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審決分類 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 取り消して特許、登録 H01Q
審判 査定不服 2項進歩性 取り消して特許、登録 H01Q
管理番号 1326328
審判番号 不服2016-8859  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-06-15 
確定日 2017-04-04 
事件の表示 特願2014- 17086「アンテナ装置及びこれを用いた携帯電子機器」拒絶査定不服審判事件〔平成27年 8月 6日出願公開,特開2015-144366,請求項の数(7)〕について,次のとおり審決する。 
結論 原査定を取り消す。 本願の発明は,特許すべきものとする。 
理由 第1 手続の経緯
本願は,平成26年1月31日の出願であって,平成27年11月26日付けで拒絶理由通知がされ,平成28年1月15日付けで手続補正され,同年3月23日付けで拒絶査定(原査定)がされ,これに対し,同年6月15日に拒絶査定不服審判の請求がされ,その後,同年12月12日付けで当審より拒絶理由通知(以下,「当審拒絶理由通知」という。)がされ,平成29年2月7日付けで手続補正がされたものである。

第2 原査定の概要
原査定の概要は,次のとおりである。

原査定時における請求項1ないし4及び6ないし8に係る発明は,引用文献Aに記載された発明に基いて,請求項5に係る発明は,引用文献A及びBに記載された発明に基いて,引用文献Cに記載された周知技術を参酌することにより,その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下,「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
A.米国特許出願公開第2013/0307746号明細書
B.国際公開第2010/122685号
C.特許第5696810号公報

第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は,次のとおりである。

[理由1]
本願は,当審拒絶理由通知時の請求項7の記載が明確でないため,特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
[理由2]
当審拒絶理由通知時の請求項1ないし7に係る発明は,引用文献1及び2に記載された発明に基づいて,当業者が容易に発明をすることができたものであり,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧
1.特開2013-162195号公報(当審において新たに引用した文献)
2.米国出願公開第2013/0307746号明細書(原査定時の引用文献A)

第4 本願発明
本願請求項1ないし7に係る発明(以下,それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明7」という。)は,平成29年2月7日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される発明であり,本願発明1は,以下の通りの発明である。

「 第1の主面を有する第1の金属部材と,
前記第1の主面と同一平面を構成する第2の主面を有し,第1の方向に延在する少なくとも1本のスリットによって前記第1の金属部材から分断された第2の金属部材と,
前記第1及び第2の主面に垂直なコイル軸を有するアンテナコイルとを備え,
前記第1の金属部材は,前記アンテナコイルが実装される携帯電子機器の筐体の少なくとも一部を構成しており,
前記アンテナコイルの内径部は,前記スリット並びに前記第1及び第2の金属部材と平面視にて重なっており,
前記スリットの前記第1の方向と交差する第2の方向におけるスリット幅は,前記アンテナコイルの前記第1の方向における長さよりも長い領域であって,前記アンテナコイルを前記第1の方向に横切るよう平面視にて重なる領域において一定幅を有し,
前記スリット幅は,前記アンテナコイルの内径部のうち前記第1の金属部材と重なる領域の前記第2の方向における幅よりも狭く,且つ,前記アンテナコイルの内径部のうち前記第2の金属部材と重なる領域の前記第2の方向における幅よりも狭いことを特徴とするアンテナ装置。」

なお,本願発明2ないし本願発明6は,本願発明1を減縮した発明であり,本願発明7は,本願発明1を含む携帯電子機器として特定したものであって,本願発明1の技術的特徴をすべて包含するものである。
また,本願発明1は,当審拒絶理由通知時の請求項2及び原査定時の請求項2をさらに限定したものである。

第5 引用文献,引用発明等
1.引用文献1について
当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用された引用文献1(特開2013-162195号公報)には,「アンテナ装置」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

