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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 H01G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G
管理番号 1326235
審判番号 不服2016-2148  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-02-12 
確定日 2017-03-15 
事件の表示 特願2013-260973「多層セラミック素子」拒絶査定不服審判事件〔平成26年 9月 8日出願公開、特開2014-165492〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成25年12月18日(パリ条約に基づく優先権主張 平成25年2月26日 韓国(KR))の出願であって、平成26年12月19日付け拒絶理由通知に対する応答時、平成27年5月7日付けで手続補正がなされたが、同年10月8日付けで拒絶査定がなされ、これに対して、平成28年2月12日付けで拒絶査定不服審判の請求及び手続補正がなされたものである。

2.平成28年2月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年2月12日付けの手続補正を却下する。
[理 由]
(1)補正後の本願発明
平成28年2月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
本件補正前には、
「【請求項1】
複数の誘電体シートが積層された構造を有し、かつ互いに離隔した側面および前記側面を連結する周縁面を有する素子本体と、
前記誘電体シートに形成された内部電極と、
前記側面を覆う前面部および前記前面部から延長して、前記周縁面の一部を覆うバンド部を有する外部電極と、
前記内部電極と前記周縁面との間で互いに面対向するように配置された複数の金属パターンからなる補強パターンと、を含み、
前記金属パターンの間隔は、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さよりも小さく、
前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さに対する、前記金属パターンの間隔の比は、0.100よりも大きく、0.950未満である、多層セラミック素子。」

とあったものが、

「【請求項1】
複数の誘電体シートが積層された構造を有し、かつ互いに離隔した側面および前記側面を連結する周縁面を有する素子本体と、
前記誘電体シートに形成された内部電極と、
前記側面を覆う前面部および前記前面部から延長して、前記周縁面の一部を覆うバンド部を有する外部電極と、
前記内部電極と前記周縁面との間で互いに面対向するように配置された複数の金属パターンからなる補強パターンと、を含み、
前記金属パターンの間隔は、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さよりも小さく、
前記金属パターンの間隔をD1、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さをD2とするとき、0.2≦D1/D2≦0.944を満たす、多層セラミック素子。」
と補正された。

上記補正は、実質的に、請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である、内部電極が形成された誘電体シートの厚さ(D2)に対する、金属パターンの間隔(D1)の比、すなわち「D1/D2」の値について、「0.100よりも大きく、0.950未満」であったのを、「0.2≦D1/D2≦0.944」とし、その範囲をより狭くする限定を付加するものである。
よって、本件補正は、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)否かについて以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開2012-44149号公報(以下、「引用例」という。)には、「セラミック電子部品」について、図面とともに以下の各記載がある(なお、下線は当審で付与した。)。
ア.「【請求項1】
長さ方向及び幅方向に沿って延びる第1及び第2の主面と、長さ方向及び厚み方向に沿って延びる第1及び第2の側面と、幅方向及び厚み方向に沿って延びる第1及び第2の端面とを有する直方体状のセラミック素体と、
前記セラミック素体の内部に形成されており、長さ方向及び幅方向に沿って延び、厚み方向において相互に対向している第1及び第2の内部電極と、
前記セラミック素体の上に形成されており、前記第1の内部電極に電気的に接続されている第1の外部電極と、
前記セラミック素体の上に形成されており、前記第2の内部電極に電気的に接続されている第2の外部電極と、
を備え、
前記第1及び第2の外部電極のそれぞれは、前記第1の主面の長さ方向における端部上に位置している第1の部分と、前記第1または第2の端面の上に位置している第2の部分とを有し、
前記セラミック素体は、前記第1及び第2の内部電極が厚み方向に対向している有効部と、前記有効部よりも前記第1の主面側に位置している第1の外層部と、前記有効部よりも前記第2の主面側に位置している第2の外層部とを含むセラミック電子部品であって、
前記第1の外層部に、長さ方向及び幅方向に沿って形成されており、厚み方向において前記第1及び第2の外部電極の前記第1の部分と一部分が対向している第1の補強層をさらに備え、
前記第1の補強層は、前記第1及び第2の端面のいずれにも露出しておらず、
前記第1の主面のうちの前記第1または第2の外部電極の前記第1の部分が設けられている部分において、前記第1の補強層と対向していない部分は、前記第1の補強層と対向している部分よりも厚み方向の中央寄りに位置している、セラミック電子部品。
・・・・・(中 略)・・・・・
【請求項5】
前記第1及び第2の外部電極のそれぞれは、前記第2の主面の長さ方向における端部上に位置している第3の部分をさらに有し、
前記第2の外層部に、長さ方向及び幅方向に沿って形成されており、厚み方向において前記第1及び第2の外部電極の前記第2の部分と一部分が対向している第2の補強層をさらに備え、
前記第2の補強層は、前記第1及び第2の端面のいずれにも露出しておらず、
前記第2の主面のうちの前記第1または第2の外部電極の前記第1の部分が設けられている部分において、前記第2の補強層と対向していない部分は、前記第2の補強層と対向している部分よりも厚み方向の中央寄りに位置している、請求項1?4のいずれか一項に記載のセラミック電子部品。」

