそれぞれ開口している。この結果、トレッド部16には、主溝とラグ溝とによって区画されてなる多数のブロック26が形成され、この多数のブロック26は5列のブロック列28を形成している。
【0022】
本実施形態では、各ブロック列毎にラグ溝24のタイヤ周方向位置が順次ずれており、タイヤ幅方向位置が同じとなるラグ溝が形成されない構成にされている。
【0023】
各ブロック26には、ラグ溝24に沿った3本のサイプ30が形成されている。サイプ30のうちタイヤ周方向両外側に位置する2本のサイプ30Cはクローズドサイプである。クローズドサイプの間に位置する1本のサイプ30Mはオープンサイプであり、両端がブロック壁面26Wに開口している。
【0024】
サイプ30C、30Mは何れもジグザグ状に延びており、サイプ30C、30Mのサイプ面は、傾斜方向が交互に異なる面が連続したジグザグ状に延びる面となっている。サイプ30C、30Mのサイプ深さは、主溝の深さの1/2以上であり、サイプ30Cのサイプ長さLはブロック26のブロック幅Bの1/2以上である。」

(1c) 「【0027】
以上説明したように、本実施形態では、サイプ30のうちタイヤ周方向両外側の2本のサイプ30Cはクローズドサイプであり、このクローズドサイプの間に位置する1本のサイプ30Mはオープンサイプであるので、エッジ成分の増加により氷上性能等の走行性能を大幅に向上させることができる。
【0028】
また、サイプ30C、30Mのサイプ面は、傾斜方向が交互に異なる面が連続したジグザグ状に延びる面となっており、しかも、サイプ30C、30Mのサイプ深さは、主溝の深さの1/2以上であり、サイプ30Cのサイプ長さはブロック26のブロック幅の1/2以上である。従って、ブロック剛性の確保を充分に図ることができると共に、ブロック耐久性及び耐偏摩耗性が向上する。これにより、走行性能の向上とブロック剛性の確保とを両立させた空気入りタイヤ10とすることができる。」

(1d) 引用文献1の図2には以下の図が記載されている。



イ 引用文献2には、次の事項が記載されている。
(2a) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ブロックパターンを有する重荷重用スタッドレスタイヤに関し、さらに詳しくは、耐偏摩耗性を確保しながら、氷上性能を向上するようにした重荷重用スタッドレスタイヤに関する。」

(2b) 「【0009】
【発明の実施の形態】以下、本発明の構成について添付の図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の実施形態からなる重荷重用スタッドレスタイヤのトレッドパターンを例示するものである。図1において、トレッド1にはタイヤ周方向に延びる複数本の主溝2と、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝3が設けられており、これら主溝2及び横溝3によって複数のブロック4が分割形成されている。
【0010】図2のブロック拡大図に示すように、ブロック4のタイヤ周方向中央部には、タイヤ幅方向に延びて両端部が両側の主溝2に連通する1本の開口サイプ5が設けられている。この開口サイプ5は少なくとも1本設けてあればよいが、2本を超えるとブロック剛性の低下が過大になるので、その上限を2本とすることが好ましい。
【0011】また、開口サイプ5のタイヤ周方向前後には、それぞれタイヤ幅方向に延びて両端部が主溝2に連通しないで閉塞した2本の閉口サイプ6が設けられている。これら閉口サイプ6の長さは、タイヤ周方向中央側から前後方向に向けて徐々に短くなっている。すなわち、タイヤ周方向中央側に位置する閉口サイプ6の長さW1 よりも、その外側に位置する閉口サイプ6の長さW2 のほうが短くなっている。」

(2c) 「【0016】従って、ブロック4に開口サイプ5と閉口サイプ6とを組み合わせて上述のように配置することにより、耐偏摩耗性を確保しながら、高い氷上性能を得ることが可能になる。なお、本発明において、上述の実施形態では開口サイプ5及び閉口サイプ6の平面視形状が直線状になっているが、これらの平面視形状は特に限定されることはなく、ジグザグ状や波状に形成するようにしてもよい。」

