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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1326427
審判番号 不服2016-6804  
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-05-09 
確定日 2017-03-23 
事件の表示 特願2011-254463「車両用障害物検知装置」拒絶査定不服審判事件〔平成25年 6月 6日出願公開、特開2013-108857〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成23年11月21日に出願したものであって、平成27年6月18日付けの拒絶理由通知に対して平成27年8月24日付けで手続補正がなされたが、平成28年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成28年5月9日付けで拒絶査定不服審判が請求されると同時に手続補正がなされたものである。

第2 平成28年5月9日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成28年5月9日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1 本件補正
本件補正は、特許請求の範囲について、本件補正前に、
「【請求項1】
超音波からなる送信波を間欠的に送波するとともに前記送信波の反射波を受波するセンサと、
前記センサに前記送信波を送波させる送波信号を出力する機能、および前記センサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したときに前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間を評価することにより障害物の有無を検知する機能を有したコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記送波信号が発生してから所定時間が経過した検知期間の開始時に前記閾値を初期値に設定し、前記検知期間が開始してからの経過時間に応じて前記閾値を前記初期値から小さくする閾値設定部を備える
ことを特徴とする車両用障害物検知装置。」
とあったところを、

「【請求項1】
超音波からなる送信波を間欠的に送波するとともに前記送信波の反射波を受波するセンサと、
前記センサに前記送信波を送波させる送波信号を出力する機能、および前記センサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したときに前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間を評価することにより障害物の有無を検知する機能を有したコントローラとを備え、
前記コントローラは、前記送波信号が発生してから所定時間が経過した検知期間の開始時に前記閾値を初期値に設定し、前記検知期間が開始してからの経過時間に応じて前記閾値を前記初期値から小さくする閾値設定部を備え、
前記閾値は、基準値に、地面からの反射波による検波信号の信号レベルを加えた値である
ことを特徴とする車両用障害物検知装置。」
とすることを含むものである(下線は補正箇所を示す。)。

本件補正について検討する。
本件補正は、
本件補正前の請求項1のセンサの「閾値」について、「前記閾値は、基準値に、地面からの反射波による検波信号の信号レベルを加えた値である」と限定するものである。

よって、本件補正は、本件補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項を限定するものであるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項に規定する要件を満たすか)について以下に検討する。

2 引用例及びその記載事項
(1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2010-164356号公報(平成22年7月29日公開、以下「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【技術分野】
【0001】
本発明は、車体に取り付けられた車載ソナーから発射した球面送信波の反射波を捕らえて車両周辺に存在する障害物を検知する車両用周辺監視装置に関する。」

b「【0016】
実施例1の車両周辺監視装置は、全周囲俯瞰映像のつなぎ目領域に存在する障害物を検知するもので、図1に示すように、前左ソナー7(車載ソナー)と、前右ソナー8(車載ソナー)と、後左ソナー9(車載ソナー)と、後右ソナー10(車載ソナー)と、姿勢センサ11(ソナー姿勢検出手段)と、障害物検知コントローラ12(障害物検知手段)と、障害物警報ランプ13と、を備えている。」

c「【0017】
前記前左ソナー7は、車体の前左隅位置に路面に平行な車体姿勢にて水平方向に向けて取り付けている。前記前右ソナー8は、車体の前右隅位置に路面に平行な車体姿勢にて水平方向に向けて取り付けている。前記後左ソナー9は、車体の後左隅位置に路面に平行な車体姿勢にて水平方向に向けて取り付けている。前記後右ソナー10は、車体の後右隅位置に路面に平行な車体姿勢にて水平方向に向けて取り付けている。これらの各ソナー7,8,9,10は、障害物検知コントローラ12からの発振トリガにより球面送信波を発射し、球面送信波の反射波を障害物検知コントローラ12に取り込む。」

