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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 C03C
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない。 C03C
管理番号 1326224
審判番号 不服2015-15870  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-08-27 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2013- 23182「熱および化学安定性が高いガラス組成物ならびにその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月 9日出願公開、特開2013- 82627〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
この出願は、2007年2月9日(パリ条約による優先権主張外国庁受理2006年2月10日 米国(US))を国際出願日とする出願(特願2008-554389号)の一部を、平成25年2月8日に新たな特許出願にした出願であって、同日に上申書が提出され、平成26年7月2日に手続補正書が提出された後、同年7月31日付けで拒絶理由が通知され、同年11月18日に意見書が提出されたが、平成27年5月22日に拒絶査定がされ、これに対して、同年8月27日に拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正書が提出されたものである。

第2 平成27年8月27日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成27年8月27日付け手続補正を却下する。

[理由]
1 補正の内容
平成27年8月27日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、平成26年7月2日付けでした手続補正後の特許請求の範囲の請求項1である、
「酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 64.0-72.0
Al_(2)O_(3) 9.0-16.0
B_(2)O_(3) >0.0-5.0
MgO 2.0-7.5
CaO 2.0-7.5
BaO 1.0-6.0
を含むと共に、任意成分としてSrOを含み、
(1)1.15≦Σ(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Al_(2)O_(3))≦1.50 という関係を満たし、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、BaO、SrOが、各酸化物成分のモルパーセントを表すものであり、
(2)任意成分であるSrOを含む場合は、モルパーセントにおけるBaO/SrO比が2.0以上であり、
(3)SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、MgO、CaO、BaO、SrO,La_(2)O_(3)以外のいかなる酸化物の量も2.0モルパーセント以下であり、
(4)700℃以上のひずみ点を有し、
(5)600℃で5分間の熱処理に対して30ppm未満の寸法変化を呈し、
(6)28.0GPa・cm^(3)/g以上のヤング率/密度比を有する、
アルカリを含まないガラス。」
を、
「酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 64.0-72.0
Al_(2)O_(3) 9.0-16.0
B_(2)O_(3) >0.0-5.0
MgO 2.0-7.5
CaO 2.0-7.5
BaO 1.0-6.0
SrO 0.0-3.0
を含み、
(1)1.15≦Σ(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Al_(2)O_(3))≦1.50 という関係を満たし、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、BaO、SrOが、各酸化物成分のモルパーセントを表すものであり、
(2)SrOの含有量が0モルパーセントでない場合は、モルパーセントにおけるBaO/SrO比が2.0以上であり、
(3)SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、MgO、CaO、BaO、SrO,La_(2)O_(3)以外のいかなる酸化物の量も2.0モルパーセント以下であり、
(4)700℃以上のひずみ点を有し、
(5)600℃で5分間の熱処理に対して30ppm未満の寸法変化を呈し、
(6)28.0GPa・cm^(3)/g以上のヤング率/密度比を有する、
アルカリを含まないガラス。」
とする補正を含むものである。

2 新規事項の追加の有無について
(1)補正後の請求項1について
上記補正後の請求項1は、「アルカリを含まないガラス」において「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」(酸化物基準においてのモルパーセントの値。以下同じ。)を含む、という事項を含む。
すなわち、請求項1の「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合割合の範囲には、「>0.0-1未満」の範囲が含まれるといえる。

(2)本願の願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下、まとめて、「本願当初明細書等」という。)の記載について

本願当初明細書等には、本願の「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合、及び、その配合割合について、以下の記載がある。

ア 「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合及びその配合割合についての全般的な記載

・【0031】
B_(2)O_(3)は、ガラス形成剤と、溶融を補助し、融点を下げる融剤の両方である。これらの効果を得るためには、本明細書に記載したガラス組成物のB_(2)O_(3)濃度は、1.0モルパーセント以上とする。