(2d) 引用文献2の図1?図3にはそれぞれ以下の図が記載されている。





ウ 引用文献3には、次の事項が記載されている。
(3a) 「【0006】しかしながら、高荷重で使用される重荷重用空気入りタイヤにあっては、トレッド接地面に加わる高い荷重、及びそれに伴うブロックの激しい動きにより、サイピングの数を多くし、深さを増大させることは、氷上走行性能を高める反面、偏摩耗、トレッドの一部が欠けるクラックの発生原因となる。」

(3b) 「【0036】このような連結部Cを各ブロックB間に配置することにより、ブロックの周方向の動きを制御して偏摩耗、特にブロックのタイヤ周方向の一端が早期に摩耗して、タイヤを軸方向外方から見たとき鋸刃状になるヒールアンドトウ摩耗(以下H/T摩耗という)を防止することができる。さらに、周方向長さ及び軸方向巾の短い第1の連結部C1は、トレッド表面5Sに、タイヤ半径方向の高荷重とともにタイヤ周方向の大きな制動力または駆動力が加わったとき、ブロック間が接触して過度の変位を防止することにより、偏摩耗やブロック欠けを防止できる。周方向長さの大きい第2の連結部C2は、横溝gの容積を保持して雪柱せん断力を確保する。」

(3c) 引用文献3の図2には、以下の図が示されている。



(2)刊行物等に記載された発明
ア 引用文献1に記載された発明
引用文献1には、
(ア) 空気入りタイヤに関し(摘示(1a))、
(イ) トレッド部16の中央領域19には、タイヤ赤道面CLに対して対称で、タイヤ周方向に延びる中央主溝20L、20Rと、中央主溝20L、20Rのタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向に延びるショルダ主溝22L、22Rが形成されていること(摘示(1b)【0020】)、
(ウ) トレッド部16には、多数本のラグ溝24が形成され、主溝とラグ溝とによって区画されてなる多数のブロック26が形成されていること(摘示(1b)【0021】)、
(エ) 各ブロック26には、ラグ溝24に沿った3本のサイプ30が形成されており、サイプ30のうちタイヤ周方向両外側に位置する2本のサイプ30Cはクローズドサイプであり、クローズドサイプの間に位置する1本のサイプ30Mはオープンサイプであって両端がブロック壁面26Wに開口していること(摘示(1b)【0023】)、
(オ) サイプ30C、30Mのサイプ深さは、主溝の深さの1/2以上であること(摘示(1b)【0024】)、
が記載されている。
また、引用文献1において、
(カ) 摘示(1d)より、上記「(エ)」の2本のサイプ30Cは、ブロック内で終端していること、
が明らかである。

これらのことから、引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「トレッド部16の中央領域19には、タイヤ赤道面CLに対して対称で、タイヤ周方向に延びる中央主溝20L、20Rと、中央主溝20L、20Rのタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向に延びるショルダ主溝22L、22Rが形成され、
トレッド部16には、多数本のラグ溝24が形成され、主溝とラグ溝とによって区画されてなる多数のブロック26が形成され、
各ブロック26には、ラグ溝24に沿った3本のサイプ30が形成されており、サイプ30のうちタイヤ周方向両外側に位置し、ブロック内で終端している2本のサイプ30Cはクローズドサイプであり、クローズドサイプの間に位置する1本のサイプ30Mはオープンサイプであって両端がブロック壁面26Wに開口しており、
サイプ30C、30Mのサイプ深さは、主溝の深さの1/2以上である、
空気入りタイヤ。」

イ 引用文献2に記載された発明
引用文献2には、
(ア) 重荷重用スタッドレスタイヤに関し(摘示(2a))、
(イ)
a トレッド1には、タイヤ周方向に延びる複数本の主溝2が設けられていること(摘示(2b)【0009】)、
b トレッド1には、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝3が設けられていること(摘示(2b)【0009】)、
c 主溝2及び横溝3によって複数のブロック4が分割形成されていること(摘示(2b)【0009】)、
(ウ) ブロック4のタイヤ周方向中央部には、タイヤ幅方向に延びて両端部が両側の主溝2に連通する1本の開口サイプ5が設けられていること(摘示(2b)【0010】)、
(エ) 開口サイプ5のタイヤ周方向前後には、それぞれタイヤ幅方向に延びて両端部が主溝2に連通しないで閉塞した2本の閉口サイプ6が設けられていること(摘示(2b)【0011】)、
が記載されている。
また、引用文献2において、
(オ)
a 技術常識に照らして、摘示(2d)の図1の中心に記載される一点鎖線は、タイヤ赤道面を表すものであること、
b 摘示(2d)の図1において、赤道面にも主溝2が設けられていること、
c 上記「a」、「b」より、上記「(イ)a」の主溝2は、タイヤ赤道面及びタイヤ赤道面の両側に形成されたものであること、