d「【0026】
前記ROM12eは、前記各ソナー7,8,9,10からの送信波の発射方向に応じて、障害物からの反射波を残しつつ路面からの反射波を取り除くため、車体のロール傾斜姿勢に応じて異なるパターン形状による複数の閾値パターンを予め記録(記憶)しておくメモリである。
実施例1では、複数の閾値パターンの一例として、図3に示すように、各ソナー7,8,9,10が上向き状態の反射時間に対する反射強度閾値をあらわす第1閾値パターンP1(図3(a))と、各ソナー7,8,9,10が水平状態の反射時間に対する反射強度閾値をあらわす第2閾値パターンP2(図3(b))と、各ソナー7,8,9,10が下向き状態の反射時間に対する反射強度閾値をあらわす第3閾値パターンP3(図3(c))を記憶している。このROM12eで予め記憶しておく閾値パターンP1,P2,P3は、様々な路面のうち路面反射強度が最も大きく出る路面(例えば、吸水アスファルト路面)を基準路面として選定し、基準路面でソナー姿勢を変化させながら振動する路面反射強度特性データを取得し、取得した路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿ったパターン形状に設定している。実施例1では、記憶している閾値パターン形状を、図3に示すように、水平線と垂直線を組み合わせた階段パターン形状に設定している。」

e「【0029】
図4は、実施例1の車両周辺監視装置における障害物検知コントローラ12のCPU12fで実行される障害物検知処理の一例を示すフローチャートである。以下、図4のフローチャートの各ステップについて説明する。
【0030】
ステップS41では、一定時間毎に発振トリガを各ソナー7,8,9,10に対し出力し、ステップS42へ移行する。」

f「【0034】
ステップS45では、ステップS44での閾値パターンの判定に続き、閾値パターン記憶部であるROM12eに予め記憶されている3個の閾値パターンP1,P2,P3(図3)の中から判定された閾値パターンを読み出し、ステップS46へ移行する(閾値パターン読み出し部)。
【0035】
ステップS46では、ステップS35での閾値パターン読み出しに続き、読み出された閾値パターンとRAM12dに一時的に記録されているソナー反射波を比較し、ステップS47へ移行する(比較部)。
ここで、閾値パターンとソナー反射波の比較は、全てのソナー反射波から閾値パターンを取り除く処理により行う。
【0036】
ステップS47では、ステップS46での閾値パターンと反射波の比較に続き、反射波から閾値パターンを取り除いた後に反射波が残ったか否かにより障害物が有るか否かを判定し、YES(障害物有り)の場合はステップS48へ移行し、NO(障害物無し)の場合はリターンへ移行する(障害物有無判定部)。
ここで、反射波から閾値パターンを取り除いた後に反射波が残った場合には、残った反射波は障害物反射波とみなして「障害物有り」と判定し、反射波が残らなかった場合には、「障害物無し」と判定する。
【0037】
ステップS48では、ステップS47での障害物有りとの判定に続き、送信波の発射時間からの障害物反射波を受けた時間までの所要時間を水晶発振器12cに基づき計測し、この所要時間を障害物反射時間として取得し、ステップS49へ移行する。
【0038】
ステップS49では、ステップS48での障害物反射時間の取得に続き、障害物反射時間と音速から障害物までの距離を換算し、ステップS50へ移行する。
ここで、障害物までの距離は、障害物反射時間をt0とし、音速をVsとすると、
(障害物までの距離)=Vs×t0÷2
の式により求められる。」

g「【0053】
実施例1のROM12eには、車体のロール傾斜姿勢に応じて異なるパターン形状による複数の閾値パターンを予め記憶している。
したがって、各ソナー7,8,9,10からの送信波の発射方向に適合する閾値パターンが高応答の読み出し処理により設定され、発振トリガの間隔短縮を含め障害物検知処理の時間短縮化を図ることができる。」

h「【0077】
次に、作用を説明する。
内蔵型ユニット20を用いる実施例2の場合も、CPU21gからトリガ信号を発し、ソナーを発振させるところから開始する。発振器21aがトリガ信号を受け取ると、送受信機22により超音波が発振される。・・・」

i 図3


ア 段落【0001】の記載から、引用例には、「車両用周辺監視装置」が記載されている。

イ 段落【0016】の記載から「車両周辺監視装置は、前左ソナー7(車載ソナー)と、前右ソナー8(車載ソナー)と、後左ソナー9(車載ソナー)と、後右ソナー10(車載ソナー)と、障害物検知コントローラ12(障害物検知手段)とを備えている」ことが記載されている。