ア 「【0020】
以下に説明する実施形態では,本発明に係るアンテナ装置をRFID用アンテナとし,本発明に係る電子機器を,RFID用アンテナを備えた通信端末装置として説明する。通信端末装置は例えば携帯電話機等が挙げられる。
【0021】
図1は実施形態に係るRFID用アンテナを備えた通信端末装置の側面断面図である。図1では,紙面左側を通信端末装置10の先端部(本発明の一端部)Hとし,紙面右側をユーザが通信端末装置10を把持する他端部Bとし,先端部H及び他端部B方向を通信端末装置10の長手方向という。また,図1の紙面下側を入力部及び表示部等が設けられる通信端末装置10の前面側とし,紙面上側を通信端末装置10の背面側とする。背面の法線方向を0°方向とし,背面に平行な長手方向を90°方向とする。従って,0°方向から他端部B側はマイナス方向となる。
【0022】
通信端末装置10は絶縁性樹脂等からなる筐体11を備えている。筐体11の内部には基板(プリント基板)12及び電池パック13等が組み込まれている。基板12の内層にはグランド導体パターン12Gが形成され,表裏面には給電回路121及び携帯電話用アンテナ122等の多数の実装部品が実装されている。基板12は,本実施形態では主に携帯電話用アンテナ122を実装する基板と,給電回路121を構成するICチップが実装されている基板の2つの基板からなり,2つの基板同士は,図示しない同軸ケーブル又はストリップラインケーブル等により電気的に接続されている。携帯電話用アンテナ122は誘電体ブロックの外面に放射電極が形成されたチップアンテナであり,筐体11の他端部B付近に配置されている。携帯電話用アンテナ122は,例えば700MHz帯から2.7GHz帯を用いた通信を行う。なお,携帯電話用アンテナ122と後述のRFID用アンテナ1との間には金属部品(電池パック13等の他の電子機器)が介在しているため,両アンテナ同士が殆ど干渉することなく,それぞれのアンテナ特性が確保される。
【0023】
筐体11の内部にはRFID用アンテナ(本発明のアンテナ装置)1が通信端末装置10の背面側に配置されている。RFID用アンテナ1は13.56MHz等のHF帯を利用するRFIDシステム用のアンテナである。本実施形態に係るRFID用アンテナ1は,0°方向,90°方向,45°方向及び-45°方向に対する利得を向上させる構成とされている。
【0024】
RFID用アンテナ1は給電コイル(本発明のコイルアンテナ)2及び金属部材からなるブースターアンテナ3を備えている。給電コイル2は通信端末装置10の先端部H側に配置され,基板12に実装されている給電回路121に給電ピン12Aによって接続されている。ブースターアンテナ3は,通信端末装置10の背面と給電コイル2との間に配置されていて,給電コイル2と電磁界結合(主に磁界結合)する。給電コイル2はブースターアンテナ3に接着剤等により貼り付けられていてもよいし,間隙をおいてブースターアンテナ3の近傍に設けられていてもよい。
【0025】
図2(A)は給電コイル2の下面図,図2(B)は給電コイル2の正面図である。給電コイル2は,矩形板状のフレキシブル基板23と矩形板状の磁性体シート24とを備えている。なお,図2(A)は磁性体シート24を取り除いた給電コイル2の下面図である。フレキシブル基板23には巻回中心部をコイル開口部CWとする渦巻き状のコイル導体2
1及び給電回路121との接続のために用いられる接続部22が形成されている。磁性体シート24は例えばシート状に成形したフェライトである。なお,コイル導体21の巻回数(ターン数)は必要なインダクタンスによって定める。ワンターンであれば単にループ状のコイル導体となる。
【0026】
図3は実施形態1に係るRFID用アンテナ1の斜視図である。図4は図3のIV-IV線における断面図である。図5は図3のV-V線における断面図である。ブースターアンテナ3は本実施形態では一方向に長い矩形状の外形を有する。ブースターアンテナ3の厚み方向から視て,ブースターアンテナ3は給電コイル2よりも大きい。ブースターアンテナ3は,図1に示すように,長手方向が通信端末装置10の長手方向となるよう配置されている。ブースターアンテナ3には,厚み方向に貫通した直線状のスリット(本発明の第1スリット)311及びスリット(本発明の第2スリット)313と,厚み方向に貫通した矩形状の開口部312とが形成されている。
【0027】
スリット311は通信端末装置10の先端部Hから長手方向に沿って形成されている。開口部312はスリット311を介してブースターアンテナ3の先端部H側の外側(本発明の第1の外縁部)に連通されている。スリット313は通信端末装置10の他端部Bから開口部312まで長手方向に沿って形成され,開口部312及びブースターアンテナ3の他端部B側の外側(本発明の第2の外縁部)を連通している。スリット311,313の長さ及び開口部312の大きさは特に限定されない。なお,スリット311の幅は開口部312の幅と同じであってもよい。また,スリット313の幅は開口部312の幅よりも小さいことが好ましい。
【0028】
ブースターアンテナ3はスリット311,313及び開口部312により,構造的には二分割されている。以下,一方を第1部材31といい,他方を第2部材32という。なお,スリット313は他端部Bまで達していて,端部が開口しているが,他端部Bまで達していなくてもよい。この場合,ブースターアンテナ3は,第1部材31及び第2部材32が他端部B側で連結された構成となる。この構成では,スリット313の形成領域への電流強度分布を拡げ過ぎることなく,スリット311の形成方向への指向性を確保しつつ,スリット313の形成方向へ指向性を拡張することができる。
【0029】
給電コイル2は平面視でコイル開口部CWの一部又は全部が開口部312と重なる位置に配置されている。コイル開口部CWと開口部312とがほぼ同じ大きさとした場合,ブースターアンテナ3の厚み方向においてコイル導体21が開口部312の周縁と略一致して配置されることになり,コイル導体22から生じた磁界を開口部312に効率よく通すことができる。このため,ブースターアンテナ3には大きな電流が流れるようになり,ブースターアンテナ3は給電コイル2による磁界を効率よく放射させることができる。」(第5-6ページ)