(カ) 摘示(2d)の図3において、開口サイプ5と閉口サイプ6の深さは等しいこと、
が明らかである。

これらのことから、引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
「トレッド1には、タイヤ赤道面及びタイヤ赤道面の両側にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝2が設けられ、
トレッド1には、タイヤ幅方向に延びる複数本の横溝3が設けられ、
主溝2及び横溝3によって複数のブロック4が分割形成され、
ブロック4のタイヤ周方向中央部には、タイヤ幅方向に延びて両端部が両側の主溝2に連通する1本の開口サイプ5が設けられ、
開口サイプ5のタイヤ周方向前後には、それぞれタイヤ幅方向に延びて両端部が主溝2に連通しないで閉塞した2本の閉口サイプ6が設けられ、
開口サイプ5と閉口サイプ6の深さは等しい、
重荷重用スタッドレスタイヤ。」

(3)対比・判断
ア 引用発明1を主引用例とする場合
(ア) 本願発明と引用発明1を対比する。
a
(a) 引用発明1の「空気入りタイヤ」は本願発明の「タイヤ」に相当し、以下同様に、「トレッド部16」は「トレッド」に、「タイヤ赤道面CL」は「タイヤ赤道面」に、「タイヤ周方向に延びる中央主溝20L、20R」及び「タイヤ周方向に延びるショルダ主溝22L、22R」は「複数の周方向主溝」に、「多数のブロック26」は「複数のブロック」に、「ラグ溝24」は「ラグ溝」に相当する。
(b) 引用発明1の「ブロック内で終端している2本のサイプ30Cはクローズドサイプであり」、「1本のサイプ30Mはオープンサイプであ」るから、引用発明1の「サイプ30M」は本願発明の「オープンサイプ」に相当し、同様に「サイプ30C」は「クローズドサイプ」に相当する。
b 上記「a」の相当関係より、
(a) 引用発明1の「トレッド部16の中央領域19には、タイヤ赤道面CLに対して対称で、タイヤ周方向に延びる中央主溝20L、20Rと、中央主溝20L、20Rのタイヤ幅方向外側には、タイヤ周方向に延びるショルダ主溝22L、22Rが形成され」ることは、本願発明の「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝」「をトレッドに備え」ることに相当する。
(b) 引用発明1の「主溝とラグ溝とによって区画されてなる多数のブロック26が形成され」ることは、本願発明の「周方向主溝で区画された複数のブロック」「をトレッドに備え」ることに相当する。
(c) 引用発明1の「各ブロック26には、ラグ溝24に沿った3本のサイプ30が形成されており、サイプ30のうちタイヤ周方向両外側に位置し、ブロック内で終端している2本のサイプ30Cはクローズドサイプであり、クローズドサイプの間に位置する1本のサイプ30Mはオープンサイプであって両端がブロック壁面26Wに開口して」いることは、本願発明の「前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端し、前記オープンサイプよりも深く形成されたクローズドサイプと、が設けられてい」ることと、「前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端したクローズドサイプと、が設けられてい」る限度で一致する。
(d) 引用発明1の「多数本のラグ溝24」は、「多数のブロック26」を「主溝とラグ溝とによって区画」するものであるから、引用発明1において「多数本のラグ溝24が形成され」ることは、本願発明の「タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられて」いることと、「タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝が設けられて」いる限度で一致する。

(イ) 以上によれば、本願発明と引用発明1との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝と、前記周方向主溝で区画された複数のブロックと、をトレッドに備え、
前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端したクローズドサイプと、が設けられていて、
タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝が設けられている、
タイヤ。」

