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審決分類 審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01D
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01D
管理番号 1326264
審判番号 不服2016-6231  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-04-26 
確定日 2017-03-16 
事件の表示 特願2011-249656「湾曲センサ」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 5月30日出願公開、特開2013-104812〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 出願の経緯
本願は、平成23年11月15日の出願であって、平成27年6月12日付けで拒絶理由が通知され、平成27年8月7日付けで手続補正がなされたが、平成28年1月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年4月26日に拒絶査定不服審判が請求され、同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年4月26日付け手続補正についての補正却下の決定
[結論]
平成28年4月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
[理由]
1 本件補正について
ア 本件補正後の特許請求の範囲の請求項1
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1の記載は、次のとおりのものである(下線は、補正箇所を示す。)。
「【請求項1】
光源と、
前記光源に光学的に結合された光供給用導光部材と、
物理化学状態に応じて光学特性が変化する特性検出部をおのおの有する複数の検出用導光部材と、
前記光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部と、
前記複数の検出用導光部材によって導光された光を分離して検出する光分離検出器を有しており、
前記光分配部は、前記光供給用導光部材から出射した光の配光特性を変換して、前記複数の検出用導光部材に光を結合する配光変換部を有しており、
前記配光変換部は、前記光供給用導光部材から出射した光の拡がりを抑制する働きをする湾曲センサ。」

イ 本件補正前の請求項1及び請求項2
平成27年8月7日付けの手続補正書により補正された、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び請求項2の記載は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
光源と、
前記光源に光学的に結合された光供給用導光部材と、
物理化学状態に応じて光学特性が変化する特性検出部をおのおの有する複数の検出用導光部材と、
前記光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部と、
前記複数の検出用導光部材によって導光された光を分離して検出する光分離検出器を有している湾曲センサ。
【請求項2】
請求項1において、前記光分配部は、前記光供給用導光部材から出射した光の配光特性を変換して、前記複数の検出用導光部材に光を結合する配光変換部を有している湾曲センサ。」

すると、本件補正は、本件補正後の請求項1については、本件補正前の請求項1を引用する請求項2における「配光変換部」について、「前記配光変換部は、前記光供給用導光部材から出射した光の拡がりを抑制する働きをする」との限定を付加して、新たに請求項1とするものであるから、特許法第17条の2第5項第2号(特許請求の範囲の減縮)に掲げる事項を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本件補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2 本件補正発明
本件補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下、本件補正発明」という。)は、上記「1」「ア」に記載したとおりのものである。

3 引用例・引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された、本願出願前に頒布された刊行物である、特開2007-44412号公報(以下、「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。)。

「【0001】
本発明は、内視鏡の使用時の挿入管の形状を検知し得る内視鏡挿入形状検出プローブに関する。」

「【0007】
また、出用光伝達手段は第1の光ファイバを有し、第1の光ファイバに伝達する光を損失させる光損失部を検出用入射部からの所定の距離だけ離れた位置の第1の光ファイバの中心から所定の径方向に形成することにより曲がり角度に応じて光の伝達量が変化することが好ましい。」

