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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04L
管理番号 1326222
審判番号 不服2015-14224  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-07-29 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2012- 8396「P2P基盤のストリーミングサービスのデータストリームをパケット化するシステムおよび方法」拒絶査定不服審判事件〔平成24年 8月 9日出願公開、特開2012-151849〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯と本願発明
本願は、平成24年1月18日(パリ条約による優先権主張2011年1月19日 韓国、2011年1月20日 韓国)の出願であって、原審において平成27年3月18日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月29日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同日付けで手続補正され、平成28年5月25日付けで当審より拒絶理由が通知され、同年8月26日付けで手続補正されたものである。

本願の請求項1ないし5に係る発明は、平成28年8月26日付けで手続補正された特許請求の範囲の請求項1ないし5に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうち、請求項3に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものと認める。

「メディアソースのエンコーダから受信されたデータストリームをパケット化サーバにおいて複数のピースに変換するパケット化方法において、
前記複数のピースが相異なる大きさを持つように、前記エンコーダのVBR(Variable Bit Rate)に基づいて前記複数のピースそれぞれの大きさを決めることによって、予め設定された時間間隔ごとに前記受信されたデータストリームに対して前記ピースを生成するステップを含み、
前記ピースを生成するステップは、前記エンコーダが前記パケット化サーバに前記データストリームの送信を継続している間に前記エンコーダと前記パケット化サーバとの間のトラフィックによって前記パケット化サーバにおいて前記データストリームが受信されない時間間隔においては空ピースを生成し、
前記ピースは共有率が増加または維持されるように一定の速度で送信されることを特徴とするパケット化方法。」

第2 引用発明
当審の拒絶理由に引用された米国特許出願公開第2010/0153578号明細書(以下「引用例」という。)には図面とともに以下の事項が記載されている。

イ.「TECHNICAL FIELD

[0002] The present application relates generally to streaming of data, or media, in a communication system.」(1頁左欄)

訳文(イ.)「技術分野
[0002]本発明は、概して、通信システムにおける、データ又はメディアのストリーミングに関する。」

ロ.「[0026] The primary source peer 110' is the original source of media content delivered to other peers 110 .」(2頁左欄)

訳文(ロ.)「[0026]プライマリーソースピア110'は、別のピア110へ配信されるメディアコンテンツのオリジナルソースである。」

ハ.「[0036] partitioning of media streams 215 into a plurality of partial real-time transport protocol media streams 216 may be performed by a primary source peer 110', or another peer 110 in the P2P network.」(3頁右欄)

訳文(ハ.)「[0036]メディアストリーム215を複数の部分的なリアルタイムトランスポートプロトコルメディアストリーム216に分割することは、プライマリーソースピア110'、又はP2Pネットワークにおける別のピアによって行われてもよい。」

ニ.「[0037] FIG. 5 is a diagram illustrating a process for partitioning a real-time transport protocol media stream 215 into a plurality of partial RTP streaming sessions 216 according to an example embodiment of the invention. A RTP session, or stream, 215, e.g., video, audio, subtitle streams, and/or the like, may be split, or divided, into partitioned pieces 320, for example, along a time axis. In an example embodiment, each of the partitioned pieces 320 may have a fixed time duration Tp. If desired, the partitioned pieces 320 may have different time durations. In the example embodiment of FIG. 5, each partitioned piece 320 may correspond to one or more RTP data packets, or units, 310. In an example embodiment of the invention, the time duration Tp of a partitioned piece 320 may be selected in such a way that it is large enough to contain at least one RTP packet 310 on average. In the example embodiment of FIG. 5, the time duration of the partitioned is equal to 80 milli-seconds (ms), e.g., TP=80 ms. Each partitioned piece 320 comprises two RTP data packets 310. For a video stream with a frame rate equal to 25 frames per second, each partitioned piece 320 carries media data corresponding to two picture frames. For example, the same video stream, a partitioned piece 320 with time duration equal to 400 ms carries media content corresponding to 10 picture frames. The partitioned pieces 320, of the RTP session 215, are demultiplexed into N partial RTP streams, or sessions, 216. N is the total number of partial RTP streams, or sessions 216. In FIG. 5, N is equal to 4.
[0038] According to the example embodiment of FIG. 5, the time period, or time cycle, to assign one partitioned piece 320 to each partial RTP stream 216 may be defined as Tc=N×Tp. In an example embodiment, the partitioned piece time duration TP may be selected in such a way that it is large enough to comprise at least one RTP data packet 310 on average. If the time duration Tp is very small, some partitioned pieces 320 may be empty, e.g. with no data. Occurrence of a plurality of empty partitioned pieces 320 may lead to an empty partial stream 216. Large cycle times, however, may lead to long start-up delays. A consuming peer 110 may buffer a complete cycle, for example N partitioned pieces 320, before seamless playback may start. In an example embodiment, the total number N of partial RTP streams may be between 4 and 10.」(3頁右欄)