イ 「【0050】
また,筐体11は絶縁性樹脂としているが,筐体11の一部または全部が金属で構成されている場合は,その金属部分にスリット311及び開口部312等を形成して,ブースターアンテナとしての機能を兼ねる構成としてもよい。(以下省略)」(第9ページ)

ウ 「

」(第10ページ)

エ 「

」(第11ページ)

オ 「

」(第11ページ)

前記アないしオ及び本願の出願日における技術常識を参酌して,引用文献1に記載された技術的事項について検討する。

a.前記アの【0022】ないし【0024】及び前記ウ(図1)より,引用文献1には,樹脂製の筐体11,給電コイルとしてのコイルアンテナ2,ブースターアンテナ3を備えた通信端末装置10が記載されているといえる。また,前記アの【0020】より,前記通信端末装置10は,携帯電話機を含んでいる。
また,前記イより,引用文献1には,筐体11の一部を金属製として,当該金属部分をブースターアンテナとして機能させる態様が記載されており,当該態様においては,ブースターアンテナは,筐体の一部を構成しているといえる。

b.前記アの【0028】並びに前記エ(図3)及び前記オ(図6)より,前記ブースターアンテナは,スリット311,開口部312及びスリット313により,第1部材31と第2部材32とに分断されている。ここで,前記ウ(図1)及び前記エ(図3)より,第1部材31と第2部材32とは,同一平面を構成する主面をそれぞれ備えることは自明であり,これらをそれぞれ,「第1の主面」,「第2の主面」と称することは任意である。また,前記ウ(図1)及び前記エ(図3)より,前記コイルアンテナは,ブースターアンテナの周面に垂直なコイル軸を有していることは自明である。

c.前記アの【0027】には,スリットの長さと開口部の大きさは,特に限定されず,スリット311の幅は開口部312の幅と同じであってもよいが,スリット313の幅は,開口部312の幅よりも小さいことが好ましいことが記載されている。この記載の態様に従えば,スリット311と開口部312とは,一体化しているといえるから,全体としてみれば,幅の広い(開口部312の幅と同じ幅の)スリット311と,幅の狭いスリット313とが長尺方向(「幅」と交差する方向)に延在する1本のスリットで構成されているといえる。
ここで,前記スリット311とスリット313とが延在する方向(長尺方向)を「第1の方向」と称すること,スリット311(開口部312を含む)を「第1のスリット部」,スリット313を「第2のスリット部」と称することは任意である。

d.前記アの【0029】には,コイル開口部CWの一部が,ブースターアンテナの開口部312と重なる位置に配置されることが記載されており,前記エ(図3)及び前記オ(図6)より,コイル開口部CWは,ブースターアンテナの開口部312と平面視で重なっていることは自明である。
そして,前記e.を参酌すれば,「第1のスリット部」とコイル開口部CWとが,平面視で重なっているといえる。

e.さらに,前記ウ(図3)等より,コイル開口部CWは,第1部材31及び第2部材32とも平面視で重なっていることが見てとれる。

f.前記ウ(図3)及び前記エ(図6)より,スリット311,開口部312及びスリット313は,いずれも,幅は一定であることが見てとれる。そうすると,前記e.を参酌すれば,第1のスリット部もまた,一定の幅となることは自明である。