「【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0014】
まず、内視鏡挿入形状検出プローブ10の構成について図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態を適用した内視鏡挿入形状検出プローブの外観図である。
【0015】
内視鏡挿入形状検出プローブ10は、プローブ本体20、モジュール30、およびコネクタ40によって構成される。プローブ本体20はモジュール30に接続される。また、モジュール30は、ケーブル11を介してコネクタ40に接続される。
【0016】
図2に示すように、プローブ本体20が、内視鏡50の鉗子チャンネル51に挿入される。内視鏡50の使用時に、プローブ本体20は内視鏡50の挿入管52とともに体内などに挿入される。体内に挿入されるときに挿入管52に沿って、プローブ本体20の形状は変化する。
【0017】
プローブ本体20の形状が、モジュール30によって検出される。モジュール30に検出された形状に相当する信号は、コネクタ40を介して信号処理装置60に送られる。信号処理装置60において、入力された信号に対して所定の信号処理が行われる。所定の信号処理が行われた信号がモニタ61に送られ、プローブ本体20の形状が表示される。
【0018】
次にプローブ本体20の構成について図3を用いて説明する。図3は、プローブ本体20の透視図である。プローブ本体20は、光供給用ファイバ21、曲率検出用ファイバ22、ミラー23、およびシース24によって構成される。プローブ本体20の外径は、使用が予定される内視鏡の鉗子チャンネルの内径より細くなるように設計される。
【0019】
光供給用ファイバ21および曲率検出用ファイバ22は光ファイバであり、一端から入射された光を他端まで伝達することが可能である。光供給用ファイバ21の一端は、モジュール30の内部に設けられる光源(図示せず)光学的に接続される。光源から出射される光が光供給用ファイバ21の一端に入射され、他端から出射される。
【0020】
曲率検出用ファイバ22は光供給用ファイバ21に沿って延ばされる。また、図4に示すように、複数の曲率検出用ファイバ22が光供給用ファイバ21を芯にして取り囲むように配置される。
【0021】
光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端は、ともに単一のミラー23によって覆われる。したがって、光供給用ファイバ21から出射される光はミラー23によって反射され、曲率検出用ファイバ22に入射される。
【0022】
光供給用ファイバ21、曲率検出用ファイバ22、およびミラー23は、シース24によって覆われる。シース24は生体適合性を有する部材によって形成される。
【0023】
曲率検出用ファイバ22は、ミラー23側の端部付近(図3符合A参照)においてミラー23とともにシース24に接着される。また、曲率検出用ファイバ22は後述するように光損失部25が設けられる付近(図3符合B参照)においてシース24に接着される。なお、シース24と曲率検出用ファイバ22との接着、およびシース24とミラー23との接着には、光を吸収可能な接着剤が用いられる。
【0024】
曲率検出用ファイバ22には、光損失部25が設けられる。光損失部25について図5を用いて説明する。曲率検出用ファイバ22は、コア26にクラッド27を被膜することによって形成される。クラッド27の一部を欠損させることにより、光損失部25が形成される。」

「【0033】
曲率検出用ファイバ22の出射端から出射される光の光量に基づいて、光損失部25における曲率検出用ファイバ22の曲げ角度を求めることが可能である。以下に、その原理について簡単に説明する。」

「【0036】
一定の光量の光を曲率検出用ファイバ22に入射するとき、出射端からの光の出射量と光損失部25における曲げ角度とは一定の対応関係を有する。したがって、出射端における光の受光量を検出することにより、光損失部25における曲率検出用ファイバ22および挿入管52の曲げ角度が求められる。」

「【0039】
曲率検出用ファイバ22の出射端は、モジュール30の内部に設けられる受光素子(図示せず)に光学的に接続される。受光素子は例えばフォトダイオードであって、受光量を検知可能である。すなわち、受光量に応じた電気信号が曲率信号として出力される。」
【0040】
前述のように、それぞれの曲率検出用ファイバ22からの出射光量に基づく曲率信号がコネクタ40を介して信号処理装置60に送られる。複数の曲率信号に対して信号処理装置60において所定の信号処理が施され、モニタ61に、プローブ本体20の形状、すなわち内視鏡50の挿入管52の形状が表示される。」

「【0043】
また、内視鏡の正確な挿入形状の検出のためには、曲率検出用ファイバ22に入射する光の光量が一定であることが求められる。本実施形態では、曲率検出用ファイバ22とミラー23とをシース24に接着することによって、曲率検出用ファイバ22の入射端をミラー23に対して固定させる。この結果、曲率検出用ファイバ22とミラー23との境界からの光の漏れが防がれ、曲率検出用ファイバ22に入射する光の光量が一定に保たれる。」