[相違点1]
本願発明では、クローズドサイプは「オープンサイプよりも深く形成された」ものであるのに対し、引用発明1では、そのように特定されていない点。
[相違点2]
本願発明では、「トレッドのタイヤ幅方向中央部分には、タイヤ赤道面に沿ってジグザグ状に延びる周方向サイプが形成され」ており、さらに、タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、「高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられており、タイヤ赤道面に最も近い位置に配置された前記ラグ溝に設けられた前記連結部は、前記周方向サイプ側に形成されている」のに対し、引用発明1ではそのような構成を備えていない点。

(ウ) 判断
a 事案に鑑み、相違点2について判断する。
引用文献1には、タイヤ赤道面に沿って周方向サイプを設けること、及び、ラグ溝24に連結部を設けることは記載も示唆もされていない。また、引用文献2、4及び5には周方向サイプを設けること、及び、連結部を設けることは記載も示唆もされていないし、引用文献3(摘示(3b)及び摘示(3c)の図2参照)には連結部Cを設けることが記載されているものの、引用文献3には、周方向サイプを設けることは記載も示唆もされていないし、当該連結部Cは「タイヤ赤道面に最も近い位置に配置された前記ラグ溝に設けられた前記連結部は、前記周方向サイプ側に形成されている」という構成を備えていない点で相違点2に係る本願発明の構成と相違するから、引用発明1に引用文献3の連結部Cを適用しても相違点2に係る本願発明の構成に至らないことは明らかである。
また、当該相違点2に係る本願発明の構成が、当業者が適宜なし得る設計変更である、とする根拠もない。
そして、本願発明は、当該相違点2に係る本願発明の構成により、「タイヤ赤道面に沿ってジグザグ状に延びる周方向サイプが形成され」たタイヤにおいて、明細書の【0030】に記載される、「第1の連結部40のタイヤ幅方向長さは大ブロック部27の隣接する部分のタイヤ幅方向長さよりも短く、第2の連結部44のタイヤ幅方向長さは大ブロック部35の隣接する部分のタイヤ幅方向長さよりも短くなっているので、第1のラグ溝20及び第2のラグ溝28のエッジ成分を発揮させることができる。」という顕著な効果を奏するものといえる。

b 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明1及び引用文献1?5の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

イ 引用発明2を主引用例とする場合
(ア) 本願発明と引用発明2を対比する。
a 引用発明2の「重荷重用スタッドレスタイヤ」は本願発明の「タイヤ」に相当し、以下同様に、「トレッド1」は「トレッド」に、「タイヤ赤道面」は「タイヤ赤道面」に、「タイヤ周方向に延びる複数本の主溝2」は「周方向主溝」に、「複数のブロック4」は「複数のブロック」に、「開口サイプ5」は「オープンサイプ」に、「閉口サイプ6」は「クローズドサイプ」に、「横溝3」は「ラグ溝」に相当する。
b 上記「a」の相当関係より、
(a) 引用発明2の「トレッド1には、タイヤ赤道面及びタイヤ赤道面の両側にタイヤ周方向に延びる複数本の主溝2が設けられ」ることは、本願発明の「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝」「をトレッドに備え」ることに相当する。
(b) 引用発明2の「主溝2及び横溝3によって複数のブロック4が分割形成され」ることは、本願発明の「周方向主溝で区画された複数のブロック」「をトレッドに備え」ることに相当する。
(c) 引用発明2の「ブロック4のタイヤ周方向中央部には、タイヤ幅方向に延びて両端部が両側の主溝2に連通する1本の開口サイプ5が設けられ、開口サイプ5のタイヤ周方向前後には、それぞれタイヤ幅方向に延びて両端部が主溝2に連通しないで閉塞した2本の閉口サイプ6が設けられ」ることは、本願発明の「前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端し、前記オープンサイプよりも深く形成されたクローズドサイプと、が設けられてい」ることと、「前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端したクローズドサイプと、が設けられてい」る限度で一致する。
(d) 引用発明2の「複数本の横溝3」は、「主溝2及び横溝3によって複数のブロック4が分割形成され」るものであるから、引用発明2において「複数本の横溝3が設けられ」ることは、本願発明の「タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられて」いることと、「タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝が設けられて」いる限度で一致する。