前記a.ないしf.の検討から,引用文献1には,次の発明(以下,「引用発明1」という。)が記載されていると認める。

「 第1の主面を有する金属製の第1部材と,
前記第1の主面と同一平面を構成する第2の主面を有し,第1の方向に延在する,幅の広い第1のスリット部と幅の狭い第2のスリット部とからなる1本のスリットによって前記金属性の第1部材から分断された金属製の第2部材と,
前記第1及び第2の主面に垂直なコイル軸を有するコイルアンテナとを備え,
前記金属製の第1部材は,前記コイルアンテナが実装される携帯電話機の筐体の一部を構成しており,
前記コイルアンテナのコイル開口部は,前記第1のスリット部並びに前記金属製の第1部材及び前記金属製の第2部材と平面視にて重なっており,
前記第1のスリット部の幅は一定であることを特徴とする
アンテナ装置。」

2.引用文献2について
当審拒絶理由通知の拒絶の理由に引用された引用文献1(米国出願公開第2013/0307746号明細書)には,「アンテナ装置」(発明の名称)に関して,図面とともに次の事項が記載されている。

カ 「[0001] 1. Field of the Invention
[0002] The present invention relates to an antenna device preferably for use in a radio frequency identification (RFID) system or in a near field wireless communication system and to a wireless communication device that includes such an antenna device.
[0003] 2. Description of the Related Art
[0004] Generally, for RFID in the 13.56 MHz band such as near field communication (NFC) used for mobile terminals, an RFID chip and a matching device are mounted on a circuit board, an antenna is attached to the inner side of a terminal housing made of resin, and the RFID chip and an antenna are connected via a spring pin or the like in a direct current (DC) manner.」(第1ページ)
([当審仮訳]
[0001] 技術分野
[0002] 本発明はRFIDシステムや近距離無線通信システムに用いられるアンテナ装置およびそれを備えた無線通信装置に関するものである。
[0003] 背景技術
[0004] 携帯端末に実装されている近領域通信(NFC)などの13.56MHz帯のRFIDにおいては,RFID用ICチップや整合素子は主に回路基板に実装され,アンテナは樹脂製の端末筺体の内側に貼り付けられ,RFID用ICチップとアンテナとはスプリングピンなどを介して直流的に接続されるのが一般的である。)