イ.「【0032】
また、本実施形態のように、比較的低容量のセラミックコンデンサの場合、第1及び第2の内部電極の間の距離は、セラミック層10gの2?8層分となり得る。」

ウ.「【0048】
図3及び図7に示すように、第1の外層部10Bには、複数の第1の補強層17aが形成されている。複数の第1の補強層17aは、長さ方向L及び幅方向Wに沿って形成されている。複数の第1の補強層17aは、厚み方向Tに沿って積層されている。複数の第1の補強層17aは、セラミック素体10の長さ方向Lの両端部には形成されていない。複数の第1の補強層17aは、長さ方向Lの両端部を除く中央部にわたって連続的に形成されている。複数の第1の補強層17aは、セラミック素体10の内部に形成されており、セラミック素体10の表面に露出していない。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0051】
厚み方向において隣接している第1の補強層17aの間の距離は、厚み方向Tにおいて隣接している第1及び第2の内部電極11,12の間の距離よりも小さい。厚み方向において隣接している第1の補強層17aの間の距離は、厚み方向Tにおいて隣接している第1及び第2の内部電極11,12の間の距離の0.125倍?0.5倍であることが好ましい。このようにすることにより、複数の第1の補強層17aが設けられている領域における第1の補強層17aが占める体積の割合を、第1及び第2の内部電極11,12が設けられている有効部10Aにおける第1及び第2の内部電極11,12が占める体積の割合よりも大きくすることができる。
【0052】
図3に示すように、第2の外層部10Cには、複数の第2の補強層17bが形成されている。複数の第2の補強層17bは、長さ方向L及び幅方向Wに沿って形成されている。複数の第2の補強層17bは、厚み方向Tに沿って積層されている。複数の第2の補強層17bは、セラミック素体10の長さ方向Lの両端部には形成されていない。複数の第2の補強層17bは、長さ方向Lの両端部を除く中央部にわたって形成されている。複数の第2の補強層17bは、セラミック素体10の内部に形成されており、セラミック素体10の表面に露出していない。本実施形態では、第1の補強層17aの平面形状と第2の補強層17bの平面形状は、実質的に等しい。
・・・・・(中 略)・・・・・
【0055】
厚み方向において隣接している第2の補強層17bの間の距離は、厚み方向Tにおいて隣接している第1及び第2の内部電極11,12の間の距離よりも小さい。厚み方向において隣接している第2の補強層17bの間の距離は、厚み方向Tにおいて隣接している第1及び第2の内部電極11,12の間の距離の0.125倍?0.5倍であることが好ましい。このようにすることにより、複数の第2の補強層17bが設けられている領域における第2の補強層17bが占める体積の割合を、第1及び第2の内部電極11,12が設けられている有効部10Aにおける第1及び第2の内部電極11,12が占める体積の割合よりも大きくすることができる。
【0056】
なお、第1及び第2の補強層17a、17bの材質は、セラミック素体10よりも展延性に優れている材料であれば特に限定されない。第1及び第2の補強層17a、17bは、例えば、Ni、Cu,Ag,Pd,Auなどの金属や、Ag-Pd合金などの、これらの金属の一種以上を含む合金により形成することができる。」