(イ) 以上によれば、本願発明と引用発明2との一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝と、前記周方向主溝で区画された複数のブロックと、をトレッドに備え、
前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端したクローズドサイプと、が設けられていて、
タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝が設けられている、
タイヤ。」

[相違点3]
本願発明では、クローズドサイプは「オープンサイプよりも深く形成された」ものであるのに対し、引用発明2では、そのように特定されていない点。
[相違点4]
本願発明では、「トレッドのタイヤ幅方向中央部分には、タイヤ赤道面に沿ってジグザグ状に延びる周方向サイプが形成され」ており、さらに、タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、「高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられており、タイヤ赤道面に最も近い位置に配置された前記ラグ溝に設けられた前記連結部は、前記周方向サイプ側に形成されている」のに対し、引用発明2ではそのような構成を備えていない点。

(ウ) 判断
a 事案に鑑み、相違点4について判断する。
引用文献2には、タイヤ赤道面に沿って周方向サイプを設けること、及び、横溝3に連結部を設けることは記載も示唆もされていない。また、上記「ア(ウ)a」で検討したとおり、引用文献1、4及び5には周方向サイプを設けること、及び、連結部を設けることは記載も示唆もされていないし、引用発明2に引用文献3の連結部Cを適用しても相違点4に係る本願発明の構成に至らないことは明らかである。
また、当該相違点4に係る本願発明の構成が、当業者が適宜なし得る設計変更である、とする根拠もない。
そして、本願発明は、当該相違点4に係る本願発明の構成により、上記「ア(ウ)a」で述べた効果を奏するものといえる。

b 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明2及び引用文献1?5の記載事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえない。

(4) 小括
本願の請求項2?6に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、引用発明1、引用発明2及び引用文献1?5の記載事項に基いて容易に発明をすることができたとはいえない。
よって原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

第4 当審拒絶理由について
1 当審拒絶理由の概要
この出願の平成27年4月30日付けの手続補正により補正された請求項1?6に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。



刊行物等
引用文献A: 特開平11-129709号公報(引用文献5と同じ文献)
引用文献B: 特開2003-118320号公報(引用文献3と同じ文献)
引用文献C: 特開2005-271792号公報
引用文献D: 特開2008-162298号公報

引用文献Aに記載された発明に、引用文献Bに記載された技術及び周知技術を適用して本願の請求項1?6に係る発明に想到することは当業者にとって容易である。

2 当審拒絶理由の判断
本願発明は、平成27年4月30日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項7に係る発明に相当するから、当該拒絶理由は解消したものといえるが、念のため、以下検討する。

(1) 刊行物等の記載事項
引用文献Aには、次の記載がある(下線は当審で付与。以下同様。)。
(Aa) 「【特許請求の範囲】
【請求項1】 タイヤ踏面部に周方向溝と横溝により区画された複数のブロックを有する空気入りタイヤにおいて、上記ブロックが、タイヤ幅方向に延びる1次サイプによりタイヤ周方向両側において分断されており、この1次サイプにより分断された小ブロック内の表面に、上記1次サイプより厚みが薄い2次サイプが形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。

【請求項4】 2次サイプが両端閉塞型のサイプである請求項1、2又は3記載の空気入りタイヤ。」

(Ab) 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は空気入りタイヤにおいて、特に氷上走行性能と、乾燥路面における耐偏摩耗性を高次にバランスよく向上させた空気入りタイヤに関する。

【0008】本発明の課題は、氷上における制動及び加速の両走行性能と乾燥路面における耐偏摩耗性を高次で両立することができ、しかもタイヤ踏面部の路面追従性が優れ、タイヤ耐久性に優れた空気入りタイヤを提供する点にある。」