キ 「Ninth Preferred Embodiment

[0095] FIG.16A is a perspective view of an antenna device according to a ninth preferred embodiment of the present invention and FIG.16B is a front view of the antenna device. In this example, the antenna device includes the two sheet conductors 2a and 2b. The sheet conductor 2a is, for example, a ground conductor provided on a circuit board. The sheet conductor 2b is a metal housing portion that is a portion of the housing of a communication terminal. The sheet conductor 2b includes two wall portions, which are preferably substantially sheet-shaped, and a main surface portion provided between the wall portions. The sheet conductor 2a is a ground conductor and is provided on a front layer or an inner layer of the circuit board. The feed coil 3 is mounted as a chip-type component on the front layer of the circuit board. The circuit board is a printed wiring board. Although not illustrated, various components, such as a cellular RF circuit and a driving circuit for a display device, for example, may preferably mounted on the circuit board.
[0096] The slits 2 Sa and 2Sb are provided between the sheet conductors 2a and 2b. That is, a side of the sheet conductor 2 a and a side of the sheet conductor 2b face each other via the slit 2Sa, and another side of the sheet conductor 2a and another side of the sheet conductor 2b face each other via the slit 2Sb. More specifically, the slit 2Sa is provided between one of the wall portions of the sheet conductor 2b and the sheet conductor 2a, and the slit 2Sb is provided between the other one of the wall portions of the sheet conductor 2b and the sheet conductor 2a. The sheet conductor 2a and each of the wall portions of the sheet conductor 2b are preferably arranged such that a direction perpendicular or substantially perpendicular to the sheet conductor 2a is perpendicular or substantially perpendicular to a direction perpendicular or substantially perpendicular to the wall portion.
[0097] The metal housing portion is preferably made of conductive material, for examples, magnesium, aluminum, and/or carbon fiber. The sheet conductor 2a is also preferably made of conductive material. Other than the ground conductor of the printed wiring board, various metallic bodies, such as a metal chassis, a shield case, or a metal cover of a battery pack arranged in the communication terminal may preferably be used as the sheet conductor 2a.
[0098] The feed coil 3 is arranged at a position closer to the sheet conductor 2a than to the sheet conductor 2b. That is, the feed coil 3 is preferably arranged so as to be close to the sheet conductor 2a such that the direction of the axis of the feed coil 3 is parallel or substantially parallel to the directions in which the sheet conductor 2a extends. In this manner, in the case in which spaces defined by a plurality of sheet conductors that are adjacent to each other are used as slits, it a feed coil is preferably arranged such that the direction of the axis of the feed coil differs from a direction perpendicular or substantially perpendicular to one of the plurality of sheet conductors, the sheet conductor being closest to the feed coil.
[0099] In FIG.16A , arrows drawn with a broken line represent the flow of current that flows along the edge of the sheet conductor 2a and the flow of current that flows along the edge of the sheet conductor 2b. Moreover, in FIG.16B, arrows represent magnetic flux that passes through the slits 2Sa and 2Sb. For example, by placing the sheet conductor 2b close to an antenna coil with which communication is performed, an induced current is generated in the sheet conductor 2b and the induced current flows primarily along the edge of the sheet conductor 2b due to the cut-edge effect. Then, a current is induced in the sheet conductor 2a that is adjacent to the sheet conductor 2b via the slits 2Sa and 2Sb. This current flows primarily along the edge of the sheet conductor 2a due to the cut-edge effect. Furthermore, coupling between the feed coil 3 and the sheet conductors 2a and 2b occurs through a magnetic field that passes the slit 2Sa.
[0100] Note that when the sheet conductors 2a and 2b are at the same potential in a DC manner, the sheet conductors 2a and 2b may preferably be used as shield conductors. That is, the sheet conductors 2a and 2b may be electrically independent from each other or may be connected to each other via a power-supply pin, for example.
[0101] In this manner, two sheet conductors are not in one plane and are in different planes, and the slits 2Sa and 2Sb may be provided between the sheet conductors, which are in different planes. Similar effects and advantages may be obtained. In particular, according to the ninth preferred embodiment, there is no need to provide, in the metal housing portion, a slit or an opening used for coupling that occurs for the feed coil 3. Thus, the strength of the metal housing portion is not greatly reduced and a degree of flexibility in the design of the housing is improved.
[0102] Note that a state in which the feed coil 3 is arranged is not limited to those illustrated in FIGS. 16A and 16B. FIG.17 is a front view of an antenna device that illustrates another exemplary state in which the feed coil 3 is arranged. As illustrated in FIG.17, sheet conductors 2a are ground conductors and are provided on front layers (or on an inner layer) of an insulating board 2c. The feed coil 3 is mounted on an area of the insulating board 2c, the area being an area in which a sheet conductor 2 a is not provided. The feed coil 3 may preferably be arranged such that the direction of the axis of the feed coil 3 is perpendicular or substantially perpendicular to the directions in which the insulating board 2c extends and a portion of one of the coil openings of the feed coil 3 is at a position that overlaps the slit 2Sa. Even in this case, coupling between the feed coil 3 and the sheet conductors 2a and 2b occurs through a magnetic field that passes the slit 2Sa.」(第7-8ページ)
([当審仮訳]
《第9の実施形態》
[0095] 図16(A)は第9の実施形態に係るアンテナ装置の斜視図,図16(B)はその正面図である。この例では,2つの面状導体2a,2bを備えている。面状導体2aは例えば回路基板に形成されたグランド導体であり,面状導体2bは通信端末の筺体の一部を構成する金属筐体部である。面状導体2bは,2つの面状の壁部と各壁部間の主面部とを有する。面状導体2aはグランド導体であって,回路基板の表層または内層に設けられている。回路基板の表層には給電コイル3がチップ型部品として実装されている。回路基板はプリント配線板であって,図示しないが,セルラー用RF回路や表示装置の駆動回路等,各種の実装部品が搭載されている。
[0096] 面状導体2aと面状導体2bとの間にはスリット2Sa,2Sbが設けられている。すなわち,面状導体2aの端部と面状導体2bの端部はスリット2Saやスリット2Sbを介して対向している。より具体的には,面状導体2bの一方壁部と面状導体2aとの間にスリット2Saが形成されており,面状導体2bの他方壁部と面状導体2aとの間にスリット2Sbが形成されている。面状導体2aと面状導体の各壁部とは,各々の法線がほぼ直交するように配置されている。
[0097] 金属筺体部は,例えばマグネシウムやアルミニウム,炭素繊維等の導電材によって構成されている。面状導体2aも導電材によって構成されており,プリント配線板のグランド導体の他,端末内に配置された金属シャーシやシールドケース,バッテリーパックの金属カバー等の各種の金属体を利用できる。
[0098] 給電コイル3は,面状導体2bよりも面状導体2a寄りに配置されている。すなわち,給電コイル3は,その巻回軸が面状導体2aに対して平行となるように,面状導体2aに近接配置されている。このように,複数の面状導体が隣接する部分をスリットとして利用する場合,給電コイルは,その巻回軸方向が最も近い方の面状導体の法線方向と異なるように配置されていればよい。
[0099] 図16(A)において,破線の矢印は面状導体2a,2bの周縁部に流れる電流の経路を表わしている。また,図16(B)において,矢印はスリット2Sa,2Sbを通る磁束を表している。例えば面状導体2bが通信相手のアンテナコイルに近接することによって,面状導体2bに誘導電流が発生し,この誘導電流は縁端効果によって主に面状導体2bの端縁に沿って流れる。そして,スリット2Sa,2Sbを介して隣接する面状導体2aに電流が誘導され,この電流は縁端効果によって主に面状導体2aの端縁に沿って流れる。さらに,給電コイル3はスリット2Saを通る磁界を介して面状導体2a,2bと結合する。
[0100] なお,面状導体2a,2bを直流的に同電位とすれば,面状導体2a,2bをシールド導体として利用できる。すなわち,面状導体2aと面状導体2bとは,電気的に独立していてもよいが,給電ピン等を介して接続されていてもよい。
[0101] このように,2つの面状導体が同一平面ではなく異なる面上にあって,スリット2Sa,2Sbが異なる面を有する面状導体の間に設けられていてもよく,同様の作用効果を得ることができる。特に,本実施形態によれば,金属筺体部自体には,給電コイル3との結合用のスリットや開口を形成する必要が無いので,金属筺体部の強度が大きく低下することが無いし,筺体のデザイン上の自由度も向上する。
[0102] なお,給電コイル3の配置状態は,図16(A)および図16(B)で説明したものに限定されない。図17は給電コイル3の配置状態の別の例を示すアンテナ装置の正面図である。図17に示すように,面状導体2aはグランド導体であって,絶縁性基板2cの表層(または内層)に設けられている。給電コイル3は,面状導体2aが設けられていない絶縁性基板2cの領域に実装されている。給電コイル3は,コイル巻回軸が絶縁性基板2cに対し直交し,かつ,コイル開口部の一部がスリット2Saと重なる位置に配置されていてもよい。この場合であっても,給電コイル3はスリット2Saを通る磁界を介して面状導体2a,2bと結合する。)