ウ 段落【0017】の記載には「各ソナー7,8,9,10」は、「球面送信波を発射」するものとあるが、ソナーの送信波として超音波を用いることは常套手段であり、引用例には、超音波を用いることが記載されていることからして(段落【0077】)、上記「球面送信波」は、「超音波」と認められるので、
段落【0017】の記載から、引用例には、「各ソナー7,8,9,10は、障害物検知コントローラ12からの発振トリガにより超音波を発射し、超音波の反射波を障害物検知コントローラ12に取り込む」ことが記載されている。

エ 段落【0029】、【0030】及び【0035】ないし【0038】の記載から、引用例には、「障害物検知コントローラ12は、一定時間毎に発振トリガを各ソナー7,8,9,10に対し出力し、読み出された閾値パターンとソナー反射波を比較し、ここで、閾値パターンとソナー反射波の比較は、全てのソナー反射波から閾値パターンを取り除く処理により行い、反射波から閾値パターンを取り除いた後に反射波が残ったか否かにより障害物が有るか否かを判定し、YES(障害物有り)の場合は、送信波の発射時間からの障害物反射波を受けた時間までの所要時間を計測し、この所要時間を障害物反射時間として取得し、障害物反射時間と音速から障害物までの距離を換算」することが記載されている。

オ 段落【0029】及び【0034】の記載から「障害物検知コントローラ12」は、「ROM12eに予め記憶されている閾値パターンを読み出」すことが記載されており、そして、段落【0053】の「ROM12eに・・・予め記憶している・・・閾値パターンが高応答の読み出し処理により設定され」とあるので、引用例の「障害物検知コントローラ12」は、「閾値パターンを読み出し設定」しているといえる。

カ 図3から、路面反射がある時間は、路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さくなり、路面反射がない時間は、一定の閾値とする、水平線と垂直線を組み合わせた階段パターン形状の閾値パターンP1,P2,P3が読み取れる。
したがって、段落【0026】及び図3の記載から、引用例には、「閾値パターンP1,P2,P3は、路面反射がある時間は、路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さくなり、路面反射がない時間は、一定の閾値とする、水平線と垂直線を組み合わせた階段パターン形状である」ことが記載されている。

したがって、上記引用例に記載された事項、図面の記載、及び上記アないしカを総合すると、引用例には、次の事項が記載されている(以下、「引用発明」という。)
「各ソナー7,8,9,10は、障害物検知コントローラ12からの発振トリガにより超音波を発射し、超音波の反射波を障害物検知コントローラ12に取り込み、
障害物検知コントローラ12は、
一定時間毎に発振トリガを各ソナー7,8,9,10に対し出力し、
閾値パターンを読み出し設定し、読み出された閾値パターンとソナー反射波を比較し、閾値パターンとソナー反射波の比較は、全てのソナー反射波から閾値パターンを取り除く処理により行い、反射波から閾値パターンを取り除いた後に反射波が残ったか否かにより障害物が有るか否かを判定し、YES(障害物有り)の場合は、送信波の発射時間からの障害物反射波を受けた時間までの所要時間を計測し、この所要時間を障害物反射時間として取得し、障害物反射時間と音速から障害物までの距離を換算し、
閾値パターンP1,P2,P3は、路面反射がある時間は、路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さくなり、路面反射がない時間は、一定の閾値とする、水平線と垂直線を組み合わせた階段パターン形状である
車両用周辺監視装置。」

(2)原査定の備考において引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開平3-103788号公報(平成3年4月30日公開、以下「周知例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「さて、図において、9は、例えば自動車10のコーナー適所に取り付けられた超音波送受波器である。この超音波送受波器9は第5図に示される送受波器7とホーン8から構成されているものである。かかる構成からなる超音波検知器は、第9図bに示すように受波ゲートT_(G)が設定されており、この範囲は第8図の実線H_(G)に対応している。
該受波ゲート範囲H_(G)内には3個の検知エリアが設定されている。すなわち、送波直後の残響の影響を除いた微少時間経過からT_(1)時点までの検知エリアH_(1)、上記T_(1)時点経過後、T_(2)時点までの検知エリアH_(2)及び上記T_(2)時点経過後、T_(3)時点までの検知エリアH_(3)である。」(第4頁右下欄第6?18行)

b「第9図において、信号c,d及びeは検知エリアと受渡信号の信号巾との関係を説明するタイミングチャートで、C_(1)は検知エリアH1で受波された受波信号を示す。この受波信号の信号巾t_(1)が、t_(Al)<t_(l)であれば、物体と判断される。C_(2)は検知エリアH_(2)で受波された受波信号を示す。この受波信号の信号巾t_(2)が、t_(A2)<t_(2)であれば、物体と判断される。また、C_(3)は検知エリアH_(3)で受波された受波信号を示す。この受波信号の信号巾t_(3)が、t_(A3)<t_(3)であれば、物体と判断される。」(第5頁左上欄第6?16行)