訳文(ニ.)「[0037]図5は、本発明の実施形態に係る、複数のリアルタイム・トランスポート・プロトコル・メディア・ストリーム215を部分的なRTPストリーミングセッション216に分割するためのプロセスを示す図である。RTPセッション又はストリーム、例えば、ビデオ、オーディオ、字幕ストリーム、及び/又はそのようなものは、例えば、時間軸に沿って、分割されたピース320に、分離され、又は分割されてもよい。例示的な実施形態では、分割されたピース320の各々は、固定された持続時間Tpを有してもよい。所望の場合、分割されたピース320は、異なる持続時間を有してもよい。図5の例示的な実施形態では、各々の分割されたピース320は、1つ又は複数のRTPデータパケット、又はユニット310に対応してもよい。本発明の例示的な実施形態では、分割されたピース320の持続時間Tpは、平均して少なくとも1つのRTPパケット310を含むのに十分な大きさであるように選択されてもよい。図5の例示的な実施形態では、分割の持続時間は、例えば、80ミリ秒(ms)に等しく、Tp=80msである。各分割されたピース320は、2つのRTPデータパケット310を備えている。1秒あたり25フレームに等しいフレームレートであるビデオに対して、各分割されたピース320は、2つのピクチャフレームに対応するメディアデータを保持している。例えば、同じビデオストリームである、400msに等しい持続時間を持つ分割されたピース320は、10ピクチャフレームに対応するメディアコンテンツを保持している。RTPセッション215の、分割されたピース320は、N個の部分RTPストリーム、又はセッション216に分離される。Nは、部分RTPストリーム、又はセッション216の総数である。図5では、Nは4に等しい。
[0038]図5の例示的な実施形態によれば、各部分RTPストリーム216に対して1つの分割されたピース320を割り当てるための時間、又は時間周期は、Tc=N×Tpとして定義される。例示的な実施形態では、分割されたピースの持続時間Tpは、平均して少なくとも1つのRTPデータパケット310を含むのに十分な大きさであるように選択されてもよい。持続時間Tpが非常に小さい場合、いくつかの分割されたピース320は、空、すなわち、データ無し、の可能性がある。複数の空の分割されたピース320の発生は、空の部分ストリームとなる可能性がある。しかし、大きなサイクル時間は、長い起動遅延となる可能性がある。コンシューミングピア110は、シームレス再生が開始される前に、完全なサイクル、例えば、N個の分割されたピース320をバッファリングすることができる。例示的な実施形態では、部分RTPストリームの総数Nは、4と10の間でよい。」

ホ.「[0045] A peer 110 may request the delivery of one or more partial streams from another peer 110. In an example embodiment, a partial stream is the finest granularity for media streaming. Thus in an example embodiment, a peer may not stream a fraction of a partial RTP stream 216. In an alternative embodiment, a fraction of a partial RTP stream may be streamed. The number of partial RTP streams 216 may be tuned to achieve the target bitrate of a partial RTP stream. It is desirable that each peer 110 in the P2P network 100 has enough uplink bandwidth to stream at least a single partial RTP stream. Compressed video content typically has variable bitrate, for example, an instantaneous decoder refresh (IDR), e.g., intra-coded, picture may result in more bits than an inter-coded picture. In an example embodiment of the invention, selection of the partitioning parameters, e.g., N and/or Tp, may be done in a way to avoid un-balanced partitioning. Unbalanced partitioning may happen if, for example, IDR pictures, which are significantly larger in size than other pictures fall into the same partial RTP stream 216. If desired, RTP data packets corresponding to IDR pictures may be assigned to the same partial RTP stream.」(4頁右欄)