エ.「【0065】
なお、本実施形態では、厚み方向Tにおいて隣接している補強層17a、17bの間には、1枚のセラミックグリーンシート20が位置することとなる。一方、厚み方向Tにおいて隣接している第1及び第2の内部電極11,12の間には、複数枚のセラミックグリーンシート20が位置することとなる。」

オ.「【0082】
また、本実施形態では、厚み方向において隣接している補強層17a、17b間の距離が、厚み方向において隣接している第1及び第2の内部電極11,12間の距離よりも短くされている。このため、補強層17a、17bが設けられている領域における補強層17a、17bの占める体積割合が大きい。よって、セラミック素体10のうち、補強層17a、17bが設けられている領域の機械的強度がより高くされている。従って、セラミック電子部品1の機械的強度がさらに高められている。
【0083】
また、厚み方向において隣接している補強層17a、17b間の距離が短いため、補強層17a、17bをより多く設けることができる。従って、セラミック電子部品1の機械的強度がさらに高められている。」

カ.「【0093】
(実施例)
上記第1の実施形態に係るセラミック電子部品1を上記第1の実施形態に記載の製造方法により作製した。なお、詳細な条件は以下の通りである。本実施例において得られたセラミック電子部品の断面を電子顕微鏡で観察した結果、第1及び第2の主面10a、10bのそれぞれの両端部が低くなっていることを確認した。
【0094】
(実施例の条件)
寸法:長さ1.0mm、幅0.5mm、厚み0.15mm
設計容量:1nF
セラミック素体の作製に用いたセラミック材料:BaTiO_(3)を主成分とする誘電体セラミックス
セラミック層の厚み(焼成後):1.35μm
内部電極11,12、ダミー電極18,19の材質:Ni
内部電極11,12、ダミー電極18,19の厚み(焼成後):0.75μm
内部電極11,12間の距離:9.45μm
内部電極11,12の枚数:4枚
第1及び第2の補強層17a、17bのそれぞれの枚数:20枚
第1及び第2の補強層17a、17bの材質:Ni
第1及び第2の補強層17a、17bのそれぞれにおける補強層間の距離:1.35μm
焼成最高温度:1200℃
焼成時間:2時間
焼成雰囲気:還元性雰囲気
第1の導電層15の材質:Ni
第2の導電層16の材質:Cu」