上記aから周知例1には、次の周知技術1が記載されている。
「超音波検知器9に、受波ゲートT_(G)を設定し、受波ゲート範囲H_(G)内の検知エリアH_(1)、H_(2)及H_(3)を、送波直後の残響の影響を除いた微少時間経過から設定する技術。」

上記a及びbから周知例1には、次の周知技術2が記載されている。
「微少時間経過からT_(3)時点までの検知エリアH_(1)、H_(2)及H_(3)で、受信信号を用いて物体の有無を判断する技術。」

(3)原査定の備考において引用され、本願の出願日前に頒布された刊行物である特開2000-46945号公報(平成12年2月18日公開、以下「周知例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている(なお、下線は当審で付した。)。

a「【0004】検知回路5は受波回路5aと検知ゲート回路5bとゲート制御回路5cとを備える。受波回路5aは、送受波器4の出力する受波信号が閾値レベルTh0より大きい場合にのみHighになる検波信号を出力する。検知ゲート回路5bは、受波回路5aの出力する検波信号のうち、所定時間範囲Tc 内の検波信号のみを通過させる。ゲート制御回路5cは、基準信号発生回路2の出力に基づいて、検知ゲート回路5bを開放する時間範囲Tc を制御する。
【0005】上述のような従来の超音波センサ装置1にあっては、発振回路3は図7(a)に示すようにバースト信号を時刻t0 から時刻t1 まで送受波器4へ入力する。すると、送受波器4の超音波振動子は時刻t0 から振動を開始するものの、図7(b)に示すように、時刻t1 が過ぎてからも送受波器4の超音波振動子の残響振動が残り、送受波器4の受波信号Ws が閾値レベルTh0を下回るには時間がかかり、受波回路5aは図7(c)に示すような検波信号Ks を出力する。そのため、検知ゲート回路5bは、図7(d)に示すように、前記残響振動による受波信号Ws が閾値レベルTh0を下回って以降の、時刻t2 にしか検知ゲートを開くことができない。」

b「【0006】いま、超音波センサ装置1の送受波器4と障害物Aとの距離をL、音速をCとした場合、送波した超音波は障害物Aに反射して2L/C秒後に反射波として返ってきて、図7(b)に示す受波信号Wa として送受波器4に受波される。そして、この障害物Aからの反射波の受波信号Wa は、受波回路5aから図7(c)に示すように検波信号Ka として出力され、この検波信号Ka が図7(d)に示すように検知ゲート回路5bの開いている時刻t2 から時刻t3 までの間にあれば、検知ゲート回路5bは、図7(e)に示すように、受波回路5aの検波信号と検知ゲート回路5bの検知ゲート信号との論理積信号Pa を、信号処理部6へ出力する。そして、信号処理部6は障害物Aを検出した旨の表示信号を表示部7へ出力し、表示部7はその旨を表示する。

c 図7(d)には、検知ゲート信号が、時刻t2から時刻t3の所定時間範囲Tc 内で、高レベルになることが示されている。

上記a及びcから周知例2には、次の周知技術3が記載されている。
「検知ゲート回路5bの検知ゲートを、送受波器4の超音波振動子の振動開始後の残響振動が閾値レベルTh0を下回って以降の時刻t2に開く技術。」

上記bから周知例2には、次の周知技術4が記載されている。
「検知ゲート回路5bの開いている時刻t2 から時刻t3 までの間で、検波信号Kaを用いて、障害物Aの有無を判断する技術。」

3 対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

(1)引用発明の「各ソナー7,8,9,10」は、「一定時間毎に」「各ソナー7,8,9,10に対し出力」された「発振トリガにより超音波を発射し」ているので、間欠的に「超音波を発射し」ているといえるので、
引用発明の「一定時間毎に」「各ソナー7,8,9,10に対し出力」された「発振トリガにより超音波を発射し、超音波の反射波を」取り込む「各ソナー7,8,9,10」は、本願補正発明の「超音波からなる送信波を間欠的に送波するとともに前記送信波の反射波を受波するセンサ」に相当する。