・【0032】
ディスプレイの処理中、ガラスシートは、対向する端部だけで保持されることが多い。従って、シートの未支持の中央部分が垂下する。垂下量は、シートの幾何形状、密度およびガラスのヤング率の関数である。シートの幾何形状は、用いる特定のプロセスにより決まり、ガラス製造業者の管理を超えている。固定した密度については、ヤング率の増加が望ましい。輸送、取扱いおよび熱処理中、大きなガラスシートが示す垂下量が減少するからである。同様に、ヤング率の増加に比例して、密度の増加を伴う、または、垂下が増大する結果となる。一態様において、ガラスの密度は、2.75グラム/cm^(3)以下である。他の態様において、ガラス自体の垂下への寄与を最小にするためには、ヤング率/密度の比率が、30.0GPa・cm^(3)/gを超える、30.5GPa・cm^(3)/gを超える、31.2GPa・cm^(3)/gを超える、または32.2GPa・cm^(3)/gを超えるのが望ましい。より高い比率が好ましい。アルカリ土類酸化物、La_(2)O_(3)またはAl_(2)O_(3)に代えると、B_(2)O_(3)の密度は減少する(審決注:技術常識からみて、「アルカリ土類酸化物、La_(2)O_(3)またはAl_(2)O_(3)をB_(2)O_(3)に代えると、密度は減少する」の誤記と認める。)が、ヤング率はさらに急速に減少する。このように、B_(2)O_(3)含量は、適度に低く保つのが望ましい。B_(2)O_(3)はまた、ひずみ点を低下させる傾向もあり、この理由から、ガラスのB_(2)O_(3)含量は、できる限り低く保つのが好ましい。

・【0033】
SiO_(2)に関して上述したとおり、LCD用途においては、ガラス耐久性もまた非常に重要である。耐久性は、アルカリ土類およびランタン酸化物の濃度を上げ、高含量のB_(2)O_(3)を大幅に減じることにより、若干制御することができる。ひずみ点およびヤング率のように、B_(2)O_(3)含量を低く保つのが望ましい。このように、上記の特性を達成するには、一態様において、本明細書に記載したガラスは、5.0モルパーセント以下、1.0?5.0モルパーセント、1.0?4.0モルパーセント、2.0?4.0モルパーセントのB_(2)O_(3)濃度を有する。

・【0034】
ガラスの溶融および形成特性を維持しながら、ひずみ点を増大し、弾性率を増大し、耐久性を改善し、密度を減じ、熱膨張係数(CTE)を減じるために、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)濃度は、対として選択することができる。

・【0035】
例えば、B_(2)O_(3)の増加と、対応するAl_(2)O_(3)の減少は、低密度およびCTEを得るのに有用であり、一方、Al_(2)O_(3)の増加と、対応するB_(2)O_(3)の減少は、ひずみ点、弾性率および耐久性を増大するのに有用である。ただし、Al_(2)O_(3)の増加が、Σ(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Al_(2)O_(3))またはΣ(MgO+CaO+SrO+BaO+3La_(2)O_(3))/(Al_(2)O_(3))比を約1.15より減少しないという場合に限る。例えば、当該技術分野で知られているとおり、AMLCD用途で用いるガラスのCTE(0?300℃)は、28-42×10^(-7)/℃、好ましくは30-40×10^(-7)/℃、最も好ましくは32-38×10^(-7)/℃の範囲である。後述する実施例で示したような他の温度範囲、例えば、25?300℃について測定されたCTEは、測定値に補正を加えることにより、0?300℃の範囲に変換することができる。25?300℃の範囲について測定したCTE値を、0?300℃の範囲についての値に変換する場合には、-0.8×10^(-7)/℃の補正が、AMLCDシリカ系ガラスにとって適切であることが見出されている。CTEに関して、従来、ランプガラスは、低ホウ素および高アルカリ土類含量を有しているが(高アルカリ土類対アルミナ比につながる)、これらのガラスは、故意に、42×10^(-7)/℃を超えるCTEを有していて、これは、モリブデンリード線に匹敵するものである。従って、ランプガラスは、AMLCD用途で用いるのには好適ではない。