(Ac) 「【0016】
【発明の実施の形態】図1は本発明タイヤの一実施形態を示すトレッドパターンの概略図である。図1において、1はタイヤ踏面部、2はタイヤ踏面部1に設けられた周方向溝、3はタイヤ踏面部1に設けられた横溝、4はタイヤ踏面部1に周方向溝2と横溝3により区画された複数のブロックである。
【0017】本実施形態のブロックは、タイヤセンター領域においてタイヤ周方向に配列されたセンターブロック列4Cと、タイヤショルダー領域においてタイヤ周方向に配列されたショルダーブロック列4S、4Sと、タイヤセンター領域とタイヤショルダー領域の中間領域に配列された中間ブロック列4M、4Mから構成されている。
【0018】センターブロック列4Cのブロック41は、タイヤ周方向をジグザグ状に延びる2本の周方向溝(主溝)21、22と横溝31、31とにより区画されて構成されている。

【0021】いずれのブロックもタイヤ周方向の中央域にタイヤ幅方向に延びる1次サイプが形成されている。例えばセンターブロック列4Cを例にとって説明すると、1次サイプ5がブロック41の中央領域をジグザグ状に傾斜しながらタイヤ幅方向に延び両側の周方向溝21、22に開口してブロック41をタイヤ周方向両側において分断している。
【0022】そして、1次サイプ5によって分断されたブロック41のタイヤ周方向の両側には、1次サイプ5の厚みより狭い2次サイプ6がジグザグ状に傾斜しながらタイヤ幅方向に延びてそれぞれ2本形成されている。
【0023】この種の2次サイプは、図1に示す様に、いずれのブロックにも形成されており、1次サイプによって分断されたタイヤ周方向の両側に形成されている。
【0024】従って、本実施形態のタイヤの場合、上記ブロックが、タイヤ幅方向に延びる1次サイプ5によりタイヤ周方向両側において分断されているため、一定レベルの氷上性能を発揮した上で、この1次サイプ5により分断された小ブロック41a、41b内の表面に、更に、薄い厚みを有しタイヤ幅方向に延びる2次サイプ6が形成されているので、一層の氷上性能の効果を発揮する。」

(Ad) 「【0034】1次サイプ及び2次サイプの深さについては、周方向溝のうち最も溝の深い主溝の深さの50%未満の場合、走行初期においてタイヤの摩滅によりエッジ効果が消滅するため、氷雪上走行用タイヤの用途から鑑みると、少なくとも50%は必要である。一方、主溝以上の深さを採用することについては、タイヤ寿命の観点から過剰である。従って、1次サイプ及び2次サイプの深さは、主溝深さの50?100%、望ましくは50?90%の範囲に設定することが望ましい。
【0035】但し、1次サイプの深さと2次サイプの深さを必ずしも同一深さに限定する必要性はない。例えば、2次サイプの深さを1次サイプの深さの80?120%の範囲に設定すれば、1次サイプの深さと2次サイプの深さをほぼ同ー深さとした場合と同程度のブロック剛性を確保することが可能である。従って、かかる構成によれば、タイヤの摩滅により、1次サイプと2次サイプが同時に消滅することもないので好適である。
【0036】2次サイプは、前述のサイプ底乃至サイプ端部のクラック発生を抑制する為、ブロック内において閉塞する形状を採用することもできる。むしろ、ブロック剛性の確保の見地からすれば、両端閉塞型サイプを採用したほうが好ましい。エッジ効果についてはエッジ長さの増分が、分断型即ち両端開放型のサイプに対し若干少なくなるものの、開放サイプと閉塞サイプの長さの比を少なくとも80%程度とすれば、開放サイプとほぼ同様なエッジの増分効果を発揮する。また、2次サイプの配置方向は特に限定されるものではない。タイヤ幅方向又はタイヤ周方向に対して平行又は傾斜して配置することができる。なお、1次サイプの配置方向と平行に配置することが好ましい。また、2次サイプは、1次サイプにより分断されたブロックの両側である接地先側若しくは接地後側のいずれか片方に2次サイプを配置することも可能である。」