よって、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる
(括弧内は、認定の根拠とした記載箇所である。なお、段落【0019】の「光源(図示せず)光学的に接続される」は「光源(図示せず)と光学的に接続される」の誤記と解した。)
「内視鏡挿入形状検出プローブ(【0001】)であって、
内視鏡挿入形状検出プローブ10は、プローブ本体20、モジュール30、およびコネクタ40によって構成され、(【0015】)、
プローブ本体20は、光供給用ファイバ21、曲率検出用ファイバ22、ミラー23、およびシース24によって構成され(【0018】)、
光供給用ファイバ21および曲率検出用ファイバ22は光ファイバであり、一端から入射された光を他端まで伝達することが可能であり、光供給用ファイバ21の一端は、モジュール30の内部に設けられる光源と光学的に接続され、光源から出射される光が光供給用ファイバ21の一端に入射され、他端から出射され(【0019】)、
光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端は、ともに単一のミラー23によって覆われ、したがって、光供給用ファイバ21から出射される光はミラー23によって反射され、曲率検出用ファイバ22に入射され(【0021】)、
曲率検出用ファイバ22には、光損失部25が設けられ(【0024】)、
一定の光量の光を曲率検出用ファイバ22に入射するとき、出射端からの光の出射量と光損失部25における曲げ角度とは一定の対応関係を有するので、出射端における光の受光量を検出することにより、光損失部25における曲率検出用ファイバ22の曲げ角度が求められ(【0036】)、
曲率検出用ファイバ22の出射端は、モジュール30の内部に設けられる受光素子に光学的に接続され、受光量に応じた電気信号が曲率信号として出力され(【0039】)、
それぞれの曲率検出用ファイバ22からの出射光量に基づく曲率信号がコネクタ40を介して信号処理装置60に送られ、複数の曲率信号に対して信号処理装置60において所定の信号処理が施され、モニタ61に、プローブ本体20の形状、すなわち内視鏡50の挿入管52の形状が表示される。(【0040】)、
内視鏡挿入形状検出プローブ。」

4 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
ア 引用発明における「光源」が、本件補正発明における「光源」に相当する。

イ 引用発明における「光供給用ファイバ21」は、その「一端は、モジュール30の内部に設けられる光源と光学的に接続され」るから、本件補正発明における「前記光源に光学的に結合された光供給用導光部材」に相当する。

ウ 本願明細書の段落【0046】には、「つまり、特性検出部42A?42Fは、特性検出部42A?42Fの湾曲形状に限らず、特性検出部42A?42Fの応力状態や温度、特性検出部42A?42Fに作用する電場や磁場や熱に依存して光学特性が変化してもよい。このほか、特性検出部42A?42Fは、化学物質を検出する機能を有していてもよい。つまり、特性検出部42A?42Fは、特性検出部42A?42Fに接する化学物質に依存して光学特性が変化してもよい。」(下線は、当審で付与した。)と記載されている。
したがって、本願補正発明における「物理化学状態に応じて光学特性が変化する」とは、「湾曲形状に限らず、応力状態や温度、電場や磁場や熱、化学物質に依存して光学特性が変化してもよい。」こと包括的に表現したものと解釈できるから、湾曲形状に依存して光学特性が変化することを包含していることは明らかである。
これに対し、引用発明において「一定の光量の光を曲率検出用ファイバ22に入射するとき、出射端からの光の出射量と光損失部25における曲げ角度とは一定の対応関係を有する」ことは、いいかえると、「曲がり角度に応じて光の伝達量が変化する」(引用例1段落【0007】参照。)ことであるから、引用発明における「光損失部25」は、「光損失部25における曲げ角度」に応じて、「曲率検出用ファイバ22」の光の伝達量が変化するものといえる。
よって、引用発明における、曲がり角度に応じて光の伝達量が変化する「光損失部25」が、本件補正発明における「物理化学状態に応じて光学特性が変化する特性検出部」に相当するといえる。