・【0044】
本発明のガラスの中心成分の効果/役割をまとめると、SiO_(2)が基本的なガラス形成剤である。Al_(2)O_(3)とB_(2)O_(3)もまたガラス形成剤であり、対として選択することができる。例えば、用いるB_(2)O_(3)増やし、これに対応して、Al_(2)O_(3)を減らすと、低密度およびCTEとなり、用いるAl_(2)O_(3)を増やし、これに対応して、B_(2)O_(3)を減らすと、ひずみ点、弾性率および耐久性が増加する。ただし、Al_(2)O_(3)を増やしても、RO/(Al_(2)O_(3))または(RO+3La_(2)O_(3))/(Al_(2)O_(3))比を約1.15未満に下げないものとする。式中、RO=Σ(MgO+CaO+SrO+BaO)である。この比が低すぎると、溶融性が損なわれる。すなわち、融点が高くなりすぎる。B_(2)O_(3)を用いて融点を下げることができるが、高レベルのB_(2)O_(3)だと、ひずみ点が損なわれる。

イ 「アルカリを含まないガラス」の態様における「B_(2)O_(3)」の配合及びその配合割合の記載

・【0024】
一態様において、本明細書に記載されているのは、アルカリを含まないガラスであって、酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 64.0-72.0
Al_(2)O_(3) 9.0-16.0
B_(2)O_(3) 1.0-5.0
MgO+La_(2)O_(3) 1.0-7.5
CaO 2.0-7.5
SrO 0.0-4.5
BaO 1.0-7.0
を含み、ここで、Σ(MgO+CaO+SrO+BaO+3La_(2)O_(3))/(Al_(2)O_(3))≧1.15であり、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOおよびLa_(2)O_(3)は、各酸化物成分のモルパーセントを表す。

・【0025】
さらなる態様において、本明細書に記載されているのは、アルカリを含まないガラスであって、酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 64.0-72.0
B_(2)O_(3) 1.0-5.0
Al_(2)O_(3) 9.0-16.0
MgO+La_(2)O_(3) 1.0-7.5
CaO 2.0-7.5
SrO 0.0-4.5
BaO 1.0-7.0
を含み、ここで、
(a)1.15≦Σ(MgO+CaO+SrO+BaO+3La_(2)O_(3))/(Al_(2)O_(3))≦1.55で、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOおよびLa_(2)O_(3)は、各酸化物成分のモルパーセントを表し、
(b)ガラスは、700℃以上のひずみ点を有し、
(c)ガラスは、200ポアズの粘度で、1,665℃以下の温度を有し、
(d)ガラスは、液相線温度で、85,000ポアズ以上の粘度を有する。

・【0026】
他の態様において、本明細書に記載されているのは、アルカリを含まないガラスであって、酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 65.0-71.0
Al_(2)O_(3) 9.0-16.0
B_(2)O_(3) 1.5-4.0
MgO+La_(2)O_(3) 0.5-7.5
CaO 2.0-6.0
SrO 0.0-4.5
BaO 1.0-7.0
La_(2)O >0.0かつ4.0以下
を含み、ここで、
Σ(MgO+CaO+SrO+BaO+3La_(2)O_(3))/(Al_(2)O_(3))≧1.15(好ましくは、≧1.2)であり、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrO、BaOおよびLa_(2)O_(3)は、各酸化物成分のモルパーセントを表す。
・【0027】
さらなる態様において、本明細書に記載されているのは、アルカリを含まないガラスであって、酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 65.0-72.0
Al_(2)O_(3) 10.0-15.0
B_(2)O_(3) 1.0-4.0
MgO 2.0-7.5
CaO 3.0-6.0
SrO 0.0-4.5
BaO 1.0-6.0
を含み、ここで、
Σ(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Al_(2)O_(3))≧1.15であり、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、SrOおよびBaOは、各酸化物成分のモルパーセントを表す。

・【0028】
さらなる態様において、本明細書に記載されているのは、SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、MgO、CaO、およびSrOとBaOとの少なくとも一方を含むアルカリを含まないガラスであって、ガラス組成物が、
[MgO]:[CaO]:[SrO+BaO]=1±0.15:1±0.15:1±0.15(好ましくは、[MgO]:[CaO]:[SrO+BaO]=1±0.1:1±0.1:1±0.1)
という関係を満たし、式中、[MgO]、[CaO]および[SrO+BaO]は、酸化物基準におけるモルパーセントでのガラスの指示された成分の濃度である。好ましくは、この態様に関連して、B_(2)O_(3)濃度は、4.0モルパーセント以下である。実施例に示したとおり、上記の関係を満たすガラスは、ダウンドロー法、例えば、フュージョン法に望ましい低液相線温度(高液相線粘度)を有することが分かっている。後述するように、SrOおよびBaO濃度を調整して、ひずみ点、CTEおよび密度を最適にすることができる。モルパーセントにおけるBaO/SrO比は、2.0以上であるのが好ましい。