・上記引用例に記載の「セラミック電子部品」は、上記「ア.」の記載事項、及び図1?3等によれば、第1及び第2の主面10a,10bと、第1及び第2の側面10c,10dと、第1及び第2の端面10e,10fとを有する直方体状のセラミック素体10と、セラミック素体10の内部に形成されており、厚み方向Tにおいて相互に対向している第1及び第2の内部電極11,12と、セラミック素体10の上に形成されており、第1の内部電極11に電気的に接続されている第1の外部電極13と、セラミック素体の上に形成されており、第2の内部電極12に電気的に接続されている第2の外部電極14と、を備え、第1及び第2の外部電極13,14のそれぞれは、第1の主面10aの長さ方向Lにおける端部上に位置している第1の部分13a,14aと、第1または第2の端面10e,10fの上に位置している第2の部分13b,14bと、第2の主面10bの長さ方向Lにおける端部上に位置している第3の部分13c,14cとを有し、セラミック素体10は、第1及び第2の内部電極11,12が厚み方向Tに対向している有効部10Aと、有効部10Aよりも第1の主面10a側に位置している第1の外層部10Bと、有効部10Aよりも第2の主面10b側に位置している第2の外層部10Cとを含むセラミック電子部品であって、第1の外層部10Bに第1の補強層17aをさらに備え、第2の外層部10Cに第2の補強層17bをさらに備えているセラミック電子部品に関するものである。
・上記「イ.」、「エ.」、「カ.」の記載事項、及び図3等によれば、セラミック素体10は、複数のセラミック層10gが積層されてなるものであると理解できる。
・上記「ウ.」、「カ.」の記載事項、及び図3等によれば、第1及び第2の補強層17a,17bは、それぞれ複数の金属(Niなど)からなる補強層が厚み方向に積層されてなるものである。
・さらに上記「ウ.」の段落【0051】と【0055】、「オ.」の記載事項によれば、第1及び第2の補強層17a,17bが設けられている領域の機械的強度をより高くするために、第1及び第2の補強層17a,17bのそれぞれにおける、厚み方向Tにおいて隣接している金属からなる補強層間の距離は、厚み方向Tにおいて隣接している第1及び第2の内部電極11,12の間の距離よりも小さく(0.125倍?0.5倍であることが好ましい)されている。
なお、上記「カ.」の記載事項によれば、実施例では、第1及び第2の補強層17a,17bのそれぞれにおける金属からなる補強層間の距離は1.35μm(1.35μmの厚みのセラミック層1枚分)、内部電極11,12の間の距離は9.45μm(1.35μmの厚みのセラミック層7枚分)であり、その比は1.35/9.45≒0.143である。

したがって、上記記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「複数のセラミック層が積層されてなり、第1及び第2の主面と、第1及び第2の側面と、第1及び第2の端面とを有する直方体状のセラミック素体と、
前記セラミック素体の内部に形成されており、厚み方向において相互に対向している第1及び第2の内部電極と、
前記セラミック素体の上に形成されており、前記第1及び第2の内部電極にそれぞれ電気的に接続され、前記第1の主面の長さ方向における端部上に位置している第1の部分と、前記第1または第2の端面の上に位置している第2の部分と、前記第2の主面の長さ方向における端部上に位置している第3の部分とをそれぞれ有している第1及び第2の外部電極と、を備え、
前記セラミック素体は、前記第1及び第2の内部電極が厚み方向に対向している有効部と、当該有効部よりも前記第1の主面側に位置している第1の外層部と、当該有効部よりも前記第2の主面側に位置している第2の外層部とを含み、前記第1及び第2の外層部にそれぞれ第1及び第2の補強層をさらに備え、
前記第1及び第2の補強層は、それぞれ複数の金属からなる補強層が厚み方向に積層されてなるものであり、
前記第1及び第2の補強層が設けられている領域の機械的強度をより高くするために、前記第1及び第2の補強層のそれぞれにおける、厚み方向において隣接している前記金属からなる補強層間の距離は、厚み方向において隣接している前記第1及び第2の内部電極の間の距離よりも小さく(0.125倍?0.5倍であることが好ましく、実施例では約0.143倍)されている、セラミック電子部品。」

(3)対比・判断
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、
ア.引用発明における「複数のセラミック層が積層されてなり、第1及び第2の主面と、第1及び第2の側面と、第1及び第2の端面とを有する直方体状のセラミック素体と」によれば、
引用発明における、複数の「セラミック層」、「第1及び第2の端面」、「第1及び第2の主面」、「セラミック素体」が、それぞれ本願補正発明でいう、複数の「誘電体シート」、「互いに離隔した側面」、側面を連結する「周縁面」、「素子本体」に相当するといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「複数の誘電体シートが積層された構造を有し、かつ互いに離隔した側面および前記側面を連結する周縁面を有する素子本体」を含むものである点で一致する。

イ.引用発明における「前記セラミック素体の内部に形成されており、厚み方向において相互に対向している第1及び第2の内部電極と」によれば、
引用発明における「第1及び第2の内部電極」は、本願補正発明における「内部電極」に相当し、
本願補正発明と引用発明とは、「前記誘電体シートに形成された内部電極」を含むものである点で一致する。