エ 上記「ウ」を踏まえると、引用発明における、おのおのに「光損失部25が設けられ」ている「複数の曲率検出用ファイバ22」が、本願補正発明における「各々物理化学状態に応じて光学特性が変化する特性検出部をおのおの有する複数の検出用導光部材」に相当するといえる。

オ 引用発明における「単一のミラー23」は、「光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端」を「覆」うものであって、「光供給用ファイバ21から出射される光はミラー23によって反射され、曲率検出用ファイバ22に入射され」るためのものである。
よって、引用発明における「単一のミラー23」は、「光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端」を「覆」うものであって、「光供給用ファイバ21から出射される光」を「反射」し、(上記のとおり「複数」の)「曲率検出用ファイバ22に入射」させるものであるから、本件補正発明における「光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部」に相当するといえる。

カ 引用発明では、「曲率検出用ファイバ22の出射端は、モジュール30の内部に設けられる受光素子に光学的に接続され、受光量に応じた電気信号が曲率信号として出力され」ているが、該「曲率信号」は「それぞれの曲率検出用ファイバ22からの出射光量に基づく曲率信号」であるから、引用発明における「受光素子」が、「複数の曲率検出用ファイバ22」によって導光された光をそれぞれに(つまり、分離して)検出していることは明らかである。
よって、引用発明における、「複数の曲率検出用ファイバ22」の「出射端」に「光学的に接続され」た「受光素子」が、本件補正発明における「前記複数の検出用導光部材によって導光された光を分離して検出する光分離検出器」に相当するといえる。

キ 引用発明における「内視鏡挿入形状検出プローブ」は、「光損失部25における曲率検出用ファイバ22の曲げ角度が求められ」、「複数の曲率信号」により「プローブ本体20の形状」を「検出」するためのものであるから、次の相違点は除いて、本件補正発明における「湾曲センサ」に相当する。

すると、本件補正発明と引用発明との一致点、相違点は次のとおりである。
(一致点)
「光源と、
前記光源に光学的に結合された光供給用導光部材と、
物理化学状態に応じて光学特性が変化する特性検出部をおのおの有する複数の検出用導光部材と、
前記光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部と、
前記複数の検出用導光部材によって導光された光を分離して検出する光分離検出器を有している、
湾曲センサ。」

(相違点)
本件補正発明における、前記光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部は、「前記光供給用導光部材から出射した光の配光特性を変換して、前記複数の検出用導光部材に光を結合する配光変換部を有しており、前記配光変換部は、前記光供給用導光部材から出射した光の拡がりを抑制する働きをする」のに対し、引用発明における「単一のミラー23」は、「光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端」を「覆」うものであって、「光供給用ファイバ21から出射される光」を「反射」し、「複数」の「曲率検出用ファイバ22に入射」させるものであるが、光供給用ファイバ21から出射される光の「配光特性を変換」して、複数の曲率検出用ファイバ22に光を「結合」する「配光変換部」であって、光供給用ファイバ21から出射される光の「拡がりを抑制する働き」をするものを有することは、明記されていない点。

5 判断
(1)新規性について
ア 引用発明における「単一のミラー23」は、「光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端」を「覆」うものであって、「光供給用ファイバ21から出射される光」を「反射」し、「複数」の「曲率検出用ファイバ22に入射」させるものであるから、「光供給用ファイバ21の一端」と「単一のミラー23」の光反射面との間、及び、「複数の曲率検出用ファイバ22の一端」と「単一のミラー23」の光反射面との間には、「光供給用ファイバ21から出射される光」を「複数」の「曲率検出用ファイバ22」に分配しうる程度の、光の伝達空間が設けられていることは、技術的に明らかである。