ウ 「アルカリを含まないガラス」の具体例における「B_(2)O_(3)」配合割合の記載

・【0078】
…(略)…
【表1-1】【表1-2】【表1-3】【表1-4】【表1-5】【表1-6】【表1-7】【表1-8】【表1-9】【表1-10】【表1-11】【表1-12】【表1-13】【表1-14】【表1-15】
(審決注:摘示を省略する。【表1-1】における「B_(2)O_(3)」の「最小」、「最大」の欄には、それぞれ「1.25」、「4.96」の記載がある。)

(3)本願当初明細書等の記載の検討
ア 本願に係る「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合及びその配合割合についての本願当初明細書等における全般的な記載((2)アで摘示。)には、
「B_(2)O_(3)」の配合は、「ガラス形成剤と、溶融を補助し、融点を下げる融剤の両方」のためであること、そして、これらの「ガラス形成剤」、「融剤」の両方としての効果を得るためには、「本明細書に記載したガラス組成物のB_(2)O_(3)濃度は、1.0モルパーセント以上」必要であることが記載されている(段落【0031】)。
そうすると、段落【0031】の記載からは、本願に係る「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合割合に関して、「B_(2)O_(3)」の配合による上記の所期の効果(ガラス形成剤、融剤の両方の効果)を得るための配合割合の下限値は「1.0モルパーセント」であることが示されているといえ、「B_(2)O_(3)」の配合割合が「1.0モルパーセント」未満では、「B_(2)O_(3)」の所期の配合効果を得ることができないものと認識できるといえる。

また、段落【0031】に続いて記載された段落【0032】には、
ディスプレイの処理時のガラスシートの未支持の中央部分の垂下量へのガラス自体の寄与を最小にするために、ヤング率/密度の比率を高くすることが好ましいとされたうえで、「アルカリ土類酸化物、La_(2)O_(3)またはAl_(2)O_(3)をB_(2)O_(3)に代えると、密度は減少するが、ヤング率はさらに急速に減少する」ため、B_(2)O_(3)含量は「適度に低く保つのが望ましい」ことが記載されている。
そして、段落【0032】には、
「B_(2)O_(3)はまた、ひずみ点を低下させる傾向もあり、この理由から、ガラスのB_(2)O_(3)含量は、できる限り低く保つのが好ましい。」ことが記載されている。

さらに、段落【0032】に続いて記載された段落【0033】には、
LCD用途において非常に重要であるガラス耐久性は、「アルカリ土類およびランタン酸化物の濃度を上げ、高含量のB_(2)O_(3)を大幅に減じることにより、若干制御することができる」ので、段落【0032】に記載した「ひずみ点」、「ヤング率」の観点からと同様に、B_(2)O_(3)含量を「低く保つのが望ましい」ことが記載されている。
そして、段落【0033】には、その記載の後に、
「このように、上記の特性を達成するには、一態様において、本明細書に記載したガラスは、「5.0モルパーセント以下、1.0?5.0モルパーセント、1.0?4.0モルパーセント、2.0?4.0モルパーセントのB_(2)O_(3)濃度を有する」ことが記載されている。

以上の記載によれば、本願に係る「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合及びその配合割合についての本願当初明細書等における全般的な記載には、ガラスのB_(2)O_(3)含量は、段落【0032】の、ディスプレイの処理時のガラスシートの垂下量低減のために「適度に低く保つのが望まし」く、「ひずみ点」を低下させる傾向があることから「できる限り低く保つのが好ましい」こと、段落【0033】の、「耐久性」の制御の点から「低く保つのが望ましい」ことが記載されたうえで、「高含量」でないこと、具体的には、「B_(2)O_(3)」の配合割合の上限が「5.0モルパーセント」であることが記載されていると認められる。