ウ.引用発明における「前記セラミック素体の上に形成されており、前記第1及び第2の内部電極にそれぞれ電気的に接続され、前記第1の主面の長さ方向における端部上に位置している第1の部分と、前記第1または第2の端面の上に位置している第2の部分と、前記第2の主面の長さ方向における端部上に位置している第3の部分とをそれぞれ有している第1及び第2の外部電極と」によれば、
引用発明における「第1及び第2の外部電極」は、本願補正発明における「外部電極」に相当し、
そして、引用発明の「第1及び第2の外部電極」における、第1または第2の端面の上に位置している「第2の部分」、第1及び第2の主面の長さ方向における端部上にそれぞれ位置している「第1の部分」及び「第3の部分」が、それぞれ本願補正発明でいう、側面を覆う「前面部」、前面部から延長して周縁面の一部を覆う「バンド部」に相当するといえ、
本願補正発明と引用発明とは、「前記側面を覆う前面部および前記前面部から延長して、前記周縁面の一部を覆うバンド部を有する外部電極」を含むものである点で一致する。

エ.引用発明における「前記セラミック素体は、前記第1及び第2の内部電極が厚み方向に対向している有効部と、当該有効部よりも前記第1の主面側に位置している第1の外層部と、当該有効部よりも前記第2の主面側に位置している第2の外層部とを含み、前記第1及び第2の外層部にそれぞれ第1及び第2の補強層をさらに備え、前記第1及び第2の補強層は、それぞれ複数の金属からなる補強層が厚み方向に積層されてなるものであり」によれば、
引用発明における、複数の「金属からなる補強層」が、本願補正発明でいう、複数の「金属パターン」に相当し、
引用発明における「第1及び第2の補強層」は、複数の金属からなる補強層が厚み方向に積層されてなるものであることから、本願補正発明でいう、複数の金属パターンからなる「補強パターン」に相当する。
そして、引用発明の「第1及び第2の補強層」にあっても、第1及び第2の内部電極が厚み方向に対向している有効部よりも第1及び第2の主面側に位置している第1及び第2の外層部にそれぞれ設けられていることから、(第1あるいは第2の)内部電極と第1及び第2の主面との間にそれぞれ配置されたものであるといえる。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記内部電極と前記周縁面との間で互いに面対向するように配置された複数の金属パターンからなる補強パターン」を含むものである点で一致する。

オ.引用発明における「前記第1及び第2の補強層が設けられている領域の機械的強度をより高くするために、前記第1及び第2の補強層のそれぞれにおける、厚み方向において隣接している前記金属からなる補強層間の距離は、厚み方向において隣接している前記第1及び第2の内部電極の間の距離よりも小さく(0.125倍?0.5倍であることが好ましく、実施例では約0.143倍)されている」によれば、
引用発明における「厚み方向において隣接している金属からなる補強層間の距離」は、本願補正発明でいう「金属パターンの間隔」、つまり「D1」に相当し、引用発明における「厚み方向において隣接している前記第1及び第2の内部電極の間の距離」は、本願補正発明でいう「内部電極が形成された誘電体シートの厚さ」、つまり「D2」に相当する。
そして、引用発明においても、D1はD2よりも小さく、その比であるD1/D2の値は、好ましくは「0.125?0.5」であり、0.2?0.5の範囲において、本願補正発明で特定する「0.2≦D1/D2≦0.944」を満たしている。
したがって、本願補正発明と引用発明とは、「前記金属パターンの間隔は、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さよりも小さく、前記金属パターンの間隔をD1、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さをD2とするとき、0.2≦D1/D2≦0.944を満たす」ものである点で一致するということができる。

カ.そして、引用発明における「セラミック電子部品」は、複数のセラミック層が積層されてなるものであるから、本願補正発明でいう「多層セラミック素子」に相当するものである。