ク 「

」(sheet 16 of 25)

ケ 「

」(sheet 17 of 25)

前記カないしケ及び本願の出願日における技術常識を参酌して,引用文献2に記載された技術的事項について検討する。

g.前記カより,引用文献2は,「携帯電話端末」の「アンテナ装置」に関するものである。

h.前記キの[0095]より,前記「アンテナ装置」は,「面状導体2a」と「面状導体2b」を備え,前記g.を参酌すれば,「面状導体2a」は,前記「携帯電話端末」の「筐体」の一部を構成するものである。
ここで,「面状導体2a」及び「面状導体2b」のそれぞれを,「第1の面状導体」及び「第2の面状導体」と称することは任意である。
また,前記キの[0095]より,「第2の面状導体」が形成される回路基板には,「給電コイル3」が実装されている。

i.前記キの[0096]並びに前記ク(図16)及び前記ケ(図17)より,「第1の面状導体」と「第2の面状導体」とは,2つのスリット2Saと2Sbとで分断されているといえる。
ここで,「スリット2Sa」及び「スリット2Sb」をそれぞれ,「第1のスリット」及び「第2のスリット」と称することは任意である。

j.前記キの[0101]の「2つの面状導体が同一平面ではなく異なる面上にあって,スリット2Sa,2Sbが異なる面を有する面状導体の間に設けられていてもよく,同様の作用効果を得ることができる。」より,前記キに係る「第9の実施形態」においては,「第1の面状導体」と「第2の面状導体」とは,異なる面上にあることを前提としているものの,2つの「面状導体」が,同一平面上にあっても,異なる面上にあっても,同様の作用効果が得ることができるものといえる。

k.前記キの[0102]及び前記ケ(図17)には,「給電コイル」が,「第1の面状導体」(2a)に垂直なコイル軸を有し,コイル開口部の一部が,「第1のスリット」(2Sa)と重なる位置に配置されることが記載されている。