そして、「5.0モルパーセント以下」との記載は、配合範囲の上限値を示したに過ぎず、その下限値を表すものではなく、その記載から直ちに、「1.0モルパーセント」未満まで含むものと解することはできない(むしろ、本項で以上のように検討したとおり、下限値は「B_(2)O_(3)」の配合による所期の効果(ガラス形成剤、融剤の両方の効果)を得ることができる「1.0モルパーセント」であると認めるのが相当であり、その後に続いて記載される範囲の記載とも矛盾はなく整合する。)。
すなわち、「5.0モルパーセント以下、1.0?5.0モルパーセント、1.0?4.0モルパーセント、2.0?4.0モルパーセントのB_(2)O_(3)濃度を有する」との記載は、「5.0モルパーセント以下」と上限値を示したうえで、この記載に続けて、段落【0031】のとおり下限値が1.0モルパーセントであることから、結局「B_(2)O_(3)」の配合割合の範囲は、「1.0?5.0モルパーセント」、「1.0?4.0モルパーセント」、「2.0?4.0モルパーセント」である、ということを記載したものであると認めるのが相当である。

なお、以上の記載に続いて記載された段落【0034】?【0035】には、「ガラスの溶融および形成特性を維持しながら、ひずみ点を増大し、弾性率を増大し、耐久性を改善し、密度を減じ、熱膨張係数(CTE)を減じる」ために、Al_(2)O_(3)およびB_(2)O_(3)の配合割合を対として選択することが記載され、さらに、段落【0044】には、それまでに記載された「本発明のガラスの中心成分の効果/役割」のまとめ記載があるものの、いずれの段落にも、B_(2)O_(3)の具体的な配合割合の数値についての記載はなく、上記の判断を左右するものとはいえない。

イ そして、上記の判断は、本願当初明細書等における具体的な態様や具体例の記載((2)イ、ウで摘示。)とも整合するものである。

(ア)すなわち、「アルカリを含まないガラス」の態様((2)イで摘示。)の組成における「B_(2)O_(3)」の配合割合は、それぞれ、「1.0-5.0」(段落【0024】及び【0025】)、「1.5-4.0」(段落【0026】及び【0027】)であって、上記アの「1.0?5.0モルパーセント」、さらには「1.0?4.0モルパーセント」の記載と整合するものである。
また、段落【0028】には、「SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、MgO、CaO、およびSrOとBaOとの少なくとも一方を含むアルカリを含まないガラス」であって、特定のアルカリ土類金属酸化物の配合関係にあるガラスの態様における「B_(2)O_(3)濃度は、4.0モルパーセント以下である」と記載されているが、配合割合の範囲の上限値を示したものに過ぎずその下限値は不明であって、直ちに「1.0モルパーセント」未満まで含むことが示唆されるとはいえず(むしろ、アの項で検討したとおり、下限値は「B_(2)O_(3)」の所期の配合の効果(ガラス形成剤、融剤の両方の効果)を得ることができる「1.0モルパーセント」であると認めるのが相当である。)、上記の判断と整合しないものとはいえない。

(イ)また、段落【0078】の「アルカリを含まないガラス」の具体例((2)ウで摘示。)88種における「B_(2)O_(3)」配合割合は、1.25?4.96の範囲であり、「1.0?5.0」に包含されるものである。
そして、「1.0モルパーセント」未満という微量の「B_(2)O_(3)」を含むガラスの具体例はないから、上記の判断と整合するものである。

(ウ)そして、本願当初明細書等において、以上の記載事項のほかに、「B_(2)O_(3)」の配合割合に関する記載はない。

(エ)さらにいえば、「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」を特定事項とする上記補正後の請求項1に記載された発明が、本願明細書の記載から、本願発明の課題の解決を図れるもの(所謂、サポート要件を満たすもの)と、当業者が認識できるものでないことは明らかである。

ウ まとめ
以上の検討によれば、本願当初明細書等には、「B_(2)O_(3)」の配合割合の範囲については最大でも「1.0?5.0」モルパーセントが記載されているに過ぎないものと認められる。