(2)引用発明の「各ソナー7,8,9,10は、障害物検知コントローラ12からの発振トリガにより球面送信波を発射し」ているので、引用発明の「障害物検知コントローラ12」は、本願補正発明の「前記センサに前記送信波を送波させる送波信号を出力する機能」「を有したコントローラ」に相当する。

(3)引用発明の「閾値パターンとソナー反射波を比較し、閾値パターンとソナー反射波の比較は、全てのソナー反射波から閾値パターンを取り除く処理により行い、反射波から閾値パターンを取り除いた後に反射波が残ったか否かにより障害物が有るか否かを判定し、YES(障害物有り)の場合」は、本願補正発明の「前記センサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したとき」に相当する。
引用発明の「送信波の発射時間からの障害物反射波を受けた時間までの所要時間」は、本願補正発明の「前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間」に相当するので、引用発明の「送信波の発射時間からの障害物反射波を受けた時間までの所要時間を計測し、この所要時間を障害物反射時間として取得し、障害物反射時間と音速から障害物までの距離を換算」することは、本願補正発明の「前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間を評価する」に相当する。
したがって、引用発明の「閾値パターンとソナー反射波を比較し、閾値パターンとソナー反射波の比較は、全てのソナー反射波から閾値パターンを取り除く処理により行い、反射波から閾値パターンを取り除いた後に反射波が残ったか否かにより障害物が有るか否かを判定し、YES(障害物有り)の場合は、送信波の発射時間からの障害物反射波を受けた時間までの所要時間を計測し、この所要時間を障害物反射時間として取得し、障害物反射時間と音速から障害物までの距離を換算」している「障害物検知コントローラ12」は、本願補正発明の「前記センサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したときに前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間を評価する」「機能を有したコントローラ」に相当する。

(4)引用発明の「障害物検知コントローラ12」は、「閾値パターン」を読み出し「設定」し、読み出された閾値パターンとソナー反射波を比較しているので、本願補正発明の「閾値設定部」に相当し、
引用発明の「時間経過に応じて小さく」なる「閾値パターン」を「設定」する「障害物検知コントローラ12」と、本願補正発明の「前記コントローラは」「前記検知期間が開始してからの経過時間に応じて前記閾値を前記初期値から小さくする閾値設定部を備え」とは、「前記コントローラは、」「経過時間に応じて前記閾値を小さくする閾値設定部を備え」る点で共通する。

(5)引用発明の「閾値パターンP1,P2,P3は、路面反射がある時間は、路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さくなり、路面反射がない時間は、一定の閾値とする、水平線と垂直線を組み合わせた階段パターン形状である」ことと、本願補正発明の「前記閾値は、基準値に、地面からの反射波による検波信号の信号レベルを加えた値である」こととは、「前記閾値は、地面からの反射波による検波信号の信号レベルに応じた値」である点で共通する。

(6)引用発明の「車両用周辺監視装置」は、本願補正発明の「車両用障害物検知装置」に相当する。

すると本願補正発明と引用発明とは、次の(一致点)及び(相違点)を有する。
(一致点)
「超音波からなる送信波を間欠的に送波するとともに前記送信波の反射波を受波するセンサと、
前記センサに前記送信波を送波させる送波信号を出力する機能、および前記センサが規定の閾値以上の振幅である反射波を受波したときに前記送波信号の発生から前記センサによる前記反射波の受波までの時間を評価する機能を有したコントローラとを備え、
前記コントローラは、経過時間に応じて前記閾値を小さくする閾値設定部を備え、
前記閾値は、地面からの反射波による検波信号の信号レベルに応じた値である
車両用障害物検知装置。」