訳文(ホ.)「[0045]ピア110は、他のピア110から1又は複数の部分ストリームの配信を要求してもよい。例示的な実施形態では、部分ストリームは、メディアストリームのための最小単位である。したがって、例示的な実施形態では、ピアは、部分RTPストリーム216の一部分をストリーミングしなくてもよい。代替的な実施形態では、部分RTPストリームの一部分は、ストリーミングされてもよい。部分RTPストリーム216の数は、部分RTPストリームの目標ビットレートを達成するように調整してもよい。P2Pネットワーク100内の各々のピア110が、少なくとも1つの部分RTPストリームをストリーミングするために十分なアップリンクの帯域幅を保持することが望ましい。圧縮されたビデオコンテンツは、典型的には、可変ビットレートを有しており、瞬間デコーダリフレッシュ(IDR)、例えば、イントラ符号化されたピクチャは、インター符号化ピクチャより多くのビットとなる。発明の例示的な実施形態では、例えば、N及び/又はTpのような、分割のパラメータの選択は、非平衡的な分割を回避するための方法で行ってもよい。例えば、他のピクチャよりサイズがかなり大きいIDRピクチャが、同じ部分RTPストリーム216になる場合、非平衡的な分割が起こる。所望の場合、IDRピクチャに対応するRTPデータパケットは、同じ部分RTPストリームに割り当てられてもよい。」

ヘ.「[0052] According to an example embodiment of the invention、 an apparatus、 e.g.、 a primary source peer 110'、 may comprise a memory unit to store media data associated with one or more RTP streaming sessions 215 of a multimedia streaming session 210 . ・・・The apparatus may also comprise encoding modules to encode the media content into compressed form(s).」

訳文(ヘ.)「[0052]発明の例示的な実施形態によれば、装置、例えば、プライマリーソースピア110’は、マルチメディアストリームセッション210の1又は複数のRTPストリームセッション215に関連したメディアデータを保存するためにメモリーユニットを含んでもよい。・・・装置は、メディアコンテンツを圧縮された方式にエンコードするためにエンコーディングモジュールも含んでもよい。」

引用例の記載及び図面並びにこの分野における技術常識を考慮すると、上記ホ.の[0045]の記載によれば、引用例のRTPストリームは、イントラ符号化ピクチャ及びインター符号化ピクチャを含む可変ビットレートのビデオコンテンツのストリームを含むことは明らかである。そして、上記ヘ.の[0052]における「装置、例えば、プライマリーソースピア110’・・・装置は、メディアコンテンツを圧縮された方式にエンコードするためにエンコーディングモジュールも含んでもよい。」との記載によれば、前述のビデオコンテンツのRTPストリームは、プライマリーソースピアのエンコーディングモジュールによりエンコードされているということができる。そして、上記ロ.の記載によれば、プライマリーソースピアは、メディアコンテンツのオリジナルソースということができる。
また、図5及びその説明によれば、引用例のRTPストリームが複数のピースに分割されていることが読み取れる。
そうすると、引用例には、メディアコンテンツのオリジナルソースであるプライマリーソースピアのエンコーディングモジュールによりエンコードされたイントラ符号化ピクチャ及びインター符号化ピクチャを含む可変ビットレートのビデオコンテンツのRTPストリームを複数のピースに分割する方法が記載されているということができる。
また、上記ニ.の[0038]の「RTPセッション又はストリーム、例えば、ビデオ、オーディオ、字幕ストリーム、及び/又はそのようなものは、例えば、時間軸に沿って、分割されたピース320に、分離され、又は分割されてもよい。例示的な実施形態では、分割されたピース320の各々は、固定された持続時間Tpを有してもよい。」との記載によれば、引用例に記載された上記方法は、固定された持続時間TpごとにRTPストリームを分割してピースを生成しているといえる。
また、上記ニ.の[0038]の「持続時間Tpが非常に小さい場合、いくつかの分割されたピース320は、空、すなわち、データ無し、の可能性がある。」との記載、及び図5によれば、前述のピースの生成に関して、空ピースを生成することがあるということができる。