(4)審判請求人の主張について
ア 審判請求人は、平成25年2月8日付け上申書、平成26年11月18日付け意見書、及び、平成27年8月27日付け審判請求書において、「アルカリを含まないガラス」に「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」含めることは新規事項を追加するものでない、と主張する。
そして、その主な根拠は、段落【0032】、【0033】における、B_(2)O_(3)含量に関する、ディスプレイの処理時のガラスシートの垂下量低減のために「適度に低く保つのが望まし」く、「ひずみ点」を低下させる傾向があることから「できる限り低く保つのが好まし」く、「耐久性」の制御の点から「低く保つのが望ましい」との記載、及び、下限値がない「5.0モルパーセント以下」の記載である。
しかしながら、これらの記載から、「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」とすることが、自明ではないことは、既に上記(3)で検討し、記載したとおりであるから、審判請求人の斯かる主張は採用できない。

イ また、審判請求人は、【課題を解決するための手段】についての段落【0010】に、
「上述した目的に従って、具現化され、広く本明細書に記載された、開示された材料、化合物、組成物、物品、デバイスおよび方法は、フラットパネルディスプレイデバイス、例えば、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ(AMLCD)において基板として用いるのに所望の物理および化学特性を示すアルカリを含まないボロアルミノシリケートガラスである。その特定の態様によれば、このガラスは、ひずみ点に応じて良好な寸法安定性を有している。」
と記載されていることから、
「本明細書に記載された、開示された」ものは「ボロアルミノシリケートガラス」であり、「ボロ」(B:ホウ素)が必須成分であることを主張する。
しかしながら、B(ホウ素)が必須成分であることが、本願のガラスにおける配合割合の下限が「0<」であることを直ちに意味するものではない。
むしろ、「ボロアルミノシリケートガラス」であることを根拠とするのであれば、「ボロ」(B:ホウ素)を0<から1程度の微量含むものでなく、「アルミ」(Al:アルミ)や「シリ」(Si:ケイ素)と並ぶ程度に高い割合で含むものと理解される(例えば、「ガラス工学ハンドブック」(朝倉書店、1999年7月5日初版発行)p504表7.2「LCD用基板ガラスの種類と物性」には、アルカリを含まない「アルミノホウケイ酸ガラス」の組成例として、重量割合であるが「SiO_(2) 56」「Al_(2)O_(3) 13」「B_(2)O_(3) 6」「RO(審決注:アルカリ土類酸化物) 24」「その他 1」の組成例が挙げられている。なお、B_(2)O_(3) は、分子量が比較的小さいため、当該組成例を、モル換算すると、B_(2)O_(3) は6と同程度かそれ以上の値となる。)。
よって、審判請求人の斯かる主張は採用できない。

(5)新規事項の追加の有無についてのまとめ
以上のとおりであるから、上記補正後の請求項1の「アルカリを含まないガラス」における「B_(2)O_(3)」の配合割合の範囲は、「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」であるところ、当該配合割合の範囲、特に「>0.0-1未満」の範囲、については、本願当初明細書等のすべての記載を総合することにより導かれる技術的事項との関係において、新たな技術的事項を導入しないものということはできない。そうすると、請求項1についての上記補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるということはできない。

4 むすび
よって、請求項1についての上記補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものであり、同条第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものではないから、その余の点について検討するまでもなく、本件補正は、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
本件補正は、上記のとおり却下されたので、その補正前の特許請求の範囲は、平成26年7月2日付けで手続補正がされたとおりのものであるところ、その請求項1は、上記第2の1に記載したとおりのものである(以下に、再掲する。)。

「酸化物基準においてモルパーセントで、
SiO_(2) 64.0-72.0
Al_(2)O_(3) 9.0-16.0
B_(2)O_(3) >0.0-5.0
MgO 2.0-7.5
CaO 2.0-7.5
BaO 1.0-6.0
を含むと共に、任意成分としてSrOを含み、
(1)1.15≦Σ(MgO+CaO+SrO+BaO)/(Al_(2)O_(3))≦1.50 という関係を満たし、式中、Al_(2)O_(3)、MgO、CaO、BaO、SrOが、各酸化物成分のモルパーセントを表すものであり、
(2)任意成分であるSrOを含む場合は、モルパーセントにおけるBaO/SrO比が2.0以上であり、
(3)SiO_(2)、Al_(2)O_(3)、B_(2)O_(3)、MgO、CaO、BaO、SrO,La_(2)O_(3)以外のいかなる酸化物の量も2.0モルパーセント以下であり、
(4)700℃以上のひずみ点を有し、
(5)600℃で5分間の熱処理に対して30ppm未満の寸法変化を呈し、
(6)28.0GPa・cm^(3)/g以上のヤング率/密度比を有する、
アルカリを含まないガラス。」