前記g.ないしk.の検討から,引用文献2には,次の発明(以下,「引用発明2」という。)が記載されていると認める。

「 第1の面状導体と,
前記第1の面状導体と異なる面上にあり,第1のスリット及び第2のスリットによって前記第1の面状導体から分断された第2の面状導体と,
前記第1の面状導体に垂直なコイル軸を有する給電コイルとを備え,
前記第1の面状導体波,前記給電コイルが実装される携帯電話端末の筐体の一部を構成しており,
前記給電コイルのコイル開口部の一部は,前記第1のスリットと重なる位置に配置され,
前記第1の面状導体と前記第2の面状導体とが,同一平面上にあっても,異なる面上にあっても,同様の作用効果が得ることができる
アンテナ装置。」

第6 当審の判断
1.[理由1](特許法第36条第6項第2号について)
当審拒絶理由通知において,当審拒絶理由通知時の請求項7に記載の「カバー」と,請求項7が引用する請求項1に記載の「筐体」との関係が明確でなく,かつ,金属膜が形成される「カバーの表面」がどちら側の面であるか明確でない旨の指摘をしていたが,平成29年2月7日付けの手続補正により,請求項6の記載において,「筐体」が「カバー」を備えること,及び,「カバーの裏面」に金属膜が形成されることが明確となった。
よって,原審拒絶理由通知の[理由1]に係る拒絶の理由は解消した。

2.[理由2](特許法第29条第2項について)
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と引用発明1とを対比すると,次のことがいえる。

引用発明1における「金属製の第1部材」,「金属製の第2部材」,「コイルアンテナ」,「コイルアンテナのコイル開口部」はそれぞれ,本願発明1における「金属製の第1部材」,「金属製の第2部材」,「アンテナコイル」,「アンテナコイルの内径部」に相当する。
また,引用発明1における「携帯電話機」は,本願発明における「携帯電子機器」に含まれる。
そうすると,引用発明1における「前記金属製の第1部材は,前記コイルアンテナが実装される携帯電話機の筐体の一部を構成しており」は,本願発明1における「前記第1の金属部材は,前記アンテナコイルが実装される携帯電子機器の筐体の少なくとも一部を構成しており」に含まれる。

引用発明1における「幅の広い第1のスリット部と幅の狭い第2のスリット部とからなる1本のスリット」は,本願発明1における「少なくとも1本のスリット」に含まれる。
そうすると,引用発明1において,「前記コイルアンテナのコイル開口部は,前記第1のスリット部並びに前記金属製の第1部材及び前記金属製の第2部材と平面視にて重なっており」は,本願発明における「前記アンテナコイルの内径部は,前記スリット並びに前記第1及び第2の金属部材と平面視にて重なっており」に含まれる。
また,引用発明1において,「前記コイルアンテナのコイル開口部は,前記第1のスリット部並びに前記金属製の第1部材及び前記金属製の第2部材と平面視にて重なっており」と「前記第1のスリット部の幅は一定であること」との構成から,前記「第1のスリット部」の幅(すなわち,「第1の方向と交差する第2の方向におけるスリット幅」)は,「コイルアンテナ」の「第1の方向」における長さよりも長い領域にわたり,かつ,「コイルアンテナ」の「コイル開口部」を「第1の方向」に横切るように平面視にて重なる領域において一定幅を有することは自明である。

イ 一致点・相違点
以上の検討から,本願発明1と引用発明1とは,以下の点において一致ないし相違する。

[一致点]
「 第1の主面を有する第1の金属部材と,
前記第1の主面と同一平面を構成する第2の主面を有し,第1の方向に延在する1本のスリットによって前記第1の金属部材から分断された第2の金属部材と,
前記第1及び第2の主面に垂直なコイル軸を有するアンテナコイルとを備え,
前記第1の金属部材は,前記アンテナコイルが実装される携帯電子機器の筐体の一部を構成しており,
前記アンテナコイルの内径部は,前記スリット並びに前記第1及び第2の金属部材と平面視にて重なっており,
前記スリットの前記第1の方向と交差する第2の方向におけるスリット幅は,前記アンテナコイルの前記第1の方向における長さよりも長い領域であって,前記アンテナコイルを前記第1の方向に横切るよう平面視にて重なる領域において一定幅を有する,
ことを特徴とするアンテナ装置。」