したがって、上記引用例には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

「メディアコンテンツのオリジナルソースであるプライマリーソースピアのエンコーディングモジュールによりエンコードされたイントラ符号化ピクチャ及びインター符号化ピクチャを含む可変ビットレートのビデオコンテンツのRTPストリームを複数のピースに分割する方法において、
固定された持続時間Tpごとに前記RTPストリームを分割して前記ピースを生成するステップを含み、
前記ピースを生成するステップは,空ピースを生成することがある、方法。」

第3 対比
本願発明と引用発明とを対比する。
a. 本願明細書の【0004】?【0006】の記載を参照すると、本願発明の「メディアソースのエンコーダから受信されたデータストリーム」は、エンコーダによりエンコーダのVBR(Variable Bit Rate)に基づいてエンコードされたマルチメディアファイルのようなコンテンツに係るデータストリームを含むことは明らかであるから、引用発明の「メディアコンテンツのオリジナルソースであるプライマリーソースピアのエンコーディングモジュールによりエンコードされたイントラ符号ピクチャ及びインター符号化ピクチャを含む可変ビットレートのビデオコンテンツのRTPストリーム」とは、メディアソースのエンコーダにより可変ビットレートでエンコードされたコンテンツのデータストリームの点で共通する。
そして、本願発明の「パケット化」はデータストリームを複数のピースに変換することであるところ、引用発明の「複数のピースに分割する」ことを「ピースに変換する」と称することは任意であるから、両者は、「メディアソースのエンコーダによりエンコードされたデータストリームを複数のピースに変換するパケット化方法」における発明である点で共通している。
b. 本願発明の「前記複数のピースが相異なる大きさを持つように、前記エンコーダのVBR(Variable Bit Rate)に基づいて前記複数のピースそれぞれの大きさを決めることによって、予め設定された時間間隔ごとに前記受信されたデータストリームに対して前記ピースを生成するステップ」は、当該ステップにて、可変ビットレートで符号化されたデータストリームに対して予め設定された時間間隔ごとにピースを生成することにより、エンコーダのVBR(Variable Bit Rate)に対応した相異なる大きさを有する複数のピースが生成されることを意味することは、技術常識に照らして明らかである。
そして、引用発明も、可変ビットレートのビデオコンテンツのRTPストリームを固定された持続時間Tpごとに分割してピースを生成するのであるから、生成される複数のピースは、それぞれ可変ビットレートに対応した相異なる大きさを有するピースとなることは自明である。
してみると、引用発明の「固定された持続時間Tpごとに前記RTSストリームを分割して前記ピースを生成するステップ」は、本願発明の「前記複数のピースが相異なる大きさを持つように、前記エンコーダのVBR(Variable Bit Rate)に基づいて前記複数のピースそれぞれの大きさを決めることによって、予め設定された時間間隔ごとに前記受信されたデータストリームに対して前記ピースを生成するステップ」に相当する。
c. 引用発明が固定された持続時間Tpごとに分割するRTPストリームは、可変ビットレートのストリームであり、エンコーディングモジュールにおいて一定時間内に発生するエンコードされたデータ量が可変であることから、持続時間Tpが小さい場合、発生する前記データ量が少ないと、当該持続時間Tp内には分割すべきデータが存在しないことがあり得ることは当業者に明らかである。
してみると、両者は、下記の相違点1は別として、「前記ピースを生成するステップは、変換すべき前記データストリームがない時間間隔においては空ピースを生成し、」の点で共通している。

以上を総合すると、本願発明と引用発明とは、以下の点で一致ないし相違している。

(一致点)
「メディアソースのエンコーダによりエンコードされたデータストリームを複数のピースに変換するパケット化方法において、
前記複数のピースが相異なる大きさを持つように、前記エンコーダのVBR(Variable Bit Rate)に基づいて前記複数のピースそれぞれの大きさを決めることによって、予め設定された時間間隔ごとに前記受信されたデータストリームに対して前記ピースを生成するステップを含み、
前記ピースを生成するステップは、変換すべき前記データストリームがない時間間隔においては空ピースを生成する、パケット化方法。」