(相違点1)
コントローラの機能について、本願補正発明は、「前記反射波の受波までの時間を評価することにより障害物の有無を検知する」のに対して、引用発明は、「障害物反射波を受けた時間までの所要時間を計測し」「距離を換算」しているが、このような特定がない点。
(相違点2)
本願補正発明は、「前記送波信号が発生してから所定時間が経過した検知期間の開始時に前記閾値を初期値に設定し」ているのに対し、引用発明は、このような特定がない点。
(相違点3)
本願補正発明は、「前記検知期間が開始してからの」経過時間に応じて前記閾値を「前記初期値から」小さくするのに対して、引用発明は、「閾値パターンP1,P2,P3」を「路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さく」しているが、本願補正発明のような特定がない点。
(相違点4)
閾値は、地面からの反射波による検波信号の信号レベルに応じた値であることについて、本願補正発明は、前記閾値は、「基準値に、」地面からの反射波による検波信号の信号レベル「を加えた値」であるのに対して、引用発明は、「閾値パターンP1,P2,P3は、路面反射がある時間は、路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さくなり、路面反射がない時間は、一定の閾値」である点。

4 判断
(1)相違点1について
本願補正発明の「前記反射波の受波までの時間を評価することにより障害物の有無を検知する」ことは、本願明細書【0014】に記載の「マイコン24は、パルス信号を時刻t1に出力した後の規定時刻tsから開始される期間を、障害物の有無を判断する検知期間とし、検知期間内の検波信号を用いて障害物の有無を判断する。」に対応する機能であるが、検知期間内の検波信号を用いて障害物の有無を判断することは、周知技術である(例えば、周知技術2(上記「2(2)」)及び周知技術4(上記「2(3)」))。
引用発明においても、上記周知技術を適用し、検知期間内の検波信号であるかを、反射波の受波までの時間により評価して、障害物の有無を検知し、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(2)相違点2について
送波信号が発生してから所定時間が経過した時に検知を開始することは、周知技術である(例えば、周知技術1(上記「2(2)」)及び周知技術3(上記「2(3)」))。引用発明においても、上記周知技術を適用し、「検知期間の開始時」における路面反射強度特性を考慮して、「閾値」の「初期値」を設定して、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(3)相違点3について
引用発明は「閾値パターンP1,P2,P3」を「路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さく」するものであるから、引用発明において、「閾値」を、「検知期間の開始時」に最大値とし、経過時間に応じて小さくして、上記相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは、当業者が容易になし得たことである。

(4)相違点4について
引用発明は「閾値パターンP1,P2,P3」を、「路面反射がない時間」は「一定の閾値」としている。一方、本願補正発明の「基準値」は、本願明細書【0016】の「地面9からの反射波を考慮しない場合の基準の閾値Th0」に対応するものであるから、引用発明の「路面反射がない時間」における「一定の閾値」は、本願補正発明の「基準値」に相当する。
そして、引用発明は「路面反射がある時間」の「閾値パターンP1,P2,P3」を、「路面反射強度特性データの包絡線D1,D2,D3に沿って時間経過に応じて小さく」するものであるが、「路面反射がない時間」における信号は「路面反射強度特性データ」に重畳され得るものであるから、閾値を決定するあたり、「路面反射強度特性データ」に対して、「路面反射がない時間」に設けた「一定の閾値」を加えることは、当業者が適時なし得る事項である。
したがって、上記相違点4に係る本願補正発明の構成とすることに格別の困難性を有しない。

そして、上記相違点を総合的に判断しても、本願補正発明が奏する効果は引用発明及び周知技術から当業者が十分に予測できたものであって格別なものとはいえない。

よって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

5 本件補正についてのむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項で準用する同法第126条第7項の規定に違反するので、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成28年5月9日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、上記「第2 [理由]1 本件補正」の本件補正前の「請求項1」として記載したとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、上記「第2 [理由] 2 引用例及びその記載事項」に記載したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、本願補正発明から、上記「第2 [理由] 1 本件補正」で検討した本件補正に係る限定を削除するものである。
そうすると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 [理由] 4 判断」に示したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2017-01-17 
結審通知日 2017-01-24 
審決日 2017-02-06 
出願番号 特願2011-254463(P2011-254463)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01S)
P 1 8・ 572- Z (G01S)
P 1 8・ 121- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 三田村 陽平  
特許庁審判長 酒井 伸芳
特許庁審判官 須原 宏光
関根 洋之
発明の名称 車両用障害物検知装置  
代理人 西川 惠清  
代理人 坂口 武  
代理人 仲石 晴樹  
代理人 北出 英敏  
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