[相違点]
本願発明1は,前記スリット幅は,前記アンテナコイルの内径部のうち前記第1の金属部材と重なる領域の前記第2の方向における幅よりも狭く,且つ,前記アンテナコイルの内径部のうち前記第2の金属部材と重なる領域の前記第2の方向における幅よりも狭い」のに対し,引用発明1においては,「金属製の第1部材」又は「金属製の第2部材」と,「コイルアンテナのコイル開口部」と重なる領域の第2の方向における幅」と,「第1のスリット部」の幅との関係について具体的な言及がない点。

ウ 相違点についての判断
[相違点]に係る本願発明1の構成は,引用文献2にも記載されておらず(引用文献2において,「アンテナコイルの内径部」は,スリット又は筐体の一部を構成する金属部材と平面視で重なるものではない。),かつ,本願の出願日における技術常識でもない。
また,引用文献1には,【0027】に,「スリット311,313の長さ及び開口部312の大きさは特に限定されない。」と記載されているものの,本願の出願日において,金属が通信を阻害すること,及び,コイルの近辺が最も通信感度が高いことは技術常識であり,引用文献1の【発明が解決しようとする課題】(【0005】)にも,「これにより,開口部101A及びスリット101Bが形成された領域に生じる磁界の強度が高く,…通信感度が高い。」と記載されている。また,引用発明1の課題は,引用文献1の【0007】に記載されているように「通信可能角度範囲及び距離を向上させること」である。
一方,本願は,明細書の段落【0010】に記載されているように,「開口部の形成位置にアンテナコイルを配置する必要があったため,設計上の制約が大きかった。」という課題を解決するために,「アンテナコイルの内径部と比べて非常に狭い幅のスリットのみ」を設けることにより,「アンテナコイルのレイアウトの自由度を高める」という効果を奏するものである。
そうすると,引用発明1において,第1のスリット部(コイルアンテナの開口部を含む。)の幅を狭くすることの動機付けが存在しない。
したがって,本願発明1は,当業者であっても,引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

(2)本願発明2ないし本願発明7について
本願発明2ないし本願発明7も,[相違点]に係る本願発明1の構成を備えるものであるから,本願発明1と同じ理由により,当業者であっても,引用文献1及び引用文献2に記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。

よって,原審拒絶理由通知の[理由2]に係る拒絶の理由は解消した。

第7 原査定についての判断
平成29年2月7日付けの手続補正により,補正後の請求項1ないし7は,「前記スリット幅は,前記アンテナコイルの内径部のうち前記第1の金属部材と重なる領域の前記第2の方向における幅よりも狭く,且つ,前記アンテナコイルの内径部のうち前記第2の金属部材と重なる領域の前記第2の方向における幅よりも狭い」という技術的事項を有するものとなった。
前記技術的事項は,原査定における引用文献AないしCには記載されていない。
なお,原査定においては,引用文献A(当審拒絶理由通知における引用文献2)に記載された事項のうち,[0074]ないし[0076],Fig.6A及びFig.6B(下掲)に係る第3の実施形態(Third Preferred Embodiment)を引用しているが,当該第3の実施形態は,給電コイル(3)のコイル軸が,スリット(2S)の延在する面と平行な面上にあり,よって,給電コイル(3)のコイル開口部は,スリット及び面状導体(2a,2b)と平面視で重なる構成ではない。したがって,引用文献Aの第3の実施形態においては,スリット幅と,コイル開口部が面状導体と重なる領域における幅との間の大小を論じる余地がない。

(引用文献AのFig.6A,Fig.6B)




また,前記技術的事項は,本願出願日前における周知技術でもないので,本願発明1ないし7は,当業者であっても,原査定における引用文献AないしCに記載された発明に基いて容易に発明をすることができたものではない。
したがって,原査定を維持することはできない。

第8 むすび
以上のとおり,原査定の理由によっては,本願を拒絶することはできない。
また,他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって,結論のとおり審決する。
 
審決日 2017-03-21 
出願番号 特願2014-17086(P2014-17086)
審決分類 P 1 8・ 121- WY (H01Q)
P 1 8・ 536- WY (H01Q)
最終処分 成立  
前審関与審査官 佐藤 当秀  
特許庁審判長 大塚 良平
特許庁審判官 林 毅
中野 浩昌
発明の名称 アンテナ装置及びこれを用いた携帯電子機器  
代理人 緒方 和文  
代理人 鷲頭 光宏  
代理人 黒瀬 泰之  

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