よって、本願補正発明と引用発明とは、
「複数の誘電体シートが積層された構造を有し、かつ互いに離隔した側面および前記側面を連結する周縁面を有する素子本体と、
前記誘電体シートに形成された内部電極と、
前記側面を覆う前面部および前記前面部から延長して、前記周縁面の一部を覆うバンド部を有する外部電極と、
前記内部電極と前記周縁面との間で互いに面対向するように配置された複数の金属パターンからなる補強パターンと、を含み、
前記金属パターンの間隔は、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さよりも小さく、
前記金属パターンの間隔をD1、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さをD2とするとき、0.2≦D1/D2≦0.944を満たす、多層セラミック素子。」
である点で一致し、相違するところがない。

よって、本願補正発明は、引用例に記載された発明である。

<<予備的見解>>
また仮に、「D1/D2」の値について、引用例の実施例では「約0.143」である例が示されているのみであることから、本願補正発明と引用発明とは以下の点で相違するものと認められるとして、本願補正発明が、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるか否かについての検討もしておく。
[相違点]
内部電極が形成された誘電体シートの厚さ(D2)に対する、金属パターンの間隔(D1)の比であるD1/D2の値について、本願補正発明では、その範囲が「0.2≦D1/D2≦0.944」を満たすものである旨特定するのに対し、引用発明では、実施例で約0.143である点。

上記相違点について検討する。
上記「オ.」でも指摘したように、引用発明においても、D1はD2よりも小さく、その比であるD1/D2の値は、好ましくは「0.125?0.5」であるとされているのであるから、たとえ実施例としては約0.143のみが例示されているとしても、好ましいとされる「0.125?0.5」の範囲の他の値も選択し得るものであることは明らかであり、当該他の値として例えば0.2?0.5の範囲の値を選択し、本願補正発明で特定する「0.2≦D1/D2≦0.944」を満たすものとすることは当業者であれば容易になし得ることである。

そして、本願補正発明が奏する効果についてみても、引用発明から当業者が十分に予測できたものであって、格別顕著なものがあるとはいえない。

したがって、仮に、「D1/D2」の値について、本願補正発明と引用発明とに相違点が認められるとしても、本願補正発明は、引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(4)本件補正についてのむすび
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、また仮に相違点が認められるとしても、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成28年2月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成27年5月7日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数の誘電体シートが積層された構造を有し、かつ互いに離隔した側面および前記側面を連結する周縁面を有する素子本体と、
前記誘電体シートに形成された内部電極と、
前記側面を覆う前面部および前記前面部から延長して、前記周縁面の一部を覆うバンド部を有する外部電極と、
前記内部電極と前記周縁面との間で互いに面対向するように配置された複数の金属パターンからなる補強パターンと、を含み、
前記金属パターンの間隔は、前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さよりも小さく、
前記内部電極が形成された前記誘電体シートの厚さに対する、前記金属パターンの間隔の比は、0.100よりも大きく、0.950未満である、多層セラミック素子。」

(1)引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記「2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である、内部電極が形成された誘電体シートの厚さ(D2)に対する、金属パターンの間隔(D1)の比、すなわち「D1/D2」の値について、その範囲をより狭くする限定を省いたものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に「D1/D2」の値について、その範囲をより狭くする限定を付加したものに相当する本願補正発明が前記「2.(3)」に記載したとおり、引用例に記載された発明であるから、本願発明も、同様の理由により、引用例に記載された発明である(「D1/D2」の値について、引用発明の好ましいとされる0.125?0.5も、実施例の約0.143についても、本願発明で特定する「0.100よりも大きく、0.950未満」の範囲に完全に含まれている。)。

(3)むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-10-12 
結審通知日 2016-10-18 
審決日 2016-10-31 
出願番号 特願2013-260973(P2013-260973)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01G)
P 1 8・ 113- Z (H01G)
P 1 8・ 575- Z (H01G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 佐久 聖子安川 奈那田中 晃洋  
特許庁審判長 國分 直樹
特許庁審判官 酒井 朋広
井上 信一
発明の名称 多層セラミック素子  
代理人 加藤 公延  

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