イ これに対し、本願明細書の段落【0051】には「光分配部30は、光ファイバー20から出射した光の配光特性を変換して、光ファイバー41A?41Fに光を結合する配光変換部31を有している。配光変換部31は、屈折率が1以上の透明物質を有している。この透明物質は、1以上の屈折率を有しており、光ファイバー20から出射した光の拡がりを抑制する働きをする。」と記載されている。
また、本願明細書の段落【0055】には「言い換えれば、配光変換部31は、光ファイバー20の光出射端面および光ファイバー束40の光入射端面と、光折り返し部32との間に存在する気体たとえば空気で構成されている。」と記載され、さらに段落【0057】には、「配光変換部31を構成する気体は、1以上の屈折率を有しており、光ファイバー20から出射した光の拡がりを抑制する働きをする。」と記載されている。

ウ 光学設計における技術常識から、引用発明において、「光供給用ファイバ21の一端」と「単一のミラー23」の光反射面との間、及び、「複数の曲率検出用ファイバ22の一端」と「単一のミラー23」の光反射面との間に設けられた光の伝達空間は、空気等の気体、若しくはガラス等の透明部材で形成されていると考えるのが自然であって、これらの屈折率は、いずれも1より大きいことから、上記「イ」における本願明細書の記載のとおり、「光供給用ファイバ21から出射される光」の拡がりを抑制する働きをするものといえる。

エ 以上のとおり、引用発明における「単一のミラー23」は、「光供給用ファイバ21から出射される光」の拡がりを抑制する働きをする光の伝達空間を有していると認められるから、これにより配光特性は変換されているといえる。
よって、上記相違点は、実質的な相違点ではない。

オ 以上のとおり、本件補正発明は引用発明であるから、本件補正発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2)進歩性について
仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとして、以下検討する。
ア 入射光ファイバから出射した光を、ミラーで反射させて出力ファイバに分配する際、導波路を設け、その長さを調整したり、該導波路における側面反射を利用したり、ミラーを凹面とするなどして、入射光ファイバから出射した光の拡がりを抑制するための工夫を施して、配光特性を変換することは、周知の事項である(例えば、特開昭56-43603号公報(第1頁右下欄第14行?第2頁左上欄第12行の「従来のミキシングロッドは、・・・光導波路31を出た光は・・・ガラス棒1の中を数回多重反射して端面22に接続されている反射板4で反射され、再びガラス棒1の中を多重反射して端面21へ到達したときには、端面21全体に光が均等に拡がっている。この光は、端面21に接続されている光導波路3に一様に結合してそれぞれの光導波路から取出される。この結果、光導波路31から出射した光は複数の光導波路3に均等に分配されて取出されるので、ミキシングロッドとして動作する。」及び第1図)、特開平1-291203号公報(第2頁左下欄第4?10行の「本発明は・・・出力光ファイバに対する結合パワーをほぼ一定にする導波路長は従来の約半分で済むという効果がある。」及び第1図)、特表2004-517331号公報(「キャップはファイバから出てくる光407を中心の帰還ファイバに戻す役目をする内側のミラー凹面405を含む。帰還する光は矢印408で示されている。光を反対の方向に導くこともできる。・・・後者の場合、中心ファイバが定常的な照明を与え、外周のファイバで別々の光検出器を用いて各ファイバにユニークな信号を生成する。」(段落【0121】)、及び図25)参照。)。

イ そして、引用発明は、「一定の光量の光を曲率検出用ファイバ22に入射するとき」の「出射端における光の受光量を検出する」ことで、「光損失部25における曲率検出用ファイバ22の曲げ角度が求められ」るものであるから、「光供給用ファイバ21から出射される光はミラー23によって反射され、曲率検出用ファイバ22に入射され」る際、光の漏れが防がれ、「複数の曲率検出用ファイバ22」に入射される光量が等しくなるような工夫を施すことが好ましいことは、引用例1の段落【0043】の「曲率検出用ファイバ22とミラー23との境界からの光の漏れが防がれ、曲率検出用ファイバ22に入射する光の光量が一定に保たれる。」との記載からも、また、その検出原理からみても明らかなことである。
よって、引用発明において、「光供給用ファイバ21から出射される光はミラー23によって反射され、曲率検出用ファイバ22に入射され」る際、上記周知の事項を適用し、「単一のミラー23」に導波路を設け、その長さを調整したり、該導波路における側面反射を利用したり、ミラーを凹面とするなどして、入射光ファイバから出射した光の拡がりを抑制する働きをする工夫を施こし、これにより、「単一のミラー23」が、光供給用ファイバ21から出射される光の「配光特性を変換」して複数の曲率検出用ファイバ22に光を「結合」する「配光変換部」であって、光供給用ファイバ21から出射される光の「拡がりを抑制する働き」をするものを有するようにして、上記相違点に係る本件補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