(Ae) 引用文献Aの図1には、以下の図が示されている。



(2) 引用文献Aに記載された発明
ア 引用文献Aには、
(ア)
タイヤ踏面部に周方向溝と横溝により区画された複数のブロックを有する空気入りタイヤにおいて、上記ブロックが、タイヤ幅方向に延びる1次サイプによりタイヤ周方向両側において分断されており、この1次サイプにより分断された小ブロック内の表面に、上記1次サイプより厚みが薄い2次サイプが形成されている空気入りタイヤ(摘示(Aa)【請求項1】)が記載されており、その具体的な実施の形態として、
(イ)
a タイヤ踏面部1に周方向溝2と横溝3により区画された複数のブロック4を有すること(摘示(Ac)【0016】)、
b センターブロック列4Cのブロック41は、タイヤ周方向をジグザグ状に延びる2本の周方向溝(主溝)21、22と横溝31、31とにより区画されて構成されていること(摘示(Ac)【0018】)、
(ウ)
タイヤ幅方向に延び両側の周方向溝21、22に開口してブロック41をタイヤ周方向両側において分断する1次サイプが形成されていること(摘示(Ac)【0021】)、
(エ)
a 1次サイプ5によって分断されたブロック41のタイヤ周方向の両側には、2次サイプ6がタイヤ幅方向に延びて形成されていること(摘示(Ac)【0022】)、
b 2次サイプの深さは1次サイプの深さの80?120%に設定されること(摘示(Ad)【0035】)、
c 2次サイプは両端閉塞型であること(摘示(Aa)【請求項4】、摘示(Ad)【0036】)、
が記載されており、また、
(オ) 摘示(Ae)より、上記「(イ)」において、
a 2本の周方向溝(主溝)21、22及び横溝31、31はタイヤ踏面部1に設けられていること、
b センターブロック列4Cのブロック41は、タイヤ踏面部1に複数設けられたものであること、
c 技術常識に照らして、摘示(Ae)のセンターブロック列4Cの中心が、タイヤ赤道面をなすものであるから、2本の周方向溝(主溝)21、22は、タイヤ赤道面の両側に形成されたものであること、
が明らかである。

イ これらのことから、引用文献Aには次の発明(以下、「引用発明A」という。)が記載されていると認められる。
「タイヤ赤道面の両側に形成されたタイヤ周方向をジグザグ状に延びる2本の周方向溝21、22と、横溝31、31とをタイヤ踏面部1に設け、
タイヤ踏面部1に設けられた複数のブロック41は、2本の周方向溝21、22と横溝31、31とにより区画されて構成されたものであり、
タイヤ幅方向に延び両側の周方向溝21、22に開口してブロック41をタイヤ周方向両側において分断する1次サイプ5が形成されており、
1次サイプ5によって分断されたブロック41のタイヤ周方向の両側に、両端閉塞型の2次サイプ6がタイヤ幅方向に延びて形成されており、
両端閉塞型の2次サイプ6の深さは1次サイプ5の深さの80?120%に設定された、
空気入りタイヤ。」

(3) 対比・判断
ア 本願発明と引用発明Aとを対比する。
(ア) 引用発明Aの「空気入りタイヤ」は本願発明の「タイヤ」に相当し、以下同様に、「タイヤ赤道面」は「タイヤ赤道面」に、「2本の周方向溝21、22」は「複数の周方向主溝」に、「横溝31」は「ラグ溝」に、「複数のブロック41」は「複数のブロック」に、「タイヤ踏面部1」は「トレッド」に、「1次サイプ5」は「オープンサイプ」に、「両端閉塞型の2次サイプ6」は「クローズドサイプ」に相当する。
(イ) 上記「(ア)」の相当関係より、
a 引用発明Aの「タイヤ赤道面の両側に形成されたタイヤ周方向をジグザグ状に延びる2本の周方向溝21、22と、横溝31、31とをタイヤ踏面部1に設け、タイヤ踏面部1に設けられた複数のブロック41は、2本の周方向溝21、22と横溝31、31とにより区画されて構成されたものであ」ることは、本願発明の「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝と、前記周方向主溝で区画された複数のブロックと、をトレッドに備え」ることに相当する。
b 引用発明Aの「タイヤ幅方向に延び両側の周方向溝21、22に開口してブロック41をタイヤ周方向両側において分断する1次サイプ5が形成されており、1次サイプ5によって分断されたブロック41のタイヤ周方向の両側に、両端閉塞型の2次サイプ6がタイヤ幅方向に延びて形成されて」いることは、本願発明の「前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端し、前記オープンサイプよりも深く形成されたクローズドサイプと、が設けられてい」ることと、「前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端したクローズドサイプと、が設けられてい」る限度で一致する。
c 引用発明Aの「横溝31」は、「複数のブロック41」を「2本の周方向溝21、22と横溝31、31とにより区画」するものであるから、引用発明Aにおいて「複数のブロック41」が「タイヤ踏面部1に設けられ」ることは、本願発明の「タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられて」いることと、「タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝が設けられて」いる限度で一致する。