第4 原査定の理由
原査定は、
「この出願については、平成26年7月31日付け拒絶理由通知書に記載した理由1?3によって、拒絶をすべきものです。」
というものである。
そして、平成26年7月31日付け拒絶理由理由によれば、理由1は、
「平成26年7月2日付けでした手続補正は、下記の点で願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものでないから、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。」
というものであり、当該理由1における「下記の点」とは、請求項1の補正について、
「平成26年7月2日付け手続補正において、B_(2)O_(3)成分の含有量を>0.0-5.0(モルパーセント)とし、SrO成分を任意成分として含むものとする補正事項を含む補正が行われた。
上記補正事項を含む補正に伴い、B_(2)O_(3)成分は、下限値が1モル%未満を包含し、SrO成分は、上限値が4.5モル%を超えるものを包含することとなる。
一方、願書に最初に添付された明細書、特許請求の範囲又は図面には、SiO_(2)を64.0?72.0モル%、Al_(2)O_(3)を9.0?16.0モル%、MgOを2.0?7.5モル%、CaOを2.0?7.5モル%、BaOを1.0?6.0%含有するガラスにおいて、B_(2)O_(3)の下限値が1モル%未満で、SrOの上限値が4.5モル%を超えることについて、記載も示唆もされてされていない。
したがって、当該補正がなされた請求項1に記載した事項は、願書に最初に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面に記載した事項の範囲内にないことが明らかである。」
というものであり、斯かる原査定においては、審査基準の第III部第I節4.2(「第III部 明細書、特許請求の範囲又は図面の補正」の「第I節 新規事項」の「4 特許請求の範囲の補正」)の該当箇所を摘示したうえで、請求項1についての補正について、
「B_(2)O_(3)の下限値を「>0.0」する補正は、上記「補正により、例えば、請求項に記載された数値範囲の最小値を変更して新たな数値範囲とした場合、新たな数値範囲の最小値が当初明細書等に記載されており、かつ、補正後の数値範囲が当初明細書等に記載された数値範囲に含まれている場合」に該当しない。」と判断している。

第5 当審の判断
当審は、原査定の上記理由のとおり、平成26年7月2日付け手続補正における請求項1についての補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものである、と判断する。

平成26年7月2日付け手続補正後の請求項1は、「アルカリを含まないガラス」を(酸化物基準においてモルパーセントで)「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」を含む、という事項を含むものであるところ、請求項1に上記事項を含むという点において、平成26年7月2日付け手続補正は、平成27年8月27日付け手続補正と同様である。
そして、「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」を含む、という事項については、「第2 平成27年8月27日付け手続補正についての補正の却下の決定」において、平成27年8月27日付け手続補正についてしたのと同様の検討内容を適用することができ、平成26年7月2日付け手続補正は、「B_(2)O_(3) >0.0-5.0」を含む、という事項を含む点で、「第2 平成27年8月27日付け手続補正についての補正の却下の決定」に平成27年8月27日付け手続補正について記載した理由と同様の理由によって、その請求項1についての補正は、本願当初明細書等に記載した事項の範囲内においてするものであるとはいえない。
よって、平成26年7月2日付け手続補正は、特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさないものである。

第6 むすび
以上のとおりであるから、本願は、特許法第49条第1項第1号の「その特許出願の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面についてした補正が第十7条の2第3項又は第四項に規定する要件を満たしていないとき。」に該当するから、その余の点について検討するまでもなく、同条の規定により、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-04 
結審通知日 2016-10-11 
審決日 2016-10-28 
出願番号 特願2013-23182(P2013-23182)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (C03C)
P 1 8・ 55- Z (C03C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 潤  
特許庁審判長 大橋 賢一
特許庁審判官 山本 雄一
新居田 知生
発明の名称 熱および化学安定性が高いガラス組成物ならびにその製造方法  
代理人 柳田 征史  
代理人 佐久間 剛  
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