(相違点1)
一致点の「メディアソースのエンコーダによりエンコードされたデータストリームを複数のピースに変換する」点に関し、本願発明は、「パケット化サーバ」がメディアソースのエンコーダから受信して変換するのに対し、引用発明は当該事項が明らかでない点。
これに伴い、空ピースが生成されるのが、本願発明では、「前記エンコーダが前記パケット化サーバに前記データストリームの送信を継続している間に前記エンコーダと前記パケット化サーバとの間のトラフィックによって前記パケット化サーバにおいて前記データストリームが受信されない時間間隔」であるのに対し、引用発明は当該事項が明らかでない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記ピースは共有率が増加または維持されるように一定の速度で送信される」との構成を有しているのに対し、引用発明は、当該構成を明示していない点。

第4 判断
まず、相違点1について検討する。
引用例にはRTPストリームを複数のピースに分割する手段が明らかにされていないが、RTPストリームを複数のピースに分割している以上、エンコーディングモジュールから受けとった(すなわち、「受信された」)RTPストリームを複数のピースに変換する手段が存在することは明らかであり、これを「パケット化サーバ」と称することは任意である。
したがって、引用発明は、「メディアソースのエンコーダから受信されたデータストリームをパケット化サーバにおいて複数のピースに変換するパケット化方法」といえるから、この点に差異はない。
そして、空ピースの生成に関して、可変ビットレートに起因して、「エンコーディングモジュール」が生成するエンコードされたデータから、「パケット化サーバ」が受け取ることができない時間間隔があり得ることは明らかである。そうすると、本願発明のように「前記エンコーダが前記パケット化サーバに前記データストリームの送信を継続している間に前記エンコーダと前記パケット化サーバとの間のトラフィックによって前記パケット化サーバにおいて前記データストリームが受信されない時間間隔においては空ピースを生成」することは、当然に導かれることにすぎない。

なお、仮に、本願発明の「メディアソースのエンコーダ」が、図2に例示される「エンコーダ業者」のようなパケット化サーバとは異なる装置であったとしても、引用例の上記ハ.の記載によれば、プライマリーソースピアのエンコーディングモジュールにてエンコードされたRTPストリームを、プライマリーソースピアとは別のピアにて複数のピースに分割することも示唆されているから、パケット化サーバが異なる装置にある「メディアソースのエンコーダ」から受信してデータストリームを複数のピースに変換することは、格別困難なことではない。

次に、相違点2について検討する。
本願明細書の【0006】の「このとき、従来技術に係るP2P基盤のストリーミングサービスでは、データストリームを一定の大きさのピースで生成する。しかし、エンコーダから送信されるデータストリームが一定ではないため、各ピースの生成時間が一定ではなくなり、これによってピアとの同期化が行われずに共有率が低下するという問題が生じ得る。」との記載及び【0055】の同様の記載によれば、一定の大きさのピースで生成するのではなく、一定の時間間隔毎にピースを生成すれば、ピアとの同期化が行われて共有率が低下しないことは明らかである。してみれば、固定された持続時間Tpごとに前記RTSストリームを分割して前記ピースを生成する引用発明も、「前記ピースは共有率が増加または維持されるように一定の速度で送信される」と言い得ることは明らかであるから、相違点2は実質的な差異ではない。

したがって、本願発明は、引用発明と実質的な差異はなく、引用発明から容易に想到し得るものである。
また、本願発明の作用効果も、引用発明から当業者が容易に予測できる範囲のものである。

第5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願はその余の請求項について論及するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-14 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-11-01 
出願番号 特願2012-8396(P2012-8396)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H04L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大石 博見小宮 慎司廣川 浩  
特許庁審判長 菅原 道晴
特許庁審判官 萩原 義則
中野 浩昌
発明の名称 P2P基盤のストリーミングサービスのデータストリームをパケット化するシステムおよび方法  
代理人 特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ  

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