ウ また、本件補正発明の奏する作用効果は、引用発明及び周知の事項の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

エ よって、本件補正発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

6 まとめ
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
平成28年4月26日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、本願の請求項1乃至24に係る発明は、平成27年8月7日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1乃至24に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1を引用する請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2の[理由]「1」「イ」に記載したとおりのものである。
これを、独立形式で書き下せば、次のとおりである。
「光源と、
前記光源に光学的に結合された光供給用導光部材と、
物理化学状態に応じて光学特性が変化する特性検出部をおのおの有する複数の検出用導光部材と、
前記光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部と、
前記複数の検出用導光部材によって導光された光を分離して検出する光分離検出器を有しており、
前記光分配部は、前記光供給用導光部材から出射した光の配光特性を変換して、前記複数の検出用導光部材に光を結合する配光変換部を有している湾曲センサ。」

2 引用例・引用発明
原査定の拒絶の理由で引用された引用例1及びその記載事項は、前記第2の[理由]「3」に記載したとおりのものである。

3 対比・判断
ア 本願発明は、前記第2の[理由]で検討した本件補正発明から、「配光変換部」についての「前記配光変換部は、前記光供給用導光部材から出射した光の拡がりを抑制する働きをする」との限定を削除したものに相当する。

イ すると、前記第2の[理由]「4」の対比を踏まえると、本願発明と引用発明とは、次の点で相違する。
(相違点)
本願発明における、前記光供給用導光部材から前記複数の検出用導光部材に光を分配する光分配部は、「前記光供給用導光部材から出射した光の配光特性を変換して、前記複数の検出用導光部材に光を結合する配光変換部を有し」ているのに対し、引用発明における「単一のミラー23」は、「光供給用ファイバ21の一端と複数の曲率検出用ファイバ22の一端」を「覆」うものであって、「光供給用ファイバ21から出射される光」を「反射」し、「複数」の「曲率検出用ファイバ22に入射」させるものであるが、光供給用ファイバ21から出射される光の「配光特性を変換」して、複数の曲率検出用ファイバ22に光を「結合」する「配光変換部」を有することについては、明記されていない点。

ウ そこで、検討すると、前記第2の[理由]「5」「(1)」で述べたのと同様の理由により、上記相違点は、実質的な相違点ではないから、本願発明は引用発明である。
よって、本願発明は、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。

エ 仮に、上記相違点が実質的な相違点であるとしても、前記第2の[理由]「5」「(2)」で述べたのと同様の理由により、引用発明において、周知の事項を適用して、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことであって、本願発明の奏する作用効果も、格別顕著なものということはできない。
よって、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。
また、仮に、本願発明が引用発明ではないとしても、本願発明は、引用発明及び周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
したがって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2016-12-20 
結審通知日 2017-01-10 
審決日 2017-01-27 
出願番号 特願2011-249656(P2011-249656)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01D)
P 1 8・ 121- Z (G01D)
P 1 8・ 113- Z (G01D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 眞岩 久恵  
特許庁審判長 中塚 直樹
特許庁審判官 清水 稔
関根 洋之
発明の名称 湾曲センサ  
代理人 河野 直樹  
代理人 井上 正  
代理人 鵜飼 健  
代理人 野河 信久  
代理人 蔵田 昌俊  

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