イ 以上のことから、本願発明と引用発明Aとの一致点及び相違点は、次のとおりである。
[一致点]
「タイヤ赤道面の両側に形成され周方向に沿って延びる複数の周方向主溝と、前記周方向主溝で区画された複数のブロックと、をトレッドに備え、
前記ブロックには、タイヤ幅方向に延びて前記ブロックのタイヤ幅方向両端に接続するオープンサイプと、前記オープンサイプのタイヤ周方向両側に配置され、タイヤ幅方向に延びてブロック内で終端したクローズドサイプと、が設けられていて、
タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝が設けられている、
タイヤ。」

[相違点A]
本願発明においては、クローズドサイプは「オープンサイプよりも深く形成された」ものであるのに対し、引用発明Aにおいては、両端閉塞型の2次サイプ6の深さは「1次サイプ5の深さの80?120%に設定され」たものである点。
[相違点B]
本願発明では、「トレッドのタイヤ幅方向中央部分には、タイヤ赤道面に沿ってジグザグ状に延びる周方向サイプが形成され」ており、さらに、タイヤ周方向に隣り合う前記ブロックの間に配置されるラグ溝には、「高さが前記ブロックよりも低く、タイヤ周方向一方側の前記ブロックと、タイヤ周方向他方側の前記ブロックとを連結する連結部が設けられており、タイヤ赤道面に最も近い位置に配置された前記ラグ溝に設けられた前記連結部は、前記周方向サイプ側に形成されている」のに対し、引用発明Aではそのような構成を備えていない点。

ウ 判断
(ア) 事案に鑑み、相違点Bについて判断する。
引用文献Aには、タイヤ赤道面に沿って周方向サイプを設けること、及び、横溝31に連結部を設けることは記載も示唆もされていない。
引用文献Bは上記「第3 1」の引用文献3であるから、上記「第3 2(3)ア(ウ)a」で検討したのと同様、引用文献Bの連結部Cを適用しても相違点Bに係る本願発明の構成に至らないことは明らかである。
また、引用文献Cにも周方向サイプを設けること及び連結部を設けることは記載も示唆もされていないし、引用文献Dには周方向サイプ23を設けることは記載されているものの、連結部を設けることは記載も示唆もされていない。
また、当該相違点Bに係る本願発明の構成が、当業者が適宜なし得る設計変更である、とする根拠もない。
そして、本願発明は、当該相違点Bに係る本願発明の構成により、上記「第3 2(3)ア(ウ)a」で述べた効果を奏するものといえる。


(イ) 以上より、他の相違点について検討するまでもなく、本願発明は、引用発明A及び引用文献B?Dの記載事項に基いて当業者が容易に想到し得るものとはいえなくなった。

(4) 小括
本願の請求項2?6に係る発明は、本願発明をさらに限定したものであるから、本願発明と同様に、当業者が引用発明A及び引用文献A?Dの記載事項に基いて容易に発明をすることができたものとはいえなくなった。
そうすると、もはや、当審拒絶理由によって本願を拒絶することはできない。

第5 むすび
以上のとおり、原査定の理由及び当審拒絶理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2014-104204(P2014-104204)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (B60C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 岡▲さき▼ 潤  
特許庁審判長 氏原 康宏
特許庁審判官 尾崎 和寛
小原 一郎
発明の名称 タイヤ  
代理人 中島 淳  
代理人 加藤 和詳  
代理人 福田 浩志  

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